台本概要
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タイトル | 今年の花火が一番綺麗だった。 |
---|---|
作者名 | 春院白羅 |
ジャンル | ラブストーリー |
演者人数 | 3人用台本(男1、女2) ※兼役あり |
時間 | 30 分 |
台本使用規定 | 台本説明欄参照 |
説明 |
声劇名︰今年の花火が一番綺麗だった。 内容:夏祭り、花火を見ながら告白する。 ジャンル:恋愛、失恋、両片思い 男女比︰男1女2または男1女3 時間︰テストをしていないため不明。一旦30分とさせていただきます。 規約: 台本を作るのは初めてのことなので規約は変わることがございます。 上演前に必ずご確認ください。 こちらは非商用のみ使用可能です。 商用利用はトラブル防止のため禁止させていただきます。 演者以外の目に触れる場合は、 作品名 作者名 作品のURL を表記をお願いいたします。 報告はいりません。 著作権は手放していません。 私用目的以外のみだりな複製・配布・翻案・改変・自作発言など著作権侵害にあたる行為はおやめください。 常識の範囲でご利用ください。 上演時に多少の語尾の変更、息アドリブの追加は問題ありませんが、台本の大筋を変える改変や雰囲気を損なう発言は禁止させていただきます。 212 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
なつみ | 女 | 82 | 夏美。女子。高校生。 せいやが引っ越しするからその前に告白しようと考えている。 |
せいや | 男 | 49 | 征也。男子。高校生。 病気で引っ越す。けど、本人の意思で病気なのは家族と教師ぐらいしか知らない。 |
お祖母ちゃん | 女 | 16 | なつみのお祖母ちゃん。 魔法の口紅を所持している。ただの口紅。 部長と兼役。分けてもいい。 |
部長 | 女 | 16 | 女子バスケ部の部長。 お祖母ちゃんと兼役。分けてもいい。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
お祖母ちゃん:(幼少期のなつみに話しかけている。)
お祖母ちゃん:あら、なつみちゃんまた覗きに来たの?
お祖母ちゃん:ふふふ。
お祖母ちゃん:なつみちゃんにお化粧はまだ早いかなぁ。
お祖母ちゃん:ん?これが気になるの?
お祖母ちゃん:これはねぇ、魔法の口紅なんだよ。
お祖母ちゃん:魔法の口紅を塗ると勇気が出るの。
お祖母ちゃん:なつみちゃんが大きくなって勇気がほしい時、お祖母ちゃんが塗ってあげるね。
お祖母ちゃん:勇気が出ますようにって。
0:(夏休み。バスケの部活練習中)
なつみ:よっしゃ!!フリースローノルマノーミス!!
なつみ:はぁー。
なつみ:集中しすぎてまじで暑っ。
なつみ:部長ー私外で休憩してきていいですかー?
部長:ノルマはー?
なつみ:終わりましたー!
部長:お、いち抜けじゃん。
部長:じゃあ、いいよ。
部長:全員がノルマ終わったら次練習試合するから。
部長:そのタイミングで声かけるわ。
なつみ:了解でーす。
0:(なつみ外に出る)
なつみ:体育館まじあっち~。
なつみ:熱中症になるわ。
なつみ:はぁ~外涼しい~。
せいや:なにサボってんだよ。
せいや:(冷たいペットボトルをなつみに当てる。)
なつみ:つめたっ!?
せいや:驚きすぎだろ。
なつみ:え?せいや!?
せいや:ほら。これやるよ。
せいや:倒れる前に飲んどけ。
なつみ:やったー。ありがとう。
なつみ:(ドリンクを飲む)
なつみ:生き返る~
なつみ:バスケに熱入りすぎて倒れる寸前だったから助かったわー。
せいや:そりゃよかった。
せいや:俺も久々の部活で倒れるかと思ったわ。
なつみ:体力お化けのせいやが??
せいや:うるせー。
せいや:久々だと俺だって疲れるんだよ。
なつみ:まぁ、引っ越しの準備で夏休み部活来てなかったもんね。
なつみ:てか、今日部活来てていいの?
なつみ:引っ越し明日でしょ?
せいや:だからだよ。
せいや:今日が部活に顔を出せる最後だから来たんだよ。
せいや:そしたらみんな最後なら1on1(わんおんわん)やるぞーって。
せいや:俺体1つしかないつーのに。
せいや:途中で、皆相手するとか無理に決まってるだろーって逃げてきた。
なつみ:あははは。
なつみ:それはキツすぎだわ。
せいや:もう疲れたからさっさと家かえって休みてー。
なつみ:ん?男バスで送別会みたいなのしないの?
せいや:しないなぁー。
せいや:まぁ、今日の1on1が送別会みたいなもんなんじゃね?
せいや:送別会にしてはキツすぎるけどな(笑)
なつみ:…ふーん。
なつみ:しないんだ…。
なつみ:じゃあーこの後は家帰るだけ?
せいや:まぁ、他に用事ないし帰るけど。
せいや:どうした?
なつみ:じゃ、じゃあさぁ!
なつみ:今夜、夏祭り行かない!?
せいや:…
せいや:…
せいや:うん。
せいや:いいな夏祭り。
せいや:ここの夏祭り行けるの最後だし。
せいや:行くか。2人で。
なつみ:ほんと!?え?まじで?嘘じゃなくて?
