台本概要

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タイトル アフィスティア
作者名 まゆしぃ  (@mayuseapo3a)
ジャンル ホラー
演者人数 4人用台本(男1、女2、不問1)
時間 40 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 ――お姉ちゃんのものも私のものも、ぜぇんぶ完奈のもの♡

【ご確認ください】
■一人称変更、語尾のアレンジ、方言:〇
■人数変更:×
■性別変更:△(雅美のみ〇)
■身内ネタ、過度なアドリブ:×
■内容改変、重要な改変:×
■商用利用は不可。投げ銭のあるアプリでの使用可連絡不要。YOUTUBE動画などはご連絡ください。
■SEの指示がありますがSEはなくてもOKです!気軽に遊んで下さい☆

アフィスティアは「強欲」という意味です。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
毬奈 154 ◆棚橋毬奈(タナハシ マリナ) 30歳 女性演者・女性キャラクター 声を荒げるが大きい声を出さなくてもいい 妹に全てを奪われてきた女
完奈 91 ◆棚橋完奈(タナハシ カンナ) 毬奈の妹 22歳 女性演者・女性キャラクター 姉の全てを奪ってきた女
55 ◆藤堂司(トウドウ ツカサ) 毬奈の彼氏 27歳 男性演者・男性キャラクター 優柔不断な御曹司 外ずらがよく流されやすい
雅美 不問 77 ◆金熊雅美(キンクマ マサミ) バー ゴールデンベアのママ 女性ママでもオネェママでも可 演者・キャラ共に性別不問
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
0:プロローグ 司:「俺と、結婚してください」 毬奈:「はいっ!喜んで」 0:タイトルコール 完奈:「アフィスティア」 0:バー・ゴールデンベア 0:【SE】ドアチャイム 雅美:いらっしゃ~い!あら、毬奈(まりな)ちゃんじゃない 毬奈:こんにちは、雅美(まさみ)さん 雅美:嬉しそうじゃない!どうしたの~? 毬奈:今日は雅美さんに報告があって来たんです 雅美:あら!もしかしてそろそろ? 毬奈:はい、おかげさまで 雅美:そっかそっか~毬奈ちゃんもとうとうなのね~ 毬奈:やだ、なんか改まると恥ずかしいです 雅美:彼ぴっぴはなんて? 毬奈:えっと…… 司:「俺と、結婚してください」 毬奈:って言ってました 雅美:きゃ~!よかったわね!女の子の憧れだものね! 毬奈:雅美さんにはいつも相談に乗っていただいているので、一番最初に報告したかったんです 雅美:あら私が最初なの?光栄だわ~ 毬奈:当たり前じゃないですか!本っ当に、いつもありがとうございます! 雅美:全然いいのよ、毬奈ちゃんが幸せになれるなら、ね! 雅美:それにしても、今度こそあの子大丈夫? 毬奈:あの子? 雅美:あの子よあの子、完奈(かんな)ちゃんだっけ? 毬奈:あぁ、妹…… 雅美:いっつもいっつも、毬奈ちゃんの周りの男に付き纏ってたじゃない? 毬奈:甘やかしすぎたんですかねぇ、自分の妹ながら本当に困ったものです 雅美:まぁでも、ちゃんと婚約したんだし、大丈夫でしょ 毬奈:一応そう思ってます 雅美:そうそう、『私が妻です』って顔していましょ! 毬奈:あはは、そうですね! 毬奈:ねぇ雅美さん、結婚式は来てくれますか? 雅美:やだ~もちろんよ!っていうか私がお邪魔していいの? 毬奈:当たり前ですよ、雅美さんには一番お世話になってるんですから、私のドレス姿見に来てください 雅美:嬉しい事言ってくれちゃって…(涙ぐむ) 雅美:さぁ!今日は飲みましょ!私奢っちゃうわ~! 毬奈:いえいえ!ちゃんと自分で出しますよ 雅美:やぁだ、じゃぁ一本くらい入れていいかしら?大事な毬奈ちゃんの門出だもん、祝わせて頂戴 毬奈:あ、ありがとうございます。じゃぁお言葉に甘えて…… 雅美:(被せ気味で)スーさぁん!アルマンドのロゼ持ってきてぇ! 毬奈:ちょっと雅美さん!そんなお高いのじゃなくて! 雅美:いいのいいの!ねっ☆   0:半年後 棚橋家の前 完奈:じゃあねー!司くんっ!今日はありがと! 司:あぁ、いいよ。それじゃぁまた 完奈:はぁい!またね 0:【SE】ドアの音 完奈:ただいまー 毬奈:ちょっと完奈(かんな) 完奈:なぁに?お姉ちゃん 毬奈:また司と出かけていたの?休みの日も頻繁に二人きりで遊んでるじゃない 完奈:はぁ?何それ、嫉妬?三十路のお姉ちゃんが嫉妬なんかしても可愛くないよ 毬奈:そんなんじゃない 完奈:ぴっちぴちの二十代でごめんねぇ? 毬奈:あんた、喧嘩売ってんの? 完奈:べっつにぃ 毬奈:この前だってあんたが急に行きたいところがあるって言い出して、司に車を出させたってお母さんから聞い たんだけど 完奈:それが何? 毬奈:それがって!あんたね! 完奈:司くんがいいよって言ってくれたんだからいいじゃん!ほっといてよ 毬奈:そうはいかないわ、私は司の婚約者なのよ? 完奈:はいはい、三十路のお姉ちゃんは心配性ですねぇ 完奈:でもさ、完奈(かんな)と司くんが仲良くてもよくない?もうすぐ家族になるんだからさぁ 毬奈:別に仲良くするな、なんて言ってないじゃない。少し距離が近くない?って言ってるの 完奈:お姉ちゃんに関係ないでしょ 毬奈:あるわよ!さっきも言ったけれど、私と司は婚約してるのよ?半年後には結婚式をして籍を入れるの 完奈:ふーん、じゃぁ、婚約者に言えば? 毬奈:またそうやって屁理屈こねて逃げるの? 完奈:(被せて)別に完奈は間違ってないじゃん! 完奈:司くんには言わないで良い顔して、完奈にだけ文句だけ言うなんて卑怯じゃん 毬奈:そうね、そうかもしれないわ 毬奈:でも、ハッキリ言っておく。司に迷惑だから、やめてちょうだい 完奈:彼がそう言ったの? 毬奈:違うわ。でもいつもあんたから誘ってるんでしょ?昔からそうだったじゃないの 完奈:はぁ? 毬奈:忘れたとは言わせないわよ。 毬奈:光(ひかる)くんも、神田くんも、一ノ橋(いちのはし)先輩も、私の友達や元彼には全部モーションかけてたでしょ 完奈:えー?昔のことまで持ち出してくるとか、完奈が司くんと仲がいいのがそぉんなに気に食わないんだぁ? 毬奈:ええ気に食わないわ。完奈のせいで司にまで呆れられたらたまったもんじゃないもの 完奈:お姉ちゃん、昔から彼氏に逃げられてたもんねぇ! 完奈:今回もそうじゃないかって、こわくなったんだー(クスクス笑う) 毬奈:それはあんたが悪いんでしょ! 毬奈:昔から私の友達や彼氏にべたべたするから距離を置かれたりふられたりして散々な思いをさせられたんじゃない! 