台本概要

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タイトル イルミネーション。~追憶~
作者名 音佐りんご。  (@ringo_otosa)
ジャンル ラブストーリー
演者人数 2人用台本(男1、女1)
時間 20 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 ・あらすじ
病室で眠る男と、面会に来た女の話。
※ 大阪の話です。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
123 清水叶音(しみずかのん)
122 石田博稀(いしだひろき) ※ 本編での台詞は回想。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

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0:『イルミネーション。』 0:病室。 0:ベッドに男「石田博稀(いしだひろき)」が横たわっている。 ※以下、男の台詞は回想。 0:扉を開けて女「清水叶音(しみずかのん)」が入ってくると、傍らの椅子に掛ける。 0:女、男の顔を見つめて微笑む。 男:すまん、待たせた! 女:やっほー、ヒロキくん。 女:もうすぐクリスマスやな。 女:久しぶり。 男:いや、忘れてたわけじゃないって! 女:なんか、梅田でイルミネーション見て思い出しちゃってん。ヒロキくんのこと。 男:カノンのこと忘れるわけないやん! 女:忘れたつもりやってんけどな、あの時から、変わらへんねんな。 男:俺のこの熱い想いはそんな簡単に変わったりせぇへん! 女:なぁ。歩いたん憶えてる? 男:もちろんや! 女:御堂筋。 男:御堂筋、歩く約束やんな? 女:そうそう、梅田から難波まで。 男:ずーっとイルミネーションが続いてるとこ。 女:あの日めっちゃ寒かったやんな。 男:今日、めっちゃ寒いよな? 女:やのに上タンクトップで、下びちゃびちゃの黒スキニー。 男:へーきへーき。俺よりカノンは? 女:時空(とき)の広場現れたとき、新手の変態かと思ったわ。 男:ごめんな、上着どっかで落としてもうたみたいやわ。 女:全然来ぉへんからとうとうウチふられたんやなって、もう半泣きやったのに。涙引っ込んだわ。 男:あー、もしかして、怒ってる? 嘘やん。 女:もう、嘘ちゃうわ。 男:どうやってぶっ殺したろかこのアホーって顔してるやん!? 女:どうやってぶっ殺したろかーとかそんなん考えてへんわ、なんや相変わらず失礼なやっちゃな。ウチのことなんやおもてんの? 男:麗しき俺の女神(ミューズ)。ただし、 女:言うて、 男:キレると般若? 女:いっぺんシバいて爪剥いだろかーくらいやわ。 男:こっわ! 女:いや、めっちゃ寒かってんもん。 男:それはほんますまんて。 女:そら爪の一枚や二枚剥がれてもしゃーないて。 男:えらい高うついてもうたな……。 女:安い買い物やで? 男:どこが!? 女:それにヒロキくんのネイルむっちゃ綺麗やし。 男:いやいや、カノンの方が綺麗やで。 0:女、男の手を見る。 女:もう、やめてんな。冬の空みたいに、ちょっと寂しくて、ウチ、すごい好きやったわあの青いネイル。 男:そんな好き? あげよか? むっちゃ痛そうやけど、それで機嫌直してくれるなら、男見せたるわ。 女:そしたら、あれやな。戦利品。餞別かも知れんな。というより……。 男:どしたん? 女:ううん、なんでも。 男:じゃあ、行こか。歩きながら話そ? 寒なってきたし。 女:道頓堀泳いできたんやんな、 男:泳いだというと語弊あるけど。 女:あの時。子供落ちたって。 男:そうそう。観光来てた親子連れが、写真撮ろうとして……。どぼん。 女:けど飛び込む? 普通、 男:行かんかったら死んでまうからな。分かるやろ? 女:いや分かるけど。 男:勝手に体動いてた。 女:そういう性格なん。 男:へぇっくしょい! 女:冬やでヒロキくん、しかもウチとのデートの前。 男:おー。冷える冷える。寒いやろ? 手ぇつなごか。 女:そういうとこほんま頭おかしいよな。 