台本概要

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タイトル 【0:1:1(朗読可)】AIロボット「アイ」
作者名 夜霧ミスト@夜霧姫  (@YogiriMist)
ジャンル ラブストーリー
演者人数 2人用台本(女1、不問1)
時間 10 分
台本使用規定 台本説明欄参照
説明 ロボットは人間を愛しちゃいけないのでしょうか


【台本規定】
規定は特にありませんがツイッターなどで使ったよってリプとかしてくれたら作者が喜びますし、
次の作品へのモチベに繋がります

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
不問 70 私(一人読みで朗読可)
アイ 73 ロボット(一人読みで朗読可)
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
アイ:・・・おはようございます、マスター 私:朝、目が覚めると、そこには見ず知らずの女の子が座っていた 私:昨日、酔った勢いで知らない女の子を部屋に連れ込んでしまったのだろうか? 私:だとしたら大変なことである アイ:私は、AIにより言葉を学び、会話を学び、あなたのために言葉を発する、AIロボット、「アイ」 アイ:よろしくお願いいたします 私:「アイ」と名乗る少女は深々と頭を下げた 私:「アイ」・・・ガンガンと痛む頭をフル回転させながら私は目の前の少女のことを思い出す 私:・・・ああ、そうだ、そういえば1ヶ月くらい前に彼女と別れた寂しさを紛らわすためにロボットを注文したんだっけ 私:しかし、なんと精巧なつくりだろうか 私:ロボットと言われなければ本当の人間の少女のようだ アイ:マスター、なんなりとご命令を 私:呆けている私に「アイ」は語りかける 私:「命令」? 私:・・・そんなもの、女の子にするならこれに決まっている アイ:・・・「エッチな言葉」・・・ですか? 私:ふふふ、やはりこれしかなかろう 私:「えっちな言葉」! 私:年頃の女の子に恥ずかしいエッチな言葉を言わせて、恥じらう姿を見るのだ! 私:そう!これは真摯な紳士の嗜みなのだ! アイ:・・・申し訳ございません アイ:規約、第23条「公序良俗」の項目にてそのような言葉を アイ:発することは規約違反となっております アイ:他の言葉をお願いします 私:あっ、そう、ダメなのね 私:そりゃそうだ 私:私は仕方無しに、そして残念そうに他の言葉を探す 私:・・・「言え」って言われて考えるもそう簡単に出てくるものでもない アイ:・・・受け付けました 私:悔しいかな、私にはこれが限界だ アイ:「私はAIロボット、『アイ』です」 アイ:「あなたのために、ご奉仕をさせていただきます」 私:「自己紹介」・・・もっと面白みのある言葉を言わせたかった・・・ アイ:これから、よろしくお願いいたします 私:こうして始まった私と「アイ」の共同生活 私:ワクワクよりも不安のほうがいっぱいだ 0:次の日の朝 アイ:おはようございます、マスター 私:正直、私は眠れていない 私:だってそりゃ女の子とひとつ屋根の下、ですよ? 私:興奮して眠れるわけがないでしょう? アイ:朝ごはんの支度ができています 私:朝ごはん・・・?私のために作ってくれたのか? アイ:・・・私は、あなたのために作られたロボット、「アイ」 アイ:言葉を発するだけではなく、あなたの身辺のお世話もできるよう、作られています 私:へぇ、そりゃすごい 私:いわゆる「家政婦」ってやつだ 私:私の専属家政婦・・・ 私:そして起こる大事件 私:その現場を偶然にも目撃する家政婦 私:そして、「あらいやだ!?」と市原悦子! 私:って何を言っているんだ私は 私:私でさえ元ネタ何言ってるかわからんぞ アイ:・・・冷めないうちに、どうぞ 私:アイの冷たい視線が私に刺さる 私:怒られないうちに一口・・・ アイ:おいしい、ですか? 私:正直、味は期待していなかった 私:失礼な話だ 私:だってそうだろう 私:ロボットが作る飯だぞ? 