台本概要
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タイトル | オモイデビト |
---|---|
作者名 | 狛居しばまる (@_sbmr) |
ジャンル | その他 |
演者人数 | 4人用台本(男2、不問2) |
時間 | 30 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
死んだ人にもう一度会える、そんな奇跡のようなサービス〈オモイデビト〉を提供する会社がある。 新入社員の宇月要は、会社のためお客様のためと誠心誠意働いていた。そんなある日、瑠衣というどこか寂しげな少年と出会う。 ・アドリブ◎(ただし、世界観や物語を変えてしまうようなものはお控えください) ・一人称変更◎ ・役の性別で演じていただければ演者の性別は問いません 343 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
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宇月 | 不問 | 101 | 宇月 要(ウツキ カナメ) 株式会社ツゥルーの新入社員。 明るく前向きで正義感が強い。突っ走りやすそうに見えて意外と論理的な思考の持ち主。はじめは会社のためお客様のためサービス〈オモイデビト〉を売り込んでいたが、ある日会社の秘密を知ってしまう。 ※女性として書いていますが、男性として演じても良い(その際は、一人称を変更していただいてかまいません) |
瑠衣 | 不問 | 60 | 高都 瑠衣(タカト ルイ) ツゥルーの社長唯一の子息。溺愛されており、次期社長として教育を受けている。物静かで大人びており、あまり子供らしくない発言が多い。以前は小学校に通っていたが、今は不登校気味。 ※少年として演じていただければ、男女どちらが演じても良い |
桜井 | 男 | 38 | 桜井 竜(サクライ リュウ) 宇月と同じ部署の先輩。面倒見がよく何かと気が回りみんなのお兄さんのような存在。社長の高都とは同級生で飲みに行くような仲だった。キャリア的にも本来ならもっと上の立場になれるが、役職がつくのが性に合わないと今の部署に留まっている。 |
高都 | 男 | 44 | 高都 政臣(タカト マサオミ) 株式会社ツゥルーの代表取締役社長。 若くして一代で会社を大きくしたすごい人。妻は既に他界しており男で一つで瑠衣を育てているためか若干愛が重い。怖い印象を与えやすいが誰に対しても丁寧。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
:【オモイデビト】
:
高都:「本日はお越しいただきありがとうございます。わたくし、株式会社ツゥルーの代表取締役社長の高都と申します。それでは新サービス〈オモイデビト〉についてご説明させていただきます。
高都:オモイデビト、その名も通り思い出の人、つまりは過去の人に出会えるシステムを弊社は提供させていただきます。
高都:大昔の偉人や子供の頃に憧れていた芸能人、そして、お亡くなりになったご家族や恋人にもう一度会ってみたいと誰もが考えたことがあるはずです!そんな奇跡のような事を実現するため研究を重ね、ついに成功に至りました。
高都:…疑問を抱かれるのは仕方のないことです、ご納得いただけるまで説明させていただきましょう。
高都:過去の対象者のデータやお客様の記憶をもとにAIが分析しロボットを作り出します。そのロボットこそがオモイデビトなのです―――」
:
:*******************
:
宇月:「…はい、はい。〈オモイデビト〉をご利用いただき誠にありがとうございました!本日担当させていただきましたわたくし宇月と申します。またのご利用を心からお待ちしております。はい…それでは失礼いたします………っぷはあ!ああ、緊張したあ!」
桜井:「あっはは、宇月さんお疲れ様」
宇月:「あ、桜井先輩!初めてのお客様の電話対応めちゃくちゃ緊張しましたぁ」
桜井:「初めてで契約取れれば大したもんだよ、さすがは期待の新人だな」
宇月:「いやいや、そんな!いつもいっぱいいっぱいですよ」
桜井:「ははは、そんなふうには見えなかったぞ」
宇月:「そう言ってもらえると嬉しいです!だって興味持ってもらえたなら、やっぱり利用してみてほしいじゃないですか!こんな素敵なサービス他にはないですよ」
桜井:「……そうか」
宇月:「桜井先輩?」
桜井:「あ、いや…宇月さんはもう一度会いたい人いる?」
宇月:「いえ、私は特には…あ、でも昔の偉人には会ってみたいかも」
桜井:「はは、そっか…あ、そうだ。お願いしてた資料の進捗どうだ?」
宇月:「あ!聞きたいことがあったんです!ここなんですけど…これだと少しわかりにくい気がして…」
桜井:「ここは、そうだな、こうしてみたらどうかな」
宇月:「ありがとうございます。もう一度見直してから改めて提出しますね!」
