台本概要

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タイトル 転生刑事〜粒餡派〜
作者名 VAL  (@bakemonohouse)
ジャンル コメディ
演者人数 3人用台本(男1、女1、不問1)
時間 20 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 規約なし!
お好きにお使いください!

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
ボア 91 転生したおっさん。見た目は美しめ。
ニコ 74 ボアの同僚。ヒョロガリ。
ポメラ 不問 79 小型犬のような青年。男女不問。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
ニコ:おいボア。いつまで寝てるんだ? ボア:ん…… ニコ:全然起きねえな。仕方ない。……事件だ! ボア:っ!!どこだ!この敏腕刑事を目の前にして太ぇ奴だぜぇ! ニコ:やっと起きたか。 ボア:ニコ!ホシはどこにいる!ん?ここはどこだ? ニコ:寝ぼけすぎだ。ここは冒険者ギルド。俺らが雇われてる会社みたいなもんだ。 ボア:……そう言えばそうだったな。で、事件って何なんだ? ニコ:起きないからそういったまでだ。 ボア:はぁ!?なんっだよ!デマ掴まされたわけか!この詐欺師! ニコ:やかましい!勤務時間中に堂々と居眠りしやがって!この給料泥棒! ボア:仕方ないだろ!事件が起きなきゃ俺にやることなんて一切── ニコ:あ!お前に用事があるんだった。 ボア:用事だあ? ニコ:お前、前に言ってただろ?人手が足りねえって。だから募集してたんだが、ついに1人来たんだよ面接希望者が。 ボア:採用! ニコ:え?は? ボア:刑事ってのは現場に出なきゃ始まらねえ。経験あるのみよ! ニコ:そのお前の言うケイジってやつがどんなもんなのか知らねえけど面接くらいは── ボア:さあそいつはどこだ!刑事のイロハを教え込んでやる! ニコ:ちょっ!おい!ボア!……本当にあだ名通り猪みたいな奴だ…… 0:間── ポメラ:(語り手)ここはフェニキア王国。剣と魔法が飛び交う所謂、異世界。 ポメラ:冒険者ギルドで自警団として働くボアは転生者であり、元は日本で刑事をしていた。本名は猪頭健吾郎。 ポメラ:敏腕刑事や熱血刑事などたくさんの呼び名で呼ばれた優秀な刑事だったが、麻薬組織を検挙するあと一歩の所で殉職。 ポメラ:そこで何やかんやあり、この世界に転生したのだ。何故か……女として。 0:冒険者ギルド、受付。 ボア:君か!?それとも君か!?はたまた君か!? ニコ:おいボア!手当たり次第に声をかけるな。 ボア:ちっ。邪魔者が来たか。 ニコ:人聞きの悪い…… ボア:で、どこにいるんだよ。新人刑事は。 ニコ:あそこテーブルに座ってる奴だ。育ちの良さそうな色男だよ。 ボア:あいつは…… ニコ:ん?知り合いか? ボア:いや?ただ良い匂いがする。 ニコ:匂い?むさくるしい匂いしかしないだろここは。 ボア:まあ刑事の勘に任せとけって。 ニコ:お、おう? 0:テーブルに移動 ボア:やあやあ新人くん! ポメラ:え。あ、こんにちは! ニコ:知ってると思うけど、一応紹介しておくぜ?俺がニコだ。でこっちがボア。名前の通り猪みたいな── ボア:君はどうして刑事になろうと思った? ポメラ:え、ケイジ? ニコ:あー自警団のことな? ポメラ:ああ!ぼ、僕は!この街の、もっと言えばこの国の人々の役に立ちたくて!自警団に入れば何か変えれるんじゃないかと思い!面接を受けに来ました! ボア:ほう?例えばどんな? ポメラ:僕は昔、初心者狩りに遭いました。ほら、見た目も全然強そうじゃありませんし、職業適性もヒーラーだったので……クエスト中に囮にされたこともあります。運良く上級冒険者に助けてもらって一命を取り留めましたけど、冒険者を辞めようか悩む程に落ち込みました。 ポメラ:もう僕みたいな人を増やしたくないんです! ニコ:へえ。苦労したんだな。……げ。 