男:えー? 嫌なん? 女:そういうとこほんま嫌いやないけど。 男:カノンのこと大好きやわ。 女:アホやわぁ。 男:うっわ。手ぇめっちゃあったかい。ずっとこうしてたいなぁ。 女:ウチ、あのかっこ見て目疑ったわ。 男:ちょぉ、なんでそんな目で見るんよ? 女:ほんで、耳疑った。人格も。 男:そんな嫌がらんとってや、寂しいわぁ。 女:だって、アホやん。 男:そんな言う? 女:ここに、目の前にアホがおるわ。 男:水も滴る良い男って、正に俺のことやと思うんやけど。 女:って。いや、嘘やろ。 男:おれはいつも本気やで。 女:またアホやってるって。 男:まぁ、たまにはアホみたいなことも言うけどさ。 女:けど、 男:それは、 女:嘘じゃないねんやろなって。 男:カノンをほんまに笑わせたろ思てやから許してな? 女:許したわ。 男:さっすが女神やん! 女:許してあげたわ。しゃーなしやで? 男:ほんま心広くて、手ぇもあったかくて、最高やな。 女:てか、許す以前に、困惑やでウチ。 男:いや、そんな困った顔せんとってや。どしたん? 話聞くで? 女:初めてやったわ。 男:うん? 女:イルミネーション、タンクトップのやつと一緒に歩いたん。 男:俺? 女:みんなイルミネーションよりヒロキくんばっか見てたわ。 男:いやいやいやいや、そんなわけないやん。 女:あの時ウチ、めっちゃ恥ずかしかったわ。 男:気のせい気のせい。 女:やから、めっちゃ見られてんで? 男:そぉか。うん、でも、もしほんまに見られてるとしたら俺ちゃうな。 女:って言ったら。 男:あぁ、見られてもしゃーないな。 女:あぁ。 男:だって。 女:(同時に)綺麗やもんなカノンは。 男:(同時に)綺麗やもんなカノンは。 女:いや、あんたや。 女:もう。道頓堀から走ってきて、また一緒に戻るんもわけ分からんし。 男:こういうんもたのしない? 逆に。 女:もう分からん過ぎて逆にドキドキした。 男:せやろ? ジェットコースター乗った時みたいな。 女:吊り橋効果か。 男:あ。今度ユニバ行こ? ひらパーでもええで。 女:いつまでも、こんな時間が続いたら 男:ほんま幸せやなぁ。 女:って。 男:最高やわ。 女:言うて最悪やで。 男:最高の、クリスマス。 女:最悪の、クリスマス。 女:けど、悪いことって覚えてるもんなんやな。 男:えー、楽しい思い出いっぱいできた思うけどなぁ。 女:忘れられへんわウチ。 男:忘れたないことばっかやわ俺。 女:ヒロキくんのこと。一生。 男:カノンのこと。一生。ずっと傍で見てたいねん。 女:レストランで、 男:結婚、してくれへんか? 女:プロポーズ 男:いや、 女:されたこと。 男:結婚しよう。 女:ウチ、 男:……え? 女:流石に断ったけどな。 男:なんで? 女:ずぶ濡れのタンクトップ男。 男:けど、絶対幸せにするから。 女:よう店入れたわ。 男:あかんか? 女:ほんま。 男:……そっか。ならしゃあないやんな。 女:通報されんかったん奇跡やわ。 男:カノンと出会えただけで、奇跡やった。 女:けど、 男:それが一番やわ。今日も知らん子ども助けるために飛び込んだんやもんな。そんな男信用できんわ。 女:そっか。 男:そっか、 女:奇跡も続かんかってんな。 男:これでおしまい、か。 女:良かったわ、断って。 男:それでも、大好きやで。 女:今度は火の中やろ。 男:カノンのためならなんでもできる。 女:好きやな。ほんま。 男:それくらい好きやったのは、嘘じゃないから。 女:聞いたわ。 男:信じてくれる? 女:ウチ、あの話聞いて耳疑ったわ。 男:そう、やんな。 女:ほんで、目疑ってる。現実も? 男:はー。受け入れるんしんどいわ。 女:だって、おるやん。ここに。 男:明日から、おらんねんな、隣に。 女:目の前で寝てるだけやわ。 男:寝ても覚めても。 女:って。 男:カノンのこと考えてしまうんやろな。 女:いや、アホやろ。 男:せや、アホやで。 女:また嘘ばっかりって。 男:自分の心は偽れへんよ。 女:けど、嘘じゃ、ないねんやろなって。認めたなかったわ。 男:それでも、受け入れるしかないんやんな。やっぱり。 女:聞きたくなかった。 男:聞けて良かった。 