台本概要

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タイトル お姫様と、お菓子が好きなお友達
作者名 栞星-Kanra-
ジャンル ファンタジー
演者人数 3人用台本(女2、不問1)
時間 30 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 妖精と話しができるお姫様。

彼女はとても優しく、責任感のある人だった
どんなに辛くても、人々の幸せを願うことができる人
そう、まるで、聖母マリアのように――


誤字、脱字等ありましたら、アメブロ、noteの『星空想ノ森』までご連絡をお願いいたします。
読んでみて、演じてみての感想もいただけると嬉しいです。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
リリィ 70 一国のお姫様。ニンゲン。ラストで生まれ変わり(幼女設定)あり
デュランタ 不問 87 妖精。しっかり者
フリージア 94 妖精。子供っぽい
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
0:キャラクター名の変更、および、一人称、語尾等の変更は、演者様間でお話の上、ご自由に楽しんでいただければと思います。 0:なお、世界観、内容が変わるほどの変更やアドリブは、ご遠慮ください。 0:  0:(役紹介) 0:【リリィ】一国のお姫様。ニンゲン。ラストで生まれ変わり(幼女設定)あり 0:【デュランタ】妖精。しっかり者 0:【フリージア】妖精。子供っぽい 0:  :  :――(上演開始)―― :  :  リリィ:よし、出来上がり! さて、と。 冷ましている間にオリビアと夕食の打ち合わせでもしてこようかしら :  :  :(少し間を置く) :  :  フリージア:クンクン。 わー、いいにおい! デュランタ:美味しそうだね。 でもこれ、甘い香りがしないよ? フリージア:へっへーん! これはね、バジルだよ デュランタ:お前が威張るな! フリージア:いたっ! うー! 痛い…… デュランタ:バジルって、草だよね? 美味しいの? フリージア:うん! においもいいし、食べたらフーンってするの! デュランタ:香りって言いな? というか、フーンって何? フーンって フリージア:フーンは、フーンだよ デュランタ:……お前に聞いたボクがバカだった。 まぁいいや。 たーべよっ フリージア:あっ、ずるいっ! ワタシもっ! デュランタ:おいしい! フリージア:(同時でもよい)おいしい! デュランタ:いいよなぁ、ニンゲンは。 こんなに美味しいものいつでも食べれて フリージア:ねー! ずるいよねっ。 あっ、もう一個もーらいっ リリィ:(キッチンに戻って来ながら)決まりね。 じゃあ、私は片付けと食材のチェックをしてから行くわ。 ……あら? クッキーが減って……って、何してるの、あなたたち! デュランタ:ん? えっ、ボクたちが見えるの? フリージア:まっさかー! 見えるニンゲンなんて会ったことないじゃん。 よし、もう一個―― リリィ:よしっ、じゃありません! フリージア:いった! うー、二回目…… デュランタ:ってことは、やっぱりボクたちのこと見えてるんだ リリィ:? 見えているけれど……普通はあなたたちのこと、見えないものなの? デュランタ:見えないよ。 だから、こうやってお菓子貰っても何にも言われない フリージア:盗んでも……間違った、貰ってもこんな風にペチってされたことない リリィ:……叩いたことは謝るわ。 ごめんなさい。 でも、勝手に取っちゃダメよ? フリージア:……じゃあ、どうしたらくれる? リリィ:えっ? そ、そうね……。 うーん、いただきますを言ったらあげるわ フリージア:何でいただきますって言わなきゃいけないの? リリィ:そうね、それを作ったのは私だから、かしら? 本当は、小麦やバターなんかを作ってくださってる方々への感謝も込めて言うものだけれども フリージア:ふーん。 ……いただきます! ね、言ったからちょーだい! デュランタ:は? えっ? ウソだろ? 切り替え早すぎだろ?! リリィ:……ふっ! 面白い子! いいわ。 その代わり、あまり食べ過ぎないでね? 家の者にあげる分も入っているから デュランタ:はぁ……。 ……ね、ボクもいただきますって言ったらくれる? リリィ:もちろん。 構わないわよ デュランタ:……ありがとう リリィ:どういたしまして フリージア:ワタシがくれる?って聞いたから食べれるんだよ? ね、えらい? えらい? デュランタ:だーかーらー! 調子に乗るな! フリージア:シュッ! へっへーん! 今度は避けれた! ……でもさー、変だよね デュランタ:ん? 何が? フリージア:だって、ニンゲンは神様からの恵みの雨とかないと小麦とか育たないのに、神様にはお礼しに来ないじゃん デュランタ:あー、確かに。 他のニンゲンにはお礼言うのにね。 神様は、してくれて当たり前って思ってるんじゃない? フリージア:えー、変なのー リリィ:……確かにそうよね。 でも、神様にお礼をする……っていうのは、どうしたらいいのかしら デュランタ:ボクたちは、花とか持って行ってるよ? ここの神様は動けないから、遠くに咲いてる花とか見れないし フリージア:そうそう! リリィ:ここの神様は、と言うことは、動ける神様もいらっしゃるの? デュランタ:うん、いるよ。 