台本概要
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タイトル | ウィルの恋愛 |
---|---|
作者名 | あまくケイ (@amak0331) |
ジャンル | ファンタジー |
演者人数 | 4人用台本(男2、女2) |
時間 | 10 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
ある青年の、崩壊と恋愛の果て。 復讐心を持った剣士「ウィル」は、騎士団に入り、同じ剣士のレトとキリアと共に組むことになった。それからしばらくして、黒魔導士討伐任務で、一つの出来事が起こる。 恋愛と書いてあるけど、恋愛じゃないダークな話です。 ウィル、レトは性転換可 676 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
ウィル | 男 | 73 | 本名『ウィルター・ディスカント』。被害を受けた妹の復讐を果たすために、騎士団へ入団する まだ剣技が未熟で、レトにバカにされている キリアには恋心を抱いている 性別不問 |
キリア | 女 | 57 | ウィルと同じ騎士団の剣士。 黒髪に赤目 レトとは恋人関係 |
レト | 男 | 24 | ウィルと同じ騎士団に所属する剣士。弱いウィルに対して嫌悪感を抱いている。 性別不問 |
黒魔導士 | 女 | 8 | ウィルたちの前に現れる女性。死体を操る術や相手を洗脳する術などを持つ。 訪れたウィルに対して特別な感情を抱くようになる。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
キリア:レト!後ろから来てるわ!
レト:分かってる! はぁあっ!
0:レトはトロールの攻撃をかわして反撃する
ウィル:あとは俺が……!
ウィル:氷連術(ひょうれんじゅつ)第4番「アイシクルショット」
0:ウィルは氷をともった剣を用いて、トロールに切りかかる。
ウィル:……っ!?
0:しかしトロールはそれに臆することなく受け止め、腕で反撃をしてきた。
ウィル:ぐっ!
レト:おいおい、やめとけって。
ウィル:問題ない……。
レト:このまま終わらせる。騎士剣術(きしけんじゅつ)第3番「スティンガー」
0:レトはトロールの腹を剣で突く。うなり声をあげたトロールは倒れた
レト:ふぅ、これで一件落着だな
キリア:相変わらずの腕前ね
レト:キリアこそ、トロールに斬りこみまくってたじゃないか。それがなかったら、とどめは差せなかった
レト:ありがとう
ウィル:……
キリア:ウィル、大丈夫?
ウィル:俺は別に……。攻撃を受けただけだ。
ウィル:何もしていない
レト:お前はもう少し、上達してくれると助かるんだけどな
キリア:レト、またそういうこと言って
ウィル:善処する
ウィル:(……騎士団に入って、一緒になった彼らと、俺は戦っていた。しかし足手まといになる事がほとんど)
ウィル:(それに、一番つらいのは)
キリア:ねぇ、レト
レト:ん?
キリア:き、今日、空いてる?
レト:この後か? まぁ別にいいけど
キリア:やった! じゃあさ、一緒に隣町まで行かない!?
レト:いいけど?
ウィル:(こんな会話を間近で見せられることだ)
ウィル:(……俺は)
0:ウィルはちらっと、キリアの顔を見た。
ウィル:(……羨ましいと、どこかで思っているのかもしれない)
ウィル:(だから余計に、変な感覚が、うずいているままなのだろうか)
ウィル:(早くこの時間が、終わってくれないだろうか)
0:
0:
ウィル:(一週間後)
ウィル:(ある討伐クエストを行うことになり、俺たちはその目的地、洞窟まで足を運んでいた)
レト:ここか……
キリア:……ターゲットは、モンスターを使役している黒魔導士……。
ウィル:ただ、油断は禁物だ。罠が仕掛けられている可能性が高い
レト:下手こいて死なないようにな
キリア:だからレト、一言多いって
ウィル:俺は死なないさ
レト:へぇ、強気じゃん
キリア:つべこべ言ってないで、入りましょ
0:
ウィル:(俺たちは洞窟を歩いていく。グレムリンやゴブリンなどの小さい弱小モンスターがちらほらいるくらいで、そこまで罠が仕掛けられているわけではなかった)
キリア:大した事、ないわね
レト:なんだ、余裕じゃん
ウィル:足元を救われるぞ
レト:お前に言われても説得力ねーよ
ウィル:少なくとも、今は足を引っ張っていない
レト:敵が弱いからな
キリア:……はぁ、あなたたち、何でいっつもそんなに喧嘩するのかしら……。
レト:別に
ウィル:……
ウィル:(レトはこう言っているが、やはり)
ウィル:(彼から、何かしらの嫌悪感を感じる。それは分かっていた)
ウィル:(邪魔なんだろうな、俺が)
ウィル:……せいぜい足は引っ張らないさ
0:
黒魔導士:へぇ、楽しそうな会話をしているね?