せいや:ほんとだよ。
せいや:そんな驚くことか?
なつみ:やったぁぁぁああああ!!
なつみ:今さら撤回とかなしだからね!
なつみ:言質はとったからね!!
なつみ:覚悟しときなよ!!
せいや:はいはい。
せいや:ってなんで夏祭りいくのに俺脅されてるんだよ。
なつみ:えへへへ。
なつみ:つい嬉しくて。
せいや:嬉しくなると脅すのかよ…
部長:なつみーーーー!!
部長:練習試合するよー!!
部長:…あ、ごめん。邪魔した?
なつみ:え?あ!?いや!!邪魔とかじゃないです!!まじで!!
部長:そっかそっか。
部長:皆には5分休憩するように言っとくからごゆっくりどうぞ。
なつみ:(言葉をさえぎる。言っとくからぐらいに被せて。)
なつみ:部長!?本当に違うんですって!?そーゆーの辞めてください!!
部長:えーそんな照れなくてもいいのに~
なつみ:照れとかじゃないですから!!
なつみ:ほら、練習試合するんですよね!?!?
なつみ:みんな待たせてるんですよね!!
なつみ:早く帰りますよ!!
部長:まー待たせるのも悪いか。
なつみ:せいや、また後で連絡するから。
せいや:わかった。
なつみ:ほーら、部長行きますよ!!
部長:はいはい。
0:(せいや退場)
なつみ:部長は本当に私のことからかいすぎです!!
なつみ:反省してください。
部長:ごめんね。
部長:期待のエースで顔も可愛くて声も私好み、なーんてきたらついつい可愛がりたくなっちゃうんだよね。
なつみ:好きな子をいじめる小学生男子ですか?
なつみ:まぁ、褒められるのは悪い気はしないので今回は許しますけど。
部長:ありがとう。
部長:そういや、せいやくん今日は学校来てたんだね。
部長:引っ越し明日じゃなかったっけ?
なつみ:明日です。
なつみ:最終日だから部活に顔出しに来たって言ってました。。
部長:ふーん。
部長:実はなつみに会いに来たんじゃない?
なつみ:そうやって、すぐからかわないでくださいよ!!
部長:えーこれは結構真面目に言ってるんだけどなぁ~。
なつみ:そんなわけないじゃないですか。
部長:そうかなぁ~。
部長:あ!!せっかく直接会えたんだから誘ったの?夏祭り。
部長:最近ケータイ握りしめて悩んでたじゃん。
なつみ:そう!!それ!!部長聞いてください!!
なつみ:夏祭り一緒に行ってくれるって!!
部長:まじ!!良かったじゃん!!
なつみ:今日はフリースローノルマノーミスで決められたし、久々にせいやに会えたし、夏祭りに行く約束も出来たし、今日の私はウルトララッキーガールなんです!!
なつみ:だから、私決めました!!
なつみ:今日の夏祭りでせいやに告白しようと思います!!
部長:よし!!当たって砕けてこい!!
なつみ:はい!!…って砕けるの前提ですか!?
部長:ウソウソ。
部長:こんな可愛い後輩を振るやつなんてどこにもいないよ。
部長:自信持ってけ!!
なつみ:部長はすぐテキトーなことを言うんですから…。
なつみ:まぁ、ありがとうございます。
部長:うん、頑張ってこい。
部長:さぁ、切り替えて部活やるよ。
なつみ:はい!
0:(部活が終わり、なつみの自宅へ。)
なつみ:ただいまーーー!!お祖母ちゃんー!!お祖母ちゃんいるー??
お祖母ちゃん:なつみちゃんお帰りなさい。
お祖母ちゃん:どうしたの?そんな大きな声を出して。
なつみ:お祖母ちゃん。
なつみ:今日ね、夏祭り行こうと思ってるの!!
お祖母ちゃん:そうかいそうかい。
お祖母ちゃん:そりゃー楽しんでおいで。
なつみ:でね、お祖母ちゃんに浴衣着せてほしいの。
お祖母ちゃん:いいよ。
お祖母ちゃん:じゃあ、お祖母ちゃんのお部屋に浴衣何着か出しとくから、その間に汗を流しておいで。
お祖母ちゃん:風邪引かないように髪はちゃんと乾かしてからお部屋にくるんだよ。
なつみ:分かった。
なつみ:ありがとうお祖母ちゃん!!
0:(お風呂後)
なつみ:お祖母ちゃんー!!上がったよー!!
なつみ:髪もちゃんと乾かしたよ。
お祖母ちゃん:あらあら。
お祖母ちゃん:ずいぶん早かったね。
お祖母ちゃん:浴衣はもう用意出来てるよ。
なつみ:お祖母ちゃんありがとう。
お祖母ちゃん:真っ赤な牡丹、青の撫子、紫の蝶々、黄色い向日葵、一応お祖母ちゃんが持ってる浴衣で色んな色の浴衣を出したけど気になるのはあるかい?
なつみ:これ。これがいい。
なつみ:黄色い向日葵。
お祖母ちゃん:うふふ。
お祖母ちゃん:そうかいそうかい。
お祖母ちゃん:じゃあ、帯は淡い緑にしようかね。
お祖母ちゃん:こっちおいで。
お祖母ちゃん:なつみちゃんは元気な美人さんやから向日葵がよく似合うね。
なつみ:えへへ。
なつみ:そうかな?