完奈:えー光くんも、神田さんも、一ノ橋先輩も、みんな完奈のことを可愛がってくれてただけじゃーん 毬奈:そりゃ七つも年下の妹は可愛がられるでしょ!だからって加減ってものを知りなさい 完奈:でも司くんも、優しくしてくれるよぉ? 毬奈:優しいからあんたのわがままにつきあってくれてんのよ 完奈:(笑いながら)そう思うならそう思ってればぁ?お姉ちゃんはそんなだからだめなんだよ 毬奈:とにかく!あんまり司に迷惑かけないで! 完奈:はいはい、明日早いからもう寝るね おやすみー 毬奈:ちょっと!そんな適当な返事で! 0:完奈退室 毬奈:もう…… 0:ショッピングモール 0:【SE】雑踏 F.O. 毬奈:それでね、あんまり司を呼びださないでって言ったんだけど、あの子すぐに逃げちゃって話にならなくて 司:いいよいいよ、気にしなくて平気だよ 毬奈:そういうわけにはいかないよ。司に迷惑だもん。 毬奈:妹がいつもあそこに行きたいこっちに行きたいっていつでも呼び出して、本当にごめんなさい 司:俺は本当に大丈夫だから、ね 気にしないでくれよ 毬奈:あの子私と違って女の子らしいでしょ?だから昔からチヤホヤされすぎて我儘なのよ 司:そうかな?でも完奈ちゃんも可愛いけど、毬奈(まりな)も綺麗だと思うけど 毬奈:……ありがとう。そんなこと言ってくれるの、司だけよ 司:何言ってるんだよ、サークル時代はモテモテだったじゃないか 毬奈:そうかな?そうだとしても昔の話でしょ? 毬奈:とにかく、私からもまた注意するから、司もあんまり完奈を甘やかさないでね? 司:まぁ、これから完奈ちゃんも家族になるだろう。俺一人っ子だからうれしくてさ! 司:少しくらいはお願いきいてあげたいんだよ、いいだろ? 毬奈:うーん……本当に嫌なら断って良いからね?私がなんとかするから 司:うん、ありがとう 毬奈:ホントにあの子ったら……そういえばこの前もね! 司:毬奈、さっきから完奈ちゃんの話ばっかりしてる 毬奈:あ、ごめんなさい 司:いいよいいよ(苦笑しながら)わかってくれたならいいんだ 毬奈:それで、このあとは何処に行く?ドレスの試着まで結構時間あるけど 司:あ、その、申し訳ないんだけど少し急用が出来ちゃて、あと一時間半くらいしか一緒にいられないんだ 毬奈:え、そうなの?仕事? 司:いや、仕事ではないんだけど急用で呼び出されちゃってさ。ごめんな? 司:だから今日の試着は毬奈だけで行ってきてよ 毬奈:うーん、急用なら仕方ないね 司:ごめんな 毬奈:うん、気にしなくていいよ 司:この埋め合わせは今度するから 毬奈:私は大丈夫。でも、勝手に好きなの選んじゃうからね 司:あぁ、自分で似合う服は自分が一番って言うし 毬奈:じゃぁ!あともう少し、全力で楽しもう! 司:ありがとう、毬奈は優しいな 0:駅前 司:やぁ、ごめんね遅くなって 完奈:ううん。大丈夫。それよりお姉ちゃん大丈夫?今日ドレス選ぶんじゃなかった? 司:あ、いや…だって完奈ちゃんがどうしてもって 完奈:あれ?私が無理やり誘ったって言うの?(スマホを見せながら)これ、いいのかな? 完奈:完奈、手が滑っちゃうかもしれないなぁ 司:ダメだ!お、俺が、完奈ちゃんに会いたかったんだ 完奈:嬉しい!じゃぁ今日はどこに行こうか…? 司:とりあえず駅前は人目に付きすぎるよ。移動しよう 完奈:やだ、人がいないところって…ふふふっ 完奈:司くんったら、まだ明るいのに(満足そうに笑う) 0:数日後 バー・ゴールデンベア 0:【SE】ドアチャイム 雅美:いらっしゃーいあら、毬奈(まりな)ちゃんじゃない 毬奈:こんにちは、雅美さん 雅美:ど~したの~?浮かない顔しちゃってさ 毬奈:あ、いや、えっ、と 雅美:やだ、もしかしてあの女? 毬奈:……うん、そうなの 雅美:やっぱり~!本当なんのつもりなのかしら!頭おかしいんじゃないの? 毬奈:あはは、やっぱり、そうだよね 雅美:完奈ちゃんも可愛いとは思うわよ、そりゃ、モテるタイプよね。でも毬奈ちゃんだって十分美人さんなのに! 雅美:あ~もう!なんで男たちは毬奈ちゃんほっておいてあんな女にコロッといくかなぁ信じらんないわ! 毬奈:あ、いや、司とは別にわかれたわけじゃないの 毬奈:でも、ことあるごとに完奈が司を呼び出して連れまわすのよ 雅美:それって、アッシー君って事? 毬奈:そう、なのかなぁ……本当、申し訳なくて 雅美:彼ぴっぴは何て言ってるの? 毬奈:完奈とも家族になるんだから気にしないでって 雅美:やだ~!かっこい~!優しいわねぇ 毬奈:そうなんですよね~だからこそ私が完奈を止めなきゃって思ってるんですけど 雅美:うんうん 毬奈:あの子、すぐにはぐらかして逃げるんですよ! 雅美:のらりくらり?困っちゃうわよね~ 雅美:彼ぴっぴが嫌がってくれればもっと真剣に阻止できるんだけど、嫉妬ととられかねないし 毬奈:(被せて)それ!それ言われた!三十路の嫉妬とか可愛くないって言われました! 雅美:んま~!なにそれ~あんたもすぐに三十路よって感じ!女は三十路からよ! 毬奈:でしょ!失礼ですよね!自分の妹ながら呆れました! 毬奈:お父さんだってお母さんだって、分け隔てなく育ててくれたと思ってるんですけど、本当にどこであんなに 性格ひん曲がっちゃったんだろう…… 0:後日 棚橋家の前 完奈:じゃあねー!司くんっ!今日もありがと! 司:あぁ…… 完奈:や く そ く 完奈:忘れないでね? 司:……わかった 完奈:じゃぁね~ 0:【SE】ドアの音 毬奈:おかえり 完奈:ただいまー 毬奈:あんたね、結婚式の前日くらい気を使いなさいよ!ここのところ毎日じゃない! 毬奈:今日は司をどこに連れて行ったわけ?! 完奈:なぁに?尋問?趣味わるぅい 毬奈:ふざけないで答えて!どこいってたの! 完奈:か い も の 毬奈:嘘つき 完奈:なんでよ 毬奈:あんたが買い物に行ったときは必ず「買ってもらった~」とか言って両手いっぱいに紙袋を下げてるでしょ 完奈:今日は欲しいものがなかっただけだもん 毬奈:それで?本当はどこにいってたの? 完奈:しつこいなぁ!気になるなら婚約者くんにきけば?そんなんだからモテないんだよ 毬奈:あんたには関係ないでしょ 完奈:お姉ちゃんさぁ、今まで本気で完奈のせいで彼氏にふられて、友達と疎遠になったって思ってるの?? 毬奈:事実でしょ? 完奈:(笑いだす)ちがうよぉ? 完奈:あの人たちは完奈と仲良くしたかったのにぃ、お姉ちゃんが「つきあわせてごめんね」「無理しないで」 完奈:「妹に構わなくていいからね」ってしつこく言うから、お姉ちゃんが愛想つかされたんだよ? 毬奈:は? 完奈:なぁに?もしかして、本当に気が付かなかったの? 完奈:元カレも、友達も、みぃんなお姉ちゃんよりも可愛い完奈を選んだのに 毬奈:なに、それ 完奈:光くんも、神田さんも、一ノ橋先輩も、元カレたちも友達もみぃんな完奈を選んだの 完奈:でも、せっかく付き合ってあげてもつまんなかったから全員捨てちゃった 毬奈:ふざけないで! 