0:ニヤニヤしているボア。 ボア:いいね!採用!君はこれから仲間だ! ポメラ:ほ、本当ですか!?やった!よろしくお願いします!ボアさん!ニコさん! ニコ:あ、ああ。よろしく。 ボア:早速今から仕事に行けるか? ポメラ:今からですか?えっと……少しだけ用意してきてもよろしいでしょうか? ボア:ああ構わないぞ! ポメラ:ありがとうございます!すぐ戻りますので! 0:外に出ていくポメラ。 ニコ:……お前今度は何考えてんだ? ボア:別に何もぉ? ニコ:信用できねえ…… ボア:まあまあ。悪いようにはしねえよ。げへへへ ニコ:……前々から思ってたけど、お前の笑い方、誰よりも犯罪者だからな。 0:ギルド近くの路地。 ポメラ:通信魔法、レパシー展開…… ポメラ:聞こえるか?俺だ。思ったより簡単だったよ。……確かに女の方は強そうだ。だが、馬鹿丸出しだな。ずっとニヤニヤしてて、余程人手が足りないんだな。せっかく用意してきた設定がほとんど役に立たなかった。 ポメラ:……男の方か?ただのひょろ長いお飾りってところだろうな。女の脛齧って生きてる極太のヒモだろう。はははは! ポメラ:……わかってるよ。ちゃんと落としてやるって。その代わりヤクの取り分ちゃんと用意しとけよな。じゃあまた何かあったら連絡する。 0:ギルド内。 ニコ:お。戻ってきたか。それじゃあ早速── ポメラ:ボアさん。今日からよろしくお願いします!自警団の仕事、たくさん教えてください! ボア:おうよ!でもまあその小綺麗な格好じゃ捜査に差し支えがあるかもしれねえ。まずは着替えて来い。ニコ、案内してやれよ。 ニコ:……また悪い顔してんぞ。じゃあポメラついて来い。 ポメラ:ボアさんが案内してくれないんですか? ボア:熱烈で嬉しいが、流石に若い男の着替えは恥ずかしいじゃないか…… ニコ:おえ…… ボア:あ? ニコ:さあこっちだポメラ。さっさと着替えてボアに可愛がってもらえ。 ポメラ:……わかりました。 0:待機室。 ニコ:確かこの辺りに……お。あったあった。これならお前に合うサイズだろ。 ポメラ:ニコさん。 ニコ:何だ? ポメラ:ニコさんはボアさんとどういう関係なんですか? ニコ:どういうって……ただの同僚……だろ。 ポメラ:好きとかじゃないんですね? ニコ:……誰が……誰を? ポメラ:ニコさんがボアさんをです。 ニコ:お、俺が……あいつを? ポメラ:はい。 ニコ:ありえない。 ポメラ:え? ニコ:絶対にありえない!安心しろ!俺があいつに惚れる事なんて転生でもしない限りありえないのだよ! ポメラ:そ、そうですか。 ニコ:ああ!そうとも!だから心配なんてしなくていい!わかったね!ワトソン君! ポメラ:……誰ですかそれ。 ニコ:あーこれはボアの好きな……いやいいわ。説明するのが面倒だ。 ポメラ:恋敵……ってことですか? ニコ:……もうそれで。 ボア:お前らおっせえな!男同士で何してんだ! ニコ:全部お前のせいだ! ボア:はぁ!? ニコ:もう良いから早く連れて行け!俺は寝る!とてつもなく気分が悪いんだ! ボア:何が何だかわかんねーけど、まあいいや。じゃあ行くぞポメラ! ポメラ:は、はい! 0:城下町 ボア:さてポメラ。 ポメラ:はい、何でしょう。 ボア:一見、平和そうに見えるこの町にも今、この瞬間にも悪い事をしでかす奴がいる。 ポメラ:は、はい。 ボア:ポメラ。 ポメラ:(こいつまさか気付いて…) ボア:悪人を捕まえて来い! ポメラ:……え? ボア:刑事に必要なのは勘だ。間違っても良い。あとでどうにでもしてやる。悪人をしょっ引いて来い! ポメラ:(良かったあ。やっぱこいつ馬鹿だ。) ボア:さっさと走れ! ポメラ:え、あ、はい! ボア:もしやばそうなの見つけたら知らせに来い。くれぐれも1人で逮捕しようとすんじゃねーぞ! ポメラ:わかりました!(…とは言ったものの。さあてどうすっか…) 0:走りながら思案するポメラ。 ポメラ:あ!いい事思いついた。この間、取引をトチりやがった奴がいたな。どう切り捨てるか考えてたんだ。丁度良いじゃねえか。あいつに処理させりゃいいんだ。俺って冴えてるぜぇ。 