台本概要

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タイトル 紫炎の魔術師
作者名 カタギリ  (@Kata_giriV)
ジャンル ファンタジー
演者人数 3人用台本(男1、不問2)
時間 20 分
台本使用規定 商用、非商用問わず連絡不要
説明 閲覧ありがとうございます。
商用、非商用問わず、連絡不要ですが、Xなどで呟いていただけるととても嬉しいです。
二役は不問としましたが、基本設定は乃亜が女性、煉次が男性です。逆転する場合は適宜一人称変えていただいて結構です。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
乃亜 不問 56 「アンティークショップ 椿屋」店長兼魔術師。口が悪い。
煉次 不問 51 「アンティークショップ 椿屋」兼魔術師見習い。クールだが、たまに熱い。
フランクリン 41 炎の魔術師。尊大。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

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タイトル:紫炎の魔術師 登場人物:紫ノ宮 乃亜(しのみや のあ) 「アンティークショップ 椿屋」店長兼魔術師。口が悪い。 登場人物:鳥羽 煉次(とば れんじ) 「アンティークショップ 椿屋」兼魔術師見習い。クールだが、たまに熱い。 登場人物:フランクリン・アシュフォード 炎の魔術師。尊大。 あらすじ:骨董屋屋を営む魔術師の乃亜と弟子の煉次。そこへ外国から来日したフランクリンと名乗る男が来店する。 補足:魔法使い>>越えられない壁>>魔術師 という世界観です。 0:アンティークショップ椿屋にて。 煉次:師匠。書類の整理終わりました。 乃亜:ぐー(寝ている) 煉次:また寝てる。こんなに散らかして。誰が片付けると思ってるんだか。 乃亜:、、、煉次!、、、そのままにしておいて、、、。 煉次:なんだ。寝言か。紛らわしいな。 乃亜:、、、小娘、店にあるもの全部だ、全部アタシの、ふへへへ、スイーツ天ごくぅ、、、。 煉次:何の夢見てるのかわからないけど、なんて強欲な人だ。 煉次:掃除も終わったし、流石に起こすか。師匠、師匠、起きてください。 乃亜:んん、なんだ昼飯の時間か? 煉次:いえ、どちらかというと夕飯の時間ですよ。 乃亜:もう17時!?やばい、仕事は? 煉次:終わりましたよ。だから書類持ってきたんです。ここにサイン、もらえますか? 乃亜:おおー流石だ、煉次。できる部下がいてアタシも鼻高々だ。 煉次:最近、俺の方が仕事やってる気がするんですけど、気のせいですか? 乃亜:気のせいじゃないぞ。お前の成長の為に仕事を増やしておいた。 煉次:それはサボりというのでは? 乃亜:煉次よ、なんてことを言うんだ。部下の能力に合わせて適切なタイミングで適切な質、適切な量の仕事を振るのができる上司ってヤツだ。これは決してサボりではないんだよ。 煉次:もっともらしいこと言ってますが、職場で堂々とヨダレ垂らして居眠りするのは、職務怠慢以外の何というんです? 乃亜:ヨダレ!?なんて垂らすか!嘘をつくんじゃないよ! 煉次:そういえば、ビルのオーナーから近頃不審火が相次いでいるから、気をつけるようにって連絡がありましたよ。 乃亜:不審火?煉次、お前、外で魔術の修行してないだろうな? 煉次:してませんよ。魔術は隠匿すべし。 乃亜:そうだ。わかってるならいい。 煉次:でもいい加減焚き火を作る以外の魔術を教えてもらえませんか? 乃亜:まあそう焦るな。