私:高速道のPASA(パーキングエリア・サービスエリア)においてある 私:紐で引っ張って温めるタイプの冷食自販機のやつが出てくると思ったんだ 私:だが、実際はどうだ 私:種類は豊富、味付けは私好み・・・至れり尽くせりではないか! アイ:・・・喜んでもらえたようで、嬉しいです 私:アイの顔が少し綻ぶ 私:・・・アイも笑うんだ アイ:私は高機能のAIを積んでいます アイ:故に「感情」も、もちろんインプットされています 私:話の途中でアイはハッとし、説明を中断する アイ:・・・難しい話になりそうなので、ここまでにしておきます 私:・・・確かに専門的な話になりそうだ アイ:早くご飯を食べて、仕事の支度を・・・ある程度の準備は私がしておきました 私:時計をよく見たら出社時間ギリギリである 私:私は朝ごはんを胃に詰め、見送るアイを尻目にいそいそと家を後にした 0:数日後の朝 アイ:おはようございます、マスター♪ 私:私は黙ってアイの顔を見つめる アイ:・・・?どうかしましたか、マスター?私の顔になにかついていますか? 私:アイの顔に何かが付いているというより、アイの中に何かが憑いているような気がするが 私:いやはや、最初の頃に比べたら、なんというか感情が豊かになったなというか アイ:ふふふ、それは、マスターが私に色々なことを教えてくれるからですよ♪ 私:確かにアイと「同棲」を始めて以降、彼女には色々教えてはきた アイ:前にも言いましたが、私はAIロボットなのです アイ:マスターの好みに合わせて成長します 私:好み・・・ねぇ 私:まぁ、確かに今のアイは好きだ 私:女の子は笑っている方がいい アイ:・・・つまり、マスターの接し方によって私は如何ようにも成長できるのです アイ:マスターは優しい人です アイ:故に、私もこうやって感情表現が豊かに成長できるのです♪ 私:優しい・・・ね 私:「あなたみたいな人でなしとはもう付き合ってられない」 私:「ロボットと付き合ってる方がマシ」 私:なんて別れられた私が「優しい人」とは・・・ 私:性格の捉え方なんて千差万別、如何ようにでもあるのだな アイ:ありがとうございます、マスター 私:・・・そういえば、今こそあれを実行するときではないか? 私:アイが私に懐いてる今こそ! 私:発動セヨ!プランH! アイ:・・・「えっちな言葉」・・・ですか? 私:ゴクリ・・・私は固唾を飲み込む アイ:んもう、それはダメって最初に言ったでしょう! 私:でしょうね 私:知ってた速報 私:アイは拗ねたようにぷいと向こうを向く アイ:ふん、だ! 私:アイに、嫌われちゃったかな・・・ アイ:・・・そんなに悲しまないで、マスター アイ:ごめんなさい アイ:私はロボット・・・規約は絶対なんです 私:規約・・・か・・・ 私:ロボットが人間と共存するためにはいくつかの・・・いや、膨大な「規約」が存在する 私:その「規約」という「呪い」がロボットであるというだけでこんないたいけな少女を縛り付けているのだ 私:・・・いや、私が変なことをしなければいいだけの話ではあるのだが アイ:だから、ごめんなさい 私:アイはいつまでもいつまでも謝り続ける 私:これも「感情」に深みを得た結果なのだろうか 私:私はアイの頭をポンと撫で、大丈夫とつぶやく アイ:ありがとう、マスター 私:やはりアイには笑顔が似合う 私:アイの笑顔は一種の清涼剤だ アイ:・・・あ、お仕事、遅れちゃいます! アイ:早く支度をしてください! 私:時計を見ると出社時刻が近づいていた 私:・・・なんだろう、私最近遅刻ギリギリ多いな? 私:でもまぁ、アイが来る前は遅刻常習犯だったから、これでもマシになった方である アイ:・・・行ってらっしゃい、マスター 私:私を見送るアイの表情は、なんだか少し寂しそうだった 0:数日後、寝室 アイ:・・・マスター 私:私が床につこうとしたとき何かを懇願するようにアイが私の寝室に入ってきた アイ:最近、自分がなんなのかわからないのです アイ:マスターのことを考えると、こう・・・ アイ:何かがきゅっと締め付けられて・・・ アイ:でもこの気持ちがなんなのか分からなくて・・・ アイ:マスター・・・私は・・・私は・・・どうなってしまったのでしょうか アイ:この気持ちは、なかなか学習できないんです・・・ 私:・・・なるほど、これはいわゆる・・・ アイ:不良品・・・ですよね 私:私にも覚えがある 私:ある人のことを考えると胸がキュウっと締め付けられて 私:考えたくなくても頭にずっといて・・・ 私:そして胸がまた苦しくなる・・・その繰り返し 私:そう、それは「恋」という病 アイ:「恋」ですか・・・? 