台本概要
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タイトル | finding the reason 護るべきもの |
---|---|
作者名 | ヒロタカノ (@hiro_takano) |
ジャンル | ファンタジー |
演者人数 | 6人用台本(男4、女1、不問1) ※兼役あり |
時間 | 30 分 |
台本使用規定 | 台本説明欄参照 |
説明 |
銃と剣とバイクの無法地帯 崩壊した未来の地球の砂漠の大地のお話 ---------------------------------------------- どこかなにかで使っていただけたら幸いです。 「使ったよ」とでもコメントいただけたらありがたいです。 いつかどこかで誰かのお役に立ちますように。 109 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
ヤマト | 男 | 121 | 主人公。賞金稼ぎ。 仕事の途中でミヤという娘を拾い共に行動する。 仕事中は真っ黒い服に身をつつみ、相手の冥福を祈りこなす。 その姿から、盗賊達から「黒装束のヤマト」と恐れられている。 変なところで言葉使いに厳しい。(自分のことは棚にあげて。) |
ミヤ | 女 | 62 | 盗賊団に村を襲われ、親を殺されたところにヤマトに拾われる。 明るく元気なのが取り柄。言葉使いが荒いのが玉にキズ。 |
マスター | 不問 | 12 | 表向きは酒場のマスター。裏向は賞金稼ぎに仕事を紹介する仲介屋。 ほっほと笑うのは貫禄を出そうとしているから。意外と実は若い。 |
ベルガ | 男 | 35 | 通称「灰色熊のベルガ」。賞金稼ぎ。金のためには依頼を選ばない極悪人。 つねに強いものを倒したいと飢えている。巨漢で素手で相手を殴り倒す。 |
親父 | 男 | 12 | ヤマトの父親代わり。幼いころのヤマトを連れて旅をしていた。 有名な賞金稼ぎだったが、ヤマトを護るために命を失う。 |
ボス | 男 | 39 | 砂盗賊団のリーダー。卑怯で姑息な策を好む。 |
ヤマト(子) | 不問 | 11 | 回想にて子役時代。ミヤ役と兼役するのが丁度よいかもしれません。 |
子分1~4 | 不問 | - | ボスの子分たち(前半のみ出演) 兼役可 |
子分5~6 | 不問 | - | ボスの子分たち(後半のみ出演)1~4よりセリフ多め 兼役可 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
:
〇:はじめに。
ヤマト:「M(ある、夜のことだった。荒れ果てた荒野に、一人の少女がいた。)」
ヤマト:「おい、そこのガキ。なにやってんだ?」
ミヤ:「……座ってんだよ。見てわからないの?」
ヤマト:「見りゃわかる。そうじゃねぇよ。なんでそんなとこにいるんだって聞いてんだ。あぶねえだろ?早くうちへ帰れ。」
ミヤ:「…帰れない。」
ヤマト:「…なに?帰れないって、お前、家は?」
0:燃え盛る音とバイクの音
ミヤ:「あのへん、火の手が上がってるからよく見えるでしょ?」
ヤマト:「…親はどうした。」
ミヤ:「あたしを逃がそうと飛び出していったきり。今頃切り刻まれてバーベーキューにでもなってんじゃない?」
ヤマト:「…」
ミヤ:「…盗賊団だってさ、ここ物騒な世の中になったもんだね。」
ヤマト:「…。」
ヤマト:「M(何もない荒野に一人の少女。弱いものは死に、強いものだけが生き残っていくのがこの世界のルール。だが…俺はほっておくことができなかった。…思えばあれが、俺の運命を変えるきっかけだったのかもしれない…。)」
〇バトル
0:ヒュウウウウ。
0:ブォンブォンブォン
子分1:「うぉおおおお。」
子分2:「死ねえ!賞金稼ぎぃ!」
ヤマト:「フン!」
0:キィン、ザシュ!
子分1:「ぐああ。」
子分2:「ぎええ…」
0:ドサッ!ドサッ
0:カチャ(銃をかまえて)
子分3:「このハエエナ野郎!よくも!」
0:ダンダン(発砲音)
子分3:「う…。」
0:ドサ
ヤマト:「おせえよ。構えたらさっさと撃ちな。」
子分4:「つ、つええ…こいつ、化け物だ。」
ヤマト:「おい、お前。」
子分4:「ひ、ひいっ!」
ヤマト:「ひい、じゃねぇ。返事は「はい」だろ?行儀がなってねぇな。」
子分4:「は、はひ」
0:ガサッと紙を突き出すヤマト
ヤマト:「おい。お前らのボスはこの絵の男か?」
子分4:「は?」
ヤマト:「どうなんだって聞いてるんだ?お前らのボスはこの男か?」
子分4:「ち、違う。」
ヤマト:「あ?『違う』、だ?」
子分4:「ちちち、違いますぅ!」
ヤマト:「ちっ、また外れかよ。おーい、ミヤ!帰るぞ!…ミヤ!?」
0:ザッ(足音)
ボス:「っとお、動くな。動くと撃つぞ。…お前じゃなくてこのガキだがな。こいつの頭がパーンとなるのが嫌なら動くなよ」
ミヤ:「ヤマト…その、わるい。」
ヤマト:「…あ?」
ミヤ:「『ごめんなさい!』…だって、ヤマトがいけないんだぞ?人影を見つけるなりとっとと先いっちゃうんだもん。」
ヤマト:「隠れてみてろっていっただろうが?約束まもれないないんなら次から仕事に連れていかねえぞ?」
ミヤ:「な、なにをー!」
0:ガチャ(銃を構える)
ボス:「おっと、痴話喧嘩は後にしてもらおうか。…さて、よくも俺の子分をやってくれたな、どう落とし前をつけてくれるんだ?」
ヤマト:「ってことは、お前がボスだな。」
ボス:「おお、そうだぜ。何をかくそう俺こそが泣く子もだまる…」
ヤマト:「なぁミヤ。お前の探してるやつはこいつか?」
ミヤ:「…違う。」
ヤマト:「なんだよ、どっちも外れかよ。」
0:ガチャ(銃をさらに構えて)
ボス:「人の話聞けよ!!… なんでガキなんか連れてるか知らねぇがよ?お前、間抜けにもほどがあるぜ!?」
ヤマト:「…おい、お前。」
ボス:「なんだ?」
ヤマト:「ズボンのチャックが開いてるぞ?」
ボス:「えっ?マジで?は、はずかちぃー」
0:タッ(踏み込んで)
0:バキッ(ボスを殴る)
ボス:「ぐはぁ!」
0:ドサ(倒れる)
ヤマト:「うそだよ。」
ボス:「この!ひ、ひきょうだぞ。」
0:ガチャ(銃を構えて)
ヤマト:「小娘を人質にとるのとどっちが卑怯なんだ?あ!?」
ボス:「ひ、ひい」
ヤマト:「さっさと失せろ、今度見つけたら頭ふっとばすからな。」
ボス:「ひぃいい、た、助けてくれぇ!」
0:ブォンブォン、ブロロロロー(車に乗って去るボス)
ヤマト:「…ふん。」
〇:マスターの酒場
0:ガヤガヤ(居酒屋のガヤ)
0:ラジオ放送が流れる。
ミヤ:「だからさ、さっきから何度もわるいって、」
ヤマト:「あ?」
ミヤ:「『ごめんなさい』って言ってるでしょ?」
ヤマト:「俺はあの時、隠れてろいったんだぞ。」
ミヤ:「だって!…待ってるだけじゃ退屈なんだもん…。」
ヤマト:「退屈…だ?こっちは命のやりとりしてんだぞ!?ただでさえ無理に連れてやってんだ、ちったあ大人しくしてろ!」
ミヤ:「な、なにさ!偉そうに!」
0:コトン(コップを置く)
マスター:「おーおー、やってるねぇ。でも、こないだみたいにテーブルひっくり返すのは勘弁しておくれよ。…はいよ、ミヤちゃんも。」
