台本概要

 249 views 

タイトル ジョイエリ デラ トライセイ【ファイル:サファイア】
作者名 不尽子(つきぬこ)  (@tsukinuko)
ジャンル コメディ
演者人数 5人用台本(男2、女1、不問2)
時間 40 分
台本使用規定 台本説明欄参照
説明 イタリアにある異能者で構成されたトライセイ探偵団の新入りネーロと、その指導役ヴィオラが仲間達と共に珍事件を解決…!?
ご使用の際はご報告いただけると大変喜びます(強制ではありません)。
シナリオの一番下にイタリア語の解説があります。

 249 views 

キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
ネーロ 88 ジーノ・マーティン。不幸体質な男装女子。宝石マニアで心の声がうるさい。
ヴィオラ 93 ダン・サクマ。根暗な日系青年。能力は「以心伝心」だが、ネーロに幻滅されたくなくて言えないでいる。
アズーロ 94 オズヴァルド・ベックマン。能力は「身体強化」。常にカッコつけたがる色男。
プリンシペッサ 不問 41 性別不問。肉塊女子orオカマッチョ。貴族の姫(?)
マジョルドモ 不問 47 性別不問。年老いたプリンシペッサの執事。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
マジョルドモ:お待ちしておりましたトライセイ様。今回の依頼をさせていただきましたマジョルドモでございます。 ヴィオラ:どうも。 ネーロ:こ、こんにちは…。 アズーロ:早速、案内を頼めるだろうか。 マジョルドモ:はい。こちらでございます。 アズーロ:(鼻歌) ヴィオラ:…やけに機嫌がいいな、アズーロ。 アズーロ:当然だろう。今回の依頼は、かの貴族のプリンシペッサの護衛! マジョルドモ:……。 アズーロ:さしずめ俺はその美しき姫を守る孤高のキャバリエレ、と言ったところかな? ヴィオラ:都合良く俺等の事忘れんな。 ネーロ:僕は不安で押し潰されそうです…。 アズーロ:はは、怯える顔も可愛らしいが、気負う事は無いさガッティーナ。何せ今日はこの俺が付いているのだからな! ネーロ:…僕、子猫じゃないです。って、どうかしましたか、マジョルドモさん? マジョルドモ:…いえ、何も。 ヴィオラ:まぁでも、そんなに気を張る事は無いよ。アズーロはこういう仕事は慣れてるし。 アズーロ:そうとも、俺の手にかかればプリンシペッサの命を狙う奴等などモースケ同然!残らず叩き潰してやるさ! ヴィオラ:…殺すなよ? アズーロ:フッ、ゼンショしよう。 ヴィオラ:おい。 ネーロ:ゼンショ?何ですかそれ? マジョルドモ:聞いた事がございます。確かジャッポーネの言葉で「後ろ向きに検討する」という意味だとか。 ヴィオラ:ちげーよ。そういう意味で使われがちだけど。 ネーロ:…でも、凄い自信ですね。流石は元軍人…僕もアズーロさんぐらい強かったらなぁ…。 アズーロ:フッ、惚れたかい?ガッティーナ。 ネーロ:子猫じゃないです。 マジョルドモ:さて皆様、こちらがプリンシペッサのお部屋です。ご無礼の無いようにだけお願いします。 アズーロ:フッ、ついにこの時が来たか…! アズーロ:さぁ、今宵は貴女の為にこの身を捧げよう!ミア・テゾーロ! プリンシペッサ:んふぅ〜、やぁっと来て下さったのねぇ〜!待ちわびたわぁ〜ん! 0:その場が凍りつく。 ヴィオラ:…あの、貴方がプリンシペッサ…? プリンシペッサ:ええそぉよぉ〜ん?んふぅ、凄腕の探偵様方が三人も来て下さるなんてぇ、あたくし感激ですわぁ〜ん! アズーロ:……。 ネーロ:えっと…つ、強そうですね! ヴィオラ:(吹き出す) アズーロ:(我に返って咳払い)…二人共、失礼だぞ。 プリンシペッサ:んふぅ、マジョルドモ、お客様にお茶を。 マジョルドモ:かしこまりました。どうぞ。 ネーロ:あ、どうも…。 アズーロ:ふむ、いただこう。 ヴィオラ:……。 マジョルドモ:それでは早速依頼の件でございますが、まずはこちらをご覧下さい。 ネーロ:これって…予告状!? ヴィオラ:『満月が天に達する時、麗しきプリンシペッサの命をいただきに参ります』…。 アズーロ:まるで怪盗みたいな奴だな…フッ、俺と気が合いそうだ。 ネーロ:合わないで下さい! ヴィオラ:要はどっちもキザ…。 マジョルドモ:今宵は満月。予告状の通りであれば、今宵プリンシペッサは…。 プリンシペッサ:絶対嫌よぉん!あたくし、この犯人を捕まえてみせるわぁ〜!探偵様方、協力して頂戴! ネーロ:…あの、警察には…? プリンシペッサ:あらご存知ないのぉ〜?んふぅ、警察なんかよりもぉ、貴方達の方がよっぽど頼りになるって評判なのよぉ〜? アズーロ:当然だな。この国の全ての軍事力をもってしても、俺は殺せんだろうさ。 ヴィオラ:否定できねぇのムカつく…。 マジョルドモ:加えて申し上げますと、一度警察から警護と称して家の財産を盗まれかけた事がございまして、警察はあまり信用出来ないのです。 プリンシペッサ:んもぉ、ムカつくったらないわぁ!でもぉ、モーストロの生まれ変わりと噂されてるアズーロ様が来て下さるなんて、んふぅ、あたくしはなぁ〜んて幸運なのかしらぁ〜! アズーロ:……。 ネーロ:モーストロ? ヴィオラ:昔、そう謳われた軍人が居たんだよ。 マジョルドモ:第二次世界大戦の頃、十八という若さで大砲や爆撃をものともせず、たった一人素手で戦車を百台以上破壊したという伝説の軍兵でございます。基地の爆破事故で死亡したとされておりますが…。 ネーロ:素手で戦車を百台!?本当にアズーロさんみたい!確かアズーロさんも、当時は凄かったって言ってましたもんね! アズーロ:ハハッ、惚れてくれるなガッティーナ。 ネーロ:子猫じゃないです。 プリンシペッサ:そこでぇ、んふぅ、貴方ぁ? ネーロ:え、僕? プリンシペッサ:そぉ!そこのアズーロ様だけじゃなくぅ、貴方みたいな方も今回指名させてもらったのよぉ〜ん! ネーロ:え、そ、そうなんですか? ヴィオラ:ああ、まぁ…。 アズーロ:それは俺も初耳だ。 ヴィオラ:…ヴェルデだよ。 アズーロ:ああ、なるほど。理解した。 ネーロ:で、でも…僕に出来る事なんて…。 プリンシペッサ:それがあるのよぉ〜ん!あたくしってばメディアにも顔を出してないものだからぁ、貴族の令嬢というだけで美女だと勘違いされがちなのよねぇ〜ん? マジョルドモ:予告状にも、「麗しき」と記載されております。しかし現実のプリンシペッサは、ご覧の通り…。 