元が何だったかによるんだ。 ここの神様は、元が植物だから動けないし、自分の生命(いのち)を分け与えることでみんなを豊かにしてるんだよ フリージア:だよー リリィ:そうなのね。 ……その神様に、このクッキーを届けてもらうことはできるのかしら? デュランタ:うん、いいよ フリージア:いいよー リリィ:じゃあ……これを神様に。 あなたたちには届けてくれるお礼として、これもあげるわ デュランタ:わっ、いいの? フリージア:やった、やったー デュランタ:神様への分まで食べちゃダメだからな? フリージア:食べないよー! リリィ:ふふふっ。 あなたたちは兄弟なの? とても仲がいいのね デュランタ:ボクたちには、兄弟とかって考え方はあんまりないかなー。 こいつが生まれたとき、ボクが近くにいて。 で、それからずっと一緒にいる フリージア:うん。 なんか一緒にいるー リリィ:そっか。 そういう関係もいいものよね。 ということは、もしかして、名前もないのかしら? デュランタ:うん、ないよ フリージア:ない、なーい リリィ:それなら、私が名前を付けてもいいかしら? デュランタ:名前? なんで? フリージア:いいよ! 面白そう! デュランタ:いやいや、面白そうだからって付けてもらうじゃないからな! 相手を思い通りにするためにも使ったりする、怖いものなんだぞ?! フリージア:そんなことまで考えてないもんっ! リリィ:まぁまぁ、落ち着いて。 えっとね、名前がなかったら、あなたたちのこと、呼び辛いなって思っただけなの。 ……これからもここに来てくれるような気がするから フリージア:うん! 来る! デュランタ:もうっ! ……はぁ。 いいよ、名前。 付けて? フリージア:付けて、付けて― リリィ:ありがとう。 あなたは……そうね、『デュランタ』なんてどうかしら? デュランタ:デュランタ? フリージア:紫色のお花だー リリィ:そう! デュランタは紫色のお花なの。 花言葉は、『あなたを見守る』、『歓迎』。 やり取りを見ていて、見守る。 そんな優しさを、あなたから感じたから。 リリィ:それに、先に生まれてきて、一緒にいる……この世に生(せい)を受けることを待っていてあげたのかなって フリージア:いいね! デュランタ! ぴったり! デュランタ:……まぁ、こいつが手がかかるヤツだからそうなっちゃってるだけだけど……優しいって言われるのは、嬉しい フリージア:なに、なに? 照れてるの? 照れてるの? デュランタ:う、うるさいなっ! フリージア:あはは リリィ:そして……あなたは、『フリージア』 フリージア:色んな色のがあるお花! デュランタ:フリージア……。 それも、花言葉があるの? リリィ:ええ、あるわ。 花言葉は、『無邪気』、『あどけなさ』。 天真爛漫(てんしんらんまん)なところから、そう思ったの。 ……どうかしら? デュランタ:……あー フリージア:察し! みたいな『あー』だっ リリィ:ふふっ。 じゃあ、決まりね。 デュランタ、フリージア、これからもまた遊びに来てね デュランタ:わかった フリージア:(同時でもよい)うん! リリィ:あっ、いけない! 私ったら、オリビアを待たせているのだったわ。 また、ね デュランタ:うん、またね フリージア:またねー :  :  :(少し間を置く) :  :  デュランタ:今日はここにいるんだ フリージア:お花、いっぱーい リリィ:ここは、私のお家のお庭なの。 お花はお手入れも必要だけれど、こうやって話しかけてあげたりすると喜んでくれるのよ フリージア:お花とも話せるの? すごーい! リリィ:ふふっ。 お花とお話はできないわ。 でもね、元気になってくれたり、もっと美しい表情を見せてくれるようになるの フリージア:ふーん。 大事なこと、なんだね リリィ:そうなの。 あっ、ねぇ、せっかくだから、こっちに来て? デュランタ:ん? なに? フリージア:なに、なにー? リリィ:ふふふっ。 えいっ デュランタ:わっ! フリージア:わー! 花冠だぁ リリィ:プレゼント! 良かったらもらって? デュランタ:ありがとう フリージア:ありがとうっ! じゃあこれ、はいっ! お返しっ! リリィ:まぁ! 綺麗……。 どこに咲いていたの? フリージア:これはね、ニンゲンが行けないような場所! リリィ:そうなのね、ありがとう! あっ、今日は街の子供たちと一緒にマフィンを作ったの。 デュランタとフリージアも食べる? デュランタ:い、いいの? フリージア:欲しー! あっ、そういえば、クッキー、喜んでくれてたんだよね? デュランタ:あっ、そうだった! 神様、クッキー、喜んでたよ! リリィ:本当? 良かったわ デュランタ:……いつか、はちみつを使ったお菓子を作ってもらえたら、見てみたいって言ってた フリージア:ほへー、見てみたい!か。 まぁ、食べれないんだもんね リリィ:? 神様、召し上がらないの? デュランタ:うん。 元が植物だからね、食べられないんだ フリージア:可哀そうだよねー、食べれないなんて リリィ:はちみつ……食べられない……なるほど、わかったわ! 作ってみましょう デュランタ:えっ、作れるの? フリージア:すごーい、すごーい!! :  :  :(少し間を置く) :  :  リリィ:はい。 