女:知らんかったら、 男:知れてよかった。 女:出会わんかったら、 男:出会えて、 女:どんなに、 女:良かったんやろ? 男:良かったわ。 女:こんなん、おかしいよな。 男:笑っててな、ずっと。 女:好きやったのに、振って。 男:振られても、好きなんやもん。 女:そんで今更になって、ウチ。 男:幸せでいて欲しい。 女:ほんま、……アホやわぁ。 男:アホやからなぁ、俺。 女:何回も思ったわ。 男:ずっと想い続けてる。 女:いつか、 男:いつまでも、 女:こんな日が来るんやろなって。 男:こんな日が続けばいいのになって。 女:燃えとるビル突っ込んで、とり残されてた親子助けて帰ったって。 男:うん。 女:でも、体だけ。 男:……ごめんな。 女:やから、ほんま、よかった。 男:今まで心配ばっかりかけて。 女:危うく、ウチ未亡人なるとこやった。 男:そら、いつか死んでまうかもしれん。 女:ちゃうな。生きてるんやった。 男:カノンのこと、残して。 女:ウチ、最低やな。 男:オレ、最低やな。 女:けど、 男:けど、 女:最低なんはヒロキくんも。 男:カノンはほんま最高やから。 女:言うて、正解やで。 男:これだけは、言わせて。 女:振って、 男:振られて、 女:一緒におらんくて正解、なんやで。 男:一緒におれんくなっても、幸せや。 女:けどあの時。もし、 男:もしも、 女:間違えてたら。って。 0:間。 女:そんなアホなこと、今でも思ってしまうねん。 男:これから先どんな辛いことがあっても、今日ほどは辛くないで。 女:死ぬまで。 男:死んでも。 女:ううん、 男:ちゃうな、 女:死んでも。 男:生きるわ。 女:許してな。 男:ありがとう。今まで。 女:そろそろ、行くわ。 男:そう、やな。 0:女、立ち上がり、 女:……なぁ。ヒロキくん。 0:男の手を取る。 男:……なに? 女:手ぇ、あったかいかいな。 男:手ぇ、冷たいよな。 女:あの日よりもあったかいわ。 男:でもハートは熱く燃えてるから。 女:なぁ。歩いたん、忘れへんで? 男:あぁ。覚えとってくれたら、 女:梅田から難波まで。 男:どこまででも。 女:また、歩きたいな、御堂筋。 男:いつまででも。 女:もう、歩けへんな。御堂筋。 男:俺は俺でいられるから。 女:もうすぐ、クリスマスやな。 男:それじゃあ、もう会うこともないと思うけど、 女:またな、ヒロキくん。 男:さようなら、カノンさん。 女:好きやったで。 男:あなたの幸せを切に願って。 女:消えてしまった君のあの青いネイルが。 0:女、病室を去り、男の穏やかな寝息だけが残る。

0:『イルミネーション。』 0:病室。 0:ベッドに男「石田博稀(いしだひろき)」が横たわっている。 ※以下、男の台詞は回想。 0:扉を開けて女「清水叶音(しみずかのん)」が入ってくると、傍らの椅子に掛ける。 0:女、男の顔を見つめて微笑む。 男:すまん、待たせた! 女:やっほー、ヒロキくん。 女:もうすぐクリスマスやな。 女:久しぶり。 男:いや、忘れてたわけじゃないって! 女:なんか、梅田でイルミネーション見て思い出しちゃってん。ヒロキくんのこと。 男:カノンのこと忘れるわけないやん! 女:忘れたつもりやってんけどな、あの時から、変わらへんねんな。 男:俺のこの熱い想いはそんな簡単に変わったりせぇへん! 女:なぁ。歩いたん憶えてる? 男:もちろんや! 女:御堂筋。 男:御堂筋、歩く約束やんな? 女:そうそう、梅田から難波まで。 男:ずーっとイルミネーションが続いてるとこ。 女:あの日めっちゃ寒かったやんな。 男:今日、めっちゃ寒いよな? 女:やのに上タンクトップで、下びちゃびちゃの黒スキニー。 男:へーきへーき。俺よりカノンは? 女:時空(とき)の広場現れたとき、新手の変態かと思ったわ。 男:ごめんな、上着どっかで落としてもうたみたいやわ。 女:全然来ぉへんからとうとうウチふられたんやなって、もう半泣きやったのに。涙引っ込んだわ。 男:あー、もしかして、怒ってる? 嘘やん。 女:もう、嘘ちゃうわ。 男:どうやってぶっ殺したろかこのアホーって顔してるやん!? 女:どうやってぶっ殺したろかーとかそんなん考えてへんわ、なんや相変わらず失礼なやっちゃな。