キリア:!
レト:こいつ、いつの間に
ウィル:(油断した。気づけば、背後をとられていた。黒いフードを被った女……)
ウィル:(ただ、俺が気づいたときには……)
キリア:危ない!
黒魔導士:……君の中、気になるわね
ウィル:……っ! ぐ、は……。
0:黒魔導士は、ウィルの胸に、「黒い何か」を突き立てた。
黒魔導士:まずは、一人。
黒魔導士:……貴方から、面白いものを感じ取れる
キリア:くっ!
黒魔導士:さぁ、私のかわいこちゃん、出ておいで
0:黒魔導士の周りに、黒い結界が現れる。そこから先ほど倒したモンスターたちが湧いて出てくる
レト:死体を操る……ってか
黒魔導士:別に、私からしたら当たり前にできることよ
黒魔導士:この洞窟に入ってきたら、生きて戻れないわ……
黒魔導士:(でも……何かしら)
黒魔導士:(このウィルって子は、どこか気になる……)
黒魔導士:(持っているものが、感覚が、違う……?)
ウィル:……あ、……が……あ
0:黒魔導士から攻撃を受けたウィルは、その場に倒れた
ウィル:……!
ウィル:この、景色は……
ウィル:俺の脳裏に……色んなものが……消えては、出てきて……
ウィル:消えては……出ていく
0:ウィルの前に、男に蹂躙されている少女が出てきた
ウィル:……エリス……。
ウィル:俺の妹……。
ウィル:傷つけた連中は……必ず殺す
ウィル:だから俺は騎士団に入った。
0:そして次に出てきたのは、キリアだった
ウィル:……キリア。
ウィル:最初に会った時
ウィル:そう……
0:
キリア:はじめまして。
キリア:今日から一緒に組むことになった、キリアです。よろしく。
ウィル:……ウィルター。本名は、ウィルター=ディスカント
キリア:フルネームじゃなくてよくない? ウィルター……って呼ぶよりはウィルかな
キリア:……ウィル。
ウィル:っ。
キリア:うん、これがいい
ウィル:(あの時はつい、緊張してしまった)
ウィル:(彼女の笑顔と、声)
キリア:ねぇ、ウィルは何でこの騎士団に?
ウィル:……事情は深く言えないが。俺は……戦わないといけない
ウィル:そのために入った
キリア:そう、なんだ
ウィル:(キリアはそういうと、俺の前に来て)
ウィル:(じっと)
ウィル:(その瞳で、俺を見つめてきた)
キリア:……辛い思い、してきてるんだね
ウィル:……っ、だから何だ
キリア:泣きたかったんじゃない?
ウィル:……うるさい
キリア:ふーん……まぁ、無理に話すことはないけど
ウィル:……
ウィル:(多分、俺は、この時から……)
キリア:あ、レトー!
レト:ここにいたのか、キリア
キリア:ごめんごめん
ウィル:……誰だ?