どうかしら? フリージア:すっごーい! くまだ、くまっ! デュランタ:……このくま、はちみつでできてる……? リリィ:そうなの! レモンはちみつカップケーキの上に、はちみつで作ったくまのキャンディを乗せてみたの フリージア:かわいいっ! デュランタ:……神様が食べられないってわかったから、見るだけでも楽しめるようにくまのキャンディにしたの? リリィ:気付いてくれたの? さすがね、デュランタ フリージア:えっ、そうなの? すっごーい! デュランタ:……すごいのは、そっちだよ。 こんなのすぐに思い付くなんて フリージア:そっち? あぁ、そっか! ワタシたち、名前知らないもんね! リリィ:えっ? あっ、ごめんなさい! そうだったわね。 私の名前は、リリィっていうの フリージア:リリィ! リリィもお花だ! いい名前だね リリィ:ありがとう! デュランタ:リリィ……も、花言葉があるの? リリィ:えぇ。 でも、自分で言うのは恥ずかしいから、内緒 フリージア:なーいしょ デュランタ:ふはっ! まぁいいや。 ボクは早速、カップケーキを神様に届けてくるよ フリージア:行ってらっしゃーい! ワタシはマフィン食べてるー デュランタ:ボクの分は? フリージア:ちゃんと残す! デュランタ:よろしい! リリィ:ふふっ。 ……フリージアは一緒に行かなくて良かったの? フリージア:うん。 行ってもワタシは神様に会えないの。 そういうのは、デュランタの役割なんだ リリィ:色々あるのね フリージア:ほら、デュランタはお花の名前、全然知らないでしょ! それと一緒! リリィ:……そっか。 そうよね。 人間以外にも、きっとみんなが役割を持っているのよね…… :  :  :(少し間を置く) :  :  リリィ:どうしてですか、お父様! 結婚のお話は理解しています。 ですが、オリビアだけは連れて行っても構わないという条件だったではありませんか! それなのに今更どうしてっ! :(掛け合いのため、少し間を置く) リリィ:……わかりました。 仕方……ないこと、ですものね。 っ! ごめんなさい、お父様。 取り乱してしまって。 一国の姫として相応しくない振る舞いでしたわ :(掛け合いのため、少し間を置く) リリィ:いいえ。 今までたくさんの愛情を注いでくださって、ありがとうございます。 とても幸せでした。 嫁いだ先でもお父様の志(こころざし)を継(つ)いで、国民の幸せを第一に願えるように務めて参ります :  :  :(少し間を置く) :  :  :(数ヶ月後。 嫁ぎ先にて) フリージア:あれー? 今日はお菓子、作んないのー? リリィ:えっ? フリージア:いっ! デュランタ:お前、一言目がそれはないだろ? ……久しぶり、リリィ リリィ:久しぶりね、デュランタ、フリージア フリージア:うー。 デュランタが、会いに行くってしつこくて デュランタ:おいっ! ……ほらっ、アレだよ。 見守る者なんだろ、デュランタは リリィ:ふふっ。 ……ありがとう デュランタ:……元気ないな、大丈夫か? フリージア:大丈夫? リリィ:えぇ。 ……ただ、色々と思い通りにはいかないものね、っと、思って。 ……聞いてくれる? リリィ:この国に来てから、王子はおろか、国王にも、王妃にも一度も会わせてもらえていないの。 お料理もさせてもらえない。 お庭も……あるにはあるのだけれど、お花はなくて。 リリィ:お花があれば、心が満たされる、明るくなる。 蝶や鳥たちともお話ができる。 けれども、お花もない、こんな生活を続けていたら、心が暗くなってしまう、余裕がなくなってしまう。 リリィ:……この国では、なぜか花が咲かなくなってしまったそうなの。 だから、植えても無駄だと、止められてしまって デュランタ:あぁ、それは、ここには神様がいないからだよ リリィ:神様が、いらっしゃらない……? そんなことがあるの? デュランタ:理由はそれぞれだけど。 後継ぎを育てる前に消えちゃったパターンもあるし、その地の守り神をすることがイヤになって逃げ出したパターンもある。 ここは……どっちかっていうと、後者のパターンなんじゃないかな。 デュランタ:施(ほどこ)しをしても、お礼もない。 そればかりか、足りないと文句を言う。 笑顔も見せずに、いがみ合う。 ……そんなニンゲンなら、神様だって守りたいと思わなくなる リリィ:……そっか、そうよね デュランタ:この辺、ここに来る前に見て来たんだ フリージア:あっ、どっか行ってたの、それでだったんだー デュランタ:牧師のいない教会。 食べる物もなくて、死にそうな子供がいっぱいいた フリージア:えっ、なんで、なんでー? デュランタ:……ここが、そういうところだってことだよ リリィ:……自分のことに精一杯の大人たち。 心の余裕のなさから、他者を思いやる気持ちを持てなくなってしまった。 ……でも、そんな風にしてしまったのは、そこまで民(たみ)を追い詰めてしまったのは……私たち王族なのよね フリージア:リリィは来たばっかじゃん! なんにも悪くないよ! リリィ:いいえ。 私は、この国に嫁いできた身。 もう、この国の王族の一員よ。 何か、できること……できること……。 っ! そうだわ! パンやお菓子をたくさん作るわ! だから、その子供たちに持って行ってもらえないかしら? デュランタ:それは……無理だよ。 ボクたちのことを見えるニンゲンは、リリィだけなんだ。 リリィだけが、特別なんだよ。 