ポメラ:そうと決まればさっさと戻んねーとな。 0:間── ポメラ:ボアさーん!はぁはぁ…… ボア:早かったじゃないか。もう見つけたのか? ポメラ:はい!実はギスバ屋という商店があるんですが、前々から怪しいと思っていて……たまたま店内を覗いたら奴隷がどうのと言っていたんです! ボア:何だと!?人身売買はここでは重罪のはずだ。 ポメラ:はい。もしかしたらあそこの店主は大悪人かも知れません! ボア:なら逮捕するしか無いな!さあ行くぞポメラ! ポメラ:(まずい!俺は店主に顔が知られてる。失念していた!) ボア:どうした?逃げられてしまうぞ! ポメラ:えっと……その…… ボア:まさかお前…… ポメラ:(今度こそバレたか!?) ボア:足を痛めたのか? ポメラ:……え? ボア:急いで帰って来たようだからどこかで痛めてしまったのかと……違ったか? ポメラ:い、いえ!足痛いです!とても! ボア:なら仕方ないな!1人で行ってくる!少し待ってろ! ポメラ:お気をつけてっ!! ポメラ……あいつマジ馬鹿だろ。何で組織の連中はあんな奴に苦労してんだろうな。 ポメラ:ま、とにかくこれで俺の仕事が一つ片付いた。なんなら、ギスバ屋の用心棒にボアがやられてくれてりゃもっと── ボア:戻ったぞ。 ポメラ:ふぉうわっ!!ど、どうしたんですか?忘れ物ですか? ボア:いや?もうボコして憲兵に渡して来た。 ポメラ:いくら何でも早すぎじゃ…… ボア:悪人は1秒でも早く消さないといけないからな! ポメラ:(絶対バレねーようにしないと……) ボア:ほら。 ポメラ:え、何ですか? ボア:足痛めてんだろ?おぶされよ。 ポメラ:え、でも。 ボア:いいから。早くしろ。 ポメラ:はい……ボアさんの背中暖かいですね。 ボア:そ、そうか?へへへ。それは照れるな。へへへへへ ポメラ:どうしたんです?そんなに笑って。 ボア:何でもねーよ。強いて言えば……お前を近くに感じることが嬉しくてよ。 ポメラ:……僕も嬉しいです。 ボア:そうか。でへへへへ。 ポメラ:(何か知らんが、こいつもう落ちてるよね!?俺すごすぎるんだが! 0:少しの間、ポメラくすくす笑い、ボアきも笑い 0:ギルド前。 ボア:さ、着いたぞ。 ポメラ:ありがとうございます。ボアさん。あの……僕── ニコ:おいボア!また面倒なの捕まえやがったなぁ!?書類仕事が山ほどお待ちかねだ!早く手伝え! ポメラ:……ちっ。 ボア:わかったよ!ちょっと待ってろ!ポメラ、今日は疲れただろ。もう帰っていいぞ。 ポメラ:あ、はい。わかりました。 ボア:また明日な。 ポメラ:はい!また明日!……あのヒョロガリ。邪魔しやがって。 0:ギルド内。 ニコ:で?どうやって捕まえたんだ?これ。 ボア:あん?そんなのいつも通りだよ。ガッ!と突っ込んでグイグイのチョイチョイよ! ニコ:捕まえ方を聞いてんじゃねーよ。しかもわけわからんし。 ボア:ポメラが見つけてきたんだ。 ニコ:あいつが? ボア:ああ。悪い奴見つけてこい!って言ったらこいつを。 ニコ:ふーん。ケイジの勘って奴かねえ。 ボア:いや、そんなんじゃないさ。 ニコ:……お前、また顔キモイぞ。 ボア:まあ見てろよ。その内、必ず尻尾振るだろうさ。掴むのはその時だ。 ニコ:お、おう? ボア:楽しみだ……いやあ……楽しみだなぁ。へへへへへ。 ニコ:……俺が憲兵ならお前を捕まえてるよ。 0:特に変わり映えの無い日が続いた数日後。暇そうなボアとポメラ。 ボア:あー暇だ。何か起きねえかな。 ポメラ:いいじゃないですか。平和に越したことは無いですよ。 ボア:そりゃそうだけどよ。 ポメラ:……あのボアさん。 ボア:んー? ポメラ:僕がボアさんのこと好きなの……気付いてますか? ボア:(以降棒読み)ポメラが……私を? ポメラ:はい。あなたほど素敵な女性を僕は知らない。 ボア:嫌だわん。照れちゃいますわん。 ポメラ:あなたを愛しています。 ボア:徒然なるままに私もいとをかしで御座候。 ポメラ:ん?えっと……ボアさん。僕と一緒に── ニコ:おいお前ら!事件の情報が入ったぞ! ポメラ:(こいつ!またかよ!) ボア:っしゃあ!行くぞ!ぶち殺すぞ! ニコ:殺しちゃダメだろ!