完奈:(笑う)なんて顔をしてんの?本当に今まで気づいてなかったんだ?超うける! 毬奈:(溜息)もういい。昔の、ことだし 完奈:それがさぁ、そうでもないんだよねぇ 毬奈:どういう意味よ 完奈:お姉ちゃんさぁ、司くんに飽きられてるんじゃない? 毬奈:そんなわけないじゃない 完奈:お姉ちゃんとデート中なのに、お願いしたら完奈に会いに来てくれたのに? 毬奈:……そんなことで動揺するとでも思った? 完奈:じゃぁ、もし本当だったらさ、他の元カレみたいに、完奈がもらってもいいよね? 毬奈:勝手にしたら?そんなこと、絶対にないから 完奈:ちゃんと聞いたからね 毬奈:好きにしたらいいでしょ 完奈:声、震えてるよ?強がっちゃってさ 毬奈:怒りで震えてんのよ! 完奈:きゃーこわーい(棒読み) 完奈:安心してね?幸せになるから、お姉ちゃんのぶんまで 毬奈:あっそ 本当くだらない 完奈:どこに行ったかはもういいの? 毬奈:明日も早いしあんたに構ってても時間の無駄だからもういいわ 毬奈:結婚式に花嫁が遅刻なんてできないし 毬奈:おやすみ 完奈:ふーん おやすみ~ 完奈:あした、楽しみだね☆ 0:【SE】電話の音 完奈:あ、もしもし、司くん? 司:……完奈ちゃんか 完奈:私じゃ不満なの? 司:い、いや そんなことないよ!電話、ありがとう 司:どうしたんだい?こんな時間に 完奈:明日ね、結婚するのは私だから 司:どういう冗談だ? 完奈:冗談はどっち?今日、見たでしょ? 司:ぁ…… 完奈:責任、取ってくれるよね? 司:(諦めたように)……あぁ 完奈:そういうことだから、明日ちゃんと起きて迎えに来てね 司:わかった 完奈:じゃぁね~ 0:結婚式場 控室 毬奈:っていうことが昨日あったんですよ 雅美:やだ~流石に結婚式前日に花婿連れまわすなんて信じらんな~い! 毬奈:本当信じられないですよね 雅美:でも、ほら毬奈ちゃん 雅美:もしかしたら妹ちゃんと旦那様から毬奈ちゃんにサプライズプレゼントとかがあるかもしれないじゃない? 毬奈:サプライズ? 雅美:よくあるじゃない「お姉ちゃん今までありがとう!」みたいなやつ 毬奈:うーん、完奈がそんなことするタイプかな? 雅美:とにかく、そんなことは忘れて今日を楽しみましょ!毬奈ちゃん主役なんだから! 毬奈:……そうですね 雅美:それにしてもそのドレス本当に綺麗ね~すごく似合ってるわよ 毬奈:ありがとうございます 毬奈:マーメイドタイプのも素敵で迷ったんですけど、やっぱりドレスはふわっとしたのかなって! 雅美:うんうん、とっても素敵! 0:【SE】ざわざわとした声 雅美:あら、なんか外が騒がしいわね 雅美:お父さんたちかしら、私見てくるわ 毬奈:雅美さん、すみません 0:控室前 完奈:だから、大丈夫ですって! 完奈:本人に確認してくださいよぉ! 完奈:お姉ちゃんもういるんでしょ? 0:控室内 毬奈:今の声、まさか完奈(かんな)? 雅美:もうすぐお式なのに本当騒がしいわね 0:【SE】ドアの音 雅美:(ドアを開ける)どうしたんですか? 完奈:なんなのよあんた!早くお姉ちゃん出して! 雅美:あんた…完奈ちゃんね 完奈:あんた誰よ! 雅美:今は貴女のお姉ちゃんはお式の準備で忙しいの。わかるでしょ? 毬奈:通していいですよ。多分その子絶対引かないので…… 0:控室内   完奈:やっほーおねえちゃーん 毬奈:式場の人とかみんなに迷惑かけないで 毬奈:で?なに?私、時間ないんだけど 完奈:大丈夫大丈夫!すぐに終わるからさ 毬奈:なら、いいけど、何? 完奈:うん!ほら、入りなよ 毬奈:あんた勝手に誰つれてきたの? 0:【SE】ドアの音 司:し、失礼します 毬奈:司? 雅美:ちょっとやだ、彼ぴっぴ? 雅美:結婚式の前に新婦の姿を見に来るのはマナー違反じゃないの 雅美:縁起が悪いから戻んなさいよ 司:すみません……でも、毬奈に大事な話があるんです 雅美:だからって 毬奈:(被せる)大丈夫ですよ、雅美さん 雅美:妹さんと一緒にこんなことするなんて、よっぽど「大事な用事」なのよね? 毬奈:完奈がまた何かしたの?本当にごめんね…… 司:ちがうんだ 毬奈:え?なにが違うの? 完奈:あ~ぁ、おねーちゃんひどいなぁ、すぐに私のせいにしてさ 毬奈:じゃぁどうしたのよ!わざわざ式の前に邪魔しに来て 毬奈:あんたには常識ってものがないの? 完奈:常識があるから先に来てあげたんだよ☆ 毬奈:何を言ってるの? 完奈:えへへ 私達ね、結婚します 毬奈:え?(同時だが揃わなくていい) 雅美:は?(同時だが揃わなくていい) 完奈:だからぁ、完奈と司くんが、結婚するの 雅美:なんで? 完奈:愛し合ってるからかな? 毬奈:なに、これ、どっきり? 司:ちがうんだ 雅美:おめでたいお式の日にたちの悪い冗談なんて辞めて頂戴! 完奈:冗談じゃないよ? 毬奈:どういうことなの 完奈:ねぇ、お姉ちゃん昨日話したじゃん? 毬奈:昨日…… 完奈:忘れちゃったのかな? 司:ごめん、毬奈 毬奈:本当、なの? 司:ごめん 完奈:うふふ、ここにね(お腹をさする)司くんとの愛が詰まってるの 毬奈:え? 雅美:愛? 完奈:察しが悪いなぁ 完奈:だからね、できちゃったんだぁ 司:…… 完奈:三ヵ月なの♡ 司:俺は、完奈ちゃんに責任をとらなきゃ、ならない 毬奈:まって、ちょっとまってよ!三ヵ月ってどういうこと? 毬奈:そんなに前から貴方たち…… 完奈:半年くらい前かなぁ 雅美:貴女の勘違いなんじゃないの? 完奈:ちがうよ?昨日病院に行ってきたんだもん 毬奈:司、本当なの? 司:昨日も、呼び出されて、病院の前に来いって言われて、行ったんだ 毬奈:びょう、いん? 司:着いたら、病院から出てきた完奈ちゃんが、お腹をさすりがなら……できちゃったって 雅美:あんた、毬奈ちゃんがいながら心当たりがあるような事したってこと? 司:すみません 毬奈:なんで?なんで私にプロポーズしたの? 毬奈:プロポーズしてくれたのは、一年前でしょ? 毬奈:その半年後には妹に手を出して、寝たって言うの? 司:そんなつもりなんてなかったんだ! 司:あの日、完奈ちゃんが「お姉ちゃんと喧嘩して家を飛び出してきたって言うから、家に 雅美:家にいれたの? 司:眠れないからって、酒を、飲んで…そのあとは記憶がないんだ 完奈:司君ってばひどいなぁ。お姉ちゃんよりイイって、あんなに愛してくれたのに 司:(言葉にならない沈黙) 毬奈:なんで、言ってくれなかったの 司:こんなこと言えるわけないじゃないか! 毬奈:この半年っ!どんな思いで今日の準備してきたのよ!! 司:毬奈と婚約の話がきちんと進んで結婚すれば、完奈ちゃんが諦めてくれると思ったんだ 毬奈:なによそれ!