だから フリージア:だったら、リリィがこっから抜け出して、持って行ければいいんでしょ デュランタ:いや、リリィがいなくなったら、バレるだろう! リリィ:……いいえ、バレないわ! お食事のときくらいしか、誰もこの部屋には近づかないもの! ただ、廊下ですれ違ったりすることは避けないといけないわ デュランタ:そのくらいならボクたちでも助けられる フリージア:うん! やるー リリィ:ありがとう! :  :  :(少し間を置く) :  :  :(リリィ、街から戻る) リリィ:あんなに酷いことになっていたなんて……。 ねぇ、これからも、彼らに食べる物を持って行ってあげたいの。 デュランタ、フリージア……協力してもらえないかしら? デュランタ:もちろん。 ボクたちで良ければ! フリージア:リリィのお菓子は、美味しいから幸せいっぱいになれるもんねっ! リリィ:ありがとう! でも、あなたちを巻き込んでしまう……。 それに、いつまでお願いすることになってしまうのかわからないわ……。 何か他にもお返しができたらよいのだけれど…… デュランタ:そんな! いいよ! こうやって、お菓子もらえるだけで嬉しいし、な? フリージア:うん! ……あっ! でも、それなら、エディブルフラワーがいっぱい乗ったケーキが食べたい! リリィ:エディブルフラワー? それはどんなお花なの? フリージア:見るための花じゃなくて、食べるためのお花なの! それを食べれるまでここに来る! っていうのはどう? リリィ:この国ではお花は咲かないのよ? あなたたちが持ってきてくれるなら、作ることはできるけれど デュランタ:そうだぞ! 無理なこと言っちゃダメだろ! フリージア:うー! なんでわかんないのー! デュランタ:は? いや、わかってないのはお前だろ、フリージアだろ! 花が咲かないこの国でエディブルフラワーを食べたいなんて! そんなの、いつまで経っても実現しないに決まって……! あっ、そういうことか! フリージア:ふっふーん! リリィ:えっ? どういうことなの? デュランタ デュランタ:ボクらはエディブルフラワーを持ち込まない。 それなら、この国で育てるしかない。 でも、この国では花は育たない。 だから、ケーキは作れない リリィ:ええ、そうよ。 だから―― デュランタ:叶えられることのない約束をすることで、終わりのない約束にする。 フリージアはそうしたいんだろ? フリージア:うん! だから、リリィにずっと会いに来る! リリィ:……っ! あなたたちはっ、もうっ! デュランタ:わっ、苦しいよ! リリィ! フリージア:きゃはは! ん? リリィ、泣いてるの? リリィ:泣いてなんかないわ? フリージア:ウソだー! えー、なんで、なんで? デュランタ:フリージア、ちょっと静かにしてろ! ……リリィ。 ボクたちのこと、もっと頼っていいんだよ リリィ:えぇ、ありがとう……! :  :  :(少し間を置く) :  :  デュランタ:あの日から、十年とちょっとかぁ フリージア:あの日って、どの日? デュランタ:フリージアが、エディブルフラワーのケーキが食べたいって言った日 フリージア:ふーん。 そのくらい経つんだ。 なーんにも変わってない気がする デュランタ:……そうだね フリージア:でも、ニンゲンって変だよね。 大切にしてなかったニンゲンのこと、死んでも返してあげないなんて。 ワタシなら、こんな場所じゃなくて、生まれた場所に帰りたい デュランタ:……そうだね フリージア:……って! えっ、なんでこんなにいっぱい花があるの?! ここ、花が咲かない国なんだよね?! デュランタ:あぁ、それはね。 リリィが生まれたところの神様が花を届けてくれたんだ。 くまのキャンディのお礼。 ずっとしたかったんだって フリージア:でも、神様でもお花を運ぶなんてできないよね? デュランタ:うん、そうだよ。 だから、神様は自分の守っているところギリギリにたくさん花を届けた。 そこからここまで運んだのは……彼らだよ フリージア:えっ? ……あっ! もしかしてリリィがお菓子をあげてたニンゲン? デュランタ:そう。 リリィは、たくさんのいろんなモノから愛されていた。 そういう生き方を、リリィがしてきたから、だよ フリージア:……こんなにいっぱいのお花に囲まれてたら、寂しくないね デュランタ:……そうだね。 って、それは? フリージア:エディブルフラワー デュランタ:持って来たんだ フリージア:うん。 次に会ったら作ってねって言うために、持ってきた デュランタ:そっか フリージア:……また会えるかな? デュランタ:会えるよ。 ニンゲンは、三百年くらいしたら生まれ変わるんだ。 良いことをたくさんしたら、ニンゲンに。 悪いことをたくさんしたら、虫とかに。 だからきっと、リリィはまたニンゲンで生まれてくる フリージア:そっか! デュランタ:だからボクたちは、これから旅をしよう フリージア:旅? なんで? デュランタ:どこに生まれ変わるかわからないから。 どこで生まれ変わっても探せるように。 また会えるように! フリージア:っ! うん! 旅、しよっ! リリィとまた会うために! デュランタ:……あっ、そういえば、フリージア。 リリィの花言葉、知ってる? フリージア:うん、知ってるー! うんとね、『純粋』、『無垢』。それから、『聖母マリアの象徴』 :  :  :(少し間を置く) :  :  :(以降、リリィは生まれ変わり) フリージア:わっ、美味しそう! ね、ね! もらっちゃお! デュランタ:そうだな、食べよっ! リリィ:あーっ! かってにとっちゃ、メーなのっ! デュランタ:えっ? フリージア:あっ! リリィ:ほしいなら、いただきます、しなきゃダメなのよ? デュランタ:っ! いただきますって言うから フリージア:お菓子、ちょーだい! リリィ:ふふっ。 いいわ。 はいっ! どーぞ! デュランタ:……やっと見つけた フリージア:……やっと会えた リリィ:えっ? なぁに? デュランタ:……おかえり フリージア:おかえり! リリィ:……ふふふっ! ただいま! :  :  :――(上演終了)――

