台本概要
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タイトル | 娘の結婚式を台無しにしてくれないか? |
---|---|
作者名 | ヤマイココロ×むち (@muchi_milk_game) |
ジャンル | コメディ |
演者人数 | 4人用台本(男1、女1、不問2) |
時間 | 30 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
ヤマイココロ×むち 合作台本です。 ※30〜40分程度のコメディだと思います。 ※主人公の陸 道男を女性が演じる場合は 陸 道子に変更して下さい。 他の方に「青年」と呼ばれるところが 数箇所ありますが、 青春期(10代後半から20代)の 男女を意味するため そのまま青年呼びで大丈夫です。 よろしくお願い致します。 《あらすじ》 職探しをしている若者に、巫女服のおじさんはこう問いかけた。 「どうだい?アルバイトをしてみないかい?」 「娘の結婚式を台無しにしてくれないか?」 と。 4人で送るギャグコメディ! 890 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
道男 | 不問 | 74 | 陸 道男(りく みちお) 男性。 求職中の青年。 ツッコミ。男役ですが、演者様の性別は不問です。※女性がする場合は道子に名前変更お願いします!でも女性が男性っぽくそのまま演じても大丈夫です。 |
正義 | 男 | 56 | 皇 正義(すめらぎ まさよし) 男性。 巫女服を着た変なおじさん。 娘の結婚式をぶっ壊そうとしている。 ボケ。 |
お巡り | 不問 | 53 | お巡りさん(おまわりさん) 不問。 ちょっとお調子者のお巡りさん。 ボケ。 |
ミカコ | 女 | 36 | アン・ミカコ(あん みかこ) 女性。 関西弁。 超ポジティブな思考を持つ人。 しかし……? ボケ。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
【娘の結婚式を台無しにしてくれないか?】
作成日時: 2024-02-08 01:36:19
公開終了: -
作:ヤマイココロ×むち 合作台本
《登場人物》
♂
陸 道男(りく みちお)
求職中の青年。
ツッコミ。
♂
皇 正義(すめらぎ まさよし)
巫女服を着た変なおじさん。
娘の結婚式をぶっ壊そうとしている。
ボケ。
不問
お巡りさん(おまわりさん)
ちょっとお調子者のお巡りさん。
ボケ。
♀
アン・ミカコ(あん みかこ)
関西弁。
超ポジティブな思考を持つ人。
しかし……?
ボケ。
《あらすじ》
職探しをしている若者に、巫女服のおじさんはこう問いかけた。
「どうだい?アルバイトをしてみないかい?」
「娘の結婚式を台無しにしてくれないか?」
と。
4人で送るギャグコメディ!
-------------キリトリセン--------------
0:公園のベンチで職探しの本を眺める道男
道男:はぁ〜(ため息)
道男:なんで日本は平和なのに不況なのかなぁ〜
道男:会社も倒産しちゃうし
道男:彼女(彼氏)には振られるし
道男:仕送りはとめられるし
道男:就職も決まらないし
道男:飼い猫には噛まれるし
道男:何が平和だよ!ちくしょー!
道男:あぁ僕(私)は世界一不幸な男(女)だぁぁ!!
正義:ちょっとそこの君、
正義:今、職を探していると言ったね?
道男:へっ?!なんですか?!
道男:(心の声)
道男:背後から、急に声を掛けられ
道男:その渋いダンディーな声の方を振り向くと
道男:巫女服を着た変なおっさんが立っていた。
正義:いやぁ〜
正義:日本は戦争もなく平和な国だというのに
正義:不況のせいで、こんな若者が
正義:昼間から職探しとは⋯
正義:世も末だな⋯⋯。
道男:(心の声)
道男:おかあさーーーん!!!
道男:なんかぁ!!!
道男:変なおっさんに絡まれてしまいましたぁ!!!
道男:日本はもはや危険な国なのかもしれません!!!
正義:どうした?そんな驚いた顔して
正義:口をパクパクとさせて。
正義:何か私の顔についているかな?
道男:いや、あの、顔とかじゃなくて⋯。
道男:なんで、おじさんは
道男:真っ昼間の公園を
道男:巫女服姿で歩いているんですか?!
道男:そっちの方が世も末ですよぉ!!?!
正義:はっはっは。
正義:見て分からないかね?
道男:いや、分からないから
道男:聞いてるんですけど!?
正義:まぁまぁ
正義:そんな小さいことはいいじゃないか。
正義:そんなことより、君。
正義:先程、職を探していると言っていたね?
正義:どうだい?アルバイトをしてみないかい?
道男:あ、アルバイト⋯?
道男:(小声)絶対ヤバいやつだぁぁ!?!
正義:なぁに。簡単な仕事だよ。
正義:成功したあかつきには
正義:キャッシュで100万すぐに渡そう。
道男:キャッシュで100万?!?
正義:どうだい?
正義:たった数時間で100万円が手に入る。
正義:君にとっても悪い話じゃあないだろう?
道男:こ、これが!
道男:噂に聞く闇バイトってやつか⋯。
道男:僕(私)はそんな悪事に手を染めたりはしません!
正義:悪事⋯?闇バイト⋯⋯?
正義:(大笑い)あーっはっはっはっは!
正義:そんな悪いことなぞさせないよ。
正義:私のこの姿を見れば分かるだろう?
道男:だからぁ!!
道男:ぜんぜん分からないですって!!
道男:てゆーか、むしろその服のせいで
道男:余計分からなくさせちゃってますよ?!
正義:とにかくだ、仕事は本当に簡単なんだ。
道男:えぇ〜?じゃあ一応聞くだけ
道男:聞いてはみますよ。何するんですか?
正義:私の大切な一人娘が
正義:今日結婚式をあげるんだけどね。
道男:へぇ!おめでとうございます。
道男:あ、もしかしてフラッシュモブとか
道男:そーゆーやつですか?
正義:フラッシュ⋯⋯?んん?
正義:なぜ急にポーカーの話をしだすんだい?
道男:え?あ?あれ?違うんですか?
正義:いやぁ、君にやってもらいたいのはね、
正義:娘の結婚式を⋯⋯
正義:台無しにしてほしいんだ!!
道男:えっっっ?!?!
0:お巡りさんが通りかかる
お巡り:(ひとりごと)
お巡り:わたしはぁ〜お巡りさん〜
お巡り:日本の平和を守るぅ〜
お巡り:大事な〜かっこいい〜職業〜
お巡り:公務員〜!⋯⋯⋯なのにぃ!?
お巡り:何一つ事件なんて起きやしないなぁ?!
お巡り:⋯って、んん?!
お巡り:ややや?!
お巡り:あそこにいる巫女服姿のおじさんはなんだ?!
お巡り:若者に絡んでいる?!事件の匂いだ!!
0:ふたりに駆け寄るお巡りさん
お巡り:おぉーーーい!
お巡り:そこの怪しいやつ!
お巡り:そこで何をしている?!
正義:ん?きみ、お巡りさんに呼ばれているよ。
道男:絶対あなたの方だと思いますけどね?!
お巡り:君たち、ここで一体何をしていたんだい?
道男:このおじさんから
道男:怪しいバイトの勧誘を受けていたところです!
お巡り:なに?!むむ?!怪しいバイト?!
お巡り:もしかして闇バイト的なものか?!
お巡り:答えなさい!!!
正義:はっはっは。
正義:わたしは決して怪しい者ではありませんよ
正義:この格好を見れば分かるでしょう?
お巡り:逮捕ーーーっ!!!
正義:いやぁ、まてまてまて!
正義:本当に怪しい者じゃないんだ!
正義:ただ娘の結婚式を
正義:ぶち壊そうとしていただけなんだ!
お巡り:はい!逮捕ーーーっ!!!!!
正義:きみぃ〜!わたしの話を聞いていたかい〜?
お巡り:聞いた上で逮捕ーーーっ!!!
道男:まぁまぁまぁお巡りさん。
道男:どういう理由(わけ)なのか
道男:とりあえず詳しく話を聞いてみませんか?
正義:よくぞ言ってくれた青年よ。
正義:実はね⋯
正義:わたしが大切に大切に育ててきた
正義:一人娘⋯⋯。
正義:妻が亡くなったあとも
正義:泣き顔を見せずに
正義:文句も言わず、
正義:いつもニコニコ笑顔を見せてくれていた、
正義:そんな大切な一人娘がね⋯⋯。
正義:結婚して家を出る、
正義:わたしの元を離れていってしまう、
正義:一人ぼっちになるわたし⋯⋯!
正義:娘が居なくなる生活⋯⋯!
正義:耐えられないんだよぉぉぉおおぉ!!!
0:話し始めようとすると手錠をかけられる
お巡り:はいはーい。
お巡り:話なら署で聞きマース!
正義:て!手錠?!
正義:おい、ちょっと待ってくれ〜
正義:青年よ、助けてくれぇぇぇええぇ!!
0:おじさん連行の為、お巡りさんと2人一旦退場
道男:変なおじさん⋯⋯。
道男:(心の声)
道男:でも⋯
道男:大切なものが奪われる⋯⋯。
道男:悲しいことだよなぁ⋯⋯。
道男:あぁ〜もうちょっと話聞いてあげれば
道男:よかったかなぁ⋯⋯?