逮捕だ!さ、ポメラもついてこい! ポメラ:は、はい!(まあ良いだろう。今日お前達を殺してやるぜ。くくく) 0:街の外れ。孤児院裏。 ニコ:どうやら今日ここで麻薬の取引が行われるらしい。信用できる筋の情報だ。 ボア:ほう。いつ頃だ。 ニコ:そこまでは……ちょっと。 ポメラ:あ、ボアさん!あれ見てください! ボア:ん?どれだ? ポメラ:あれですよ。もっとこっち寄ってください。 ボア:何も無いような── ポメラ:魅了魔法!ブラブラリン展開! ボア:…… ポメラ:くくく……はははははは!やったぞ!俺の勝ちだ! ニコ:ポメラ? ポメラ:何が起きたかわからないか?もうこの女は俺の操り人形なんだよ!学のなさそうなお前にはわからないだろうから教えてやる。 ポメラ:魅了魔法ブラブラリンは自分を好いている異性を自分の思うがままに操れる精神干渉魔法だ! ニコ:…… ポメラ:驚きのあまり声も出ないみてぇだな?まあいい。お前らの存在はな。俺ら裏の人間には邪魔で仕方ないんだよ。だから死んでくれ。2人ともな。さあボア!あいつを殺せ! ニコ:ぶっ……あははははははは!! ポメラ:な、何笑ってんだ! ニコ:ははは!だって……だってお前……そいつおっさんだぞ。 ポメラ:……は? ボア:おいニコ。せっかく人が術にかかったフリしてんのに台無しにすんじゃねーよ。 ニコ:よく言うぜ。ずっと顔面ニヤケすぎだっつーの。 ポメラ:ば、馬鹿な。この魔法に抗える女なんて…… ニコ:だからそいつはおっさんなんだって。知らねえか?転生者ってやつ。 ポメラ:転生者…… ニコ:そうそう。本名は確かイノガシラゲンゴロウだっけか。 ポメラ:なんだその聴き馴染みはないが、存分にむさ苦しい名前は! ニコ:本名なんだから仕方ないだろうよ。 ボア:やっぱり刑事の勘は正しかったぜ。最初からお前が悪人だと思ってたよポメラ。 ポメラ:嘘だ。俺の偽装は破られた事なんて── ボア:匂うんだよ。前世で散々嗅いだ麻薬の匂いがお前からプンプンとな。 ポメラ:最初からわかってて馬鹿のふりを…… ニコ:いやそれは普通に馬鹿なだけだ。 ボア:さあ吐いてもらうぞ。 ポメラ:くそ! 0:素早くニコの後ろに回り込み首元にナイフを当てるポメラ。 ニコ:おっとっと。 ポメラ:油断したな!こいつを殺されたくなければ俺を見逃すんだ! ボア:やめといた方がいいぞ。 ポメラ:いくらお前が強くても、この距離じゃ俺のナイフの方が早いからな! ボア:いや、そうじゃなくて。 ポメラ:は?なっ……身体が……勝手にスクワットを……なんだこれは! ニコ:魔法だよ。お前の得意な。 ボア:そいつ魔法の天才。素行が悪くて魔法院は追放されたけど技術は一流だ。ちなみに俺はニコに一度も喧嘩で勝ったことがない。 ニコ:そういうこった。さあ。どうやって自白させてやろうかなぁ??楽しみだなあ?ポ・メ・ラ?? ポメラ:くそ!……嘘だろ……やめろ……やめてくれええええええ!あふぅううん!! ニコ:ひゃはははは!! ボア:よく人のこと犯罪者顔とか言えるもんだわ…… 0:数日後 ボア:くっそ。全然終わらねえ。あいつどんだけ悪人だったんだよ。 ニコ:誘拐、強盗、麻薬売買、結婚詐欺、猥褻物陳列、臘虎膃肭獃猟獲取締法違反(ラッコオットセイりょうかくとりしまりほういはん)……これでまだ一部だかんな。 ボア:もう少し泳がせて使っとけば良かったか…… ニコ:だったらこの仕事も無かったっての。 ボア:ん。 ニコ:どした? ボア:やけに外が騒がしいな。 ニコ:ああ。勇者の凱旋だってよ。すごい人気だよな。 ボア:あーあの若い女勇者か…… ニコ:何かあんのか? ボア:いや、あのパーティどうにも気になるんだよなあ。とくにあの魔導士の女。 ニコ:確か……フィリムとか言ったっけ。またケイジの勘ってか? ボア:俺の勘は当たるぜ? ニコ:それはもう十分知ってるよ。少し様子見とくか。 ボア:ああ。でもその前に…… ニコ:この書類、片付けないとな…… ボア:くそ……ニコ!アンパン持ってこい!粒餡で!あと牛乳! ニコ:ははは。この世界にはそんなものねーよ!さっさと働けおっさん! 0:fin?