なつみ:なんかね、直感でこれがいいなって。
なつみ:私らしいなって思ったの。
お祖母ちゃん:そうだね。
お祖母ちゃん:なつみちゃんは昔から向日葵みたいに笑う子だから、向日葵は本当になつみちゃんらしい花やね。
お祖母ちゃん:帯は可愛く蝶々結びにしとくな。
お祖母ちゃん:浴衣着せるのはあと少しで終わるけど、鞄や靴はどうする?
お祖母ちゃん:お祖母ちゃんの貸そうか?
なつみ:え?いいの?
お祖母ちゃん:いいよ。
お祖母ちゃん:下駄は玄関の棚にあるはずだよ。
お祖母ちゃん:鞄は、携帯電話やお財布がたくさん入るようにかご巾着を出そうか。
お祖母ちゃん:ついでに髪飾りも出してあげる。
お祖母ちゃん:その浴衣似合う可愛い髪飾りがあるのよ。
なつみ:ありがとうお祖母ちゃん!!
なつみ:せめて、髪は自分で結ぶね。
お祖母ちゃん:なら、あそこの化粧台使っていいよ。
お祖母ちゃん:ほら、浴衣は着せれたよ。
お祖母ちゃん:お祖母ちゃんは髪飾りとかご巾着を出すからその間に結んでおいで。
なつみ:うん。
なつみ:久々にお祖母ちゃんの化粧台使うなぁ~。
お祖母ちゃん:なつみちゃんが小さい頃はよく、お祖母ちゃんが化粧するのを横で真似してたね。
お祖母ちゃん:懐かしいねぇ~。
なつみ:そんなことしてたの私?
なつみ:あーでも、あれは覚えてるよ!!
なつみ:魔法の口紅!!
なつみ:勇気が出る魔法よ口紅!!
お祖母ちゃん:ふふ。
お祖母ちゃん:なつみちゃん小さい頃、魔法の口紅塗りたいってよく言ってたもんね。
お祖母ちゃん:はい。
お祖母ちゃん:かご巾着と髪飾り。
なつみ:ありがとう。
なつみ:髪飾りさしてもらってもいい?
お祖母ちゃん:いいよ。
お祖母ちゃん:痛くない?
なつみ:大丈夫。
お祖母ちゃん:なつみちゃんちょっといいかい。
なつみ:ん?なに?髪型おかしい?
お祖母ちゃん:お祖母ちゃんが最後の仕上げをしてあげる。
なつみ:お祖母ちゃん、その口紅…。
お祖母ちゃん:ほら、これで勇気が出るよ。
0:(夏祭りに行く時間)
なつみ:いってきまーす。
せいや:ごほん。(咳)
なつみ:きゃ!?…え?せいや?なんでここにいるの?
せいや:どっかのバカが連絡するとかいいつつなにも連絡してこなかったからだよ。
なつみ:あ!!ごめん。忘れてた。
なつみ:でも、連絡してくれればよかったのに…。
せいや:ケータイ見てみろ。
なつみ:ん?……あ…大変申し訳ございませんでした。
なつみ:部活のときマナーモードにしてそのままでした。
せいや:……。
なつみ:………
なつみ:まじでごめん
なつみ:代わりになんか屋台でおごるから!
なつみ:たこ焼き?焼きそば?
せいや:たこyごほっ(咳)…あ、いや、食べ物はいいや。
せいや:久々の部活でめっちゃ腹減って家で晩飯食ったから。
せいや:射的やるからそれ奢れ。
なつみ:えーせいや食べてきたの?
なつみ:屋台の食べ物、晩御飯にするつもりだったのに。
せいや:俺のこと気にせず、なつみは好きなもの食えばいいだろ。
せいや:ほら、とりあえず射的やりに行くぞ。
なつみ:はーい。
なつみ:屋台楽しみだなぁ~。
なつみ:たこ焼きにお好み焼き、フランクフルト…
なつみ:あー綿菓子にベビーカステラも食べなきゃな
せいや:食べ物ばっかかよ。
せいや:せっかくなつみの婆さんが着せてくれたんだろ、それ。
せいや:食べ過ぎて腹膨れたら苦しくなるぞ。
なつみ:大丈夫!!屋台のために部活でめっちゃ動いてきたから!!
なつみ:お腹すきまくりなんだよね。
せいや:ん?…大丈夫なのかそれ?
なつみ:大丈夫大丈夫!!
なつみ:あ、りんご飴!!せいや行くよ!!
せいや:あ、おい!!
せいや:待てよ!
0:(せいや回想食事後母さんとの会話)
せいや:ごほごほっ(咳)
せいや:…ん。(大量の薬を飲む)
せいや:はぁ。…にが。
せいや:…あー、母さん泣くなって。
せいや:母さんのせいじゃないから。
せいや:……泣きすぎて何言ってるか分かんないよ。
せいや:…
せいや:母さん。
せいや:恨んでないよ。
せいや:むしろ感謝してる。
せいや:我が儘聞いてくれてありがとう。
0:(夏祭りのなつみとせいや。射的後。)
なつみ:せいやって射的うまいんだね。
なつみ:私がやったときどれも倒れなかったのにー!!
なつみ:せいやだけ景品いっぱいずるーい!!
せいや:まぁ、夏祭りの時必ずやるからな。
せいや:ほら、やる。
なつみ:え!!え!!くれるの?