ネーロ:(上擦った声で)あ、あ〜、えっと…そうなんですねぇ〜…? ヴィオラ:…おい、ネーロが困ってるぞ。いつもの口説き文句で助けてやれよ。 アズーロ:己を理解しているとは、流石プリンシペッサは聡明だな! ヴィオラ:そっちじゃねーよ!てかそれフォローになってねーからな!? ネーロ:それで、その…僕は一体何をすれば…? プリンシペッサ:んふぅ、マジョルドモ! マジョルドモ:かしこまりました、プリンシペッサ。 ネーロ:え、わ、ちょっと!? アズーロ:!?おい、何処へ…! ヴィオラ:大丈夫だ。着替えさせるだけだろ? アズーロ:き、着替え? プリンシペッサ:ええ、丁度あたくしと歳が近くてぇ、線の細い可愛らしいお顔の方が欲しかったのぉ〜ん! プリンシペッサ:影武者をして下さればぁ、あたくしが殺される心配はなくなるでしょぉ〜ん? アズーロ:…な、なるほど…。(ここから小声)おいヴィオラ、これもネーロは知らされていないのか? ヴィオラ:…ヴェルデ曰く、『先にこの話をした未来』を見たら、めちゃくちゃゴネて面倒だったんだとさ。 アズーロ:あー…。 ネーロ:(遠くで)いぃ〜〜やぁ〜〜だぁ〜〜!!こんなの聞いてないぃ〜〜〜!! アズーロ:…やはり不幸の星の下からは逃れられない、か…。 ヴィオラ:それ絶対ネーロの前で言うなよ? マジョルドモ:プリンシペッサ、準備が整いましてございます。さ、ネーロ様。 ネーロ:うぅ〜…。 アズーロ:おぉ! ヴィオラ:…! プリンシペッサ:あらあらあらぁ〜ん!んふふぅ、とぉってもお似合いじゃないのぉ〜!貴方本当に男性なのぉ〜? プリンシペッサ:こぉんなに可愛らしいのに、んふぅ、勿体無いわぁ〜ん! ネーロ:何も嬉しくないです…もう帰りたい…。 アズーロ:ふふ、恥ずかしがる事はないさ。俺はずっとこの時を待っていたんだ…。 アズーロ:麗しきプリンシペッサ、今宵は俺が君のキャバリエレ。命に替えても――。 ネーロ:(低い声で遮る)あの本当にそういうのいいんで。 アズーロ:……。…守ってみせようじゃないか。 ネーロ:言い切ったよこの人…。 ヴィオラ:…でも、凄く似合ってるよ。綺麗だ。 ネーロ:きっ…!?(照れ隠し咳込み)とにかく、僕が身代わりになればいいんでしょ!? ネーロ:ヴィオラさんとアズーロさんも、何か作戦立てて下さいよ! アズーロ:……。 ヴィオラ:そうだな。じゃあ早速…アズーロ? アズーロ:…フッ、やるなフェラテーロ。 ヴィオラ:はぁ? アズーロ:で、作戦は? ヴィオラ:…あっちで話そう。 アズーロ:分かった。 0:部屋の隅に行った後、ヴィオラがアズーロにテレパシーを送る。 ヴィオラ:聞かれたら面倒だ。テレパシーで話すぞ。 アズーロ:…了解した。つまり犯人は、この屋敷の人間という事か。 ヴィオラ:流石、察しがいいな。 アズーロ:伊達に長年つるんでないだろ、フェラテーロ? ヴィオラ:(くすっ)…そうだな。 マジョルドモ:(心の声)…?おかしい。この部屋には防犯の為にいくつもの盗聴器を仕掛けていると言うのに、あの二人から全く声が聞こえない…? ヴィオラ:…よし、まず犯人だが―― ネーロ:(心の声)わー!やっぱり光ると遠い所からでもよく見えるもんだなー! ネーロ:本当にダンさんの目は綺麗でうっとりしちゃうよ〜! ヴィオラ:っ〜〜〜!! アズーロ:ん?どうした? ヴィオラ:な、何でもないっ…! 0:作戦会議を終えた二人が戻って来る。 プリンシペッサ:あらぁ、んふぅ、終わったかしらぁ〜? マジョルドモ:(心の声)結局あの二人がどうするのか、聞き取れずじまいだった…。 ネーロ:とりあえず、僕はこのままこの部屋に居ればいいんですよね? ヴィオラ:ああ、この部屋は俺とマジョルドモさんが残る。そしてプリンシペッサは、アズーロと共に隣の部屋で待機して下さい。 マジョルドモ:なっ…!? ネーロ:えっ!? プリンシペッサ:んふぅ、分かったわぁ〜ん! ネーロ:うぅ…でもプリンシペッサを守る為なら、それが一番かぁ…。アーメン…。 マジョルドモ:お、お待ち下さい!何故私まで影武者側に…!? アズーロ:無論、犯人の目を誤魔化す為だ。側近の貴方がプリンシペッサの側に居ないのはおかしいだろ? マジョルドモ:っ……。 ネーロ:あの、大丈夫ですよ!アズーロさんは本当に強い人なんで! アズーロ:(ドヤ顔)フッ…。 マジョルドモ:……。 ヴィオラ:頼むぞ、アズーロ。 アズーロ:ああ、任せろヴィオラ。 0:プリンシペッサとアズーロが部屋を出る。 ネーロ:…ヴィオラさんって、アズーロさんと仲良いですよね。 ヴィオラ:やめてくれ、あの色ボケと同類だと思われたくない。 ネーロ:でも、信頼し合ってる感じがします。 ヴィオラ:…まぁ、付き合いは長いからな。 ネーロ:ロッソさんよりもですか? ヴィオラ:ドンはまぁ…居ない時多いし。 ネーロ:あー、確かに…。 マジョルドモ:あの…。 ネーロ:あ、はい!あっすいません、もっと貴族っぽい振る舞いした方がいいですか!? マジョルドモ:いえ、その…お身体が優れない、という事はございませんか? ネーロ:え? ヴィオラ:……。 マジョルドモ:お出しした茶菓子に、ネーロ様もヴィオラ様も手をつけられていなかったようなので…。 ネーロ:あー…すいません。緊張で喉を通りそうになくて…。 ヴィオラ:悪いが、紅茶と甘いものは苦手なんだ。 ネーロ:え? マジョルドモ:…左様でございますか。では、こちらは片付けさせていただきます。 ネーロ:え、もうすぐ予告の時間ですよ!?一人になるのは危ないですよ! マジョルドモ:プリンシペッサは、お部屋に食べ物の匂いが残るのを嫌うお方ですので。私は一度失礼します。 0:マジョルドモが部屋を出て、場面はアズーロとプリンシペッサの居る部屋へ。 アズーロ:さ、足元にお気をつけて。 プリンシペッサ:んふぅ、ありがとぉ。…ね〜ぇ、一つ聞いてもいいかしらぁ〜? アズーロ:答えられる範囲であれば、何なりと。 プリンシペッサ:貴方達はぁ、どぉしてコードネームで呼び合ってるのぉ? アズーロ:! プリンシペッサ:マフィア組織じゃあるまいしぃ、普通そんなものはつけないでしょぉ〜?中には犯罪者も居るって聞いたけどぉ。 アズーロ:…ええ、事実です。 プリンシペッサ:あらぁ、じゃあやっぱりそれが理由なのぉ〜? アズーロ:…そうですね。戦場だから合法のように扱われますが、俺も何百と人を殺した。 プリンシペッサ:んふぅ、まるで戦争を知っているかのような口ぶりねぇ〜?レバノン出兵の頃はまだ生まれてもいなかったんじゃなぁ〜い? アズーロ:…失礼、口が過ぎました。 0:場面は再びプリンシペッサの部屋。 