キリア:彼は、レト
キリア:私の、彼氏。
ウィル:……っ
ウィル:(出会った時から、キリアの事が、好きになっていたのかもしれない)
0:
ウィル:あの時……キリアから……温かいものを感じた
ウィル:俺をどこか、救っているような、感覚があった
ウィル:あれがなければ
ウィル:あれがなければ、俺は、こんな感情を持つことはなかった
0:
レト:お前、弱いな
レト:そんなんで騎士団入ったの?
レト:あんまり足手まといにならないでくれるかな?
レト:邪魔なんだよね、お前がいると
ウィル:レトは、キリアがいない時に限って、言葉が強くなっていた
レト:俺、お前と組みたくなかったのよ
レト:早く死んでくれないかなって
レト:いつも思ってるわ
レト:だから次は
レト:とっとと死んでくれよ
0:
キリア:レトはね、口は悪いけど、本当は良い人なの
キリア:ウィルも、いつか、分かるから
0:
ウィル:俺は、足手まといか
ウィル:死ねばいいのか
ウィル:犠牲になればいいのか
ウィル:ふざけるなよ
ウィル:お前こそ
ウィル:お前こそ……死んでくれ。
ウィル:……そうだ。
ウィル:……殺す
ウィル:……殺してやる
ウィル:……お前は、俺が……殺す
0:
ウィル:殺してやるよ
0:
レト:あ……あっ……が……が……
ウィル:……え?
ウィル:俺は、手元を見た
ウィル:気づかない間に、俺は
ウィル:レトを、斬っていた。
ウィル:「黒く纏われた剣」を持って。
ウィル:(……これは……黒魔術?)
ウィル:(俺は、黒魔導士に操られて?!)
黒魔導士:……あぁ……素晴らしい
黒魔導士:こちらの戦力は殆どない……貴方を見込んで正解だった。
黒魔導士:これこそ……負の感情の力
黒魔導士:貴方……すごいわね……がはっ
0:黒魔導士は血を吐きながらそういった。
レト:ご、あ、がが……がぁ……
キリア:うそ……でしょ……レト……
レト:……ぁ……あぁ
キリア:駄目、そんな、レト、嘘よ……こんな
0:レトは、目を開けたまま、宙を見ていた
0:そこにレトの生気はなかった
キリア:あ……あぁぁ……ああ……ああ
キリア:嫌……嫌、……嫌ああああああ!
ウィル:違う……違う!! 俺は! 俺は……!
ウィル:(キリアは、俺を見た)
ウィル:(その顔は、もう、俺の知っているキリアの顔ではなかった)
黒魔導士:あーあ、隙だらけじゃない
黒魔導士:黒魔術第90版「死滅憑依」
キリア:……っ……あ……。
黒魔導士:残念、貴方の体……もらうわね
ウィル:!
ウィル:(黒魔導士の体が粉になり、それがキリアの中に入っていく)
ウィル:……な、何が……
キリア:……
ウィル:……キリ……ア?
キリア:……あは
キリア:あはははははは!!
ウィル:!
キリア:はー!やっと!
キリア:やっと、新しい体が手に入ったわー! さっきの戦いでもう体がボロボロだったから、欲しかったのよねー!
キリア:うーん! すっごくいい気分
ウィル:……お前、まさか
キリア:そう。さっきまで貴方たちと戦っていた黒魔導士
キリア:でも、もうあの黒魔導士じゃない
キリア:私は、キリアよ
キリア:ねぇ、ウィル……?
キリア:……とか呼んでみたり! あっはははははは!!
ウィル:……!
キリア:貴方さぁ、もう顔真っ赤じゃん。やっばいウケる……ww あぁー超お腹痛いんですけど。
ウィル:……お前は、キリア、じゃない……
キリア:キリアですよー? 君の大好きなキリアたんでーす★ イェーイ!
0:キリアはぎゅっと、ウィルを抱きしめた
ウィル:なっ!?