0:コトン(コップを置く)
ミヤ:「あ、悪いね、マスター」
ヤマト:「『悪いね』?」
ミヤ:「ありがとう、マスターさん。」
ヤマト:「行儀、返事、挨拶!」
ミヤ:「めんどくさい」
ヤマト:「あ!?」
マスター:「ほっほ。…で、ヤマト。賞金首のほうはどうだった?」
ヤマト:「あ?小物すぎて首とる気も起きなかった。リリースだよリリース。」
マスター:「ほっほ、当たるもはっけ当たらぬもはっけさ。」
ヤマト:「…最近ハズれのほうが多くないか?…こちとら、ただえさえ役にたたないお荷物担いでるのに…商売上がったりだ。」
ミヤ:「だから、前からあたしにも銃の使い方の教えてっていってるじゃない?」
ヤマト:「無理だ。」
ミヤ:「そんなのやってみないとわからないじゃない?」
ヤマト:「その棒切れの二の腕をみりゃわかる。それにガキには10年早い。」
ミヤ:「なにさ、いつもいつもガキ扱いしやがってー!」
ヤマト:「そのガキみたいな言葉使いをするガキのどこがガキじゃないって?それに格好からして立派なガキだろうが?」
ミヤ:「なにをー!?そっちこそぉ!いつも真っ黒な服着てー。熱くないのー!?」
ヤマト:「これは俺のポリシーなんだよ。相手の冥福を祈って仕事するってな。それに俺が言ってるのは中身だよ、中身。ちんちくりん。」
ミヤ:「(せいいっぱい色っぽく)あら、見てくれだけで判断するなんて器が小さいこと。あなた、このレディの良さがわからなくてかわいそうねぇ。」
ヤマト:「…出るとこ出てないくせによく言うよ。つっぱり棒」
0:ガタン
ミヤ:「が!人の気にしてることを!もういいよ!いいよーだ。ヤマトのロクでなし人でなし甲斐性なしのオタンコナス………バーーーーカ!!!、べー!」
0:バタン
ヤマト:「あいつ…相変わらずボキャブラリー少ないのな…。」
マスター:「ほっほ。いやいや、元気なことだ。」
ヤマト:「マスター、今度はちゃんとテーブル抑えてといてやったぞ。…あいつめ、ひっくり返せないとわかったら、悪口たっぷり投げて出て行きやがった。」
マスター:「ほっほ。…それにしてもおまえさん。レディに向かってあれはちと失礼じゃないか?」
ヤマト:「…あれのどこがレディだよ。ったく、毎度毎度キャンキャン吠えやがって。こんなことなら拾うんじゃなかったぜ。仕事の邪魔だ。」
マスター:「そうだな。…正直、お前さんにしては珍しいと思ったよ。孤独を好み、賞金首にしか興味がないお前さんが、まさか孤児をひろってくるなんて。うちの連中も、あの一匹狼が子連れ狼になったって驚いたものさ。」
ヤマト:「…ふん。」
マスター:「なぁ、前々から聞きたかったんだが。どうしてあの子を育てる気になったんだい?なにか思うところがあってのことか?」
ヤマト:「…ほっとけなかったんだよ。」
マスター:「…は?」
ヤマト:「ああ、どうしてだろうな。どうしてあんなのを拾っちまったんだか?マスター、勘定たのむわ。」
〇:ボスのアジト
0:ブロロロ…(車)
子分5:「あっ、ボスが帰ってきたぞ!」
子分6:「ほんとだ、でもなんで独りなんだ?おーい!ボスー!」
0:キィ(停車)
子分5:「ボス!」
ボス:「ひ、ひぃひぃ。…み、水をくれ!……ぐっぐっ、ぷはぁ!」
子分6:「ボスっ!ボスどうしやした?いったいなにがあったんで?他の連中はどこに?」
ボス:「…みんなやられちまったよ。」
子分6:「え?」
0:ダン(叩く)
ボス:「ち、ちくしょう!あの野郎!俺様をこけにしやがって!ただじゃおかねぇ!」
子分6「ボ、ボス?」
ボス:「おい、通信機もってこい。ヤツを呼び出すぞ!それと手のあいてるやつ片っ端から呼んでこい!!」
〇:夢(回想)
0:パチパチパチ(焚き火)
ヤマト(子):「父さん、父さんしっかりしてよ!」
親父:「ヤマト…無事か?無事なら…うっ!」
ヤマト(子):「父さん、しっかりして!父さん!」
親父:「っく。しくじっちまった。今回の仕事は無理を承知だったが…ザマあねえな…。」
ヤマト(子):「父さん!待ってて!今血を止めるから!」
親父:「いや…もう無駄だ。こりゃ、たすからねぇ…。へっ、賞金稼ぎを長くやってるとよ。死に時ってものがわかってくるのさ。」
ヤマト(子):「いやだよ、そんなの嫌だよ!父さん、父さん!」
親父:「ビービー泣くな!!男だろ!?」
ヤマト(子):「…。」
親父:「…良い子だ。わかればいい。」
ヤマト(子):「…ねぇ、どうして僕を拾ったの?」
親父:「…あ?」
ヤマト(子):「僕なんか拾わなければ…こんな無理しないですんだんだ。父さんは強いのに…独りでも生きていける人なのに。…どうして?」
親父:「さぁな…どうしてだろうな。…ほっとけなかった…からかな?」
ヤマト(子):「…え?」
親父:「ヤマトな?…俺は思ったんだよ。…力だけが強さじゃないんじゃないかって。力だけじゃ強くはなれねぇ。…だからお前を拾ったのさ。」
ヤマト(子):「…どういうこと?」
親父:「おまえにもわかるさ…。一人前になったら…きっとな。」
ヤマト(子):「…。」
親父:「…へ。半端ものの俺だったが…最後には人の役に…立てた…か…な。…ヤマト、お前はもう一人で生きていけるよな?…俺の分まで、ちゃんと生きろ…よ…。」
ヤマト(子):「…!?父さん、とおさーん!!!」
☆宿
0:パチパチパチ(暖炉の火)
ヤマト:「…ん?夢か…嫌なもんみちまったな。」
:
ヤマト:「M(親父は…腕利きで有名な賞金稼ぎだった。独りで動くことが好きで、どんな危険な仕事も独りでこなしてきた。賞金首はおろか、同業者すら震えあがるほどの最強の賞金稼ぎだった。…だが、ある日、親父は俺を拾った。砂しかないこの世界、二人分の食いぶちを稼ぐほど甘い世界じゃない。だから親父は無茶をした。…何故か)」
:
ヤマト:「俺もまだ一人前じゃないってことかよ…。」
0:ガチャ(ドアを開ける)
マスター:「おおい!ヤマト大変だ!」
ヤマト:「…なんだよ。人が気持ち良く寝てるってのによ。」
マスター:「のんきに寝てる場合じゃないぞ!…って、おまえさん目が赤いな…どうした?」
ヤマト:「うるせえよ。寝起きだよ寝起き。っで、何が大変なんだよ?」
マスター:「とと、そうだった。ヤマトこれを見てくれ!」
0:カサッ(紙)
ヤマト:「……これは?」
マスター:「このメモ、うちの店のドアに挟んであったんだよ。お前さんが逃がしたやつの仕業だろ?」
ヤマト:「…ミヤ。」
〇:ボスのアジト
0:チャリチャリ(鎖の音)
子分5:「…う」
子分6:「で、でかい…」
子分5:「あいつがボスのやとった用心棒か?」
子分6:「ああ、なんでも『灰色熊のベルガ』って」
子分5:「は、『灰色熊のベルガ』!?」
子分6:「知ってるのか?」
子分5:「知ってるなんてもんじゃねぇ!すげぇ有名な賞金稼ぎだよ。」
子分6:「賞金稼ぎ!?」
子分5:「ああ、賞金稼ぎっていってもな。金さえ払えばなんだってする極悪人さ。仕事のやり方も残酷でよ。素手で相手を殺したあと、気のすむまで殴り倒すんだとよ。まるで猛獣が餌を食うように。ひとたび暴れたら手がつけられない。それでついたあだ名が灰色熊っていう…。」
ベルガ:「…おい。」
