台本概要

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タイトル 探偵と助手。
作者名 音佐りんご。  (@ringo_otosa)
ジャンル コメディ
演者人数 2人用台本(男1、不問1)
時間 10 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 写真がとらえるのは真実か或いは人の心か。

◇あらすじ◇
不貞調査の張り込みを続ける探偵と助手の車内での会話。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
探偵 100 佐藤佑司(さとうゆうじ)。 探偵事務所所長。主に経営担当。
助手 不問 99 御影真琴(みかげまこと)。 探偵の助手。主に証拠写真担当。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

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0:探偵と助手。 : 0:写真がとらえるのは真実か或いは人の心か。 : 0:◇あらすじ◇ 0:不貞調査の張り込みを続ける探偵と助手の車内での会話。 : 0:□登場人物□ 探偵:佐藤佑司。 探偵:探偵事務所所長。主に経営担当。 助手:御影真琴。 助手:探偵の助手。主に証拠写真担当。 : 0:◆□□◆ : 0:あるホテルの前。 0:車の中に探偵と助手。 : 探偵:まこと、ホシに動きは? 助手:出なしですよ。てか所長、それ刑事のやつでしょ。今日は探偵じゃ無くて刑事気分なんですか? 焼きそばパン買ってきます? 探偵:お、買ってきてくれるの? ユキコも頼むわ。 助手:いや、所長が。 探偵:俺かよ。所長を顎で使うたぁ、出世したな、助手君。 助手:あんたが出世も成長もしなければ嫌でも助手の僕が伸びますよ。 探偵:増長しやがって最近の若者はよぉ。てめぇはうだうだ言わず俺の下で働いてりゃ良いんだよ。下っ端。 助手:おや、パワハラですか? 労基にたれ込みますよ? 実はこの会話録音してるんです。 探偵:嘘つけ。 助手:はい。 : 0:助手、スマホの画面を見せる。 : 探偵:うわ、マジだこいつ。 助手:それ以外にも色んな記録ありますよ。飲み会のアルハラとか、あと依頼女性へのえげつないセクハラとか。 探偵:そ、そんなことしてねぇよ!? セクハラって、俺、女性の嫌がることはしません! 絶対に。 助手:ああ、酒の席で言った僕に対してセクハラっぽい部分だけ拾って、依頼女性との会話で立て板に水のごとく、のべつまくなしの隠語下ネタ官能用語卑猥発言オンパレードしてるゲス男に編集しました。 探偵:捏造だろうが! 助手:訴えられたくなけりゃ、待遇改善を要求します。 探偵:脅迫には屈しない。 助手:ワンクリックで動画サイトにアップしちゃおうかなー。 探偵:……要求は何だ? 助手:ハーゲンダッツ。 探偵:買いに行けば良いんだろ。 助手:あ、待って、マル対出てきそう。 探偵:何、やっと動いたか? どんだけお楽しみなんだよ。 助手:まー、真っ黒ですからね。 探偵:ドア、開くぞ、カメラ。 助手:もう向けてます。 探偵:…………、違うやつだな。 助手:……ですね。たぶんあれもクロですけど。 探偵:かー! もう三時間だぞ!? 助手:そんだけ本気なんでしょ。 探偵:それ、クライアントに絶対言うなよ。 助手:事実でしょうが。言った方が却って喜びますよ。 探偵:悲しむんだよ、あのタイプは。 助手:何やったって悲しむでしょ。なら、早いか遅いかの違いでしょ。 探偵:それはそうなんだが、その辺の機微が分かんねぇかな? お前は。 助手:分かりませんよ。ただ僕に分かるのは、あのおっさんがすごい良い顔で出て来るってことですよ。 