キリア:ほれ、キリアたんが目の前だよ~。
ウィル:……黙れ。
キリア:あはっ!!
キリア:……貴方が、私の黒魔術に引っかかってる時
キリア:貴方の中、奥から奥まで、ぜー---んぶ、見えたよ
キリア:まず、復讐心
キリア:次は、復讐の念を癒してくれるキリアの笑顔
キリア:そして、裏切られた感情と、そこで汚い顔してくたばってる剣士への嫌悪
キリア:貴方の中……すごく滅茶苦茶!
キリア:でも、それが好き
キリア:貴方の滅茶苦茶な感情を、私は好きになっちゃった
ウィル:………お前は。
キリア:あ、キスする?
ウィル:っ
キリア:別にいいよ?
キリア:だって、好きだったんでしょ?
ウィル:お前は……キリアでは……。
キリア:ねぇ
ウィル:違う……
キリア:そうでしょ?
ウィル:違う……違う
キリア:(キレ気味に)そうでしょ!!!!!!!
ウィル:っ!?
キリア:……はー、なんで自分に素直にならないかなー。ん……
ウィル:……あっ。
0:キリアはウィルにキスをする
0:キリアの舌が、ウィルの中に入った
0:ウィルは話す隙間もなく、キリアのキスにおかされる
0:(ここでキスシーンの演技をしてもらってもOK。しなくても可)
キリア:っ……はー。
ウィル:……。
キリア:どう、気持ちよかった?
ウィル:……ふふ……はは
ウィル:ははは……。
キリア:? ウィル? どした?
ウィル:……俺は、最近まで、恋とは何かなどと、考えたことがある。
ウィル:……そんなこと、もう、どうでもいい
ウィル:定義など、どうでもよくなった
ウィル:考えるだけで馬鹿馬鹿しくなってしまった
ウィル:もう、どうでもいい
ウィル:お前が黒魔導士だろうが関係ない
ウィル:俺は……そうだ
ウィル:キリア。
ウィル:お前が欲しかった
キリア:そう! そうだよ! ウィル! 分かってる!
キリア:貴方が欲しかったのは、私そのもの。
キリア:この綺麗な瞳、この声、こーんな風に腰に手を当てる私の仕草
キリア:他には、こんな怒った顔や、悲しい顔
キリア:そして、この笑顔
キリア:良かったね、ウィル
キリア:欲しいもの、手に入っちゃった。
ウィル:!
0:ウィルの顔つきが変わる。
ウィル:ああ、その通りだ……クク。
ウィル:……はは……ははははは!
ウィル:笑い話もいい所だ、全く。
キリア:笑うって体にいいよ?
キリア:笑えば、どんな話でもチャラになっちゃう。魔法の儀式
キリア:でもウィルは~……笑いより、もっと激しいものが好みかなー? なんつって!
ウィル:何の話だ。くだらん
ウィル:騎士団に戻るぞ、キリア
キリア:はーい! キリアたん戻りまーす!★
ウィル:レトは黒魔導士に殺された。死者は一名
ウィル:俺とキリアはそこから生還した。
ウィル:報告はそれだけだ
キリア:で、これからどうするの?
ウィル:妹を傷つけたお偉い様の連中は、騎士団の上の方としか関わり合いがない。
ウィル:だから俺は、この騎士団で上位までのしあがり、連中の息の根を止める。
ウィル:……くだらない恋物語にかまけて、本来の目的を見失うところだったな
キリア:その感じ
ウィル:?
キリア:その感じが、何か好きなの
キリア:滅茶苦茶な感情持ちながらも、進んでるところ
キリア:私は、あなたについていく
キリア:貴方の目的に、協力してあげるわ
ウィル:……そうか。
キリア:……ウィル
キリア:辛くなったら、いつでも言ってね
キリア:私が包んであげるから
ウィル:「キリア」の真似をしているのか?
キリア:あはははー!!バレた!? ねぇどうだったさっきの似てた!? 個人的にイケた気がするんだけどなー!