0:キャラクター名の変更、および、一人称、語尾等の変更は、演者様間でお話の上、ご自由に楽しんでいただければと思います。 0:なお、世界観、内容が変わるほどの変更やアドリブは、ご遠慮ください。 0:  0:(役紹介) 0:【リリィ】一国のお姫様。ニンゲン。ラストで生まれ変わり(幼女設定)あり 0:【デュランタ】妖精。しっかり者 0:【フリージア】妖精。子供っぽい 0:  :  :――(上演開始)―― :  :  リリィ:よし、出来上がり! さて、と。 冷ましている間にオリビアと夕食の打ち合わせでもしてこようかしら :  :  :(少し間を置く) :  :  フリージア:クンクン。 わー、いいにおい! デュランタ:美味しそうだね。 でもこれ、甘い香りがしないよ? フリージア:へっへーん! これはね、バジルだよ デュランタ:お前が威張るな! フリージア:いたっ! うー! 痛い…… デュランタ:バジルって、草だよね? 美味しいの? フリージア:うん! においもいいし、食べたらフーンってするの! デュランタ:香りって言いな? というか、フーンって何? フーンって フリージア:フーンは、フーンだよ デュランタ:……お前に聞いたボクがバカだった。 まぁいいや。 たーべよっ フリージア:あっ、ずるいっ! ワタシもっ! デュランタ:おいしい! フリージア:(同時でもよい)おいしい! デュランタ:いいよなぁ、ニンゲンは。 こんなに美味しいものいつでも食べれて フリージア:ねー! ずるいよねっ。 あっ、もう一個もーらいっ リリィ:(キッチンに戻って来ながら)決まりね。 じゃあ、私は片付けと食材のチェックをしてから行くわ。 ……あら? クッキーが減って……って、何してるの、あなたたち! デュランタ:ん? えっ、ボクたちが見えるの? フリージア:まっさかー! 見えるニンゲンなんて会ったことないじゃん。 よし、もう一個―― リリィ:よしっ、じゃありません! フリージア:いった! うー、二回目…… デュランタ:ってことは、やっぱりボクたちのこと見えてるんだ リリィ:? 見えているけれど……普通はあなたたちのこと、見えないものなの? デュランタ:見えないよ。 だから、こうやってお菓子貰っても何にも言われない フリージア:盗んでも……間違った、貰ってもこんな風にペチってされたことない リリィ:……叩いたことは謝るわ。 ごめんなさい。 でも、勝手に取っちゃダメよ? フリージア:……じゃあ、どうしたらくれる? リリィ:えっ? そ、そうね……。 うーん、いただきますを言ったらあげるわ フリージア:何でいただきますって言わなきゃいけないの? リリィ:そうね、それを作ったのは私だから、かしら? 本当は、小麦やバターなんかを作ってくださってる方々への感謝も込めて言うものだけれども フリージア:ふーん。 ……いただきます! ね、言ったからちょーだい! デュランタ:は? えっ? ウソだろ? 切り替え早すぎだろ?! リリィ:……ふっ! 面白い子! いいわ。 その代わり、あまり食べ過ぎないでね? 家の者にあげる分も入っているから デュランタ:はぁ……。 ……ね、ボクもいただきますって言ったらくれる? リリィ:もちろん。 構わないわよ デュランタ:……ありがとう リリィ:どういたしまして フリージア:ワタシがくれる?って聞いたから食べれるんだよ? ね、えらい? えらい? デュランタ:だーかーらー! 調子に乗るな! フリージア:シュッ! へっへーん! 今度は避けれた! ……でもさー、変だよね デュランタ:ん? 何が? フリージア:だって、ニンゲンは神様からの恵みの雨とかないと小麦とか育たないのに、神様にはお礼しに来ないじゃん デュランタ:あー、確かに。 他のニンゲンにはお礼言うのにね。 神様は、してくれて当たり前って思ってるんじゃない? フリージア:えー、変なのー リリィ:……確かにそうよね。 でも、神様にお礼をする……っていうのは、どうしたらいいのかしら デュランタ:ボクたちは、花とか持って行ってるよ? ここの神様は動けないから、遠くに咲いてる花とか見れないし フリージア:そうそう! リリィ:ここの神様は、と言うことは、動ける神様もいらっしゃるの? デュランタ:うん、いるよ。 元が何だったかによるんだ。 ここの神様は、元が植物だから動けないし、自分の生命(いのち)を分け与えることでみんなを豊かにしてるんだよ フリージア:だよー リリィ:そうなのね。 ……その神様に、このクッキーを届けてもらうことはできるのかしら? デュランタ:うん、いいよ フリージア:いいよー リリィ:じゃあ……これを神様に。 あなたたちには届けてくれるお礼として、これもあげるわ デュランタ:わっ、いいの? フリージア:やった、やったー デュランタ:神様への分まで食べちゃダメだからな? フリージア:食べないよー! リリィ:ふふふっ。 