ネーロ:…マジョルドモさん、戻って来ませんね。もう時間なのに…。 ヴィオラ:……。 ネーロ:…そう言えばヴィオラさん、紅茶や甘いのダメでしたっけ? ヴィオラ:…いいや。 ネーロ:やっぱり。何でそんな嘘を…? ヴィオラ:…一応、解毒剤を持って来てはいたけど、本当に使う必要無さそうで安心したよ。 ネーロ:え? ヴィオラ:いつも不幸な目に遭うけど、今回は幸運だったなネーロ。 ネーロ:ヴィオラさん?さっきから何の話を…。 0:部屋のドアが開く。 ネーロ:あ、良かった!おかえりなさいマジョルドモさ……え、誰…? 0:ドアを開けた仮面の人物が、アサルトライフルを二人に向ける ヴィオラ:っ!伏せろ! ネーロ:わっ…!? 0:仮面の人物がアサルトライフルを掃射し、ヴィオラが間一髪でネーロを押し倒す。 ヴィオラ:っ…派手なお出ましだな…。 ネーロ:っ……(怯えて震えている) 0:銃声を聞いてアズーロが駆け付けて来る。 アズーロ:二人共、無事か!? ヴィオラ:アズーロ! 0:仮面の人物が即座に銃口をアズーロに向けて放つが、全て素手で弾かれる。 アズーロ:そんなオモチャが、この俺に効くと思ったか! ヴィオラ:…一先ずはあいつに任せるか。ネーロ、怪我は…。 ネーロ:(真っ青になって息を荒げている) ヴィオラ:え…あ、ご、ごめん!すぐにどくからっ…。 ネーロ:(息を整えようと必死) ヴィオラ:……。 プリンシペッサ:ちょっとちょっとぉ〜!?なぁんの騒ぎかしらぁ〜!? ヴィオラ:えっ…。 アズーロ:!? プリンシペッサ:アズーロ様ぁ、この変なお面の方はどなたなのぉ!? ネーロ:…え、プリンシペッサ…? ヴィオラ:何で出て来んだよ…。 アズーロ:やれやれ…。 プリンシペッサ:…貴方、マジョルドモ? ネーロ:え…!? プリンシペッサ:マジョルドモでしょぉ!?どぉして貴方がそんな格好をしているのぉ!?どぉしてそんな物騒なものを持ってるのぉ!! マジョルドモ:……。 ネーロ:え、これ、どういう…。 ヴィオラ:(呆れた溜息) アズーロ:…仕方が無いな。もう少し楽しませてもらう予定だったが…タネ明かしだ! 0:アズーロが一瞬で仮面の人物に近づき、仮面を破壊する。 マジョルドモ:っ!! ネーロ:あっ…! ヴィオラ:……。 プリンシペッサ:…やっぱり。マジョルドモ、これはどういう事なのぉ!? マジョルドモ:っ……。 ヴィオラ:俺達を雇ってプリンシペッサを守らせようとしたのも、ネーロに影武者をさせたのも、全部こいつの作戦の内だったんだ。 アズーロ:ネーロを狙うフリをして、流れ弾が運悪くプリンシペッサに命中し死亡…そんな不慮の事故を装おうとは、随分と手の込んだ計画だな。 ネーロ:そ、そんな…。 プリンシペッサ:マジョルドモぉ!貴方、一体どうして…! マジョルドモ:…しい。 プリンシペッサ:えぇ? マジョルドモ:この家の財産が欲しい!それだけですよ!(銃口を向ける) アズーロ:させるかっ!(一瞬でアサルトライフルを握り潰す) マジョルドモ:っ!?…ふふ、流石はモーストロの生まれ変わり…。素手で銃弾を弾き返すだけでなく、銃器を握力で破壊する程の怪力とは…。 アズーロ:言ったはずだ。この国の軍事力全てをもってしても、この俺は倒せんとな。 マジョルドモ:そうでございましたね…。しかし、そうカッコつけているのも今の内…。 アズーロ:何?…ぐっ…!?(突然苦しみ始める) ヴィオラ:! ネーロ:え、アズーロさん…!? アズーロ:(吐血)が、はっ…! プリンシペッサ:きゃぁ〜!! マジョルドモ:あの茶菓子を食べたのが貴方だけだったのは誤算でしたが、最大戦力が消えたと思う事にいたしましょう。 アズーロ:ぐぅっ……。(倒れる) ネーロ:アズーロさんっ!! ヴィオラ:……。 マジョルドモ:やれやれ…お陰で作戦が台無しです。こうも容易く見抜かれるとは…まるで心の内でも読まれたようだ。 ヴィオラ:っ…。 プリンシペッサ:そんな…何故、何故なのマジョルドモぉ! マジョルドモ:言ったでしょう、財産ですよ。貴方の家の財産が手に入れば、私は一生遊んで暮らせる! ネーロ:っ! マジョルドモ:ロクでもない人生を過ごしてきましたが、貴方のお陰で楽しい老後が過ごせそうだ。それだけは感謝しますよプリンシペッサ。 ネーロ:…ふざけるな。 ヴィオラ:ネーロ? ネーロ:ふざけるな!そんな事の為に人を、アズーロさんを殺してっ…ロクでもないのはお前だっ!! ヴィオラ:ネーロ、よせ! マジョルドモ:…よく吠える口だ。先に貴方をパラディーゾへ送って差し上げましょうか…。(拳銃を取り出す) ネーロ:っ…! ヴィオラ:こいつ、まだ銃を持ってたのか…! プリンシペッサ:おやめなさいマジョルドモぉ! マジョルドモ:アリーヴェデルチ。…っ!? ネーロ:え? プリンシペッサ:あらぁ…!? アズーロ:…そこまでだ、トラディトーレ。 マジョルドモ:なっ…!? ヴィオラ:(溜息)ったく…遅ぇっての、アズーロ。 アズーロ:エロエは遅れてやって来る、そういうものだろう? マジョルドモ:き、貴様…何故生きてっ…まさか抗体を…!? アズーロ:いいや、毒は効いたさ。だから毒の分解機能と、身体の再生機能を『強化』した。それだけの事さ。 マジョルドモ:きょ、強化…? ネーロ:アズーロ、さん…? アズーロ:待たせたなガッティーナ、後はこの俺に任せろ。 ネーロ:(涙ぐんで)っ…子猫じゃないです…。 マジョルドモ:クソッ…!(拳銃を撃つ) 0:撃った弾がアズーロの脳天に直撃するが、傷一つつかずに跳ね返る。 マジョルドモ:!?じゅ、銃が効かない…!? アズーロ:はは、本当に素手で銃弾を弾き返せると思ったか?皮膚の硬度を『強化』しただけさ。 マジョルドモ:ば、化け物っ…。 アズーロ:ん?ああ、そう言えば自己紹介がまだだったか。特別サービスだ、俺のドッグタグをお見せしよう。 マジョルドモ:……!?そ、そんな…そんな馬鹿な…!生きているはずが…いや、生きていたとしても…こんなに若いはずが…!! アズーロ:自分で説明していただろう。勝手に生まれ変わりにされたのは些か不服だったが…。 アズーロ:俺こそがモーストロ、オズヴァルド・ ベックマンだ! マジョルドモ:馬鹿な、そんな馬鹿な!ありえない!! ネーロ:アズーロさんが…伝説の軍兵…? ヴィオラ:後で説明するから、今はプリンシペッサを安全な所へ! ネーロ:あ…はいっ! プリンシペッサ:ちょっとちょっとぉ、何がどぉなってるのぉ!? アズーロ:ご安心をプリンシペッサ。不義理なマジョルドモは、このモーストロが残さず喰らっておきましょう。