ニコ:おいボア。いつまで寝てるんだ? ボア:ん…… ニコ:全然起きねえな。仕方ない。……事件だ! ボア:っ!!どこだ!この敏腕刑事を目の前にして太ぇ奴だぜぇ! ニコ:やっと起きたか。 ボア:ニコ!ホシはどこにいる!ん?ここはどこだ? ニコ:寝ぼけすぎだ。ここは冒険者ギルド。俺らが雇われてる会社みたいなもんだ。 ボア:……そう言えばそうだったな。で、事件って何なんだ? ニコ:起きないからそういったまでだ。 ボア:はぁ!?なんっだよ!デマ掴まされたわけか!この詐欺師! ニコ:やかましい!勤務時間中に堂々と居眠りしやがって!この給料泥棒! ボア:仕方ないだろ!事件が起きなきゃ俺にやることなんて一切── ニコ:あ!お前に用事があるんだった。 ボア:用事だあ? ニコ:お前、前に言ってただろ?人手が足りねえって。だから募集してたんだが、ついに1人来たんだよ面接希望者が。 ボア:採用! ニコ:え?は? ボア:刑事ってのは現場に出なきゃ始まらねえ。経験あるのみよ! ニコ:そのお前の言うケイジってやつがどんなもんなのか知らねえけど面接くらいは── ボア:さあそいつはどこだ!刑事のイロハを教え込んでやる! ニコ:ちょっ!おい!ボア!……本当にあだ名通り猪みたいな奴だ…… 0:間── ポメラ:(語り手)ここはフェニキア王国。剣と魔法が飛び交う所謂、異世界。 ポメラ:冒険者ギルドで自警団として働くボアは転生者であり、元は日本で刑事をしていた。本名は猪頭健吾郎。 ポメラ:敏腕刑事や熱血刑事などたくさんの呼び名で呼ばれた優秀な刑事だったが、麻薬組織を検挙するあと一歩の所で殉職。 ポメラ:そこで何やかんやあり、この世界に転生したのだ。何故か……女として。 0:冒険者ギルド、受付。 ボア:君か!?それとも君か!?はたまた君か!? ニコ:おいボア!手当たり次第に声をかけるな。 ボア:ちっ。邪魔者が来たか。 ニコ:人聞きの悪い…… ボア:で、どこにいるんだよ。新人刑事は。 ニコ:あそこテーブルに座ってる奴だ。育ちの良さそうな色男だよ。 ボア:あいつは…… ニコ:ん?知り合いか? ボア:いや?ただ良い匂いがする。 ニコ:匂い?むさくるしい匂いしかしないだろここは。 ボア:まあ刑事の勘に任せとけって。 ニコ:お、おう? 0:テーブルに移動 ボア:やあやあ新人くん! ポメラ:え。あ、こんにちは! ニコ:知ってると思うけど、一応紹介しておくぜ?俺がニコだ。でこっちがボア。名前の通り猪みたいな── ボア:君はどうして刑事になろうと思った? ポメラ:え、ケイジ? ニコ:あー自警団のことな? ポメラ:ああ!ぼ、僕は!この街の、もっと言えばこの国の人々の役に立ちたくて!自警団に入れば何か変えれるんじゃないかと思い!面接を受けに来ました! ボア:ほう?例えばどんな? ポメラ:僕は昔、初心者狩りに遭いました。ほら、見た目も全然強そうじゃありませんし、職業適性もヒーラーだったので……クエスト中に囮にされたこともあります。運良く上級冒険者に助けてもらって一命を取り留めましたけど、冒険者を辞めようか悩む程に落ち込みました。 ポメラ:もう僕みたいな人を増やしたくないんです! ニコ:へえ。苦労したんだな。……げ。 0:ニヤニヤしているボア。 ボア:いいね!採用!君はこれから仲間だ! ポメラ:ほ、本当ですか!?やった!よろしくお願いします!ボアさん!ニコさん! ニコ:あ、ああ。よろしく。 ボア:早速今から仕事に行けるか? ポメラ:今からですか?えっと……少しだけ用意してきてもよろしいでしょうか? ボア:ああ構わないぞ! ポメラ:ありがとうございます!すぐ戻りますので! 0:外に出ていくポメラ。 ニコ:……お前今度は何考えてんだ? ボア:別に何もぉ? ニコ:信用できねえ…… ボア:まあまあ。悪いようにはしねえよ。げへへへ ニコ:……前々から思ってたけど、お前の笑い方、誰よりも犯罪者だからな。 