子分5:「は、はひ!なんでしょうベルガさん!」
ベルガ:「依頼主はどこだ?」
子分5:「い、依頼主…ボ、ボスのことですかい?ボスなら今、地下の牢屋にいますが…。」
ベルガ:「…いつまで待たせる?、早く喰わせろ。生きのいい人間の血を!肉を!!」
子分5:「ひ。」
ベルガ:「う…。」
子分5:「う?」
ベルガ:「うぉおおおお!!!!!うぉおおおおお!!!喰わせろ、早く喰わせろーーーー!!!血を!肉をーーーー!!」
子分5:「ひぃいい、ボス、ボスゥ!はやくきてーー!(泣)」
〇:アジトの牢屋
0:ピチョン(水滴)
ミヤ:「…う。」
0:ピチョンピチョン(水滴)
ミヤ:「う、…ここは。」
ボス:「気がついたかい?お嬢さん。」
ミヤ:「!…お前は!」
0:チャリ(鎖)
ボス:「おっと。動くなよ、せっかくの玉のようなお肌に手錠の後がついちまうぜ?それとも、痛いのが好みかな?」
ミヤ:「…なにを!」
ボス:「まぁ、ゆっくりしていけよ。もうすぐお前の連れに会わせてやるからよ、死体でな。」
ミヤ:「…なに?」
ボス:「用心棒に賞金稼ぎを雇ったんだ。『灰色熊のベルガ』って知ってるか?同業者でも有名な強えやつさ。」
ミヤ:「…。」
ボス:「目には目を…賞金稼ぎには賞金稼ぎささ!」
ミヤ:「…ふ、ふん。あんたも馬鹿だね。」
ボス:「なに?」
ミヤ:「そんな強いやつを雇ったんならアタシは用済みじゃないか?それにこんなガキを捕まえてどうするつもりだい?こんなガキの一人や二人、商人に売ったって一銭にもならないさ。」
ボス:「それはどうかな?お前を見てピンときた。あいつ…『黒装束のヤマト』だろ?」
ミヤ:「…。」
ボス:「このくそあっつい砂漠で全身真っ黒の装束。そいつに付きまとってキャンキャン吠える子犬。はは、お前のことだ。『黒装束のヤマト』、その一匹狼の賞金稼ぎ、最近子育てに忙しいと聞く。」
ミヤ:「…」
ボス:「まさか灰色熊がやられるとは思わなねぇが無傷では済まないだろう?。策は作るに越したことはねぇ。…ボロボロになったアイツにお前を盾にして頭に一発ズドン!二重構えだ。俺頭良いだろう?ハッハッハ!」
ミヤ:「…。」
ボス:「それから…。お前はひとつ勘違いしてるぞ?」
ミヤ:「…なにさ…?」
ボス:「子犬は、意外と高く売れるんだ。」
ミヤ:「…外道。」
〇:荒野
0:ヒュウウウウ(風)
ヤマト:「遅いな…。呼び出しといて遅刻とは…やっぱりあいつ、行儀がなってないな…。」
0:ヒュウウウウ(風)
ヤマト:「…ミヤ。」
0:ブォンブォンブォン、ブロロロロー。(車)
ボス:「フハハハハ!!待たせたなぁ、賞金稼ぎぃ!!」
ヤマト:「おーう、待ちくたびれたぞー!半殺しじゃすまねぇから念仏となえる準備しとけや!」
ボス:「へっ!減らず口を。ほら!お前の探し物はこれか?」
ヤマト:「…ヤ、ヤマト」
ヤマト:「で、こりもせずそのガキを盾にすると。行儀もなっちゃいないが、頭のネジもいかれてるんじゃないのかぁ!?」
ボス:「ハーハッハ!心配してくれてありがとよ!」
ヤマト:「ったく、そんな小娘捕まえてどうするんだ?出るとこ出てないぺったんガキなんて、二束三文にもなりゃしないだろうよ?」
ミヤ:「…こ、この!一度ならずして二度までも!!」
ヤマト:「ハッハー!そう言ってる間に俺たちのスキうかがってるんだろ?流石は腕利きの賞金稼ぎ、黒装束のヤマト様だなぁ!だがその余裕いつまで持つかな?くくく…残念だがな。お前の相手は俺じゃねぇんだよ!」
0:ザッ(足音)
ベルガ:「…黒装束のヤマトか。お前の名前は知ってるぜ。」
ヤマト:「…!?あんたは!」
ボス:「ハーハッハー!!驚いたか、こいつが俺たちの助っ人だー!」
ヤマト:「…『灰色熊のベルガ』」
ベルガ:「俺の名前を知ってるのか?黒装束のヤマト。そいつはうれしいねぇ。俺もお前を知ってるぜ。賞金稼ぎの間じゃ注目株だからな!喰うには充分な獲物だ!」
ヤマト:「…あんたほどの賞金稼ぎが、何故そんなやつらの味方につく?」
ベルガ:「何故って!?まずは金だ!こいつらは俺を大金で雇った。金さえ持ってればどんなやつでも客だ。それが賞金稼ぎってもんだろ?」
ヤマト:「…。」
ベルガ:「そして、『飢え』だ!」
ヤマト:「…。」
ベルガ:「俺はよ、いつも飢えてるんだよ!このつまらねぇ世の中で俺の飢えを満たすのは血と肉だ!こいつらの周りには活きが良くて上等な獲物が集まるんでな。おかげで餌には不自由しねぇのさ!」」
ヤマト:「…腐れ外道が。」
ベルガ:「んー。これから殺されるやつになんと言われようが痛くもかゆくもないわ!」
ボス:「さぁ、ベルガさん。さっさとあいつをやっちまってくださいよ。」
ベルガ:「そう慌てるな。久々のごちそうだ!存分に喰わせてもらうぞ。お前らこそ、金の用意しておけよ……ハァアア!!」
0:ブンッ、ガキッ(拳をふるう)
ヤマト:「…な、岩を殴って割りやがった。」
ベルガ:「ヌゥン!!」
0:ブンッ(拳をふるう)
ヤマト:「…ち。」
0:カチャ(銃を構える)
ベルガ:「黒装束のヤマトー!!先に言っておくが、俺に銃は通じねぇぜ!」
ヤマト:「…ふん。」
ベルガ:「ものわかりが悪いなぁ、黒装束のヤマト!ドォオオオリィヤアア!!!!」
0:ブン、ブォン、ブン(拳を振るう)
ヤマト:「お前こそ、腕ふりまわすだけじゃ、頭、悪いっぜ!」
0:ダンッ、ダンッ(発砲)
0:キンッ、キン(金属音)
ヤマト:「なっ、腹が銃弾をはじいた。」
ベルガ:「ハハハハハ!!俺はな、体中に鋼の板を仕込んでいるのさ! だから言ったろ!?俺に銃弾はつうじねぇ!!」
ヤマト:「ち。」
ベルガ:「残念だったな、黒装束のヤマトー!オラァ!!!突撃だぁああ!タックルぅ!!!!」
0:ブォン(ヤマトに飛び込むベルガ)
ヤマト:「はやい!?…うぐぁあ。」
0:ザザァ(吹き飛ばされるヤマト)
ミヤ:「ヤ、ヤマト!!」
ヤマト:「かはっ!…ゲホ。」
ベルガ:「…ほう?俺様の突撃をくらって息があるとはな。なかなか歯ごたえがありそうだ…オラァ!」
0:ドコォ!(拳をふるう)
ヤマト:「うぐっ!」
ベルガ:「もういっちょう!」
0:ドコォ!(拳をふるう)
ヤマト:「ぐはぁ!」
0:ドサッ!(飛ばされるヤマト)
ミヤ:「ヤマト、ヤマトぉおおお!!」
ベルガ:「…あんなガキを連れて狩りをするなんてよ、世の中なめられたもんだぜ。所詮この世の中は弱肉強食!弱いものが死に、強いものが生き残るがこの世界のルールだ!あのガキを拾った時点で貴様は負け犬なんだよ!…さて、腹がへったな。次は首の骨をいただくとするか。うまそうな音を鳴らしてくれよ?」
ミヤ:「や、や…やめてぇーー!」
0:ボキボキ(腕を鳴らす)
0:ザッザッザ(足音)
ヤマト:「M(…立て!立てよヤマト!くたばるにはまだ早いぜ?)」
ヤマト:「M(親父のカタキ、見つけてないんだろ?まだくたばるなよ!)」
ヤマト:「M(…だめ、だ…体がうごかねぇ…なんだか気持ちよくなってきた…俺、死ぬのか…な?)」
ヤマト:「M(…まぁ、孤独な俺に…ふさわしい最後…かな。)
ミヤ:「ヤマト、ヤマトぉおおお!!お願い、立って!立って逃げてよぉ!ヤマトォー!!!」
ヤマト:「M(……誰だ…?)」
子分5:「うるせぇガキ!静かにしてろ!