キリア:ねぇ顔見せてよー? 赤くなってない? なってない!?
ウィル:趣味の悪い女だ
キリア:むー。
ウィル:うるさいぞ……。さて……行くか
ウィル:(俺の『恋愛』は、こうやって幕を閉じた)
0:
ウィル:(……いや)
0:
ウィル:(そんなものはどうでもいい)
0:
ウィル:(邪魔だったんだ、最初から)
0:
ウィル:(欲しいなら、手に入れるだけ)
0:
ウィル:(それが達成されただけのこと)
0:
ウィル:(だから、俺は)
0:
ウィル:(俺に従って、突き進むのみ)
キリア:レト!後ろから来てるわ!
レト:分かってる! はぁあっ!
0:レトはトロールの攻撃をかわして反撃する
ウィル:あとは俺が……!
ウィル:氷連術(ひょうれんじゅつ)第4番「アイシクルショット」
0:ウィルは氷をともった剣を用いて、トロールに切りかかる。
ウィル:……っ!?
0:しかしトロールはそれに臆することなく受け止め、腕で反撃をしてきた。
ウィル:ぐっ!
レト:おいおい、やめとけって。
ウィル:問題ない……。
レト:このまま終わらせる。騎士剣術(きしけんじゅつ)第3番「スティンガー」
0:レトはトロールの腹を剣で突く。うなり声をあげたトロールは倒れた
レト:ふぅ、これで一件落着だな
キリア:相変わらずの腕前ね
レト:キリアこそ、トロールに斬りこみまくってたじゃないか。それがなかったら、とどめは差せなかった
レト:ありがとう
ウィル:……
キリア:ウィル、大丈夫?
ウィル:俺は別に……。攻撃を受けただけだ。
ウィル:何もしていない
レト:お前はもう少し、上達してくれると助かるんだけどな
キリア:レト、またそういうこと言って
ウィル:善処する
ウィル:(……騎士団に入って、一緒になった彼らと、俺は戦っていた。しかし足手まといになる事がほとんど)
ウィル:(それに、一番つらいのは)
キリア:ねぇ、レト
レト:ん?
キリア:き、今日、空いてる?
レト:この後か? まぁ別にいいけど
キリア:やった! じゃあさ、一緒に隣町まで行かない!?
レト:いいけど?
ウィル:(こんな会話を間近で見せられることだ)
ウィル:(……俺は)
0:ウィルはちらっと、キリアの顔を見た。
ウィル:(……羨ましいと、どこかで思っているのかもしれない)
ウィル:(だから余計に、変な感覚が、うずいているままなのだろうか)
ウィル:(早くこの時間が、終わってくれないだろうか)
0:
0:
ウィル:(一週間後)
ウィル:(ある討伐クエストを行うことになり、俺たちはその目的地、洞窟まで足を運んでいた)
レト:ここか……
キリア:……ターゲットは、モンスターを使役している黒魔導士……。
ウィル:ただ、油断は禁物だ。罠が仕掛けられている可能性が高い
レト:下手こいて死なないようにな
キリア:だからレト、一言多いって
ウィル:俺は死なないさ
レト:へぇ、強気じゃん
キリア:つべこべ言ってないで、入りましょ
0:
ウィル:(俺たちは洞窟を歩いていく。グレムリンやゴブリンなどの小さい弱小モンスターがちらほらいるくらいで、そこまで罠が仕掛けられているわけではなかった)
キリア:大した事、ないわね
レト:なんだ、余裕じゃん
ウィル:足元を救われるぞ
レト:お前に言われても説得力ねーよ
ウィル:少なくとも、今は足を引っ張っていない
レト:敵が弱いからな
キリア:……はぁ、あなたたち、何でいっつもそんなに喧嘩するのかしら……。
レト:別に
ウィル:……
ウィル:(レトはこう言っているが、やはり)
ウィル:(彼から、何かしらの嫌悪感を感じる。それは分かっていた)
ウィル:(邪魔なんだろうな、俺が)
ウィル:……せいぜい足は引っ張らないさ
0:
黒魔導士:へぇ、楽しそうな会話をしているね?