桜井:「あんまり根を詰めすぎないようにな」
宇月:「大丈夫ですよ!まだまだやれます!」
桜井:「あはは、元気だな…おっと、会議の時間だわ。行ってくる」
宇月:「引き留めてしまってすみませんでした、行ってらっしゃい!………あー、桜井先輩格好いいなぁ、私もあんな風に仕事できるように頑張ろう!」
:
:******************
:
宇月:「んー、仕事もひと段落したし補充作業でもしようかと思ったんだけど、コピー用紙の在庫ってこの辺じゃなかったっけ…」
瑠衣:「……」
宇月:「どこかなー、ここか!…あれ?ないな」
瑠衣:「…コピー用紙ならそこにはないよ」
宇月:「わッ…⁉︎…え、子供?」
瑠衣:「コピー用紙はそっちの棚、そこは文房具の棚」
宇月:「え、あ…ほんとだ。よいしょっと…ありがとう!」
瑠衣:「どういたしまして」
宇月:「あ、えっと…君は迷子?いや、でも、こんなところまで来ちゃうかな?来客の方のお子さんとか…?」
瑠衣:「僕は瑠衣。お姉さんは?」
宇月:「あ、私は宇月要、要っていうんだ」
瑠衣:「要さん、だね」
宇月:「うん。じゃあ、瑠衣くん、とりあえず私と一緒にロビーに行こっか」
瑠衣:「ううん、一人で戻れるよ。それに僕、要さんより会社のこと詳しいと思う」
宇月:「え?」
瑠衣:「それじゃあ、またね、要さん」
宇月:「あ…うん、またね」
宇月:……行っちゃった、なんだったんだろう」
:
:******************
:
宇月:「…あの桜井先輩」
桜井:「あー?どうした?」
宇月:「この会社って七不思議とかあったりします…?」
桜井:「………は?」
宇月:「あ、その、この前不思議な体験して…もう!そんな目で見ないでください!変なこと言っている自覚はあります」
桜井:「いや、ははは、宇月さんはそういう話って信じ無さそうだからなんか意外で…何かあったの?」
宇月:「…実は、子供に会いまして…はじめは来客の方のお子さんだと思ったんですけど、その子がどの棚に何があるかとか教えてくれて…」
桜井:「ほうほう、それで?」
宇月:「そんなに会社について詳しいだなんて…座敷童に違いないと思いまして‼︎」
桜井:「座敷童…ぷはっ、あはははは!」
宇月:「あー、ちょっと笑わないでくださいよ」
桜井:「ふふふ…いや、ごめんごめん。だって宇月さんすごい神妙な顔してるから何かと思ったわ」
宇月:「色々考えてみて座敷童しか思い当たらなかったんです!」
桜井:「ごめんって、そんな怒らないで。そうだな、いい機会だしそろそろ会っておくか?」
宇月:「え?誰にですか?」
桜井:「高都社長に」
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:
高都:「瑠衣、この事案お前だったらどう解決する?」
瑠衣:「…そうだな、問題はエネルギー供給だと思うからまずはこっちの問題を解決してからの方がいいじゃないかな」
高都:「うん、さすがは私の息子だ」
瑠衣:「…そんなことないよ、お父さん」
高都:「瑠衣は自慢の息子だよ」
瑠衣:「…うん」
高都:「…どうした、瑠衣、最近元気がないんじゃないか、体調が悪いなら今日はこのまま休んでいてもいい」
瑠衣:「心配してくれてありがとう。でも、大丈夫だよ。それにこの後、来訪の予定あるでしょ」
高都:「瑠衣が言うなら…でも、無理しないでくれ。瑠衣に何かあったらお父さんは生きていけない」
瑠衣:「…うん」
桜井:「(ノック音)桜井です」
高都:「入りなさい」
桜井:「(ドアを開け)失礼いたします、例の件での適任者を連れてきました。ほら宇月さん入って」
宇月:「はい!失礼いたします!営業部所属の宇月要と申します‼︎」
高都:「ああ、貴方が桜井が話してい宇月さんだね。立ち話もあれだ。こちらへどうぞ」
宇月:「は、はぃ」
高都:「そんなに緊張しないで。桜井から既に聞いているとは思うが…」
宇月:「え?いや、あの…」
高都:「………桜井」
桜井:「はは、すみません。高都社長から直接お話された方がいいかとと思いまして」
瑠衣:「…失礼します、お茶をどうぞ」
宇月:「あ、ありがとうござい…え⁉︎瑠衣くん⁉︎」
瑠衣:「…こんにちは」
宇月:「な、なんで。瑠衣くんが」
高都:「おや、いつの間に知り合ったんだ?」
瑠衣:「以前に一度だけお会いしました」
高都:「まあ、丁度良かった。瑠衣も同席しなさい」
瑠衣:「はい」
高都:「宇月さん、貴方にお願いがあるんだ」
宇月:「…え?」
高都:「瑠衣は私の息子でね」
宇月:「え⁉︎」
高都:「驚くのも無理はない、知っている人間は限られているからね」
宇月:「は、はい」
高都:「瑠衣は小さな頃から私に付いて仕事を手伝ってもらっているんだが、そのせいか大人達に囲まれていることが多くてね。学校でなかなか気の合う友達ができないみたいなんだ」
瑠衣:「……」
高都:「最近は学校にもあまり行かなくなってしまって…会社にいるとやはり仕事の話ばかりになってしまうからね、瑠衣が気を抜ける時間を作ろうかと思ったんだ」
