台本概要
79 views
タイトル | イルミネーション。~追憶~ |
---|---|
作者名 | 音佐りんご。 (@ringo_otosa) |
ジャンル | ラブストーリー |
演者人数 | 2人用台本(男1、女1) |
時間 | 20 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
・あらすじ 病室で眠る男と、面会に来た女の話。 ※ 大阪の話です。 79 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
女 | 女 | 123 | 清水叶音(しみずかのん) |
男 | 男 | 122 | 石田博稀(いしだひろき) ※ 本編での台詞は回想。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
0:『イルミネーション。』
0:病室。
0:ベッドに男「石田博稀(いしだひろき)」が横たわっている。 ※以下、男の台詞は回想。
0:扉を開けて女「清水叶音(しみずかのん)」が入ってくると、傍らの椅子に掛ける。
0:女、男の顔を見つめて微笑む。
男:すまん、待たせた!
女:やっほー、ヒロキくん。
女:もうすぐクリスマスやな。
女:久しぶり。
男:いや、忘れてたわけじゃないって!
女:なんか、梅田でイルミネーション見て思い出しちゃってん。ヒロキくんのこと。
男:カノンのこと忘れるわけないやん!
女:忘れたつもりやってんけどな、あの時から、変わらへんねんな。
男:俺のこの熱い想いはそんな簡単に変わったりせぇへん!
女:なぁ。歩いたん憶えてる?
男:もちろんや!
女:御堂筋。
男:御堂筋、歩く約束やんな?
女:そうそう、梅田から難波まで。
男:ずーっとイルミネーションが続いてるとこ。
女:あの日めっちゃ寒かったやんな。
男:今日、めっちゃ寒いよな?
女:やのに上タンクトップで、下びちゃびちゃの黒スキニー。
男:へーきへーき。俺よりカノンは?
女:時空(とき)の広場現れたとき、新手の変態かと思ったわ。
男:ごめんな、上着どっかで落としてもうたみたいやわ。
女:全然来ぉへんからとうとうウチふられたんやなって、もう半泣きやったのに。涙引っ込んだわ。
男:あー、もしかして、怒ってる? 嘘やん。
女:もう、嘘ちゃうわ。
男:どうやってぶっ殺したろかこのアホーって顔してるやん!?
女:どうやってぶっ殺したろかーとかそんなん考えてへんわ、なんや相変わらず失礼なやっちゃな。ウチのことなんやおもてんの?
男:麗しき俺の女神(ミューズ)。ただし、
女:言うて、
男:キレると般若?
女:いっぺんシバいて爪剥いだろかーくらいやわ。
男:こっわ!
女:いや、めっちゃ寒かってんもん。
男:それはほんますまんて。
女:そら爪の一枚や二枚剥がれてもしゃーないて。
男:えらい高うついてもうたな……。
女:安い買い物やで?
男:どこが!?
女:それにヒロキくんのネイルむっちゃ綺麗やし。
男:いやいや、カノンの方が綺麗やで。
0:女、男の手を見る。
女:もう、やめてんな。冬の空みたいに、ちょっと寂しくて、ウチ、すごい好きやったわあの青いネイル。
男:そんな好き? あげよか? むっちゃ痛そうやけど、それで機嫌直してくれるなら、男見せたるわ。
女:そしたら、あれやな。戦利品。餞別かも知れんな。というより……。
男:どしたん?
女:ううん、なんでも。
男:じゃあ、行こか。歩きながら話そ? 寒なってきたし。
女:道頓堀泳いできたんやんな、
男:泳いだというと語弊あるけど。
女:あの時。子供落ちたって。
男:そうそう。観光来てた親子連れが、写真撮ろうとして……。どぼん。
女:けど飛び込む? 普通、
男:行かんかったら死んでまうからな。分かるやろ?
女:いや分かるけど。
男:勝手に体動いてた。
女:そういう性格なん。
男:へぇっくしょい!
女:冬やでヒロキくん、しかもウチとのデートの前。
男:おー。冷える冷える。寒いやろ? 手ぇつなごか。
女:そういうとこほんま頭おかしいよな。
男:えー? 嫌なん?
女:そういうとこほんま嫌いやないけど。
男:カノンのこと大好きやわ。
女:アホやわぁ。
男:うっわ。手ぇめっちゃあったかい。ずっとこうしてたいなぁ。
女:ウチ、あのかっこ見て目疑ったわ。
男:ちょぉ、なんでそんな目で見るんよ?
