台本概要
270 views
タイトル | さくらロード |
---|---|
作者名 | あかおう (@akaouwaikasuki) |
ジャンル | その他 |
演者人数 | 1人用台本(不問1) |
時間 | 10 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
|°ω°ᔨ桜が咲く季節が待ち遠しいですね。 一人で頑張って東京へ出てきたものの、上手くいかない事だらけのOLさんのお話です。 桜の風景を感じて頂けるといいな。 ※ボイコネ投稿時から気になる個所を数か所変更していますが大筋は変えていません。 【声劇・配信での使用/連絡不要】 ★配信での投げ銭が発生する場合でも連絡不要です。 ★あなたの気が向いたら・・・(励みになるのでいずれかしてくれたら嬉しいな♪しなくてもOK) →シナリオタイトル横の「つぶやく」を押してご自身のTwitterでツイートする。 →赤王(@akaouwaikasuki)メンションでご自身のTwitterでツイートする。 →赤王のツイッターの該当するシナリオのツイートにいいねする。 →赤王のツイッターの該当するシナリオのツイートをRT。 →その他思いやりある行動で大切にしてくださったら嬉しいです。 【禁止事項】 ★ライターの呼び捨て表記。 ★盗作・自分が書きましたと言う行為。 ★無断で一部分を切り取っての使用や投稿。 ★上記以外で赤王が非常識と判断した行動・表記。 以上をされた方は即ブロックさせて頂き、以降赤王のシナリオ使用を禁止とさせて頂きます。 ★設定上の男役は女性が演じて楽しんで頂いてもかまいません。 ★設定上の女役はオネェ等にしなければ男性が演じても構いません。 ★アドリブは物語のジャンルを超える程曲げなければいくらでも可。 【YouTube・舞台・朗読等入場料を取る場合】 連絡必須:許可が下りるまで使用しないでください。 270 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
わたし | 不問 | - | 舞台役者をめざして上京したアラサーOL |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
0:「もしかしたら私を必要としているのは、この世で仕事だけなんじゃないかな。」
0:そんなゾッとする単語が頭をよぎったのは、きっと日曜の夜のせいだ。
0:
0:
0:「ううん、そんな事ない。そんな事ない。ない・・・よ・・・多分。」
0:か細くそう言い放った言葉は、一人暮らしの壁にわずかに跳ね返っていった。
0:
0:不気味な音を響かせる洗濯機の音が、虚しくもあり。悲しくもあり。
0:ポジティブに捉えれば、物悲しいワンルームに賑やかな音を奏でるものの一つとでも言うか。
0:
0:
0:(溜息)はぁ・・・。
0:
0:実家を飛び出してもう10年。
0:どうしても舞台役者がやりたくて飛び出したはずだった。
0:なのに今は、会社でそこそこ中堅の「お局様」ならぬ「こ局」なんてあだ名をつけられている。
0:
0:「人生を捧げる」と本気で思ってた舞台の世界はそんなに甘くはなかった。
0:バイトやチケットノルマに追われて毎日疲弊していく心。
0:その内、同じように役者を目指すダメな男に身も心も依存され。
0:気が付けば「彼の夢が私の夢」だなんて言っていた。
0:
0:そこからは、どこかで聞いた様なよくあるパターン。
0:気が付けば彼は浮気し、ある朝私の貯金を全ておろして消えていた。
0:「二人の結婚資金だから、パスワードは二人が付き合った記念日にしたよ」なんて。
0:今思えば虫唾が走るほどメンヘラっていた自分をぶん殴りたくなる。
0:
0:「役者以外私には何もない」
0:「私には役者の才能しかない」
0:田舎のはじっこでそう思い込んでいた女子高生は、
0:東京という大きな街に呑まれ。自分というものを見失い。
0:手を伸ばせばすぐに手に入る欲望に染まり。
0:気が付けば「どこにでもいる普通のお嫁さん」に憧れる女になっていた。
0:
0:だけどそれも甘くはなかった。
0:「普通のお嫁さん」になるのがこんなにも難しいなんて知らなかった。