0:ギルド近くの路地。 ポメラ:通信魔法、レパシー展開…… ポメラ:聞こえるか?俺だ。思ったより簡単だったよ。……確かに女の方は強そうだ。だが、馬鹿丸出しだな。ずっとニヤニヤしてて、余程人手が足りないんだな。せっかく用意してきた設定がほとんど役に立たなかった。 ポメラ:……男の方か?ただのひょろ長いお飾りってところだろうな。女の脛齧って生きてる極太のヒモだろう。はははは! ポメラ:……わかってるよ。ちゃんと落としてやるって。その代わりヤクの取り分ちゃんと用意しとけよな。じゃあまた何かあったら連絡する。 0:ギルド内。 ニコ:お。戻ってきたか。それじゃあ早速── ポメラ:ボアさん。今日からよろしくお願いします!自警団の仕事、たくさん教えてください! ボア:おうよ!でもまあその小綺麗な格好じゃ捜査に差し支えがあるかもしれねえ。まずは着替えて来い。ニコ、案内してやれよ。 ニコ:……また悪い顔してんぞ。じゃあポメラついて来い。 ポメラ:ボアさんが案内してくれないんですか? ボア:熱烈で嬉しいが、流石に若い男の着替えは恥ずかしいじゃないか…… ニコ:おえ…… ボア:あ? ニコ:さあこっちだポメラ。さっさと着替えてボアに可愛がってもらえ。 ポメラ:……わかりました。 0:待機室。 ニコ:確かこの辺りに……お。あったあった。これならお前に合うサイズだろ。 ポメラ:ニコさん。 ニコ:何だ? ポメラ:ニコさんはボアさんとどういう関係なんですか? ニコ:どういうって……ただの同僚……だろ。 ポメラ:好きとかじゃないんですね? ニコ:……誰が……誰を? ポメラ:ニコさんがボアさんをです。 ニコ:お、俺が……あいつを? ポメラ:はい。 ニコ:ありえない。 ポメラ:え? ニコ:絶対にありえない!安心しろ!俺があいつに惚れる事なんて転生でもしない限りありえないのだよ! ポメラ:そ、そうですか。 ニコ:ああ!そうとも!だから心配なんてしなくていい!わかったね!ワトソン君! ポメラ:……誰ですかそれ。 ニコ:あーこれはボアの好きな……いやいいわ。説明するのが面倒だ。 ポメラ:恋敵……ってことですか? ニコ:……もうそれで。 ボア:お前らおっせえな!男同士で何してんだ! ニコ:全部お前のせいだ! ボア:はぁ!? ニコ:もう良いから早く連れて行け!俺は寝る!とてつもなく気分が悪いんだ! ボア:何が何だかわかんねーけど、まあいいや。じゃあ行くぞポメラ! ポメラ:は、はい! 0:城下町 ボア:さてポメラ。 ポメラ:はい、何でしょう。 ボア:一見、平和そうに見えるこの町にも今、この瞬間にも悪い事をしでかす奴がいる。 ポメラ:は、はい。 ボア:ポメラ。 ポメラ:(こいつまさか気付いて…) ボア:悪人を捕まえて来い! ポメラ:……え? ボア:刑事に必要なのは勘だ。間違っても良い。あとでどうにでもしてやる。悪人をしょっ引いて来い! ポメラ:(良かったあ。やっぱこいつ馬鹿だ。) ボア:さっさと走れ! ポメラ:え、あ、はい! ボア:もしやばそうなの見つけたら知らせに来い。くれぐれも1人で逮捕しようとすんじゃねーぞ! ポメラ:わかりました!(…とは言ったものの。さあてどうすっか…) 0:走りながら思案するポメラ。 ポメラ:あ!いい事思いついた。この間、取引をトチりやがった奴がいたな。どう切り捨てるか考えてたんだ。丁度良いじゃねえか。あいつに処理させりゃいいんだ。俺って冴えてるぜぇ。 ポメラ:そうと決まればさっさと戻んねーとな。 0:間── ポメラ:ボアさーん!はぁはぁ…… ボア:早かったじゃないか。もう見つけたのか? ポメラ:はい!実はギスバ屋という商店があるんですが、前々から怪しいと思っていて……たまたま店内を覗いたら奴隷がどうのと言っていたんです! ボア:何だと!?人身売買はここでは重罪のはずだ。 ポメラ:はい。もしかしたらあそこの店主は大悪人かも知れません! ボア:なら逮捕するしか無いな!