…さぁ、覚悟はいいな、トラディトーレ? マジョルドモ:ひっ…!!(恐怖のあまり失神) アズーロ:ん? ヴィオラ:あ。 ネーロ:え? プリンシペッサ:あらぁ? 0:間 アズーロ:…おい、まだ何もしてないのに死んだぞ? ヴィオラ:いやただの失神だろ。まぁ、この歳じゃそのままポックリ逝きかねねーけど。 ネーロ:……。 プリンシペッサ:と、とにかく警察!警察を呼んで頂戴! ネーロ:あ、はい! 0:数十分後 ネーロ:えーっと…つまり、アズーロさんと同僚だった軍人さんも異能者で、その能力でこの時代に飛ばされたって事ですか? アズーロ:その通りだ。まぁ、信じがたい話だ。ジャッロとローザも知らんだろう。 ヴィオラ:時間を操る異能者…ドンがビアンコに探させてるが、依然情報が出て来ないんだとさ。 ネーロ:…そう、なんですね…。 アズーロ:もう気にしてないさ。この時代に来たのも、十年も前の事だからな。 ネーロ:じゅ、十年!? ヴィオラ:…単純にその異能者が気になるって話だ。ドンだって今更お前を元の時代に返す気なんてねーよ。 アズーロ:フッ、だろうな。 プリンシペッサ:は~ぁ、やっと取り調べが終わったわぁ…。んふぅ、でも探偵様方、本当にありがとうねぇ!貴方達は命の恩人だわぁ〜ん! アズーロ:いえ、これが仕事ですので。フッ(超絶ドヤ顔) ヴィオラ:うっぜぇ…。 ネーロ:それより、その…大丈夫ですか?自分の命を狙ってたのが、ずっと傍に居た人だったなんて…。 プリンシペッサ:あらぁ、んふぅ、大丈夫よぉ〜!側近なんてまた雇えばいいんだしぃ〜! ネーロ:そ、そうですか…。流石は貴族…。 ヴィオラ:まぁ、依頼も終わった事だし、俺達はこの辺で…。 ネーロ:あ、ちょ、ちょっと待って下さい! ヴィオラ:ん?どうしたネーロ。 ネーロ:その、着替えたいんですけど…。 アズーロ:はは、おいおいそんな必要無いだろう。 プリンシペッサ:そうよぉ〜!折角お似合いなんだしぃ、そのぐらいあげちゃうわぁ〜! ネーロ:嫌です!こんな高価なドレス、もし汚したりしたら立ち直れないです! ヴィオラ:あ、そっち? ネーロ:とにかく、着替えてきますから! プリンシペッサ:あぁちょっとぉ!もぉ、お待ちなさぁ〜い! 0:ネーロとプリンシペッサが部屋を出る。 ヴィオラ:(溜息)やれやれだな…。お疲れ、オズ。 アズーロ:…なぁ、ダン。 ヴィオラ:ん? アズーロ:まだ彼女に話してないのか? ヴィオラ:! アズーロ:お前の気持ちは分からなくもないが…心が読めるというだけで、幻滅するようなガッティーナじゃないと思うがな。 ヴィオラ:…でも、あいつは…。 アズーロ:傷付けたくないと言うなら、記憶も読めるとまで言わなければいい話じゃないか。 ヴィオラ:オズ、聞いてくれ。 アズーロ:そろそろドンが痺れを切らすぞ。何なら、あのヴェルデがまだ怒ってないのが不思議なくらいだ。 ヴィオラ:っ…。 アズーロ:俺も一緒に説明してフォローしてやるから、早めに話しておけ。 ヴィオラ:…まだ怒ってない、か…。そう、あの姉さんが怒らないんだよ。 アズーロ:ん? ヴィオラ:あの人が怒るのは…『上手くいく未来』が見えてるのに、俺達が踏み出そうとしない時だけだから…。 アズーロ:…!! ヴィオラ:分かってる、これでいいはずが無い。でも…怖いんだ。全部話した途端、あいつの顔が絶望に変わる気がして…!! アズーロ:ダン…。 ヴィオラ:なぁオズ、俺はどうすりゃいいのかな…。笑ってて欲しいんだよ、あいつには…。 アズーロ:……。そうだな。なら、まだその時じゃないのかも知れない。 ヴィオラ:……。 アズーロ:心配するな、お前が優しい奴なのは分かっているつもりだ。お前は俺とは違う。…俺は誰かを守れた事はあっても、誰かを救えた事は一度だって無いからな。 ヴィオラ:そんな事は…。 アズーロ:事実だ。お前のその異能は、絶望に陥った人間を救う為にある。きっとジュリエッタも救ってやれるさ。信じてるぞ、フェラテーロ。 ヴィオラ:っ……。 0:突然、ヴィオラがアズーロの横腹に蹴りを入れる。 アズーロ:(痛がって)いっ…!?き、急に何するんだ…。 ヴィオラ:…何となく。 アズーロ:な、何となく…!? ヴィオラ:(ボソッと)たまにマジでカッコいいのムカつくんだよ…。 アズーロ:あ?何だって? ヴィオラ:何でもねーよ! 0:ネーロとプリンシペッサが戻って来る。 ネーロ:ふぅ〜、やっぱりこの格好のが落ち着く…。 プリンシペッサ:本当に勿体無いわぁ…。 ネーロ:諦めて下さい。 ヴィオラ:おかえり、ネーロ。 ネーロ:はい!…あれ、どうしたんですかアズーロさん? アズーロ:…フッ、ちょっと獰猛(どうもう)なクッチョロに噛みつかれてな…。 ネーロ:はい? プリンシペッサ:子犬なんて飼ってないわよぉ? ヴィオラ:いつもの事なんで、お気になさらず。 アズーロ:……。そうだ、ガッティーナ。 ネーロ:子猫じゃないです。…何ですか? アズーロ:俺に似合う宝石は、教えてくれないのか? ネーロ:え? アズーロ:俺達の瞳を宝石に例えているそうじゃないか。俺は何の宝石なんだ? ヴィオラ:! プリンシペッサ:あらぁ、宝石がお好きなのぉ?んふぅ、言って下さればいくらでもあげるのにぃ〜! ネーロ:いえ、そういう訳には…。……。 アズーロ:ん? ネーロ:…て言うか、今何時だと思ってるんですか? アズーロ:んん? ネーロ:僕もう眠くて眠くて、そんなの考える余裕無いですよ…(欠伸)ほら、帰りましょう。 アズーロ:あ、おい、ネーロ!? ヴィオラ:…?(能力を使う) ネーロ:(心の声)…オズヴァルドさんはサファイアが似合いそうだとは思ってたけど、絶対調子に乗るから言いたくないよ…。 ネーロ:「忠実」とか「慈愛」って石言葉には合うけど、あれは一途な愛の象徴とされる石でもあるからなぁ…。 ネーロ:そんな事伝えたら、まるで僕がオズヴァルドさんに惚れてるみたいじゃんか。…まぁ、さっきのはちょっとカッコ良かったけど…。 ヴィオラ:(がーん)……!! アズーロ:はぁ…やれやれ、困ったガッティーナだ。…ん?どうしたヴィオラ? ヴィオラ:…俺、お前とは二度と口聞かない。 アズーロ:え!?な、何でっ…急にどうしたんだフェラテーロ! ヴィオラ:(何も言わずすたすたと歩き出す) アズーロ:お、おい!待ってくれって!おーい!! プリンシペッサ:お気をつけてねぇ〜!本当にありがとぉ〜! プリンシペッサ:…んふぅ、まさかあのモーストロが若いまま生きていたなんて…面白いわぁ〜ん! 0:―(ここからは朗読不要のおまけ。イタリア語の解説です)―――― 0: 0:ジョイエリ デラ トライセイ=トライセイの宝石達 0:ネーロ=黒 0:ヴィオラ=紫 0:アズーロ=青 0:プリンシペッサ=姫 0:マジョルドモ=執事 0:キャバリエレ=騎士 0:ガッティーナ=子猫ちゃん(口説き文句) 0:モースケ=ハエ 0:ジャッポーネ=日本 0:ミア・テゾーロ=私の宝物(口説き文句) 0:モーストロ=怪物 0:ヴェルデ=緑 0:フェラテーロ=兄弟 0:ロッソ=赤 0:ドン=ボス 0:パラディーゾ=天国 0:アリーヴェデルチ=さようなら 0:トラディトーレ=裏切者 0:エロエ=ヒーロー 0:ジャッロ=黄 0:ローザ=ピンク 0:ビアンコ=白 0:クッチョロ=子犬

