台本概要

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タイトル イルミネーション。
作者名 音佐りんご。  (@ringo_otosa)
ジャンル ラブストーリー
演者人数 1人用台本(女1)
時間 10 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 ・あらすじ
病室で眠る男と、面会に来た女の話。
※ 大阪の話です。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
5 清水叶音(しみずかのん)
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
0:『イルミネーション。』 0:病室。 0:ベッドに男「石田博稀(いしだひろき)」が横たわっている。 0:扉を開けて女「清水叶音(しみずかのん)」が入ってくると、傍らの椅子に掛ける。 0:女、男の顔を見つめて微笑む。 女:やっほー、ヒロキくん。もうすぐクリスマスやな。 女:久しぶり。 女:なんか、梅田でイルミネーション見て思い出しちゃってん。ヒロキくんのこと。 女:忘れたつもりやってんけどな、あの時から、変わらへんねんな。 女:なぁ。歩いたん憶えてる? 御堂筋。 女:そうそう、梅田から難波まで。 女:あの日めっちゃ寒かったやんな。 女:やのに上タンクトップで、下びちゃびちゃの黒スキニー。 女:時空(とき)の広場現れたとき、新手の変態かと思ったわ。 女:全然来ぉへんからとうとうウチふられたんやなって、もう半泣きやったのに。涙引っ込んだわ。 女:もう、嘘ちゃうわ。どうやってぶっ殺したろかーとかそんなん考えてへんわ、なんや相変わらず失礼なやっちゃな。ウチのことなんやおもてんの? 女:言うて、いっぺんシバいて爪剥いだろかーくらいやわ。 女:いや、めっちゃ寒かってんもん。そら爪の一枚や二枚剥がれてもしゃーないて。安い買い物やで? それにヒロキくんのネイルむっちゃ綺麗やし。 0:女、男の手を見る。 女:もう、やめてんな。冬の空みたいに、ちょっと寂しくて、ウチ、すごい好きやったわあの青いネイル。そしたら、あれやな。戦利品。餞別かも知れんな。というより……。ううん、なんでも。 女:道頓堀泳いできたんやんな、あの時。子供落ちたって。 女:けど飛び込む? 普通、いや分かるけど。そういう性格なん。 女:冬やでヒロキくん、しかもウチとのデートの前。 女:そういうとこほんま頭おかしいよな。 女:そういうとこほんま嫌いやないけど。 女:アホやわぁ。 女:ウチ、あのかっこ見て目疑ったわ。 女:ほんで、耳疑った。人格も。 女:だって、アホやん。ここに、目の前にアホがおるわ。って。 女:いや、嘘やろ。 女:またアホやってるって。 女:けど、嘘じゃないねんやろなって。許したわ。 女:許してあげたわ。しゃーなしやで? 女:てか、許す以前に、困惑やでウチ。 女:初めてやったわ。 女:イルミネーション、タンクトップのやつと一緒に歩いたん。 女:みんなイルミネーションよりヒロキくんばっか見てたわ。 女:あの時ウチ、めっちゃ恥ずかしかったわ。 女:やから、めっちゃ見られてんで? って言ったら。 女:あぁ。綺麗やもんなカノンは。 女:いや、あんたや。 女:もう。道頓堀から走ってきて、また一緒に戻るんもわけ分からんし。もう分からん過ぎて逆にドキドキした。吊り橋効果か。 女:いつまでも、こんな時間が続いたらって。 女:言うて最悪やで。最悪の、クリスマス。 女:けど、悪いことって覚えてるもんなんやな。 女:忘れられへんわウチ。ヒロキくんのこと。一生。 女:レストランで、プロポーズされたこと。 女:ウチ、流石に断ったけどな。ずぶ濡れのタンクトップ男。よう店入れたわ。ほんま。 女:通報されんかったん奇跡やわ。 女:けど、そっか。奇跡も続かんかってんな。 女:良かったわ、断って。 女:今度は火の中やろ。好きやな。ほんま。 女:聞いたわ。 女:ウチ、あの話聞いて耳疑ったわ。 女:ほんで、目疑ってる。現実も? 女:だって、おるやん。ここに。目の前で寝てるだけやわ。って。 女:いや、アホやろ。 女:また嘘ばっかりって。 女:けど、嘘じゃ、ないねんやろなって。認めたなかったわ。 女:聞きたくなかった。 女:知らんかったら、出会わんかったら、どんなによかったんやろ? 女:こんなん、おかしいよな。 女:好きやったのに、振って。 女:そんで今更になって、ウチ。 女:ほんま、……アホやわぁ。 女:何回も思ったわ。 女:いつか、こんな日が来るんやろなって。 女:燃えとるビル突っ込んで、とり残されてた親子助けて帰ったって。 女:でも、体だけ。 女:やから、ほんま、よかった。 女:危うく、ウチ未亡人なるとこやった。 女:ちゃうな。生きてるんやった。 女:ウチ、最低やな。けど、最低なんはヒロキくんも。 女:言うて、正解やで。振って、振られて、一緒におらんくて正解、なんやで。 女:けどあの時。 女:もし、間違えてたら。って。 0:間。 女:そんなアホなこと、今でも思ってしまうねん。 女:死ぬまで。ううん、死んでも。 女:許してな。そろそろ、行くわ。 0:女、立ち上がり、 女:……なぁ。ヒロキくん。 0:男の手を取る。 女:手ぇ、あったかいかいな。 女:あの日よりもあったかいわ。 女:なぁ。歩いたん、忘れへんで? 女:梅田から難波まで。 女:また、歩きたいな、御堂筋。 女:もう、歩けへんな。御堂筋。 女:もうすぐ、クリスマスやな。 女:またな、ヒロキくん。 女:好きやったで。 0:女、病室を去り、男の穏やかな寝息だけが残る。