0:パシ(ビンタ)
ミヤ:「んっ!!」
ボス:「おい、あんまり傷つけるなよ!?まだちっちぇけど高く売れるんだからよ!
子分5:「へっへ、わかってますよ、ボス。」
ヤマト:「M(……孤独…俺が?)」
親父:「M(ヤマト…。)」
ヤマト:「M(…とうさん?)」
親父:「M(あの声が聴こえるか?ヤマト。聴こえるなら…立て…立って……護れ!!)
ヤマト:「M(…護る?…俺が?…まも、る?)」
ミヤ:「M(ヤマト…ヤマト…ヤマトー!!)」
ベルガ:「行くぜ…オラァ!!!」
ヤマト:「はっ!?」
ミヤ:「よけてー!」
0:ドスン(地を撃つ拳)
ヤマト:「…か!かはっ!…ゲホッ!ゲホッ!」
ベルガ:「ほう?飛んで逃げたか…こいつは驚いた。まだそんな力が残っていたのか?」
ヤマト:「…あいにくだが…俺にはまだ、きゃんきゃん吠えるワンちゃんの子育てが残っていてね。」
0:カチャ(剣を構える)
ベルガ:「ふん、銃をしまい剣をとったか。だが、そんなものでは俺は斬れんぞ?」
ヤマト:「…やってみなきゃわかんねぇだろ?ほら、早く来いよ。腹減ってるんだろ?」
ベルガ:「言わずともそうしてやるわー!!はぁー!」
0:ブンッ!ドスン!(拳を振るい、空ぶる)
ベルガ:「どうしたぁ!!逃げてばかりでは勝てぬぞー!!!」
ヤマト:「言わずとも!」
0:ブゥン、キィン(剣を振るうがはじかれる)
ベルガ:「効かぬ!無駄無駄無駄ぁあああ!!」
0:ブォン、ブォン(拳をふるうが空振り)
ヤマト:「まだだ…まだ待て。」
ベルガ:「オラオラオアラァ!!」
0:ブォン、ブォン、ブォン(拳をふるうが空振り)
ベルガ:「そろそろしまいだ!!黒装束のヤマトぉ!!!!!突撃いいいいいい!!!」
ヤマト:「そこだぁああああああ!!!」
0:ブシュウ(剣が刺さる)
ベルガ:「がはっ!馬鹿な…腹の鋼板を…貫くなんて!」
ヤマト:「自分から串刺しを望むなんてな。突進しすぎだぜ、イノシシ野郎!」
ベルガ:「う、うををを!黒装束のヤマトををを!」
0:ズボッ(剣を引き抜く)
ベルガ:「が!」
ヤマト:「外は頑丈でも、中身はどうかな?」
0:カチャ(銃を構える)
0:ダン!ダン!ダン!ダン!ダン!(発砲)
ベルガ:「…かは!かは!かは!…」
ヤマト:「あの世の土産に鉛の玉、くれてやる。腹ふくらせて逝けよ?」
ベルガ:「黒装束のヤマトぉ!!くそぉ!食わせろ!!お前を食わせろ、黒装束の!ヤマト」
ヤマト:「あと。それとな」
ベルガ:「黒…装束!のヤマ…」
ヤマト:「実は、その二つ名、気に入ってない」
0:ダン(発砲)
ベルガ:「トぉぉぉ!」
0:ドサッ(倒れる)
0:ザッ(足音)
ヤマト:「…さて、お前らはどうする?」
子分5:「ひ、ひっ!」
0:ザッザッ(近寄る足音)
ヤマト:「俺は構わないぜ?なんだか、まだ全然いけそうだ。」
子分5:「…な、なんだよこいつ!?か、勝てる気がしねぇよぉ…。」
子分6:「こいつ!血だらけじゃないかよ!?ちくしょう、なんなんだよ、あの気迫はなんなんだよぉ!?ボス、ボスぅ!!」
ボス:「…う…う、動くな!それ以上近寄ると こいつの命はないぞ?」
ヤマト:「…。」
0:ザッ(足音)
ボス:「…く、来るなよ!?今度こそこのガキを殺すぞ。いっとくが今度はせこい手は通じねぇからな。さっき、チャックは確認したからよぉ。ハーッハッハ!」
ヤマト:「好都合だ、いいぜ。」
ボス:「…は?」
ヤマト:「撃てよ…。さっさと殺しちまえよ。俺も遠慮なくお前らをぶった斬れるしな。」
0:チャキ(銃を構えて)
ボス:「ひ!?」
ヤマト:「いい加減。子育ても嫌気がさしてきた。ここいらでお前ごとバッサリ断ち斬ってやりたい。そんな気分の日があってもいいだろ?もともとは一匹狼だったのさ。良い記念日だ。さぁ、キッカケをくれよ?」
ボス:「ひひ!?」
ヤマト:「…ただし、プレゼントはいただくぜ?たっぷりとな。最初は右腕。次は左。両足さばいてから、気の済むまでボコって、お前にも鉛玉たらふくくれてやる…さぁ…どうするよ!?」
ボス:「なななっ!」
ヤマト:「頼むよ、俺にバッサリ断ち切らせておくれよ。…カウント、ダウン♪3…2…1…よーい」
ボス:「ドーン!!!!!おたすけぇえええええっ!」
0:ザザザ(足音)
子分5:「…うわああああ!殺されるー!」
子分6:「逃げろー!車、車を出せ!早く!」
0:ブ、ブロロロー(車で立ち去る)
ボス:「お、お前ら!……ま、ま、待ってぇええええー!!!