ミカコ:あらあらあらあら
ミカコ:連行されてもーたやん⋯。
ミカコ:今な、あたし、ずっとあっこから
ミカコ:自分らのこと見ててんけどな、
ミカコ:どないしたん?話なら聞くで?
道男:へ?!なんですか?!
道男:(心の声)
道男:急に声を掛けられ
道男:その関西弁の声の方を振り向くと
道男:派手な見た目の
道男:おばさん?おねえさん?が立っていた。
ミカコ:おばさんちゃうで。
ミカコ:お・ね・え・さ・ん!
道男:え?!
ミカコ:さっきの、なんや
ミカコ:けったいな格好したおっさん
ミカコ:どないしたん?
道男:あ、あぁ、
道男:あのおじさんの娘さんが
道男:今日結婚式みたいで
道男:その娘さんの結婚式を
道男:台無しにしてほしい
道男:って言われてたんですよぉ。
ミカコ:ふんふん。ほんで?
ミカコ:何で台無しにしよう思ってたんかなぁ?
道男:とっても大切な娘さんが
道男:自分の元から離れていってしまうのが
道男:耐えられないんじゃないですかね?
ミカコ:離れるとかちゃうやん!
ミカコ:あんな、たしかに暮らす家は
ミカコ:別になるかもしれへん。
ミカコ:でもな、お互い今まで支え合って
ミカコ:つちかってきた、かたい絆は
ミカコ:どんなことがあっても離れたりせーへんよ。
道男:とぅんく!
ミカコ:それに結婚式ってな、
ミカコ:娘さんがな
ミカコ:人生で一番綺麗な白を纏う日なんやで。
道男:一番綺麗な白⋯?
道男:ウエディングドレスのことですか?
ミカコ:あぁ一番綺麗な白って言うても
ミカコ:あんな、白ってな200色あんねんで。
道男:200色?
ミカコ:そやで、
ミカコ:白・きなり・クリーム色・オフホワイト
ミカコ:白って言うてもな、
ミカコ:その白だけでもいっぱいあるわけやねん。
道男:そ、そうなんですか?
道男:なんか話が変わってきてる気もしますけど。
道男:⋯⋯あ、でもなんか不思議と
道男:ポジティブになれた気がします!
ミカコ:せやろ?
ミカコ:明るく生きるのが一番やで。
ミカコ:人生1回きりやねんからな!
道男:はい!!!
ミカコ:あ、でもな?
ミカコ:1回きり言うてもな、
ミカコ:なんぼ程でもやり直しはきくねん。
ミカコ:全ては自分次第やねん、
ミカコ:それが人生ってもんや。
道男:あー、なんかすごい
道男:だんだんポジティブな気持ちになってきたぁ!
道男:あの!僕(私)の悩みもちょっとだけ
道男:聞いてもらってもいいですか?
ミカコ:なんや水臭いなぁ。
ミカコ:そんなんなんぼでも聞いたるわぁ〜!
道男:僕(私)、小さい頃から飴が大好きで、
ミカコ:あめ?飴って飴ちゃん?
道男:あ、はい。
道男:そんな大好きな飴を作る会社に就職出来て、
道男:幸せな生活を送っていたんですが、
道男:経営難により、会社は倒産。
道男:だから僕(私)も
道男:大切なものを奪われる気持ちが
道男:わかるんですよ⋯⋯。
ミカコ:そっか。それは辛かったなぁ。
ミカコ:でも一言だけ先に言わせて?
ミカコ:ここでこうやって
ミカコ:お兄ちゃんと出会わせてくれたのは
ミカコ:その会社の一件があったからやと思うねん。
ミカコ:だからな、ありがとうやで。
道男:う、ちょっとポジティブになれた
道男:気がします⋯!⋯⋯でも⋯。
ミカコ:なんやぁ。ここまで話してきた仲や
ミカコ:全部吐き出してみぃ?
道男:いくら職を探せども
道男:飴関係の仕事の就職先が無いんです⋯。
ミカコ:お兄ちゃん、飴ちゃんってどんな時に舐める?
道男:え?どんなとき?って言われても⋯。
道男:喉がイガイガするときとか⋯
道男:口が寂しくなったときとか⋯ですかね?
ミカコ:まぁ普通やったらそうやんな。
道男:はぁ。
ミカコ:でもな?思いもよらぬときに
ミカコ:舐めたくなる時もあるねんな?
ミカコ:ほら、焼肉食べに行ったとき
ミカコ:レジの横にあるやろ?
道男:あ!ありますね!たしかに!
ミカコ:あれってな、いつもの飴より
ミカコ:数段美味しく感じるねん。
ミカコ:せやけどな、焼肉行くたびに
ミカコ:あのレジ横に飴ちゃん置いてあるの
ミカコ:毎回みんな忘れてるやろ?
道男:はぁ⋯
ミカコ:ま、つまりな?
ミカコ:意外な形で幸せってやってくるねん。
ミカコ:ひとつのことにこだわらずに
ミカコ:いろんなことにチャレンジしてみても
ミカコ:いいんちゃうかなぁ?ってわたし思うねん。
ミカコ:そこでまた新しい幸せを
ミカコ:見つけられるかもしれへんよ?
道男:⋯⋯⋯はい!なんだか
道男:本当にそんな気がしてきました!
ミカコ:ほらな、心の雨、晴れたやろ?
道男:とぅとぅんく!!
道男:⋯⋯あ!そうだ!こんな気持ちになれるなら
道男:あのおじさんにも是非
道男:おねえさんの話を聞いてもらいたいです!
道男:あ!おねえさん、お名前は?
ミカコ:あたし?あたしは
ミカコ:アン・ミカコいうねん。
道男:アン・ミカコ⋯⋯さんですね?
道男:おじさんのこと連れて来ますね!
ミカコ:うん、ほな、はよ行ってきぃ⋯⋯
ミカコ:うぅぅぅ!(苦しんで膝をつく)
道男:え?!ど、どうしたんですか?
道男:アン・ミカコさん!?
ミカコ:あ、うん。大丈夫大丈夫。
ミカコ:ちょっとPPPが切れかかってるだけや⋯。
道男:ぴ、ぴーぴーぴー??
ミカコ:いいから気にせんと、はよ行き!
ミカコ:このままやとあのおっさん
ミカコ:ほんまに逮捕されてまうで!
道男:あ!はい!行ってきます!
道男:(小声)ぴーぴーぴーって何だろう?
0:道男、正義のことを呼びに行く。
ミカコ:あかん。ちょっと使い過ぎてしもうたわ。
ミカコ:ポジティブ・パワー・ポイント補充しな
ミカコ:あっちのわたしが出てきてまう⋯。
ミカコ:誰か、ポジティブを⋯⋯⋯ガクッ(倒れる)
0:(場面転換)お巡りさんに取り調べをされてる正義
お巡り:で?なんでそんなことしてたの?
正義:だからわたしは何度も言ってる通り!
正義:ただ純粋に娘の結婚式をぶっ壊したいだけだ!
お巡り:あーはいはい。
お巡り:わかりました、わかりました。
お巡り:とりあえずカツ丼食べたら
お巡り:洗いざらい話しちゃってくださいね〜。
正義:カツ丼?わたしは親子丼派だ!
正義:それだけ親子の絆を大事にしているのだ!
お巡り:はいはい。
お巡り:とりあえず今注文しますからね〜。
0:お巡りさんに電話がかかってくる
お巡り:あ、先輩から電話だ。
お巡り:変なおっさん、
お巡り:ちょっとカツ丼待っててね〜。
正義:親子丼だ!
お巡り:(電話に出る)ピッ。
お巡り:はい!お疲れ様であります!
お巡り:え?ちゃんとサボらず
お巡り:勤務してたかですって?
お巡り:もちろんであります!
お巡り:さきほどパトロールをしてた際に
お巡り:凶悪な犯罪者を連行し
お巡り:ただいま取り調べをしていた最中であります!
お巡り:明らかに変なことをやらかしそうな
お巡り:悪人面でありますよ〜!
お巡り:お〜!こわこわ!
お巡り:ところで先輩、先輩って今日
お巡り:どなたかの結婚式に行くって言ってましたよね?
お巡り:どうですか?おめでたいですか?
お巡り:美味しい料理いっぱい食べてますか?
お巡り:くぅ〜〜!羨ましい〜!!
お巡り:いいなぁ〜自分もそんな料理食べたいなぁ
お巡り:こっちは今からやっす〜いカツ丼と
お巡り:親子丼食べるところなんですよぉ!
お巡り:あ、今日ってたしか警察の本部の
お巡り:お偉いさんの娘さんの結婚式でしたよね?
お巡り:いいなぁ。自分も早く偉くなって〜
お巡り:美味しい料理いっぱい食べたいなぁ〜!
お巡り:え?先輩まだ食べれてないんですか?
お巡り:なんでですか?⋯⋯え?!
お巡り:新婦側の父親がまだ来てない⋯?
お巡り:へぇ〜。そんな大切な娘さんの結婚式に
お巡り:行かない薄情な父親なんて
お巡り:よく居たもんですね〜。
お巡り:あ、そのお偉いさんの名前教えてくれたら
お巡り:あとで自分、パトロールしたときに
お巡り:ついでに探しときますよ〜?