宇月:「はい」
高都:「だから貴方のような人を探していたんだよ。宇月さん、貴方に瑠衣の話し相手になっていただきたい」
宇月:「…話し相手…わ、私なんかが、いいんでしょうか…?」
高都:「桜井から貴方の話は聞いていた。成績優秀で柔軟性が高い、そしてとても明察だとね」
宇月:「…ッとんでもないことでございます!高都社長からそんなお言葉をいただけるなんて恐縮です」
高都:「しかも気遣いも上手なんだね。それで、この話受けてくれるかい?」
宇月:「喜んでお手伝いさせていただきます!」
高都:「そう言ってくれると思っていたよ、勤務形態や給料などの契約内容は桜井を通して改めて伝えよう……瑠衣」
瑠衣:「はい」
高都:「これから宇月さんと仲良くね」
瑠衣:「はい…じゃあ、自己紹介も兼ねて少し宇月さんとお話ししてきます。宇月さん、行きましょう」
宇月:「え、わ、瑠衣くん引っ張ると危ないよっ…し、失礼します!」
0:宇月、瑠衣が退出
高都:「ははは、あの様子なら良い関係を築けそうだ」
桜井:「…そうですね」
高都:「それにしても桜井」
桜井:「なんですか?」
高都:「あんなに渋っていたのに一体どんな心境の変化だ」
桜井:「はは、なんのことでしょうか」
高都:「ふん、お前は本当に変わらないな、昔から食えない奴だ」
桜井:「お前は大分変わっちまったな、政臣」
高都:「全ては瑠衣のためだ」
桜井:「……さて、俺も失礼しますよ」
0:桜井、退出
高都:「竜、お前も子供ができたら分かる筈だ………瑠衣」
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瑠衣:「はい、要さん、お茶どうぞ」
宇月:「あ、ありがとう!…いつも思うんだけど、いいのかな社長の御子息にお茶入れてもらうなんて私いつかクビになったりしない?」
瑠衣:「だから、そういうのいいって言ってるでしょ、僕が好きでやってるんだし。それにそんなこと僕がさせないよ」
宇月:「ふふ、お願いします!…さ、今日は何しよっか?」
瑠衣:「映画鑑賞に運動に絵画に料理…一通りやることはやったね」
宇月:「んー、あ!そうだ!外で遊ぼうよ!」
瑠衣:「え」
宇月:「高都社長との契約書にも外出禁止の記載がなかったし!」
瑠衣:「えと」
宇月:「あ、もしかして、外出は好きじゃない?」
瑠衣:「そ、そんなことないよ」
宇月:「じゃあ、決定!そうと決まればすぐに準備して出かけよう!」
瑠衣:「今から⁉︎」
宇月:「そうだよ!ほら、急いで!時間は有限なんだから」
0:間
宇月:「あー、楽しかったね!」
瑠衣:「うん!UFOキャッチャーにバッティングに、あとファミレスで食べたオムライスも美味しかった」
宇月:「また、来ようね」
瑠衣:「…うん!楽しみだなぁ、僕こんな風に遊んだの初めて」
宇月:「そう、なんだ……学校は楽しくない?」
瑠衣:「……楽しかったよ」
宇月:「…?」
瑠衣:「………これから言うこと絶対に誰にも言わないでくれる?」
宇月:「もちろん!約束するよ!」
瑠衣:「……実はね、最初はちゃんと仲のいい友達がいたんだ」
宇月:「…え」
瑠衣:「お喋りしたり、放課後に遊んだり…でも、その子の家貧乏でお父さんが友達は選べ、って」
宇月:「…ッそんなこと言われたの⁉︎」
瑠衣:「…休み明けに学校にいくと友達が転校したって知らされた」
宇月:「…ッ」
瑠衣:「…でも、仕方がないんだ」
宇月:「仕方がなくなんかないよ!」
瑠衣:「仕方がないんだよ、だって僕は…瑠衣だから」
宇月:「会社の次期社長だから…?」
瑠衣:「……ううん、違うよ…僕が…瑠衣の代わりだから」
宇月:「え…どういうこと?」
瑠衣:「僕は…瑠衣の、瑠衣のオモイデビトなんだ。お父さんの言うことに従わないといけない」
宇月:「…ッ……うそ、嘘だよね、そんな冗談やめてよ」
瑠衣:「……嘘だったら、よかったのにね」
宇月:「嘘だよ!瑠衣くんがロボットだって言うの⁉︎
宇月:瑠衣くんはご飯も食べるし昼寝もするしロボットなんかに見えないよ!」
瑠衣:「…要さん」
宇月:「……なに」
瑠衣:「今から一緒に来て欲しいところがあるんだ」
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:
宇月:「ねえ、瑠衣くん。ここ社員研修の時に立ち入り禁止って教えられたよ…?」
瑠衣:「いいから、静かについて来て」
宇月:「……わかった」
瑠衣:「…着いた、いま電気を付けるから」
0:真っ暗な部屋に入り、瑠衣が明かりをつけるとそこには液体に浸かった人間が大量に並んでいる
宇月:「…ッまぶし……え…なに、これ…」
瑠衣:「……これがこの会社の秘密、オモイデビトの正体」
宇月:「…人が沢山並んでる…え、わから、ない、わからないよ…どういう、こと?」
瑠衣:「オモイデビトはね、ロボットではなく対象者の遺伝子から作り出したクローンなんだよ。その人の性格を忠実に再現できるように教育されたクローンだ。会いたい人にもう一度会えるなんてそんな綺麗なものじゃない。遺伝子操作の賜物なんだよ」