探偵:……だろうな。 助手:ええ。 探偵:にしても、下手に動けねぇな。こりゃハーゲンダッツもお預けだな。 助手:そうでもありませんよ。 探偵:あぁ? 助手:写真は僕だけでどうにかなるので、所長は別にいりませんし。 探偵:何だと? 助手:いい加減カメラの使い方覚えて下さいよ。スマホしか使えないとか困りません? 探偵:うるせぇな、お前こそさっさと車の免許取れよ。所長を足に使うな。 助手:いやぁ、なかなか良い気分ですよ。 探偵:この野郎……。 助手:あ、ドア開きます。 探偵:何? 助手:…………スカですね。 探偵:……スカというか、スーツ二人だったけどよ。 助手:色々あるんでしょうよ。 探偵:まぁ、色々あるんだろうな。 助手:今回、なんかめっちゃだるいですね。面取りからして、奥さん頑なに写真渡さなかったし、やる気あんのかって。まぁ、所長が口説いてくれたおかげですぐにマル対の行動は把握できましたが。 探偵:口説く言うな。 助手:そのくせ証拠は掴ませないというか、警戒心が高いというか。 探偵:まぁ、奴さん休み自体少なくて多忙だからな。それにしてもまさか一ヶ月もかかるとは。 助手:その貴重な休暇で不貞行為に勤しんでるんだから、ほんと働き者ですよね。 探偵:言い方気をつけろよお前。 助手:へいへい。 探偵:……はぁ。お前、なんで探偵になんてなったんだよ。 助手:なんでって、いやいや、所長が誘ったんでしょ。 探偵:あれ? そうだっけ? 助手:そうだっけ? じゃないですよ。 探偵:まぁでも、俺が誘うってこたぁ、よっぽどやる気に満ち溢れてたんだな。 助手:そう見えますか? 探偵:俺の溢れんばかりの観察眼を以てしても、到底そうは見えんな。 助手:でしょうよ。 探偵:お前って推理小説好き? 助手:どちらかというと、刑事物のドラマの方が好きですね。てか、それは所長の趣味の話でしょ。 探偵:スパイ映画は? 助手:同じ暗躍する系だったら泥棒の方が好きです。 探偵:分かる。 助手:あんた推理下手か。 探偵:いや、そんなことは無いぞ! ちょっと糖分足りなくて集中力が切れてるだけだ。 助手:早くあんたの好きなユキコと焼きそばパンと僕のハーゲンダッツと買ってこいや。 探偵:助手君行ってきて? 助手:やだよ。 探偵:ケチ。 助手:てか、あんたじゃ写真撮れねぇだろって、ポンコツが。 探偵:ポンコツ言うなぁ! 所長だぞぉ!? 助手:その推理力をポンコツと言わずしてなんて言うんだよ。 探偵:ぐぬぬ……。 助手:ていうか、これは推理以前にただの健忘ですが。 探偵:俺も歳だしな。 助手:しっかりして下さいよ。 探偵:にしてもおめぇ、こんな華やかさの欠片もない仕事の何が良くて始めたんだ? 助手:じゃあ所長はなんで始めたんだよって話ですよ。 探偵:あ? 俺? 推理してみろよ優秀な助手君。 助手:人の役に立ちたい。 探偵:ふふん。 助手:って柄でも無いでしょうし。 探偵:柄でもねぇってなんだよ。そうだけどよ。 助手:まぁ、そうすね……。できたから。 探偵:……。 助手:ってところですか? 探偵:…………違うし。 助手:……あぁ、本当にそうなんですね。 探偵:違うって言わなかった?! 助手:顔が嘘つくときの顔でしたよ。 探偵:顔ってお前、ずっと窓の向こうのホテル見てただろうが。 助手:窓の反射で見えるんすよ。顔。 探偵:優秀か。 助手:まぁ、でも……。 探偵:あぁ? 助手:所長って意外に経営の才能ありますよね。 探偵:なんだよ藪から棒に。 助手:いや、尊敬してるんですよ。 探偵:お前に一番似合わない言葉だな。尊敬。 助手:まぁ、基本的に所長の尊敬できるとことか少ないですし。 探偵:んだと? 助手:ははは、すみませんって。まぁでも、何だかんだでうち、ちゃんと黒字ですしね。 探偵:そら、頑張ってるからな。 助手:もっと頑張って給料上げてくださいよ。 