じゃぁなんで今になってこんなことになってんのよ 完奈:ふふっ 毬奈:あんた、何で笑ってんのよ! 完奈:昨日ちゃんとお姉ちゃんに聞いたよね、覚えてる? 毬奈:まさか 完奈:司くんもらっていい?って聞いたよね(楽しそうに) 毬奈:それは…… 完奈:そうしたらお姉ちゃん、『勝手にしたら』『好きにしたらいいでしょ』って、言ったよね? 毬奈:言葉の、あやで…… 司:『勝手にしたら』? 毬奈:ちがっちがうの、これは 雅美:毬奈ちゃん 毬奈:だって、だってまさか 毬奈:なんで?なんでなのよ 司:毬奈 毬奈:司、貴方どんな思いで式の準備をしてたの? 毬奈:席次表一緒に作ったよね!引き出物も一緒に選んだよね? 毬奈:なんで毎回毎回、のこのこと呼び出しに応じたりしたのよ! 毬奈:ねぇ! 司:仕方なかったんだ 司:行かなきゃ、君に全部言うって完奈ちゃんが言うから 雅美:最初から婚約者以外の女を家に入れるのが間違いなのよ 司:毬奈、君は、俺が居なくても大丈夫だよな 司:『勝手にしたら』って、言ったんだよな 司:俺を必要としてくれるのは、完奈ちゃんだけ、なんだ 毬奈:そんなことないっ! 完奈:うふふっお姉ちゃんじゃ司くんを満足させてあげられなかったんだよ 雅美:ちょっとあんた! 完奈:いい加減に現実を見て、認めたら?私のほうが、イイってさ!顔も、アッチもね! 司:ごめん 完奈:とにかくね、司くんは完奈のだよ 完奈:私達このまま結婚するから、式も貰うね 雅美:あんた何言ってるの? 完奈:うるさいなぁ、部外者は黙っててよ 0:【間】 毬奈:(溜息)もういいや 雅美:毬奈ちゃん? 毬奈:疲れちゃった 司:毬奈 毬奈:だって、半年以上騙されててさ、何年も付き合ったのに、たった一年浮気した妹のほうがよくて 毬奈:しかも妹のことも抱いてたんでしょ?信じらんないよ 毬奈:信頼できなくなってしまったら、もうどうしようもないじゃない 司:ごめん、でも毬奈のこともちゃんと好きだったんだ!信じてくれ 毬奈:「ちゃんと」って何 司:ごめん、でも本当に好きだったんだよ 毬奈:「好きだった」かぁ、もう過去形なんだね 司:ごめん 毬奈:もう黙っててくれる? 司:ごめん、毬奈 毬奈:聴きたくない 毬奈:あんたの声なんて聴きたくない 毬奈:どうせみんな、完奈の事が好きになるのよ 完奈:ごめんね~可愛くて☆ 雅美:あんた 完奈:(無視して)ね、お式、もらっていいよね? 毬奈:好きにしたら 完奈:やったー!ありがとうお姉ちゃん!たまには役に立つね!じゃぁ、話はそれだけだから帰っていいよ 雅美:あんたね!常識ってもんがあるでしょ! 毬奈:もうわかったから、完奈と司は早く出てって。着替える。 完奈:はーい!じゃぁ司くん、スタッフさんにお話しにいこう! 完奈:新婦の名前変えてもらわなきゃ♡ 0:二人退室 雅美:はぁ、本当に信じらんないわ 毬奈:雅美さんが心配してくれたのに、やっぱり、こうなっちゃった。 雅美:でも、よかったじゃない 雅美:あんな馬鹿と結婚しなくて済んだんだから!ね! 毬奈:それは、そうですけど、ちょっと、キツいですね 雅美:大丈夫、ああいうやつは絶対バチがあたるから 毬奈:そう、ですよね 毬奈:あーあ、やっと結婚できると思ったのにな 雅美:まぁ、なんだかんだ元カレたちも、ねぇ 毬奈:悪かったですね!ダメ男製造機で!もうっ 雅美:今度知り合いのイイコ、紹介しようか? 毬奈:……いろいろ落ち着いたらお願いしようかな 毬奈:あー!もう!このあとお父さんとお母さん、その他諸々への説明がクソめんどくさい! 雅美:全部終わったらさ、どうせ一週間有給だったんだし、傷心旅行なんつってどっか行きましょ! 雅美:お店の子達も誘っとくからさ! 毬奈:旅行かぁ 雅美:絶対皆ついてくるから、バー・ゴールデンベアの社員旅行ってことにして、みんなでワイワイしましょ! 雅美:こういう時はパーッと騒がないとね! 0:数か月後 0:【SE】電話の音 雅美:もしもし~ 毬奈:雅美さん!こんにちは 雅美:聞いたわよ~紹介した翔くんといい感じらしいじゃない 毬奈:はい、おかげ様で 雅美:同業種だし話も合うでしょ?うふふ、よかったわぁ 毬奈:ありがとうございます、仕事の話も相談に乗ってもらえたりするので、すごく心強いです 雅美:それにしても引っ越しちゃうからなかなか会えなくて寂しいわ~ 毬奈:時々顔出しに行ってるじゃないですか 雅美:そうだけどぉ 毬奈:完奈がああなった以上一緒には暮らせなかったですし 毬奈:父も母も賛成してくれてお金も出してくれたので有難く引っ越したんですよ 雅美:それにしても、あの女妊娠したって嘘だったんでしょ? 毬奈:流産したって言い張ってるらしいですけどね 雅美:女の敵だわ 毬奈:もう親に何かあった時くらいしか会うつもりはないから、いいんです 雅美:それがいいと思うわ 雅美:本当あいつ、なんであんなに姉に執着するのかしら 毬奈:なんででしょうね、姉だから、なんでしょうか 毬奈:小さい頃からずっとそう 服も、玩具も、全部取られてきたから 雅美:なんだか怖いわよね 雅美:お姉ちゃんのものも全部欲しいだなんて強欲な娘ね 毬奈:でも、住所も教えてないし、スマホも変えたからきっと大丈夫です 毬奈:親に電話するときも公衆電話からかけることにしたんです 雅美:ご両親にも教えてないの?思い切ったわねぇ 毬奈:私の住所が完奈に知られたらまた付き纏ってくるかもしれませんし、念には念をいれようって決まったんです。 毬奈:母が結婚式の件で気味悪がっちゃって、完奈も家から出したのに、それでも時々実家に来るらしいんですよ 毬奈:あぁいう風に育ててしまった罪悪感から無下にもできないみたいで…… 雅美:そうなのね 毬奈:それに、あの後「流産したのは司のせいだ」とか言って司とも別れたみたいなんですよ 毬奈:慰謝料も何故か完奈のほうが貰ったみたいで 雅美:こっわ、マジでホラーね 雅美:それだけ後先考えないで執着してくるなら、そのほうが安心かもしれないわね 毬奈:こっちからかけないと話せないので母は寂しいらしいですけどね 雅美:私も、毬奈ちゃんに会う回数減っちゃって寂しいのよ? 毬奈:ふふっ、来月あたりまた遊びに行きますから、お店の皆にもよろしく伝えてください 雅美:はいは~い 0:【SE】メールの着信音 毬奈:ん、メール?誰だろう 完奈:やっほ~お姉ちゃん、元気?スマホ変えたんなら完奈にも教えてくれないと困るよぉ 完奈:司くんのことだけどさぁ、もういい加減忘れなよ 完奈:浮気しちゃうクズ男だって分かったんだから、完奈に感謝してね! 完奈:それにしても、御曹司の司君と結婚したら完奈は社長夫人になれると思ったのに、 完奈:あの後司くん解雇されちゃってさぁ!!完奈も被害者なんだよぉ?可哀想でしょ? 完奈:お姉ちゃんなんだから、傷心の妹に優しくしてよね! 完奈:ねぇねぇ、お姉ちゃん!今、別の人とお付き合いしてるんでしょ? 完奈:彼氏さん、実業家なんだって?お姉ちゃんばっかりずるいなぁ 完奈:完奈が社長夫人になれなかったのも、司くんがニートになったのもお姉ちゃんのせいなんだから 完奈:お姉ちゃんだけ幸せになんてさせないよ?わかったら、早く帰ってきてね? 完奈:お父さんとお母さんも、お姉ちゃんと会いたがってるよ☆ 完奈:それで、戻ってきたら慰謝料、完奈にちゃんと払ってね! 完奈:社長夫人になるはずだった分、ちゃんと完奈のこと幸せにしてくれないと困っちゃうもん! 完奈:そうだなぁ、お付き合いしてる人大金持ちみたいだしぃ、一千万くらいで許してあげる! 完奈:住所、教えてね?可愛い妹が直々に迎えにいくからね☆ 0:お読みいただきありがとうございました