宇月:「……私は、こんな、倫理から外れたモノを人に薦めていたの…」
瑠衣:「…ごめんなさい、どうしても要さんには知ってほしかった…これは僕の我儘だ」
宇月:「……あ、ああ、ああああ…」
瑠衣:「…要さん」
宇月:「……」
瑠衣:「ごめん、ごめんなさい」
高都:「瑠衣、そこで何をしている」
瑠衣:「…ッ!?…お父さん…?」
高都:「それに宇月さんじゃないか、ここは関係者以外立ち入り禁止のはずだが?」
瑠衣:「こ、これは違うんだ!僕が連れてきた!僕が悪いんだ!」
宇月:「……いいえ、瑠衣くんは悪くないよ」
瑠衣:「要さん⁉︎」
宇月:「私がついていくと決めたの」
瑠衣:「…ッ……」
高都:「私は貴方のことを見誤ったようだね」
宇月:「…瑠衣くんから全てを教えてもらいました」
高都:「知ってしまったのか、会社の、いや私の、そして瑠衣の秘密を」
宇月:「…はい」
高都:「軽蔑するかい?オモイデビトの正体がロボットなどではなくクローンだったなんて‼︎」
宇月:「何故こんなことを…?」
高都:「何故?…はは、はははは!いいだろう、瑠衣と仲良くしてくれた礼だ!特別に話してあげよう!」
宇月:「……」
高都:「宇月さん、私はね、瑠衣に…瑠依にもう一度会いたかったんだよ‼︎」
宇月:「瑠衣くんに…」
高都:「私の妻は瑠衣を産んですぐに他界した。それまで仕事ばかりだった私への罰なんだろうね。妻が死んでから家族の大切さに気付かされたんだ…
高都:それからは育児も仕事も手を抜かずに瑠衣に愛情を注いだ。妻の分まで瑠衣を愛していこう…そう決めたんだ…決めた、のに…‼︎」
宇月:「……」
高都:「…瑠衣は死んだ、交通事故だった…
高都:あれは、妻が死んでから5年後のことだ、今でも鮮明に覚えているよ、冬の寒い日、夕方から雪が降り始めた、あの頃から瑠衣は賢くてね、私が傘を忘れたことを知って届けてくれたんだ、そして、私の目の、前で……ああ、ああああ…いやだ、瑠衣…瑠衣まで俺を置いていくのか…夢だと思いたかった…いや、あれは夢だったんだ…瑠衣?どこだ、瑠衣‼︎」
瑠衣:「……お父さん」
高都:「ああ…いるじゃないか。事故の怪我はもう治ったのか?」
瑠衣:「うんッ…うん…もう治ったよ」
高都:「よかった…瑠衣、愛しているよ」
瑠衣:「……」
宇月:「……狂っている…それじゃあ死んでしまった人たちが報われない…」
瑠依…「…ッ…」
宇月:「…でも」
瑠衣:「……?」
宇月:「でも…!一緒に過ごした瑠衣くんとの思い出は…紛れもなく本物だ」
瑠衣:「要、さん」
宇月:「どれだけ倫理から逸脱していたとしても…クローンにも心があって生きているんだ!許される行為ではない、でも全てを否定してしまったら瑠衣くんを否定することになる!そんなの嫌だ‼︎」
高都:「……はは、ははははは!さすがは桜井が見込んだだけある。何も考えていないようで何が一番大事なのかを分かっている‼︎」
宇月:「このことを誰かに話すつもりはない、瑠衣くんのためにも」
高都:「ますます気に入った!知られてしまったからには死んでもらおうと思っていたのだが、貴方のような人材をなくすのは惜しい…クローンも完璧ではなくてね、どうしても本物と誤差が生じてしまうんだ」
宇月:「…それでは、取引しませんか」
高都:「…ほぅ、聞かせてみなさい」
宇月:「私はこのことを口外しないと誓います。そして、クローン達の教育やサービス終了後の対応に携わらせてほしい、クローン達をただの代替品のようにはさせない…」
高都:「ほう…それで?私にどんなメリットがあるんだ」
宇月:「必ず会社の利益になります。だって、私は桜井先輩のお墨付きでしょう?」
高都:「ふ、はははは…いいだろう。しかし、覚えておくことだ、私はいつでも貴方の代わりを作れるということを…」
宇月:「はい」
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:******************
:
桜井:「お!お疲れさん、最近忙しそうだな」
宇月:「あ!桜井先輩」
桜井:「それにしても大出世だな、突然異動の辞令がきたときは驚いたわ」
宇月:「その節はご迷惑をおかけしました…」
桜井:「宇月さんが謝ることじゃない、大方高都社長の考えだろ」
宇月:「何故だか、私のことを買ってくれているようで…」
桜井:「宇月さんの能力に関しては俺も信頼してるよ」
宇月:「え!ふふ、ありがとうございます」
桜井:「……最近、瑠衣は元気か」
宇月:「…はい」
桜井:「…そうか」
宇月:「…桜井先輩は高都社長と瑠衣くんの関係をご存知でしたよね」
桜井:「ああ、高都社長…政臣とは同級生なんだ、だから瑠衣のことも産まれた頃から知っているよ」
宇月:「そうでしたか……そういえば、聞きそびれていたのですが、どうしてあの日私を高都社長の元へ連れて行ったんですか」
桜井:「……君なら瑠衣のこと大事にしてくれると思ったんだよ」