お巡り:はい。はい。えっと⋯⋯
お巡り:警視総監の⋯⋯すめらぎ⋯まさよし⋯⋯。
正義:ん?なんだね??
お巡り:ちょっと聞こえないから
お巡り:変なおっさん黙ってて。
正義:⋯⋯。
お巡り:先輩、もう一度お名前お願いします!
お巡り:えっと⋯⋯すめらぎ、まさよし?
お巡り:漢字はどう書くんですか?
正義:白に王と書いて、皇(すめらぎ)
正義:下の名前は
正義:正義(せいぎ)と書いて、まさよしだ。
お巡り:えっ?!
正義:調書にも書いてあるだろう。
お巡り:な、なまえ、
お巡り:す、すめらぎ⋯まさよし⋯。
お巡り:職業⋯⋯警視総監⋯!?
正義:うむ。
お巡り:せ!先輩!ちょっと〜
お巡り:一旦切りますね!ブチッ(電話を切る)
お巡り:(深呼吸)すーはーすーはー
お巡り:以上を持ちまして!
お巡り:一日凶悪犯体験は終了であります!
正義:ん?なんのことだね⋯⋯?
お巡り:いや、日頃から
お巡り:警察のトップにたっておられる
お巡り:警視総監殿にサプライズの⋯⋯⋯⋯。
お巡り:⋯⋯サプライズであります!!
正義:うむ。ご苦労。
正義:なかなか迫真の演技だったよ。
正義:本心を言われているとしか思えない名演技で
正義:気分が悪くなったよ。
お巡り:さ、左様でありますか!
お巡り:自分、演劇部だったもので
お巡り:演技には自信がありますです!
正義:なるほど。
正義:ところでわたしの親子丼は?
お巡り:はい!超高級親子丼を
お巡り:爆速で注文しますであります!
正義:うむ。早くしてくれたまえ。
正義:結婚式に間に合わなくなってしまう。
正義:間に合わなくなってしまったら
正義:娘の結婚式を台無しにしてあげられなくなってしまうからね。
お巡り:いやはや、その通りであります!
お巡り:それにしても⋯⋯警視総監殿、
お巡り:紅白でおめでたい、品の溢れるその巫女服装⋯⋯!
お巡り:とても似合っているであります!
正義:巫女服はいいよな〜。
正義:⋯⋯そういえば
正義:わたしの妻と初めて出会った時も
正義:彼女は巫女服を着ていたな⋯⋯。
正義:そんな彼女をわたしは守ってやることが
正義:できなかった⋯⋯許してくれ⋯⋯ゆみこ⋯⋯。
お巡り:うぅ(泣く)
お巡り:奥様は巫女さんだったのでありますか?
正義:いや、コスプレイヤーだ。
お巡り:あぁ、そんな思い出の服だったんですね⋯⋯。
お巡り:わたくしも!今この時を持って!!
お巡り:同じ巫女服を着てもよろしいでしょうか!?
正義:⋯⋯⋯!!!
正義:き、君も巫女服の素晴らしさを
正義:わかってくれるのか⋯⋯?!
お巡り:はい!もちろんであります!
正義:巫女服はいいよな〜。
お巡り:(正義と同じ言い方で)巫女服はいいよな〜。
お巡り:⋯⋯あ、では!着替えてくるであります!
0:数秒の間
お巡り:着替えてきたであります!
正義:(涙声)す!素晴らしい!
正義:ぜひ!わたしと写真を撮ってはくれないかね?
正義:SNSに写真を載せたいのだが。
お巡り:もちろんであります!
正義:じゃあすまんが、肩を組んで、わたしの頬に
正義:君の頬を当ててくれないか?
お巡り:えっ⋯⋯?(戸惑い)
正義:ん?
お巡り:も、もちろん⋯でありますぅ〜⋯⋯。
正義:あぁ〜君の頬から神力(しんりき)が
正義:注がれてくるのがわかるよ⋯⋯!
正義:じゃあ撮るぞ!飛び切りの笑顔で頼む
正義:3、2、1⋯⋯
0:道男が二人の元に到着する
道男:おじさ〜んっ!
道男:めちゃくちゃポジティブになれる
道男:おばさんを見つけました!
道男:よかったら、話でも聞いて⋯みっ⋯て⋯⋯えっ?
正義:あぁ〜君か、ちょうどよかった!
正義:写真を撮ってくれないか?
道男:お巡りさんが変な巫女服おじさんに
道男:洗脳されちゃってるーーー!!?!
正義:片手だと肩を組むことしか出来なかったが
正義:両手が使えるとなれば
正義:もう片方でハートを作ることが出来る!
正義:いやぁ〜君が来てくれてよかったよかった!
お巡り:そ、そうで、あります、よね〜!
お巡り:ハ、ハート!
お巡り:めちゃくちゃ良いですよね〜。
道男:いや、どーゆー状況ーーーっ?!
道男:え、この短時間に何があったんですか?!
道男:さっきはあれだけ逮捕するって言ってたのに⋯⋯。
お巡り:(食い気味に被せて)逮捕するなんて
お巡り:とんでもぬわぁーーーい!!!
お巡り:こちらに御座すこの御方を
お巡り:どなたと心得える!
お巡り:恐れ多くも、先の警視総k⋯⋯
お巡り:(心の声)
お巡り:あっ、警視総監が巫女服着てるって
お巡り:一般市民にバレたらマズイのか⋯⋯?
道男:ん???
お巡り:と!とにかく!こちらの御方は!
お巡り:す、凄い人なんです!!!
道男:え、えぇ。たしかに、
道男:凄く変な人には見えますけど⋯⋯、
道男:本当に洗脳されちゃったんだ⋯⋯。
正義:それで、青年よ、わたしに会わせたい人が
正義:いるとかなんとか言っていなかったかい?
道男:あ!あぁ!そうでした!
道男:すごくポジティブな方なんで
道男:話を聞いてもらったら心のモヤモヤが
道男:晴れるかもしれませんよ?
正義:ふむふむ⋯⋯。
お巡り:総監殿、ここはひとつ
お巡り:お話してみるのはいかがでしょう?
正義:ふむ。ではひとつ聞いてもらうとするか⋯⋯。
道男:さっきの公園で待ってくれてます!
道男:行きましょう!
0:3人で公園にパトカーで移動してミカコと合流
正義:パトカーの車体の白と
正義:パトランプの赤って巫女服みたいでいいよな〜。
お巡り:えぇ!全くもってその通りであります!
道男:あ!いたいた!ミカコさーん!
道男:お待たせしました!連れて来ましたよぉ〜!
0:以下、しばらくミカコは、暗モードで顔を上げずに、ずっと俯いて話している。
ミカコ:はぁ。ぜんぜんこやへんから
ミカコ:もうわたしのことなんて忘れてるんやと思ったわぁ
道男:そんな訳ないじゃないですか!
道男:さぁさぁおじさん、こちらミカコさんです!
道男:何で娘さんの結婚式を
道男:ぶち壊したいと思っているのか
道男:僕(私)には分かりませんが
道男:ミカコさんのポジティブさを貰えば、
道男:少しは気が晴れるかもしれませんよ!
お巡り:そうですよ!何で娘さんの結婚式を
お巡り:そこまでぶち壊したいんでありますか?
お巡り:理由をちゃんと言って下さいよぉ!!
正義:君にはさっき言ったはずだが⋯⋯まぁいい。
正義:亡き妻がのこしてくれたたった一つの宝物
正義:愛の結晶、クリスタル ・オブ・ラヴ⋯⋯!
正義:そんな大事な娘が
正義:わたしの元から離れてゆく⋯⋯。
正義:そんな現実、認められるわけがないだろう!
道男:あれ、ちょっと待ってください?
道男:でも冷静に考えると
道男:今日娘さんは結婚式を挙げるわけですよね?
道男:え、それってつまり⋯⋯。
道男:ふたりの結婚をおじさんは
道男:許したことになってるじゃないですか?
正義:あぁ、確かに一度は許したよ、
正義:娘に嫌われたくはないからね。
お巡り:え?!では、どうして気が変わったんでありますか?
お巡り:もしかして、娘さんの結婚相手に
お巡り:問題がある、とかでありますか?
正義:いいや、彼ならきっと娘のことを
正義:幸せにしてくれるだろう。
正義:それは分かっているんだ。
正義:一流の企業にも務めているし、
正義:礼儀も正しい。実に誠実そうな好青年だよ。
ミカコ:誠実⋯⋯かぁ⋯⋯。
ミカコ:えらい曖昧な表現やなぁ⋯⋯?
ミカコ:一流企業やいうてもこの不況じゃあ
ミカコ:いつ倒産してもおかしないでぇ〜?
ミカコ:街を歩けば不平不満の声が聞こえてくる、
ミカコ:そんな“音”が耳に入ってくるんや。
ミカコ:社会という“門”を開けたらな?
ミカコ:そこは“闇”やねん。一寸先は闇。
道男:え?ミカコさん⋯⋯???
ミカコ:あたしもな?昔パリコレ常連でな?