0:だって田舎の友達は、早くに結婚出来ていたし、なんなら離婚も繰り返していた。
0:20代後半にはマイホームを建てて、子供の手が少し離れてお茶に誘いやすくなって。
0:「あんたは高校の頃と全然変わらないね。役者、頑張ってて羨ましい」
0:そんな言葉を真に受けて都会風を吹かして。今じゃこのザマだ。
0:
0:「勝ち組」だとか「負け組」だとかは思わない。
0:人それぞれの人生があるんだ。比べたくなんかない。
0:そう思って生きてきた。気が付いたら大台の30歳を迎え。四捨五入したらもうすぐ「アラフォー」にさしかかっている。
0:もうなんだか、怖いものなんて無いような気がしてきている。
0:
0:あーあ。夢にまみれて、欲にまみれて、今の私に一体何が残ったんだろう。
0:大人になったからって誰しもが品行方正になるわけでもない。
0:御茶ノ水駅で偶然再会した劇団の男友達とは、週に一度抱かれるためだけに会っている。
0:そんな相手が居たって豊かさとは程遠い。
0:
0:浅草線(あさくさせん)本所吾妻橋駅(ほんじょあずまばしえき)徒歩12分のアパートには。
0:今日もカタカタと鳴る洗濯機が、ものむなしく横たわる私を笑っているように見える。
0:
0:こんな時間に誰が私を慰めてくれるだろう。
0:こんな私に誰が優しくしてくれるだろう。
0:仕事しか私を必要としていないかもしれない。
0:そんなの嫌だ。きっと私にも何かある何かあるはずなんだ。
0:
0:そういえば親孝行という親孝行すらしていない。
0:思い立って10年ぶりに実家の母に電話した。
0:喧嘩をして飛び出してはいたものの、電話以外のやり取りは続いていた母。
0:遠く東京に出た一人娘を心配して、定期的にお米やら野菜を送ってくれている。
0:母のうざったい愛情が、東京へ出ても付きまとってきているようで、最初は何だか嫌だった。
0:
0:母の定期便にはいつも、何気ない手紙が入っていた。
0:呆れたのは、前の月のカレンダーの裏に手紙を書いてきた事だ。
0:「節約しか趣味がないなんて、虚しい人生だね。」
0:都会で暮らしているだけで、別にきらびやかな事はないくせに。
0:母の手紙のそんな事にまで嫌味を言っている自分に更に嫌気がさしていた。
0:
0:数回電話のコールが鳴る。まるで当たり前の様に口を開く母。
0:「はいはい、久しぶりだねぇ。どしたの。お米なくなったかね?」
0:すこし嬉しそうな母の声。
0:なによ・・・10年電話しなかっただけなのに。
0:
0:私の返事を待たずに母は続ける。
0:「ああそういえばね。丁度今、いつもの定期便をアンタに送る所だったのよ。」
0:「あんたほら、松雪屋(まつゆきや)の”はがれ餅”好きだったいねぇ?お母さん今日発売だって昨日気が付いてねぇ」
0:「東京にゃ、松雪屋のはがれ餅なんて無いでしょ?お母さん、送ったろって朝一番に並んだんよ。」
0:「そしたらねぇ、お父さんもおんなじ事考えとってねぇ」
0:「二人で仲良く、”早朝デート”としゃれこませて頂きましたよ。うふふ」
0:
0:・・・聞いても居ないのに、母の口からは水が溢れるように言葉が飛び出す。
0:うっとうしい。うっとうしい。うっとうしい!!
0:・・・・ずっとそう思っていた。
0:私は一人でも生きていける。女優の才能がある、きっと東京では私を待ってる場所がある。
0:こんな田舎に私の居場所がないのは当然。
0:こんなダサい服しか売ってない商店街なんてもういや!私は東京の女になるんだ!
0:
0:
0:築50年のボロいアパートで、非正規雇用と変わらない給料で細々と事務をする33歳の女になんて・・・
0:なるはずじゃなかったのに・・・・・
0:
0:
0:ゆっくりと、母のいつもの柔らかい方言が私に話しかける。
0:「どしたんね、なんか元気ないが?お腹でも痛いかね。アンタ小さい頃から、よーけお腹こわしよったしねぇ。東京の水が合わへんのかねぇ」
0:的外れな語り掛けにイラついたのか、元気がない事に気が付かれて焦ったのか、私は思わず声を荒げていた。
0:「・・・どうして?どうしてそんなに優しく出来るの?私が今、全然ダメだって!全然ダメな人生送ってるって知ってるじゃん!
