台本概要
155 views
タイトル | 水溜まり |
---|---|
作者名 | チェル・チェルリ (@chel_chelri) |
ジャンル | その他 |
演者人数 | 1人用台本(女1) ※兼役あり |
時間 | 10 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
ポジティブ台本を増やそう計画。 思い出したくない過去を振り切って。 155 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
私 | 女 | 2 | 大学生~社会人ぐらいの年齢を想定。 一人称や語尾を改変して男性もどうぞ。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
私: その日は朝から、雨が降っていた。
私:
私: 片頭痛で重い頭を体のてっぺんにゆらゆらさせながら、私は透明なビニール傘を差して外に出た。
私: あまり行きたくないけど行かなきゃならない用事があるんだ。
私:
私: たまにあるじゃない。直接濡れるのは困るけど、雨粒を浴びてる気分になりたいって時。
私: 期待通りビニール傘は、ぽつぽつ、たららといい音を立ててくれた。
私:
私: 何年も前に平らに舗装されたアスファルトに、水たまりができている。
私: 丈夫な物だって、永遠にいくらでも丈夫でいるわけじゃないよね。
私: ぱしゃん、とレインシューズで一歩踏み込んでみた。
私:
私: 何度も踏まれて弱った部分。
私: これが心だったら、溜まってるのは雨水じゃなくて涙なんだろうななんて、ポエムみたいなことが 頭に浮かんだ。
私:
私: よりによってそんな、感傷的になってる時。
私: 向こうから歩いてくるのは二度と顔も見たくなかった人。
私: 向こうはきっと何とも思っていない、私だけ彼を避けてる、ちょっと気まずい。
私: なのに『やあ』と軽く手を上げて近付いてこられてしまった。最悪。
私: 『どうも』と無愛想に挨拶を返して立ち止まる。
私:
私: 今更何の話があるんだろう。私は思い出したくもなかった。
私: ただでさえこの後、嫌な用事があるのに。
私: 『……何か用?』って私から切り出してみたけど、元気かどうか気になってた?あなたに心配されたくないな。
私:
私: 忙しいからと切り上げて、また私は歩き出した。
私: もっと明るいことを考えよう。
私: 雨上がりの空気とか。
私: 来週予約した美容院のこととか。
私: ……楽しかった、思い出とか。
私:
私: ……今だって楽しいもん。
私: ほら、ビニール傘で周りがよく見える。
私: 俯いて歩いてる人たち。あ、私も俯いてた。前向かなきゃ。
私:
私: みんな水溜まりを気にして下ばっかり。
平らだったアスファルトが踏まれて弱った部分。
私: 繰り返し踏まれたら、そりゃ弱っちゃうよね。
私:
私: そのうちまた『幸せ』で舗装される。
私: 強がりじゃなくって、巡り合わせってきっとそうできてるから。
私:
私: 知ってる?道路の傷みを連絡するアプリがあるって。
私: 同じように、待ってるだけじゃなくて
私: 声を上げてみるんだ。前を向くんだ。
私:
私: もう後ろなんて、過去なんて、振り向いてやらない。
私: あいつなんて、心の中から追い出してやるんだから。
私: いつまでもあいつからストレスを受けてなんて、やらないんだから。
0: 了
私: その日は朝から、雨が降っていた。
私:
私: 片頭痛で重い頭を体のてっぺんにゆらゆらさせながら、私は透明なビニール傘を差して外に出た。
私: あまり行きたくないけど行かなきゃならない用事があるんだ。
私:
私: たまにあるじゃない。直接濡れるのは困るけど、雨粒を浴びてる気分になりたいって時。
私: 期待通りビニール傘は、ぽつぽつ、たららといい音を立ててくれた。
私:
私: 何年も前に平らに舗装されたアスファルトに、水たまりができている。
私: 丈夫な物だって、永遠にいくらでも丈夫でいるわけじゃないよね。
私: ぱしゃん、とレインシューズで一歩踏み込んでみた。
私:
私: 何度も踏まれて弱った部分。
私: これが心だったら、溜まってるのは雨水じゃなくて涙なんだろうななんて、ポエムみたいなことが 頭に浮かんだ。
私:
私: よりによってそんな、感傷的になってる時。
私: 向こうから歩いてくるのは二度と顔も見たくなかった人。
私: 向こうはきっと何とも思っていない、私だけ彼を避けてる、ちょっと気まずい。
私: なのに『やあ』と軽く手を上げて近付いてこられてしまった。最悪。
私: 『どうも』と無愛想に挨拶を返して立ち止まる。
私:
私: 今更何の話があるんだろう。私は思い出したくもなかった。
私: ただでさえこの後、嫌な用事があるのに。
私: 『……何か用?』って私から切り出してみたけど、元気かどうか気になってた?あなたに心配されたくないな。
私:
私: 忙しいからと切り上げて、また私は歩き出した。
私: もっと明るいことを考えよう。
私: 雨上がりの空気とか。
私: 来週予約した美容院のこととか。
私: ……楽しかった、思い出とか。
私:
私: ……今だって楽しいもん。
私: ほら、ビニール傘で周りがよく見える。
私: 俯いて歩いてる人たち。あ、私も俯いてた。前向かなきゃ。
私:
私: みんな水溜まりを気にして下ばっかり。
平らだったアスファルトが踏まれて弱った部分。
私: 繰り返し踏まれたら、そりゃ弱っちゃうよね。
私:
私: そのうちまた『幸せ』で舗装される。
私: 強がりじゃなくって、巡り合わせってきっとそうできてるから。
私:
私: 知ってる?道路の傷みを連絡するアプリがあるって。
私: 同じように、待ってるだけじゃなくて
私: 声を上げてみるんだ。前を向くんだ。
私:
私: もう後ろなんて、過去なんて、振り向いてやらない。
私: あいつなんて、心の中から追い出してやるんだから。
私: いつまでもあいつからストレスを受けてなんて、やらないんだから。
0: 了