女:ほんで、耳疑った。人格も。
男:そんな嫌がらんとってや、寂しいわぁ。
女:だって、アホやん。
男:そんな言う?
女:ここに、目の前にアホがおるわ。
男:水も滴る良い男って、正に俺のことやと思うんやけど。
女:って。いや、嘘やろ。
男:おれはいつも本気やで。
女:またアホやってるって。
男:まぁ、たまにはアホみたいなことも言うけどさ。
女:けど、
男:それは、
女:嘘じゃないねんやろなって。
男:カノンをほんまに笑わせたろ思てやから許してな?
女:許したわ。
男:さっすが女神やん!
女:許してあげたわ。しゃーなしやで?
男:ほんま心広くて、手ぇもあったかくて、最高やな。
女:てか、許す以前に、困惑やでウチ。
男:いや、そんな困った顔せんとってや。どしたん? 話聞くで?
女:初めてやったわ。
男:うん?
女:イルミネーション、タンクトップのやつと一緒に歩いたん。
男:俺?
女:みんなイルミネーションよりヒロキくんばっか見てたわ。
男:いやいやいやいや、そんなわけないやん。
女:あの時ウチ、めっちゃ恥ずかしかったわ。
男:気のせい気のせい。
女:やから、めっちゃ見られてんで?
男:そぉか。うん、でも、もしほんまに見られてるとしたら俺ちゃうな。
女:って言ったら。
男:あぁ、見られてもしゃーないな。
女:あぁ。
男:だって。
女:(同時に)綺麗やもんなカノンは。
男:(同時に)綺麗やもんなカノンは。
女:いや、あんたや。
女:もう。道頓堀から走ってきて、また一緒に戻るんもわけ分からんし。
男:こういうんもたのしない? 逆に。
女:もう分からん過ぎて逆にドキドキした。
男:せやろ? ジェットコースター乗った時みたいな。
女:吊り橋効果か。
男:あ。今度ユニバ行こ? ひらパーでもええで。
女:いつまでも、こんな時間が続いたら
男:ほんま幸せやなぁ。
女:って。
男:最高やわ。
女:言うて最悪やで。
男:最高の、クリスマス。
女:最悪の、クリスマス。
女:けど、悪いことって覚えてるもんなんやな。
男:えー、楽しい思い出いっぱいできた思うけどなぁ。
女:忘れられへんわウチ。
男:忘れたないことばっかやわ俺。
女:ヒロキくんのこと。一生。
男:カノンのこと。一生。ずっと傍で見てたいねん。
女:レストランで、
男:結婚、してくれへんか?
女:プロポーズ
男:いや、
女:されたこと。
男:結婚しよう。
女:ウチ、
男:……え?
女:流石に断ったけどな。
男:なんで?
女:ずぶ濡れのタンクトップ男。
男:けど、絶対幸せにするから。
女:よう店入れたわ。
男:あかんか?
女:ほんま。
男:……そっか。ならしゃあないやんな。
女:通報されんかったん奇跡やわ。
男:カノンと出会えただけで、奇跡やった。
女:けど、
男:それが一番やわ。今日も知らん子ども助けるために飛び込んだんやもんな。そんな男信用できんわ。
女:そっか。
男:そっか、
女:奇跡も続かんかってんな。
男:これでおしまい、か。
女:良かったわ、断って。
男:それでも、大好きやで。
女:今度は火の中やろ。
男:カノンのためならなんでもできる。
女:好きやな。ほんま。
男:それくらい好きやったのは、嘘じゃないから。
女:聞いたわ。
男:信じてくれる?
女:ウチ、あの話聞いて耳疑ったわ。
男:そう、やんな。
女:ほんで、目疑ってる。現実も?
男:はー。受け入れるんしんどいわ。
女:だって、おるやん。ここに。
男:明日から、おらんねんな、隣に。
女:目の前で寝てるだけやわ。
男:寝ても覚めても。
女:って。
男:カノンのこと考えてしまうんやろな。
女:いや、アホやろ。
男:せや、アホやで。
女:また嘘ばっかりって。
男:自分の心は偽れへんよ。
女:けど、嘘じゃ、ないねんやろなって。認めたなかったわ。
男:それでも、受け入れるしかないんやんな。やっぱり。
女:聞きたくなかった。
男:聞けて良かった。
女:知らんかったら、
男:知れてよかった。
女:出会わんかったら、
男:出会えて、
女:どんなに、
女:良かったんやろ?