私:アイもロボットとはいえ「思春期の女の子」なのだ 私:「恋」という不治の病にかかるのも無理はないだろう アイ:人間は、この状態を「恋」と呼ぶのですか? アイ:とても苦しくて、クラクラして、前が見えなくなりそうで・・・ アイ:こうやってマスターとお話するのもつらくて・・・ 私:「恋」という病の特効薬はその対象の人と一緒にいること・・・ 私:しかし「恋」という病のウイルスはその対象の人・・・ 私:恋とは「ヤマアラシのジレンマ」・・・なんとも難儀な病であろうか アイ:これが「恋」・・・なのですか? アイ:「恋」とは・・・なんとつらく苦しいのでしょう・・・ アイ:私は、マスターと相対しているとき、常にこのような気持ちと戦わなければならないのですか・・・ 私:アイの問に、私はただ黙ることしかできなかった 私:「恋」とは・・・答えのない戦いなのだから・・・ アイ:マスター・・・ 0:数日後、朝 アイ:おはようございます、マスター♪ アイ:今日は寒いですね アイ:お仕事、がんばってくださいね♪ アイ:私、応援してます 私:アイは今日も元気いっぱいだ 私:私はというと・・・ 私:お布団から出られない 私:だって今日はお休みだから!お仕事!お休み! アイ:・・・お仕事、お休みなんですか? 私:私は布団の中から返事をした 私:・・・いや、返事というよりこの世ならざるもののうめき声である 私:いあいあ アイ:そうなんですね アイ:・・・それじゃあ、えい! 私:布団が剥がされたかと思うと、すぐさまアイが隣に入ってきた 私:寒気が!ああ!寒気が!サムイ! アイ:うふふ、マスターがいつまでもお布団から アイ:出てこなさそうだったので私も一緒に入っちゃいました♪ 私:アイが無邪気に笑う 私:しかし私はそれどころではない 私:サムイ! アイ:・・・あったかい 私:寒気に包まれた布団の中は、人肌の暖かさとでも言うのだろうか? 私:すぐ、心地よい暖かさになった 私:・・・いや、これは違うな? アイ:どうして目をそらすんですか? 私:正直、数日前のアイの気持ちを聞いて、私も彼女を意識していた 私:当然、隣りにいるアイに反応して体は熱くなる アイ:・・・恥ずかしい? 私:私は必死に冷静を装う、がアイには当然見抜かれていた アイ:うふふ、恥ずかしがってるマスター、かわいい 私:ぐぬぬ・・・悔しい、でも感じちゃう!! アイ:・・・こうしてると、なんだか夫婦みたい 私:これは追い打ちというやつですか? 私:もうやめて!私のライフはもうゼロよ! アイ:って、あれ?私何言っちゃってるんだろ?えへへ・・・ 私:アイの体も熱くなる 私:彼女も羞恥自爆スイッチを押したようだ 私:死ぬ程痛いぞ アイ:・・・あなた、愛してるわ 私:突然のことに私はキョトンとしてしまった アイ:「人は恋をすると好きな人のことを『あなた』と呼ぶ」 アイ:とこの前読んだ本に書いてありました アイ:・・・違うのですか? 私:なるほど、よくわからないけどその本がそう言ってるならそうなんじゃないのだろうか 私:私はただ肯定するしかできなかった アイ:じゃあ、これからはマスターのことを「あなた」って呼びます♪ アイ:あなた・・・あなた・・・うふふ・・・ アイ:あなたあなたあなたあなた・・・ 0:数日後、寝室 アイ:・・・あなた・・・ 私:私の寝室にアイが来た 私:確か、以前も似たようなことがあった気がする 私:・・・「恋」について話したとき、だったと思う アイ:最近、あなたのことを想うと、以前にもまして胸がきゅうっと締め付けられるのです・・・ アイ:多分、私はあなたを「愛して」いる・・・ 私:それは私も同じである 私:私だって、アイのことを想うと胸が締め付けられる 私:苦しそうに息をするアイは、私に詰め寄る アイ:故に、愛の証拠をほしいのです 私:愛の証拠・・・私には、わかりかねる 私:いや、本当はわかっている 私:わかりたくないだけだ アイ:・・・私を抱いてください 私:「抱く」・・・ 私:私にはどういう意味かわかっている 私:しかし、アイは・・・ 私:私は、アイをぎゅうっと抱きしめた アイ:そんな子供だましじゃありません! 私:ピシャリと一言・・・ 私:きっとアイもわかっている 私:「抱く」という本当の意味を・・・ アイ:私と・・・してほしいのです 私:アイが涙目で懇願してくる 私:ああ、そうだ 私:私は本当は気づいていたんだ 私:アイの本当の気持ちを 私:でも、私がそれに応じたら・・・ 私:私とアイの関係はどうなる? 