マジョルドモ:お待ちしておりましたトライセイ様。今回の依頼をさせていただきましたマジョルドモでございます。 ヴィオラ:どうも。 ネーロ:こ、こんにちは…。 アズーロ:早速、案内を頼めるだろうか。 マジョルドモ:はい。こちらでございます。 アズーロ:(鼻歌) ヴィオラ:…やけに機嫌がいいな、アズーロ。 アズーロ:当然だろう。今回の依頼は、かの貴族のプリンシペッサの護衛! マジョルドモ:……。 アズーロ:さしずめ俺はその美しき姫を守る孤高のキャバリエレ、と言ったところかな? ヴィオラ:都合良く俺等の事忘れんな。 ネーロ:僕は不安で押し潰されそうです…。 アズーロ:はは、怯える顔も可愛らしいが、気負う事は無いさガッティーナ。何せ今日はこの俺が付いているのだからな! ネーロ:…僕、子猫じゃないです。って、どうかしましたか、マジョルドモさん? マジョルドモ:…いえ、何も。 ヴィオラ:まぁでも、そんなに気を張る事は無いよ。アズーロはこういう仕事は慣れてるし。 アズーロ:そうとも、俺の手にかかればプリンシペッサの命を狙う奴等などモースケ同然!残らず叩き潰してやるさ! ヴィオラ:…殺すなよ? アズーロ:フッ、ゼンショしよう。 ヴィオラ:おい。 ネーロ:ゼンショ?何ですかそれ? マジョルドモ:聞いた事がございます。確かジャッポーネの言葉で「後ろ向きに検討する」という意味だとか。 ヴィオラ:ちげーよ。そういう意味で使われがちだけど。 ネーロ:…でも、凄い自信ですね。流石は元軍人…僕もアズーロさんぐらい強かったらなぁ…。 アズーロ:フッ、惚れたかい?ガッティーナ。 ネーロ:子猫じゃないです。 マジョルドモ:さて皆様、こちらがプリンシペッサのお部屋です。ご無礼の無いようにだけお願いします。 アズーロ:フッ、ついにこの時が来たか…! アズーロ:さぁ、今宵は貴女の為にこの身を捧げよう!ミア・テゾーロ! プリンシペッサ:んふぅ〜、やぁっと来て下さったのねぇ〜!待ちわびたわぁ〜ん! 0:その場が凍りつく。 ヴィオラ:…あの、貴方がプリンシペッサ…? プリンシペッサ:ええそぉよぉ〜ん?んふぅ、凄腕の探偵様方が三人も来て下さるなんてぇ、あたくし感激ですわぁ〜ん! アズーロ:……。 ネーロ:えっと…つ、強そうですね! ヴィオラ:(吹き出す) アズーロ:(我に返って咳払い)…二人共、失礼だぞ。 プリンシペッサ:んふぅ、マジョルドモ、お客様にお茶を。 マジョルドモ:かしこまりました。どうぞ。 ネーロ:あ、どうも…。 アズーロ:ふむ、いただこう。 ヴィオラ:……。 マジョルドモ:それでは早速依頼の件でございますが、まずはこちらをご覧下さい。 ネーロ:これって…予告状!? ヴィオラ:『満月が天に達する時、麗しきプリンシペッサの命をいただきに参ります』…。 アズーロ:まるで怪盗みたいな奴だな…フッ、俺と気が合いそうだ。 ネーロ:合わないで下さい! ヴィオラ:要はどっちもキザ…。 マジョルドモ:今宵は満月。予告状の通りであれば、今宵プリンシペッサは…。 プリンシペッサ:絶対嫌よぉん!あたくし、この犯人を捕まえてみせるわぁ〜!探偵様方、協力して頂戴! ネーロ:…あの、警察には…? プリンシペッサ:あらご存知ないのぉ〜?んふぅ、警察なんかよりもぉ、貴方達の方がよっぽど頼りになるって評判なのよぉ〜? アズーロ:当然だな。この国の全ての軍事力をもってしても、俺は殺せんだろうさ。 ヴィオラ:否定できねぇのムカつく…。 マジョルドモ:加えて申し上げますと、一度警察から警護と称して家の財産を盗まれかけた事がございまして、警察はあまり信用出来ないのです。 プリンシペッサ:んもぉ、ムカつくったらないわぁ!でもぉ、モーストロの生まれ変わりと噂されてるアズーロ様が来て下さるなんて、んふぅ、あたくしはなぁ〜んて幸運なのかしらぁ〜! アズーロ:……。 ネーロ:モーストロ? ヴィオラ:昔、そう謳われた軍人が居たんだよ。 マジョルドモ:第二次世界大戦の頃、十八という若さで大砲や爆撃をものともせず、たった一人素手で戦車を百台以上破壊したという伝説の軍兵でございます。基地の爆破事故で死亡したとされておりますが…。 ネーロ:素手で戦車を百台!?本当にアズーロさんみたい!確かアズーロさんも、当時は凄かったって言ってましたもんね! アズーロ:ハハッ、惚れてくれるなガッティーナ。 ネーロ:子猫じゃないです。 プリンシペッサ:そこでぇ、んふぅ、貴方ぁ? ネーロ:え、僕? プリンシペッサ:そぉ!そこのアズーロ様だけじゃなくぅ、貴方みたいな方も今回指名させてもらったのよぉ〜ん! ネーロ:え、そ、そうなんですか? ヴィオラ:ああ、まぁ…。 アズーロ:それは俺も初耳だ。 ヴィオラ:…ヴェルデだよ。 アズーロ:ああ、なるほど。理解した。 ネーロ:で、でも…僕に出来る事なんて…。 プリンシペッサ:それがあるのよぉ〜ん!あたくしってばメディアにも顔を出してないものだからぁ、貴族の令嬢というだけで美女だと勘違いされがちなのよねぇ〜ん? マジョルドモ:予告状にも、「麗しき」と記載されております。しかし現実のプリンシペッサは、ご覧の通り…。 ネーロ:(上擦った声で)あ、あ〜、えっと…そうなんですねぇ〜…? ヴィオラ:…おい、ネーロが困ってるぞ。いつもの口説き文句で助けてやれよ。 アズーロ:己を理解しているとは、流石プリンシペッサは聡明だな! ヴィオラ:そっちじゃねーよ!てかそれフォローになってねーからな!? ネーロ:それで、その…僕は一体何をすれば…? プリンシペッサ:んふぅ、マジョルドモ! マジョルドモ:かしこまりました、プリンシペッサ。 ネーロ:え、わ、ちょっと!? アズーロ:!?おい、何処へ…! ヴィオラ:大丈夫だ。着替えさせるだけだろ? アズーロ:き、着替え? プリンシペッサ:ええ、丁度あたくしと歳が近くてぇ、線の細い可愛らしいお顔の方が欲しかったのぉ〜ん! プリンシペッサ:影武者をして下さればぁ、あたくしが殺される心配はなくなるでしょぉ〜ん? アズーロ:…な、なるほど…。