あなたたちは兄弟なの? とても仲がいいのね デュランタ:ボクたちには、兄弟とかって考え方はあんまりないかなー。 こいつが生まれたとき、ボクが近くにいて。 で、それからずっと一緒にいる フリージア:うん。 なんか一緒にいるー リリィ:そっか。 そういう関係もいいものよね。 ということは、もしかして、名前もないのかしら? デュランタ:うん、ないよ フリージア:ない、なーい リリィ:それなら、私が名前を付けてもいいかしら? デュランタ:名前? なんで? フリージア:いいよ! 面白そう! デュランタ:いやいや、面白そうだからって付けてもらうじゃないからな! 相手を思い通りにするためにも使ったりする、怖いものなんだぞ?! フリージア:そんなことまで考えてないもんっ! リリィ:まぁまぁ、落ち着いて。 えっとね、名前がなかったら、あなたたちのこと、呼び辛いなって思っただけなの。 ……これからもここに来てくれるような気がするから フリージア:うん! 来る! デュランタ:もうっ! ……はぁ。 いいよ、名前。 付けて? フリージア:付けて、付けて― リリィ:ありがとう。 あなたは……そうね、『デュランタ』なんてどうかしら? デュランタ:デュランタ? フリージア:紫色のお花だー リリィ:そう! デュランタは紫色のお花なの。 花言葉は、『あなたを見守る』、『歓迎』。 やり取りを見ていて、見守る。 そんな優しさを、あなたから感じたから。 リリィ:それに、先に生まれてきて、一緒にいる……この世に生(せい)を受けることを待っていてあげたのかなって フリージア:いいね! デュランタ! ぴったり! デュランタ:……まぁ、こいつが手がかかるヤツだからそうなっちゃってるだけだけど……優しいって言われるのは、嬉しい フリージア:なに、なに? 照れてるの? 照れてるの? デュランタ:う、うるさいなっ! フリージア:あはは リリィ:そして……あなたは、『フリージア』 フリージア:色んな色のがあるお花! デュランタ:フリージア……。 それも、花言葉があるの? リリィ:ええ、あるわ。 花言葉は、『無邪気』、『あどけなさ』。 天真爛漫(てんしんらんまん)なところから、そう思ったの。 ……どうかしら? デュランタ:……あー フリージア:察し! みたいな『あー』だっ リリィ:ふふっ。 じゃあ、決まりね。 デュランタ、フリージア、これからもまた遊びに来てね デュランタ:わかった フリージア:(同時でもよい)うん! リリィ:あっ、いけない! 私ったら、オリビアを待たせているのだったわ。 また、ね デュランタ:うん、またね フリージア:またねー :  :  :(少し間を置く) :  :  デュランタ:今日はここにいるんだ フリージア:お花、いっぱーい リリィ:ここは、私のお家のお庭なの。 お花はお手入れも必要だけれど、こうやって話しかけてあげたりすると喜んでくれるのよ フリージア:お花とも話せるの? すごーい! リリィ:ふふっ。 お花とお話はできないわ。 でもね、元気になってくれたり、もっと美しい表情を見せてくれるようになるの フリージア:ふーん。 大事なこと、なんだね リリィ:そうなの。 あっ、ねぇ、せっかくだから、こっちに来て? デュランタ:ん? なに? フリージア:なに、なにー? リリィ:ふふふっ。 えいっ デュランタ:わっ! フリージア:わー! 花冠だぁ リリィ:プレゼント! 良かったらもらって? デュランタ:ありがとう フリージア:ありがとうっ! じゃあこれ、はいっ! お返しっ! リリィ:まぁ! 綺麗……。 どこに咲いていたの? フリージア:これはね、ニンゲンが行けないような場所! リリィ:そうなのね、ありがとう! あっ、今日は街の子供たちと一緒にマフィンを作ったの。 デュランタとフリージアも食べる? デュランタ:い、いいの? フリージア:欲しー! あっ、そういえば、クッキー、喜んでくれてたんだよね? デュランタ:あっ、そうだった! 神様、クッキー、喜んでたよ! リリィ:本当? 良かったわ デュランタ:……いつか、はちみつを使ったお菓子を作ってもらえたら、見てみたいって言ってた フリージア:ほへー、見てみたい!か。 まぁ、食べれないんだもんね リリィ:? 神様、召し上がらないの? デュランタ:うん。 元が植物だからね、食べられないんだ フリージア:可哀そうだよねー、食べれないなんて リリィ:はちみつ……食べられない……なるほど、わかったわ! 作ってみましょう デュランタ:えっ、作れるの? フリージア:すごーい、すごーい!! :  :  :(少し間を置く) :  :  リリィ:はい。 どうかしら? フリージア:すっごーい! くまだ、くまっ! デュランタ:……このくま、はちみつでできてる……? リリィ:そうなの! レモンはちみつカップケーキの上に、はちみつで作ったくまのキャンディを乗せてみたの フリージア:かわいいっ! デュランタ:……神様が食べられないってわかったから、見るだけでも楽しめるようにくまのキャンディにしたの? リリィ:気付いてくれたの? さすがね、デュランタ フリージア:えっ、そうなの? すっごーい! デュランタ:……すごいのは、そっちだよ。 こんなのすぐに思い付くなんて フリージア:そっち? あぁ、そっか! ワタシたち、名前知らないもんね! リリィ:えっ? あっ、ごめんなさい! そうだったわね。 