0: ・・・なんね、お母さんもそうやって私ん事バカにしよるんか!!何もない空っぽな女やって!!何の才能も魅力もないババアやって言うんか!!」
0:
0:自分のどこにこんな駄々っ子な面が隠れていたのか。
0:言い終わってから、もう本当にどうしようもない自分に気が付いた。
0:何だかもう、全てどうでもよくなってしまった。
0:母は少し黙って、あっけらかんと口を開いた。
0:
0:(母)「なんね?仕事で嫌な事でもあったんか?そやろが?」
0:
0:・・・驚いた。一言も今の会社の事なんて話したこともないのに。
0:(母)「あんたは高校生の頃から、困ってる人ほっとけんいうて。相手が楽になるならって自分の事も考えなしに相手を助けよったからなぁ」
0:そんで自分の方がニッチもサッチもいかん様になったら、今みたいにお母さんに当たり散らすんよなぁ。差し当たって今は仕事でそうなんかなぁ?てお母さん思ったんよ」
0:
0:気が付けば私はまるで小さな子供のように泣きじゃくってこれまでの事を話していた。
0:母は「なんでそんな無理してからに」「たまにはこっちにも帰ってきんね」「よー泣く大きな子供じゃねぇ」と笑っていた。
0:
0:
0:私が住んでいる場所は、実家近くの風景に似ていた。
0:本所吾妻橋駅(ほんじょあずまばしえき)を東方向へ。隅田川沿いに歩けば、故郷と同じ桜が今年もトンネルを作る。
0:泣きはらした目を春の冷たい風に冷やしてもらおう。
0:今の「さくらロード」はふるさとと同じ風がきっと吹いているから。
0:
0:
0:(おしまい)
0:「もしかしたら私を必要としているのは、この世で仕事だけなんじゃないかな。」
0:そんなゾッとする単語が頭をよぎったのは、きっと日曜の夜のせいだ。
0:
0:
0:「ううん、そんな事ない。そんな事ない。ない・・・よ・・・多分。」
0:か細くそう言い放った言葉は、一人暮らしの壁にわずかに跳ね返っていった。
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0:不気味な音を響かせる洗濯機の音が、虚しくもあり。悲しくもあり。
0:ポジティブに捉えれば、物悲しいワンルームに賑やかな音を奏でるものの一つとでも言うか。
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0:(溜息)はぁ・・・。
0:
0:実家を飛び出してもう10年。
0:どうしても舞台役者がやりたくて飛び出したはずだった。
0:なのに今は、会社でそこそこ中堅の「お局様」ならぬ「こ局」なんてあだ名をつけられている。
0:
0:「人生を捧げる」と本気で思ってた舞台の世界はそんなに甘くはなかった。
0:バイトやチケットノルマに追われて毎日疲弊していく心。
0:その内、同じように役者を目指すダメな男に身も心も依存され。
0:気が付けば「彼の夢が私の夢」だなんて言っていた。
0:
0:そこからは、どこかで聞いた様なよくあるパターン。
0:気が付けば彼は浮気し、ある朝私の貯金を全ておろして消えていた。
0:「二人の結婚資金だから、パスワードは二人が付き合った記念日にしたよ」なんて。
0:今思えば虫唾が走るほどメンヘラっていた自分をぶん殴りたくなる。
0:
0:「役者以外私には何もない」
0:「私には役者の才能しかない」
0:田舎のはじっこでそう思い込んでいた女子高生は、
0:東京という大きな街に呑まれ。自分というものを見失い。
0:手を伸ばせばすぐに手に入る欲望に染まり。
0:気が付けば「どこにでもいる普通のお嫁さん」に憧れる女になっていた。
0:
0:だけどそれも甘くはなかった。
0:「普通のお嫁さん」になるのがこんなにも難しいなんて知らなかった。
0:だって田舎の友達は、早くに結婚出来ていたし、なんなら離婚も繰り返していた。
0:20代後半にはマイホームを建てて、子供の手が少し離れてお茶に誘いやすくなって。
0:「あんたは高校の頃と全然変わらないね。役者、頑張ってて羨ましい」
0:そんな言葉を真に受けて都会風を吹かして。今じゃこのザマだ。
0:
0:「勝ち組」だとか「負け組」だとかは思わない。
0:人それぞれの人生があるんだ。比べたくなんかない。
0:そう思って生きてきた。気が付いたら大台の30歳を迎え。四捨五入したらもうすぐ「アラフォー」にさしかかっている。
0:もうなんだか、怖いものなんて無いような気がしてきている。
0:
0:あーあ。夢にまみれて、欲にまみれて、今の私に一体何が残ったんだろう。
0:大人になったからって誰しもが品行方正になるわけでもない。
0:御茶ノ水駅で偶然再会した劇団の男友達とは、週に一度抱かれるためだけに会っている。
0:そんな相手が居たって豊かさとは程遠い。
0:
0:浅草線(あさくさせん)本所吾妻橋駅(ほんじょあずまばしえき)徒歩12分のアパートには。
0:今日もカタカタと鳴る洗濯機が、ものむなしく横たわる私を笑っているように見える。
0:
0:こんな時間に誰が私を慰めてくれるだろう。
0:こんな私に誰が優しくしてくれるだろう。