男:良かったわ。
女:こんなん、おかしいよな。
男:笑っててな、ずっと。
女:好きやったのに、振って。
男:振られても、好きなんやもん。
女:そんで今更になって、ウチ。
男:幸せでいて欲しい。
女:ほんま、……アホやわぁ。
男:アホやからなぁ、俺。
女:何回も思ったわ。
男:ずっと想い続けてる。
女:いつか、
男:いつまでも、
女:こんな日が来るんやろなって。
男:こんな日が続けばいいのになって。
女:燃えとるビル突っ込んで、とり残されてた親子助けて帰ったって。
男:うん。
女:でも、体だけ。
男:……ごめんな。
女:やから、ほんま、よかった。
男:今まで心配ばっかりかけて。
女:危うく、ウチ未亡人なるとこやった。
男:そら、いつか死んでまうかもしれん。
女:ちゃうな。生きてるんやった。
男:カノンのこと、残して。
女:ウチ、最低やな。
男:オレ、最低やな。
女:けど、
男:けど、
女:最低なんはヒロキくんも。
男:カノンはほんま最高やから。
女:言うて、正解やで。
男:これだけは、言わせて。
女:振って、
男:振られて、
女:一緒におらんくて正解、なんやで。
男:一緒におれんくなっても、幸せや。
女:けどあの時。もし、
男:もしも、
女:間違えてたら。って。
0:間。
女:そんなアホなこと、今でも思ってしまうねん。
男:これから先どんな辛いことがあっても、今日ほどは辛くないで。
女:死ぬまで。
男:死んでも。
女:ううん、
男:ちゃうな、
女:死んでも。
男:生きるわ。
女:許してな。
男:ありがとう。今まで。
女:そろそろ、行くわ。
男:そう、やな。
0:女、立ち上がり、
女:……なぁ。ヒロキくん。
0:男の手を取る。
男:……なに?
女:手ぇ、あったかいかいな。
男:手ぇ、冷たいよな。
女:あの日よりもあったかいわ。
男:でもハートは熱く燃えてるから。
女:なぁ。歩いたん、忘れへんで?
男:あぁ。覚えとってくれたら、
女:梅田から難波まで。
男:どこまででも。
女:また、歩きたいな、御堂筋。
男:いつまででも。
女:もう、歩けへんな。御堂筋。
男:俺は俺でいられるから。
女:もうすぐ、クリスマスやな。
男:それじゃあ、もう会うこともないと思うけど、
女:またな、ヒロキくん。
男:さようなら、カノンさん。
女:好きやったで。
男:あなたの幸せを切に願って。
女:消えてしまった君のあの青いネイルが。
0:女、病室を去り、男の穏やかな寝息だけが残る。
0:『イルミネーション。』
0:病室。
0:ベッドに男「石田博稀(いしだひろき)」が横たわっている。 ※以下、男の台詞は回想。
0:扉を開けて女「清水叶音(しみずかのん)」が入ってくると、傍らの椅子に掛ける。
0:女、男の顔を見つめて微笑む。
男:すまん、待たせた!
女:やっほー、ヒロキくん。
女:もうすぐクリスマスやな。
女:久しぶり。
男:いや、忘れてたわけじゃないって!
女:なんか、梅田でイルミネーション見て思い出しちゃってん。ヒロキくんのこと。
男:カノンのこと忘れるわけないやん!
女:忘れたつもりやってんけどな、あの時から、変わらへんねんな。
男:俺のこの熱い想いはそんな簡単に変わったりせぇへん!
女:なぁ。歩いたん憶えてる?
男:もちろんや!
女:御堂筋。
男:御堂筋、歩く約束やんな?
女:そうそう、梅田から難波まで。
男:ずーっとイルミネーションが続いてるとこ。
女:あの日めっちゃ寒かったやんな。
男:今日、めっちゃ寒いよな?
女:やのに上タンクトップで、下びちゃびちゃの黒スキニー。
男:へーきへーき。俺よりカノンは?
女:時空(とき)の広場現れたとき、新手の変態かと思ったわ。
男:ごめんな、上着どっかで落としてもうたみたいやわ。
女:全然来ぉへんからとうとうウチふられたんやなって、もう半泣きやったのに。涙引っ込んだわ。
男:あー、もしかして、怒ってる? 嘘やん。
女:もう、嘘ちゃうわ。
男:どうやってぶっ殺したろかこのアホーって顔してるやん!?
女:どうやってぶっ殺したろかーとかそんなん考えてへんわ、なんや相変わらず失礼なやっちゃな。ウチのことなんやおもてんの?
男:麗しき俺の女神(ミューズ)。ただし、
女:言うて、
男:キレると般若?