せいや:なつみ、こういうぬいぐるみ好きだろ?
せいや:やるよ。
せいや:夏祭り誘ってくれたお礼に。
なつみ:えへへ。
なつみ:ありがとう。
なつみ:大切にする。
せいや:結構遊んだな。
せいや:もう花火の時間か?
なつみ:…
なつみ:ねぇ、私穴場知ってよ。
なつみ:ちょっと見えにくいけど、人がいなくて、私のおすすめの場所。
せいや:どこ?
なつみ:あそこの神社。
せいや:あーあっちの神社か。
なつみ:木が多いからちょっぴり見えにくいし、階段辛いから、人が来ないんだよね。
なつみ:でも、花火を近くで感じられるから好きなんだ。
せいや:ふーん。
せいや:いいんじゃないか?
せいや:行くか。
なつみ:(なつみ 心の声)
なつみ:人の波に逆らって2人で神社を目指した。
なつみ:長い長い階段の先の神社。
なつみ:階段を上るにつれて会話がなくなっていく。
なつみ:この時間が永遠と続けばいいと思う気持ちと、最後の告白チャンスに、足がゆっくりになる。
なつみ:不意に大きな音が背から聞こえた。
なつみ:花火が上がったんだ。
せいや:あーもう始まっちゃったか。
せいや:ん。(手を出す)
なつみ:…え?
せいや:どうせ慣れない下駄で足痛いんだろ?
せいや:引っ張ってやるから。
せいや:ほら。
なつみ:あ…ありがとう。
なつみ:(手を握る)
なつみ:…
なつみ:えへへ。
なつみ:よく分かったね。
なつみ:足が痛いって。
せいや:そんなノロノロ歩いてたら分かるって。
せいや:帰り大丈夫か?
なつみ:大丈夫。
なつみ:絆創膏あるし。
せいや:じゃあ、平気か。
せいや:ほら、あと少し頑張れ。
なつみ:うん。
0:(階段を上りきり2人で花火を見上げる。)
せいや:…
なつみ:…
せいや:本当だ。
せいや:花火が近い気がする。
なつみ:…
なつみ:せいや…
せいや:ん?
なつみ:…あー…。
なつみ:えっと…。
なつみ:ん(唇を噛む)
なつみ:…にが
なつみ:魔法の口紅…
なつみ:(深呼吸で気合いをいれる)
なつみ:せいや。
せいや:なんだよ。
なつみ:好きだよ。
せいや:…ごめん。
なつみ:うん…
なつみ:うん。
なつみ:だよね。
なつみ:知ってたよ。
なつみ:知ってたからそんな顔しないで。
なつみ:最後に言わしてくれてありがとう。
なつみ:私の我が儘に付き合ってくれてありがとう。
せいや:バレてたのか。
なつみ:バレバレだよ。
なつみ:せいやが引っ越すって分かってすぐ告白しようとしたら、せいや話そらしたり、嫌な顔…って言うより悲しい顔かな?今みたいな。
なつみ:そんな顔するから今日まで言えなかった。
なつみ:言っていいのか最後まで悩んで、でも、どうしても伝えたくて。
なつみ:だから、告白させてくれてありがとう。
なつみ:振ってくれてありがとう。
なつみ:…
なつみ:あースッキリした。
なつみ:ねぇ、これからも友達でいよ?
なつみ:引っ越し先まだ私知らないんだ。
なつみ:どこ?
なつみ:私遊びにいくよ。
せいや:…
なつみ:あー…やっぱり好意もたれた相手と友達でいるのは辛い?
なつみ:まぁ、そうだよね。
なつみ:私帰るね。
なつみ:今日はありがとう
なつみ:(手が離れない)
なつみ:せいや?
せいや:……
なつみ:なんでせいやがそんな顔するの?
なつみ:普通は振られた私がするほうでしょ。
なつみ:ねぇ、手離して?
なつみ:ごめんけど、そろそろ限界なんだ。
なつみ:最後はカッコつけさせてよ。
せいや:…
せいや:最後に俺の話を聞いてくれないか?
なつみ:…
なつみ:なに?
せいや:引っ越しっていうのは嘘なんだ。
せいや:本当は学校辞めて入院する。
せいや:病気なんだ。俺。
せいや:手術もするんだけど、治る確率より死ぬ確率のほうが高い。
せいや:急にさぁ、同級生が病気で死ぬかもしれないとか聞かされるのも辛いかなって思って家族や先生にお願いして嘘つくことにしたんだ。
なつみ:は?
せいや:俺はさぁ。
せいや:お前のことが好きなんだ、なつみ。
せいや:今日の夏祭りも誘われてすげぇー嬉しかった。
せいや:最後にいい思い出ができた。
なつみ:必ず死ぬってわけじゃないんでしょ?
なつみ:なら、私と付き合って。
なつみ:せいやが辛い時、私はせいやの手を繋いで支えるよ。
なつみ:病気が治ったら、何回だって夏祭りに誘うから。
せいや:うん。
せいや:お前はそういう女だよな。
せいや:だから、駄目なんだ。
せいや:俺が死にそうになればなるほどお前はきっと今以上に辛い顔をする。
せいや:お前はさぁ。
せいや:そんな顔より笑顔の方がいいに決まってる。
せいや:だから、俺じゃないほうがいい。
なつみ:…
せいや:本当はずっと隠すつもりだったんだけど、お前に嘘つくのも辛くて。
せいや:ごめんな、最後に言わなくていい話をした。
せいや:…
せいや:やっぱりもう一ついいか?
