台本概要

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タイトル 「起きないやる気」のその先に
作者名 ふらん☆くりん  (@Frank_lin01)
ジャンル コメディ
演者人数 2人用台本(男1、女1) ※兼役あり
時間 40 分
台本使用規定 台本説明欄参照
説明 【あらすじ】
「ああ嘆かわしい!」…声劇サークル部長、影山は今日もまた悩んでいた。
※本作は、前作『「手のひら返し」のその先に』の続編、つまり「その先に」シリーズの第3作目になります。基本1話完結のため本作のみでもお楽しみいただけますが、前々作、前作と併せて演じていただけるとより世界観が分かって楽しめるかと思います。

【著作権について】
本作品の著作権は全て作者である「ふらん☆くりん」に帰属します。
また、いかなる場合であっても当方は著作権の放棄はいたしません。

【禁止事項】
●商業目的での利用
●台本の無断使用、無断転載、自作発言等
●過度なアドリブ、セリフの大幅な改変等

【ご利用に際してのお願い】
●台本の利用に際しては作者X(旧ツイッター)DMに連絡をお願いいたします。
●配信等で利用される場合は①作品名、②作者名、③台本掲載URLを掲示していただけると嬉しいです。
●たくさんの方の演技を聴きに行きたいので、可能であれば告知文にメンションを付けていただけると嬉しいです。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
影山 61 声劇サークルの部長。演技のことに対しては妥協を許さない熱血タイプ。今回兼役多め。頑張ってね!
山田 107 影山の声劇サークルに所属する部員。いつも影山の暴走に振り回され飽き飽きしている。基本ツッコミ役。
ナレーション 不問 8 劇中劇のナレーション。影山役の方が読んでください。
武器屋 9 少しクセの強い武器屋の店主。影山役の方が演じてください。
国王 15 国を治める国王様。影山役の方が演じてください。
店長 6 明るく元気な店長。影山役の方が演じてください。
防具屋 5 情に厚い防具屋の店主。影山役の方が演じてください。
スライム 不問 5 その辺にいる最弱の魔物。影山役の方が演じてください。
モルダーク 不問 4 悪の帝王モルダーク。影山役の方が演じてください。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