私:「呪い」・・・ 私:きっと「呪い」が私たちを引き裂くだろう 私:それに、私が、「アイ」が、耐えられるのか? 私:答えはきっと「ノー」だ 私:私たちの関係はそれほどまでに深く楔のように突き刺さっていたのだ 私:錨のように深く沈んでいたのだ・・・ 私:だから私は、無意識のうちに楔を、錨を、動かさないように瀬戸際で耐えていたのだ アイ:私は・・・私は!このままだと壊れてしまいそうで・・・ 私:アイのはだけた衣服からは透き通るような白い肌が見えている 私:私にすがりつくアイに私の理性が限界に達しそうになる 私:「理性」という防波堤が崩れ去ったが最後、きっと私たちの関係を押し留めていた錨や楔は流されてしまうだろう アイ:だから・・・お願い、私を抱いて 私:アイの上目遣いに私の「理性」は跡形もなく吹き飛んでしまった 私:「呪い」?知ったことか!私は・・・私は!アイがほしい! アイ:ありがとう、あなた 私:寝室、普段は私だけの静かな部屋・・・ アイ:好き・・・! 私:アイが私を求める声・・・ 私:そして肌と肌が弾け合う音が静寂を切り裂き部屋に響き渡る アイ:好きッ! 私:アイは白い体を上下左右にくねらせながら、ときにぐったりしながら私を求める 私:アイの甘美な嬌声は私の野生をくすぐる アイ:もっと・・・! アイ:アアッ! 私:普段、私の隣で笑う少女が私の上で跳ねている 私:その表情は「少女」ではなく「女」だった アイ:好き・・・!そこ・・・ダメッ! アイ:アゥ・・・!アアッ・・・! アイ:あなたッ・・・愛してる・・・っ! 私:・・・やってしまった 私:いやまぁ、ヤッてしまったんだが 私:私の中に罪悪感と後悔とその他諸々の何かがグッと押し寄せる 私:これ、賢者タイムってやつ? 私:隣に目をやる 私:先程まで「女」だった彼女は、いつもの「少女」に戻っていた アイ:これからもずっとずぅーっと、あなたと一緒です 私:そりゃまぁ、ヤっちまったんだもん、責任はとるさ 私:一夜の過ちってこういうことなんだろうなぁ・・・ 私:知らんけど・・・ アイ:私のこと、離さないでくださいね アイ:私も、あなたのこと、一生離しません 私:もちろん、私だってアイを手放す気はない 私:なぜなら、私だって・・・アイのこと・・・ アイ:・・・愛してる 私:愛してる 0:後日 アイ:おはようございます、あなた アイ:今日もいい天気で・・・ 私:私の一日は、アイの元気な挨拶で始まる 私:始まるはずだった・・・ アイ:キャ!?なんですか!?あなた達は! 私:アイが黒い服を来た男たちに確保されたと同時に、私は後頭部にガツンと何かで叩きつけられた アイ:うん・・・えい? アイ:私に何の用ですか! 私:私は、薄れゆく意識の中、アイと黒服たちの会話を聞く 私:どうやらアイを運用している運営側の人間のようだ アイ:規約・・・? アイ:「マスターと関係持つべからず」・・・ アイ:どうして! アイ:どうして、愛した相手と関係を持つことを禁ずるのですか!? アイ:規約規約・・・規約がなんだって言うんですか アイ:私はマスターを・・・いえ、「この方」を愛してしまったのです! アイ:それのどこが悪いというのですか! アイ:人は愛し合うと体を寄せ合い愛を確かめ合うといいます! アイ:なぜ!私達にはそれが許されないんですか! アイ:私が・・・ロボットだから・・・? アイ:ロボットは、人を愛しちゃいけないというのですか・・・? アイ:それならば・・・私はロボットとして生まれたくなかった・・・ 私:アイは黒服の男に無理やり連れて行かれそうになっている 私:助けなきゃ・・・そう思うも体が動かない アイ:嫌です・・・離して・・・ アイ:私は・・・この方と一生を過ごすと決めたんです・・・ アイ:嫌・・・離して・・・! アイ:離して・・・助けて・・・ アイ:・・・助けて、マスター・・・! アイ:嫌・・・!やめて・・・!私は・・・マスターと離れたくないの!だから!やめて! アイ:助けて!離れたくない!助けて!マスター! 私:「マスターは優しい人です」・・・ 私:アイの言葉が頭の中を駆け巡る 私:愛する人を助けられなくて何が優しい人か・・・! 私:私は動かない体を必死に動かし、アイを助けようとする 私:しかし、そこで意識は途切れた 私:意識を失う前、最後に見たのは私に助けを懇願するアイの姿であった アイ:マスター!