なつみ:…なに?
せいや:笑って。
せいや:最後は笑顔が見たい。
なつみ:(笑う)
せいや:うん。
せいや:ありがとう。
せいや:さよなら、なつみ。
なつみ:(なつみ心の声)
なつみ:さっきまで強く握りしめていた手がするりと離れた。
なつみ:彼を引き留めようとする手は空を掴み、彼は振り返りもせず闇へと消えていった。
なつみ:遠くに打ち上げられる花火が私の泣き叫ぶ声をかき消す。
なつみ:さよなら、せいや。
なつみ:ありがとう、私の告白を聞いてくれて。
なつみ:ありがとう、私に残酷な真実を教えてくれて。
なつみ:せいやと見たこの花火を私は生涯忘れない。
なつみ:この綺麗な花火を。
お祖母ちゃん:(幼少期のなつみに話しかけている。)
お祖母ちゃん:あら、なつみちゃんまた覗きに来たの?
お祖母ちゃん:ふふふ。
お祖母ちゃん:なつみちゃんにお化粧はまだ早いかなぁ。
お祖母ちゃん:ん?これが気になるの?
お祖母ちゃん:これはねぇ、魔法の口紅なんだよ。
お祖母ちゃん:魔法の口紅を塗ると勇気が出るの。
お祖母ちゃん:なつみちゃんが大きくなって勇気がほしい時、お祖母ちゃんが塗ってあげるね。
お祖母ちゃん:勇気が出ますようにって。
0:(夏休み。バスケの部活練習中)
なつみ:よっしゃ!!フリースローノルマノーミス!!
なつみ:はぁー。
なつみ:集中しすぎてまじで暑っ。
なつみ:部長ー私外で休憩してきていいですかー?
部長:ノルマはー?
なつみ:終わりましたー!
部長:お、いち抜けじゃん。
部長:じゃあ、いいよ。
部長:全員がノルマ終わったら次練習試合するから。
部長:そのタイミングで声かけるわ。
なつみ:了解でーす。
0:(なつみ外に出る)
なつみ:体育館まじあっち~。
なつみ:熱中症になるわ。
なつみ:はぁ~外涼しい~。
せいや:なにサボってんだよ。
せいや:(冷たいペットボトルをなつみに当てる。)
なつみ:つめたっ!?
せいや:驚きすぎだろ。
なつみ:え?せいや!?
せいや:ほら。これやるよ。
せいや:倒れる前に飲んどけ。
なつみ:やったー。ありがとう。
なつみ:(ドリンクを飲む)
なつみ:生き返る~
なつみ:バスケに熱入りすぎて倒れる寸前だったから助かったわー。
せいや:そりゃよかった。
せいや:俺も久々の部活で倒れるかと思ったわ。
なつみ:体力お化けのせいやが??
せいや:うるせー。
せいや:久々だと俺だって疲れるんだよ。
なつみ:まぁ、引っ越しの準備で夏休み部活来てなかったもんね。
なつみ:てか、今日部活来てていいの?
なつみ:引っ越し明日でしょ?
せいや:だからだよ。
せいや:今日が部活に顔を出せる最後だから来たんだよ。
せいや:そしたらみんな最後なら1on1(わんおんわん)やるぞーって。
せいや:俺体1つしかないつーのに。
せいや:途中で、皆相手するとか無理に決まってるだろーって逃げてきた。
なつみ:あははは。
なつみ:それはキツすぎだわ。
せいや:もう疲れたからさっさと家かえって休みてー。
なつみ:ん?男バスで送別会みたいなのしないの?
せいや:しないなぁー。
せいや:まぁ、今日の1on1が送別会みたいなもんなんじゃね?
せいや:送別会にしてはキツすぎるけどな(笑)
なつみ:…ふーん。
なつみ:しないんだ…。
なつみ:じゃあーこの後は家帰るだけ?
せいや:まぁ、他に用事ないし帰るけど。
せいや:どうした?
なつみ:じゃ、じゃあさぁ!
なつみ:今夜、夏祭り行かない!?
せいや:…
せいや:…
せいや:うん。
せいや:いいな夏祭り。
せいや:ここの夏祭り行けるの最後だし。
せいや:行くか。2人で。
なつみ:ほんと!?え?まじで?嘘じゃなくて?
せいや:ほんとだよ。
せいや:そんな驚くことか?
なつみ:やったぁぁぁああああ!!
なつみ:今さら撤回とかなしだからね!
なつみ:言質はとったからね!!
なつみ:覚悟しときなよ!!
せいや:はいはい。
せいや:ってなんで夏祭りいくのに俺脅されてるんだよ。
なつみ:えへへへ。
なつみ:つい嬉しくて。
せいや:嬉しくなると脅すのかよ…
部長:なつみーーーー!!
部長:練習試合するよー!!
部長:…あ、ごめん。邪魔した?
なつみ:え?あ!?いや!!邪魔とかじゃないです!!まじで!!
部長:そっかそっか。
部長:皆には5分休憩するように言っとくからごゆっくりどうぞ。
なつみ:(言葉をさえぎる。言っとくからぐらいに被せて。)
なつみ:部長!?本当に違うんですって!?そーゆーの辞めてください!!