基本を疎かにするものはいつか泣きを見ることになるぞ。それに焚き火が出来れば、焼き芋も焼き魚もBBQなんかもお手軽にだな、、、。 煉次:自分が楽することしか考えてないな、この人。 0:フランクリン、来店。 煉次:いらっしゃいませ。 フランクリン:ほーマニアックな逸品揃いだが、いいセンスの店だ。気に入ったよ。 乃亜:お客さん~お目が高いですね。津々浦々の貴重な品を取り揃えておりますので心ゆくまでご覧になってくださいな。 フランクリン:それと魔術絡みの品も扱ってると聞いたが? 乃亜:おや、そちらの界隈の方でしたか。 フランクリン:実はあるものを探しに来日したのだよ。 乃亜:ほう? フランクリン:カグツチの血染め石。 煉次:? 乃亜:カグツチの流血で染まった霊石。イザナギがカグツチを斬ったという逸話から生まれた秘宝ですか。そんなお宝が実在するなら是非拝んでみたいものです。 フランクリン:店主、あなたが持っているのでは? 乃亜:いやいや、とんでもない!お客さんも冗談がお好きですね。こんな小さな骨董屋にそんな大層な品がある訳ないでしょ。 フランクリン:先日の闇オークションでそれを落札した者が、この町に住んでると小耳に挟んでね。 乃亜:(小声)個人情報ガバガバ過ぎんだろ。 乃亜:いやあ、何という偶然!私も探してみようかな!あははは。 フランクリン:、、、。茶番を披露するにしても人は選んだ方がいいですぞ。審美眼はあっても人の目利きは苦手らしい。 乃亜:私はそんな大した人間じゃないですよ。すみませんね、お役に立てなくて。 フランクリン:お互い、後悔しない方を選びたいものですな。 0:フランクリン、退店。 乃亜:またどうぞ~。 煉次:師匠、実際どうなんですか?そのカグツチの血染め石っていうのは? 乃亜:なんだ。気になるのか。煉次が興味を持つなんて珍しいな。 煉次:カグツチといえば日本では有名な炎を司る神ですから。 乃亜:確かに炎を扱う魔術師にとってはお宝どころじゃない代物だしな。お前の気持ちもわかる。 乃亜:だが、まだ鑑定中だ。アタシと言えども神代の秘宝はそうお目にかかれる物ではないからな。少々手間取ってる。 煉次:本物だったら是非見せてくださいよ。弟子の特権で。 乃亜:お前が日々の修行をサボらなければ考えておいてやる。 煉次:俺、サボったことありませんけど。 乃亜:ふふ、冗談だよ。これはアタシも気合いを入れ直さないとだな。 煉次:俺は仕事道具の買い出しに行ってきますね。 乃亜:おう、頼んだよ。あ、そうだ。これを持っていけ。 煉次:何ですか?このチップみたいなのは? 乃亜:GPSだ。最近のは高性能でいいぞ。 煉次:師匠は魔術師の癖にかなり俗世に染まってますよね。 乃亜:かー、わかってないなぁ。いいか?煉次。今時、魔術一辺倒なんて時代遅れなんだよ。 乃亜:科学の進歩には目を見張るものがある。魔術でしかできないことなんてますます少なくなってくるだろう。 乃亜:ただ、魔術の代わりに科学に頼れば魔力の節約になる。実に省エネだろう?これからは魔術と科学の両立の時代さ。 乃亜:だから現代機器だろうが何だろうが、使えるものは使う。 煉次:そんなものなんですかね。 乃亜:そんなもんだ。昼間の客、おそらく何か仕掛けてくるぞ。お前も顔が割れてるから、狙われないとも限らない。 煉次:護身用って訳ですか。何かあったら師匠が駆けつけてくれるってことですね? 乃亜:ああ。だが基本は戦闘になる前に逃げろ。気をつけていってきな。 煉次:お気遣いどうも。では行ってきます。 0:煉次、買い物の帰り道。 煉次:結構高くついたな。師匠はちょっと油断すると、消耗品切らすんだから。この辺の在庫管理もしっかりしてもらわないと。 