私の名前は、リリィっていうの フリージア:リリィ! リリィもお花だ! いい名前だね リリィ:ありがとう! デュランタ:リリィ……も、花言葉があるの? リリィ:えぇ。 でも、自分で言うのは恥ずかしいから、内緒 フリージア:なーいしょ デュランタ:ふはっ! まぁいいや。 ボクは早速、カップケーキを神様に届けてくるよ フリージア:行ってらっしゃーい! ワタシはマフィン食べてるー デュランタ:ボクの分は? フリージア:ちゃんと残す! デュランタ:よろしい! リリィ:ふふっ。 ……フリージアは一緒に行かなくて良かったの? フリージア:うん。 行ってもワタシは神様に会えないの。 そういうのは、デュランタの役割なんだ リリィ:色々あるのね フリージア:ほら、デュランタはお花の名前、全然知らないでしょ! それと一緒! リリィ:……そっか。 そうよね。 人間以外にも、きっとみんなが役割を持っているのよね…… :  :  :(少し間を置く) :  :  リリィ:どうしてですか、お父様! 結婚のお話は理解しています。 ですが、オリビアだけは連れて行っても構わないという条件だったではありませんか! それなのに今更どうしてっ! :(掛け合いのため、少し間を置く) リリィ:……わかりました。 仕方……ないこと、ですものね。 っ! ごめんなさい、お父様。 取り乱してしまって。 一国の姫として相応しくない振る舞いでしたわ :(掛け合いのため、少し間を置く) リリィ:いいえ。 今までたくさんの愛情を注いでくださって、ありがとうございます。 とても幸せでした。 嫁いだ先でもお父様の志(こころざし)を継(つ)いで、国民の幸せを第一に願えるように務めて参ります :  :  :(少し間を置く) :  :  :(数ヶ月後。 嫁ぎ先にて) フリージア:あれー? 今日はお菓子、作んないのー? リリィ:えっ? フリージア:いっ! デュランタ:お前、一言目がそれはないだろ? ……久しぶり、リリィ リリィ:久しぶりね、デュランタ、フリージア フリージア:うー。 デュランタが、会いに行くってしつこくて デュランタ:おいっ! ……ほらっ、アレだよ。 見守る者なんだろ、デュランタは リリィ:ふふっ。 ……ありがとう デュランタ:……元気ないな、大丈夫か? フリージア:大丈夫? リリィ:えぇ。 ……ただ、色々と思い通りにはいかないものね、っと、思って。 ……聞いてくれる? リリィ:この国に来てから、王子はおろか、国王にも、王妃にも一度も会わせてもらえていないの。 お料理もさせてもらえない。 お庭も……あるにはあるのだけれど、お花はなくて。 リリィ:お花があれば、心が満たされる、明るくなる。 蝶や鳥たちともお話ができる。 けれども、お花もない、こんな生活を続けていたら、心が暗くなってしまう、余裕がなくなってしまう。 リリィ:……この国では、なぜか花が咲かなくなってしまったそうなの。 だから、植えても無駄だと、止められてしまって デュランタ:あぁ、それは、ここには神様がいないからだよ リリィ:神様が、いらっしゃらない……? そんなことがあるの? デュランタ:理由はそれぞれだけど。 後継ぎを育てる前に消えちゃったパターンもあるし、その地の守り神をすることがイヤになって逃げ出したパターンもある。 ここは……どっちかっていうと、後者のパターンなんじゃないかな。 デュランタ:施(ほどこ)しをしても、お礼もない。 そればかりか、足りないと文句を言う。 笑顔も見せずに、いがみ合う。 ……そんなニンゲンなら、神様だって守りたいと思わなくなる リリィ:……そっか、そうよね デュランタ:この辺、ここに来る前に見て来たんだ フリージア:あっ、どっか行ってたの、それでだったんだー デュランタ:牧師のいない教会。 食べる物もなくて、死にそうな子供がいっぱいいた フリージア:えっ、なんで、なんでー? デュランタ:……ここが、そういうところだってことだよ リリィ:……自分のことに精一杯の大人たち。 心の余裕のなさから、他者を思いやる気持ちを持てなくなってしまった。 ……でも、そんな風にしてしまったのは、そこまで民(たみ)を追い詰めてしまったのは……私たち王族なのよね フリージア:リリィは来たばっかじゃん! なんにも悪くないよ! リリィ:いいえ。 私は、この国に嫁いできた身。 もう、この国の王族の一員よ。 何か、できること……できること……。 っ! そうだわ! パンやお菓子をたくさん作るわ! だから、その子供たちに持って行ってもらえないかしら? デュランタ:それは……無理だよ。 ボクたちのことを見えるニンゲンは、リリィだけなんだ。 リリィだけが、特別なんだよ。 だから フリージア:だったら、リリィがこっから抜け出して、持って行ければいいんでしょ デュランタ:いや、リリィがいなくなったら、バレるだろう! リリィ:……いいえ、バレないわ! お食事のときくらいしか、誰もこの部屋には近づかないもの! ただ、廊下ですれ違ったりすることは避けないといけないわ デュランタ:そのくらいならボクたちでも助けられる フリージア:うん! やるー リリィ:ありがとう! :  :  :(少し間を置く) :  :  :(リリィ、街から戻る) リリィ:あんなに酷いことになっていたなんて……。 ねぇ、これからも、彼らに食べる物を持って行ってあげたいの。 