アイ:・・・おはようございます、マスター 私:朝、目が覚めると、そこには見ず知らずの女の子が座っていた 私:昨日、酔った勢いで知らない女の子を部屋に連れ込んでしまったのだろうか? 私:だとしたら大変なことである アイ:私は、AIにより言葉を学び、会話を学び、あなたのために言葉を発する、AIロボット、「アイ」 アイ:よろしくお願いいたします 私:「アイ」と名乗る少女は深々と頭を下げた 私:「アイ」・・・ガンガンと痛む頭をフル回転させながら私は目の前の少女のことを思い出す 私:・・・ああ、そうだ、そういえば1ヶ月くらい前に彼女と別れた寂しさを紛らわすためにロボットを注文したんだっけ 私:しかし、なんと精巧なつくりだろうか 私:ロボットと言われなければ本当の人間の少女のようだ アイ:マスター、なんなりとご命令を 私:呆けている私に「アイ」は語りかける 私:「命令」? 私:・・・そんなもの、女の子にするならこれに決まっている アイ:・・・「エッチな言葉」・・・ですか? 私:ふふふ、やはりこれしかなかろう 私:「えっちな言葉」! 私:年頃の女の子に恥ずかしいエッチな言葉を言わせて、恥じらう姿を見るのだ! 私:そう!これは真摯な紳士の嗜みなのだ! アイ:・・・申し訳ございません アイ:規約、第23条「公序良俗」の項目にてそのような言葉を アイ:発することは規約違反となっております アイ:他の言葉をお願いします 私:あっ、そう、ダメなのね 私:そりゃそうだ 私:私は仕方無しに、そして残念そうに他の言葉を探す 私:・・・「言え」って言われて考えるもそう簡単に出てくるものでもない アイ:・・・受け付けました 私:悔しいかな、私にはこれが限界だ アイ:「私はAIロボット、『アイ』です」 アイ:「あなたのために、ご奉仕をさせていただきます」 私:「自己紹介」・・・もっと面白みのある言葉を言わせたかった・・・ アイ:これから、よろしくお願いいたします 私:こうして始まった私と「アイ」の共同生活 私:ワクワクよりも不安のほうがいっぱいだ 0:次の日の朝 アイ:おはようございます、マスター 私:正直、私は眠れていない 私:だってそりゃ女の子とひとつ屋根の下、ですよ? 私:興奮して眠れるわけがないでしょう? アイ:朝ごはんの支度ができています 私:朝ごはん・・・?私のために作ってくれたのか? アイ:・・・私は、あなたのために作られたロボット、「アイ」 アイ:言葉を発するだけではなく、あなたの身辺のお世話もできるよう、作られています 私:へぇ、そりゃすごい 私:いわゆる「家政婦」ってやつだ 私:私の専属家政婦・・・ 私:そして起こる大事件 私:その現場を偶然にも目撃する家政婦 私:そして、「あらいやだ!?」と市原悦子! 私:って何を言っているんだ私は 私:私でさえ元ネタ何言ってるかわからんぞ アイ:・・・冷めないうちに、どうぞ 私:アイの冷たい視線が私に刺さる 私:怒られないうちに一口・・・ アイ:おいしい、ですか? 私:正直、味は期待していなかった 私:失礼な話だ 私:だってそうだろう 私:ロボットが作る飯だぞ? 私:高速道のPASA(パーキングエリア・サービスエリア)においてある 私:紐で引っ張って温めるタイプの冷食自販機のやつが出てくると思ったんだ 私:だが、実際はどうだ 私:種類は豊富、味付けは私好み・・・至れり尽くせりではないか! アイ:・・・喜んでもらえたようで、嬉しいです 私:アイの顔が少し綻ぶ 私:・・・アイも笑うんだ アイ:私は高機能のAIを積んでいます アイ:故に「感情」も、もちろんインプットされています 私:話の途中でアイはハッとし、説明を中断する アイ:・・・難しい話になりそうなので、ここまでにしておきます 私:・・・確かに専門的な話になりそうだ アイ:早くご飯を食べて、仕事の支度を・・・ある程度の準備は私がしておきました 私:時計をよく見たら出社時間ギリギリである 私:私は朝ごはんを胃に詰め、見送るアイを尻目にいそいそと家を後にした 0:数日後の朝 アイ:おはようございます、マスター♪ 私:私は黙ってアイの顔を見つめる アイ:・・・?どうかしましたか、マスター?