台本概要

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タイトル コール・オブ・グリモワール
作者名 るでぃあ  (@Rdia_JPN)
ジャンル ファンタジー
演者人数 2人用台本(不問2)
時間 20 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 気が付くと、見知らぬ場所に居たアナタ
そこは白い霧に包まれた深い森―――​

いつもと変わらない服装だが、
持っていたのは
意匠のある羽根ペンが括りつけられた
革表紙の手帳と
足元に火の灯った
オイルランタンが一個だけ…
ランタンの明かりを頼りに
レンガの敷石を進んで行くと、
辿り着いた先にあったのは古い洋館だった​

重い扉を押し開け、
訪れたアナタを迎えるのは
フードを被った怪しげな人物と、
所狭しと並べられた

"魔導書"たち―――

【掲載元サイト】
https://rdiajp.wixsite.com/the-hideaway/callofgrimoire

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
〇〇〇 不問 54 白い霧に覆われた森で迷い込み、誘われるように見つけた古い洋館を訪れる。 "魔術"の才覚があるらしいのだが… ※男女不問 口調改変可 一・二人称変更可 (演者様自身です 一部アドリブ有り)
アル 不問 56 中世風の衣装に編み上げのロングブーツ、フード付きのローブで身を包む不思議な人物。 銀髪色白といった儚げな印象を持つ。 表情は被ったフードのせいで口元しか窺えない。 一人称は"ボク"※性別変更可
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
0:ノック三回、木の扉をゆっくり開ける音  :風が吹き込み、到る所にある蝋燭が揺れる  :半分開けた扉から  :ランタンと顔を出し、中を窺う 〇〇〇:「どなたか、いらっしゃいませんかー・・・?」  :声は響くが返事は無い 〇〇〇:「こんな所に洋館があるなんて・・・ 〇〇〇:外に居ても何があるか分からないし、 〇〇〇:少しの間だけでも休ませてくれたら 〇〇〇:嬉しいけど―――」 アル:「・・・やぁ」 〇〇〇:「―――ヒャアッ!?(悲鳴可)」  :背後に立っていたのは、ローブを纏った人物  :被ったフードから口元と  :結われた銀髪だけが覗く 〇〇〇:「あ、あなたは・・・」 アル:「ボクは―――"アル" アル:この館の主であり、管理人であり、 アル:"司書(ししょ)"さ」 〇〇〇:「わ、私の名前は―――」 アル:「(被せて)ところで・・・君、迷子?」 〇〇〇:「え・・・ええ」※肯定 アル:「へぇ・・・おかしいな?」 〇〇〇:「おかしい?」 アル:「この森はね、"魔物除けの霧"が アル:特に濃いのさ アル:常人であれば、狂ってしまう程にね・・・? アル:だから、普通の人間は入ってこれない」 〇〇〇:「どういうこと?」 アル:「この森に入るには、"魔術"が必要なのさ アル:てっきり、君も"ソレ"を使って アル:来たと思ったんだよ・・・ アル:出る時にも、必要だからね」 〇〇〇:「どうしよう・・・元の場所へ戻れないの?」 アル:「フフ、帰る方法はあるさ アル:・・・"魔の素質"があれば、ね?」 〇〇〇:「わからない・・・」 アル:「ふーん・・・それは大変だね・・・? アル:まあ久しぶりの来客だ、 アル:ゆっくりしていくと良い アル:・・・"あの子達"も喜ぶ」 〇〇〇:「?そういえばさっき司書って―――」 アル:「そう、ここはただの館じゃない・・・ アル:ボクにとって特別な場所、 アル:秘密の"隠れ家"さ」  :館へ入っていくアル  :振り返り、手を広げ、告げる アル:「・・・ようこそ、"魔導書館"へ―――」  :悪戯な笑みを浮かべながら・・・  :  0:【場面転換】大書庫 零層  :羊皮紙の香りが漂う、蝋燭で照らされた空間、  :下へ下へと続く  :木製の巨大な螺旋階段の壁沿いに、  :所狭しと詰められた  :見渡す限りの"本達"・・・ 〇〇〇:「凄い・・・」 アル:「魔に通じる"すべて"が、 アル:此処にある・・・」 〇〇〇:「こういうの憧れてた! 