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タイトル:「起きないやる気」のその先に : 登場人物: 影山:声劇サークルの部長。演技のことに対しては妥協を許さない熱血タイプ。今回兼役多め。頑張ってね! 山田:影山の声劇サークルに所属する部員。いつも影山の暴走に振り回され飽き飽きしている。基本ツッコミ役。 ナレーション:劇中劇のナレーション。影山役の方が読んでください。 武器屋:少しクセの強い武器屋の店主。影山役の方が演じてください。 国王:国を治める国王様。影山役の方が演じてください。 店長:明るく元気な店長。影山役の方が演じてください。 防具屋:情に厚い防具屋の店主。影山役の方が演じてください。 スライム:その辺にいる最弱の魔物。影山役の方が演じてください。 モルダーク:悪の帝王モルダーク。影山役の方が演じてください。 : :(M)はモノローグ(独白)、〈〉はト書き、()は心の声です。 : : 本編: 影山:あー!嘆かわしい!何と嘆かわしいことか! 山田:…。 影山:〈山田に見せつけるように〉あーあ!嘆かわしいなぁ!ほんと嘆かわしいよなー! 山田:…。 影山:おい、山田君…いい加減にしないと泣くぞ?それにしても、君ともあろう者がここまで無反応とは…さては貴様、山田君ではないな? 山田:いや、山田ですって…。 影山:いいや!貴様が本当の山田君ならば「〈イケボで〉(おや?僕が尊敬して止まない影山部長が困っていらっしゃる!ここは僕が何とかしなければ!)影山部長、どうなさったんですか?」って聞いてくるはずだ! 山田:…ていうか、勝手に僕の心の中や口調まで*捏造《ねつぞう》しないでください。 山田:はぁ…分かりましたよ。それで、今日はどうしたんすか? 影山:おお!やっと聞いてくれたか!実はな…。 山田:〈セリフに被せて〉どうせまた部長が書いた台本に付き合えって言うんでしょ? 影山:いや…その逆だよ。 山田:ん?逆ってどういうことですか? 影山:書けないのだよ!いつもなら、ぱぱーってストーリーが思いつくんだけど、何と言うか…何も出て来ないのだよ…。 山田:えっ?あなたこそ本当に影山部長ですか?部長に限って台本が書けないなんてことある訳ないでしょう? 影山:いや、本物だってば。それに私にだって書けない時くらいあるわいな!だからこうして嘆かわしやタイムに*浸《ひた》ってんでしょーが! 山田:はぁ…。それで、僕にどうしろと? 影山:君には私に台本のネタを供給してもらいたいのだよ。 山田:ネタ…ですか? 影山:私さ、スタートさえ切れればあとは何とかなるんだよね。だからさ、何でも良いから思い付いたままのワードをくれないか? 山田:うーん…そう言われましても。 影山:ほらほら、ドンと来い、カモン! 山田:じゃ、じゃあ…最近だいぶ暖かくなりましたね。 影山:うん、そうだな。春だしね。で、他には? 山田:昨日の晩御飯はカレーでした。 影山:ふーん。あとは? 山田:昨日は家でゴロゴロしてました。 影山:そっか。それで? 山田:ぐっ…何だろう、言葉を発するたびに心にダメージが…。 影山:あ、そう言えば、今日は何故元気がないのだ? 山田:それが…最近何をするにもやる気が起きなくて…。 影山:ビンゴ!ナイスだ山田君! 山田:へ?僕何か言いましたっけ? 影山:ああ言ったとも!「やる気が起きない」とね! 山田:ま、まさか…。 影山:そう!そのまさかだよ!私は究極の「やる気が起きない」台本を書くことに決めた! 山田:あの…言ってる意味が分かんないんですけど…。 影山:まあ黙って目の前で大作が生まれる瞬間を見ていたまえ。 山田:はあ…。 影山:ふむ…そもそも究極にやる気が起きないとはどういうことか…。それは演じる側にとって?いや、ここはそうだな…。 山田:ダメだ…一度ゾーンに入った部長は外界からの情報を一切受け付けなくなる。言うなれば…結界! 影山:ほうほう…なるほど。そうなると、ここで必要になってくるのは…。 山田:はぁ…。〈深い溜息〉 山田:本当は僕の話、もっと聞いて欲しかったのにな…。 影山:〈書きながら〉んー?どーした山田君? 山田:ぶ、部長!?今、何と? 影山:〈書きながら〉だから、どーしたのって聞いてんだけど? 山田:も、もしやこれは夢か?幻か?こんなことある訳… 影山:〈書きながらセリフに被せて〉話、聞いて欲しかったんでしょ?ほれほれ、何でも言ってみ。 山田:ゆ、夢じゃない!あの…本当に良いんですか? 