キリア:!
レト:こいつ、いつの間に
ウィル:(油断した。気づけば、背後をとられていた。黒いフードを被った女……)
ウィル:(ただ、俺が気づいたときには……)
キリア:危ない!
黒魔導士:……君の中、気になるわね
ウィル:……っ! ぐ、は……。
0:黒魔導士は、ウィルの胸に、「黒い何か」を突き立てた。
黒魔導士:まずは、一人。
黒魔導士:……貴方から、面白いものを感じ取れる
キリア:くっ!
黒魔導士:さぁ、私のかわいこちゃん、出ておいで
0:黒魔導士の周りに、黒い結界が現れる。そこから先ほど倒したモンスターたちが湧いて出てくる
レト:死体を操る……ってか
黒魔導士:別に、私からしたら当たり前にできることよ
黒魔導士:この洞窟に入ってきたら、生きて戻れないわ……
黒魔導士:(でも……何かしら)
黒魔導士:(このウィルって子は、どこか気になる……)
黒魔導士:(持っているものが、感覚が、違う……?)
ウィル:……あ、……が……あ
0:黒魔導士から攻撃を受けたウィルは、その場に倒れた
ウィル:……!
ウィル:この、景色は……
ウィル:俺の脳裏に……色んなものが……消えては、出てきて……
ウィル:消えては……出ていく
0:ウィルの前に、男に蹂躙されている少女が出てきた
ウィル:……エリス……。
ウィル:俺の妹……。
ウィル:傷つけた連中は……必ず殺す
ウィル:だから俺は騎士団に入った。
0:そして次に出てきたのは、キリアだった
ウィル:……キリア。
ウィル:最初に会った時
ウィル:そう……
0:
キリア:はじめまして。
キリア:今日から一緒に組むことになった、キリアです。よろしく。
ウィル:……ウィルター。本名は、ウィルター=ディスカント
キリア:フルネームじゃなくてよくない? ウィルター……って呼ぶよりはウィルかな
キリア:……ウィル。
ウィル:っ。
キリア:うん、これがいい
ウィル:(あの時はつい、緊張してしまった)
ウィル:(彼女の笑顔と、声)
キリア:ねぇ、ウィルは何でこの騎士団に?
ウィル:……事情は深く言えないが。俺は……戦わないといけない
ウィル:そのために入った
キリア:そう、なんだ
ウィル:(キリアはそういうと、俺の前に来て)
ウィル:(じっと)
ウィル:(その瞳で、俺を見つめてきた)
キリア:……辛い思い、してきてるんだね
ウィル:……っ、だから何だ
キリア:泣きたかったんじゃない?
ウィル:……うるさい
キリア:ふーん……まぁ、無理に話すことはないけど
ウィル:……
ウィル:(多分、俺は、この時から……)
キリア:あ、レトー!
レト:ここにいたのか、キリア
キリア:ごめんごめん
ウィル:……誰だ?
キリア:彼は、レト
キリア:私の、彼氏。
ウィル:……っ
ウィル:(出会った時から、キリアの事が、好きになっていたのかもしれない)
0:
ウィル:あの時……キリアから……温かいものを感じた
ウィル:俺をどこか、救っているような、感覚があった
ウィル:あれがなければ
ウィル:あれがなければ、俺は、こんな感情を持つことはなかった
0:
レト:お前、弱いな
レト:そんなんで騎士団入ったの?
レト:あんまり足手まといにならないでくれるかな?