0:プロローグ 司:「俺と、結婚してください」 毬奈:「はいっ!喜んで」 0:タイトルコール 完奈:「アフィスティア」 0:バー・ゴールデンベア 0:【SE】ドアチャイム 雅美:いらっしゃ~い!あら、毬奈(まりな)ちゃんじゃない 毬奈:こんにちは、雅美(まさみ)さん 雅美:嬉しそうじゃない!どうしたの~? 毬奈:今日は雅美さんに報告があって来たんです 雅美:あら!もしかしてそろそろ? 毬奈:はい、おかげさまで 雅美:そっかそっか~毬奈ちゃんもとうとうなのね~ 毬奈:やだ、なんか改まると恥ずかしいです 雅美:彼ぴっぴはなんて? 毬奈:えっと…… 司:「俺と、結婚してください」 毬奈:って言ってました 雅美:きゃ~!よかったわね!女の子の憧れだものね! 毬奈:雅美さんにはいつも相談に乗っていただいているので、一番最初に報告したかったんです 雅美:あら私が最初なの?光栄だわ~ 毬奈:当たり前じゃないですか!本っ当に、いつもありがとうございます! 雅美:全然いいのよ、毬奈ちゃんが幸せになれるなら、ね! 雅美:それにしても、今度こそあの子大丈夫? 毬奈:あの子? 雅美:あの子よあの子、完奈(かんな)ちゃんだっけ? 毬奈:あぁ、妹…… 雅美:いっつもいっつも、毬奈ちゃんの周りの男に付き纏ってたじゃない? 毬奈:甘やかしすぎたんですかねぇ、自分の妹ながら本当に困ったものです 雅美:まぁでも、ちゃんと婚約したんだし、大丈夫でしょ 毬奈:一応そう思ってます 雅美:そうそう、『私が妻です』って顔していましょ! 毬奈:あはは、そうですね! 毬奈:ねぇ雅美さん、結婚式は来てくれますか? 雅美:やだ~もちろんよ!っていうか私がお邪魔していいの? 毬奈:当たり前ですよ、雅美さんには一番お世話になってるんですから、私のドレス姿見に来てください 雅美:嬉しい事言ってくれちゃって…(涙ぐむ) 雅美:さぁ!今日は飲みましょ!私奢っちゃうわ~! 毬奈:いえいえ!ちゃんと自分で出しますよ 雅美:やぁだ、じゃぁ一本くらい入れていいかしら?大事な毬奈ちゃんの門出だもん、祝わせて頂戴 毬奈:あ、ありがとうございます。じゃぁお言葉に甘えて…… 雅美:(被せ気味で)スーさぁん!アルマンドのロゼ持ってきてぇ! 毬奈:ちょっと雅美さん!そんなお高いのじゃなくて! 雅美:いいのいいの!ねっ☆   0:半年後 棚橋家の前 完奈:じゃあねー!司くんっ!今日はありがと! 司:あぁ、いいよ。それじゃぁまた 完奈:はぁい!またね 0:【SE】ドアの音 完奈:ただいまー 毬奈:ちょっと完奈(かんな) 完奈:なぁに?お姉ちゃん 毬奈:また司と出かけていたの?休みの日も頻繁に二人きりで遊んでるじゃない 完奈:はぁ?何それ、嫉妬?三十路のお姉ちゃんが嫉妬なんかしても可愛くないよ 毬奈:そんなんじゃない 完奈:ぴっちぴちの二十代でごめんねぇ? 毬奈:あんた、喧嘩売ってんの? 完奈:べっつにぃ 毬奈:この前だってあんたが急に行きたいところがあるって言い出して、司に車を出させたってお母さんから聞い たんだけど 完奈:それが何? 毬奈:それがって!あんたね! 完奈:司くんがいいよって言ってくれたんだからいいじゃん!ほっといてよ 毬奈:そうはいかないわ、私は司の婚約者なのよ? 完奈:はいはい、三十路のお姉ちゃんは心配性ですねぇ 完奈:でもさ、完奈(かんな)と司くんが仲良くてもよくない?もうすぐ家族になるんだからさぁ 毬奈:別に仲良くするな、なんて言ってないじゃない。少し距離が近くない?って言ってるの 完奈:お姉ちゃんに関係ないでしょ 毬奈:あるわよ!さっきも言ったけれど、私と司は婚約してるのよ?半年後には結婚式をして籍を入れるの 完奈:ふーん、じゃぁ、婚約者に言えば? 毬奈:またそうやって屁理屈こねて逃げるの? 完奈:(被せて)別に完奈は間違ってないじゃん! 完奈:司くんには言わないで良い顔して、完奈にだけ文句だけ言うなんて卑怯じゃん 毬奈:そうね、そうかもしれないわ 毬奈:でも、ハッキリ言っておく。司に迷惑だから、やめてちょうだい 完奈:彼がそう言ったの? 毬奈:違うわ。でもいつもあんたから誘ってるんでしょ?昔からそうだったじゃないの 完奈:はぁ? 毬奈:忘れたとは言わせないわよ。 毬奈:光(ひかる)くんも、神田くんも、一ノ橋(いちのはし)先輩も、私の友達や元彼には全部モーションかけてたでしょ 完奈:えー?昔のことまで持ち出してくるとか、完奈が司くんと仲がいいのがそぉんなに気に食わないんだぁ? 毬奈:ええ気に食わないわ。完奈のせいで司にまで呆れられたらたまったもんじゃないもの 完奈:お姉ちゃん、昔から彼氏に逃げられてたもんねぇ! 完奈:今回もそうじゃないかって、こわくなったんだー(クスクス笑う) 毬奈:それはあんたが悪いんでしょ! 毬奈:昔から私の友達や彼氏にべたべたするから距離を置かれたりふられたりして散々な思いをさせられたんじゃない! 完奈:えー光くんも、神田さんも、一ノ橋先輩も、みんな完奈のことを可愛がってくれてただけじゃーん 毬奈:そりゃ七つも年下の妹は可愛がられるでしょ!だからって加減ってものを知りなさい 完奈:でも司くんも、優しくしてくれるよぉ? 毬奈:優しいからあんたのわがままにつきあってくれてんのよ 完奈:(笑いながら)そう思うならそう思ってればぁ?お姉ちゃんはそんなだからだめなんだよ 毬奈:とにかく!あんまり司に迷惑かけないで! 完奈:はいはい、明日早いからもう寝るね おやすみー 毬奈:ちょっと!そんな適当な返事で! 0:完奈退室 毬奈:もう…… 0:ショッピングモール 0:【SE】雑踏 F.O. 毬奈:それでね、あんまり司を呼びださないでって言ったんだけど、あの子すぐに逃げちゃって話にならなくて 司:いいよいいよ、気にしなくて平気だよ 毬奈:そういうわけにはいかないよ。司に迷惑だもん。 