台本概要

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タイトル 造花。
作者名 音佐りんご。  (@ringo_otosa)
ジャンル その他
演者人数 1人用台本(不問1)
時間 10 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 掌編小説。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
不問 1
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
私:ある日、しばらく使っていなかった玄関の鉢植えの土を入れ替え、真っ赤な薔薇の造花を植えた。 私:綺麗で繊細で、良くできてはいるけれど、それは誰がどう見ても作り物と分かるような偽物の花。 私:なのだと私は思っていたのだけれど、おかしなことに、うちに来るお客さんはみんな「あら、なんて立派な薔薇かしらん」とか「まぁ、とっても素敵な香りの薔薇ですわ」と言って愛でていく。 私:枯れなくて、色褪せない、いつも誇らしげに咲く鮮やかな薔薇の造花を、まるで本物であるかのように。 私:意地の悪い皮肉なのか、鉢植えの上の冗談を共有してくれているだけなのか、私には判断がつかない。 私:よもや判断がつかないお客さんばかりだということもあるまいが、これまで薔薇は薔薇であることを否定されたことがなく、未だに誰一人としてこれが偽物の作り物であると、指摘したことはなかった。 私:恰もそれが薔薇であることを信じて疑わないかのように。 私:そして、その薔薇の美しさをお客さんの悉くが褒め称えるので、私はついに疑問を抱いた。 私:本当に、この薔薇は造花なのだろうか? 私:或いは、これは本物なのでは。 私:そう思い、私は鉢植えを玄関にひっくり返して土をぶちまけ、それを引き抜いた。 私:果たしてそこには、力強く張り巡らされた根っこ、などはなく。 私:それはやはり、薔薇の造花だった。 私: 私:「なぁんだ。やっぱり偽物じゃないか」 私: 私:思わず笑ってそう呟くと、薔薇は言った。 私: 私:「ごめんね」 私: 私:私は悟った。 私:確かにその花は造花で偽物だったが、そこには命があったのだと。 私:すっかり真っ白になった薔薇を私は土に埋めた。

私:ある日、しばらく使っていなかった玄関の鉢植えの土を入れ替え、真っ赤な薔薇の造花を植えた。 私:綺麗で繊細で、良くできてはいるけれど、それは誰がどう見ても作り物と分かるような偽物の花。 私:なのだと私は思っていたのだけれど、おかしなことに、うちに来るお客さんはみんな「あら、なんて立派な薔薇かしらん」とか「まぁ、とっても素敵な香りの薔薇ですわ」と言って愛でていく。 私:枯れなくて、色褪せない、いつも誇らしげに咲く鮮やかな薔薇の造花を、まるで本物であるかのように。 私:意地の悪い皮肉なのか、鉢植えの上の冗談を共有してくれているだけなのか、私には判断がつかない。 私:よもや判断がつかないお客さんばかりだということもあるまいが、これまで薔薇は薔薇であることを否定されたことがなく、未だに誰一人としてこれが偽物の作り物であると、指摘したことはなかった。 私:恰もそれが薔薇であることを信じて疑わないかのように。 私:そして、その薔薇の美しさをお客さんの悉くが褒め称えるので、私はついに疑問を抱いた。 私:本当に、この薔薇は造花なのだろうか? 私:或いは、これは本物なのでは。 私:そう思い、私は鉢植えを玄関にひっくり返して土をぶちまけ、それを引き抜いた。 私:果たしてそこには、力強く張り巡らされた根っこ、などはなく。 私:それはやはり、薔薇の造花だった。 私: 私:「なぁんだ。やっぱり偽物じゃないか」 私: 私:思わず笑ってそう呟くと、薔薇は言った。 私: 私:「ごめんね」 私: 私:私は悟った。 私:確かにその花は造花で偽物だったが、そこには命があったのだと。 私:すっかり真っ白になった薔薇を私は土に埋めた。