宇月:「…それは」
桜井:「…俺には止めることができなかった、瑠衣たちを守れなかった」
宇月:「…瑠衣“たち”?」
桜井:「死んでしまった瑠衣と、宇月さんと楽しそうに過ごす瑠衣」
宇月:「…やっぱり知っていたんですね」
桜井:「宇月さんを連れていったのは完全な俺のエゴだ。死んでしまった瑠衣への罪滅ぼし。そして、今の瑠衣が幸せになって欲しかったんだ」
宇月:「桜井先輩の気持ちはきっと瑠衣くんたちに届いているはずです」
桜井:「ありがとう…でも宇月さんには悪いことをした、本当に申し訳ない」
宇月:「…いいえ、いいんです」
桜井:「どうか…どうか瑠衣をよろしく頼む」
宇月:「はい…大丈夫ですよ、だって瑠衣くんはとっても良い子ですから!」
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宇月:「さ、瑠衣くん!今日は何する?」
瑠衣:「あのね、この前食べたオムライスがまた食べたい!」
宇月:「よーし、じゃあさっそく行こっか!」
瑠衣:「今から⁉︎」
宇月:「そうだよ!ほら、急いで!時間は有限なんだから」
瑠衣:「…うん!」
:
:
0:完
:【オモイデビト】
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高都:「本日はお越しいただきありがとうございます。わたくし、株式会社ツゥルーの代表取締役社長の高都と申します。それでは新サービス〈オモイデビト〉についてご説明させていただきます。
高都:オモイデビト、その名も通り思い出の人、つまりは過去の人に出会えるシステムを弊社は提供させていただきます。
高都:大昔の偉人や子供の頃に憧れていた芸能人、そして、お亡くなりになったご家族や恋人にもう一度会ってみたいと誰もが考えたことがあるはずです!そんな奇跡のような事を実現するため研究を重ね、ついに成功に至りました。
高都:…疑問を抱かれるのは仕方のないことです、ご納得いただけるまで説明させていただきましょう。
高都:過去の対象者のデータやお客様の記憶をもとにAIが分析しロボットを作り出します。そのロボットこそがオモイデビトなのです―――」
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宇月:「…はい、はい。〈オモイデビト〉をご利用いただき誠にありがとうございました!本日担当させていただきましたわたくし宇月と申します。またのご利用を心からお待ちしております。はい…それでは失礼いたします………っぷはあ!ああ、緊張したあ!」
桜井:「あっはは、宇月さんお疲れ様」
宇月:「あ、桜井先輩!初めてのお客様の電話対応めちゃくちゃ緊張しましたぁ」
桜井:「初めてで契約取れれば大したもんだよ、さすがは期待の新人だな」
宇月:「いやいや、そんな!いつもいっぱいいっぱいですよ」
桜井:「ははは、そんなふうには見えなかったぞ」
宇月:「そう言ってもらえると嬉しいです!だって興味持ってもらえたなら、やっぱり利用してみてほしいじゃないですか!こんな素敵なサービス他にはないですよ」
桜井:「……そうか」
宇月:「桜井先輩?」
桜井:「あ、いや…宇月さんはもう一度会いたい人いる?」
宇月:「いえ、私は特には…あ、でも昔の偉人には会ってみたいかも」
桜井:「はは、そっか…あ、そうだ。お願いしてた資料の進捗どうだ?」
宇月:「あ!聞きたいことがあったんです!ここなんですけど…これだと少しわかりにくい気がして…」
桜井:「ここは、そうだな、こうしてみたらどうかな」
宇月:「ありがとうございます。もう一度見直してから改めて提出しますね!」
桜井:「あんまり根を詰めすぎないようにな」
宇月:「大丈夫ですよ!まだまだやれます!」
桜井:「あはは、元気だな…おっと、会議の時間だわ。行ってくる」
宇月:「引き留めてしまってすみませんでした、行ってらっしゃい!………あー、桜井先輩格好いいなぁ、私もあんな風に仕事できるように頑張ろう!」
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宇月:「んー、仕事もひと段落したし補充作業でもしようかと思ったんだけど、コピー用紙の在庫ってこの辺じゃなかったっけ…」
瑠衣:「……」
宇月:「どこかなー、ここか!…あれ?ないな」
瑠衣:「…コピー用紙ならそこにはないよ」
宇月:「わッ…⁉︎…え、子供?」
瑠衣:「コピー用紙はそっちの棚、そこは文房具の棚」
宇月:「え、あ…ほんとだ。よいしょっと…ありがとう!」
瑠衣:「どういたしまして」
宇月:「あ、えっと…君は迷子?いや、でも、こんなところまで来ちゃうかな?来客の方のお子さんとか…?」
瑠衣:「僕は瑠衣。お姉さんは?」
宇月:「あ、私は宇月要、要っていうんだ」
瑠衣:「要さん、だね」
宇月:「うん。じゃあ、瑠衣くん、とりあえず私と一緒にロビーに行こっか」
瑠衣:「ううん、一人で戻れるよ。それに僕、要さんより会社のこと詳しいと思う」