毬奈:妹がいつもあそこに行きたいこっちに行きたいっていつでも呼び出して、本当にごめんなさい 司:俺は本当に大丈夫だから、ね 気にしないでくれよ 毬奈:あの子私と違って女の子らしいでしょ?だから昔からチヤホヤされすぎて我儘なのよ 司:そうかな?でも完奈ちゃんも可愛いけど、毬奈(まりな)も綺麗だと思うけど 毬奈:……ありがとう。そんなこと言ってくれるの、司だけよ 司:何言ってるんだよ、サークル時代はモテモテだったじゃないか 毬奈:そうかな?そうだとしても昔の話でしょ? 毬奈:とにかく、私からもまた注意するから、司もあんまり完奈を甘やかさないでね? 司:まぁ、これから完奈ちゃんも家族になるだろう。俺一人っ子だからうれしくてさ! 司:少しくらいはお願いきいてあげたいんだよ、いいだろ? 毬奈:うーん……本当に嫌なら断って良いからね?私がなんとかするから 司:うん、ありがとう 毬奈:ホントにあの子ったら……そういえばこの前もね! 司:毬奈、さっきから完奈ちゃんの話ばっかりしてる 毬奈:あ、ごめんなさい 司:いいよいいよ(苦笑しながら)わかってくれたならいいんだ 毬奈:それで、このあとは何処に行く?ドレスの試着まで結構時間あるけど 司:あ、その、申し訳ないんだけど少し急用が出来ちゃて、あと一時間半くらいしか一緒にいられないんだ 毬奈:え、そうなの?仕事? 司:いや、仕事ではないんだけど急用で呼び出されちゃってさ。ごめんな? 司:だから今日の試着は毬奈だけで行ってきてよ 毬奈:うーん、急用なら仕方ないね 司:ごめんな 毬奈:うん、気にしなくていいよ 司:この埋め合わせは今度するから 毬奈:私は大丈夫。でも、勝手に好きなの選んじゃうからね 司:あぁ、自分で似合う服は自分が一番って言うし 毬奈:じゃぁ!あともう少し、全力で楽しもう! 司:ありがとう、毬奈は優しいな 0:駅前 司:やぁ、ごめんね遅くなって 完奈:ううん。大丈夫。それよりお姉ちゃん大丈夫?今日ドレス選ぶんじゃなかった? 司:あ、いや…だって完奈ちゃんがどうしてもって 完奈:あれ?私が無理やり誘ったって言うの?(スマホを見せながら)これ、いいのかな? 完奈:完奈、手が滑っちゃうかもしれないなぁ 司:ダメだ!お、俺が、完奈ちゃんに会いたかったんだ 完奈:嬉しい!じゃぁ今日はどこに行こうか…? 司:とりあえず駅前は人目に付きすぎるよ。移動しよう 完奈:やだ、人がいないところって…ふふふっ 完奈:司くんったら、まだ明るいのに(満足そうに笑う) 0:数日後 バー・ゴールデンベア 0:【SE】ドアチャイム 雅美:いらっしゃーいあら、毬奈(まりな)ちゃんじゃない 毬奈:こんにちは、雅美さん 雅美:ど~したの~?浮かない顔しちゃってさ 毬奈:あ、いや、えっ、と 雅美:やだ、もしかしてあの女? 毬奈:……うん、そうなの 雅美:やっぱり~!本当なんのつもりなのかしら!頭おかしいんじゃないの? 毬奈:あはは、やっぱり、そうだよね 雅美:完奈ちゃんも可愛いとは思うわよ、そりゃ、モテるタイプよね。でも毬奈ちゃんだって十分美人さんなのに! 雅美:あ~もう!なんで男たちは毬奈ちゃんほっておいてあんな女にコロッといくかなぁ信じらんないわ! 毬奈:あ、いや、司とは別にわかれたわけじゃないの 毬奈:でも、ことあるごとに完奈が司を呼び出して連れまわすのよ 雅美:それって、アッシー君って事? 毬奈:そう、なのかなぁ……本当、申し訳なくて 雅美:彼ぴっぴは何て言ってるの? 毬奈:完奈とも家族になるんだから気にしないでって 雅美:やだ~!かっこい~!優しいわねぇ 毬奈:そうなんですよね~だからこそ私が完奈を止めなきゃって思ってるんですけど 雅美:うんうん 毬奈:あの子、すぐにはぐらかして逃げるんですよ! 雅美:のらりくらり?困っちゃうわよね~ 雅美:彼ぴっぴが嫌がってくれればもっと真剣に阻止できるんだけど、嫉妬ととられかねないし 毬奈:(被せて)それ!それ言われた!三十路の嫉妬とか可愛くないって言われました! 雅美:んま~!なにそれ~あんたもすぐに三十路よって感じ!女は三十路からよ! 毬奈:でしょ!失礼ですよね!自分の妹ながら呆れました! 毬奈:お父さんだってお母さんだって、分け隔てなく育ててくれたと思ってるんですけど、本当にどこであんなに 性格ひん曲がっちゃったんだろう…… 0:後日 棚橋家の前 完奈:じゃあねー!司くんっ!今日もありがと! 司:あぁ…… 完奈:や く そ く 完奈:忘れないでね? 司:……わかった 完奈:じゃぁね~ 0:【SE】ドアの音 毬奈:おかえり 完奈:ただいまー 毬奈:あんたね、結婚式の前日くらい気を使いなさいよ!ここのところ毎日じゃない! 毬奈:今日は司をどこに連れて行ったわけ?! 完奈:なぁに?尋問?趣味わるぅい 毬奈:ふざけないで答えて!どこいってたの! 完奈:か い も の 毬奈:嘘つき 完奈:なんでよ 毬奈:あんたが買い物に行ったときは必ず「買ってもらった~」とか言って両手いっぱいに紙袋を下げてるでしょ 完奈:今日は欲しいものがなかっただけだもん 毬奈:それで?本当はどこにいってたの? 完奈:しつこいなぁ!気になるなら婚約者くんにきけば?そんなんだからモテないんだよ 毬奈:あんたには関係ないでしょ 完奈:お姉ちゃんさぁ、今まで本気で完奈のせいで彼氏にふられて、友達と疎遠になったって思ってるの?? 毬奈:事実でしょ? 完奈:(笑いだす)ちがうよぉ? 完奈:あの人たちは完奈と仲良くしたかったのにぃ、お姉ちゃんが「つきあわせてごめんね」「無理しないで」 完奈:「妹に構わなくていいからね」ってしつこく言うから、お姉ちゃんが愛想つかされたんだよ? 毬奈:は? 完奈:なぁに?もしかして、本当に気が付かなかったの? 完奈:元カレも、友達も、みぃんなお姉ちゃんよりも可愛い完奈を選んだのに 毬奈:なに、それ 完奈:光くんも、神田さんも、一ノ橋先輩も、元カレたちも友達もみぃんな完奈を選んだの 完奈:でも、せっかく付き合ってあげてもつまんなかったから全員捨てちゃった 毬奈:ふざけないで! 完奈:(笑う)なんて顔をしてんの?本当に今まで気づいてなかったんだ?超うける! 毬奈:(溜息)もういい。昔の、ことだし 完奈:それがさぁ、そうでもないんだよねぇ 毬奈:どういう意味よ 完奈:お姉ちゃんさぁ、司くんに飽きられてるんじゃない? 毬奈:そんなわけないじゃない 完奈:お姉ちゃんとデート中なのに、お願いしたら完奈に会いに来てくれたのに? 毬奈:……そんなことで動揺するとでも思った? 完奈:じゃぁ、もし本当だったらさ、他の元カレみたいに、完奈がもらってもいいよね? 毬奈:勝手にしたら?そんなこと、絶対にないから 完奈:ちゃんと聞いたからね 毬奈:好きにしたらいいでしょ 完奈:声、震えてるよ?強がっちゃってさ 毬奈:怒りで震えてんのよ! 