探偵:お前が結果出したらな。 助手:出してるでしょうが。 探偵:それもそうだな。 助手:あぁ、あと所長って人言いくるめるの巧いですよね。なんだかんだ。 探偵:なんだかんだってなんだおめぇ。 助手:足下見るの上手で、話聞き出すの得意。 探偵:褒めんなよ。照れるわ。 助手:おまけに顔はめっちゃ普通。 探偵:喧しいわ! 馬鹿にしてんのか! 助手:うるせ!? いや、別に馬鹿にしてませんって。そんなに。 探偵:してるだろうが絶対。 助手:なんていうか、所長って要領良いですよね。 探偵:嫌味か? 助手:いやいや、多分所長ってこの仕事やってなかったら詐欺師か、……ヒモですね。 探偵:何そのクソみたいな二択! お前の中の俺って何なの? 助手:どっちにしても今より良い暮らししてそうですが。 探偵:喧しいわ。給料減らすぞ。 助手:ははは。すみませんすみません。 探偵:まったく、てめぇはよぉ。 助手:まぁ、でも知ってますよ。 探偵:何が? 助手:所長って、利益あんまり気にしてないですもんね。無欲というか。 探偵:あぁ? 無欲? んなもん気にしてるに決まってんだろ。俺はリッチだからな。 助手:それは知りませんが。できることをやってる感じですね。 探偵:俺のプロファイリングやめろや。テメェはどうなんだよまこと。 助手:僕ですか? 僕は僕のやりたいことをやってますよ。 探偵:やりたいこと? 俺への嫌がらせか? 助手:それもですが。 探偵:おいこら、 助手:写真ですよ。 探偵:写真? 助手:ていうか、その技術見込んで雇ったんじゃないんですね。 探偵:何の話だ? 俺はお前の目が気に入ったから雇ったんだよ。 助手:なんすかそのふわっとした理由。ほんと、人を見る目があるのやら無いのやら。 探偵:お前、カメラ好きだったのか? 助手:そうですね、たぶん。 探偵:なんだ、曖昧だな。でもそれならよ、写真家とかカメラマンで良かったんじゃねぇか? 助手:……どうでしょうね。……! 探偵:どした? 助手:来ます。ちょっと黙って。 探偵:……! おう。 : 0:間。シャッター音。 : 助手:ははっ……! 探偵:どうだ、撮れたか? 助手:ええ。とても良いのがね。 探偵:で、どうする? 助手:車回して下さい。多分、この先の地下鉄のとこで別れるはずです。改札まで行かずに入り口で。なので反対車線のとこに車停めましょう、ダッシュで。でも急ぎすぎて違和感与えたら駄目ですよ、見えないところで素早くスムーズに。 探偵:注文が多いなぁ、助手君。 : 0:車走り出す。 : 助手:ふふっ、この写真見て下さいよ、所長。 探偵:あぁ? 助手:ははは。すごい素敵な表情だと思いません? 探偵:運転中に見れるか馬鹿。 助手:きっとこの人、この世の誰より幸せな顔してるんですよ。 探偵:そいつは見えねぇけどよ、お前も今、たぶん同じ顔をしてると思うぜ。 助手:僕が? ……そうかも知れませんね。 探偵:はぁ。 助手:悪趣味でしょう? 探偵:……そうだな。 助手:ですよね。 探偵:でも、それがお前にできるお前の才能なんだろ? 助手:ええ。僕は、人の醜悪で、けれど美しい一面を撮りたい。 探偵:…………。 助手:強欲というか、我ながら業が深いというか、浅ましいんですよね。 探偵:かもな。 助手:でも、良いんです。 探偵:まこと? 助手:これが僕の天職なんだと思いますよ。 探偵:天職、か。まぁお前がそんなに気に入ってるんなら、何も言わねぇよ、俺は。写真家でもカメラマンでもなくこの仕事ってんならよ。 助手:ありがとうございます。 探偵:……おし、着いたぞ。奴さんまだ来てねぇな。よほどゆっくり幸せを楽しみてぇらしい。 助手:僕、車降りますね。車の陰からならベストショットいけそうです。 探偵:おう、行ってこい探偵さん。 助手:ええ、所長。 : 0:助手、車を降りる。 : 助手:……あ、ちなみに、この世で一番つまらない被写体分かりますか? 探偵:つまらないもの? さてな、見当もかんよ。 : 0:助手、探偵の写真を撮る。 : 探偵:なんで今俺を撮る。 助手:所長ですよ。 探偵:俺? 助手:なんですか? その綺麗で幸せそうな顔。だから所長の写真はカスなんですよ。 探偵:喧しいわ。とっとと良い写真撮ってこい。 助手:えぇ、所長も良いハーゲンダッツ買ってきて下さいね。 探偵:何だそれ。はぁ、分かったよ。 助手:……来ました! これは……最高ですね。 探偵:やれやれ。 : 0:◇■■◇