〇〇〇:どれでも読んで良いの?」 アル:「この子達も君を歓迎している、 アル:自由に―――」 〇〇〇:「(被せて)って全然読めない! 〇〇〇:何これ英語じゃないの?!」 アル:「・・・読めないんだ?」 〇〇〇:「日本語じゃないのは解ってたよ? 〇〇〇:でも・・・」  :棚から取った本を床に置き、  :手を付いて項垂れる アル:「不思議だね?少なくとも アル:"適正"はあるのに」 〇〇〇:「うぅ・・・」  :落ち込んでいると、アルが傍にやってきた アル:「可哀想だね・・・?」  :跪いたアルが色白の手を頬に添える 〇〇〇:「・・・え」 アル:「フフ・・・」  :アルの顔が徐々に近づく 〇〇〇:「なっ、ちょっと―――」 アル:「大丈夫・・・」  :目の前にはアルの赤と青の美しい瞳 〇〇〇:「ア・・・ル・・・?」 アル:「ボクに、任せて・・・」  :そして、お互いの唇が触れ合いそうになり 〇〇〇:「―――ッ!」  :思わず目を瞑った―――が アル:「さ、もういいよ?」 〇〇〇:「・・・へ?」 アル:「どう?読めるように・・・なったでしょ?」 〇〇〇:「ッ!ホントだ・・・読める」  :先程は読めなかった  :エンボス加工の白い装丁の本  :そこに書かれている文字を、  :今は"理解"できる アル:「・・・君には、"どんな色"が合うだろう? アル:書庫の子達はね・・・魔導のチカラによって アル:それぞれ違う"色"を持っているんだ アル:明るい色から、暗い色まで アル:まさに、千差万別・・・選り取り見取りさ」  :高鳴る鼓動、本を拾い上げ、もう一度開く アル:「第零層…その名は、『白銀(はくぎん)』 アル:"光"の属性を司る アル:主に、再生や復活、治癒を得意としている アル:"ある属性"に対しては、 アル:特に効果的だね・・・」 〇〇〇:「―――『無垢(むく)なる光』 〇〇〇:"浄化"の力 〇〇〇:それはあらゆるモノを癒し、 〇〇〇:生命に活力を与える 〇〇〇:悪を滅する"神聖な業(わざ)"とされているが、 〇〇〇:これは死を拒絶する 〇〇〇:"魔のチカラ"に他ならない 〇〇〇:触媒(しょくばい)は・・・」  :ページを捲る手が、止まらない  :持っていた手帳を取り出し、  :文章を書き留める アル:「おやおや・・・フフ」  :アルはただ微笑んで、  :その様子を見守っていた  :  0:【場面転換】大書庫 地下一層  :ランタンの灯りが揺らめき、  :木材の軋む音が響く  :"炙られ"煤けたような床を  :注意して進んで行く アル:「第一層…『紅蓮(ぐれん)』 アル:"火"の属性を司る アル:手に収まる炎から、 アル:一帯を消滅させる爆炎まで アル:火の齎(もたら)すソレは、 アル:まるで芸術さ・・・ アル:ボクはね?火を見ていると、 アル:とても落ち着くんだ アル:・・・モノが燃える光景は儚くも、美しい アル:始まりであり、終わりでもあるからね・・・」 〇〇〇:「赤い本が、こんなに沢山・・・けど 〇〇〇:なんだかここだけ・・・少し、暑いかも」 アル:「秘めたチカラにより、 アル:熱を帯びるモノも多い アル:もっとも、 アル:此処は燃える事はないけどね・・・」  :本を手に取る、  :赤い大きな蛇の鱗のような表紙  :ページを捲ると、熱気が顔を撫でた 〇〇〇:「―――『緋色の目覚め』 〇〇〇:"憑依(ひょうい)"の力 〇〇〇:物質に灼熱の力を宿す 〇〇〇:炎に触れた対象は瞬く間に"融解"する 〇〇〇:自身と宿された物質が 〇〇〇:この炎で焼ける事はない 〇〇〇:火とは身近であるが故に 〇〇〇:畏(おそ)れられる存在である 〇〇〇:触媒は・・・」  :言いながら手帳に書き記す アル:「君も、気に入ってくれたら・・・嬉しいよ」  :その声が耳に届いたかは、わからない  :  0:【場面転換】大書庫 地下二層  :階段を下り、暑さが和らいだ頃  :木の床を踏む音に、若干の"砂"が混じる アル:「第二層…『大地(だいち)』 アル:"地"の属性を司る アル:地表を割ったり、隆起(りゅうき)させたり、 アル:それを使って押し潰したりね アル:相手を生き埋めなんて事もできたかな・・・」 〇〇〇:「ふ~ん?