フランクリン:おや、君はあの店の。 煉次:ん?あなたは昼間の。こんなところで何してるんですか? フランクリン:これから忘れ物を取りに行くところでね。 煉次:忘れ物?特にそれらしい物はないと思いますけど。 フランクリン:例の霊石のことだよ。 煉次:あーあれは難しいと思いますよ。師匠も適当に見えて頑固というか、こだわりが強いというか。 フランクリン:あの秘宝は君の師匠には過ぎたもの、宝の持ち腐れだ。 煉次:、、、。 フランクリン:君もわかっているのだろう?その目。野心家の目だ。師匠に不満があるのではないか? 煉次:、、、。 フランクリン:私から提案があるのだが、君が師匠から石をくすねてくるのは?弟子ならあの店主も油断するだろう。 フランクリン:その報酬として私が代わりに幾らでも魔術を教えよう。私は魔術師の大家、アシュフォード家のフランクリン・アシュフォード。君の世界が変わるぞ? 煉次:確かに、俺は実戦向きの魔術を学びたいのに、師匠の教えることは基礎ばかりだ。正直うんざりしてます。 フランクリン:ならば、早速実行に、、、(煉次、遮るように次のセリフ) 煉次:(フランクリンの前セリフを遮るように)それでも俺は、師匠の教えが間違いだとか意味がないとは思っていません。 煉次:俺はあの人を信じてますから。別にそれ以上のことは自分で鍛えればいいだけのこと。 フランクリン:素晴らしい師弟愛だが、君は選択を間違えた。 煉次:俺を消しますか?でも、ただではやられませんよ。俺も、自分の師匠をコケにされて見て見ぬフリなんてできない性分でして。 煉次:それにあの霊石は俺も気になってるんだ。あなたには譲らない。 フランクリン:ほう、君も炎の魔術を使うのか?よろしい。ならばこのフランクリン・アシュフォードが冥土の土産に特別授業をしてやろう。 0:間 フランクリン:魔術の制御はなかなか大したものだ! 煉次:それはどうも!(今のところは防げているけど、このままじゃもたない。) フランクリン:では純粋な力比べはどうかな! 煉次:くっ、、、。 フランクリン:どうした?少し魔力の出力を上げただけだぞ!見せてみろ!君の力を! 煉次:あなたも大人げないですね!魔術師はみんなそうなんですか? フランクリン:いつまでその軽口が続くかな!もう限界なのではないかね? 煉次:(やっぱりお見通しか。もう魔力が持たない。ああ、くそ、大見得切ったのに、この様か。) フランクリン:あっけない幕引きだな。 煉次:はぁ、はぁ、はぁ。 フランクリン:経験の差が出たな。これから時間をかければいい魔術師になれたかもしれない。故に最後のチャンスだ。私につく気はないかね。 煉次:俺にも、譲れないものが、ありまして、ね。 フランクリン:そうか、それは残念だ。 0:乃亜、登場。 乃亜:おっと、そこまでだ。 煉次:し、師匠。 乃亜:ほら、馬鹿にできないだろGPS。 煉次:確かに。これからは現代機器についても学ぶことにします。ギリギリ助かりました。 乃亜:まったくだ、馬鹿者が。戦闘は避けろといっただろうが。 煉次:師匠の名誉を守る為ですよ。 乃亜:よく言うよ。そんなクソの役にもたたない誇りなんか捨ててしまえ。 煉次:ははは。 乃亜:だが、それなりに尊敬の念を抱いてもらってたことには、敬意を払おうじゃないか。 乃亜:なんだ。よく見たら昼間のお客さんじゃないか。 フランクリン:貴様、ふざけるなよ。GPSだと?現代機器を使うなど、貴様、魔術師としての誇りはないのか? 乃亜:ここにも時代遅れが一人。 乃亜:今時そんなものに何の価値があるのさ?スマホだとかロボットだとかAIだとか、魔術に代わる科学技術がどんどん発展してるって言うのに魔術に拘る必要なんてないだろう? フランクリン:よもやここまで愚かだとはな。 