ウチのことなんやおもてんの? 男:麗しき俺の女神(ミューズ)。ただし、 女:言うて、 男:キレると般若? 女:いっぺんシバいて爪剥いだろかーくらいやわ。 男:こっわ! 女:いや、めっちゃ寒かってんもん。 男:それはほんますまんて。 女:そら爪の一枚や二枚剥がれてもしゃーないて。 男:えらい高うついてもうたな……。 女:安い買い物やで? 男:どこが!? 女:それにヒロキくんのネイルむっちゃ綺麗やし。 男:いやいや、カノンの方が綺麗やで。 0:女、男の手を見る。 女:もう、やめてんな。冬の空みたいに、ちょっと寂しくて、ウチ、すごい好きやったわあの青いネイル。 男:そんな好き? あげよか? むっちゃ痛そうやけど、それで機嫌直してくれるなら、男見せたるわ。 女:そしたら、あれやな。戦利品。餞別かも知れんな。というより……。 男:どしたん? 女:ううん、なんでも。 男:じゃあ、行こか。歩きながら話そ? 寒なってきたし。 女:道頓堀泳いできたんやんな、 男:泳いだというと語弊あるけど。 女:あの時。子供落ちたって。 男:そうそう。観光来てた親子連れが、写真撮ろうとして……。どぼん。 女:けど飛び込む? 普通、 男:行かんかったら死んでまうからな。分かるやろ? 女:いや分かるけど。 男:勝手に体動いてた。 女:そういう性格なん。 男:へぇっくしょい! 女:冬やでヒロキくん、しかもウチとのデートの前。 男:おー。冷える冷える。寒いやろ? 手ぇつなごか。 女:そういうとこほんま頭おかしいよな。 男:えー? 嫌なん? 女:そういうとこほんま嫌いやないけど。 男:カノンのこと大好きやわ。 女:アホやわぁ。 男:うっわ。手ぇめっちゃあったかい。ずっとこうしてたいなぁ。 女:ウチ、あのかっこ見て目疑ったわ。 男:ちょぉ、なんでそんな目で見るんよ? 女:ほんで、耳疑った。人格も。 男:そんな嫌がらんとってや、寂しいわぁ。 女:だって、アホやん。 男:そんな言う? 女:ここに、目の前にアホがおるわ。 男:水も滴る良い男って、正に俺のことやと思うんやけど。 女:って。いや、嘘やろ。 男:おれはいつも本気やで。 女:またアホやってるって。 男:まぁ、たまにはアホみたいなことも言うけどさ。 女:けど、 男:それは、 女:嘘じゃないねんやろなって。 男:カノンをほんまに笑わせたろ思てやから許してな? 女:許したわ。 男:さっすが女神やん! 女:許してあげたわ。しゃーなしやで? 男:ほんま心広くて、手ぇもあったかくて、最高やな。 女:てか、許す以前に、困惑やでウチ。 男:いや、そんな困った顔せんとってや。どしたん? 話聞くで? 女:初めてやったわ。 男:うん? 女:イルミネーション、タンクトップのやつと一緒に歩いたん。 男:俺? 女:みんなイルミネーションよりヒロキくんばっか見てたわ。 男:いやいやいやいや、そんなわけないやん。 女:あの時ウチ、めっちゃ恥ずかしかったわ。 男:気のせい気のせい。 女:やから、めっちゃ見られてんで? 男:そぉか。うん、でも、もしほんまに見られてるとしたら俺ちゃうな。 女:って言ったら。 男:あぁ、見られてもしゃーないな。 女:あぁ。 男:だって。 女:(同時に)綺麗やもんなカノンは。 男:(同時に)綺麗やもんなカノンは。 女:いや、あんたや。 女:もう。道頓堀から走ってきて、また一緒に戻るんもわけ分からんし。 男:こういうんもたのしない? 逆に。 女:もう分からん過ぎて逆にドキドキした。 男:せやろ? ジェットコースター乗った時みたいな。 女:吊り橋効果か。 男:あ。今度ユニバ行こ? ひらパーでもええで。 女:いつまでも、こんな時間が続いたら 男:ほんま幸せやなぁ。 女:って。 男:最高やわ。 女:言うて最悪やで。 男:最高の、クリスマス。 女:最悪の、クリスマス。 女:けど、悪いことって覚えてるもんなんやな。 男:えー、楽しい思い出いっぱいできた思うけどなぁ。 女:忘れられへんわウチ。 男:忘れたないことばっかやわ俺。 女:ヒロキくんのこと。一生。 男:カノンのこと。一生。ずっと傍で見てたいねん。 女:レストランで、 男:結婚、してくれへんか? 