あ、この本良さそう」  :棚に手を伸ばし本を掴むが、  :なかなか抜けない 〇〇〇:「ん~! 〇〇〇:これ、一冊がすごく、重い・・・よっ」  :その本は一見するとまるで  :切り立った崖のようであり  :大きさの違う細くて四角い石を  :何枚も組み合わせた表紙だった アル:「ボクにとっては造作のない事でも、 アル:君にとっては違うんだろうね・・・」  :床に置いて本を捲る、もはや遠慮は無い 〇〇〇:「―――『鋼(はがね)の刻印』 〇〇〇:"強化"の力 〇〇〇:術者の体を硬質化させる 〇〇〇:刃すら通さぬ堅牢(けんろう)な肉体は 〇〇〇:盾であり武器である 〇〇〇:だが、心せよ 〇〇〇:折れまいとする"想いの強さ"こそ 〇〇〇:必要なのだと 〇〇〇:触媒は・・・」 アル:「"矛盾"とは、実に面白い言葉だよ・・・」  :筆の音だけが乾いた空間に響いていた  :  0:【場面転換】大書庫 地下三層  :靴の砂を落とし、進んだ先  :所々"何か"が当たって  :剥がれたような跡がある アル:「第三層…『鮮黄(せんき)』 アル:"雷"の属性を司る アル:強大な威力故に轟音を伴(ともな)い、 アル:古(いにしえ)の時代から恐怖の象徴とされた アル:多少扱いづらいが、応用力もある・・・ アル:理解さえすれば、 アル:広範囲に影響を及ぼすだろう」 〇〇〇:「わぁ・・・この本、綺麗・・・」  :その本は表紙を真鍮製の金属で固定された  :息を呑む程に美しい、黄金の本 アル:「そのチカラは果たして・・・」 〇〇〇:「―――『天の裁き』 〇〇〇:"断罪"の力 〇〇〇:大いなる空、約束の地へと至る道 〇〇〇:穢れを祓(はら)い、魂を還す"神の一撃" 〇〇〇:それは、哀れな者を導く塔であり 〇〇〇:それは、愚かな者を屠(ほふ)る鉄槌である 〇〇〇:触媒は・・・」 アル:「"神"か、"悪魔"か―――」  :止まらない筆の音に、  :アルは静かに哂うのだった  :  0:【場面転換】大書庫 地下四層  :煌びやかさを後に引き、  :生えている"花"を  :踏まないようにして、進む アル:「第四層…『深緑(しんりょく)』 アル:"風"の属性を司る アル:風の流れを読み取ったり、 アル:向きや強弱を変えたり アル:変わった所で言えば、 アル:他者の言葉を理解したり アル:植物を操る能力にも長けているね・・・」 〇〇〇:「良い香り・・・この本からかな?」  :躊躇いなく棚に手を伸ばし、本を抜き取る  :高貴な縁取りが施された、深い緑色の表紙  :ページを捲ると、仄かに花の香りがした 〇〇〇:「―――『束ねる叡智(えいち)』 〇〇〇:"変換"の力 〇〇〇:生きとし生けるものが発した言語を理解する 〇〇〇:それは術をかける者とて、例外ではない 〇〇〇:"声"とは即ち生き物が発する"風"である 〇〇〇:触媒は・・・」 アル:「君もすっかり、虜(とりこ)だね・・・?」  :歌うように小気味良く、  :手帳に書き込んでいく  :  0:【場面転換】大書庫 地下五層  :"苔生した"場所を避けて通る  :湿気でよく木が腐らないものだと感心した アル:「第五層…『群青(ぐんじょう)』 アル:"水"の属性を司る アル:形のない水はどんな"モノ"にでもなれる アル:生命の源であり、破壊の化身・・・」 〇〇〇:「怖い事言わないで?あ、この本とかどう?」  :魚の鱗のような物で覆われた、青い表紙の本  :光が差し込んだ水底の如く反射している  :一度濡れたであろう、歪んだページを捲る 〇〇〇:「―――『深淵(しんえん)の檻』 〇〇〇:"束縛"の力 〇〇〇:対象を水の球体に閉じ込める 〇〇〇:水圧、水流に変化を加えることで、 〇〇〇:その拘束性はより凶悪さを増す 〇〇〇:触媒は・・・」 アル:「君なら・・・どっちかな」  :不思議と流れるように、筆が乗った  :  0:【場面転換】大書庫 地下六層  :吐く息は白くなり、床には霜が降りている  :進むにつれ、感じる寒さが強くなっていく アル:「第六層…『紫紺(しこん)』 アル:"氷"の属性を司る アル:万物は、その美しさに魅了され、 アル:そして死に絶(た)える・・・ アル:実に、神秘的だね・・・」 〇〇〇:「ここ、寒い・・・けど」 アル:「誰しも・・・誘惑には逆らえない」  :結露が生じている棚から一冊の本を手に取る  :硝子細工の幻想的な装飾に思わず見惚れる  :ページを捲ると、ひんやりと冷たさを感じた 〇〇〇:「―――『結晶のオペラ』 〇〇〇:"創造"の力 〇〇〇:氷の武器と兵士を創り出し、使役する 〇〇〇:これは再生し、また無限である 〇〇〇:冷気を受けた者は内部から凍結、 〇〇〇:やがて永久(とこしえ)の眠りにつく 〇〇〇:触媒は・・・」 アル:「君とて、例外ではないよ・・・」  :頬を赤らめて尚、踊るように軽やかに、  :筆を走らせていた・・・  :  0:【場面転換】大書庫 最深部  :ここが終着点なのだろう  :階段ではなく、  :黒い石でできた道が続いている  :表現し難い"異様さ"が、そこにはあった アル:「最深部は…『漆黒(しっこく)』 アル:重力とか、時間とか・・・一言で言えば アル:どんな相手にも効力のある"業"が中心かな アル:でも正直、あまりオススメはしない アル:・・・反動が、強過ぎるからね アル:司る属性は・・・"闇"だよ?」  :素材が解らない不気味な皮の表紙  :幾つもの亀裂があり、禍々しく明滅している  :黒いページには、  :白い歪な文字が書かれていた 〇〇〇:「―――『真理より来たるモノ』 〇〇〇:"与奪(よだつ)"の力 〇〇〇:術者は"本質"を見抜く事が重要とされる 〇〇〇:受け入れた先にあるものこそ、 〇〇〇:"事実"であり、"真実"なのだから 〇〇〇:触媒は・・・」  :震える手で、筆を執る  :・・・後悔のないように  :書き終えた後、アルが口を開いた アル:「さぁ・・・戻ろう アル:此処には、長く居ちゃいけないからね」  :何処か、寂しそうな声で―――  :  0:【場面転換】館の応接間 〇〇〇:「ふぅ・・・見て!もう手帳に書き切れない! 〇〇〇:偶然持ってたけど、あって良かったー!」  :自慢げに手帳を広げてアルに見せる アル:「フフ、満足したようで何よりだ」 〇〇〇:「とっても楽しかった! 〇〇〇:本当に素敵な所・・・」  :アルが用意してくれた紅茶と  :焼き菓子を堪能する 〇〇〇:「あ~あ、一冊だけでも持って帰りたいなぁ」 アル:「構わない・・・」 〇〇〇:「え?」 アル:「どの子か選んで、持って行くと良い アル:それに選ばないと、 アル:この森からは出られないよ」 〇〇〇:「じゃあじゃあ!ここに書いた本、全部!」 アル:「・・・」  :紅茶を飲んでいたアルの手が止まる 〇〇〇:「コレに、コレと、コレ!あ、待って? 〇〇〇:コレと・・・あとコレも!」 アル:「・・・ダメに決まっているだろう」 〇〇〇:「えぇ!?」 アル:「耐えられる"限度"という物がある アル:そんな事をしたら、君は戻ってこれなくなる アル:二度と、 アル:日の光を浴びれなくなるかもしれない」 〇〇〇:「・・・」 アル:「そんな"リスク"を、 アル:君は侵したいのかい?」 〇〇〇:「そ、それは・・・」 アル:「・・・火、水、雷、地、風、氷、光、 アル:そして、闇 アル:適正があるとはいえ アル:選べる属性は"1つ"だけ アル:さあ・・・君なら、どれを選ぶ?」  :考え込む〇〇〇※アドリブ可 読み返しOK 〇〇〇:「・・・決めた」  :その階層に行き、  :一冊の分厚い魔導書を手に取る 〇〇〇:「私は―――『(階層の名)』の魔導書を選ぶ」 アル:「・・・理由を聞いても、良いかな?」 〇〇〇:「(アドリブ)」 アル:「フフ・・・なるほどね、 アル:実に君らしい答えだ アル:ボクは君の選択を尊重するよ・・・ アル:むしろ―――」 〇〇〇:「?」  :ボソリと呟くアル アル:「君ならきっと・・・ アル:"その子"を選んでくれると、 アル:思っていたからね」 〇〇〇:「・・・何か言った?」 