部長:えーそんな照れなくてもいいのに~
なつみ:照れとかじゃないですから!!
なつみ:ほら、練習試合するんですよね!?!?
なつみ:みんな待たせてるんですよね!!
なつみ:早く帰りますよ!!
部長:まー待たせるのも悪いか。
なつみ:せいや、また後で連絡するから。
せいや:わかった。
なつみ:ほーら、部長行きますよ!!
部長:はいはい。
0:(せいや退場)
なつみ:部長は本当に私のことからかいすぎです!!
なつみ:反省してください。
部長:ごめんね。
部長:期待のエースで顔も可愛くて声も私好み、なーんてきたらついつい可愛がりたくなっちゃうんだよね。
なつみ:好きな子をいじめる小学生男子ですか?
なつみ:まぁ、褒められるのは悪い気はしないので今回は許しますけど。
部長:ありがとう。
部長:そういや、せいやくん今日は学校来てたんだね。
部長:引っ越し明日じゃなかったっけ?
なつみ:明日です。
なつみ:最終日だから部活に顔出しに来たって言ってました。。
部長:ふーん。
部長:実はなつみに会いに来たんじゃない?
なつみ:そうやって、すぐからかわないでくださいよ!!
部長:えーこれは結構真面目に言ってるんだけどなぁ~。
なつみ:そんなわけないじゃないですか。
部長:そうかなぁ~。
部長:あ!!せっかく直接会えたんだから誘ったの?夏祭り。
部長:最近ケータイ握りしめて悩んでたじゃん。
なつみ:そう!!それ!!部長聞いてください!!
なつみ:夏祭り一緒に行ってくれるって!!
部長:まじ!!良かったじゃん!!
なつみ:今日はフリースローノルマノーミスで決められたし、久々にせいやに会えたし、夏祭りに行く約束も出来たし、今日の私はウルトララッキーガールなんです!!
なつみ:だから、私決めました!!
なつみ:今日の夏祭りでせいやに告白しようと思います!!
部長:よし!!当たって砕けてこい!!
なつみ:はい!!…って砕けるの前提ですか!?
部長:ウソウソ。
部長:こんな可愛い後輩を振るやつなんてどこにもいないよ。
部長:自信持ってけ!!
なつみ:部長はすぐテキトーなことを言うんですから…。
なつみ:まぁ、ありがとうございます。
部長:うん、頑張ってこい。
部長:さぁ、切り替えて部活やるよ。
なつみ:はい!
0:(部活が終わり、なつみの自宅へ。)
なつみ:ただいまーーー!!お祖母ちゃんー!!お祖母ちゃんいるー??
お祖母ちゃん:なつみちゃんお帰りなさい。
お祖母ちゃん:どうしたの?そんな大きな声を出して。
なつみ:お祖母ちゃん。
なつみ:今日ね、夏祭り行こうと思ってるの!!
お祖母ちゃん:そうかいそうかい。
お祖母ちゃん:そりゃー楽しんでおいで。
なつみ:でね、お祖母ちゃんに浴衣着せてほしいの。
お祖母ちゃん:いいよ。
お祖母ちゃん:じゃあ、お祖母ちゃんのお部屋に浴衣何着か出しとくから、その間に汗を流しておいで。
お祖母ちゃん:風邪引かないように髪はちゃんと乾かしてからお部屋にくるんだよ。
なつみ:分かった。
なつみ:ありがとうお祖母ちゃん!!
0:(お風呂後)
なつみ:お祖母ちゃんー!!上がったよー!!
なつみ:髪もちゃんと乾かしたよ。
お祖母ちゃん:あらあら。
お祖母ちゃん:ずいぶん早かったね。
お祖母ちゃん:浴衣はもう用意出来てるよ。
なつみ:お祖母ちゃんありがとう。
お祖母ちゃん:真っ赤な牡丹、青の撫子、紫の蝶々、黄色い向日葵、一応お祖母ちゃんが持ってる浴衣で色んな色の浴衣を出したけど気になるのはあるかい?
なつみ:これ。これがいい。
なつみ:黄色い向日葵。
お祖母ちゃん:うふふ。
お祖母ちゃん:そうかいそうかい。
お祖母ちゃん:じゃあ、帯は淡い緑にしようかね。
お祖母ちゃん:こっちおいで。
お祖母ちゃん:なつみちゃんは元気な美人さんやから向日葵がよく似合うね。
なつみ:えへへ。
なつみ:そうかな?
なつみ:なんかね、直感でこれがいいなって。
なつみ:私らしいなって思ったの。
お祖母ちゃん:そうだね。
お祖母ちゃん:なつみちゃんは昔から向日葵みたいに笑う子だから、向日葵は本当になつみちゃんらしい花やね。
お祖母ちゃん:帯は可愛く蝶々結びにしとくな。
お祖母ちゃん:浴衣着せるのはあと少しで終わるけど、鞄や靴はどうする?
お祖母ちゃん:お祖母ちゃんの貸そうか?
なつみ:え?いいの?
お祖母ちゃん:いいよ。
お祖母ちゃん:下駄は玄関の棚にあるはずだよ。
お祖母ちゃん:鞄は、携帯電話やお財布がたくさん入るようにかご巾着を出そうか。
お祖母ちゃん:ついでに髪飾りも出してあげる。
お祖母ちゃん:その浴衣似合う可愛い髪飾りがあるのよ。
なつみ:ありがとうお祖母ちゃん!!