乃亜:まあ、己の主義、思想は自由だから押し付けるつもりはないが。まあ、そんなことはどうでもいいんだ。別にアンタと魔術論について語り合いたい訳じゃない。 フランクリン:こちらこそ願い下げだ。貴様と語らうことなど何もない。さっさとカグツチの血染め石を渡してもらおうか? 乃亜:アンタも相当しつこいね。何でこの石にそこまで固執する? フランクリン:現当主によって零落した我がアシュフォード家を再興するためだ。 乃亜:お家を救うヒーローになりたい訳だ。泣かせるねぇ。 フランクリン:何とでも言うがいい。現当主も現代科学に傾倒して魔術師としての誇りを失った。貴様と同じ愚か者だ。 フランクリン:私はその霊石を手に入れ、アシュフォード家を建て直す。いずれは魔法使いの大家としてその名を馳せるのだ。 乃亜:ふん、魔法使い、ねぇ。 フランクリン:くだらん問答の時間はおしまいだ。ここで潔く散れ。 煉次:師匠! 乃亜:ああ、確かに。くだらない。 フランクリン:何!?私の魔術が打ち消された?貴様、何をした? 乃亜:アンタより強い炎をぶつけただけだよ。単純明快だろ? 0:乃亜、霊石を取り出す。 フランクリン:その霊石の力か?やはり素晴らしい魔力を秘めている。 乃亜:いーや、これはそんな大層なもんじゃないよ。そこら辺の魔石よりほんの少し上質な程度だ。アンタと遊べるくらいのね。 フランクリン:遊びだと?、、、おい、待て貴様、何をしようとしている!?やめろぉ! 0:乃亜、霊石を握り潰す。 乃亜:腹が立つ程に巧妙な幻術がかかっていたものだから、鑑定に時間がかかってしまった。アタシもヤキがまわったかな。 フランクリン:その石は、偽物、だったのか? 乃亜:そう、贋作だ。 乃亜:さて、このゴミの話は終わり。次は、アタシの弟子を痛ぶってくれた件だ。 フランクリン:くっ! 乃亜:弟子っていうのはアタシの持ち物同然だ。それをここまでボロボロにしてくれたことに震えるほど憤りを覚えるよ。 煉次:いや、物扱いは酷くないです? 乃亜:それとお前、魔法使いとかなんとか抜かしたか?、、、くくく。 フランクリン:何がおかしい? 乃亜:くくく、ふふふふふ、あはははははは!この程度で魔法使いを名乗るなんて、魔法使いの地位も堕ちたものだ。 乃亜:お前が魔法使いになれるならアタシは何になれるのかな?神か?それとも悪魔か?いやぁ、こんなに腹抱えて笑ったのは久しぶりだよ。 乃亜:ええと、アシュフォードだっけ?お前さ、魔術師なんてやめてコメディアンにでもなった方がいいんじゃないか? フランクリン:貴様、私を愚弄するか!何!? 0:紫の炎がフランクリンを囲んでいく。 乃亜:くくく、失礼。少々口が悪かったかな。それは謝るよ。 フランクリン:なんだこの炎は!?動けん!形が変わって、犬?狼か? 乃亜:フェンリル、久しぶりの餌だぞ。味はあまり良くないかもしれないが。 フランクリン:や、やめろ、やめてくれ。 乃亜:おいおい、みっともないなぁ。うちの弟子の方がまだ立派だったぞ?魔術師としての誇りはどうしたのさ?あっ、間違えた。魔法使いとしての、か?くくく。 フランクリン:わ、私が間違っていた。喧嘩を売る相手を間違えた。この通りだ。私はまだ死ぬ訳には、、、。 乃亜:ダーメ。こいつももう待てないみたいだからさ。あの世でご先祖様とよろしくやってなよ。じゃあね、魔法使いさん。 煉次:(すごい、いい笑顔してる。) 乃亜:、、、食っていいぞ。 フランクリン:う、うわああああ、、、。 0:フランクリン、紫炎に飲み込まれる。 乃亜:綺麗に平らげたな。よーしよし、いい子だ。次はもっと美味いの食わせてやるからな。 