0:仕事しか私を必要としていないかもしれない。
0:そんなの嫌だ。きっと私にも何かある何かあるはずなんだ。
0:
0:そういえば親孝行という親孝行すらしていない。
0:思い立って10年ぶりに実家の母に電話した。
0:喧嘩をして飛び出してはいたものの、電話以外のやり取りは続いていた母。
0:遠く東京に出た一人娘を心配して、定期的にお米やら野菜を送ってくれている。
0:母のうざったい愛情が、東京へ出ても付きまとってきているようで、最初は何だか嫌だった。
0:
0:母の定期便にはいつも、何気ない手紙が入っていた。
0:呆れたのは、前の月のカレンダーの裏に手紙を書いてきた事だ。
0:「節約しか趣味がないなんて、虚しい人生だね。」
0:都会で暮らしているだけで、別にきらびやかな事はないくせに。
0:母の手紙のそんな事にまで嫌味を言っている自分に更に嫌気がさしていた。
0:
0:数回電話のコールが鳴る。まるで当たり前の様に口を開く母。
0:「はいはい、久しぶりだねぇ。どしたの。お米なくなったかね?」
0:すこし嬉しそうな母の声。
0:なによ・・・10年電話しなかっただけなのに。
0:
0:私の返事を待たずに母は続ける。
0:「ああそういえばね。丁度今、いつもの定期便をアンタに送る所だったのよ。」
0:「あんたほら、松雪屋(まつゆきや)の”はがれ餅”好きだったいねぇ?お母さん今日発売だって昨日気が付いてねぇ」
0:「東京にゃ、松雪屋のはがれ餅なんて無いでしょ?お母さん、送ったろって朝一番に並んだんよ。」
0:「そしたらねぇ、お父さんもおんなじ事考えとってねぇ」
0:「二人で仲良く、”早朝デート”としゃれこませて頂きましたよ。うふふ」
0:
0:・・・聞いても居ないのに、母の口からは水が溢れるように言葉が飛び出す。
0:うっとうしい。うっとうしい。うっとうしい!!
0:・・・・ずっとそう思っていた。
0:私は一人でも生きていける。女優の才能がある、きっと東京では私を待ってる場所がある。
0:こんな田舎に私の居場所がないのは当然。
0:こんなダサい服しか売ってない商店街なんてもういや!私は東京の女になるんだ!
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0:築50年のボロいアパートで、非正規雇用と変わらない給料で細々と事務をする33歳の女になんて・・・
0:なるはずじゃなかったのに・・・・・
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0:
0:ゆっくりと、母のいつもの柔らかい方言が私に話しかける。
0:「どしたんね、なんか元気ないが?お腹でも痛いかね。アンタ小さい頃から、よーけお腹こわしよったしねぇ。東京の水が合わへんのかねぇ」
0:的外れな語り掛けにイラついたのか、元気がない事に気が付かれて焦ったのか、私は思わず声を荒げていた。
0:「・・・どうして?どうしてそんなに優しく出来るの?私が今、全然ダメだって!全然ダメな人生送ってるって知ってるじゃん!
0: ・・・なんね、お母さんもそうやって私ん事バカにしよるんか!!何もない空っぽな女やって!!何の才能も魅力もないババアやって言うんか!!」
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0:自分のどこにこんな駄々っ子な面が隠れていたのか。
0:言い終わってから、もう本当にどうしようもない自分に気が付いた。
0:何だかもう、全てどうでもよくなってしまった。
0:母は少し黙って、あっけらかんと口を開いた。
0:
0:(母)「なんね?仕事で嫌な事でもあったんか?そやろが?」
0:
0:・・・驚いた。一言も今の会社の事なんて話したこともないのに。
0:(母)「あんたは高校生の頃から、困ってる人ほっとけんいうて。相手が楽になるならって自分の事も考えなしに相手を助けよったからなぁ」
0:そんで自分の方がニッチもサッチもいかん様になったら、今みたいにお母さんに当たり散らすんよなぁ。差し当たって今は仕事でそうなんかなぁ?てお母さん思ったんよ」
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0:気が付けば私はまるで小さな子供のように泣きじゃくってこれまでの事を話していた。
0:母は「なんでそんな無理してからに」「たまにはこっちにも帰ってきんね」「よー泣く大きな子供じゃねぇ」と笑っていた。
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0:私が住んでいる場所は、実家近くの風景に似ていた。
0:本所吾妻橋駅(ほんじょあずまばしえき)を東方向へ。隅田川沿いに歩けば、故郷と同じ桜が今年もトンネルを作る。
0:泣きはらした目を春の冷たい風に冷やしてもらおう。
0:今の「さくらロード」はふるさとと同じ風がきっと吹いているから。
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0:
0:(おしまい)