アル:「さて、ボクの役目は終わったようだ・・・ アル:そろそろ、お別れの時間だね? アル:森を越えた先に、 アル:向こう側へと繋がる"橋"が架かっている アル:"その子"と一緒なら、 アル:君が望んだ場所に出られるはずだ・・・」  :微笑むアル、  :手の中の魔導書が脈動した気がする  :  0:【場面転換】館の玄関 〇〇〇:「本当に、貰って良いの・・・?」 アル:「ああ、"その子"は既に君のモノだよ?」 〇〇〇:「ありがとう、アル・・・ 〇〇〇:今度会ったら"お礼"するね?」 アル:「・・・期待しよう」 〇〇〇:「じゃあ、また!」  :駆けて行く後ろ姿を見送るアル  :霧に消えた頃、ポツリと言う アル:「また会おう・・・『(階層の名)』の〇〇〇 アル:次は、"あちらの世界"で―――」  :  0:アルの嗤い声が、静かに響く 0:二つの"赤い瞳"を輝かせて… 0:  :fin. 0:※物語の詳細は元サイト最下部にて

0:ノック三回、木の扉をゆっくり開ける音  :風が吹き込み、到る所にある蝋燭が揺れる  :半分開けた扉から  :ランタンと顔を出し、中を窺う 〇〇〇:「どなたか、いらっしゃいませんかー・・・?」  :声は響くが返事は無い 〇〇〇:「こんな所に洋館があるなんて・・・ 〇〇〇:外に居ても何があるか分からないし、 〇〇〇:少しの間だけでも休ませてくれたら 〇〇〇:嬉しいけど―――」 アル:「・・・やぁ」 〇〇〇:「―――ヒャアッ!?(悲鳴可)」  :背後に立っていたのは、ローブを纏った人物  :被ったフードから口元と  :結われた銀髪だけが覗く 〇〇〇:「あ、あなたは・・・」 アル:「ボクは―――"アル" アル:この館の主であり、管理人であり、 アル:"司書(ししょ)"さ」 〇〇〇:「わ、私の名前は―――」 アル:「(被せて)ところで・・・君、迷子?」 〇〇〇:「え・・・ええ」※肯定 アル:「へぇ・・・おかしいな?」 〇〇〇:「おかしい?」 アル:「この森はね、"魔物除けの霧"が アル:特に濃いのさ アル:常人であれば、狂ってしまう程にね・・・? アル:だから、普通の人間は入ってこれない」 〇〇〇:「どういうこと?」 アル:「この森に入るには、"魔術"が必要なのさ アル:てっきり、君も"ソレ"を使って アル:来たと思ったんだよ・・・ アル:出る時にも、必要だからね」 〇〇〇:「どうしよう・・・元の場所へ戻れないの?」 アル:「フフ、帰る方法はあるさ アル:・・・"魔の素質"があれば、ね?」 〇〇〇:「わからない・・・」 アル:「ふーん・・・それは大変だね・・・? アル:まあ久しぶりの来客だ、 アル:ゆっくりしていくと良い アル:・・・"あの子達"も喜ぶ」 〇〇〇:「?そういえばさっき司書って―――」 アル:「そう、ここはただの館じゃない・・・ アル:ボクにとって特別な場所、 アル:秘密の"隠れ家"さ」  :館へ入っていくアル  :振り返り、手を広げ、告げる アル:「・・・ようこそ、"魔導書館"へ―――」  :悪戯な笑みを浮かべながら・・・  :  0:【場面転換】大書庫 零層  :羊皮紙の香りが漂う、蝋燭で照らされた空間、  :下へ下へと続く  :木製の巨大な螺旋階段の壁沿いに、  :所狭しと詰められた  :見渡す限りの"本達"・・・ 〇〇〇:「凄い・・・」 アル:「魔に通じる"すべて"が、 アル:此処にある・・・」 〇〇〇:「こういうの憧れてた! 〇〇〇:どれでも読んで良いの?」 アル:「この子達も君を歓迎している、 アル:自由に―――」 〇〇〇:「(被せて)って全然読めない! 〇〇〇:何これ英語じゃないの?!」 アル:「・・・読めないんだ?」 〇〇〇:「日本語じゃないのは解ってたよ? 〇〇〇:でも・・・」  :棚から取った本を床に置き、  :手を付いて項垂れる アル:「不思議だね?少なくとも アル:"適正"はあるのに」 〇〇〇:「うぅ・・・」  :落ち込んでいると、アルが傍にやってきた アル:「可哀想だね・・・?」  :跪いたアルが色白の手を頬に添える 〇〇〇:「・・・え」 アル:「フフ・・・」  :アルの顔が徐々に近づく 〇〇〇:「なっ、ちょっと―――」 アル:「大丈夫・・・」  :目の前にはアルの赤と青の美しい瞳 〇〇〇:「ア・・・ル・・・?」 