煉次:(あれには、絶対喰われたくないな。) 乃亜:さあ、掃除も終わったことだし、帰るぞ、煉次。アタシは腹が減った。 煉次:ちょっと待ってくださいよ。こっちは怪我人なんですから。 乃亜:ああ、そうだったな。気分良くて忘れてたよ。悪い悪い。 煉次:(相当楽しかったんだな。この人。) 乃亜:少々、派手に暴れ過ぎたから、また面倒なのが来そうだね。まあその時はその時か。 煉次:(今回の件で、師匠の力の片鱗を見た気がする。まだまだ底は見えないけど。) 煉次:(ただ、軽率に逆らうのはやめようと心に誓った。あの狂気に満ちた笑顔を、こちらに向けられないように。)

タイトル:紫炎の魔術師 登場人物:紫ノ宮 乃亜(しのみや のあ) 「アンティークショップ 椿屋」店長兼魔術師。口が悪い。 登場人物:鳥羽 煉次(とば れんじ) 「アンティークショップ 椿屋」兼魔術師見習い。クールだが、たまに熱い。 登場人物:フランクリン・アシュフォード 炎の魔術師。尊大。 あらすじ:骨董屋屋を営む魔術師の乃亜と弟子の煉次。そこへ外国から来日したフランクリンと名乗る男が来店する。 補足:魔法使い>>越えられない壁>>魔術師 という世界観です。 0:アンティークショップ椿屋にて。 煉次:師匠。書類の整理終わりました。 乃亜:ぐー(寝ている) 煉次:また寝てる。こんなに散らかして。誰が片付けると思ってるんだか。 乃亜:、、、煉次!、、、そのままにしておいて、、、。 煉次:なんだ。寝言か。紛らわしいな。 乃亜:、、、小娘、店にあるもの全部だ、全部アタシの、ふへへへ、スイーツ天ごくぅ、、、。 煉次:何の夢見てるのかわからないけど、なんて強欲な人だ。 煉次:掃除も終わったし、流石に起こすか。師匠、師匠、起きてください。 乃亜:んん、なんだ昼飯の時間か? 煉次:いえ、どちらかというと夕飯の時間ですよ。 乃亜:もう17時!?やばい、仕事は? 煉次:終わりましたよ。だから書類持ってきたんです。ここにサイン、もらえますか? 乃亜:おおー流石だ、煉次。できる部下がいてアタシも鼻高々だ。 煉次:最近、俺の方が仕事やってる気がするんですけど、気のせいですか? 乃亜:気のせいじゃないぞ。お前の成長の為に仕事を増やしておいた。 煉次:それはサボりというのでは? 乃亜:煉次よ、なんてことを言うんだ。部下の能力に合わせて適切なタイミングで適切な質、適切な量の仕事を振るのができる上司ってヤツだ。これは決してサボりではないんだよ。 煉次:もっともらしいこと言ってますが、職場で堂々とヨダレ垂らして居眠りするのは、職務怠慢以外の何というんです? 乃亜:ヨダレ!?なんて垂らすか!嘘をつくんじゃないよ! 煉次:そういえば、ビルのオーナーから近頃不審火が相次いでいるから、気をつけるようにって連絡がありましたよ。 乃亜:不審火?煉次、お前、外で魔術の修行してないだろうな? 煉次:してませんよ。魔術は隠匿すべし。 乃亜:そうだ。わかってるならいい。 煉次:でもいい加減焚き火を作る以外の魔術を教えてもらえませんか? 乃亜:まあそう焦るな。基本を疎かにするものはいつか泣きを見ることになるぞ。それに焚き火が出来れば、焼き芋も焼き魚もBBQなんかもお手軽にだな、、、。 煉次:自分が楽することしか考えてないな、この人。 0:フランクリン、来店。 煉次:いらっしゃいませ。 フランクリン:ほーマニアックな逸品揃いだが、いいセンスの店だ。気に入ったよ。 乃亜:お客さん~お目が高いですね。津々浦々の貴重な品を取り揃えておりますので心ゆくまでご覧になってくださいな。 フランクリン:それと魔術絡みの品も扱ってると聞いたが? 乃亜:おや、そちらの界隈の方でしたか。 フランクリン:実はあるものを探しに来日したのだよ。 