(ここから小声)おいヴィオラ、これもネーロは知らされていないのか? ヴィオラ:…ヴェルデ曰く、『先にこの話をした未来』を見たら、めちゃくちゃゴネて面倒だったんだとさ。 アズーロ:あー…。 ネーロ:(遠くで)いぃ〜〜やぁ〜〜だぁ〜〜!!こんなの聞いてないぃ〜〜〜!! アズーロ:…やはり不幸の星の下からは逃れられない、か…。 ヴィオラ:それ絶対ネーロの前で言うなよ? マジョルドモ:プリンシペッサ、準備が整いましてございます。さ、ネーロ様。 ネーロ:うぅ〜…。 アズーロ:おぉ! ヴィオラ:…! プリンシペッサ:あらあらあらぁ〜ん!んふふぅ、とぉってもお似合いじゃないのぉ〜!貴方本当に男性なのぉ〜? プリンシペッサ:こぉんなに可愛らしいのに、んふぅ、勿体無いわぁ〜ん! ネーロ:何も嬉しくないです…もう帰りたい…。 アズーロ:ふふ、恥ずかしがる事はないさ。俺はずっとこの時を待っていたんだ…。 アズーロ:麗しきプリンシペッサ、今宵は俺が君のキャバリエレ。命に替えても――。 ネーロ:(低い声で遮る)あの本当にそういうのいいんで。 アズーロ:……。…守ってみせようじゃないか。 ネーロ:言い切ったよこの人…。 ヴィオラ:…でも、凄く似合ってるよ。綺麗だ。 ネーロ:きっ…!?(照れ隠し咳込み)とにかく、僕が身代わりになればいいんでしょ!? ネーロ:ヴィオラさんとアズーロさんも、何か作戦立てて下さいよ! アズーロ:……。 ヴィオラ:そうだな。じゃあ早速…アズーロ? アズーロ:…フッ、やるなフェラテーロ。 ヴィオラ:はぁ? アズーロ:で、作戦は? ヴィオラ:…あっちで話そう。 アズーロ:分かった。 0:部屋の隅に行った後、ヴィオラがアズーロにテレパシーを送る。 ヴィオラ:聞かれたら面倒だ。テレパシーで話すぞ。 アズーロ:…了解した。つまり犯人は、この屋敷の人間という事か。 ヴィオラ:流石、察しがいいな。 アズーロ:伊達に長年つるんでないだろ、フェラテーロ? ヴィオラ:(くすっ)…そうだな。 マジョルドモ:(心の声)…?おかしい。この部屋には防犯の為にいくつもの盗聴器を仕掛けていると言うのに、あの二人から全く声が聞こえない…? ヴィオラ:…よし、まず犯人だが―― ネーロ:(心の声)わー!やっぱり光ると遠い所からでもよく見えるもんだなー! ネーロ:本当にダンさんの目は綺麗でうっとりしちゃうよ〜! ヴィオラ:っ〜〜〜!! アズーロ:ん?どうした? ヴィオラ:な、何でもないっ…! 0:作戦会議を終えた二人が戻って来る。 プリンシペッサ:あらぁ、んふぅ、終わったかしらぁ〜? マジョルドモ:(心の声)結局あの二人がどうするのか、聞き取れずじまいだった…。 ネーロ:とりあえず、僕はこのままこの部屋に居ればいいんですよね? ヴィオラ:ああ、この部屋は俺とマジョルドモさんが残る。そしてプリンシペッサは、アズーロと共に隣の部屋で待機して下さい。 マジョルドモ:なっ…!? ネーロ:えっ!? プリンシペッサ:んふぅ、分かったわぁ〜ん! ネーロ:うぅ…でもプリンシペッサを守る為なら、それが一番かぁ…。アーメン…。 マジョルドモ:お、お待ち下さい!何故私まで影武者側に…!? アズーロ:無論、犯人の目を誤魔化す為だ。側近の貴方がプリンシペッサの側に居ないのはおかしいだろ? マジョルドモ:っ……。 ネーロ:あの、大丈夫ですよ!アズーロさんは本当に強い人なんで! アズーロ:(ドヤ顔)フッ…。 マジョルドモ:……。 ヴィオラ:頼むぞ、アズーロ。 アズーロ:ああ、任せろヴィオラ。 0:プリンシペッサとアズーロが部屋を出る。 ネーロ:…ヴィオラさんって、アズーロさんと仲良いですよね。 ヴィオラ:やめてくれ、あの色ボケと同類だと思われたくない。 ネーロ:でも、信頼し合ってる感じがします。 ヴィオラ:…まぁ、付き合いは長いからな。 ネーロ:ロッソさんよりもですか? ヴィオラ:ドンはまぁ…居ない時多いし。 ネーロ:あー、確かに…。 マジョルドモ:あの…。 ネーロ:あ、はい!あっすいません、もっと貴族っぽい振る舞いした方がいいですか!? マジョルドモ:いえ、その…お身体が優れない、という事はございませんか? ネーロ:え? ヴィオラ:……。 マジョルドモ:お出しした茶菓子に、ネーロ様もヴィオラ様も手をつけられていなかったようなので…。 ネーロ:あー…すいません。緊張で喉を通りそうになくて…。 ヴィオラ:悪いが、紅茶と甘いものは苦手なんだ。 ネーロ:え? マジョルドモ:…左様でございますか。では、こちらは片付けさせていただきます。 ネーロ:え、もうすぐ予告の時間ですよ!?一人になるのは危ないですよ! マジョルドモ:プリンシペッサは、お部屋に食べ物の匂いが残るのを嫌うお方ですので。私は一度失礼します。 0:マジョルドモが部屋を出て、場面はアズーロとプリンシペッサの居る部屋へ。 アズーロ:さ、足元にお気をつけて。 プリンシペッサ:んふぅ、ありがとぉ。…ね〜ぇ、一つ聞いてもいいかしらぁ〜? アズーロ:答えられる範囲であれば、何なりと。 プリンシペッサ:貴方達はぁ、どぉしてコードネームで呼び合ってるのぉ? アズーロ:! プリンシペッサ:マフィア組織じゃあるまいしぃ、普通そんなものはつけないでしょぉ〜?中には犯罪者も居るって聞いたけどぉ。 アズーロ:…ええ、事実です。 プリンシペッサ:あらぁ、じゃあやっぱりそれが理由なのぉ〜? アズーロ:…そうですね。戦場だから合法のように扱われますが、俺も何百と人を殺した。 プリンシペッサ:んふぅ、まるで戦争を知っているかのような口ぶりねぇ〜?レバノン出兵の頃はまだ生まれてもいなかったんじゃなぁ〜い? アズーロ:…失礼、口が過ぎました。 0:場面は再びプリンシペッサの部屋。 ネーロ:…マジョルドモさん、戻って来ませんね。もう時間なのに…。 ヴィオラ:……。 ネーロ:…そう言えばヴィオラさん、紅茶や甘いのダメでしたっけ? ヴィオラ:…いいや。 ネーロ:やっぱり。何でそんな嘘を…? ヴィオラ:…一応、解毒剤を持って来てはいたけど、本当に使う必要無さそうで安心したよ。 ネーロ:え? ヴィオラ:いつも不幸な目に遭うけど、今回は幸運だったなネーロ。 ネーロ:ヴィオラさん?さっきから何の話を…。 0:部屋のドアが開く。 ネーロ:あ、良かった!おかえりなさいマジョルドモさ……え、誰…? 0:ドアを開けた仮面の人物が、アサルトライフルを二人に向ける ヴィオラ:っ!