0:探偵と助手。 : 0:写真がとらえるのは真実か或いは人の心か。 : 0:◇あらすじ◇ 0:不貞調査の張り込みを続ける探偵と助手の車内での会話。 : 0:□登場人物□ 探偵:佐藤佑司。 探偵:探偵事務所所長。主に経営担当。 助手:御影真琴。 助手:探偵の助手。主に証拠写真担当。 : 0:◆□□◆ : 0:あるホテルの前。 0:車の中に探偵と助手。 : 探偵:まこと、ホシに動きは? 助手:出なしですよ。てか所長、それ刑事のやつでしょ。今日は探偵じゃ無くて刑事気分なんですか? 焼きそばパン買ってきます? 探偵:お、買ってきてくれるの? ユキコも頼むわ。 助手:いや、所長が。 探偵:俺かよ。所長を顎で使うたぁ、出世したな、助手君。 助手:あんたが出世も成長もしなければ嫌でも助手の僕が伸びますよ。 探偵:増長しやがって最近の若者はよぉ。てめぇはうだうだ言わず俺の下で働いてりゃ良いんだよ。下っ端。 助手:おや、パワハラですか? 労基にたれ込みますよ? 実はこの会話録音してるんです。 探偵:嘘つけ。 助手:はい。 : 0:助手、スマホの画面を見せる。 : 探偵:うわ、マジだこいつ。 助手:それ以外にも色んな記録ありますよ。飲み会のアルハラとか、あと依頼女性へのえげつないセクハラとか。 探偵:そ、そんなことしてねぇよ!? セクハラって、俺、女性の嫌がることはしません! 絶対に。 助手:ああ、酒の席で言った僕に対してセクハラっぽい部分だけ拾って、依頼女性との会話で立て板に水のごとく、のべつまくなしの隠語下ネタ官能用語卑猥発言オンパレードしてるゲス男に編集しました。 探偵:捏造だろうが! 助手:訴えられたくなけりゃ、待遇改善を要求します。 探偵:脅迫には屈しない。 助手:ワンクリックで動画サイトにアップしちゃおうかなー。 探偵:……要求は何だ? 助手:ハーゲンダッツ。 探偵:買いに行けば良いんだろ。 助手:あ、待って、マル対出てきそう。 探偵:何、やっと動いたか? どんだけお楽しみなんだよ。 助手:まー、真っ黒ですからね。 探偵:ドア、開くぞ、カメラ。 助手:もう向けてます。 探偵:…………、違うやつだな。 助手:……ですね。たぶんあれもクロですけど。 探偵:かー! もう三時間だぞ!? 助手:そんだけ本気なんでしょ。 探偵:それ、クライアントに絶対言うなよ。 助手:事実でしょうが。言った方が却って喜びますよ。 探偵:悲しむんだよ、あのタイプは。 助手:何やったって悲しむでしょ。なら、早いか遅いかの違いでしょ。 探偵:それはそうなんだが、その辺の機微が分かんねぇかな? お前は。 助手:分かりませんよ。ただ僕に分かるのは、あのおっさんがすごい良い顔で出て来るってことですよ。 探偵:……だろうな。 助手:ええ。 探偵:にしても、下手に動けねぇな。こりゃハーゲンダッツもお預けだな。 助手:そうでもありませんよ。 探偵:あぁ? 助手:写真は僕だけでどうにかなるので、所長は別にいりませんし。 探偵:何だと? 助手:いい加減カメラの使い方覚えて下さいよ。スマホしか使えないとか困りません? 探偵:うるせぇな、お前こそさっさと車の免許取れよ。所長を足に使うな。 助手:いやぁ、なかなか良い気分ですよ。 探偵:この野郎……。 助手:あ、ドア開きます。 探偵:何? 