台本概要

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タイトル 水溜まり
作者名 チェル・チェルリ  (@chel_chelri)
ジャンル その他
演者人数 1人用台本(女1) ※兼役あり
時間 10 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 ポジティブ台本を増やそう計画。
思い出したくない過去を振り切って。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
2 大学生~社会人ぐらいの年齢を想定。 一人称や語尾を改変して男性もどうぞ。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
私: その日は朝から、雨が降っていた。 私: 私: 片頭痛で重い頭を体のてっぺんにゆらゆらさせながら、私は透明なビニール傘を差して外に出た。 私: あまり行きたくないけど行かなきゃならない用事があるんだ。 私: 私: たまにあるじゃない。直接濡れるのは困るけど、雨粒を浴びてる気分になりたいって時。 私: 期待通りビニール傘は、ぽつぽつ、たららといい音を立ててくれた。 私: 私: 何年も前に平らに舗装されたアスファルトに、水たまりができている。 私: 丈夫な物だって、永遠にいくらでも丈夫でいるわけじゃないよね。 私: ぱしゃん、とレインシューズで一歩踏み込んでみた。 私: 私: 何度も踏まれて弱った部分。 私: これが心だったら、溜まってるのは雨水じゃなくて涙なんだろうななんて、ポエムみたいなことが 頭に浮かんだ。 私: 私: よりによってそんな、感傷的になってる時。 私: 向こうから歩いてくるのは二度と顔も見たくなかった人。 私: 向こうはきっと何とも思っていない、私だけ彼を避けてる、ちょっと気まずい。 私: なのに『やあ』と軽く手を上げて近付いてこられてしまった。最悪。 私: 『どうも』と無愛想に挨拶を返して立ち止まる。 私: 私: 今更何の話があるんだろう。私は思い出したくもなかった。 私: ただでさえこの後、嫌な用事があるのに。 私: 『……何か用?』って私から切り出してみたけど、元気かどうか気になってた?あなたに心配されたくないな。 私: 私: 忙しいからと切り上げて、また私は歩き出した。 私: もっと明るいことを考えよう。 私: 雨上がりの空気とか。 私: 来週予約した美容院のこととか。 私: ……楽しかった、思い出とか。 私: 私: ……今だって楽しいもん。 私: ほら、ビニール傘で周りがよく見える。 私: 俯いて歩いてる人たち。あ、私も俯いてた。前向かなきゃ。 私: 私: みんな水溜まりを気にして下ばっかり。 平らだったアスファルトが踏まれて弱った部分。 私: 繰り返し踏まれたら、そりゃ弱っちゃうよね。 私: 私: そのうちまた『幸せ』で舗装される。 私: 強がりじゃなくって、巡り合わせってきっとそうできてるから。 私: 私: 知ってる?道路の傷みを連絡するアプリがあるって。 私: 同じように、待ってるだけじゃなくて 私: 声を上げてみるんだ。前を向くんだ。 私: 私: もう後ろなんて、過去なんて、振り向いてやらない。 私: あいつなんて、心の中から追い出してやるんだから。 私: いつまでもあいつからストレスを受けてなんて、やらないんだから。 0: 了

私: その日は朝から、雨が降っていた。 私: 私: 片頭痛で重い頭を体のてっぺんにゆらゆらさせながら、私は透明なビニール傘を差して外に出た。 私: あまり行きたくないけど行かなきゃならない用事があるんだ。 私: 私: たまにあるじゃない。直接濡れるのは困るけど、雨粒を浴びてる気分になりたいって時。 私: 期待通りビニール傘は、ぽつぽつ、たららといい音を立ててくれた。 私: 私: 何年も前に平らに舗装されたアスファルトに、水たまりができている。 私: 丈夫な物だって、永遠にいくらでも丈夫でいるわけじゃないよね。 私: ぱしゃん、とレインシューズで一歩踏み込んでみた。 私: 私: 何度も踏まれて弱った部分。 私: これが心だったら、溜まってるのは雨水じゃなくて涙なんだろうななんて、ポエムみたいなことが 頭に浮かんだ。 私: 私: よりによってそんな、感傷的になってる時。 私: 向こうから歩いてくるのは二度と顔も見たくなかった人。 私: 向こうはきっと何とも思っていない、私だけ彼を避けてる、ちょっと気まずい。 私: なのに『やあ』と軽く手を上げて近付いてこられてしまった。最悪。 私: 『どうも』と無愛想に挨拶を返して立ち止まる。 私: 私: 今更何の話があるんだろう。私は思い出したくもなかった。 私: ただでさえこの後、嫌な用事があるのに。 私: 『……何か用?』って私から切り出してみたけど、元気かどうか気になってた?あなたに心配されたくないな。 私: 私: 忙しいからと切り上げて、また私は歩き出した。 私: もっと明るいことを考えよう。 私: 雨上がりの空気とか。 私: 来週予約した美容院のこととか。 私: ……楽しかった、思い出とか。 私: 私: ……今だって楽しいもん。 私: ほら、ビニール傘で周りがよく見える。 私: 俯いて歩いてる人たち。あ、私も俯いてた。前向かなきゃ。 私: 私: みんな水溜まりを気にして下ばっかり。 平らだったアスファルトが踏まれて弱った部分。 私: 繰り返し踏まれたら、そりゃ弱っちゃうよね。 私: 私: そのうちまた『幸せ』で舗装される。 私: 強がりじゃなくって、巡り合わせってきっとそうできてるから。 私: 私: 知ってる?道路の傷みを連絡するアプリがあるって。 私: 同じように、待ってるだけじゃなくて 私: 声を上げてみるんだ。前を向くんだ。 私: 私: もう後ろなんて、過去なんて、振り向いてやらない。 私: あいつなんて、心の中から追い出してやるんだから。 私: いつまでもあいつからストレスを受けてなんて、やらないんだから。 0: 了