伏せろ! ネーロ:わっ…!? 0:仮面の人物がアサルトライフルを掃射し、ヴィオラが間一髪でネーロを押し倒す。 ヴィオラ:っ…派手なお出ましだな…。 ネーロ:っ……(怯えて震えている) 0:銃声を聞いてアズーロが駆け付けて来る。 アズーロ:二人共、無事か!? ヴィオラ:アズーロ! 0:仮面の人物が即座に銃口をアズーロに向けて放つが、全て素手で弾かれる。 アズーロ:そんなオモチャが、この俺に効くと思ったか! ヴィオラ:…一先ずはあいつに任せるか。ネーロ、怪我は…。 ネーロ:(真っ青になって息を荒げている) ヴィオラ:え…あ、ご、ごめん!すぐにどくからっ…。 ネーロ:(息を整えようと必死) ヴィオラ:……。 プリンシペッサ:ちょっとちょっとぉ〜!?なぁんの騒ぎかしらぁ〜!? ヴィオラ:えっ…。 アズーロ:!? プリンシペッサ:アズーロ様ぁ、この変なお面の方はどなたなのぉ!? ネーロ:…え、プリンシペッサ…? ヴィオラ:何で出て来んだよ…。 アズーロ:やれやれ…。 プリンシペッサ:…貴方、マジョルドモ? ネーロ:え…!? プリンシペッサ:マジョルドモでしょぉ!?どぉして貴方がそんな格好をしているのぉ!?どぉしてそんな物騒なものを持ってるのぉ!! マジョルドモ:……。 ネーロ:え、これ、どういう…。 ヴィオラ:(呆れた溜息) アズーロ:…仕方が無いな。もう少し楽しませてもらう予定だったが…タネ明かしだ! 0:アズーロが一瞬で仮面の人物に近づき、仮面を破壊する。 マジョルドモ:っ!! ネーロ:あっ…! ヴィオラ:……。 プリンシペッサ:…やっぱり。マジョルドモ、これはどういう事なのぉ!? マジョルドモ:っ……。 ヴィオラ:俺達を雇ってプリンシペッサを守らせようとしたのも、ネーロに影武者をさせたのも、全部こいつの作戦の内だったんだ。 アズーロ:ネーロを狙うフリをして、流れ弾が運悪くプリンシペッサに命中し死亡…そんな不慮の事故を装おうとは、随分と手の込んだ計画だな。 ネーロ:そ、そんな…。 プリンシペッサ:マジョルドモぉ!貴方、一体どうして…! マジョルドモ:…しい。 プリンシペッサ:えぇ? マジョルドモ:この家の財産が欲しい!それだけですよ!(銃口を向ける) アズーロ:させるかっ!(一瞬でアサルトライフルを握り潰す) マジョルドモ:っ!?…ふふ、流石はモーストロの生まれ変わり…。素手で銃弾を弾き返すだけでなく、銃器を握力で破壊する程の怪力とは…。 アズーロ:言ったはずだ。この国の軍事力全てをもってしても、この俺は倒せんとな。 マジョルドモ:そうでございましたね…。しかし、そうカッコつけているのも今の内…。 アズーロ:何?…ぐっ…!?(突然苦しみ始める) ヴィオラ:! ネーロ:え、アズーロさん…!? アズーロ:(吐血)が、はっ…! プリンシペッサ:きゃぁ〜!! マジョルドモ:あの茶菓子を食べたのが貴方だけだったのは誤算でしたが、最大戦力が消えたと思う事にいたしましょう。 アズーロ:ぐぅっ……。(倒れる) ネーロ:アズーロさんっ!! ヴィオラ:……。 マジョルドモ:やれやれ…お陰で作戦が台無しです。こうも容易く見抜かれるとは…まるで心の内でも読まれたようだ。 ヴィオラ:っ…。 プリンシペッサ:そんな…何故、何故なのマジョルドモぉ! マジョルドモ:言ったでしょう、財産ですよ。貴方の家の財産が手に入れば、私は一生遊んで暮らせる! ネーロ:っ! マジョルドモ:ロクでもない人生を過ごしてきましたが、貴方のお陰で楽しい老後が過ごせそうだ。それだけは感謝しますよプリンシペッサ。 ネーロ:…ふざけるな。 ヴィオラ:ネーロ? ネーロ:ふざけるな!そんな事の為に人を、アズーロさんを殺してっ…ロクでもないのはお前だっ!! ヴィオラ:ネーロ、よせ! マジョルドモ:…よく吠える口だ。先に貴方をパラディーゾへ送って差し上げましょうか…。(拳銃を取り出す) ネーロ:っ…! ヴィオラ:こいつ、まだ銃を持ってたのか…! プリンシペッサ:おやめなさいマジョルドモぉ! マジョルドモ:アリーヴェデルチ。…っ!? ネーロ:え? プリンシペッサ:あらぁ…!? アズーロ:…そこまでだ、トラディトーレ。 マジョルドモ:なっ…!? ヴィオラ:(溜息)ったく…遅ぇっての、アズーロ。 アズーロ:エロエは遅れてやって来る、そういうものだろう? マジョルドモ:き、貴様…何故生きてっ…まさか抗体を…!? アズーロ:いいや、毒は効いたさ。だから毒の分解機能と、身体の再生機能を『強化』した。それだけの事さ。 マジョルドモ:きょ、強化…? ネーロ:アズーロ、さん…? アズーロ:待たせたなガッティーナ、後はこの俺に任せろ。 ネーロ:(涙ぐんで)っ…子猫じゃないです…。 マジョルドモ:クソッ…!(拳銃を撃つ) 0:撃った弾がアズーロの脳天に直撃するが、傷一つつかずに跳ね返る。 マジョルドモ:!?じゅ、銃が効かない…!? アズーロ:はは、本当に素手で銃弾を弾き返せると思ったか?皮膚の硬度を『強化』しただけさ。 マジョルドモ:ば、化け物っ…。 アズーロ:ん?ああ、そう言えば自己紹介がまだだったか。特別サービスだ、俺のドッグタグをお見せしよう。 マジョルドモ:……!?そ、そんな…そんな馬鹿な…!生きているはずが…いや、生きていたとしても…こんなに若いはずが…!! アズーロ:自分で説明していただろう。勝手に生まれ変わりにされたのは些か不服だったが…。 アズーロ:俺こそがモーストロ、オズヴァルド・ ベックマンだ! マジョルドモ:馬鹿な、そんな馬鹿な!ありえない!! ネーロ:アズーロさんが…伝説の軍兵…? ヴィオラ:後で説明するから、今はプリンシペッサを安全な所へ! ネーロ:あ…はいっ! プリンシペッサ:ちょっとちょっとぉ、何がどぉなってるのぉ!? アズーロ:ご安心をプリンシペッサ。不義理なマジョルドモは、このモーストロが残さず喰らっておきましょう。…さぁ、覚悟はいいな、トラディトーレ? マジョルドモ:ひっ…!!(恐怖のあまり失神) アズーロ:ん? ヴィオラ:あ。 ネーロ:え? プリンシペッサ:あらぁ? 0:間 アズーロ:…おい、まだ何もしてないのに死んだぞ? ヴィオラ:いやただの失神だろ。まぁ、この歳じゃそのままポックリ逝きかねねーけど。 ネーロ:……。 プリンシペッサ:と、とにかく警察!警察を呼んで頂戴! ネーロ:あ、はい! 0:数十分後 ネーロ:えーっと…つまり、アズーロさんと同僚だった軍人さんも異能者で、その能力でこの時代に飛ばされたって事ですか? アズーロ:その通りだ。まぁ、信じがたい話だ。ジャッロとローザも知らんだろう。 