さあ行くぞポメラ! ポメラ:(まずい!俺は店主に顔が知られてる。失念していた!) ボア:どうした?逃げられてしまうぞ! ポメラ:えっと……その…… ボア:まさかお前…… ポメラ:(今度こそバレたか!?) ボア:足を痛めたのか? ポメラ:……え? ボア:急いで帰って来たようだからどこかで痛めてしまったのかと……違ったか? ポメラ:い、いえ!足痛いです!とても! ボア:なら仕方ないな!1人で行ってくる!少し待ってろ! ポメラ:お気をつけてっ!! ポメラ……あいつマジ馬鹿だろ。何で組織の連中はあんな奴に苦労してんだろうな。 ポメラ:ま、とにかくこれで俺の仕事が一つ片付いた。なんなら、ギスバ屋の用心棒にボアがやられてくれてりゃもっと── ボア:戻ったぞ。 ポメラ:ふぉうわっ!!ど、どうしたんですか?忘れ物ですか? ボア:いや?もうボコして憲兵に渡して来た。 ポメラ:いくら何でも早すぎじゃ…… ボア:悪人は1秒でも早く消さないといけないからな! ポメラ:(絶対バレねーようにしないと……) ボア:ほら。 ポメラ:え、何ですか? ボア:足痛めてんだろ?おぶされよ。 ポメラ:え、でも。 ボア:いいから。早くしろ。 ポメラ:はい……ボアさんの背中暖かいですね。 ボア:そ、そうか?へへへ。それは照れるな。へへへへへ ポメラ:どうしたんです?そんなに笑って。 ボア:何でもねーよ。強いて言えば……お前を近くに感じることが嬉しくてよ。 ポメラ:……僕も嬉しいです。 ボア:そうか。でへへへへ。 ポメラ:(何か知らんが、こいつもう落ちてるよね!?俺すごすぎるんだが! 0:少しの間、ポメラくすくす笑い、ボアきも笑い 0:ギルド前。 ボア:さ、着いたぞ。 ポメラ:ありがとうございます。ボアさん。あの……僕── ニコ:おいボア!また面倒なの捕まえやがったなぁ!?書類仕事が山ほどお待ちかねだ!早く手伝え! ポメラ:……ちっ。 ボア:わかったよ!ちょっと待ってろ!ポメラ、今日は疲れただろ。もう帰っていいぞ。 ポメラ:あ、はい。わかりました。 ボア:また明日な。 ポメラ:はい!また明日!……あのヒョロガリ。邪魔しやがって。 0:ギルド内。 ニコ:で?どうやって捕まえたんだ?これ。 ボア:あん?そんなのいつも通りだよ。ガッ!と突っ込んでグイグイのチョイチョイよ! ニコ:捕まえ方を聞いてんじゃねーよ。しかもわけわからんし。 ボア:ポメラが見つけてきたんだ。 ニコ:あいつが? ボア:ああ。悪い奴見つけてこい!って言ったらこいつを。 ニコ:ふーん。ケイジの勘って奴かねえ。 ボア:いや、そんなんじゃないさ。 ニコ:……お前、また顔キモイぞ。 ボア:まあ見てろよ。その内、必ず尻尾振るだろうさ。掴むのはその時だ。 ニコ:お、おう? ボア:楽しみだ……いやあ……楽しみだなぁ。へへへへへ。 ニコ:……俺が憲兵ならお前を捕まえてるよ。 0:特に変わり映えの無い日が続いた数日後。暇そうなボアとポメラ。 ボア:あー暇だ。何か起きねえかな。 ポメラ:いいじゃないですか。平和に越したことは無いですよ。 ボア:そりゃそうだけどよ。 ポメラ:……あのボアさん。 ボア:んー? ポメラ:僕がボアさんのこと好きなの……気付いてますか? ボア:(以降棒読み)ポメラが……私を? ポメラ:はい。あなたほど素敵な女性を僕は知らない。 ボア:嫌だわん。照れちゃいますわん。 ポメラ:あなたを愛しています。 ボア:徒然なるままに私もいとをかしで御座候。 ポメラ:ん?えっと……ボアさん。僕と一緒に── ニコ:おいお前ら!事件の情報が入ったぞ! ポメラ:(こいつ!またかよ!) ボア:っしゃあ!行くぞ!ぶち殺すぞ! ニコ:殺しちゃダメだろ!逮捕だ!さ、ポメラもついてこい! ポメラ:は、はい!(まあ良いだろう。今日お前達を殺してやるぜ。くくく) 0:街の外れ。孤児院裏。 ニコ:どうやら今日ここで麻薬の取引が行われるらしい。