助手:…………スカですね。 探偵:……スカというか、スーツ二人だったけどよ。 助手:色々あるんでしょうよ。 探偵:まぁ、色々あるんだろうな。 助手:今回、なんかめっちゃだるいですね。面取りからして、奥さん頑なに写真渡さなかったし、やる気あんのかって。まぁ、所長が口説いてくれたおかげですぐにマル対の行動は把握できましたが。 探偵:口説く言うな。 助手:そのくせ証拠は掴ませないというか、警戒心が高いというか。 探偵:まぁ、奴さん休み自体少なくて多忙だからな。それにしてもまさか一ヶ月もかかるとは。 助手:その貴重な休暇で不貞行為に勤しんでるんだから、ほんと働き者ですよね。 探偵:言い方気をつけろよお前。 助手:へいへい。 探偵:……はぁ。お前、なんで探偵になんてなったんだよ。 助手:なんでって、いやいや、所長が誘ったんでしょ。 探偵:あれ? そうだっけ? 助手:そうだっけ? じゃないですよ。 探偵:まぁでも、俺が誘うってこたぁ、よっぽどやる気に満ち溢れてたんだな。 助手:そう見えますか? 探偵:俺の溢れんばかりの観察眼を以てしても、到底そうは見えんな。 助手:でしょうよ。 探偵:お前って推理小説好き? 助手:どちらかというと、刑事物のドラマの方が好きですね。てか、それは所長の趣味の話でしょ。 探偵:スパイ映画は? 助手:同じ暗躍する系だったら泥棒の方が好きです。 探偵:分かる。 助手:あんた推理下手か。 探偵:いや、そんなことは無いぞ! ちょっと糖分足りなくて集中力が切れてるだけだ。 助手:早くあんたの好きなユキコと焼きそばパンと僕のハーゲンダッツと買ってこいや。 探偵:助手君行ってきて? 助手:やだよ。 探偵:ケチ。 助手:てか、あんたじゃ写真撮れねぇだろって、ポンコツが。 探偵:ポンコツ言うなぁ! 所長だぞぉ!? 助手:その推理力をポンコツと言わずしてなんて言うんだよ。 探偵:ぐぬぬ……。 助手:ていうか、これは推理以前にただの健忘ですが。 探偵:俺も歳だしな。 助手:しっかりして下さいよ。 探偵:にしてもおめぇ、こんな華やかさの欠片もない仕事の何が良くて始めたんだ? 助手:じゃあ所長はなんで始めたんだよって話ですよ。 探偵:あ? 俺? 推理してみろよ優秀な助手君。 助手:人の役に立ちたい。 探偵:ふふん。 助手:って柄でも無いでしょうし。 探偵:柄でもねぇってなんだよ。そうだけどよ。 助手:まぁ、そうすね……。できたから。 探偵:……。 助手:ってところですか? 探偵:…………違うし。 助手:……あぁ、本当にそうなんですね。 探偵:違うって言わなかった?! 助手:顔が嘘つくときの顔でしたよ。 探偵:顔ってお前、ずっと窓の向こうのホテル見てただろうが。 助手:窓の反射で見えるんすよ。顔。 探偵:優秀か。 助手:まぁ、でも……。 探偵:あぁ? 助手:所長って意外に経営の才能ありますよね。 探偵:なんだよ藪から棒に。 助手:いや、尊敬してるんですよ。 探偵:お前に一番似合わない言葉だな。尊敬。 助手:まぁ、基本的に所長の尊敬できるとことか少ないですし。 探偵:んだと? 助手:ははは、すみませんって。まぁでも、何だかんだでうち、ちゃんと黒字ですしね。 探偵:そら、頑張ってるからな。 助手:もっと頑張って給料上げてくださいよ。 探偵:お前が結果出したらな。 助手:出してるでしょうが。 探偵:それもそうだな。 助手:あぁ、あと所長って人言いくるめるの巧いですよね。なんだかんだ。 探偵:なんだかんだってなんだおめぇ。 助手:足下見るの上手で、話聞き出すの得意。 探偵:褒めんなよ。照れるわ。 助手:おまけに顔はめっちゃ普通。 探偵:喧しいわ! 馬鹿にしてんのか! 助手:うるせ!? いや、別に馬鹿にしてませんって。そんなに。 探偵:してるだろうが絶対。 助手:なんていうか、所長って要領良いですよね。 探偵:嫌味か? 