乃亜:ほう? フランクリン:カグツチの血染め石。 煉次:? 乃亜:カグツチの流血で染まった霊石。イザナギがカグツチを斬ったという逸話から生まれた秘宝ですか。そんなお宝が実在するなら是非拝んでみたいものです。 フランクリン:店主、あなたが持っているのでは? 乃亜:いやいや、とんでもない!お客さんも冗談がお好きですね。こんな小さな骨董屋にそんな大層な品がある訳ないでしょ。 フランクリン:先日の闇オークションでそれを落札した者が、この町に住んでると小耳に挟んでね。 乃亜:(小声)個人情報ガバガバ過ぎんだろ。 乃亜:いやあ、何という偶然!私も探してみようかな!あははは。 フランクリン:、、、。茶番を披露するにしても人は選んだ方がいいですぞ。審美眼はあっても人の目利きは苦手らしい。 乃亜:私はそんな大した人間じゃないですよ。すみませんね、お役に立てなくて。 フランクリン:お互い、後悔しない方を選びたいものですな。 0:フランクリン、退店。 乃亜:またどうぞ~。 煉次:師匠、実際どうなんですか?そのカグツチの血染め石っていうのは? 乃亜:なんだ。気になるのか。煉次が興味を持つなんて珍しいな。 煉次:カグツチといえば日本では有名な炎を司る神ですから。 乃亜:確かに炎を扱う魔術師にとってはお宝どころじゃない代物だしな。お前の気持ちもわかる。 乃亜:だが、まだ鑑定中だ。アタシと言えども神代の秘宝はそうお目にかかれる物ではないからな。少々手間取ってる。 煉次:本物だったら是非見せてくださいよ。弟子の特権で。 乃亜:お前が日々の修行をサボらなければ考えておいてやる。 煉次:俺、サボったことありませんけど。 乃亜:ふふ、冗談だよ。これはアタシも気合いを入れ直さないとだな。 煉次:俺は仕事道具の買い出しに行ってきますね。 乃亜:おう、頼んだよ。あ、そうだ。これを持っていけ。 煉次:何ですか?このチップみたいなのは? 乃亜:GPSだ。最近のは高性能でいいぞ。 煉次:師匠は魔術師の癖にかなり俗世に染まってますよね。 乃亜:かー、わかってないなぁ。いいか?煉次。今時、魔術一辺倒なんて時代遅れなんだよ。 乃亜:科学の進歩には目を見張るものがある。魔術でしかできないことなんてますます少なくなってくるだろう。 乃亜:ただ、魔術の代わりに科学に頼れば魔力の節約になる。実に省エネだろう?これからは魔術と科学の両立の時代さ。 乃亜:だから現代機器だろうが何だろうが、使えるものは使う。 煉次:そんなものなんですかね。 乃亜:そんなもんだ。昼間の客、おそらく何か仕掛けてくるぞ。お前も顔が割れてるから、狙われないとも限らない。 煉次:護身用って訳ですか。何かあったら師匠が駆けつけてくれるってことですね? 乃亜:ああ。だが基本は戦闘になる前に逃げろ。気をつけていってきな。 煉次:お気遣いどうも。では行ってきます。 0:煉次、買い物の帰り道。 煉次:結構高くついたな。師匠はちょっと油断すると、消耗品切らすんだから。この辺の在庫管理もしっかりしてもらわないと。 フランクリン:おや、君はあの店の。 煉次:ん?あなたは昼間の。こんなところで何してるんですか? フランクリン:これから忘れ物を取りに行くところでね。 煉次:忘れ物?特にそれらしい物はないと思いますけど。 フランクリン:例の霊石のことだよ。 煉次:あーあれは難しいと思いますよ。師匠も適当に見えて頑固というか、こだわりが強いというか。 フランクリン:あの秘宝は君の師匠には過ぎたもの、宝の持ち腐れだ。 煉次:、、、。 フランクリン:君もわかっているのだろう?その目。野心家の目だ。師匠に不満があるのではないか? 煉次:、、、。 