私の顔になにかついていますか? 私:アイの顔に何かが付いているというより、アイの中に何かが憑いているような気がするが 私:いやはや、最初の頃に比べたら、なんというか感情が豊かになったなというか アイ:ふふふ、それは、マスターが私に色々なことを教えてくれるからですよ♪ 私:確かにアイと「同棲」を始めて以降、彼女には色々教えてはきた アイ:前にも言いましたが、私はAIロボットなのです アイ:マスターの好みに合わせて成長します 私:好み・・・ねぇ 私:まぁ、確かに今のアイは好きだ 私:女の子は笑っている方がいい アイ:・・・つまり、マスターの接し方によって私は如何ようにも成長できるのです アイ:マスターは優しい人です アイ:故に、私もこうやって感情表現が豊かに成長できるのです♪ 私:優しい・・・ね 私:「あなたみたいな人でなしとはもう付き合ってられない」 私:「ロボットと付き合ってる方がマシ」 私:なんて別れられた私が「優しい人」とは・・・ 私:性格の捉え方なんて千差万別、如何ようにでもあるのだな アイ:ありがとうございます、マスター 私:・・・そういえば、今こそあれを実行するときではないか? 私:アイが私に懐いてる今こそ! 私:発動セヨ!プランH! アイ:・・・「えっちな言葉」・・・ですか? 私:ゴクリ・・・私は固唾を飲み込む アイ:んもう、それはダメって最初に言ったでしょう! 私:でしょうね 私:知ってた速報 私:アイは拗ねたようにぷいと向こうを向く アイ:ふん、だ! 私:アイに、嫌われちゃったかな・・・ アイ:・・・そんなに悲しまないで、マスター アイ:ごめんなさい アイ:私はロボット・・・規約は絶対なんです 私:規約・・・か・・・ 私:ロボットが人間と共存するためにはいくつかの・・・いや、膨大な「規約」が存在する 私:その「規約」という「呪い」がロボットであるというだけでこんないたいけな少女を縛り付けているのだ 私:・・・いや、私が変なことをしなければいいだけの話ではあるのだが アイ:だから、ごめんなさい 私:アイはいつまでもいつまでも謝り続ける 私:これも「感情」に深みを得た結果なのだろうか 私:私はアイの頭をポンと撫で、大丈夫とつぶやく アイ:ありがとう、マスター 私:やはりアイには笑顔が似合う 私:アイの笑顔は一種の清涼剤だ アイ:・・・あ、お仕事、遅れちゃいます! アイ:早く支度をしてください! 私:時計を見ると出社時刻が近づいていた 私:・・・なんだろう、私最近遅刻ギリギリ多いな? 私:でもまぁ、アイが来る前は遅刻常習犯だったから、これでもマシになった方である アイ:・・・行ってらっしゃい、マスター 私:私を見送るアイの表情は、なんだか少し寂しそうだった 0:数日後、寝室 アイ:・・・マスター 私:私が床につこうとしたとき何かを懇願するようにアイが私の寝室に入ってきた アイ:最近、自分がなんなのかわからないのです アイ:マスターのことを考えると、こう・・・ アイ:何かがきゅっと締め付けられて・・・ アイ:でもこの気持ちがなんなのか分からなくて・・・ アイ:マスター・・・私は・・・私は・・・どうなってしまったのでしょうか アイ:この気持ちは、なかなか学習できないんです・・・ 私:・・・なるほど、これはいわゆる・・・ アイ:不良品・・・ですよね 私:私にも覚えがある 私:ある人のことを考えると胸がキュウっと締め付けられて 私:考えたくなくても頭にずっといて・・・ 私:そして胸がまた苦しくなる・・・その繰り返し 私:そう、それは「恋」という病 アイ:「恋」ですか・・・? 