女:プロポーズ 男:いや、 女:されたこと。 男:結婚しよう。 女:ウチ、 男:……え? 女:流石に断ったけどな。 男:なんで? 女:ずぶ濡れのタンクトップ男。 男:けど、絶対幸せにするから。 女:よう店入れたわ。 男:あかんか? 女:ほんま。 男:……そっか。ならしゃあないやんな。 女:通報されんかったん奇跡やわ。 男:カノンと出会えただけで、奇跡やった。 女:けど、 男:それが一番やわ。今日も知らん子ども助けるために飛び込んだんやもんな。そんな男信用できんわ。 女:そっか。 男:そっか、 女:奇跡も続かんかってんな。 男:これでおしまい、か。 女:良かったわ、断って。 男:それでも、大好きやで。 女:今度は火の中やろ。 男:カノンのためならなんでもできる。 女:好きやな。ほんま。 男:それくらい好きやったのは、嘘じゃないから。 女:聞いたわ。 男:信じてくれる? 女:ウチ、あの話聞いて耳疑ったわ。 男:そう、やんな。 女:ほんで、目疑ってる。現実も? 男:はー。受け入れるんしんどいわ。 女:だって、おるやん。ここに。 男:明日から、おらんねんな、隣に。 女:目の前で寝てるだけやわ。 男:寝ても覚めても。 女:って。 男:カノンのこと考えてしまうんやろな。 女:いや、アホやろ。 男:せや、アホやで。 女:また嘘ばっかりって。 男:自分の心は偽れへんよ。 女:けど、嘘じゃ、ないねんやろなって。認めたなかったわ。 男:それでも、受け入れるしかないんやんな。やっぱり。 女:聞きたくなかった。 男:聞けて良かった。 女:知らんかったら、 男:知れてよかった。 女:出会わんかったら、 男:出会えて、 女:どんなに、 女:良かったんやろ? 男:良かったわ。 女:こんなん、おかしいよな。 男:笑っててな、ずっと。 女:好きやったのに、振って。 男:振られても、好きなんやもん。 女:そんで今更になって、ウチ。 男:幸せでいて欲しい。 女:ほんま、……アホやわぁ。 男:アホやからなぁ、俺。 女:何回も思ったわ。 男:ずっと想い続けてる。 女:いつか、 男:いつまでも、 女:こんな日が来るんやろなって。 男:こんな日が続けばいいのになって。 女:燃えとるビル突っ込んで、とり残されてた親子助けて帰ったって。 男:うん。 女:でも、体だけ。 男:……ごめんな。 女:やから、ほんま、よかった。 男:今まで心配ばっかりかけて。 女:危うく、ウチ未亡人なるとこやった。 男:そら、いつか死んでまうかもしれん。 女:ちゃうな。生きてるんやった。 男:カノンのこと、残して。 女:ウチ、最低やな。 男:オレ、最低やな。 女:けど、 男:けど、 女:最低なんはヒロキくんも。 男:カノンはほんま最高やから。 女:言うて、正解やで。 男:これだけは、言わせて。 女:振って、 男:振られて、 女:一緒におらんくて正解、なんやで。 男:一緒におれんくなっても、幸せや。 女:けどあの時。もし、 男:もしも、 女:間違えてたら。って。 0:間。 女:そんなアホなこと、今でも思ってしまうねん。 男:これから先どんな辛いことがあっても、今日ほどは辛くないで。 女:死ぬまで。 男:死んでも。 女:ううん、 男:ちゃうな、 女:死んでも。 男:生きるわ。 女:許してな。 男:ありがとう。今まで。 女:そろそろ、行くわ。 男:そう、やな。 0:女、立ち上がり、 女:……なぁ。ヒロキくん。 0:男の手を取る。 男:……なに? 女:手ぇ、あったかいかいな。 男:手ぇ、冷たいよな。 女:あの日よりもあったかいわ。 男:でもハートは熱く燃えてるから。 女:なぁ。歩いたん、忘れへんで? 男:あぁ。覚えとってくれたら、 女:梅田から難波まで。 男:どこまででも。 女:また、歩きたいな、御堂筋。 男:いつまででも。 女:もう、歩けへんな。御堂筋。 男:俺は俺でいられるから。 女:もうすぐ、クリスマスやな。 男:それじゃあ、もう会うこともないと思うけど、 女:またな、ヒロキくん。 男:さようなら、カノンさん。 女:好きやったで。 男:あなたの幸せを切に願って。 女:消えてしまった君のあの青いネイルが。 0:女、病室を去り、男の穏やかな寝息だけが残る。