ヴィオラ:時間を操る異能者…ドンがビアンコに探させてるが、依然情報が出て来ないんだとさ。 ネーロ:…そう、なんですね…。 アズーロ:もう気にしてないさ。この時代に来たのも、十年も前の事だからな。 ネーロ:じゅ、十年!? ヴィオラ:…単純にその異能者が気になるって話だ。ドンだって今更お前を元の時代に返す気なんてねーよ。 アズーロ:フッ、だろうな。 プリンシペッサ:は~ぁ、やっと取り調べが終わったわぁ…。んふぅ、でも探偵様方、本当にありがとうねぇ!貴方達は命の恩人だわぁ〜ん! アズーロ:いえ、これが仕事ですので。フッ(超絶ドヤ顔) ヴィオラ:うっぜぇ…。 ネーロ:それより、その…大丈夫ですか?自分の命を狙ってたのが、ずっと傍に居た人だったなんて…。 プリンシペッサ:あらぁ、んふぅ、大丈夫よぉ〜!側近なんてまた雇えばいいんだしぃ〜! ネーロ:そ、そうですか…。流石は貴族…。 ヴィオラ:まぁ、依頼も終わった事だし、俺達はこの辺で…。 ネーロ:あ、ちょ、ちょっと待って下さい! ヴィオラ:ん?どうしたネーロ。 ネーロ:その、着替えたいんですけど…。 アズーロ:はは、おいおいそんな必要無いだろう。 プリンシペッサ:そうよぉ〜!折角お似合いなんだしぃ、そのぐらいあげちゃうわぁ〜! ネーロ:嫌です!こんな高価なドレス、もし汚したりしたら立ち直れないです! ヴィオラ:あ、そっち? ネーロ:とにかく、着替えてきますから! プリンシペッサ:あぁちょっとぉ!もぉ、お待ちなさぁ〜い! 0:ネーロとプリンシペッサが部屋を出る。 ヴィオラ:(溜息)やれやれだな…。お疲れ、オズ。 アズーロ:…なぁ、ダン。 ヴィオラ:ん? アズーロ:まだ彼女に話してないのか? ヴィオラ:! アズーロ:お前の気持ちは分からなくもないが…心が読めるというだけで、幻滅するようなガッティーナじゃないと思うがな。 ヴィオラ:…でも、あいつは…。 アズーロ:傷付けたくないと言うなら、記憶も読めるとまで言わなければいい話じゃないか。 ヴィオラ:オズ、聞いてくれ。 アズーロ:そろそろドンが痺れを切らすぞ。何なら、あのヴェルデがまだ怒ってないのが不思議なくらいだ。 ヴィオラ:っ…。 アズーロ:俺も一緒に説明してフォローしてやるから、早めに話しておけ。 ヴィオラ:…まだ怒ってない、か…。そう、あの姉さんが怒らないんだよ。 アズーロ:ん? ヴィオラ:あの人が怒るのは…『上手くいく未来』が見えてるのに、俺達が踏み出そうとしない時だけだから…。 アズーロ:…!! ヴィオラ:分かってる、これでいいはずが無い。でも…怖いんだ。全部話した途端、あいつの顔が絶望に変わる気がして…!! アズーロ:ダン…。 ヴィオラ:なぁオズ、俺はどうすりゃいいのかな…。笑ってて欲しいんだよ、あいつには…。 アズーロ:……。そうだな。なら、まだその時じゃないのかも知れない。 ヴィオラ:……。 アズーロ:心配するな、お前が優しい奴なのは分かっているつもりだ。お前は俺とは違う。…俺は誰かを守れた事はあっても、誰かを救えた事は一度だって無いからな。 ヴィオラ:そんな事は…。 アズーロ:事実だ。お前のその異能は、絶望に陥った人間を救う為にある。きっとジュリエッタも救ってやれるさ。信じてるぞ、フェラテーロ。 ヴィオラ:っ……。 0:突然、ヴィオラがアズーロの横腹に蹴りを入れる。 アズーロ:(痛がって)いっ…!?き、急に何するんだ…。 ヴィオラ:…何となく。 アズーロ:な、何となく…!? ヴィオラ:(ボソッと)たまにマジでカッコいいのムカつくんだよ…。 アズーロ:あ?何だって? ヴィオラ:何でもねーよ! 0:ネーロとプリンシペッサが戻って来る。 ネーロ:ふぅ〜、やっぱりこの格好のが落ち着く…。 プリンシペッサ:本当に勿体無いわぁ…。 ネーロ:諦めて下さい。 ヴィオラ:おかえり、ネーロ。 ネーロ:はい!…あれ、どうしたんですかアズーロさん? アズーロ:…フッ、ちょっと獰猛(どうもう)なクッチョロに噛みつかれてな…。 ネーロ:はい? プリンシペッサ:子犬なんて飼ってないわよぉ? ヴィオラ:いつもの事なんで、お気になさらず。 アズーロ:……。そうだ、ガッティーナ。 ネーロ:子猫じゃないです。…何ですか? アズーロ:俺に似合う宝石は、教えてくれないのか? ネーロ:え? アズーロ:俺達の瞳を宝石に例えているそうじゃないか。俺は何の宝石なんだ? ヴィオラ:! プリンシペッサ:あらぁ、宝石がお好きなのぉ?んふぅ、言って下さればいくらでもあげるのにぃ〜! ネーロ:いえ、そういう訳には…。……。 アズーロ:ん? ネーロ:…て言うか、今何時だと思ってるんですか? アズーロ:んん? ネーロ:僕もう眠くて眠くて、そんなの考える余裕無いですよ…(欠伸)ほら、帰りましょう。 アズーロ:あ、おい、ネーロ!? ヴィオラ:…?(能力を使う) ネーロ:(心の声)…オズヴァルドさんはサファイアが似合いそうだとは思ってたけど、絶対調子に乗るから言いたくないよ…。 ネーロ:「忠実」とか「慈愛」って石言葉には合うけど、あれは一途な愛の象徴とされる石でもあるからなぁ…。 ネーロ:そんな事伝えたら、まるで僕がオズヴァルドさんに惚れてるみたいじゃんか。…まぁ、さっきのはちょっとカッコ良かったけど…。 ヴィオラ:(がーん)……!! アズーロ:はぁ…やれやれ、困ったガッティーナだ。…ん?どうしたヴィオラ? ヴィオラ:…俺、お前とは二度と口聞かない。 アズーロ:え!?な、何でっ…急にどうしたんだフェラテーロ! ヴィオラ:(何も言わずすたすたと歩き出す) アズーロ:お、おい!待ってくれって!おーい!! プリンシペッサ:お気をつけてねぇ〜!本当にありがとぉ〜! プリンシペッサ:…んふぅ、まさかあのモーストロが若いまま生きていたなんて…面白いわぁ〜ん! 0:―(ここからは朗読不要のおまけ。イタリア語の解説です)―――― 0: 0:ジョイエリ デラ トライセイ=トライセイの宝石達 0:ネーロ=黒 0:ヴィオラ=紫 0:アズーロ=青 0:プリンシペッサ=姫 0:マジョルドモ=執事 0:キャバリエレ=騎士 0:ガッティーナ=子猫ちゃん(口説き文句) 0:モースケ=ハエ 0:ジャッポーネ=日本 0:ミア・テゾーロ=私の宝物(口説き文句) 0:モーストロ=怪物 0:ヴェルデ=緑 0:フェラテーロ=兄弟 0:ロッソ=赤 0:ドン=ボス 0:パラディーゾ=天国 0:アリーヴェデルチ=さようなら 0:トラディトーレ=裏切者 0:エロエ=ヒーロー 0:ジャッロ=黄 0:ローザ=ピンク 0:ビアンコ=白 0:クッチョロ=子犬