宇月:「え?」
瑠衣:「それじゃあ、またね、要さん」
宇月:「あ…うん、またね」
宇月:……行っちゃった、なんだったんだろう」
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宇月:「…あの桜井先輩」
桜井:「あー?どうした?」
宇月:「この会社って七不思議とかあったりします…?」
桜井:「………は?」
宇月:「あ、その、この前不思議な体験して…もう!そんな目で見ないでください!変なこと言っている自覚はあります」
桜井:「いや、ははは、宇月さんはそういう話って信じ無さそうだからなんか意外で…何かあったの?」
宇月:「…実は、子供に会いまして…はじめは来客の方のお子さんだと思ったんですけど、その子がどの棚に何があるかとか教えてくれて…」
桜井:「ほうほう、それで?」
宇月:「そんなに会社について詳しいだなんて…座敷童に違いないと思いまして‼︎」
桜井:「座敷童…ぷはっ、あはははは!」
宇月:「あー、ちょっと笑わないでくださいよ」
桜井:「ふふふ…いや、ごめんごめん。だって宇月さんすごい神妙な顔してるから何かと思ったわ」
宇月:「色々考えてみて座敷童しか思い当たらなかったんです!」
桜井:「ごめんって、そんな怒らないで。そうだな、いい機会だしそろそろ会っておくか?」
宇月:「え?誰にですか?」
桜井:「高都社長に」
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高都:「瑠衣、この事案お前だったらどう解決する?」
瑠衣:「…そうだな、問題はエネルギー供給だと思うからまずはこっちの問題を解決してからの方がいいじゃないかな」
高都:「うん、さすがは私の息子だ」
瑠衣:「…そんなことないよ、お父さん」
高都:「瑠衣は自慢の息子だよ」
瑠衣:「…うん」
高都:「…どうした、瑠衣、最近元気がないんじゃないか、体調が悪いなら今日はこのまま休んでいてもいい」
瑠衣:「心配してくれてありがとう。でも、大丈夫だよ。それにこの後、来訪の予定あるでしょ」
高都:「瑠衣が言うなら…でも、無理しないでくれ。瑠衣に何かあったらお父さんは生きていけない」
瑠衣:「…うん」
桜井:「(ノック音)桜井です」
高都:「入りなさい」
桜井:「(ドアを開け)失礼いたします、例の件での適任者を連れてきました。ほら宇月さん入って」
宇月:「はい!失礼いたします!営業部所属の宇月要と申します‼︎」
高都:「ああ、貴方が桜井が話してい宇月さんだね。立ち話もあれだ。こちらへどうぞ」
宇月:「は、はぃ」
高都:「そんなに緊張しないで。桜井から既に聞いているとは思うが…」
宇月:「え?いや、あの…」
高都:「………桜井」
桜井:「はは、すみません。高都社長から直接お話された方がいいかとと思いまして」
瑠衣:「…失礼します、お茶をどうぞ」
宇月:「あ、ありがとうござい…え⁉︎瑠衣くん⁉︎」
瑠衣:「…こんにちは」
宇月:「な、なんで。瑠衣くんが」
高都:「おや、いつの間に知り合ったんだ?」
瑠衣:「以前に一度だけお会いしました」
高都:「まあ、丁度良かった。瑠衣も同席しなさい」
瑠衣:「はい」
高都:「宇月さん、貴方にお願いがあるんだ」
宇月:「…え?」
高都:「瑠衣は私の息子でね」
宇月:「え⁉︎」
高都:「驚くのも無理はない、知っている人間は限られているからね」
宇月:「は、はい」
高都:「瑠衣は小さな頃から私に付いて仕事を手伝ってもらっているんだが、そのせいか大人達に囲まれていることが多くてね。学校でなかなか気の合う友達ができないみたいなんだ」
瑠衣:「……」
高都:「最近は学校にもあまり行かなくなってしまって…会社にいるとやはり仕事の話ばかりになってしまうからね、瑠衣が気を抜ける時間を作ろうかと思ったんだ」
宇月:「はい」
高都:「だから貴方のような人を探していたんだよ。宇月さん、貴方に瑠衣の話し相手になっていただきたい」
宇月:「…話し相手…わ、私なんかが、いいんでしょうか…?」
高都:「桜井から貴方の話は聞いていた。成績優秀で柔軟性が高い、そしてとても明察だとね」
宇月:「…ッとんでもないことでございます!高都社長からそんなお言葉をいただけるなんて恐縮です」
高都:「しかも気遣いも上手なんだね。それで、この話受けてくれるかい?」
宇月:「喜んでお手伝いさせていただきます!」
高都:「そう言ってくれると思っていたよ、勤務形態や給料などの契約内容は桜井を通して改めて伝えよう……瑠衣」
瑠衣:「はい」
高都:「これから宇月さんと仲良くね」
瑠衣:「はい…じゃあ、自己紹介も兼ねて少し宇月さんとお話ししてきます。宇月さん、行きましょう」
宇月:「え、わ、瑠衣くん引っ張ると危ないよっ…し、失礼します!」
0:宇月、瑠衣が退出
高都:「ははは、あの様子なら良い関係を築けそうだ」
桜井:「…そうですね」
高都:「それにしても桜井」
桜井:「なんですか?」
高都:「あんなに渋っていたのに一体どんな心境の変化だ」