アル:「ボクに、任せて・・・」  :そして、お互いの唇が触れ合いそうになり 〇〇〇:「―――ッ!」  :思わず目を瞑った―――が アル:「さ、もういいよ?」 〇〇〇:「・・・へ?」 アル:「どう?読めるように・・・なったでしょ?」 〇〇〇:「ッ!ホントだ・・・読める」  :先程は読めなかった  :エンボス加工の白い装丁の本  :そこに書かれている文字を、  :今は"理解"できる アル:「・・・君には、"どんな色"が合うだろう? アル:書庫の子達はね・・・魔導のチカラによって アル:それぞれ違う"色"を持っているんだ アル:明るい色から、暗い色まで アル:まさに、千差万別・・・選り取り見取りさ」  :高鳴る鼓動、本を拾い上げ、もう一度開く アル:「第零層…その名は、『白銀(はくぎん)』 アル:"光"の属性を司る アル:主に、再生や復活、治癒を得意としている アル:"ある属性"に対しては、 アル:特に効果的だね・・・」 〇〇〇:「―――『無垢(むく)なる光』 〇〇〇:"浄化"の力 〇〇〇:それはあらゆるモノを癒し、 〇〇〇:生命に活力を与える 〇〇〇:悪を滅する"神聖な業(わざ)"とされているが、 〇〇〇:これは死を拒絶する 〇〇〇:"魔のチカラ"に他ならない 〇〇〇:触媒(しょくばい)は・・・」  :ページを捲る手が、止まらない  :持っていた手帳を取り出し、  :文章を書き留める アル:「おやおや・・・フフ」  :アルはただ微笑んで、  :その様子を見守っていた  :  0:【場面転換】大書庫 地下一層  :ランタンの灯りが揺らめき、  :木材の軋む音が響く  :"炙られ"煤けたような床を  :注意して進んで行く アル:「第一層…『紅蓮(ぐれん)』 アル:"火"の属性を司る アル:手に収まる炎から、 アル:一帯を消滅させる爆炎まで アル:火の齎(もたら)すソレは、 アル:まるで芸術さ・・・ アル:ボクはね?火を見ていると、 アル:とても落ち着くんだ アル:・・・モノが燃える光景は儚くも、美しい アル:始まりであり、終わりでもあるからね・・・」 〇〇〇:「赤い本が、こんなに沢山・・・けど 〇〇〇:なんだかここだけ・・・少し、暑いかも」 アル:「秘めたチカラにより、 アル:熱を帯びるモノも多い アル:もっとも、 アル:此処は燃える事はないけどね・・・」  :本を手に取る、  :赤い大きな蛇の鱗のような表紙  :ページを捲ると、熱気が顔を撫でた 〇〇〇:「―――『緋色の目覚め』 〇〇〇:"憑依(ひょうい)"の力 〇〇〇:物質に灼熱の力を宿す 〇〇〇:炎に触れた対象は瞬く間に"融解"する 〇〇〇:自身と宿された物質が 〇〇〇:この炎で焼ける事はない 〇〇〇:火とは身近であるが故に 〇〇〇:畏(おそ)れられる存在である 〇〇〇:触媒は・・・」  :言いながら手帳に書き記す アル:「君も、気に入ってくれたら・・・嬉しいよ」  :その声が耳に届いたかは、わからない  :  0:【場面転換】大書庫 地下二層  :階段を下り、暑さが和らいだ頃  :木の床を踏む音に、若干の"砂"が混じる アル:「第二層…『大地(だいち)』 アル:"地"の属性を司る アル:地表を割ったり、隆起(りゅうき)させたり、 アル:それを使って押し潰したりね アル:相手を生き埋めなんて事もできたかな・・・」 〇〇〇:「ふ~ん?あ、この本良さそう」  :棚に手を伸ばし本を掴むが、  :なかなか抜けない 〇〇〇:「ん~! 