ミカコ:みんなにチヤホヤされて
ミカコ:一流のモデルや〜言われててん。
ミカコ:せやけどな、気付いた時には
ミカコ:あとの祭りやで。闇祭りやで!
ミカコ:ダークフェスティバルの開催やで〜??
お巡り:ちょ、ちょっと青年!
お巡り:さっき、ポジティブになれるから
お巡り:話を聞いてもらう、とかどうとか
お巡り:言ってなかったかい?
道男:あれ?さっきまでは
道男:ほんとにもっとポジティブで
道男:励ましてくれてたんですけど⋯⋯。
道男:お、おかしいなぁ⋯⋯?
正義:ダークフェスティバル⋯⋯祭り⋯⋯。
正義:そのお祭りに、巫女さんは居るのかなぁ?
道男:あ、居ないと思います。(真顔)
お巡り:闇祭り!いいですね〜!
お巡り:本官も一緒について行ってもいいでありますか?!
道男:そんなお祭りありません!!!
道男:ど、どうしちゃったんですか?ミカコさん!
道男:さっきまでのポジティブさが
道男:嘘のようじゃないですか!
ミカコ:嘘⋯⋯嘘か⋯⋯。
ミカコ:ありとあらゆる動物の中でも
ミカコ:嘘って人間しかつかへんねんで。
ミカコ:嘘をつきあう人間同士⋯⋯そんなもんが
ミカコ:ホンマの愛を語り合えるんやろうか⋯⋯?
正義:さらに娘を結婚させる訳には
正義:いかない気がしてきたぞ⋯⋯!
お巡り:そうですね!もう辞めさせちゃいましょう!
お巡り:結婚!断固!はんたーい!!
道男:ちょ、ちょっとお巡りさんまで
道男:悪ノリやめて下さいよぉ!!!
道男:おじさんもそんなに暗くならないで下さい!
道男:ミカコさんもほんとにどうしちゃったんですか?!
お巡り:む!これは?!
道男:え?お巡りさんどうしたんですか?!
お巡り:あちゃ〜〜!!
お巡り:これはPPP切れの症状じゃないかなぁ〜?
道男:ぴーぴーぴー??
道男:あ!それさっき、確かミカコさんも言ってました!
道男:その、ぴーぴーぴーって何のことですか?
お巡り:ポジティブ・パワー・ポイント⋯⋯!
お巡り:それ、すなわち、人間の活力!!!
お巡り:ほら、元気な時って明るくて
お巡り:エネルギーに満ち溢れてるじゃないですか?
お巡り:それを使い過ぎちゃって
お巡り:単にエネルギー切れを起こしてる状態、
お巡り:みたいな感じですかね〜!
お巡り:ミカコさんは普段とてもポジティブな方みたいなので
お巡り:それの反動が一気にきて暗くなっちゃってるだけです!
道男:えぇ?!どうやったらさっきみたいな
道男:ポジティブなミカコさんに戻せますか?!
ミカコ:無駄や。こうなったらわたしは、
ミカコ:ひと月は元に戻らへん。
ミカコ:いっつもそんくらいかかるからなぁ。
ミカコ:でも今回、元に戻る保証なんてどこにもあらへんのや。
ミカコ:この世に確たるものなんて何にもあらへんねん。
ミカコ:まさに闇や。ダークワールドやで。
ミカコ:真夜中の真っ暗な太平洋に
ミカコ:ひとりぽっつりと浮かんでる気分や。
ミカコ:だぁれもわたしのことなんて
ミカコ:見つけてくれへん。絶望や。
ミカコ:でもな?そんな闇の海に浮かんでるのもな、
ミカコ:慣れてくると心地ええねん。闇こそが希望や。
お巡り:あちゃ〜!これは相当やられてますねぇ。
道男:え?!
道男:ってゆーか、お巡りさんは何でそんなに
道男:PPP?について詳しいんですか?!
お巡り:本官は、とある神社の出身でね⋯⋯。
正義:神社?!巫女さん?!
正義:興奮してきたなぁ⋯⋯!
お巡り:うん。今は詳しくは説明を省く!
お巡り:まぁとにかく!一般的な対処法だと⋯⋯。
お巡り:ポジティブな言葉をかけてあげる、とか。
お巡り:元気づけてあげる、とかでありますが⋯⋯
お巡り:それだと厳しいかなぁ⋯⋯?
お巡り:仕方ない、アレをやるかぁ〜⋯⋯?
お巡り:ミカコさん!ちょっと頬っぺた、お借りしますよ⋯⋯!
ミカコ:はぁ?!ちょ、ちょっと!頬っぺたくっつけて
ミカコ:わたしに何しようっていうねん?!
お巡り:神力(しんりき)注入〜!!!
道男:す、すごい!!
道男:ミカコさんの体が光ってる!⋯⋯⋯⋯気がする!
正義:はっはっは。
正義:わたしは彼(彼女)を一目みたときから
正義:気が付いていたよ。
正義:巫女さんの血が流れている、とね。
道男:ミカコさん、元に戻って下さい!ミカコさんっ!
0:ミカコ、俯いていた顔を上げて、暗モードから元のポジティブなミカコに戻る
ミカコ:ハピネス!スーパーラッキー!ラブリー!
ミカコ:ニッコリ!ポジティブ!
ミカコ:The パワー オブ ドリームズ!
ミカコ:元気いっぱい!アン・ミカコ〜!
道男:お巡りさん凄い!ミカコさんが元に戻りました!
ミカコ:結婚?ええやんええやん。おめでたいことやん!
ミカコ:今日は大切な娘さんが
ミカコ:一番笑顔になれる主役の日やで?
ミカコ:お祝いしに行ったらな!
ミカコ:一番見に来て欲しい人が行かなどないすんの?
ミカコ:娘さんにも、人生で一番最高な笑顔見せて
ミカコ:送り出してあげたりぃ!
ミカコ:亡くなった奥さんもきっとそれを望んでるはずやで!
正義:⋯⋯⋯⋯⋯⋯ゆみこ⋯⋯。
正義:そうか⋯⋯わたしは⋯⋯
正義:自分のことばかりで⋯⋯。
正義:娘のことを⋯⋯、娘の幸せを⋯⋯
正義:考えてやれていなかったのか⋯⋯。
ミカコ:今からでも遅くないで!まだ間に合うで!
お巡り:総監殿〜!わたしが娘さんの結婚式場まで
お巡り:パトカーでお送りするでありますよ!
正義:みんな⋯⋯ありがとう⋯⋯!!
正義:わたしも前に進むことが出来たよ。
正義:ミカコさん⋯⋯だったかな?
正義:この件が落ち着いたら、お礼に
正義:お食事でもひとついかがかな?
ミカコ:ほんなら、とびっきり笑顔になれる
ミカコ:おいしいお店があるから
ミカコ:今度そこに一緒に行きましょか〜!
正義:あぁ、ぜひ。わたしに奢らせて下さい。
正義:⋯⋯そして、青年よ、世話になったね。
道男:あ、いえ。僕(私)は何もしていませんよ。
道男:むしろ僕(私)もミカコさんの言葉が
道男:ガツーンッとストレートに刺さりましたから!
道男:救われたのは僕(私)も同じですよ。
正義:ストレート?
正義:ん?なぜまたポーカーの話を急にしだすんだい?
正義:君はどれだけポーカーが好きなんだい?はっはっは!
道男:いえ、全く違います。(真顔)
お巡り:総監殿〜!そろそろ行くであります〜!
正義:それでは二人とも、また!
0:正義とお巡りさんはパトカーで式場に向かうため、去る。
道男:あのおじさん、ソウカンさんって名前なんだぁ〜
道男:おじさんも前に進んだんだ!
道男:よぉ〜し!僕(私)も頑張るぞぉ〜!!
ミカコ:その意気やぁ!青年!!
ミカコ:ところで⋯⋯聞いてええか?
ミカコ:何であの二人は巫女服着てたん?
ミカコ:わたしそれだけがずっと引っかかっててん。
道男:それは本当に僕(私)も聞きたいです!!!
0:場面転換。間を開ける。
0:(エピローグ)とある結婚式にて。
道男:それでは続きまして、
道男:仲人(なこうど)の方からの挨拶です!
お巡り:ただいまご紹介に預かりました仲人であります!
お巡り:あ、いや、えっと⋯⋯!
お巡り:神宮寺(じんぐうじ)であります!
お巡り:お二人の出会いは忘れもしない
お巡り:あの日の公園でありました⋯⋯!
道男:(モノローグ)
道男:あれから、なんやかんやあって
道男:僕(私)は今、ウエディングプランナーとして
道男:人生の次の一歩を歩き出した。
道男:色々と大変なことは多いけど
道男:みんなの笑顔が見られる、とても幸せで
道男:やり甲斐のある仕事につくことが出来た。
道男:アーメン(飴ーン?)
お巡り:⋯⋯プロポーズはどうしたのか、
お巡り:本官の独自の捜査網で調べたのですが、
お巡り:なんでも、ふたりでポーカーをしているときに
お巡り:ハートのロイヤルストレートフラッシュで
お巡り:プロポーズしたらしいですぞ!