なつみ:せめて、髪は自分で結ぶね。
お祖母ちゃん:なら、あそこの化粧台使っていいよ。
お祖母ちゃん:ほら、浴衣は着せれたよ。
お祖母ちゃん:お祖母ちゃんは髪飾りとかご巾着を出すからその間に結んでおいで。
なつみ:うん。
なつみ:久々にお祖母ちゃんの化粧台使うなぁ~。
お祖母ちゃん:なつみちゃんが小さい頃はよく、お祖母ちゃんが化粧するのを横で真似してたね。
お祖母ちゃん:懐かしいねぇ~。
なつみ:そんなことしてたの私?
なつみ:あーでも、あれは覚えてるよ!!
なつみ:魔法の口紅!!
なつみ:勇気が出る魔法よ口紅!!
お祖母ちゃん:ふふ。
お祖母ちゃん:なつみちゃん小さい頃、魔法の口紅塗りたいってよく言ってたもんね。
お祖母ちゃん:はい。
お祖母ちゃん:かご巾着と髪飾り。
なつみ:ありがとう。
なつみ:髪飾りさしてもらってもいい?
お祖母ちゃん:いいよ。
お祖母ちゃん:痛くない?
なつみ:大丈夫。
お祖母ちゃん:なつみちゃんちょっといいかい。
なつみ:ん?なに?髪型おかしい?
お祖母ちゃん:お祖母ちゃんが最後の仕上げをしてあげる。
なつみ:お祖母ちゃん、その口紅…。
お祖母ちゃん:ほら、これで勇気が出るよ。
0:(夏祭りに行く時間)
なつみ:いってきまーす。
せいや:ごほん。(咳)
なつみ:きゃ!?…え?せいや?なんでここにいるの?
せいや:どっかのバカが連絡するとかいいつつなにも連絡してこなかったからだよ。
なつみ:あ!!ごめん。忘れてた。
なつみ:でも、連絡してくれればよかったのに…。
せいや:ケータイ見てみろ。
なつみ:ん?……あ…大変申し訳ございませんでした。
なつみ:部活のときマナーモードにしてそのままでした。
せいや:……。
なつみ:………
なつみ:まじでごめん
なつみ:代わりになんか屋台でおごるから!
なつみ:たこ焼き?焼きそば?
せいや:たこyごほっ(咳)…あ、いや、食べ物はいいや。
せいや:久々の部活でめっちゃ腹減って家で晩飯食ったから。
せいや:射的やるからそれ奢れ。
なつみ:えーせいや食べてきたの?
なつみ:屋台の食べ物、晩御飯にするつもりだったのに。
せいや:俺のこと気にせず、なつみは好きなもの食えばいいだろ。
せいや:ほら、とりあえず射的やりに行くぞ。
なつみ:はーい。
なつみ:屋台楽しみだなぁ~。
なつみ:たこ焼きにお好み焼き、フランクフルト…
なつみ:あー綿菓子にベビーカステラも食べなきゃな
せいや:食べ物ばっかかよ。
せいや:せっかくなつみの婆さんが着せてくれたんだろ、それ。
せいや:食べ過ぎて腹膨れたら苦しくなるぞ。
なつみ:大丈夫!!屋台のために部活でめっちゃ動いてきたから!!
なつみ:お腹すきまくりなんだよね。
せいや:ん?…大丈夫なのかそれ?
なつみ:大丈夫大丈夫!!
なつみ:あ、りんご飴!!せいや行くよ!!
せいや:あ、おい!!
せいや:待てよ!
0:(せいや回想食事後母さんとの会話)
せいや:ごほごほっ(咳)
せいや:…ん。(大量の薬を飲む)
せいや:はぁ。…にが。
せいや:…あー、母さん泣くなって。
せいや:母さんのせいじゃないから。
せいや:……泣きすぎて何言ってるか分かんないよ。
せいや:…
せいや:母さん。
せいや:恨んでないよ。
せいや:むしろ感謝してる。
せいや:我が儘聞いてくれてありがとう。
0:(夏祭りのなつみとせいや。射的後。)
なつみ:せいやって射的うまいんだね。
なつみ:私がやったときどれも倒れなかったのにー!!
なつみ:せいやだけ景品いっぱいずるーい!!
せいや:まぁ、夏祭りの時必ずやるからな。
せいや:ほら、やる。
なつみ:え!!え!!くれるの?
せいや:なつみ、こういうぬいぐるみ好きだろ?
せいや:やるよ。
せいや:夏祭り誘ってくれたお礼に。
なつみ:えへへ。
なつみ:ありがとう。
なつみ:大切にする。
せいや:結構遊んだな。
せいや:もう花火の時間か?
なつみ:…
なつみ:ねぇ、私穴場知ってよ。
なつみ:ちょっと見えにくいけど、人がいなくて、私のおすすめの場所。
せいや:どこ?
なつみ:あそこの神社。
せいや:あーあっちの神社か。
なつみ:木が多いからちょっぴり見えにくいし、階段辛いから、人が来ないんだよね。
なつみ:でも、花火を近くで感じられるから好きなんだ。
せいや:ふーん。
せいや:いいんじゃないか?