0:ブロロロロ(車)
ヤマト:「…フン…お前みたいなゴミ野郎、殺す気もおきねぇよ…。」
〇:おしまいに
0:ヒョオオオオオ(風)
ヤマト:「……どうして、俺は立てた?」
ヤマト:「M(俺は命のやりとりで金を稼いでる。だから自分の死に方だってわかってるつもりでいた…。なのに、どうして…。)」
0:ヒョオオオオオ(風)
ミヤ:「M(ヤマト…ヤマトォ!!)」
ヤマト:「…そうか…あの声か…。」
ヤマト:「M(…立ちあがらなければならなかったんだ……それが、理由か。)」
ヤマト:「親父…すこぉしだけ、わかった気がするよ…。」
0:ヒョオオオオオ(風)
ヤマト:「…でだ。…おい、そこに隠れてる子犬さんよぉ?」
ミヤ:「…。」
ヤマト:「どこ行くんだ?勝手にほっつきあるくな!またやっかいに巻き込まれるだろ?とっとと帰るぞ。」
ミヤ:「帰らない。」
ヤマト:「…あ?あのなぁ。見ろって!俺はズタボロなんだぞ?今、立ってるのもやっと!わがまま言うな!さっさと帰えらせろ!」
ミヤ:「もういいよ!もうやめようよ!」
ヤマト:「…あ?」
ミヤ:「私のせいでいつもボロボロになって。もう、充分だよ。…わかってたよ、私、邪魔なんだって。…でも私帰る場所なんてないから、ヤマトに甘えてたんだ。…でも…ごめんなさい。今までありがとう。」
ヤマト:「ふざけんな!!!」
ミヤ:「…。」
ヤマト:「…ふざけんなよ…。」
ミヤ:「…。」
ヤマト:「…これは親父の遺言のひとつだ。『一度拾ったものは責任をもって大事にしろ』ってな。」
ミヤ:「…。」
ヤマト:「それに、俺は死ぬつもりだっだ…もう死んでもいいやと思ってた。なのに立ち上がれた。…どうしてだ?」
ミヤ:「……どうして?」
ヤマト:「……お前がいたからだよ。お前を護るために強くなれんだよ、俺は。」
ミヤ:「…。」
ヤマト:「…だからこれは、俺のためでもあるのさ。ミヤ…お前が一人前になるまで護ってやる。お前を護るためにもっと強くなってやる。だから…だまってついてこい!」
ミヤ:「…」
ヤマト:「…」
ミヤ:「…」
ヤマト:「…」
ミヤ:「きゃは☆」
ヤマト:「あ!?」
ミヤ:「…ねぇ、もう一回言って?」
ヤマト:「……なんで?」
ミヤ:「よく聞こえなかった、もっかい言ってよ?」
ヤマト:「う、うるせー!もういわねぇよ!」
ミヤ:「ねぇねぇ、今のセリフもう一回最初から言ってよ?ねー!」
ヤマト:「いわねぇったらいわねぇ。二度と言わねぇ!!」
ミヤ:「えー?だって、あのヤマトが「お前を護ってやる」だよ?今までそんな優しい言葉かけてくれたことあるー?ねー?」
ヤマト:「あー!もう、うるせー!おいてくからな!」
ミヤ:「…はいっ!33、22、11『だからこれは、俺のためでもあるのさ。』」
ヤマト:「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛やめてぇ!」
ミヤ:「テレちゃって、かわいー!あっ、まってよー!ヤマト、ヤマトー!」
0:ヒョオオオオオ(風)
:
〇:はじめに。
ヤマト:「M(ある、夜のことだった。荒れ果てた荒野に、一人の少女がいた。)」
ヤマト:「おい、そこのガキ。なにやってんだ?」
ミヤ:「……座ってんだよ。見てわからないの?」
ヤマト:「見りゃわかる。そうじゃねぇよ。なんでそんなとこにいるんだって聞いてんだ。あぶねえだろ?早くうちへ帰れ。」
ミヤ:「…帰れない。」
ヤマト:「…なに?帰れないって、お前、家は?」
0:燃え盛る音とバイクの音
ミヤ:「あのへん、火の手が上がってるからよく見えるでしょ?」
ヤマト:「…親はどうした。」
ミヤ:「あたしを逃がそうと飛び出していったきり。今頃切り刻まれてバーベーキューにでもなってんじゃない?」
ヤマト:「…」
ミヤ:「…盗賊団だってさ、ここ物騒な世の中になったもんだね。」
ヤマト:「…。」
ヤマト:「M(何もない荒野に一人の少女。弱いものは死に、強いものだけが生き残っていくのがこの世界のルール。だが…俺はほっておくことができなかった。…思えばあれが、俺の運命を変えるきっかけだったのかもしれない…。)」
〇バトル
0:ヒュウウウウ。
0:ブォンブォンブォン
子分1:「うぉおおおお。」
子分2:「死ねえ!賞金稼ぎぃ!」
ヤマト:「フン!」
0:キィン、ザシュ!
子分1:「ぐああ。」
子分2:「ぎええ…」
0:ドサッ!ドサッ
0:カチャ(銃をかまえて)
子分3:「このハエエナ野郎!よくも!」
0:ダンダン(発砲音)
子分3:「う…。」
0:ドサ
ヤマト:「おせえよ。構えたらさっさと撃ちな。」
子分4:「つ、つええ…こいつ、化け物だ。」
ヤマト:「おい、お前。」
子分4:「ひ、ひいっ!」
ヤマト:「ひい、じゃねぇ。返事は「はい」だろ?行儀がなってねぇな。」
子分4:「は、はひ」
0:ガサッと紙を突き出すヤマト
ヤマト:「おい。お前らのボスはこの絵の男か?」
子分4:「は?」
ヤマト:「どうなんだって聞いてるんだ?お前らのボスはこの男か?」
子分4:「ち、違う。」
ヤマト:「あ?『違う』、だ?」
子分4:「ちちち、違いますぅ!」
ヤマト:「ちっ、また外れかよ。おーい、ミヤ!帰るぞ!…ミヤ!?」
0:ザッ(足音)
ボス:「っとお、動くな。動くと撃つぞ。…お前じゃなくてこのガキだがな。こいつの頭がパーンとなるのが嫌なら動くなよ」
ミヤ:「ヤマト…その、わるい。」
ヤマト:「…あ?」
ミヤ:「『ごめんなさい!』…だって、ヤマトがいけないんだぞ?人影を見つけるなりとっとと先いっちゃうんだもん。」
ヤマト:「隠れてみてろっていっただろうが?約束まもれないないんなら次から仕事に連れていかねえぞ?」
ミヤ:「な、なにをー!」
0:ガチャ(銃を構える)
ボス:「おっと、痴話喧嘩は後にしてもらおうか。…さて、よくも俺の子分をやってくれたな、どう落とし前をつけてくれるんだ?」
ヤマト:「ってことは、お前がボスだな。」
ボス:「おお、そうだぜ。何をかくそう俺こそが泣く子もだまる…」
ヤマト:「なぁミヤ。お前の探してるやつはこいつか?」
ミヤ:「…違う。」
ヤマト:「なんだよ、どっちも外れかよ。」
0:ガチャ(銃をさらに構えて)
ボス:「人の話聞けよ!!… なんでガキなんか連れてるか知らねぇがよ?お前、間抜けにもほどがあるぜ!?」
ヤマト:「…おい、お前。」
ボス:「なんだ?」
ヤマト:「ズボンのチャックが開いてるぞ?」
ボス:「えっ?マジで?は、はずかちぃー」
0:タッ(踏み込んで)
0:バキッ(ボスを殴る)
ボス:「ぐはぁ!」
0:ドサ(倒れる)
ヤマト:「うそだよ。」
ボス:「この!ひ、ひきょうだぞ。」
0:ガチャ(銃を構えて)
ヤマト:「小娘を人質にとるのとどっちが卑怯なんだ?あ!?」
ボス:「ひ、ひい」
ヤマト:「さっさと失せろ、今度見つけたら頭ふっとばすからな。」
ボス:「ひぃいい、た、助けてくれぇ!」
0:ブォンブォン、ブロロロロー(車に乗って去るボス)
ヤマト:「…ふん。」
〇:マスターの酒場
0:ガヤガヤ(居酒屋のガヤ)
0:ラジオ放送が流れる。
ミヤ:「だからさ、さっきから何度もわるいって、」
ヤマト:「あ?」
ミヤ:「『ごめんなさい』って言ってるでしょ?」
ヤマト:「俺はあの時、隠れてろいったんだぞ。」
ミヤ:「だって!…待ってるだけじゃ退屈なんだもん…。」
ヤマト:「退屈…だ?こっちは命のやりとりしてんだぞ!?ただでさえ無理に連れてやってんだ、ちったあ大人しくしてろ!」
ミヤ:「な、なにさ!偉そうに!」