女:いっぺんシバいて爪剥いだろかーくらいやわ。
男:こっわ!
女:いや、めっちゃ寒かってんもん。
男:それはほんますまんて。
女:そら爪の一枚や二枚剥がれてもしゃーないて。
男:えらい高うついてもうたな……。
女:安い買い物やで?
男:どこが!?
女:それにヒロキくんのネイルむっちゃ綺麗やし。
男:いやいや、カノンの方が綺麗やで。
0:女、男の手を見る。
女:もう、やめてんな。冬の空みたいに、ちょっと寂しくて、ウチ、すごい好きやったわあの青いネイル。
男:そんな好き? あげよか? むっちゃ痛そうやけど、それで機嫌直してくれるなら、男見せたるわ。
女:そしたら、あれやな。戦利品。餞別かも知れんな。というより……。
男:どしたん?
女:ううん、なんでも。
男:じゃあ、行こか。歩きながら話そ? 寒なってきたし。
女:道頓堀泳いできたんやんな、
男:泳いだというと語弊あるけど。
女:あの時。子供落ちたって。
男:そうそう。観光来てた親子連れが、写真撮ろうとして……。どぼん。
女:けど飛び込む? 普通、
男:行かんかったら死んでまうからな。分かるやろ?
女:いや分かるけど。
男:勝手に体動いてた。
女:そういう性格なん。
男:へぇっくしょい!
女:冬やでヒロキくん、しかもウチとのデートの前。
男:おー。冷える冷える。寒いやろ? 手ぇつなごか。
女:そういうとこほんま頭おかしいよな。
男:えー? 嫌なん?
女:そういうとこほんま嫌いやないけど。
男:カノンのこと大好きやわ。
女:アホやわぁ。
男:うっわ。手ぇめっちゃあったかい。ずっとこうしてたいなぁ。
女:ウチ、あのかっこ見て目疑ったわ。
男:ちょぉ、なんでそんな目で見るんよ?
女:ほんで、耳疑った。人格も。
男:そんな嫌がらんとってや、寂しいわぁ。
女:だって、アホやん。
男:そんな言う?
女:ここに、目の前にアホがおるわ。
男:水も滴る良い男って、正に俺のことやと思うんやけど。
女:って。いや、嘘やろ。
男:おれはいつも本気やで。
女:またアホやってるって。
男:まぁ、たまにはアホみたいなことも言うけどさ。
女:けど、
男:それは、
女:嘘じゃないねんやろなって。
男:カノンをほんまに笑わせたろ思てやから許してな?
女:許したわ。
男:さっすが女神やん!
女:許してあげたわ。しゃーなしやで?
男:ほんま心広くて、手ぇもあったかくて、最高やな。
女:てか、許す以前に、困惑やでウチ。
男:いや、そんな困った顔せんとってや。どしたん? 話聞くで?
女:初めてやったわ。
男:うん?
女:イルミネーション、タンクトップのやつと一緒に歩いたん。
男:俺?
女:みんなイルミネーションよりヒロキくんばっか見てたわ。
男:いやいやいやいや、そんなわけないやん。
女:あの時ウチ、めっちゃ恥ずかしかったわ。
男:気のせい気のせい。
女:やから、めっちゃ見られてんで?
男:そぉか。うん、でも、もしほんまに見られてるとしたら俺ちゃうな。
女:って言ったら。
男:あぁ、見られてもしゃーないな。
女:あぁ。
男:だって。
女:(同時に)綺麗やもんなカノンは。
男:(同時に)綺麗やもんなカノンは。
女:いや、あんたや。
女:もう。道頓堀から走ってきて、また一緒に戻るんもわけ分からんし。
男:こういうんもたのしない? 逆に。
女:もう分からん過ぎて逆にドキドキした。
男:せやろ? ジェットコースター乗った時みたいな。
女:吊り橋効果か。
男:あ。今度ユニバ行こ? ひらパーでもええで。
女:いつまでも、こんな時間が続いたら
男:ほんま幸せやなぁ。
女:って。
男:最高やわ。
女:言うて最悪やで。
男:最高の、クリスマス。
女:最悪の、クリスマス。
女:けど、悪いことって覚えてるもんなんやな。
男:えー、楽しい思い出いっぱいできた思うけどなぁ。
女:忘れられへんわウチ。
男:忘れたないことばっかやわ俺。
女:ヒロキくんのこと。一生。
男:カノンのこと。一生。ずっと傍で見てたいねん。
女:レストランで、
男:結婚、してくれへんか?