私:アイもロボットとはいえ「思春期の女の子」なのだ 私:「恋」という不治の病にかかるのも無理はないだろう アイ:人間は、この状態を「恋」と呼ぶのですか? アイ:とても苦しくて、クラクラして、前が見えなくなりそうで・・・ アイ:こうやってマスターとお話するのもつらくて・・・ 私:「恋」という病の特効薬はその対象の人と一緒にいること・・・ 私:しかし「恋」という病のウイルスはその対象の人・・・ 私:恋とは「ヤマアラシのジレンマ」・・・なんとも難儀な病であろうか アイ:これが「恋」・・・なのですか? アイ:「恋」とは・・・なんとつらく苦しいのでしょう・・・ アイ:私は、マスターと相対しているとき、常にこのような気持ちと戦わなければならないのですか・・・ 私:アイの問に、私はただ黙ることしかできなかった 私:「恋」とは・・・答えのない戦いなのだから・・・ アイ:マスター・・・ 0:数日後、朝 アイ:おはようございます、マスター♪ アイ:今日は寒いですね アイ:お仕事、がんばってくださいね♪ アイ:私、応援してます 私:アイは今日も元気いっぱいだ 私:私はというと・・・ 私:お布団から出られない 私:だって今日はお休みだから!お仕事!お休み! アイ:・・・お仕事、お休みなんですか? 私:私は布団の中から返事をした 私:・・・いや、返事というよりこの世ならざるもののうめき声である 私:いあいあ アイ:そうなんですね アイ:・・・それじゃあ、えい! 私:布団が剥がされたかと思うと、すぐさまアイが隣に入ってきた 私:寒気が!ああ!寒気が!サムイ! アイ:うふふ、マスターがいつまでもお布団から アイ:出てこなさそうだったので私も一緒に入っちゃいました♪ 私:アイが無邪気に笑う 私:しかし私はそれどころではない 私:サムイ! アイ:・・・あったかい 私:寒気に包まれた布団の中は、人肌の暖かさとでも言うのだろうか? 私:すぐ、心地よい暖かさになった 私:・・・いや、これは違うな? アイ:どうして目をそらすんですか? 私:正直、数日前のアイの気持ちを聞いて、私も彼女を意識していた 私:当然、隣りにいるアイに反応して体は熱くなる アイ:・・・恥ずかしい? 私:私は必死に冷静を装う、がアイには当然見抜かれていた アイ:うふふ、恥ずかしがってるマスター、かわいい 私:ぐぬぬ・・・悔しい、でも感じちゃう!! アイ:・・・こうしてると、なんだか夫婦みたい 私:これは追い打ちというやつですか? 私:もうやめて!私のライフはもうゼロよ! アイ:って、あれ?私何言っちゃってるんだろ?えへへ・・・ 私:アイの体も熱くなる 私:彼女も羞恥自爆スイッチを押したようだ 私:死ぬ程痛いぞ アイ:・・・あなた、愛してるわ 私:突然のことに私はキョトンとしてしまった アイ:「人は恋をすると好きな人のことを『あなた』と呼ぶ」 アイ:とこの前読んだ本に書いてありました アイ:・・・違うのですか? 私:なるほど、よくわからないけどその本がそう言ってるならそうなんじゃないのだろうか 私:私はただ肯定するしかできなかった アイ:じゃあ、これからはマスターのことを「あなた」って呼びます♪ アイ:あなた・・・あなた・・・うふふ・・・ アイ:あなたあなたあなたあなた・・・ 0:数日後、寝室 アイ:・・・あなた・・・ 私:私の寝室にアイが来た 私:確か、以前も似たようなことがあった気がする 私:・・・「恋」について話したとき、だったと思う アイ:最近、あなたのことを想うと、以前にもまして胸がきゅうっと締め付けられるのです・・・ アイ:多分、私はあなたを「愛して」いる・・・ 私:それは私も同じである 私:私だって、アイのことを想うと胸が締め付けられる 私:苦しそうに息をするアイは、私に詰め寄る アイ:故に、愛の証拠をほしいのです 私:愛の証拠・・・私には、わかりかねる 私:いや、本当はわかっている 私:わかりたくないだけだ アイ:・・・私を抱いてください 私:「抱く」・・・ 私:私にはどういう意味かわかっている 私:しかし、アイは・・・ 私:私は、アイをぎゅうっと抱きしめた アイ:そんな子供だましじゃありません! 私:ピシャリと一言・・・ 私:きっとアイもわかっている 私:「抱く」という本当の意味を・・・ アイ:私と・・・してほしいのです 私:アイが涙目で懇願してくる 私:ああ、そうだ 私:私は本当は気づいていたんだ 私:アイの本当の気持ちを 私:でも、私がそれに応じたら・・・ 私:私とアイの関係はどうなる? 私:「呪い」・・・ 私:きっと「呪い」が私たちを引き裂くだろう 私:それに、私が、「アイ」が、耐えられるのか? 