レト:邪魔なんだよね、お前がいると
ウィル:レトは、キリアがいない時に限って、言葉が強くなっていた
レト:俺、お前と組みたくなかったのよ
レト:早く死んでくれないかなって
レト:いつも思ってるわ
レト:だから次は
レト:とっとと死んでくれよ
0:
キリア:レトはね、口は悪いけど、本当は良い人なの
キリア:ウィルも、いつか、分かるから
0:
ウィル:俺は、足手まといか
ウィル:死ねばいいのか
ウィル:犠牲になればいいのか
ウィル:ふざけるなよ
ウィル:お前こそ
ウィル:お前こそ……死んでくれ。
ウィル:……そうだ。
ウィル:……殺す
ウィル:……殺してやる
ウィル:……お前は、俺が……殺す
0:
ウィル:殺してやるよ
0:
レト:あ……あっ……が……が……
ウィル:……え?
ウィル:俺は、手元を見た
ウィル:気づかない間に、俺は
ウィル:レトを、斬っていた。
ウィル:「黒く纏われた剣」を持って。
ウィル:(……これは……黒魔術?)
ウィル:(俺は、黒魔導士に操られて?!)
黒魔導士:……あぁ……素晴らしい
黒魔導士:こちらの戦力は殆どない……貴方を見込んで正解だった。
黒魔導士:これこそ……負の感情の力
黒魔導士:貴方……すごいわね……がはっ
0:黒魔導士は血を吐きながらそういった。
レト:ご、あ、がが……がぁ……
キリア:うそ……でしょ……レト……
レト:……ぁ……あぁ
キリア:駄目、そんな、レト、嘘よ……こんな
0:レトは、目を開けたまま、宙を見ていた
0:そこにレトの生気はなかった
キリア:あ……あぁぁ……ああ……ああ
キリア:嫌……嫌、……嫌ああああああ!
ウィル:違う……違う!! 俺は! 俺は……!
ウィル:(キリアは、俺を見た)
ウィル:(その顔は、もう、俺の知っているキリアの顔ではなかった)
黒魔導士:あーあ、隙だらけじゃない
黒魔導士:黒魔術第90版「死滅憑依」
キリア:……っ……あ……。
黒魔導士:残念、貴方の体……もらうわね
ウィル:!
ウィル:(黒魔導士の体が粉になり、それがキリアの中に入っていく)
ウィル:……な、何が……
キリア:……
ウィル:……キリ……ア?
キリア:……あは
キリア:あはははははは!!
ウィル:!
キリア:はー!やっと!
キリア:やっと、新しい体が手に入ったわー! さっきの戦いでもう体がボロボロだったから、欲しかったのよねー!
キリア:うーん! すっごくいい気分
ウィル:……お前、まさか
キリア:そう。さっきまで貴方たちと戦っていた黒魔導士
キリア:でも、もうあの黒魔導士じゃない
キリア:私は、キリアよ
キリア:ねぇ、ウィル……?
キリア:……とか呼んでみたり! あっはははははは!!
ウィル:……!
キリア:貴方さぁ、もう顔真っ赤じゃん。やっばいウケる……ww あぁー超お腹痛いんですけど。
ウィル:……お前は、キリア、じゃない……
キリア:キリアですよー? 君の大好きなキリアたんでーす★ イェーイ!
0:キリアはぎゅっと、ウィルを抱きしめた
ウィル:なっ!?
キリア:ほれ、キリアたんが目の前だよ~。
ウィル:……黙れ。
キリア:あはっ!!
キリア:……貴方が、私の黒魔術に引っかかってる時
キリア:貴方の中、奥から奥まで、ぜー---んぶ、見えたよ
キリア:まず、復讐心
キリア:次は、復讐の念を癒してくれるキリアの笑顔
キリア:そして、裏切られた感情と、そこで汚い顔してくたばってる剣士への嫌悪
キリア:貴方の中……すごく滅茶苦茶!
キリア:でも、それが好き
キリア:貴方の滅茶苦茶な感情を、私は好きになっちゃった
ウィル:………お前は。
キリア:あ、キスする?