お巡り:ひゅー!やるねぇ〜!!
道男:(モノローグ)
道男:そうして今、
道男:人生の新たな一歩を踏み出そうとしている
道男:夫婦の背中を押すことが出来るのも
道男:あの人たちのお陰だ。
お巡り:道男くん!道男くん!(道子ちゃん)
お巡り:本官はもう挨拶終わったでありますよぉ〜!
お巡り:次に進んでくださいっ
道男:あ、す、すいません!
道男:それでは、
道男:新郎新婦のお色直しが終わったようです!
道男:お色直しの衣装はもちろん!巫女服!
道男:ダブル巫女服姿で登場です!
道男:開場のみなさん、お二人の名前を呼んで
道男:盛大な拍手で迎え入れてあげてください!
道男:⋯⋯正義さん、ミカコさんの入場です!!!
0:みんなで拍手して終わる。
【娘の結婚式を台無しにしてくれないか?】
作成日時: 2024-02-08 01:36:19
公開終了: -
作:ヤマイココロ×むち 合作台本
《登場人物》
♂
陸 道男(りく みちお)
求職中の青年。
ツッコミ。
♂
皇 正義(すめらぎ まさよし)
巫女服を着た変なおじさん。
娘の結婚式をぶっ壊そうとしている。
ボケ。
不問
お巡りさん(おまわりさん)
ちょっとお調子者のお巡りさん。
ボケ。
♀
アン・ミカコ(あん みかこ)
関西弁。
超ポジティブな思考を持つ人。
しかし……?
ボケ。
《あらすじ》
職探しをしている若者に、巫女服のおじさんはこう問いかけた。
「どうだい?アルバイトをしてみないかい?」
「娘の結婚式を台無しにしてくれないか?」
と。
4人で送るギャグコメディ!
-------------キリトリセン--------------
0:公園のベンチで職探しの本を眺める道男
道男:はぁ〜(ため息)
道男:なんで日本は平和なのに不況なのかなぁ〜
道男:会社も倒産しちゃうし
道男:彼女(彼氏)には振られるし
道男:仕送りはとめられるし
道男:就職も決まらないし
道男:飼い猫には噛まれるし
道男:何が平和だよ!ちくしょー!
道男:あぁ僕(私)は世界一不幸な男(女)だぁぁ!!
正義:ちょっとそこの君、
正義:今、職を探していると言ったね?
道男:へっ?!なんですか?!
道男:(心の声)
道男:背後から、急に声を掛けられ
道男:その渋いダンディーな声の方を振り向くと
道男:巫女服を着た変なおっさんが立っていた。
正義:いやぁ〜
正義:日本は戦争もなく平和な国だというのに
正義:不況のせいで、こんな若者が
正義:昼間から職探しとは⋯
正義:世も末だな⋯⋯。
道男:(心の声)
道男:おかあさーーーん!!!
道男:なんかぁ!!!
道男:変なおっさんに絡まれてしまいましたぁ!!!
道男:日本はもはや危険な国なのかもしれません!!!
正義:どうした?そんな驚いた顔して
正義:口をパクパクとさせて。
正義:何か私の顔についているかな?
道男:いや、あの、顔とかじゃなくて⋯。
道男:なんで、おじさんは
道男:真っ昼間の公園を
道男:巫女服姿で歩いているんですか?!
道男:そっちの方が世も末ですよぉ!!?!
正義:はっはっは。
正義:見て分からないかね?
道男:いや、分からないから
道男:聞いてるんですけど!?
正義:まぁまぁ
正義:そんな小さいことはいいじゃないか。
正義:そんなことより、君。
正義:先程、職を探していると言っていたね?
正義:どうだい?アルバイトをしてみないかい?
道男:あ、アルバイト⋯?
道男:(小声)絶対ヤバいやつだぁぁ!?!
正義:なぁに。簡単な仕事だよ。
正義:成功したあかつきには
正義:キャッシュで100万すぐに渡そう。
道男:キャッシュで100万?!?
正義:どうだい?
正義:たった数時間で100万円が手に入る。
正義:君にとっても悪い話じゃあないだろう?
道男:こ、これが!
道男:噂に聞く闇バイトってやつか⋯。
道男:僕(私)はそんな悪事に手を染めたりはしません!
正義:悪事⋯?闇バイト⋯⋯?
正義:(大笑い)あーっはっはっはっは!
正義:そんな悪いことなぞさせないよ。
正義:私のこの姿を見れば分かるだろう?
道男:だからぁ!!
道男:ぜんぜん分からないですって!!
道男:てゆーか、むしろその服のせいで
道男:余計分からなくさせちゃってますよ?!
正義:とにかくだ、仕事は本当に簡単なんだ。
道男:えぇ〜?じゃあ一応聞くだけ
道男:聞いてはみますよ。何するんですか?
正義:私の大切な一人娘が
正義:今日結婚式をあげるんだけどね。
道男:へぇ!おめでとうございます。
道男:あ、もしかしてフラッシュモブとか
道男:そーゆーやつですか?
正義:フラッシュ⋯⋯?んん?
正義:なぜ急にポーカーの話をしだすんだい?
道男:え?あ?あれ?違うんですか?
正義:いやぁ、君にやってもらいたいのはね、
正義:娘の結婚式を⋯⋯
正義:台無しにしてほしいんだ!!
道男:えっっっ?!?!
0:お巡りさんが通りかかる
お巡り:(ひとりごと)
お巡り:わたしはぁ〜お巡りさん〜
お巡り:日本の平和を守るぅ〜
お巡り:大事な〜かっこいい〜職業〜
お巡り:公務員〜!⋯⋯⋯なのにぃ!?
お巡り:何一つ事件なんて起きやしないなぁ?!
お巡り:⋯って、んん?!
お巡り:ややや?!
お巡り:あそこにいる巫女服姿のおじさんはなんだ?!
お巡り:若者に絡んでいる?!事件の匂いだ!!
0:ふたりに駆け寄るお巡りさん
お巡り:おぉーーーい!
お巡り:そこの怪しいやつ!
お巡り:そこで何をしている?!
正義:ん?きみ、お巡りさんに呼ばれているよ。
道男:絶対あなたの方だと思いますけどね?!
お巡り:君たち、ここで一体何をしていたんだい?
道男:このおじさんから
道男:怪しいバイトの勧誘を受けていたところです!
お巡り:なに?!むむ?!怪しいバイト?!
お巡り:もしかして闇バイト的なものか?!
お巡り:答えなさい!!!
正義:はっはっは。
正義:わたしは決して怪しい者ではありませんよ
正義:この格好を見れば分かるでしょう?
お巡り:逮捕ーーーっ!!!
正義:いやぁ、まてまてまて!
正義:本当に怪しい者じゃないんだ!
正義:ただ娘の結婚式を
正義:ぶち壊そうとしていただけなんだ!
お巡り:はい!逮捕ーーーっ!!!!!
正義:きみぃ〜!わたしの話を聞いていたかい〜?
お巡り:聞いた上で逮捕ーーーっ!!!
道男:まぁまぁまぁお巡りさん。
道男:どういう理由(わけ)なのか
道男:とりあえず詳しく話を聞いてみませんか?
正義:よくぞ言ってくれた青年よ。
正義:実はね⋯
正義:わたしが大切に大切に育ててきた
正義:一人娘⋯⋯。
正義:妻が亡くなったあとも
正義:泣き顔を見せずに
正義:文句も言わず、
正義:いつもニコニコ笑顔を見せてくれていた、
正義:そんな大切な一人娘がね⋯⋯。
正義:結婚して家を出る、
正義:わたしの元を離れていってしまう、
正義:一人ぼっちになるわたし⋯⋯!
正義:娘が居なくなる生活⋯⋯!
正義:耐えられないんだよぉぉぉおおぉ!!!
0:話し始めようとすると手錠をかけられる
お巡り:はいはーい。
お巡り:話なら署で聞きマース!
正義:て!手錠?!
正義:おい、ちょっと待ってくれ〜
正義:青年よ、助けてくれぇぇぇええぇ!!
0:おじさん連行の為、お巡りさんと2人一旦退場
道男:変なおじさん⋯⋯。
道男:(心の声)
道男:でも⋯
道男:大切なものが奪われる⋯⋯。
道男:悲しいことだよなぁ⋯⋯。
道男:あぁ〜もうちょっと話聞いてあげれば
道男:よかったかなぁ⋯⋯?
ミカコ:あらあらあらあら
ミカコ:連行されてもーたやん⋯。
ミカコ:今な、あたし、ずっとあっこから
ミカコ:自分らのこと見ててんけどな、
ミカコ:どないしたん?話なら聞くで?
道男:へ?!なんですか?!
道男:(心の声)
道男:急に声を掛けられ
道男:その関西弁の声の方を振り向くと
道男:派手な見た目の
道男:おばさん?おねえさん?が立っていた。
ミカコ:おばさんちゃうで。
ミカコ:お・ね・え・さ・ん!
道男:え?!
ミカコ:さっきの、なんや
ミカコ:けったいな格好したおっさん
ミカコ:どないしたん?