フランクリン:私から提案があるのだが、君が師匠から石をくすねてくるのは?弟子ならあの店主も油断するだろう。 フランクリン:その報酬として私が代わりに幾らでも魔術を教えよう。私は魔術師の大家、アシュフォード家のフランクリン・アシュフォード。君の世界が変わるぞ? 煉次:確かに、俺は実戦向きの魔術を学びたいのに、師匠の教えることは基礎ばかりだ。正直うんざりしてます。 フランクリン:ならば、早速実行に、、、(煉次、遮るように次のセリフ) 煉次:(フランクリンの前セリフを遮るように)それでも俺は、師匠の教えが間違いだとか意味がないとは思っていません。 煉次:俺はあの人を信じてますから。別にそれ以上のことは自分で鍛えればいいだけのこと。 フランクリン:素晴らしい師弟愛だが、君は選択を間違えた。 煉次:俺を消しますか?でも、ただではやられませんよ。俺も、自分の師匠をコケにされて見て見ぬフリなんてできない性分でして。 煉次:それにあの霊石は俺も気になってるんだ。あなたには譲らない。 フランクリン:ほう、君も炎の魔術を使うのか?よろしい。ならばこのフランクリン・アシュフォードが冥土の土産に特別授業をしてやろう。 0:間 フランクリン:魔術の制御はなかなか大したものだ! 煉次:それはどうも!(今のところは防げているけど、このままじゃもたない。) フランクリン:では純粋な力比べはどうかな! 煉次:くっ、、、。 フランクリン:どうした?少し魔力の出力を上げただけだぞ!見せてみろ!君の力を! 煉次:あなたも大人げないですね!魔術師はみんなそうなんですか? フランクリン:いつまでその軽口が続くかな!もう限界なのではないかね? 煉次:(やっぱりお見通しか。もう魔力が持たない。ああ、くそ、大見得切ったのに、この様か。) フランクリン:あっけない幕引きだな。 煉次:はぁ、はぁ、はぁ。 フランクリン:経験の差が出たな。これから時間をかければいい魔術師になれたかもしれない。故に最後のチャンスだ。私につく気はないかね。 煉次:俺にも、譲れないものが、ありまして、ね。 フランクリン:そうか、それは残念だ。 0:乃亜、登場。 乃亜:おっと、そこまでだ。 煉次:し、師匠。 乃亜:ほら、馬鹿にできないだろGPS。 煉次:確かに。これからは現代機器についても学ぶことにします。ギリギリ助かりました。 乃亜:まったくだ、馬鹿者が。戦闘は避けろといっただろうが。 煉次:師匠の名誉を守る為ですよ。 乃亜:よく言うよ。そんなクソの役にもたたない誇りなんか捨ててしまえ。 煉次:ははは。 乃亜:だが、それなりに尊敬の念を抱いてもらってたことには、敬意を払おうじゃないか。 乃亜:なんだ。よく見たら昼間のお客さんじゃないか。 フランクリン:貴様、ふざけるなよ。GPSだと?現代機器を使うなど、貴様、魔術師としての誇りはないのか? 乃亜:ここにも時代遅れが一人。 乃亜:今時そんなものに何の価値があるのさ?スマホだとかロボットだとかAIだとか、魔術に代わる科学技術がどんどん発展してるって言うのに魔術に拘る必要なんてないだろう? フランクリン:よもやここまで愚かだとはな。 乃亜:まあ、己の主義、思想は自由だから押し付けるつもりはないが。まあ、そんなことはどうでもいいんだ。別にアンタと魔術論について語り合いたい訳じゃない。 フランクリン:こちらこそ願い下げだ。貴様と語らうことなど何もない。さっさとカグツチの血染め石を渡してもらおうか? 乃亜:アンタも相当しつこいね。何でこの石にそこまで固執する? フランクリン:現当主によって零落した我がアシュフォード家を再興するためだ。 乃亜:お家を救うヒーローになりたい訳だ。泣かせるねぇ。 フランクリン:何とでも言うがいい。