0:コトン(コップを置く)
マスター:「おーおー、やってるねぇ。でも、こないだみたいにテーブルひっくり返すのは勘弁しておくれよ。…はいよ、ミヤちゃんも。」
0:コトン(コップを置く)
ミヤ:「あ、悪いね、マスター」
ヤマト:「『悪いね』?」
ミヤ:「ありがとう、マスターさん。」
ヤマト:「行儀、返事、挨拶!」
ミヤ:「めんどくさい」
ヤマト:「あ!?」
マスター:「ほっほ。…で、ヤマト。賞金首のほうはどうだった?」
ヤマト:「あ?小物すぎて首とる気も起きなかった。リリースだよリリース。」
マスター:「ほっほ、当たるもはっけ当たらぬもはっけさ。」
ヤマト:「…最近ハズれのほうが多くないか?…こちとら、ただえさえ役にたたないお荷物担いでるのに…商売上がったりだ。」
ミヤ:「だから、前からあたしにも銃の使い方の教えてっていってるじゃない?」
ヤマト:「無理だ。」
ミヤ:「そんなのやってみないとわからないじゃない?」
ヤマト:「その棒切れの二の腕をみりゃわかる。それにガキには10年早い。」
ミヤ:「なにさ、いつもいつもガキ扱いしやがってー!」
ヤマト:「そのガキみたいな言葉使いをするガキのどこがガキじゃないって?それに格好からして立派なガキだろうが?」
ミヤ:「なにをー!?そっちこそぉ!いつも真っ黒な服着てー。熱くないのー!?」
ヤマト:「これは俺のポリシーなんだよ。相手の冥福を祈って仕事するってな。それに俺が言ってるのは中身だよ、中身。ちんちくりん。」
ミヤ:「(せいいっぱい色っぽく)あら、見てくれだけで判断するなんて器が小さいこと。あなた、このレディの良さがわからなくてかわいそうねぇ。」
ヤマト:「…出るとこ出てないくせによく言うよ。つっぱり棒」
0:ガタン
ミヤ:「が!人の気にしてることを!もういいよ!いいよーだ。ヤマトのロクでなし人でなし甲斐性なしのオタンコナス………バーーーーカ!!!、べー!」
0:バタン
ヤマト:「あいつ…相変わらずボキャブラリー少ないのな…。」
マスター:「ほっほ。いやいや、元気なことだ。」
ヤマト:「マスター、今度はちゃんとテーブル抑えてといてやったぞ。…あいつめ、ひっくり返せないとわかったら、悪口たっぷり投げて出て行きやがった。」
マスター:「ほっほ。…それにしてもおまえさん。レディに向かってあれはちと失礼じゃないか?」
ヤマト:「…あれのどこがレディだよ。ったく、毎度毎度キャンキャン吠えやがって。こんなことなら拾うんじゃなかったぜ。仕事の邪魔だ。」
マスター:「そうだな。…正直、お前さんにしては珍しいと思ったよ。孤独を好み、賞金首にしか興味がないお前さんが、まさか孤児をひろってくるなんて。うちの連中も、あの一匹狼が子連れ狼になったって驚いたものさ。」
ヤマト:「…ふん。」
マスター:「なぁ、前々から聞きたかったんだが。どうしてあの子を育てる気になったんだい?なにか思うところがあってのことか?」
ヤマト:「…ほっとけなかったんだよ。」
マスター:「…は?」
ヤマト:「ああ、どうしてだろうな。どうしてあんなのを拾っちまったんだか?マスター、勘定たのむわ。」
〇:ボスのアジト
0:ブロロロ…(車)
子分5:「あっ、ボスが帰ってきたぞ!」
子分6:「ほんとだ、でもなんで独りなんだ?おーい!ボスー!」
0:キィ(停車)
子分5:「ボス!」
ボス:「ひ、ひぃひぃ。…み、水をくれ!……ぐっぐっ、ぷはぁ!」
子分6:「ボスっ!ボスどうしやした?いったいなにがあったんで?他の連中はどこに?」
ボス:「…みんなやられちまったよ。」
子分6:「え?」
0:ダン(叩く)
ボス:「ち、ちくしょう!あの野郎!俺様をこけにしやがって!ただじゃおかねぇ!」
子分6「ボ、ボス?」
ボス:「おい、通信機もってこい。ヤツを呼び出すぞ!それと手のあいてるやつ片っ端から呼んでこい!!」
〇:夢(回想)
0:パチパチパチ(焚き火)
ヤマト(子):「父さん、父さんしっかりしてよ!」
親父:「ヤマト…無事か?無事なら…うっ!」
ヤマト(子):「父さん、しっかりして!父さん!」
親父:「っく。しくじっちまった。今回の仕事は無理を承知だったが…ザマあねえな…。」
ヤマト(子):「父さん!待ってて!今血を止めるから!」
親父:「いや…もう無駄だ。こりゃ、たすからねぇ…。へっ、賞金稼ぎを長くやってるとよ。死に時ってものがわかってくるのさ。」
ヤマト(子):「いやだよ、そんなの嫌だよ!父さん、父さん!」
親父:「ビービー泣くな!!男だろ!?」
ヤマト(子):「…。」
親父:「…良い子だ。わかればいい。」
ヤマト(子):「…ねぇ、どうして僕を拾ったの?」
親父:「…あ?」
ヤマト(子):「僕なんか拾わなければ…こんな無理しないですんだんだ。父さんは強いのに…独りでも生きていける人なのに。…どうして?」
親父:「さぁな…どうしてだろうな。…ほっとけなかった…からかな?」
ヤマト(子):「…え?」
親父:「ヤマトな?…俺は思ったんだよ。…力だけが強さじゃないんじゃないかって。力だけじゃ強くはなれねぇ。…だからお前を拾ったのさ。」
ヤマト(子):「…どういうこと?」
親父:「おまえにもわかるさ…。一人前になったら…きっとな。」
ヤマト(子):「…。」
親父:「…へ。半端ものの俺だったが…最後には人の役に…立てた…か…な。…ヤマト、お前はもう一人で生きていけるよな?…俺の分まで、ちゃんと生きろ…よ…。」
ヤマト(子):「…!?父さん、とおさーん!!!」
☆宿
0:パチパチパチ(暖炉の火)
ヤマト:「…ん?夢か…嫌なもんみちまったな。」
:
ヤマト:「M(親父は…腕利きで有名な賞金稼ぎだった。独りで動くことが好きで、どんな危険な仕事も独りでこなしてきた。賞金首はおろか、同業者すら震えあがるほどの最強の賞金稼ぎだった。…だが、ある日、親父は俺を拾った。砂しかないこの世界、二人分の食いぶちを稼ぐほど甘い世界じゃない。だから親父は無茶をした。…何故か)」
:
ヤマト:「俺もまだ一人前じゃないってことかよ…。」
0:ガチャ(ドアを開ける)
マスター:「おおい!ヤマト大変だ!」
ヤマト:「…なんだよ。人が気持ち良く寝てるってのによ。」
マスター:「のんきに寝てる場合じゃないぞ!…って、おまえさん目が赤いな…どうした?」
ヤマト:「うるせえよ。寝起きだよ寝起き。っで、何が大変なんだよ?」
マスター:「とと、そうだった。ヤマトこれを見てくれ!」
0:カサッ(紙)
ヤマト:「……これは?」
マスター:「このメモ、うちの店のドアに挟んであったんだよ。お前さんが逃がしたやつの仕業だろ?」
ヤマト:「…ミヤ。」
〇:ボスのアジト
0:チャリチャリ(鎖の音)
子分5:「…う」
子分6:「で、でかい…」
子分5:「あいつがボスのやとった用心棒か?」
子分6:「ああ、なんでも『灰色熊のベルガ』って」
子分5:「は、『灰色熊のベルガ』!?」
子分6:「知ってるのか?」
子分5:「知ってるなんてもんじゃねぇ!すげぇ有名な賞金稼ぎだよ。」
子分6:「賞金稼ぎ!?」
子分5:「ああ、賞金稼ぎっていってもな。金さえ払えばなんだってする極悪人さ。仕事のやり方も残酷でよ。素手で相手を殺したあと、気のすむまで殴り倒すんだとよ。まるで猛獣が餌を食うように。ひとたび暴れたら手がつけられない。それでついたあだ名が灰色熊っていう…。」
ベルガ:「…おい。」
子分5:「は、はひ!なんでしょうベルガさん!」
ベルガ:「依頼主はどこだ?」
子分5:「い、依頼主…ボ、ボスのことですかい?ボスなら今、地下の牢屋にいますが…。」