ウィル:っ
キリア:別にいいよ?
キリア:だって、好きだったんでしょ?
ウィル:お前は……キリアでは……。
キリア:ねぇ
ウィル:違う……
キリア:そうでしょ?
ウィル:違う……違う
キリア:(キレ気味に)そうでしょ!!!!!!!
ウィル:っ!?
キリア:……はー、なんで自分に素直にならないかなー。ん……
ウィル:……あっ。
0:キリアはウィルにキスをする
0:キリアの舌が、ウィルの中に入った
0:ウィルは話す隙間もなく、キリアのキスにおかされる
0:(ここでキスシーンの演技をしてもらってもOK。しなくても可)
キリア:っ……はー。
ウィル:……。
キリア:どう、気持ちよかった?
ウィル:……ふふ……はは
ウィル:ははは……。
キリア:? ウィル? どした?
ウィル:……俺は、最近まで、恋とは何かなどと、考えたことがある。
ウィル:……そんなこと、もう、どうでもいい
ウィル:定義など、どうでもよくなった
ウィル:考えるだけで馬鹿馬鹿しくなってしまった
ウィル:もう、どうでもいい
ウィル:お前が黒魔導士だろうが関係ない
ウィル:俺は……そうだ
ウィル:キリア。
ウィル:お前が欲しかった
キリア:そう! そうだよ! ウィル! 分かってる!
キリア:貴方が欲しかったのは、私そのもの。
キリア:この綺麗な瞳、この声、こーんな風に腰に手を当てる私の仕草
キリア:他には、こんな怒った顔や、悲しい顔
キリア:そして、この笑顔
キリア:良かったね、ウィル
キリア:欲しいもの、手に入っちゃった。
ウィル:!
0:ウィルの顔つきが変わる。
ウィル:ああ、その通りだ……クク。
ウィル:……はは……ははははは!
ウィル:笑い話もいい所だ、全く。
キリア:笑うって体にいいよ?
キリア:笑えば、どんな話でもチャラになっちゃう。魔法の儀式
キリア:でもウィルは~……笑いより、もっと激しいものが好みかなー? なんつって!
ウィル:何の話だ。くだらん
ウィル:騎士団に戻るぞ、キリア
キリア:はーい! キリアたん戻りまーす!★
ウィル:レトは黒魔導士に殺された。死者は一名
ウィル:俺とキリアはそこから生還した。
ウィル:報告はそれだけだ
キリア:で、これからどうするの?
ウィル:妹を傷つけたお偉い様の連中は、騎士団の上の方としか関わり合いがない。
ウィル:だから俺は、この騎士団で上位までのしあがり、連中の息の根を止める。
ウィル:……くだらない恋物語にかまけて、本来の目的を見失うところだったな
キリア:その感じ
ウィル:?
キリア:その感じが、何か好きなの
キリア:滅茶苦茶な感情持ちながらも、進んでるところ
キリア:私は、あなたについていく
キリア:貴方の目的に、協力してあげるわ
ウィル:……そうか。
キリア:……ウィル
キリア:辛くなったら、いつでも言ってね
キリア:私が包んであげるから
ウィル:「キリア」の真似をしているのか?
キリア:あはははー!!バレた!? ねぇどうだったさっきの似てた!? 個人的にイケた気がするんだけどなー!
キリア:ねぇ顔見せてよー? 赤くなってない? なってない!?
ウィル:趣味の悪い女だ
キリア:むー。
ウィル:うるさいぞ……。さて……行くか
ウィル:(俺の『恋愛』は、こうやって幕を閉じた)
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ウィル:(……いや)
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ウィル:(そんなものはどうでもいい)
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ウィル:(邪魔だったんだ、最初から)
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ウィル:(欲しいなら、手に入れるだけ)
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ウィル:(それが達成されただけのこと)
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ウィル:(だから、俺は)
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ウィル:(俺に従って、突き進むのみ)