台本概要
206 views
タイトル | イルミネーション。 |
---|---|
作者名 | 音佐りんご。 (@ringo_otosa) |
ジャンル | ラブストーリー |
演者人数 | 1人用台本(女1) |
時間 | 10 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
・あらすじ 病室で眠る男と、面会に来た女の話。 ※ 大阪の話です。 206 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
女 | 女 | 5 | 清水叶音(しみずかのん) |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
0:『イルミネーション。』
0:病室。
0:ベッドに男「石田博稀(いしだひろき)」が横たわっている。
0:扉を開けて女「清水叶音(しみずかのん)」が入ってくると、傍らの椅子に掛ける。
0:女、男の顔を見つめて微笑む。
女:やっほー、ヒロキくん。もうすぐクリスマスやな。
女:久しぶり。
女:なんか、梅田でイルミネーション見て思い出しちゃってん。ヒロキくんのこと。
女:忘れたつもりやってんけどな、あの時から、変わらへんねんな。
女:なぁ。歩いたん憶えてる? 御堂筋。
女:そうそう、梅田から難波まで。
女:あの日めっちゃ寒かったやんな。
女:やのに上タンクトップで、下びちゃびちゃの黒スキニー。
女:時空(とき)の広場現れたとき、新手の変態かと思ったわ。
女:全然来ぉへんからとうとうウチふられたんやなって、もう半泣きやったのに。涙引っ込んだわ。
女:もう、嘘ちゃうわ。どうやってぶっ殺したろかーとかそんなん考えてへんわ、なんや相変わらず失礼なやっちゃな。ウチのことなんやおもてんの?
女:言うて、いっぺんシバいて爪剥いだろかーくらいやわ。
女:いや、めっちゃ寒かってんもん。そら爪の一枚や二枚剥がれてもしゃーないて。安い買い物やで? それにヒロキくんのネイルむっちゃ綺麗やし。
0:女、男の手を見る。
女:もう、やめてんな。冬の空みたいに、ちょっと寂しくて、ウチ、すごい好きやったわあの青いネイル。そしたら、あれやな。戦利品。餞別かも知れんな。というより……。ううん、なんでも。
女:道頓堀泳いできたんやんな、あの時。子供落ちたって。
女:けど飛び込む? 普通、いや分かるけど。そういう性格なん。
女:冬やでヒロキくん、しかもウチとのデートの前。
女:そういうとこほんま頭おかしいよな。
女:そういうとこほんま嫌いやないけど。
女:アホやわぁ。
女:ウチ、あのかっこ見て目疑ったわ。
女:ほんで、耳疑った。人格も。
女:だって、アホやん。ここに、目の前にアホがおるわ。って。
女:いや、嘘やろ。
女:またアホやってるって。
女:けど、嘘じゃないねんやろなって。許したわ。
女:許してあげたわ。しゃーなしやで?
女:てか、許す以前に、困惑やでウチ。
女:初めてやったわ。
女:イルミネーション、タンクトップのやつと一緒に歩いたん。
女:みんなイルミネーションよりヒロキくんばっか見てたわ。
女:あの時ウチ、めっちゃ恥ずかしかったわ。
女:やから、めっちゃ見られてんで? って言ったら。
女:あぁ。綺麗やもんなカノンは。
女:いや、あんたや。
女:もう。道頓堀から走ってきて、また一緒に戻るんもわけ分からんし。もう分からん過ぎて逆にドキドキした。吊り橋効果か。
女:いつまでも、こんな時間が続いたらって。
女:言うて最悪やで。最悪の、クリスマス。
女:けど、悪いことって覚えてるもんなんやな。
女:忘れられへんわウチ。ヒロキくんのこと。一生。
女:レストランで、プロポーズされたこと。
女:ウチ、流石に断ったけどな。ずぶ濡れのタンクトップ男。よう店入れたわ。ほんま。
女:通報されんかったん奇跡やわ。
女:けど、そっか。奇跡も続かんかってんな。
女:良かったわ、断って。
女:今度は火の中やろ。好きやな。ほんま。
女:聞いたわ。
女:ウチ、あの話聞いて耳疑ったわ。
女:ほんで、目疑ってる。現実も?
女:だって、おるやん。ここに。目の前で寝てるだけやわ。って。
女:いや、アホやろ。
女:また嘘ばっかりって。
女:けど、嘘じゃ、ないねんやろなって。認めたなかったわ。
女:聞きたくなかった。
女:知らんかったら、出会わんかったら、どんなによかったんやろ?
女:こんなん、おかしいよな。
女:好きやったのに、振って。
女:そんで今更になって、ウチ。
女:ほんま、……アホやわぁ。
女:何回も思ったわ。
女:いつか、こんな日が来るんやろなって。
女:燃えとるビル突っ込んで、とり残されてた親子助けて帰ったって。
女:でも、体だけ。
女:やから、ほんま、よかった。
女:危うく、ウチ未亡人なるとこやった。
女:ちゃうな。生きてるんやった。
女:ウチ、最低やな。けど、最低なんはヒロキくんも。
女:言うて、正解やで。振って、振られて、一緒におらんくて正解、なんやで。
女:けどあの時。
女:もし、間違えてたら。って。
0:間。
女:そんなアホなこと、今でも思ってしまうねん。
女:死ぬまで。ううん、死んでも。
女:許してな。そろそろ、行くわ。
0:女、立ち上がり、
女:……なぁ。ヒロキくん。
0:男の手を取る。
女:手ぇ、あったかいかいな。
女:あの日よりもあったかいわ。
女:なぁ。歩いたん、忘れへんで?
