台本概要

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タイトル 私と新月の中に堕ちてくれますか。
作者名 彼方  (@kanata_nozomu)
ジャンル その他
演者人数 2人用台本(男1、女1)
時間 10 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 作品及び世界観を大切にしてくださる方が演じてください。

自己解釈あり。

性別指定はありますが、作品を壊さないのであれば、性別に固執しなくて構いません。

非商用利用時は連絡不ですが作者のモチベーションに繋がるので連絡していただけると喜びます。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
20 問う女
17 返す男
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
女:錆びた階段を、1人ゆっくりと上っていく。 コツコツと、足音が反響する以外に聞こえるものは無かった。 女:月明かりに照らされる屋上。人影は見当たらなかった。 頭から私を照らす光に、自然と視線が注目する。 0: 女:「月が綺麗ですね。」 0: 女:不意にその言葉が口をついた。 男:「愛することは命懸けですよ。」 女:「…」 男:「こんばんは。」 女:「なに、その返し」 男:「太宰治です。『雌(めす)に就(つ)いて』という作品です。よく分からないお話でした」 女:「彼の言葉に、貴方はそう返すの?」 男:「さぁ、どうでしょう。」 女:「…太宰治が好きなの?」 男:「いいえ、嫌いですよ」 女:「そう。」 女:意味の無い言葉遊び。不思議と、嫌ではなかった。 男:「月はお好きですか?」 女:「どちらでもないわ」 男:「そうですか。僕は好きです。」 女:それ以上、どちらも何も言わなかった。ただ、先程より男の三日月が深まったように感じた。 女:「月は、好きでも嫌いでもないけれど、ただ、綺麗だとは思うの。」 男:「独りでは輝けないとしても?」 女:「確かに、月は独りでは輝けない。だけど、輝いていることに変わりはないでしょう?」 男:「それが夜だけだとしても?」 女:「その代わり、主役になれるわ。夜空という舞台の主役に。」 男:「それは、これからも変わりありませんか?」 女:「えぇ、変わらないわ。」 男:「では、月が独りで輝くことは、ないんですね」 女:「その代わり、輝くのをやめることもないわ」 男:「夏目漱石が何故『月』を使ったのか、知っていますか?」 女:「何となくなら、わかるわよ」 男:「…何故彼は、あのように言ったのでしょう」 女:「なら、貴方は何故、あんな風に返したの?」 女:その問いに、男はまた、笑みを深めただけだった。 女:「ねぇ、貴方は私と一緒に新月の中に堕ちてくれる?」 男:「…あぁ、実に貴女らしい」 女:「そうかしら」 男:「えぇ、そうですよ」 女:「ところで、返事はくれないの?」 男:「あぁ、これは失礼しました」 女:「貴方の返しは?」 男:「(貴方なりの返しをどうぞ)」

女:錆びた階段を、1人ゆっくりと上っていく。 コツコツと、足音が反響する以外に聞こえるものは無かった。 女:月明かりに照らされる屋上。人影は見当たらなかった。 頭から私を照らす光に、自然と視線が注目する。 0: 女:「月が綺麗ですね。」 0: 女:不意にその言葉が口をついた。 男:「愛することは命懸けですよ。」 女:「…」 男:「こんばんは。」 女:「なに、その返し」 男:「太宰治です。『雌(めす)に就(つ)いて』という作品です。よく分からないお話でした」 女:「彼の言葉に、貴方はそう返すの?」 男:「さぁ、どうでしょう。」 女:「…太宰治が好きなの?」 男:「いいえ、嫌いですよ」 女:「そう。」 女:意味の無い言葉遊び。不思議と、嫌ではなかった。 男:「月はお好きですか?」 女:「どちらでもないわ」 男:「そうですか。僕は好きです。」 女:それ以上、どちらも何も言わなかった。ただ、先程より男の三日月が深まったように感じた。 女:「月は、好きでも嫌いでもないけれど、ただ、綺麗だとは思うの。」 男:「独りでは輝けないとしても?」 女:「確かに、月は独りでは輝けない。だけど、輝いていることに変わりはないでしょう?」 男:「それが夜だけだとしても?」 女:「その代わり、主役になれるわ。夜空という舞台の主役に。」 男:「それは、これからも変わりありませんか?」 女:「えぇ、変わらないわ。」 男:「では、月が独りで輝くことは、ないんですね」 女:「その代わり、輝くのをやめることもないわ」 男:「夏目漱石が何故『月』を使ったのか、知っていますか?」 女:「何となくなら、わかるわよ」 男:「…何故彼は、あのように言ったのでしょう」 女:「なら、貴方は何故、あんな風に返したの?」 女:その問いに、男はまた、笑みを深めただけだった。 女:「ねぇ、貴方は私と一緒に新月の中に堕ちてくれる?」 男:「…あぁ、実に貴女らしい」 女:「そうかしら」 男:「えぇ、そうですよ」 女:「ところで、返事はくれないの?」 男:「あぁ、これは失礼しました」 女:「貴方の返しは?」 男:「(貴方なりの返しをどうぞ)」