デュランタ、フリージア……協力してもらえないかしら? デュランタ:もちろん。 ボクたちで良ければ! フリージア:リリィのお菓子は、美味しいから幸せいっぱいになれるもんねっ! リリィ:ありがとう! でも、あなたちを巻き込んでしまう……。 それに、いつまでお願いすることになってしまうのかわからないわ……。 何か他にもお返しができたらよいのだけれど…… デュランタ:そんな! いいよ! こうやって、お菓子もらえるだけで嬉しいし、な? フリージア:うん! ……あっ! でも、それなら、エディブルフラワーがいっぱい乗ったケーキが食べたい! リリィ:エディブルフラワー? それはどんなお花なの? フリージア:見るための花じゃなくて、食べるためのお花なの! それを食べれるまでここに来る! っていうのはどう? リリィ:この国ではお花は咲かないのよ? あなたたちが持ってきてくれるなら、作ることはできるけれど デュランタ:そうだぞ! 無理なこと言っちゃダメだろ! フリージア:うー! なんでわかんないのー! デュランタ:は? いや、わかってないのはお前だろ、フリージアだろ! 花が咲かないこの国でエディブルフラワーを食べたいなんて! そんなの、いつまで経っても実現しないに決まって……! あっ、そういうことか! フリージア:ふっふーん! リリィ:えっ? どういうことなの? デュランタ デュランタ:ボクらはエディブルフラワーを持ち込まない。 それなら、この国で育てるしかない。 でも、この国では花は育たない。 だから、ケーキは作れない リリィ:ええ、そうよ。 だから―― デュランタ:叶えられることのない約束をすることで、終わりのない約束にする。 フリージアはそうしたいんだろ? フリージア:うん! だから、リリィにずっと会いに来る! リリィ:……っ! あなたたちはっ、もうっ! デュランタ:わっ、苦しいよ! リリィ! フリージア:きゃはは! ん? リリィ、泣いてるの? リリィ:泣いてなんかないわ? フリージア:ウソだー! えー、なんで、なんで? デュランタ:フリージア、ちょっと静かにしてろ! ……リリィ。 ボクたちのこと、もっと頼っていいんだよ リリィ:えぇ、ありがとう……! :  :  :(少し間を置く) :  :  デュランタ:あの日から、十年とちょっとかぁ フリージア:あの日って、どの日? デュランタ:フリージアが、エディブルフラワーのケーキが食べたいって言った日 フリージア:ふーん。 そのくらい経つんだ。 なーんにも変わってない気がする デュランタ:……そうだね フリージア:でも、ニンゲンって変だよね。 大切にしてなかったニンゲンのこと、死んでも返してあげないなんて。 ワタシなら、こんな場所じゃなくて、生まれた場所に帰りたい デュランタ:……そうだね フリージア:……って! えっ、なんでこんなにいっぱい花があるの?! ここ、花が咲かない国なんだよね?! デュランタ:あぁ、それはね。 リリィが生まれたところの神様が花を届けてくれたんだ。 くまのキャンディのお礼。 ずっとしたかったんだって フリージア:でも、神様でもお花を運ぶなんてできないよね? デュランタ:うん、そうだよ。 だから、神様は自分の守っているところギリギリにたくさん花を届けた。 そこからここまで運んだのは……彼らだよ フリージア:えっ? ……あっ! もしかしてリリィがお菓子をあげてたニンゲン? デュランタ:そう。 リリィは、たくさんのいろんなモノから愛されていた。 そういう生き方を、リリィがしてきたから、だよ フリージア:……こんなにいっぱいのお花に囲まれてたら、寂しくないね デュランタ:……そうだね。 って、それは? フリージア:エディブルフラワー デュランタ:持って来たんだ フリージア:うん。 次に会ったら作ってねって言うために、持ってきた デュランタ:そっか フリージア:……また会えるかな? デュランタ:会えるよ。 ニンゲンは、三百年くらいしたら生まれ変わるんだ。 良いことをたくさんしたら、ニンゲンに。 悪いことをたくさんしたら、虫とかに。 だからきっと、リリィはまたニンゲンで生まれてくる フリージア:そっか! デュランタ:だからボクたちは、これから旅をしよう フリージア:旅? なんで? デュランタ:どこに生まれ変わるかわからないから。 どこで生まれ変わっても探せるように。 また会えるように! フリージア:っ! うん! 旅、しよっ! リリィとまた会うために! デュランタ:……あっ、そういえば、フリージア。 リリィの花言葉、知ってる? フリージア:うん、知ってるー! うんとね、『純粋』、『無垢』。それから、『聖母マリアの象徴』 :  :  :(少し間を置く) :  :  :(以降、リリィは生まれ変わり) フリージア:わっ、美味しそう! ね、ね! もらっちゃお! デュランタ:そうだな、食べよっ! リリィ:あーっ! かってにとっちゃ、メーなのっ! デュランタ:えっ? フリージア:あっ! リリィ:ほしいなら、いただきます、しなきゃダメなのよ? デュランタ:っ! いただきますって言うから フリージア:お菓子、ちょーだい! リリィ:ふふっ。 いいわ。 はいっ! どーぞ! デュランタ:……やっと見つけた フリージア:……やっと会えた リリィ:えっ? なぁに? デュランタ:……おかえり フリージア:おかえり! リリィ:……ふふふっ! ただいま! :  :  :――(上演終了)――