ベルガ:「…いつまで待たせる?、早く喰わせろ。生きのいい人間の血を!肉を!!」
子分5:「ひ。」
ベルガ:「う…。」
子分5:「う?」
ベルガ:「うぉおおおお!!!!!うぉおおおおお!!!喰わせろ、早く喰わせろーーーー!!!血を!肉をーーーー!!」
子分5:「ひぃいい、ボス、ボスゥ!はやくきてーー!(泣)」
〇:アジトの牢屋
0:ピチョン(水滴)
ミヤ:「…う。」
0:ピチョンピチョン(水滴)
ミヤ:「う、…ここは。」
ボス:「気がついたかい?お嬢さん。」
ミヤ:「!…お前は!」
0:チャリ(鎖)
ボス:「おっと。動くなよ、せっかくの玉のようなお肌に手錠の後がついちまうぜ?それとも、痛いのが好みかな?」
ミヤ:「…なにを!」
ボス:「まぁ、ゆっくりしていけよ。もうすぐお前の連れに会わせてやるからよ、死体でな。」
ミヤ:「…なに?」
ボス:「用心棒に賞金稼ぎを雇ったんだ。『灰色熊のベルガ』って知ってるか?同業者でも有名な強えやつさ。」
ミヤ:「…。」
ボス:「目には目を…賞金稼ぎには賞金稼ぎささ!」
ミヤ:「…ふ、ふん。あんたも馬鹿だね。」
ボス:「なに?」
ミヤ:「そんな強いやつを雇ったんならアタシは用済みじゃないか?それにこんなガキを捕まえてどうするつもりだい?こんなガキの一人や二人、商人に売ったって一銭にもならないさ。」
ボス:「それはどうかな?お前を見てピンときた。あいつ…『黒装束のヤマト』だろ?」
ミヤ:「…。」
ボス:「このくそあっつい砂漠で全身真っ黒の装束。そいつに付きまとってキャンキャン吠える子犬。はは、お前のことだ。『黒装束のヤマト』、その一匹狼の賞金稼ぎ、最近子育てに忙しいと聞く。」
ミヤ:「…」
ボス:「まさか灰色熊がやられるとは思わなねぇが無傷では済まないだろう?。策は作るに越したことはねぇ。…ボロボロになったアイツにお前を盾にして頭に一発ズドン!二重構えだ。俺頭良いだろう?ハッハッハ!」
ミヤ:「…。」
ボス:「それから…。お前はひとつ勘違いしてるぞ?」
ミヤ:「…なにさ…?」
ボス:「子犬は、意外と高く売れるんだ。」
ミヤ:「…外道。」
〇:荒野
0:ヒュウウウウ(風)
ヤマト:「遅いな…。呼び出しといて遅刻とは…やっぱりあいつ、行儀がなってないな…。」
0:ヒュウウウウ(風)
ヤマト:「…ミヤ。」
0:ブォンブォンブォン、ブロロロロー。(車)
ボス:「フハハハハ!!待たせたなぁ、賞金稼ぎぃ!!」
ヤマト:「おーう、待ちくたびれたぞー!半殺しじゃすまねぇから念仏となえる準備しとけや!」
ボス:「へっ!減らず口を。ほら!お前の探し物はこれか?」
ヤマト:「…ヤ、ヤマト」
ヤマト:「で、こりもせずそのガキを盾にすると。行儀もなっちゃいないが、頭のネジもいかれてるんじゃないのかぁ!?」
ボス:「ハーハッハ!心配してくれてありがとよ!」
ヤマト:「ったく、そんな小娘捕まえてどうするんだ?出るとこ出てないぺったんガキなんて、二束三文にもなりゃしないだろうよ?」
ミヤ:「…こ、この!一度ならずして二度までも!!」
ヤマト:「ハッハー!そう言ってる間に俺たちのスキうかがってるんだろ?流石は腕利きの賞金稼ぎ、黒装束のヤマト様だなぁ!だがその余裕いつまで持つかな?くくく…残念だがな。お前の相手は俺じゃねぇんだよ!」
0:ザッ(足音)
ベルガ:「…黒装束のヤマトか。お前の名前は知ってるぜ。」
ヤマト:「…!?あんたは!」
ボス:「ハーハッハー!!驚いたか、こいつが俺たちの助っ人だー!」
ヤマト:「…『灰色熊のベルガ』」
ベルガ:「俺の名前を知ってるのか?黒装束のヤマト。そいつはうれしいねぇ。俺もお前を知ってるぜ。賞金稼ぎの間じゃ注目株だからな!喰うには充分な獲物だ!」
ヤマト:「…あんたほどの賞金稼ぎが、何故そんなやつらの味方につく?」
ベルガ:「何故って!?まずは金だ!こいつらは俺を大金で雇った。金さえ持ってればどんなやつでも客だ。それが賞金稼ぎってもんだろ?」
ヤマト:「…。」
ベルガ:「そして、『飢え』だ!」
ヤマト:「…。」
ベルガ:「俺はよ、いつも飢えてるんだよ!このつまらねぇ世の中で俺の飢えを満たすのは血と肉だ!こいつらの周りには活きが良くて上等な獲物が集まるんでな。おかげで餌には不自由しねぇのさ!」」
ヤマト:「…腐れ外道が。」
ベルガ:「んー。これから殺されるやつになんと言われようが痛くもかゆくもないわ!」
ボス:「さぁ、ベルガさん。さっさとあいつをやっちまってくださいよ。」
ベルガ:「そう慌てるな。久々のごちそうだ!存分に喰わせてもらうぞ。お前らこそ、金の用意しておけよ……ハァアア!!」
0:ブンッ、ガキッ(拳をふるう)
ヤマト:「…な、岩を殴って割りやがった。」
ベルガ:「ヌゥン!!」
0:ブンッ(拳をふるう)
ヤマト:「…ち。」
0:カチャ(銃を構える)
ベルガ:「黒装束のヤマトー!!先に言っておくが、俺に銃は通じねぇぜ!」
ヤマト:「…ふん。」
ベルガ:「ものわかりが悪いなぁ、黒装束のヤマト!ドォオオオリィヤアア!!!!」
0:ブン、ブォン、ブン(拳を振るう)
ヤマト:「お前こそ、腕ふりまわすだけじゃ、頭、悪いっぜ!」
0:ダンッ、ダンッ(発砲)
0:キンッ、キン(金属音)
ヤマト:「なっ、腹が銃弾をはじいた。」
ベルガ:「ハハハハハ!!俺はな、体中に鋼の板を仕込んでいるのさ! だから言ったろ!?俺に銃弾はつうじねぇ!!」
ヤマト:「ち。」
ベルガ:「残念だったな、黒装束のヤマトー!オラァ!!!突撃だぁああ!タックルぅ!!!!」
0:ブォン(ヤマトに飛び込むベルガ)
ヤマト:「はやい!?…うぐぁあ。」
0:ザザァ(吹き飛ばされるヤマト)
ミヤ:「ヤ、ヤマト!!」
ヤマト:「かはっ!…ゲホ。」
ベルガ:「…ほう?俺様の突撃をくらって息があるとはな。なかなか歯ごたえがありそうだ…オラァ!」
0:ドコォ!(拳をふるう)
ヤマト:「うぐっ!」
ベルガ:「もういっちょう!」
0:ドコォ!(拳をふるう)
ヤマト:「ぐはぁ!」
0:ドサッ!(飛ばされるヤマト)
ミヤ:「ヤマト、ヤマトぉおおお!!」
ベルガ:「…あんなガキを連れて狩りをするなんてよ、世の中なめられたもんだぜ。所詮この世の中は弱肉強食!弱いものが死に、強いものが生き残るがこの世界のルールだ!あのガキを拾った時点で貴様は負け犬なんだよ!…さて、腹がへったな。次は首の骨をいただくとするか。うまそうな音を鳴らしてくれよ?」
ミヤ:「や、や…やめてぇーー!」
0:ボキボキ(腕を鳴らす)
0:ザッザッザ(足音)
ヤマト:「M(…立て!立てよヤマト!くたばるにはまだ早いぜ?)」
ヤマト:「M(親父のカタキ、見つけてないんだろ?まだくたばるなよ!)」
ヤマト:「M(…だめ、だ…体がうごかねぇ…なんだか気持ちよくなってきた…俺、死ぬのか…な?)」
ヤマト:「M(…まぁ、孤独な俺に…ふさわしい最後…かな。)
ミヤ:「ヤマト、ヤマトぉおおお!!お願い、立って!立って逃げてよぉ!ヤマトォー!!!」
ヤマト:「M(……誰だ…?)」
子分5:「うるせぇガキ!静かにしてろ!
0:パシ(ビンタ)
ミヤ:「んっ!!」
ボス:「おい、あんまり傷つけるなよ!?まだちっちぇけど高く売れるんだからよ!
子分5:「へっへ、わかってますよ、ボス。」
ヤマト:「M(……孤独…俺が?)」
親父:「M(ヤマト…。)」
ヤマト:「M(…とうさん?)」
親父:「M(あの声が聴こえるか?ヤマト。聴こえるなら…立て…立って……護れ!!)