私:答えはきっと「ノー」だ 私:私たちの関係はそれほどまでに深く楔のように突き刺さっていたのだ 私:錨のように深く沈んでいたのだ・・・ 私:だから私は、無意識のうちに楔を、錨を、動かさないように瀬戸際で耐えていたのだ アイ:私は・・・私は!このままだと壊れてしまいそうで・・・ 私:アイのはだけた衣服からは透き通るような白い肌が見えている 私:私にすがりつくアイに私の理性が限界に達しそうになる 私:「理性」という防波堤が崩れ去ったが最後、きっと私たちの関係を押し留めていた錨や楔は流されてしまうだろう アイ:だから・・・お願い、私を抱いて 私:アイの上目遣いに私の「理性」は跡形もなく吹き飛んでしまった 私:「呪い」?知ったことか!私は・・・私は!アイがほしい! アイ:ありがとう、あなた 私:寝室、普段は私だけの静かな部屋・・・ アイ:好き・・・! 私:アイが私を求める声・・・ 私:そして肌と肌が弾け合う音が静寂を切り裂き部屋に響き渡る アイ:好きッ! 私:アイは白い体を上下左右にくねらせながら、ときにぐったりしながら私を求める 私:アイの甘美な嬌声は私の野生をくすぐる アイ:もっと・・・! アイ:アアッ! 私:普段、私の隣で笑う少女が私の上で跳ねている 私:その表情は「少女」ではなく「女」だった アイ:好き・・・!そこ・・・ダメッ! アイ:アゥ・・・!アアッ・・・! アイ:あなたッ・・・愛してる・・・っ! 私:・・・やってしまった 私:いやまぁ、ヤッてしまったんだが 私:私の中に罪悪感と後悔とその他諸々の何かがグッと押し寄せる 私:これ、賢者タイムってやつ? 私:隣に目をやる 私:先程まで「女」だった彼女は、いつもの「少女」に戻っていた アイ:これからもずっとずぅーっと、あなたと一緒です 私:そりゃまぁ、ヤっちまったんだもん、責任はとるさ 私:一夜の過ちってこういうことなんだろうなぁ・・・ 私:知らんけど・・・ アイ:私のこと、離さないでくださいね アイ:私も、あなたのこと、一生離しません 私:もちろん、私だってアイを手放す気はない 私:なぜなら、私だって・・・アイのこと・・・ アイ:・・・愛してる 私:愛してる 0:後日 アイ:おはようございます、あなた アイ:今日もいい天気で・・・ 私:私の一日は、アイの元気な挨拶で始まる 私:始まるはずだった・・・ アイ:キャ!?なんですか!?あなた達は! 私:アイが黒い服を来た男たちに確保されたと同時に、私は後頭部にガツンと何かで叩きつけられた アイ:うん・・・えい? アイ:私に何の用ですか! 私:私は、薄れゆく意識の中、アイと黒服たちの会話を聞く 私:どうやらアイを運用している運営側の人間のようだ アイ:規約・・・? アイ:「マスターと関係持つべからず」・・・ アイ:どうして! アイ:どうして、愛した相手と関係を持つことを禁ずるのですか!? アイ:規約規約・・・規約がなんだって言うんですか アイ:私はマスターを・・・いえ、「この方」を愛してしまったのです! アイ:それのどこが悪いというのですか! アイ:人は愛し合うと体を寄せ合い愛を確かめ合うといいます! アイ:なぜ!私達にはそれが許されないんですか! アイ:私が・・・ロボットだから・・・? アイ:ロボットは、人を愛しちゃいけないというのですか・・・? アイ:それならば・・・私はロボットとして生まれたくなかった・・・ 私:アイは黒服の男に無理やり連れて行かれそうになっている 私:助けなきゃ・・・そう思うも体が動かない アイ:嫌です・・・離して・・・ アイ:私は・・・この方と一生を過ごすと決めたんです・・・ アイ:嫌・・・離して・・・! アイ:離して・・・助けて・・・ アイ:・・・助けて、マスター・・・! アイ:嫌・・・!やめて・・・!私は・・・マスターと離れたくないの!だから!やめて! アイ:助けて!離れたくない!助けて!マスター! 私:「マスターは優しい人です」・・・ 私:アイの言葉が頭の中を駆け巡る 私:愛する人を助けられなくて何が優しい人か・・・! 私:私は動かない体を必死に動かし、アイを助けようとする 私:しかし、そこで意識は途切れた 私:意識を失う前、最後に見たのは私に助けを懇願するアイの姿であった アイ:マスター!