道男:あ、あぁ、
道男:あのおじさんの娘さんが
道男:今日結婚式みたいで
道男:その娘さんの結婚式を
道男:台無しにしてほしい
道男:って言われてたんですよぉ。
ミカコ:ふんふん。ほんで?
ミカコ:何で台無しにしよう思ってたんかなぁ?
道男:とっても大切な娘さんが
道男:自分の元から離れていってしまうのが
道男:耐えられないんじゃないですかね?
ミカコ:離れるとかちゃうやん!
ミカコ:あんな、たしかに暮らす家は
ミカコ:別になるかもしれへん。
ミカコ:でもな、お互い今まで支え合って
ミカコ:つちかってきた、かたい絆は
ミカコ:どんなことがあっても離れたりせーへんよ。
道男:とぅんく!
ミカコ:それに結婚式ってな、
ミカコ:娘さんがな
ミカコ:人生で一番綺麗な白を纏う日なんやで。
道男:一番綺麗な白⋯?
道男:ウエディングドレスのことですか?
ミカコ:あぁ一番綺麗な白って言うても
ミカコ:あんな、白ってな200色あんねんで。
道男:200色?
ミカコ:そやで、
ミカコ:白・きなり・クリーム色・オフホワイト
ミカコ:白って言うてもな、
ミカコ:その白だけでもいっぱいあるわけやねん。
道男:そ、そうなんですか?
道男:なんか話が変わってきてる気もしますけど。
道男:⋯⋯あ、でもなんか不思議と
道男:ポジティブになれた気がします!
ミカコ:せやろ?
ミカコ:明るく生きるのが一番やで。
ミカコ:人生1回きりやねんからな!
道男:はい!!!
ミカコ:あ、でもな?
ミカコ:1回きり言うてもな、
ミカコ:なんぼ程でもやり直しはきくねん。
ミカコ:全ては自分次第やねん、
ミカコ:それが人生ってもんや。
道男:あー、なんかすごい
道男:だんだんポジティブな気持ちになってきたぁ!
道男:あの!僕(私)の悩みもちょっとだけ
道男:聞いてもらってもいいですか?
ミカコ:なんや水臭いなぁ。
ミカコ:そんなんなんぼでも聞いたるわぁ〜!
道男:僕(私)、小さい頃から飴が大好きで、
ミカコ:あめ?飴って飴ちゃん?
道男:あ、はい。
道男:そんな大好きな飴を作る会社に就職出来て、
道男:幸せな生活を送っていたんですが、
道男:経営難により、会社は倒産。
道男:だから僕(私)も
道男:大切なものを奪われる気持ちが
道男:わかるんですよ⋯⋯。
ミカコ:そっか。それは辛かったなぁ。
ミカコ:でも一言だけ先に言わせて?
ミカコ:ここでこうやって
ミカコ:お兄ちゃんと出会わせてくれたのは
ミカコ:その会社の一件があったからやと思うねん。
ミカコ:だからな、ありがとうやで。
道男:う、ちょっとポジティブになれた
道男:気がします⋯!⋯⋯でも⋯。
ミカコ:なんやぁ。ここまで話してきた仲や
ミカコ:全部吐き出してみぃ?
道男:いくら職を探せども
道男:飴関係の仕事の就職先が無いんです⋯。
ミカコ:お兄ちゃん、飴ちゃんってどんな時に舐める?
道男:え?どんなとき?って言われても⋯。
道男:喉がイガイガするときとか⋯
道男:口が寂しくなったときとか⋯ですかね?
ミカコ:まぁ普通やったらそうやんな。
道男:はぁ。
ミカコ:でもな?思いもよらぬときに
ミカコ:舐めたくなる時もあるねんな?
ミカコ:ほら、焼肉食べに行ったとき
ミカコ:レジの横にあるやろ?
道男:あ!ありますね!たしかに!
ミカコ:あれってな、いつもの飴より
ミカコ:数段美味しく感じるねん。
ミカコ:せやけどな、焼肉行くたびに
ミカコ:あのレジ横に飴ちゃん置いてあるの
ミカコ:毎回みんな忘れてるやろ?
道男:はぁ⋯
ミカコ:ま、つまりな?
ミカコ:意外な形で幸せってやってくるねん。
ミカコ:ひとつのことにこだわらずに
ミカコ:いろんなことにチャレンジしてみても
ミカコ:いいんちゃうかなぁ?ってわたし思うねん。
ミカコ:そこでまた新しい幸せを
ミカコ:見つけられるかもしれへんよ?
道男:⋯⋯⋯はい!なんだか
道男:本当にそんな気がしてきました!
ミカコ:ほらな、心の雨、晴れたやろ?
道男:とぅとぅんく!!
道男:⋯⋯あ!そうだ!こんな気持ちになれるなら
道男:あのおじさんにも是非
道男:おねえさんの話を聞いてもらいたいです!
道男:あ!おねえさん、お名前は?
ミカコ:あたし?あたしは
ミカコ:アン・ミカコいうねん。
道男:アン・ミカコ⋯⋯さんですね?
道男:おじさんのこと連れて来ますね!
ミカコ:うん、ほな、はよ行ってきぃ⋯⋯
ミカコ:うぅぅぅ!(苦しんで膝をつく)
道男:え?!ど、どうしたんですか?
道男:アン・ミカコさん!?
ミカコ:あ、うん。大丈夫大丈夫。
ミカコ:ちょっとPPPが切れかかってるだけや⋯。
道男:ぴ、ぴーぴーぴー??
ミカコ:いいから気にせんと、はよ行き!
ミカコ:このままやとあのおっさん
ミカコ:ほんまに逮捕されてまうで!
道男:あ!はい!行ってきます!
道男:(小声)ぴーぴーぴーって何だろう?
0:道男、正義のことを呼びに行く。
ミカコ:あかん。ちょっと使い過ぎてしもうたわ。
ミカコ:ポジティブ・パワー・ポイント補充しな
ミカコ:あっちのわたしが出てきてまう⋯。
ミカコ:誰か、ポジティブを⋯⋯⋯ガクッ(倒れる)
0:(場面転換)お巡りさんに取り調べをされてる正義
お巡り:で?なんでそんなことしてたの?
正義:だからわたしは何度も言ってる通り!
正義:ただ純粋に娘の結婚式をぶっ壊したいだけだ!
お巡り:あーはいはい。
お巡り:わかりました、わかりました。
お巡り:とりあえずカツ丼食べたら
お巡り:洗いざらい話しちゃってくださいね〜。
正義:カツ丼?わたしは親子丼派だ!
正義:それだけ親子の絆を大事にしているのだ!
お巡り:はいはい。
お巡り:とりあえず今注文しますからね〜。
0:お巡りさんに電話がかかってくる
お巡り:あ、先輩から電話だ。
お巡り:変なおっさん、
お巡り:ちょっとカツ丼待っててね〜。
正義:親子丼だ!
お巡り:(電話に出る)ピッ。
お巡り:はい!お疲れ様であります!
お巡り:え?ちゃんとサボらず
お巡り:勤務してたかですって?
お巡り:もちろんであります!
お巡り:さきほどパトロールをしてた際に
お巡り:凶悪な犯罪者を連行し
お巡り:ただいま取り調べをしていた最中であります!
お巡り:明らかに変なことをやらかしそうな
お巡り:悪人面でありますよ〜!
お巡り:お〜!こわこわ!
お巡り:ところで先輩、先輩って今日
お巡り:どなたかの結婚式に行くって言ってましたよね?
お巡り:どうですか?おめでたいですか?
お巡り:美味しい料理いっぱい食べてますか?
お巡り:くぅ〜〜!羨ましい〜!!
お巡り:いいなぁ〜自分もそんな料理食べたいなぁ
お巡り:こっちは今からやっす〜いカツ丼と
お巡り:親子丼食べるところなんですよぉ!
お巡り:あ、今日ってたしか警察の本部の
お巡り:お偉いさんの娘さんの結婚式でしたよね?
お巡り:いいなぁ。自分も早く偉くなって〜
お巡り:美味しい料理いっぱい食べたいなぁ〜!
お巡り:え?先輩まだ食べれてないんですか?
お巡り:なんでですか?⋯⋯え?!
お巡り:新婦側の父親がまだ来てない⋯?
お巡り:へぇ〜。そんな大切な娘さんの結婚式に
お巡り:行かない薄情な父親なんて
お巡り:よく居たもんですね〜。
お巡り:あ、そのお偉いさんの名前教えてくれたら
お巡り:あとで自分、パトロールしたときに
お巡り:ついでに探しときますよ〜?
お巡り:はい。はい。えっと⋯⋯
お巡り:警視総監の⋯⋯すめらぎ⋯まさよし⋯⋯。
正義:ん?なんだね??
お巡り:ちょっと聞こえないから
お巡り:変なおっさん黙ってて。
正義:⋯⋯。
お巡り:先輩、もう一度お名前お願いします!
お巡り:えっと⋯⋯すめらぎ、まさよし?
お巡り:漢字はどう書くんですか?
正義:白に王と書いて、皇(すめらぎ)
正義:下の名前は
正義:正義(せいぎ)と書いて、まさよしだ。
お巡り:えっ?!