現当主も現代科学に傾倒して魔術師としての誇りを失った。貴様と同じ愚か者だ。 フランクリン:私はその霊石を手に入れ、アシュフォード家を建て直す。いずれは魔法使いの大家としてその名を馳せるのだ。 乃亜:ふん、魔法使い、ねぇ。 フランクリン:くだらん問答の時間はおしまいだ。ここで潔く散れ。 煉次:師匠! 乃亜:ああ、確かに。くだらない。 フランクリン:何!?私の魔術が打ち消された?貴様、何をした? 乃亜:アンタより強い炎をぶつけただけだよ。単純明快だろ? 0:乃亜、霊石を取り出す。 フランクリン:その霊石の力か?やはり素晴らしい魔力を秘めている。 乃亜:いーや、これはそんな大層なもんじゃないよ。そこら辺の魔石よりほんの少し上質な程度だ。アンタと遊べるくらいのね。 フランクリン:遊びだと?、、、おい、待て貴様、何をしようとしている!?やめろぉ! 0:乃亜、霊石を握り潰す。 乃亜:腹が立つ程に巧妙な幻術がかかっていたものだから、鑑定に時間がかかってしまった。アタシもヤキがまわったかな。 フランクリン:その石は、偽物、だったのか? 乃亜:そう、贋作だ。 乃亜:さて、このゴミの話は終わり。次は、アタシの弟子を痛ぶってくれた件だ。 フランクリン:くっ! 乃亜:弟子っていうのはアタシの持ち物同然だ。それをここまでボロボロにしてくれたことに震えるほど憤りを覚えるよ。 煉次:いや、物扱いは酷くないです? 乃亜:それとお前、魔法使いとかなんとか抜かしたか?、、、くくく。 フランクリン:何がおかしい? 乃亜:くくく、ふふふふふ、あはははははは!この程度で魔法使いを名乗るなんて、魔法使いの地位も堕ちたものだ。 乃亜:お前が魔法使いになれるならアタシは何になれるのかな?神か?それとも悪魔か?いやぁ、こんなに腹抱えて笑ったのは久しぶりだよ。 乃亜:ええと、アシュフォードだっけ?お前さ、魔術師なんてやめてコメディアンにでもなった方がいいんじゃないか? フランクリン:貴様、私を愚弄するか!何!? 0:紫の炎がフランクリンを囲んでいく。 乃亜:くくく、失礼。少々口が悪かったかな。それは謝るよ。 フランクリン:なんだこの炎は!?動けん!形が変わって、犬?狼か? 乃亜:フェンリル、久しぶりの餌だぞ。味はあまり良くないかもしれないが。 フランクリン:や、やめろ、やめてくれ。 乃亜:おいおい、みっともないなぁ。うちの弟子の方がまだ立派だったぞ?魔術師としての誇りはどうしたのさ?あっ、間違えた。魔法使いとしての、か?くくく。 フランクリン:わ、私が間違っていた。喧嘩を売る相手を間違えた。この通りだ。私はまだ死ぬ訳には、、、。 乃亜:ダーメ。こいつももう待てないみたいだからさ。あの世でご先祖様とよろしくやってなよ。じゃあね、魔法使いさん。 煉次:(すごい、いい笑顔してる。) 乃亜:、、、食っていいぞ。 フランクリン:う、うわああああ、、、。 0:フランクリン、紫炎に飲み込まれる。 乃亜:綺麗に平らげたな。よーしよし、いい子だ。次はもっと美味いの食わせてやるからな。 煉次:(あれには、絶対喰われたくないな。) 乃亜:さあ、掃除も終わったことだし、帰るぞ、煉次。アタシは腹が減った。 煉次:ちょっと待ってくださいよ。こっちは怪我人なんですから。 乃亜:ああ、そうだったな。気分良くて忘れてたよ。悪い悪い。 煉次:(相当楽しかったんだな。この人。) 乃亜:少々、派手に暴れ過ぎたから、また面倒なのが来そうだね。まあその時はその時か。 煉次:(今回の件で、師匠の力の片鱗を見た気がする。まだまだ底は見えないけど。) 煉次:(ただ、軽率に逆らうのはやめようと心に誓った。あの狂気に満ちた笑顔を、こちらに向けられないように。)