桜井:「はは、なんのことでしょうか」
高都:「ふん、お前は本当に変わらないな、昔から食えない奴だ」
桜井:「お前は大分変わっちまったな、政臣」
高都:「全ては瑠衣のためだ」
桜井:「……さて、俺も失礼しますよ」
0:桜井、退出
高都:「竜、お前も子供ができたら分かる筈だ………瑠衣」
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瑠衣:「はい、要さん、お茶どうぞ」
宇月:「あ、ありがとう!…いつも思うんだけど、いいのかな社長の御子息にお茶入れてもらうなんて私いつかクビになったりしない?」
瑠衣:「だから、そういうのいいって言ってるでしょ、僕が好きでやってるんだし。それにそんなこと僕がさせないよ」
宇月:「ふふ、お願いします!…さ、今日は何しよっか?」
瑠衣:「映画鑑賞に運動に絵画に料理…一通りやることはやったね」
宇月:「んー、あ!そうだ!外で遊ぼうよ!」
瑠衣:「え」
宇月:「高都社長との契約書にも外出禁止の記載がなかったし!」
瑠衣:「えと」
宇月:「あ、もしかして、外出は好きじゃない?」
瑠衣:「そ、そんなことないよ」
宇月:「じゃあ、決定!そうと決まればすぐに準備して出かけよう!」
瑠衣:「今から⁉︎」
宇月:「そうだよ!ほら、急いで!時間は有限なんだから」
0:間
宇月:「あー、楽しかったね!」
瑠衣:「うん!UFOキャッチャーにバッティングに、あとファミレスで食べたオムライスも美味しかった」
宇月:「また、来ようね」
瑠衣:「…うん!楽しみだなぁ、僕こんな風に遊んだの初めて」
宇月:「そう、なんだ……学校は楽しくない?」
瑠衣:「……楽しかったよ」
宇月:「…?」
瑠衣:「………これから言うこと絶対に誰にも言わないでくれる?」
宇月:「もちろん!約束するよ!」
瑠衣:「……実はね、最初はちゃんと仲のいい友達がいたんだ」
宇月:「…え」
瑠衣:「お喋りしたり、放課後に遊んだり…でも、その子の家貧乏でお父さんが友達は選べ、って」
宇月:「…ッそんなこと言われたの⁉︎」
瑠衣:「…休み明けに学校にいくと友達が転校したって知らされた」
宇月:「…ッ」
瑠衣:「…でも、仕方がないんだ」
宇月:「仕方がなくなんかないよ!」
瑠衣:「仕方がないんだよ、だって僕は…瑠衣だから」
宇月:「会社の次期社長だから…?」
瑠衣:「……ううん、違うよ…僕が…瑠衣の代わりだから」
宇月:「え…どういうこと?」
瑠衣:「僕は…瑠衣の、瑠衣のオモイデビトなんだ。お父さんの言うことに従わないといけない」
宇月:「…ッ……うそ、嘘だよね、そんな冗談やめてよ」
瑠衣:「……嘘だったら、よかったのにね」
宇月:「嘘だよ!瑠衣くんがロボットだって言うの⁉︎
宇月:瑠衣くんはご飯も食べるし昼寝もするしロボットなんかに見えないよ!」
瑠衣:「…要さん」
宇月:「……なに」
瑠衣:「今から一緒に来て欲しいところがあるんだ」
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宇月:「ねえ、瑠衣くん。ここ社員研修の時に立ち入り禁止って教えられたよ…?」
瑠衣:「いいから、静かについて来て」
宇月:「……わかった」
瑠衣:「…着いた、いま電気を付けるから」
0:真っ暗な部屋に入り、瑠衣が明かりをつけるとそこには液体に浸かった人間が大量に並んでいる
宇月:「…ッまぶし……え…なに、これ…」
瑠衣:「……これがこの会社の秘密、オモイデビトの正体」
宇月:「…人が沢山並んでる…え、わから、ない、わからないよ…どういう、こと?」
瑠衣:「オモイデビトはね、ロボットではなく対象者の遺伝子から作り出したクローンなんだよ。その人の性格を忠実に再現できるように教育されたクローンだ。会いたい人にもう一度会えるなんてそんな綺麗なものじゃない。遺伝子操作の賜物なんだよ」
宇月:「……私は、こんな、倫理から外れたモノを人に薦めていたの…」
瑠衣:「…ごめんなさい、どうしても要さんには知ってほしかった…これは僕の我儘だ」
宇月:「……あ、ああ、ああああ…」
瑠衣:「…要さん」
宇月:「……」
瑠衣:「ごめん、ごめんなさい」
高都:「瑠衣、そこで何をしている」
瑠衣:「…ッ!?…お父さん…?」
高都:「それに宇月さんじゃないか、ここは関係者以外立ち入り禁止のはずだが?」
瑠衣:「こ、これは違うんだ!僕が連れてきた!僕が悪いんだ!」
宇月:「……いいえ、瑠衣くんは悪くないよ」
瑠衣:「要さん⁉︎」
宇月:「私がついていくと決めたの」
瑠衣:「…ッ……」
高都:「私は貴方のことを見誤ったようだね」
宇月:「…瑠衣くんから全てを教えてもらいました」
高都:「知ってしまったのか、会社の、いや私の、そして瑠衣の秘密を」
宇月:「…はい」
高都:「軽蔑するかい?オモイデビトの正体がロボットなどではなくクローンだったなんて‼︎」
宇月:「何故こんなことを…?」
高都:「何故?…はは、はははは!いいだろう、瑠衣と仲良くしてくれた礼だ!特別に話してあげよう!」