女:プロポーズ
男:いや、
女:されたこと。
男:結婚しよう。
女:ウチ、
男:……え?
女:流石に断ったけどな。
男:なんで?
女:ずぶ濡れのタンクトップ男。
男:けど、絶対幸せにするから。
女:よう店入れたわ。
男:あかんか?
女:ほんま。
男:……そっか。ならしゃあないやんな。
女:通報されんかったん奇跡やわ。
男:カノンと出会えただけで、奇跡やった。
女:けど、
男:それが一番やわ。今日も知らん子ども助けるために飛び込んだんやもんな。そんな男信用できんわ。
女:そっか。
男:そっか、
女:奇跡も続かんかってんな。
男:これでおしまい、か。
女:良かったわ、断って。
男:それでも、大好きやで。
女:今度は火の中やろ。
男:カノンのためならなんでもできる。
女:好きやな。ほんま。
男:それくらい好きやったのは、嘘じゃないから。
女:聞いたわ。
男:信じてくれる?
女:ウチ、あの話聞いて耳疑ったわ。
男:そう、やんな。
女:ほんで、目疑ってる。現実も?
男:はー。受け入れるんしんどいわ。
女:だって、おるやん。ここに。
男:明日から、おらんねんな、隣に。
女:目の前で寝てるだけやわ。
男:寝ても覚めても。
女:って。
男:カノンのこと考えてしまうんやろな。
女:いや、アホやろ。
男:せや、アホやで。
女:また嘘ばっかりって。
男:自分の心は偽れへんよ。
女:けど、嘘じゃ、ないねんやろなって。認めたなかったわ。
男:それでも、受け入れるしかないんやんな。やっぱり。
女:聞きたくなかった。
男:聞けて良かった。
女:知らんかったら、
男:知れてよかった。
女:出会わんかったら、
男:出会えて、
女:どんなに、
女:良かったんやろ?
男:良かったわ。
女:こんなん、おかしいよな。
男:笑っててな、ずっと。
女:好きやったのに、振って。
男:振られても、好きなんやもん。
女:そんで今更になって、ウチ。
男:幸せでいて欲しい。
女:ほんま、……アホやわぁ。
男:アホやからなぁ、俺。
女:何回も思ったわ。
男:ずっと想い続けてる。
女:いつか、
男:いつまでも、
女:こんな日が来るんやろなって。
男:こんな日が続けばいいのになって。
女:燃えとるビル突っ込んで、とり残されてた親子助けて帰ったって。
男:うん。
女:でも、体だけ。
男:……ごめんな。
女:やから、ほんま、よかった。
男:今まで心配ばっかりかけて。
女:危うく、ウチ未亡人なるとこやった。
男:そら、いつか死んでまうかもしれん。
女:ちゃうな。生きてるんやった。
男:カノンのこと、残して。
女:ウチ、最低やな。
男:オレ、最低やな。
女:けど、
男:けど、
女:最低なんはヒロキくんも。
男:カノンはほんま最高やから。
女:言うて、正解やで。
男:これだけは、言わせて。
女:振って、
男:振られて、
女:一緒におらんくて正解、なんやで。
男:一緒におれんくなっても、幸せや。
女:けどあの時。もし、
男:もしも、
女:間違えてたら。って。
0:間。
女:そんなアホなこと、今でも思ってしまうねん。
男:これから先どんな辛いことがあっても、今日ほどは辛くないで。
女:死ぬまで。
男:死んでも。
女:ううん、
男:ちゃうな、
女:死んでも。
男:生きるわ。
女:許してな。
男:ありがとう。今まで。
女:そろそろ、行くわ。
男:そう、やな。
0:女、立ち上がり、
女:……なぁ。ヒロキくん。
0:男の手を取る。
男:……なに?
女:手ぇ、あったかいかいな。
男:手ぇ、冷たいよな。
女:あの日よりもあったかいわ。
男:でもハートは熱く燃えてるから。
女:なぁ。歩いたん、忘れへんで?
男:あぁ。覚えとってくれたら、
女:梅田から難波まで。
男:どこまででも。
女:また、歩きたいな、御堂筋。
男:いつまででも。
女:もう、歩けへんな。御堂筋。
男:俺は俺でいられるから。
女:もうすぐ、クリスマスやな。
男:それじゃあ、もう会うこともないと思うけど、
女:またな、ヒロキくん。
男:さようなら、カノンさん。
女:好きやったで。
男:あなたの幸せを切に願って。
女:消えてしまった君のあの青いネイルが。
0:女、病室を去り、男の穏やかな寝息だけが残る。