0:『イルミネーション。』 0:病室。 0:ベッドに男「石田博稀(いしだひろき)」が横たわっている。 0:扉を開けて女「清水叶音(しみずかのん)」が入ってくると、傍らの椅子に掛ける。 0:女、男の顔を見つめて微笑む。 女:やっほー、ヒロキくん。もうすぐクリスマスやな。 女:久しぶり。 女:なんか、梅田でイルミネーション見て思い出しちゃってん。ヒロキくんのこと。 女:忘れたつもりやってんけどな、あの時から、変わらへんねんな。 女:なぁ。歩いたん憶えてる? 御堂筋。 女:そうそう、梅田から難波まで。 女:あの日めっちゃ寒かったやんな。 女:やのに上タンクトップで、下びちゃびちゃの黒スキニー。 女:時空(とき)の広場現れたとき、新手の変態かと思ったわ。 女:全然来ぉへんからとうとうウチふられたんやなって、もう半泣きやったのに。涙引っ込んだわ。 女:もう、嘘ちゃうわ。どうやってぶっ殺したろかーとかそんなん考えてへんわ、なんや相変わらず失礼なやっちゃな。ウチのことなんやおもてんの? 女:言うて、いっぺんシバいて爪剥いだろかーくらいやわ。 女:いや、めっちゃ寒かってんもん。そら爪の一枚や二枚剥がれてもしゃーないて。安い買い物やで? それにヒロキくんのネイルむっちゃ綺麗やし。 0:女、男の手を見る。 女:もう、やめてんな。冬の空みたいに、ちょっと寂しくて、ウチ、すごい好きやったわあの青いネイル。そしたら、あれやな。戦利品。餞別かも知れんな。というより……。ううん、なんでも。 女:道頓堀泳いできたんやんな、あの時。子供落ちたって。 女:けど飛び込む? 普通、いや分かるけど。そういう性格なん。 女:冬やでヒロキくん、しかもウチとのデートの前。 女:そういうとこほんま頭おかしいよな。 女:そういうとこほんま嫌いやないけど。 女:アホやわぁ。 女:ウチ、あのかっこ見て目疑ったわ。 女:ほんで、耳疑った。人格も。 女:だって、アホやん。ここに、目の前にアホがおるわ。って。 女:いや、嘘やろ。 女:またアホやってるって。 女:けど、嘘じゃないねんやろなって。許したわ。 女:許してあげたわ。しゃーなしやで? 女:てか、許す以前に、困惑やでウチ。 女:初めてやったわ。 女:イルミネーション、タンクトップのやつと一緒に歩いたん。 女:みんなイルミネーションよりヒロキくんばっか見てたわ。 女:あの時ウチ、めっちゃ恥ずかしかったわ。 女:やから、めっちゃ見られてんで? って言ったら。 女:あぁ。綺麗やもんなカノンは。 女:いや、あんたや。 女:もう。道頓堀から走ってきて、また一緒に戻るんもわけ分からんし。もう分からん過ぎて逆にドキドキした。吊り橋効果か。 女:いつまでも、こんな時間が続いたらって。 女:言うて最悪やで。最悪の、クリスマス。 女:けど、悪いことって覚えてるもんなんやな。 女:忘れられへんわウチ。ヒロキくんのこと。一生。 女:レストランで、プロポーズされたこと。 女:ウチ、流石に断ったけどな。ずぶ濡れのタンクトップ男。よう店入れたわ。ほんま。 女:通報されんかったん奇跡やわ。 女:けど、そっか。奇跡も続かんかってんな。 女:良かったわ、断って。 女:今度は火の中やろ。好きやな。ほんま。 女:聞いたわ。 女:ウチ、あの話聞いて耳疑ったわ。 女:ほんで、目疑ってる。現実も? 女:だって、おるやん。ここに。目の前で寝てるだけやわ。って。 女:いや、アホやろ。 女:また嘘ばっかりって。 女:けど、嘘じゃ、ないねんやろなって。認めたなかったわ。 女:聞きたくなかった。 女:知らんかったら、出会わんかったら、どんなによかったんやろ? 女:こんなん、おかしいよな。 女:好きやったのに、振って。 女:そんで今更になって、ウチ。 女:ほんま、……アホやわぁ。 女:何回も思ったわ。 女:いつか、こんな日が来るんやろなって。 女:燃えとるビル突っ込んで、とり残されてた親子助けて帰ったって。 女:でも、体だけ。 女:やから、ほんま、よかった。 女:危うく、ウチ未亡人なるとこやった。 女:ちゃうな。生きてるんやった。 女:ウチ、最低やな。けど、最低なんはヒロキくんも。 女:言うて、正解やで。振って、振られて、一緒におらんくて正解、なんやで。 女:けどあの時。 女:もし、間違えてたら。って。 0:間。 女:そんなアホなこと、今でも思ってしまうねん。 女:死ぬまで。ううん、死んでも。 女:許してな。そろそろ、行くわ。 0:女、立ち上がり、 女:……なぁ。ヒロキくん。 0:男の手を取る。 女:手ぇ、あったかいかいな。 女:あの日よりもあったかいわ。 女:なぁ。歩いたん、忘れへんで? 女:梅田から難波まで。 女:また、歩きたいな、御堂筋。 女:もう、歩けへんな。御堂筋。 女:もうすぐ、クリスマスやな。 女:またな、ヒロキくん。 女:好きやったで。 0:女、病室を去り、男の穏やかな寝息だけが残る。