宇月:「……」
高都:「宇月さん、私はね、瑠衣に…瑠依にもう一度会いたかったんだよ‼︎」
宇月:「瑠衣くんに…」
高都:「私の妻は瑠衣を産んですぐに他界した。それまで仕事ばかりだった私への罰なんだろうね。妻が死んでから家族の大切さに気付かされたんだ…
高都:それからは育児も仕事も手を抜かずに瑠衣に愛情を注いだ。妻の分まで瑠衣を愛していこう…そう決めたんだ…決めた、のに…‼︎」
宇月:「……」
高都:「…瑠衣は死んだ、交通事故だった…
高都:あれは、妻が死んでから5年後のことだ、今でも鮮明に覚えているよ、冬の寒い日、夕方から雪が降り始めた、あの頃から瑠衣は賢くてね、私が傘を忘れたことを知って届けてくれたんだ、そして、私の目の、前で……ああ、ああああ…いやだ、瑠衣…瑠衣まで俺を置いていくのか…夢だと思いたかった…いや、あれは夢だったんだ…瑠衣?どこだ、瑠衣‼︎」
瑠衣:「……お父さん」
高都:「ああ…いるじゃないか。事故の怪我はもう治ったのか?」
瑠衣:「うんッ…うん…もう治ったよ」
高都:「よかった…瑠衣、愛しているよ」
瑠衣:「……」
宇月:「……狂っている…それじゃあ死んでしまった人たちが報われない…」
瑠依…「…ッ…」
宇月:「…でも」
瑠衣:「……?」
宇月:「でも…!一緒に過ごした瑠衣くんとの思い出は…紛れもなく本物だ」
瑠衣:「要、さん」
宇月:「どれだけ倫理から逸脱していたとしても…クローンにも心があって生きているんだ!許される行為ではない、でも全てを否定してしまったら瑠衣くんを否定することになる!そんなの嫌だ‼︎」
高都:「……はは、ははははは!さすがは桜井が見込んだだけある。何も考えていないようで何が一番大事なのかを分かっている‼︎」
宇月:「このことを誰かに話すつもりはない、瑠衣くんのためにも」
高都:「ますます気に入った!知られてしまったからには死んでもらおうと思っていたのだが、貴方のような人材をなくすのは惜しい…クローンも完璧ではなくてね、どうしても本物と誤差が生じてしまうんだ」
宇月:「…それでは、取引しませんか」
高都:「…ほぅ、聞かせてみなさい」
宇月:「私はこのことを口外しないと誓います。そして、クローン達の教育やサービス終了後の対応に携わらせてほしい、クローン達をただの代替品のようにはさせない…」
高都:「ほう…それで?私にどんなメリットがあるんだ」
宇月:「必ず会社の利益になります。だって、私は桜井先輩のお墨付きでしょう?」
高都:「ふ、はははは…いいだろう。しかし、覚えておくことだ、私はいつでも貴方の代わりを作れるということを…」
宇月:「はい」
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桜井:「お!お疲れさん、最近忙しそうだな」
宇月:「あ!桜井先輩」
桜井:「それにしても大出世だな、突然異動の辞令がきたときは驚いたわ」
宇月:「その節はご迷惑をおかけしました…」
桜井:「宇月さんが謝ることじゃない、大方高都社長の考えだろ」
宇月:「何故だか、私のことを買ってくれているようで…」
桜井:「宇月さんの能力に関しては俺も信頼してるよ」
宇月:「え!ふふ、ありがとうございます」
桜井:「……最近、瑠衣は元気か」
宇月:「…はい」
桜井:「…そうか」
宇月:「…桜井先輩は高都社長と瑠衣くんの関係をご存知でしたよね」
桜井:「ああ、高都社長…政臣とは同級生なんだ、だから瑠衣のことも産まれた頃から知っているよ」
宇月:「そうでしたか……そういえば、聞きそびれていたのですが、どうしてあの日私を高都社長の元へ連れて行ったんですか」
桜井:「……君なら瑠衣のこと大事にしてくれると思ったんだよ」
宇月:「…それは」
桜井:「…俺には止めることができなかった、瑠衣たちを守れなかった」
宇月:「…瑠衣“たち”?」
桜井:「死んでしまった瑠衣と、宇月さんと楽しそうに過ごす瑠衣」
宇月:「…やっぱり知っていたんですね」
桜井:「宇月さんを連れていったのは完全な俺のエゴだ。死んでしまった瑠衣への罪滅ぼし。そして、今の瑠衣が幸せになって欲しかったんだ」
宇月:「桜井先輩の気持ちはきっと瑠衣くんたちに届いているはずです」
桜井:「ありがとう…でも宇月さんには悪いことをした、本当に申し訳ない」
宇月:「…いいえ、いいんです」
桜井:「どうか…どうか瑠衣をよろしく頼む」
宇月:「はい…大丈夫ですよ、だって瑠衣くんはとっても良い子ですから!」
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宇月:「さ、瑠衣くん!今日は何する?」
瑠衣:「あのね、この前食べたオムライスがまた食べたい!」
宇月:「よーし、じゃあさっそく行こっか!」
瑠衣:「今から⁉︎」
宇月:「そうだよ!ほら、急いで!時間は有限なんだから」
瑠衣:「…うん!」
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0:完