せいや:行くか。
なつみ:(なつみ 心の声)
なつみ:人の波に逆らって2人で神社を目指した。
なつみ:長い長い階段の先の神社。
なつみ:階段を上るにつれて会話がなくなっていく。
なつみ:この時間が永遠と続けばいいと思う気持ちと、最後の告白チャンスに、足がゆっくりになる。
なつみ:不意に大きな音が背から聞こえた。
なつみ:花火が上がったんだ。
せいや:あーもう始まっちゃったか。
せいや:ん。(手を出す)
なつみ:…え?
せいや:どうせ慣れない下駄で足痛いんだろ?
せいや:引っ張ってやるから。
せいや:ほら。
なつみ:あ…ありがとう。
なつみ:(手を握る)
なつみ:…
なつみ:えへへ。
なつみ:よく分かったね。
なつみ:足が痛いって。
せいや:そんなノロノロ歩いてたら分かるって。
せいや:帰り大丈夫か?
なつみ:大丈夫。
なつみ:絆創膏あるし。
せいや:じゃあ、平気か。
せいや:ほら、あと少し頑張れ。
なつみ:うん。
0:(階段を上りきり2人で花火を見上げる。)
せいや:…
なつみ:…
せいや:本当だ。
せいや:花火が近い気がする。
なつみ:…
なつみ:せいや…
せいや:ん?
なつみ:…あー…。
なつみ:えっと…。
なつみ:ん(唇を噛む)
なつみ:…にが
なつみ:魔法の口紅…
なつみ:(深呼吸で気合いをいれる)
なつみ:せいや。
せいや:なんだよ。
なつみ:好きだよ。
せいや:…ごめん。
なつみ:うん…
なつみ:うん。
なつみ:だよね。
なつみ:知ってたよ。
なつみ:知ってたからそんな顔しないで。
なつみ:最後に言わしてくれてありがとう。
なつみ:私の我が儘に付き合ってくれてありがとう。
せいや:バレてたのか。
なつみ:バレバレだよ。
なつみ:せいやが引っ越すって分かってすぐ告白しようとしたら、せいや話そらしたり、嫌な顔…って言うより悲しい顔かな?今みたいな。
なつみ:そんな顔するから今日まで言えなかった。
なつみ:言っていいのか最後まで悩んで、でも、どうしても伝えたくて。
なつみ:だから、告白させてくれてありがとう。
なつみ:振ってくれてありがとう。
なつみ:…
なつみ:あースッキリした。
なつみ:ねぇ、これからも友達でいよ?
なつみ:引っ越し先まだ私知らないんだ。
なつみ:どこ?
なつみ:私遊びにいくよ。
せいや:…
なつみ:あー…やっぱり好意もたれた相手と友達でいるのは辛い?
なつみ:まぁ、そうだよね。
なつみ:私帰るね。
なつみ:今日はありがとう
なつみ:(手が離れない)
なつみ:せいや?
せいや:……
なつみ:なんでせいやがそんな顔するの?
なつみ:普通は振られた私がするほうでしょ。
なつみ:ねぇ、手離して?
なつみ:ごめんけど、そろそろ限界なんだ。
なつみ:最後はカッコつけさせてよ。
せいや:…
せいや:最後に俺の話を聞いてくれないか?
なつみ:…
なつみ:なに?
せいや:引っ越しっていうのは嘘なんだ。
せいや:本当は学校辞めて入院する。
せいや:病気なんだ。俺。
せいや:手術もするんだけど、治る確率より死ぬ確率のほうが高い。
せいや:急にさぁ、同級生が病気で死ぬかもしれないとか聞かされるのも辛いかなって思って家族や先生にお願いして嘘つくことにしたんだ。
なつみ:は?
せいや:俺はさぁ。
せいや:お前のことが好きなんだ、なつみ。
せいや:今日の夏祭りも誘われてすげぇー嬉しかった。
せいや:最後にいい思い出ができた。
なつみ:必ず死ぬってわけじゃないんでしょ?
なつみ:なら、私と付き合って。
なつみ:せいやが辛い時、私はせいやの手を繋いで支えるよ。
なつみ:病気が治ったら、何回だって夏祭りに誘うから。
せいや:うん。
せいや:お前はそういう女だよな。
せいや:だから、駄目なんだ。
せいや:俺が死にそうになればなるほどお前はきっと今以上に辛い顔をする。
せいや:お前はさぁ。
せいや:そんな顔より笑顔の方がいいに決まってる。
せいや:だから、俺じゃないほうがいい。
なつみ:…
せいや:本当はずっと隠すつもりだったんだけど、お前に嘘つくのも辛くて。
せいや:ごめんな、最後に言わなくていい話をした。
せいや:…
せいや:やっぱりもう一ついいか?
なつみ:…なに?
せいや:笑って。
せいや:最後は笑顔が見たい。
なつみ:(笑う)
せいや:うん。
せいや:ありがとう。
せいや:さよなら、なつみ。
なつみ:(なつみ心の声)
なつみ:さっきまで強く握りしめていた手がするりと離れた。
なつみ:彼を引き留めようとする手は空を掴み、彼は振り返りもせず闇へと消えていった。
なつみ:遠くに打ち上げられる花火が私の泣き叫ぶ声をかき消す。
なつみ:さよなら、せいや。
なつみ:ありがとう、私の告白を聞いてくれて。
なつみ:ありがとう、私に残酷な真実を教えてくれて。
なつみ:せいやと見たこの花火を私は生涯忘れない。
なつみ:この綺麗な花火を。