完奈:きゃーこわーい(棒読み) 完奈:安心してね?幸せになるから、お姉ちゃんのぶんまで 毬奈:あっそ 本当くだらない 完奈:どこに行ったかはもういいの? 毬奈:明日も早いしあんたに構ってても時間の無駄だからもういいわ 毬奈:結婚式に花嫁が遅刻なんてできないし 毬奈:おやすみ 完奈:ふーん おやすみ~ 完奈:あした、楽しみだね☆ 0:【SE】電話の音 完奈:あ、もしもし、司くん? 司:……完奈ちゃんか 完奈:私じゃ不満なの? 司:い、いや そんなことないよ!電話、ありがとう 司:どうしたんだい?こんな時間に 完奈:明日ね、結婚するのは私だから 司:どういう冗談だ? 完奈:冗談はどっち?今日、見たでしょ? 司:ぁ…… 完奈:責任、取ってくれるよね? 司:(諦めたように)……あぁ 完奈:そういうことだから、明日ちゃんと起きて迎えに来てね 司:わかった 完奈:じゃぁね~ 0:結婚式場 控室 毬奈:っていうことが昨日あったんですよ 雅美:やだ~流石に結婚式前日に花婿連れまわすなんて信じらんな~い! 毬奈:本当信じられないですよね 雅美:でも、ほら毬奈ちゃん 雅美:もしかしたら妹ちゃんと旦那様から毬奈ちゃんにサプライズプレゼントとかがあるかもしれないじゃない? 毬奈:サプライズ? 雅美:よくあるじゃない「お姉ちゃん今までありがとう!」みたいなやつ 毬奈:うーん、完奈がそんなことするタイプかな? 雅美:とにかく、そんなことは忘れて今日を楽しみましょ!毬奈ちゃん主役なんだから! 毬奈:……そうですね 雅美:それにしてもそのドレス本当に綺麗ね~すごく似合ってるわよ 毬奈:ありがとうございます 毬奈:マーメイドタイプのも素敵で迷ったんですけど、やっぱりドレスはふわっとしたのかなって! 雅美:うんうん、とっても素敵! 0:【SE】ざわざわとした声 雅美:あら、なんか外が騒がしいわね 雅美:お父さんたちかしら、私見てくるわ 毬奈:雅美さん、すみません 0:控室前 完奈:だから、大丈夫ですって! 完奈:本人に確認してくださいよぉ! 完奈:お姉ちゃんもういるんでしょ? 0:控室内 毬奈:今の声、まさか完奈(かんな)? 雅美:もうすぐお式なのに本当騒がしいわね 0:【SE】ドアの音 雅美:(ドアを開ける)どうしたんですか? 完奈:なんなのよあんた!早くお姉ちゃん出して! 雅美:あんた…完奈ちゃんね 完奈:あんた誰よ! 雅美:今は貴女のお姉ちゃんはお式の準備で忙しいの。わかるでしょ? 毬奈:通していいですよ。多分その子絶対引かないので…… 0:控室内   完奈:やっほーおねえちゃーん 毬奈:式場の人とかみんなに迷惑かけないで 毬奈:で?なに?私、時間ないんだけど 完奈:大丈夫大丈夫!すぐに終わるからさ 毬奈:なら、いいけど、何? 完奈:うん!ほら、入りなよ 毬奈:あんた勝手に誰つれてきたの? 0:【SE】ドアの音 司:し、失礼します 毬奈:司? 雅美:ちょっとやだ、彼ぴっぴ? 雅美:結婚式の前に新婦の姿を見に来るのはマナー違反じゃないの 雅美:縁起が悪いから戻んなさいよ 司:すみません……でも、毬奈に大事な話があるんです 雅美:だからって 毬奈:(被せる)大丈夫ですよ、雅美さん 雅美:妹さんと一緒にこんなことするなんて、よっぽど「大事な用事」なのよね? 毬奈:完奈がまた何かしたの?本当にごめんね…… 司:ちがうんだ 毬奈:え?なにが違うの? 完奈:あ~ぁ、おねーちゃんひどいなぁ、すぐに私のせいにしてさ 毬奈:じゃぁどうしたのよ!わざわざ式の前に邪魔しに来て 毬奈:あんたには常識ってものがないの? 完奈:常識があるから先に来てあげたんだよ☆ 毬奈:何を言ってるの? 完奈:えへへ 私達ね、結婚します 毬奈:え?(同時だが揃わなくていい) 雅美:は?(同時だが揃わなくていい) 完奈:だからぁ、完奈と司くんが、結婚するの 雅美:なんで? 完奈:愛し合ってるからかな? 毬奈:なに、これ、どっきり? 司:ちがうんだ 雅美:おめでたいお式の日にたちの悪い冗談なんて辞めて頂戴! 完奈:冗談じゃないよ? 毬奈:どういうことなの 完奈:ねぇ、お姉ちゃん昨日話したじゃん? 毬奈:昨日…… 完奈:忘れちゃったのかな? 司:ごめん、毬奈 毬奈:本当、なの? 司:ごめん 完奈:うふふ、ここにね(お腹をさする)司くんとの愛が詰まってるの 毬奈:え? 雅美:愛? 完奈:察しが悪いなぁ 完奈:だからね、できちゃったんだぁ 司:…… 完奈:三ヵ月なの♡ 司:俺は、完奈ちゃんに責任をとらなきゃ、ならない 毬奈:まって、ちょっとまってよ!三ヵ月ってどういうこと? 毬奈:そんなに前から貴方たち…… 完奈:半年くらい前かなぁ 雅美:貴女の勘違いなんじゃないの? 完奈:ちがうよ?昨日病院に行ってきたんだもん 毬奈:司、本当なの? 司:昨日も、呼び出されて、病院の前に来いって言われて、行ったんだ 毬奈:びょう、いん? 司:着いたら、病院から出てきた完奈ちゃんが、お腹をさすりがなら……できちゃったって 雅美:あんた、毬奈ちゃんがいながら心当たりがあるような事したってこと? 司:すみません 毬奈:なんで?なんで私にプロポーズしたの? 毬奈:プロポーズしてくれたのは、一年前でしょ? 毬奈:その半年後には妹に手を出して、寝たって言うの? 司:そんなつもりなんてなかったんだ! 司:あの日、完奈ちゃんが「お姉ちゃんと喧嘩して家を飛び出してきたって言うから、家に 雅美:家にいれたの? 司:眠れないからって、酒を、飲んで…そのあとは記憶がないんだ 完奈:司君ってばひどいなぁ。お姉ちゃんよりイイって、あんなに愛してくれたのに 司:(言葉にならない沈黙) 毬奈:なんで、言ってくれなかったの 司:こんなこと言えるわけないじゃないか! 毬奈:この半年っ!どんな思いで今日の準備してきたのよ!! 司:毬奈と婚約の話がきちんと進んで結婚すれば、完奈ちゃんが諦めてくれると思ったんだ 毬奈:なによそれ!じゃぁなんで今になってこんなことになってんのよ 完奈:ふふっ 毬奈:あんた、何で笑ってんのよ! 完奈:昨日ちゃんとお姉ちゃんに聞いたよね、覚えてる? 毬奈:まさか 完奈:司くんもらっていい?って聞いたよね(楽しそうに) 毬奈:それは…… 完奈:そうしたらお姉ちゃん、『勝手にしたら』『好きにしたらいいでしょ』って、言ったよね? 毬奈:言葉の、あやで…… 司:『勝手にしたら』? 毬奈:ちがっちがうの、これは 雅美:毬奈ちゃん 毬奈:だって、だってまさか 毬奈:なんで?なんでなのよ 司:毬奈 毬奈:司、貴方どんな思いで式の準備をしてたの? 毬奈:席次表一緒に作ったよね!引き出物も一緒に選んだよね? 毬奈:なんで毎回毎回、のこのこと呼び出しに応じたりしたのよ! 毬奈:ねぇ! 