女:梅田から難波まで。
女:また、歩きたいな、御堂筋。
女:もう、歩けへんな。御堂筋。
女:もうすぐ、クリスマスやな。
女:またな、ヒロキくん。
女:好きやったで。
0:女、病室を去り、男の穏やかな寝息だけが残る。
0:『イルミネーション。』
0:病室。
0:ベッドに男「石田博稀(いしだひろき)」が横たわっている。
0:扉を開けて女「清水叶音(しみずかのん)」が入ってくると、傍らの椅子に掛ける。
0:女、男の顔を見つめて微笑む。
女:やっほー、ヒロキくん。もうすぐクリスマスやな。
女:久しぶり。
女:なんか、梅田でイルミネーション見て思い出しちゃってん。ヒロキくんのこと。
女:忘れたつもりやってんけどな、あの時から、変わらへんねんな。
女:なぁ。歩いたん憶えてる? 御堂筋。
女:そうそう、梅田から難波まで。
女:あの日めっちゃ寒かったやんな。
女:やのに上タンクトップで、下びちゃびちゃの黒スキニー。
女:時空(とき)の広場現れたとき、新手の変態かと思ったわ。
女:全然来ぉへんからとうとうウチふられたんやなって、もう半泣きやったのに。涙引っ込んだわ。
女:もう、嘘ちゃうわ。どうやってぶっ殺したろかーとかそんなん考えてへんわ、なんや相変わらず失礼なやっちゃな。ウチのことなんやおもてんの?
女:言うて、いっぺんシバいて爪剥いだろかーくらいやわ。
女:いや、めっちゃ寒かってんもん。そら爪の一枚や二枚剥がれてもしゃーないて。安い買い物やで? それにヒロキくんのネイルむっちゃ綺麗やし。
0:女、男の手を見る。
女:もう、やめてんな。冬の空みたいに、ちょっと寂しくて、ウチ、すごい好きやったわあの青いネイル。そしたら、あれやな。戦利品。餞別かも知れんな。というより……。ううん、なんでも。
女:道頓堀泳いできたんやんな、あの時。子供落ちたって。
女:けど飛び込む? 普通、いや分かるけど。そういう性格なん。
女:冬やでヒロキくん、しかもウチとのデートの前。
女:そういうとこほんま頭おかしいよな。
女:そういうとこほんま嫌いやないけど。
女:アホやわぁ。
女:ウチ、あのかっこ見て目疑ったわ。
女:ほんで、耳疑った。人格も。
女:だって、アホやん。ここに、目の前にアホがおるわ。って。
女:いや、嘘やろ。
女:またアホやってるって。
女:けど、嘘じゃないねんやろなって。許したわ。
女:許してあげたわ。しゃーなしやで?
女:てか、許す以前に、困惑やでウチ。
女:初めてやったわ。
女:イルミネーション、タンクトップのやつと一緒に歩いたん。
女:みんなイルミネーションよりヒロキくんばっか見てたわ。
女:あの時ウチ、めっちゃ恥ずかしかったわ。
女:やから、めっちゃ見られてんで? って言ったら。
女:あぁ。綺麗やもんなカノンは。
女:いや、あんたや。
女:もう。道頓堀から走ってきて、また一緒に戻るんもわけ分からんし。もう分からん過ぎて逆にドキドキした。吊り橋効果か。
女:いつまでも、こんな時間が続いたらって。
女:言うて最悪やで。最悪の、クリスマス。
女:けど、悪いことって覚えてるもんなんやな。
女:忘れられへんわウチ。ヒロキくんのこと。一生。
女:レストランで、プロポーズされたこと。
女:ウチ、流石に断ったけどな。ずぶ濡れのタンクトップ男。よう店入れたわ。ほんま。
女:通報されんかったん奇跡やわ。
女:けど、そっか。奇跡も続かんかってんな。
女:良かったわ、断って。
女:今度は火の中やろ。好きやな。ほんま。
女:聞いたわ。
女:ウチ、あの話聞いて耳疑ったわ。
女:ほんで、目疑ってる。現実も?
女:だって、おるやん。ここに。目の前で寝てるだけやわ。って。
女:いや、アホやろ。
女:また嘘ばっかりって。
女:けど、嘘じゃ、ないねんやろなって。認めたなかったわ。
女:聞きたくなかった。
女:知らんかったら、出会わんかったら、どんなによかったんやろ?
女:こんなん、おかしいよな。
女:好きやったのに、振って。
女:そんで今更になって、ウチ。
女:ほんま、……アホやわぁ。
女:何回も思ったわ。
女:いつか、こんな日が来るんやろなって。
女:燃えとるビル突っ込んで、とり残されてた親子助けて帰ったって。
女:でも、体だけ。
女:やから、ほんま、よかった。
女:危うく、ウチ未亡人なるとこやった。
女:ちゃうな。生きてるんやった。
女:ウチ、最低やな。けど、最低なんはヒロキくんも。
女:言うて、正解やで。振って、振られて、一緒におらんくて正解、なんやで。
女:けどあの時。
女:もし、間違えてたら。って。
0:間。
女:そんなアホなこと、今でも思ってしまうねん。
女:死ぬまで。ううん、死んでも。
女:許してな。そろそろ、行くわ。
0:女、立ち上がり、
女:……なぁ。ヒロキくん。
0:男の手を取る。
女:手ぇ、あったかいかいな。
女:あの日よりもあったかいわ。
女:なぁ。歩いたん、忘れへんで?
女:梅田から難波まで。
女:また、歩きたいな、御堂筋。
女:もう、歩けへんな。御堂筋。
女:もうすぐ、クリスマスやな。
女:またな、ヒロキくん。
女:好きやったで。
0:女、病室を去り、男の穏やかな寝息だけが残る。