助手:いやいや、多分所長ってこの仕事やってなかったら詐欺師か、……ヒモですね。 探偵:何そのクソみたいな二択! お前の中の俺って何なの? 助手:どっちにしても今より良い暮らししてそうですが。 探偵:喧しいわ。給料減らすぞ。 助手:ははは。すみませんすみません。 探偵:まったく、てめぇはよぉ。 助手:まぁ、でも知ってますよ。 探偵:何が? 助手:所長って、利益あんまり気にしてないですもんね。無欲というか。 探偵:あぁ? 無欲? んなもん気にしてるに決まってんだろ。俺はリッチだからな。 助手:それは知りませんが。できることをやってる感じですね。 探偵:俺のプロファイリングやめろや。テメェはどうなんだよまこと。 助手:僕ですか? 僕は僕のやりたいことをやってますよ。 探偵:やりたいこと? 俺への嫌がらせか? 助手:それもですが。 探偵:おいこら、 助手:写真ですよ。 探偵:写真? 助手:ていうか、その技術見込んで雇ったんじゃないんですね。 探偵:何の話だ? 俺はお前の目が気に入ったから雇ったんだよ。 助手:なんすかそのふわっとした理由。ほんと、人を見る目があるのやら無いのやら。 探偵:お前、カメラ好きだったのか? 助手:そうですね、たぶん。 探偵:なんだ、曖昧だな。でもそれならよ、写真家とかカメラマンで良かったんじゃねぇか? 助手:……どうでしょうね。……! 探偵:どした? 助手:来ます。ちょっと黙って。 探偵:……! おう。 : 0:間。シャッター音。 : 助手:ははっ……! 探偵:どうだ、撮れたか? 助手:ええ。とても良いのがね。 探偵:で、どうする? 助手:車回して下さい。多分、この先の地下鉄のとこで別れるはずです。改札まで行かずに入り口で。なので反対車線のとこに車停めましょう、ダッシュで。でも急ぎすぎて違和感与えたら駄目ですよ、見えないところで素早くスムーズに。 探偵:注文が多いなぁ、助手君。 : 0:車走り出す。 : 助手:ふふっ、この写真見て下さいよ、所長。 探偵:あぁ? 助手:ははは。すごい素敵な表情だと思いません? 探偵:運転中に見れるか馬鹿。 助手:きっとこの人、この世の誰より幸せな顔してるんですよ。 探偵:そいつは見えねぇけどよ、お前も今、たぶん同じ顔をしてると思うぜ。 助手:僕が? ……そうかも知れませんね。 探偵:はぁ。 助手:悪趣味でしょう? 探偵:……そうだな。 助手:ですよね。 探偵:でも、それがお前にできるお前の才能なんだろ? 助手:ええ。僕は、人の醜悪で、けれど美しい一面を撮りたい。 探偵:…………。 助手:強欲というか、我ながら業が深いというか、浅ましいんですよね。 探偵:かもな。 助手:でも、良いんです。 探偵:まこと? 助手:これが僕の天職なんだと思いますよ。 探偵:天職、か。まぁお前がそんなに気に入ってるんなら、何も言わねぇよ、俺は。写真家でもカメラマンでもなくこの仕事ってんならよ。 助手:ありがとうございます。 探偵:……おし、着いたぞ。奴さんまだ来てねぇな。よほどゆっくり幸せを楽しみてぇらしい。 助手:僕、車降りますね。車の陰からならベストショットいけそうです。 探偵:おう、行ってこい探偵さん。 助手:ええ、所長。 : 0:助手、車を降りる。 : 助手:……あ、ちなみに、この世で一番つまらない被写体分かりますか? 探偵:つまらないもの? さてな、見当もかんよ。 : 0:助手、探偵の写真を撮る。 : 探偵:なんで今俺を撮る。 助手:所長ですよ。 探偵:俺? 助手:なんですか? その綺麗で幸せそうな顔。だから所長の写真はカスなんですよ。 探偵:喧しいわ。とっとと良い写真撮ってこい。 助手:えぇ、所長も良いハーゲンダッツ買ってきて下さいね。 探偵:何だそれ。はぁ、分かったよ。 助手:……来ました! これは……最高ですね。 探偵:やれやれ。 : 0:◇■■◇