司:仕方なかったんだ 司:行かなきゃ、君に全部言うって完奈ちゃんが言うから 雅美:最初から婚約者以外の女を家に入れるのが間違いなのよ 司:毬奈、君は、俺が居なくても大丈夫だよな 司:『勝手にしたら』って、言ったんだよな 司:俺を必要としてくれるのは、完奈ちゃんだけ、なんだ 毬奈:そんなことないっ! 完奈:うふふっお姉ちゃんじゃ司くんを満足させてあげられなかったんだよ 雅美:ちょっとあんた! 完奈:いい加減に現実を見て、認めたら?私のほうが、イイってさ!顔も、アッチもね! 司:ごめん 完奈:とにかくね、司くんは完奈のだよ 完奈:私達このまま結婚するから、式も貰うね 雅美:あんた何言ってるの? 完奈:うるさいなぁ、部外者は黙っててよ 0:【間】 毬奈:(溜息)もういいや 雅美:毬奈ちゃん? 毬奈:疲れちゃった 司:毬奈 毬奈:だって、半年以上騙されててさ、何年も付き合ったのに、たった一年浮気した妹のほうがよくて 毬奈:しかも妹のことも抱いてたんでしょ?信じらんないよ 毬奈:信頼できなくなってしまったら、もうどうしようもないじゃない 司:ごめん、でも毬奈のこともちゃんと好きだったんだ!信じてくれ 毬奈:「ちゃんと」って何 司:ごめん、でも本当に好きだったんだよ 毬奈:「好きだった」かぁ、もう過去形なんだね 司:ごめん 毬奈:もう黙っててくれる? 司:ごめん、毬奈 毬奈:聴きたくない 毬奈:あんたの声なんて聴きたくない 毬奈:どうせみんな、完奈の事が好きになるのよ 完奈:ごめんね~可愛くて☆ 雅美:あんた 完奈:(無視して)ね、お式、もらっていいよね? 毬奈:好きにしたら 完奈:やったー!ありがとうお姉ちゃん!たまには役に立つね!じゃぁ、話はそれだけだから帰っていいよ 雅美:あんたね!常識ってもんがあるでしょ! 毬奈:もうわかったから、完奈と司は早く出てって。着替える。 完奈:はーい!じゃぁ司くん、スタッフさんにお話しにいこう! 完奈:新婦の名前変えてもらわなきゃ♡ 0:二人退室 雅美:はぁ、本当に信じらんないわ 毬奈:雅美さんが心配してくれたのに、やっぱり、こうなっちゃった。 雅美:でも、よかったじゃない 雅美:あんな馬鹿と結婚しなくて済んだんだから!ね! 毬奈:それは、そうですけど、ちょっと、キツいですね 雅美:大丈夫、ああいうやつは絶対バチがあたるから 毬奈:そう、ですよね 毬奈:あーあ、やっと結婚できると思ったのにな 雅美:まぁ、なんだかんだ元カレたちも、ねぇ 毬奈:悪かったですね!ダメ男製造機で!もうっ 雅美:今度知り合いのイイコ、紹介しようか? 毬奈:……いろいろ落ち着いたらお願いしようかな 毬奈:あー!もう!このあとお父さんとお母さん、その他諸々への説明がクソめんどくさい! 雅美:全部終わったらさ、どうせ一週間有給だったんだし、傷心旅行なんつってどっか行きましょ! 雅美:お店の子達も誘っとくからさ! 毬奈:旅行かぁ 雅美:絶対皆ついてくるから、バー・ゴールデンベアの社員旅行ってことにして、みんなでワイワイしましょ! 雅美:こういう時はパーッと騒がないとね! 0:数か月後 0:【SE】電話の音 雅美:もしもし~ 毬奈:雅美さん!こんにちは 雅美:聞いたわよ~紹介した翔くんといい感じらしいじゃない 毬奈:はい、おかげ様で 雅美:同業種だし話も合うでしょ?うふふ、よかったわぁ 毬奈:ありがとうございます、仕事の話も相談に乗ってもらえたりするので、すごく心強いです 雅美:それにしても引っ越しちゃうからなかなか会えなくて寂しいわ~ 毬奈:時々顔出しに行ってるじゃないですか 雅美:そうだけどぉ 毬奈:完奈がああなった以上一緒には暮らせなかったですし 毬奈:父も母も賛成してくれてお金も出してくれたので有難く引っ越したんですよ 雅美:それにしても、あの女妊娠したって嘘だったんでしょ? 毬奈:流産したって言い張ってるらしいですけどね 雅美:女の敵だわ 毬奈:もう親に何かあった時くらいしか会うつもりはないから、いいんです 雅美:それがいいと思うわ 雅美:本当あいつ、なんであんなに姉に執着するのかしら 毬奈:なんででしょうね、姉だから、なんでしょうか 毬奈:小さい頃からずっとそう 服も、玩具も、全部取られてきたから 雅美:なんだか怖いわよね 雅美:お姉ちゃんのものも全部欲しいだなんて強欲な娘ね 毬奈:でも、住所も教えてないし、スマホも変えたからきっと大丈夫です 毬奈:親に電話するときも公衆電話からかけることにしたんです 雅美:ご両親にも教えてないの?思い切ったわねぇ 毬奈:私の住所が完奈に知られたらまた付き纏ってくるかもしれませんし、念には念をいれようって決まったんです。 毬奈:母が結婚式の件で気味悪がっちゃって、完奈も家から出したのに、それでも時々実家に来るらしいんですよ 毬奈:あぁいう風に育ててしまった罪悪感から無下にもできないみたいで…… 雅美:そうなのね 毬奈:それに、あの後「流産したのは司のせいだ」とか言って司とも別れたみたいなんですよ 毬奈:慰謝料も何故か完奈のほうが貰ったみたいで 雅美:こっわ、マジでホラーね 雅美:それだけ後先考えないで執着してくるなら、そのほうが安心かもしれないわね 毬奈:こっちからかけないと話せないので母は寂しいらしいですけどね 雅美:私も、毬奈ちゃんに会う回数減っちゃって寂しいのよ? 毬奈:ふふっ、来月あたりまた遊びに行きますから、お店の皆にもよろしく伝えてください 雅美:はいは~い 0:【SE】メールの着信音 毬奈:ん、メール?誰だろう 完奈:やっほ~お姉ちゃん、元気?スマホ変えたんなら完奈にも教えてくれないと困るよぉ 完奈:司くんのことだけどさぁ、もういい加減忘れなよ 完奈:浮気しちゃうクズ男だって分かったんだから、完奈に感謝してね! 完奈:それにしても、御曹司の司君と結婚したら完奈は社長夫人になれると思ったのに、 完奈:あの後司くん解雇されちゃってさぁ!!完奈も被害者なんだよぉ?可哀想でしょ? 完奈:お姉ちゃんなんだから、傷心の妹に優しくしてよね! 完奈:ねぇねぇ、お姉ちゃん!今、別の人とお付き合いしてるんでしょ? 完奈:彼氏さん、実業家なんだって?お姉ちゃんばっかりずるいなぁ 完奈:完奈が社長夫人になれなかったのも、司くんがニートになったのもお姉ちゃんのせいなんだから 完奈:お姉ちゃんだけ幸せになんてさせないよ?わかったら、早く帰ってきてね? 完奈:お父さんとお母さんも、お姉ちゃんと会いたがってるよ☆ 完奈:それで、戻ってきたら慰謝料、完奈にちゃんと払ってね! 完奈:社長夫人になるはずだった分、ちゃんと完奈のこと幸せにしてくれないと困っちゃうもん! 完奈:そうだなぁ、お付き合いしてる人大金持ちみたいだしぃ、一千万くらいで許してあげる! 完奈:住所、教えてね?可愛い妹が直々に迎えにいくからね☆ 0:お読みいただきありがとうございました