〇〇〇:これ、一冊がすごく、重い・・・よっ」  :その本は一見するとまるで  :切り立った崖のようであり  :大きさの違う細くて四角い石を  :何枚も組み合わせた表紙だった アル:「ボクにとっては造作のない事でも、 アル:君にとっては違うんだろうね・・・」  :床に置いて本を捲る、もはや遠慮は無い 〇〇〇:「―――『鋼(はがね)の刻印』 〇〇〇:"強化"の力 〇〇〇:術者の体を硬質化させる 〇〇〇:刃すら通さぬ堅牢(けんろう)な肉体は 〇〇〇:盾であり武器である 〇〇〇:だが、心せよ 〇〇〇:折れまいとする"想いの強さ"こそ 〇〇〇:必要なのだと 〇〇〇:触媒は・・・」 アル:「"矛盾"とは、実に面白い言葉だよ・・・」  :筆の音だけが乾いた空間に響いていた  :  0:【場面転換】大書庫 地下三層  :靴の砂を落とし、進んだ先  :所々"何か"が当たって  :剥がれたような跡がある アル:「第三層…『鮮黄(せんき)』 アル:"雷"の属性を司る アル:強大な威力故に轟音を伴(ともな)い、 アル:古(いにしえ)の時代から恐怖の象徴とされた アル:多少扱いづらいが、応用力もある・・・ アル:理解さえすれば、 アル:広範囲に影響を及ぼすだろう」 〇〇〇:「わぁ・・・この本、綺麗・・・」  :その本は表紙を真鍮製の金属で固定された  :息を呑む程に美しい、黄金の本 アル:「そのチカラは果たして・・・」 〇〇〇:「―――『天の裁き』 〇〇〇:"断罪"の力 〇〇〇:大いなる空、約束の地へと至る道 〇〇〇:穢れを祓(はら)い、魂を還す"神の一撃" 〇〇〇:それは、哀れな者を導く塔であり 〇〇〇:それは、愚かな者を屠(ほふ)る鉄槌である 〇〇〇:触媒は・・・」 アル:「"神"か、"悪魔"か―――」  :止まらない筆の音に、  :アルは静かに哂うのだった  :  0:【場面転換】大書庫 地下四層  :煌びやかさを後に引き、  :生えている"花"を  :踏まないようにして、進む アル:「第四層…『深緑(しんりょく)』 アル:"風"の属性を司る アル:風の流れを読み取ったり、 アル:向きや強弱を変えたり アル:変わった所で言えば、 アル:他者の言葉を理解したり アル:植物を操る能力にも長けているね・・・」 〇〇〇:「良い香り・・・この本からかな?」  :躊躇いなく棚に手を伸ばし、本を抜き取る  :高貴な縁取りが施された、深い緑色の表紙  :ページを捲ると、仄かに花の香りがした 〇〇〇:「―――『束ねる叡智(えいち)』 〇〇〇:"変換"の力 〇〇〇:生きとし生けるものが発した言語を理解する 〇〇〇:それは術をかける者とて、例外ではない 〇〇〇:"声"とは即ち生き物が発する"風"である 〇〇〇:触媒は・・・」 アル:「君もすっかり、虜(とりこ)だね・・・?」  :歌うように小気味良く、  :手帳に書き込んでいく  :  0:【場面転換】大書庫 地下五層  :"苔生した"場所を避けて通る  :湿気でよく木が腐らないものだと感心した アル:「第五層…『群青(ぐんじょう)』 アル:"水"の属性を司る アル:形のない水はどんな"モノ"にでもなれる アル:生命の源であり、破壊の化身・・・」 〇〇〇:「怖い事言わないで?あ、この本とかどう?」  :魚の鱗のような物で覆われた、青い表紙の本  :光が差し込んだ水底の如く反射している  :一度濡れたであろう、歪んだページを捲る 〇〇〇:「―――『深淵(しんえん)の檻』 〇〇〇:"束縛"の力 〇〇〇:対象を水の球体に閉じ込める 〇〇〇:水圧、水流に変化を加えることで、 〇〇〇:その拘束性はより凶悪さを増す 〇〇〇:触媒は・・・」 アル:「君なら・・・どっちかな」  :不思議と流れるように、筆が乗った  :  0:【場面転換】大書庫 地下六層  :吐く息は白くなり、床には霜が降りている  :進むにつれ、感じる寒さが強くなっていく アル:「第六層…『紫紺(しこん)』 アル:"氷"の属性を司る アル:万物は、その美しさに魅了され、 アル:そして死に絶(た)える・・・ アル:実に、神秘的だね・・・」 〇〇〇:「ここ、寒い・・・けど」 アル:「誰しも・・・誘惑には逆らえない」  :結露が生じている棚から一冊の本を手に取る  :硝子細工の幻想的な装飾に思わず見惚れる  :ページを捲ると、ひんやりと冷たさを感じた 〇〇〇:「―――『結晶のオペラ』 〇〇〇:"創造"の力 〇〇〇:氷の武器と兵士を創り出し、使役する 〇〇〇:これは再生し、また無限である 〇〇〇:冷気を受けた者は内部から凍結、 〇〇〇:やがて永久(とこしえ)の眠りにつく 〇〇〇:触媒は・・・」 アル:「君とて、例外ではないよ・・・」  :頬を赤らめて尚、踊るように軽やかに、  :筆を走らせていた・・・  :  0:【場面転換】大書庫 最深部  :ここが終着点なのだろう  :階段ではなく、  :黒い石でできた道が続いている  :表現し難い"異様さ"が、そこにはあった アル:「最深部は…『漆黒(しっこく)』 アル:重力とか、時間とか・・・一言で言えば アル:どんな相手にも効力のある"業"が中心かな アル:でも正直、あまりオススメはしない アル:・・・反動が、強過ぎるからね アル:司る属性は・・・"闇"だよ?」  :素材が解らない不気味な皮の表紙  :幾つもの亀裂があり、禍々しく明滅している  :黒いページには、  :白い歪な文字が書かれていた 〇〇〇:「―――『真理より来たるモノ』 〇〇〇:"与奪(よだつ)"の力 〇〇〇:術者は"本質"を見抜く事が重要とされる 〇〇〇:受け入れた先にあるものこそ、 〇〇〇:"事実"であり、"真実"なのだから 〇〇〇:触媒は・・・」  :震える手で、筆を執る  :・・・後悔のないように  :書き終えた後、アルが口を開いた アル:「さぁ・・・戻ろう アル:此処には、長く居ちゃいけないからね」  :何処か、寂しそうな声で―――  :  0:【場面転換】館の応接間 〇〇〇:「ふぅ・・・見て!もう手帳に書き切れない! 〇〇〇:偶然持ってたけど、あって良かったー!」  :自慢げに手帳を広げてアルに見せる アル:「フフ、満足したようで何よりだ」 〇〇〇:「とっても楽しかった! 〇〇〇:本当に素敵な所・・・」  :アルが用意してくれた紅茶と  :焼き菓子を堪能する 〇〇〇:「あ~あ、一冊だけでも持って帰りたいなぁ」 アル:「構わない・・・」 〇〇〇:「え?」 アル:「どの子か選んで、持って行くと良い アル:それに選ばないと、 アル:この森からは出られないよ」 〇〇〇:「じゃあじゃあ!ここに書いた本、全部!」 アル:「・・・」  :紅茶を飲んでいたアルの手が止まる 〇〇〇:「コレに、コレと、コレ!あ、待って? 〇〇〇:コレと・・・あとコレも!」 アル:「・・・ダメに決まっているだろう」 〇〇〇:「えぇ!?」 アル:「耐えられる"限度"という物がある アル:そんな事をしたら、君は戻ってこれなくなる アル:二度と、 アル:日の光を浴びれなくなるかもしれない」 〇〇〇:「・・・」 アル:「そんな"リスク"を、 アル:君は侵したいのかい?」 〇〇〇:「そ、それは・・・」 アル:「・・・火、水、雷、地、風、氷、光、 アル:そして、闇 アル:適正があるとはいえ アル:選べる属性は"1つ"だけ アル:さあ・・・君なら、どれを選ぶ?」  :考え込む〇〇〇※アドリブ可 読み返しOK 〇〇〇:「・・・決めた」  :その階層に行き、  :一冊の分厚い魔導書を手に取る 〇〇〇:「私は―――『(階層の名)』の魔導書を選ぶ」 アル:「・・・理由を聞いても、良いかな?」 〇〇〇:「(アドリブ)」 アル:「フフ・・・なるほどね、 アル:実に君らしい答えだ アル:ボクは君の選択を尊重するよ・・・ アル:むしろ―――」 〇〇〇:「?」  :ボソリと呟くアル アル:「君ならきっと・・・ アル:"その子"を選んでくれると、 アル:思っていたからね」 〇〇〇:「・・・何か言った?」 アル:「さて、ボクの役目は終わったようだ・・・ アル:そろそろ、お別れの時間だね? アル:森を越えた先に、 アル:向こう側へと繋がる"橋"が架かっている アル:"その子"と一緒なら、 アル:君が望んだ場所に出られるはずだ・・・」  :微笑むアル、  :手の中の魔導書が脈動した気がする  :  0:【場面転換】館の玄関 〇〇〇:「本当に、貰って良いの・・・?」 アル:「ああ、"その子"は既に君のモノだよ?」 〇〇〇:「ありがとう、アル・・・ 〇〇〇:今度会ったら"お礼"するね?」 アル:「・・・期待しよう」 〇〇〇:「じゃあ、また!」  :駆けて行く後ろ姿を見送るアル  :霧に消えた頃、ポツリと言う アル:「また会おう・・・『(階層の名)』の〇〇〇 アル:次は、"あちらの世界"で―――」  :  0:アルの嗤い声が、静かに響く 0:二つの"赤い瞳"を輝かせて… 0:  :fin. 0:※物語の詳細は元サイト最下部にて