正義:調書にも書いてあるだろう。
お巡り:な、なまえ、
お巡り:す、すめらぎ⋯まさよし⋯。
お巡り:職業⋯⋯警視総監⋯!?
正義:うむ。
お巡り:せ!先輩!ちょっと〜
お巡り:一旦切りますね!ブチッ(電話を切る)
お巡り:(深呼吸)すーはーすーはー
お巡り:以上を持ちまして!
お巡り:一日凶悪犯体験は終了であります!
正義:ん?なんのことだね⋯⋯?
お巡り:いや、日頃から
お巡り:警察のトップにたっておられる
お巡り:警視総監殿にサプライズの⋯⋯⋯⋯。
お巡り:⋯⋯サプライズであります!!
正義:うむ。ご苦労。
正義:なかなか迫真の演技だったよ。
正義:本心を言われているとしか思えない名演技で
正義:気分が悪くなったよ。
お巡り:さ、左様でありますか!
お巡り:自分、演劇部だったもので
お巡り:演技には自信がありますです!
正義:なるほど。
正義:ところでわたしの親子丼は?
お巡り:はい!超高級親子丼を
お巡り:爆速で注文しますであります!
正義:うむ。早くしてくれたまえ。
正義:結婚式に間に合わなくなってしまう。
正義:間に合わなくなってしまったら
正義:娘の結婚式を台無しにしてあげられなくなってしまうからね。
お巡り:いやはや、その通りであります!
お巡り:それにしても⋯⋯警視総監殿、
お巡り:紅白でおめでたい、品の溢れるその巫女服装⋯⋯!
お巡り:とても似合っているであります!
正義:巫女服はいいよな〜。
正義:⋯⋯そういえば
正義:わたしの妻と初めて出会った時も
正義:彼女は巫女服を着ていたな⋯⋯。
正義:そんな彼女をわたしは守ってやることが
正義:できなかった⋯⋯許してくれ⋯⋯ゆみこ⋯⋯。
お巡り:うぅ(泣く)
お巡り:奥様は巫女さんだったのでありますか?
正義:いや、コスプレイヤーだ。
お巡り:あぁ、そんな思い出の服だったんですね⋯⋯。
お巡り:わたくしも!今この時を持って!!
お巡り:同じ巫女服を着てもよろしいでしょうか!?
正義:⋯⋯⋯!!!
正義:き、君も巫女服の素晴らしさを
正義:わかってくれるのか⋯⋯?!
お巡り:はい!もちろんであります!
正義:巫女服はいいよな〜。
お巡り:(正義と同じ言い方で)巫女服はいいよな〜。
お巡り:⋯⋯あ、では!着替えてくるであります!
0:数秒の間
お巡り:着替えてきたであります!
正義:(涙声)す!素晴らしい!
正義:ぜひ!わたしと写真を撮ってはくれないかね?
正義:SNSに写真を載せたいのだが。
お巡り:もちろんであります!
正義:じゃあすまんが、肩を組んで、わたしの頬に
正義:君の頬を当ててくれないか?
お巡り:えっ⋯⋯?(戸惑い)
正義:ん?
お巡り:も、もちろん⋯でありますぅ〜⋯⋯。
正義:あぁ〜君の頬から神力(しんりき)が
正義:注がれてくるのがわかるよ⋯⋯!
正義:じゃあ撮るぞ!飛び切りの笑顔で頼む
正義:3、2、1⋯⋯
0:道男が二人の元に到着する
道男:おじさ〜んっ!
道男:めちゃくちゃポジティブになれる
道男:おばさんを見つけました!
道男:よかったら、話でも聞いて⋯みっ⋯て⋯⋯えっ?
正義:あぁ〜君か、ちょうどよかった!
正義:写真を撮ってくれないか?
道男:お巡りさんが変な巫女服おじさんに
道男:洗脳されちゃってるーーー!!?!
正義:片手だと肩を組むことしか出来なかったが
正義:両手が使えるとなれば
正義:もう片方でハートを作ることが出来る!
正義:いやぁ〜君が来てくれてよかったよかった!
お巡り:そ、そうで、あります、よね〜!
お巡り:ハ、ハート!
お巡り:めちゃくちゃ良いですよね〜。
道男:いや、どーゆー状況ーーーっ?!
道男:え、この短時間に何があったんですか?!
道男:さっきはあれだけ逮捕するって言ってたのに⋯⋯。
お巡り:(食い気味に被せて)逮捕するなんて
お巡り:とんでもぬわぁーーーい!!!
お巡り:こちらに御座すこの御方を
お巡り:どなたと心得える!
お巡り:恐れ多くも、先の警視総k⋯⋯
お巡り:(心の声)
お巡り:あっ、警視総監が巫女服着てるって
お巡り:一般市民にバレたらマズイのか⋯⋯?
道男:ん???
お巡り:と!とにかく!こちらの御方は!
お巡り:す、凄い人なんです!!!
道男:え、えぇ。たしかに、
道男:凄く変な人には見えますけど⋯⋯、
道男:本当に洗脳されちゃったんだ⋯⋯。
正義:それで、青年よ、わたしに会わせたい人が
正義:いるとかなんとか言っていなかったかい?
道男:あ!あぁ!そうでした!
道男:すごくポジティブな方なんで
道男:話を聞いてもらったら心のモヤモヤが
道男:晴れるかもしれませんよ?
正義:ふむふむ⋯⋯。
お巡り:総監殿、ここはひとつ
お巡り:お話してみるのはいかがでしょう?
正義:ふむ。ではひとつ聞いてもらうとするか⋯⋯。
道男:さっきの公園で待ってくれてます!
道男:行きましょう!
0:3人で公園にパトカーで移動してミカコと合流
正義:パトカーの車体の白と
正義:パトランプの赤って巫女服みたいでいいよな〜。
お巡り:えぇ!全くもってその通りであります!
道男:あ!いたいた!ミカコさーん!
道男:お待たせしました!連れて来ましたよぉ〜!
0:以下、しばらくミカコは、暗モードで顔を上げずに、ずっと俯いて話している。
ミカコ:はぁ。ぜんぜんこやへんから
ミカコ:もうわたしのことなんて忘れてるんやと思ったわぁ
道男:そんな訳ないじゃないですか!
道男:さぁさぁおじさん、こちらミカコさんです!
道男:何で娘さんの結婚式を
道男:ぶち壊したいと思っているのか
道男:僕(私)には分かりませんが
道男:ミカコさんのポジティブさを貰えば、
道男:少しは気が晴れるかもしれませんよ!
お巡り:そうですよ!何で娘さんの結婚式を
お巡り:そこまでぶち壊したいんでありますか?
お巡り:理由をちゃんと言って下さいよぉ!!
正義:君にはさっき言ったはずだが⋯⋯まぁいい。
正義:亡き妻がのこしてくれたたった一つの宝物
正義:愛の結晶、クリスタル ・オブ・ラヴ⋯⋯!
正義:そんな大事な娘が
正義:わたしの元から離れてゆく⋯⋯。
正義:そんな現実、認められるわけがないだろう!
道男:あれ、ちょっと待ってください?
道男:でも冷静に考えると
道男:今日娘さんは結婚式を挙げるわけですよね?
道男:え、それってつまり⋯⋯。
道男:ふたりの結婚をおじさんは
道男:許したことになってるじゃないですか?
正義:あぁ、確かに一度は許したよ、
正義:娘に嫌われたくはないからね。
お巡り:え?!では、どうして気が変わったんでありますか?
お巡り:もしかして、娘さんの結婚相手に
お巡り:問題がある、とかでありますか?
正義:いいや、彼ならきっと娘のことを
正義:幸せにしてくれるだろう。
正義:それは分かっているんだ。
正義:一流の企業にも務めているし、
正義:礼儀も正しい。実に誠実そうな好青年だよ。
ミカコ:誠実⋯⋯かぁ⋯⋯。
ミカコ:えらい曖昧な表現やなぁ⋯⋯?
ミカコ:一流企業やいうてもこの不況じゃあ
ミカコ:いつ倒産してもおかしないでぇ〜?
ミカコ:街を歩けば不平不満の声が聞こえてくる、
ミカコ:そんな“音”が耳に入ってくるんや。
ミカコ:社会という“門”を開けたらな?
ミカコ:そこは“闇”やねん。一寸先は闇。
道男:え?ミカコさん⋯⋯???
ミカコ:あたしもな?昔パリコレ常連でな?
ミカコ:みんなにチヤホヤされて
ミカコ:一流のモデルや〜言われててん。
ミカコ:せやけどな、気付いた時には
ミカコ:あとの祭りやで。闇祭りやで!
ミカコ:ダークフェスティバルの開催やで〜??
お巡り:ちょ、ちょっと青年!
お巡り:さっき、ポジティブになれるから
お巡り:話を聞いてもらう、とかどうとか
お巡り:言ってなかったかい?
道男:あれ?さっきまでは
道男:ほんとにもっとポジティブで
道男:励ましてくれてたんですけど⋯⋯。
道男:お、おかしいなぁ⋯⋯?
正義:ダークフェスティバル⋯⋯祭り⋯⋯。
正義:そのお祭りに、巫女さんは居るのかなぁ?