ヤマト:「M(…護る?…俺が?…まも、る?)」
ミヤ:「M(ヤマト…ヤマト…ヤマトー!!)」
ベルガ:「行くぜ…オラァ!!!」
ヤマト:「はっ!?」
ミヤ:「よけてー!」
0:ドスン(地を撃つ拳)
ヤマト:「…か!かはっ!…ゲホッ!ゲホッ!」
ベルガ:「ほう?飛んで逃げたか…こいつは驚いた。まだそんな力が残っていたのか?」
ヤマト:「…あいにくだが…俺にはまだ、きゃんきゃん吠えるワンちゃんの子育てが残っていてね。」
0:カチャ(剣を構える)
ベルガ:「ふん、銃をしまい剣をとったか。だが、そんなものでは俺は斬れんぞ?」
ヤマト:「…やってみなきゃわかんねぇだろ?ほら、早く来いよ。腹減ってるんだろ?」
ベルガ:「言わずともそうしてやるわー!!はぁー!」
0:ブンッ!ドスン!(拳を振るい、空ぶる)
ベルガ:「どうしたぁ!!逃げてばかりでは勝てぬぞー!!!」
ヤマト:「言わずとも!」
0:ブゥン、キィン(剣を振るうがはじかれる)
ベルガ:「効かぬ!無駄無駄無駄ぁあああ!!」
0:ブォン、ブォン(拳をふるうが空振り)
ヤマト:「まだだ…まだ待て。」
ベルガ:「オラオラオアラァ!!」
0:ブォン、ブォン、ブォン(拳をふるうが空振り)
ベルガ:「そろそろしまいだ!!黒装束のヤマトぉ!!!!!突撃いいいいいい!!!」
ヤマト:「そこだぁああああああ!!!」
0:ブシュウ(剣が刺さる)
ベルガ:「がはっ!馬鹿な…腹の鋼板を…貫くなんて!」
ヤマト:「自分から串刺しを望むなんてな。突進しすぎだぜ、イノシシ野郎!」
ベルガ:「う、うををを!黒装束のヤマトををを!」
0:ズボッ(剣を引き抜く)
ベルガ:「が!」
ヤマト:「外は頑丈でも、中身はどうかな?」
0:カチャ(銃を構える)
0:ダン!ダン!ダン!ダン!ダン!(発砲)
ベルガ:「…かは!かは!かは!…」
ヤマト:「あの世の土産に鉛の玉、くれてやる。腹ふくらせて逝けよ?」
ベルガ:「黒装束のヤマトぉ!!くそぉ!食わせろ!!お前を食わせろ、黒装束の!ヤマト」
ヤマト:「あと。それとな」
ベルガ:「黒…装束!のヤマ…」
ヤマト:「実は、その二つ名、気に入ってない」
0:ダン(発砲)
ベルガ:「トぉぉぉ!」
0:ドサッ(倒れる)
0:ザッ(足音)
ヤマト:「…さて、お前らはどうする?」
子分5:「ひ、ひっ!」
0:ザッザッ(近寄る足音)
ヤマト:「俺は構わないぜ?なんだか、まだ全然いけそうだ。」
子分5:「…な、なんだよこいつ!?か、勝てる気がしねぇよぉ…。」
子分6:「こいつ!血だらけじゃないかよ!?ちくしょう、なんなんだよ、あの気迫はなんなんだよぉ!?ボス、ボスぅ!!」
ボス:「…う…う、動くな!それ以上近寄ると こいつの命はないぞ?」
ヤマト:「…。」
0:ザッ(足音)
ボス:「…く、来るなよ!?今度こそこのガキを殺すぞ。いっとくが今度はせこい手は通じねぇからな。さっき、チャックは確認したからよぉ。ハーッハッハ!」
ヤマト:「好都合だ、いいぜ。」
ボス:「…は?」
ヤマト:「撃てよ…。さっさと殺しちまえよ。俺も遠慮なくお前らをぶった斬れるしな。」
0:チャキ(銃を構えて)
ボス:「ひ!?」
ヤマト:「いい加減。子育ても嫌気がさしてきた。ここいらでお前ごとバッサリ断ち斬ってやりたい。そんな気分の日があってもいいだろ?もともとは一匹狼だったのさ。良い記念日だ。さぁ、キッカケをくれよ?」
ボス:「ひひ!?」
ヤマト:「…ただし、プレゼントはいただくぜ?たっぷりとな。最初は右腕。次は左。両足さばいてから、気の済むまでボコって、お前にも鉛玉たらふくくれてやる…さぁ…どうするよ!?」
ボス:「なななっ!」
ヤマト:「頼むよ、俺にバッサリ断ち切らせておくれよ。…カウント、ダウン♪3…2…1…よーい」
ボス:「ドーン!!!!!おたすけぇえええええっ!」
0:ザザザ(足音)
子分5:「…うわああああ!殺されるー!」
子分6:「逃げろー!車、車を出せ!早く!」
0:ブ、ブロロロー(車で立ち去る)
ボス:「お、お前ら!……ま、ま、待ってぇええええー!!!
0:ブロロロロ(車)
ヤマト:「…フン…お前みたいなゴミ野郎、殺す気もおきねぇよ…。」
〇:おしまいに
0:ヒョオオオオオ(風)
ヤマト:「……どうして、俺は立てた?」
ヤマト:「M(俺は命のやりとりで金を稼いでる。だから自分の死に方だってわかってるつもりでいた…。なのに、どうして…。)」
0:ヒョオオオオオ(風)
ミヤ:「M(ヤマト…ヤマトォ!!)」
ヤマト:「…そうか…あの声か…。」
ヤマト:「M(…立ちあがらなければならなかったんだ……それが、理由か。)」
ヤマト:「親父…すこぉしだけ、わかった気がするよ…。」
0:ヒョオオオオオ(風)
ヤマト:「…でだ。…おい、そこに隠れてる子犬さんよぉ?」
ミヤ:「…。」
ヤマト:「どこ行くんだ?勝手にほっつきあるくな!またやっかいに巻き込まれるだろ?とっとと帰るぞ。」
ミヤ:「帰らない。」
ヤマト:「…あ?あのなぁ。見ろって!俺はズタボロなんだぞ?今、立ってるのもやっと!わがまま言うな!さっさと帰えらせろ!」
ミヤ:「もういいよ!もうやめようよ!」
ヤマト:「…あ?」
ミヤ:「私のせいでいつもボロボロになって。もう、充分だよ。…わかってたよ、私、邪魔なんだって。…でも私帰る場所なんてないから、ヤマトに甘えてたんだ。…でも…ごめんなさい。今までありがとう。」
ヤマト:「ふざけんな!!!」
ミヤ:「…。」
ヤマト:「…ふざけんなよ…。」
ミヤ:「…。」
ヤマト:「…これは親父の遺言のひとつだ。『一度拾ったものは責任をもって大事にしろ』ってな。」
ミヤ:「…。」
ヤマト:「それに、俺は死ぬつもりだっだ…もう死んでもいいやと思ってた。なのに立ち上がれた。…どうしてだ?」
ミヤ:「……どうして?」
ヤマト:「……お前がいたからだよ。お前を護るために強くなれんだよ、俺は。」
ミヤ:「…。」
ヤマト:「…だからこれは、俺のためでもあるのさ。ミヤ…お前が一人前になるまで護ってやる。お前を護るためにもっと強くなってやる。だから…だまってついてこい!」
ミヤ:「…」
ヤマト:「…」
ミヤ:「…」
ヤマト:「…」
ミヤ:「きゃは☆」
ヤマト:「あ!?」
ミヤ:「…ねぇ、もう一回言って?」
ヤマト:「……なんで?」
ミヤ:「よく聞こえなかった、もっかい言ってよ?」
ヤマト:「う、うるせー!もういわねぇよ!」
ミヤ:「ねぇねぇ、今のセリフもう一回最初から言ってよ?ねー!」
ヤマト:「いわねぇったらいわねぇ。二度と言わねぇ!!」
ミヤ:「えー?だって、あのヤマトが「お前を護ってやる」だよ?今までそんな優しい言葉かけてくれたことあるー?ねー?」
ヤマト:「あー!もう、うるせー!おいてくからな!」
ミヤ:「…はいっ!33、22、11『だからこれは、俺のためでもあるのさ。』」
ヤマト:「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛やめてぇ!」
ミヤ:「テレちゃって、かわいー!あっ、まってよー!ヤマト、ヤマトー!」
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