信用できる筋の情報だ。 ボア:ほう。いつ頃だ。 ニコ:そこまでは……ちょっと。 ポメラ:あ、ボアさん!あれ見てください! ボア:ん?どれだ? ポメラ:あれですよ。もっとこっち寄ってください。 ボア:何も無いような── ポメラ:魅了魔法!ブラブラリン展開! ボア:…… ポメラ:くくく……はははははは!やったぞ!俺の勝ちだ! ニコ:ポメラ? ポメラ:何が起きたかわからないか?もうこの女は俺の操り人形なんだよ!学のなさそうなお前にはわからないだろうから教えてやる。 ポメラ:魅了魔法ブラブラリンは自分を好いている異性を自分の思うがままに操れる精神干渉魔法だ! ニコ:…… ポメラ:驚きのあまり声も出ないみてぇだな?まあいい。お前らの存在はな。俺ら裏の人間には邪魔で仕方ないんだよ。だから死んでくれ。2人ともな。さあボア!あいつを殺せ! ニコ:ぶっ……あははははははは!! ポメラ:な、何笑ってんだ! ニコ:ははは!だって……だってお前……そいつおっさんだぞ。 ポメラ:……は? ボア:おいニコ。せっかく人が術にかかったフリしてんのに台無しにすんじゃねーよ。 ニコ:よく言うぜ。ずっと顔面ニヤケすぎだっつーの。 ポメラ:ば、馬鹿な。この魔法に抗える女なんて…… ニコ:だからそいつはおっさんなんだって。知らねえか?転生者ってやつ。 ポメラ:転生者…… ニコ:そうそう。本名は確かイノガシラゲンゴロウだっけか。 ポメラ:なんだその聴き馴染みはないが、存分にむさ苦しい名前は! ニコ:本名なんだから仕方ないだろうよ。 ボア:やっぱり刑事の勘は正しかったぜ。最初からお前が悪人だと思ってたよポメラ。 ポメラ:嘘だ。俺の偽装は破られた事なんて── ボア:匂うんだよ。前世で散々嗅いだ麻薬の匂いがお前からプンプンとな。 ポメラ:最初からわかってて馬鹿のふりを…… ニコ:いやそれは普通に馬鹿なだけだ。 ボア:さあ吐いてもらうぞ。 ポメラ:くそ! 0:素早くニコの後ろに回り込み首元にナイフを当てるポメラ。 ニコ:おっとっと。 ポメラ:油断したな!こいつを殺されたくなければ俺を見逃すんだ! ボア:やめといた方がいいぞ。 ポメラ:いくらお前が強くても、この距離じゃ俺のナイフの方が早いからな! ボア:いや、そうじゃなくて。 ポメラ:は?なっ……身体が……勝手にスクワットを……なんだこれは! ニコ:魔法だよ。お前の得意な。 ボア:そいつ魔法の天才。素行が悪くて魔法院は追放されたけど技術は一流だ。ちなみに俺はニコに一度も喧嘩で勝ったことがない。 ニコ:そういうこった。さあ。どうやって自白させてやろうかなぁ??楽しみだなあ?ポ・メ・ラ?? ポメラ:くそ!……嘘だろ……やめろ……やめてくれええええええ!あふぅううん!! ニコ:ひゃはははは!! ボア:よく人のこと犯罪者顔とか言えるもんだわ…… 0:数日後 ボア:くっそ。全然終わらねえ。あいつどんだけ悪人だったんだよ。 ニコ:誘拐、強盗、麻薬売買、結婚詐欺、猥褻物陳列、臘虎膃肭獃猟獲取締法違反(ラッコオットセイりょうかくとりしまりほういはん)……これでまだ一部だかんな。 ボア:もう少し泳がせて使っとけば良かったか…… ニコ:だったらこの仕事も無かったっての。 ボア:ん。 ニコ:どした? ボア:やけに外が騒がしいな。 ニコ:ああ。勇者の凱旋だってよ。すごい人気だよな。 ボア:あーあの若い女勇者か…… ニコ:何かあんのか? ボア:いや、あのパーティどうにも気になるんだよなあ。とくにあの魔導士の女。 ニコ:確か……フィリムとか言ったっけ。またケイジの勘ってか? ボア:俺の勘は当たるぜ? ニコ:それはもう十分知ってるよ。少し様子見とくか。 ボア:ああ。でもその前に…… ニコ:この書類、片付けないとな…… ボア:くそ……ニコ!アンパン持ってこい!粒餡で!あと牛乳! ニコ:ははは。この世界にはそんなものねーよ!さっさと働けおっさん! 0:fin?