道男:あ、居ないと思います。(真顔)
お巡り:闇祭り!いいですね〜!
お巡り:本官も一緒について行ってもいいでありますか?!
道男:そんなお祭りありません!!!
道男:ど、どうしちゃったんですか?ミカコさん!
道男:さっきまでのポジティブさが
道男:嘘のようじゃないですか!
ミカコ:嘘⋯⋯嘘か⋯⋯。
ミカコ:ありとあらゆる動物の中でも
ミカコ:嘘って人間しかつかへんねんで。
ミカコ:嘘をつきあう人間同士⋯⋯そんなもんが
ミカコ:ホンマの愛を語り合えるんやろうか⋯⋯?
正義:さらに娘を結婚させる訳には
正義:いかない気がしてきたぞ⋯⋯!
お巡り:そうですね!もう辞めさせちゃいましょう!
お巡り:結婚!断固!はんたーい!!
道男:ちょ、ちょっとお巡りさんまで
道男:悪ノリやめて下さいよぉ!!!
道男:おじさんもそんなに暗くならないで下さい!
道男:ミカコさんもほんとにどうしちゃったんですか?!
お巡り:む!これは?!
道男:え?お巡りさんどうしたんですか?!
お巡り:あちゃ〜〜!!
お巡り:これはPPP切れの症状じゃないかなぁ〜?
道男:ぴーぴーぴー??
道男:あ!それさっき、確かミカコさんも言ってました!
道男:その、ぴーぴーぴーって何のことですか?
お巡り:ポジティブ・パワー・ポイント⋯⋯!
お巡り:それ、すなわち、人間の活力!!!
お巡り:ほら、元気な時って明るくて
お巡り:エネルギーに満ち溢れてるじゃないですか?
お巡り:それを使い過ぎちゃって
お巡り:単にエネルギー切れを起こしてる状態、
お巡り:みたいな感じですかね〜!
お巡り:ミカコさんは普段とてもポジティブな方みたいなので
お巡り:それの反動が一気にきて暗くなっちゃってるだけです!
道男:えぇ?!どうやったらさっきみたいな
道男:ポジティブなミカコさんに戻せますか?!
ミカコ:無駄や。こうなったらわたしは、
ミカコ:ひと月は元に戻らへん。
ミカコ:いっつもそんくらいかかるからなぁ。
ミカコ:でも今回、元に戻る保証なんてどこにもあらへんのや。
ミカコ:この世に確たるものなんて何にもあらへんねん。
ミカコ:まさに闇や。ダークワールドやで。
ミカコ:真夜中の真っ暗な太平洋に
ミカコ:ひとりぽっつりと浮かんでる気分や。
ミカコ:だぁれもわたしのことなんて
ミカコ:見つけてくれへん。絶望や。
ミカコ:でもな?そんな闇の海に浮かんでるのもな、
ミカコ:慣れてくると心地ええねん。闇こそが希望や。
お巡り:あちゃ〜!これは相当やられてますねぇ。
道男:え?!
道男:ってゆーか、お巡りさんは何でそんなに
道男:PPP?について詳しいんですか?!
お巡り:本官は、とある神社の出身でね⋯⋯。
正義:神社?!巫女さん?!
正義:興奮してきたなぁ⋯⋯!
お巡り:うん。今は詳しくは説明を省く!
お巡り:まぁとにかく!一般的な対処法だと⋯⋯。
お巡り:ポジティブな言葉をかけてあげる、とか。
お巡り:元気づけてあげる、とかでありますが⋯⋯
お巡り:それだと厳しいかなぁ⋯⋯?
お巡り:仕方ない、アレをやるかぁ〜⋯⋯?
お巡り:ミカコさん!ちょっと頬っぺた、お借りしますよ⋯⋯!
ミカコ:はぁ?!ちょ、ちょっと!頬っぺたくっつけて
ミカコ:わたしに何しようっていうねん?!
お巡り:神力(しんりき)注入〜!!!
道男:す、すごい!!
道男:ミカコさんの体が光ってる!⋯⋯⋯⋯気がする!
正義:はっはっは。
正義:わたしは彼(彼女)を一目みたときから
正義:気が付いていたよ。
正義:巫女さんの血が流れている、とね。
道男:ミカコさん、元に戻って下さい!ミカコさんっ!
0:ミカコ、俯いていた顔を上げて、暗モードから元のポジティブなミカコに戻る
ミカコ:ハピネス!スーパーラッキー!ラブリー!
ミカコ:ニッコリ!ポジティブ!
ミカコ:The パワー オブ ドリームズ!
ミカコ:元気いっぱい!アン・ミカコ〜!
道男:お巡りさん凄い!ミカコさんが元に戻りました!
ミカコ:結婚?ええやんええやん。おめでたいことやん!
ミカコ:今日は大切な娘さんが
ミカコ:一番笑顔になれる主役の日やで?
ミカコ:お祝いしに行ったらな!
ミカコ:一番見に来て欲しい人が行かなどないすんの?
ミカコ:娘さんにも、人生で一番最高な笑顔見せて
ミカコ:送り出してあげたりぃ!
ミカコ:亡くなった奥さんもきっとそれを望んでるはずやで!
正義:⋯⋯⋯⋯⋯⋯ゆみこ⋯⋯。
正義:そうか⋯⋯わたしは⋯⋯
正義:自分のことばかりで⋯⋯。
正義:娘のことを⋯⋯、娘の幸せを⋯⋯
正義:考えてやれていなかったのか⋯⋯。
ミカコ:今からでも遅くないで!まだ間に合うで!
お巡り:総監殿〜!わたしが娘さんの結婚式場まで
お巡り:パトカーでお送りするでありますよ!
正義:みんな⋯⋯ありがとう⋯⋯!!
正義:わたしも前に進むことが出来たよ。
正義:ミカコさん⋯⋯だったかな?
正義:この件が落ち着いたら、お礼に
正義:お食事でもひとついかがかな?
ミカコ:ほんなら、とびっきり笑顔になれる
ミカコ:おいしいお店があるから
ミカコ:今度そこに一緒に行きましょか〜!
正義:あぁ、ぜひ。わたしに奢らせて下さい。
正義:⋯⋯そして、青年よ、世話になったね。
道男:あ、いえ。僕(私)は何もしていませんよ。
道男:むしろ僕(私)もミカコさんの言葉が
道男:ガツーンッとストレートに刺さりましたから!
道男:救われたのは僕(私)も同じですよ。
正義:ストレート?
正義:ん?なぜまたポーカーの話を急にしだすんだい?
正義:君はどれだけポーカーが好きなんだい?はっはっは!
道男:いえ、全く違います。(真顔)
お巡り:総監殿〜!そろそろ行くであります〜!
正義:それでは二人とも、また!
0:正義とお巡りさんはパトカーで式場に向かうため、去る。
道男:あのおじさん、ソウカンさんって名前なんだぁ〜
道男:おじさんも前に進んだんだ!
道男:よぉ〜し!僕(私)も頑張るぞぉ〜!!
ミカコ:その意気やぁ!青年!!
ミカコ:ところで⋯⋯聞いてええか?
ミカコ:何であの二人は巫女服着てたん?
ミカコ:わたしそれだけがずっと引っかかっててん。
道男:それは本当に僕(私)も聞きたいです!!!
0:場面転換。間を開ける。
0:(エピローグ)とある結婚式にて。
道男:それでは続きまして、
道男:仲人(なこうど)の方からの挨拶です!
お巡り:ただいまご紹介に預かりました仲人であります!
お巡り:あ、いや、えっと⋯⋯!
お巡り:神宮寺(じんぐうじ)であります!
お巡り:お二人の出会いは忘れもしない
お巡り:あの日の公園でありました⋯⋯!
道男:(モノローグ)
道男:あれから、なんやかんやあって
道男:僕(私)は今、ウエディングプランナーとして
道男:人生の次の一歩を歩き出した。
道男:色々と大変なことは多いけど
道男:みんなの笑顔が見られる、とても幸せで
道男:やり甲斐のある仕事につくことが出来た。
道男:アーメン(飴ーン?)
お巡り:⋯⋯プロポーズはどうしたのか、
お巡り:本官の独自の捜査網で調べたのですが、
お巡り:なんでも、ふたりでポーカーをしているときに
お巡り:ハートのロイヤルストレートフラッシュで
お巡り:プロポーズしたらしいですぞ!
お巡り:ひゅー!やるねぇ〜!!
道男:(モノローグ)
道男:そうして今、
道男:人生の新たな一歩を踏み出そうとしている
道男:夫婦の背中を押すことが出来るのも
道男:あの人たちのお陰だ。
お巡り:道男くん!道男くん!(道子ちゃん)
お巡り:本官はもう挨拶終わったでありますよぉ〜!
お巡り:次に進んでくださいっ
道男:あ、す、すいません!
道男:それでは、
道男:新郎新婦のお色直しが終わったようです!
道男:お色直しの衣装はもちろん!巫女服!
道男:ダブル巫女服姿で登場です!
道男:開場のみなさん、お二人の名前を呼んで
道男:盛大な拍手で迎え入れてあげてください!
道男:⋯⋯正義さん、ミカコさんの入場です!!!
0:みんなで拍手して終わる。