影山:〈書きながら〉もちろんよ!可愛い後輩が目の前で悩んでいるのだ。部長として手を差し伸べぬわけがなかろう? 山田:うう…ありがとうございます。実は僕…最近何をやってもダメで…。 影山:〈書きながら〉ほう…ダメとはどんな風に? 山田:ミスばっかり連発してて…。 影山:〈書きながら〉ミスって、例えば? 山田:自分ではちゃんとやったつもりなのに、気付けばとんでもない間違いをしているとか。 影山:〈書きながら〉ふーん…具体的には? 山田:(めっちゃ食い付いてくるな…。)そうですね…最近だと、バイトで発注ミスって温泉卵10ダース届いちゃったとかですかね。 影山:〈書きながら〉ふむふむ…ちなみに1ダースはいくつ入っているのだ? 山田:12個です。 影山:〈書きながら〉ということは10ダースだから…120個か。ちょっとした卵パーティーだな。他には? 山田:あとはセリフの漢字を読み間違えて「心して*挑《いど》むのだ!」っていう所を「心して*桃《もも》むのだ!」って読んだり。 影山:〈書きながら〉「*桃《もも》む」って…それはキミ、面白すぎるだろ。 山田:とにかくこんなミスばっかりで、気付けば何に対しても全くやる気が起きなくなってしまいまして…。 影山:〈書きながら〉なるほどね。…よし!書けたっと! 山田:えっ!?もう書いたんですか? 影山:うん。これも全て山田君のお陰だ。ありがとう! 山田:部長のお役に立てたなら嬉しいですが。あの…ちなみにどんな台本なんですか? 影山:ん?知りたい? 山田:それはまあ…知りたいですけど。 影山:ふふふ…そこまで言うなら一緒にやろうではないか! 山田:しまった!知らないうちにいつものパターンに! 影山:観念するのだ。君はもう、私の台本からは逃れられないのだから! 山田:ぐぬぬ…分かりましたよ。やれば良いんでしょ。 影山:諦めが早くてよろしい。じゃあ始めるわよ! 山田:ちょ、ちょっと待ってください!やるならやるで、せめてタイトルと配役だけでも教えてくださいよ! 影山:あーそれもそうねぇ…強いてタイトルを付けるとすれば「あなたから意志の光が消えるまで」かな。そして配役は山田君、君自身だよ。 山田:何というホラーチックなタイトル…しかも配役は僕自身ってどういうことですか? 影山:一応設定だけ説明しておくわね。ここは旅立ちの村。あなたは悪の帝王モルダークを倒すべく立ち上がった一人の勇者。これからあなたは装備を整え冒険の旅に出るの。そこには様々な敵が待ち構えているわ。あなたの使命は最終的には悪の帝王モルダークを倒し、平和な世界を取り戻すこと。あとはあなたの好きに演じてくれていいから。ちなみに山田君以外の役は私がやるから安心して。 山田:それってつまりエチュード…即興劇ってことですか!? 影山:まあそういうことになるかな?さあ!世界は勇者山田に託されたのだ! 山田:いやいや無理ですって!即興劇なんてほとんどやったことないんですから! 影山:まあそうかしこまらなくて良いから。一種のゲームだと思ってトライしてみて。あ、ただしこの世界ではやる気を*削《そ》がれた時点で物語が終了するマルチエンディング台本になっているから気を付けてね。 山田:へ?それってどういう… 影山:〈セリフに被せて〉てことで早速行ってみよう!即興劇「あなたから意志の光が消えるまで」3・2・1アクト! : :-------------------即興劇スタート 山田:(え!もう始まっちゃったの!)ぼ、僕は勇者だ!あ、悪の帝王…えっと何だっけ?…と、とにかく!悪いヤツを倒して世界を平和にするんだ! ナレーション:(M)熱い思いを胸に、悪の帝王モルダーク討伐に燃える一人の青年がいた。彼の名は山田。今まさに、勇者山田の大冒険が始まろうとしていた! 山田:えっと…冒険と言えばまずは武器の調達からだな。…武器屋、武器屋っと…。 武器屋:おや、兄ちゃん、武器をお探しかな? 山田:あ、はい。どんなのがありますか? 武器屋:その前にあんた、金は持っとるんじゃろうな? 山田:え…お金、お金は…ありません。 武器屋:はぁ…。〈溜息〉兄ちゃん…世の中で一番大事なんはやる気よりも金やで。 山田:あの…でも悪の帝王を倒さないと皆さんの世界が大変なことに…。 武器屋:〈セリフに被せて〉そんなん良いから金!…ない言うんなら帰りや。 山田:そんな…武器なしでどうやって帝王に勝てって言うんですか! 武器屋:しらんわ!自分、勇者やろ?そんくらい*己《おのれ》で何とかしーや! 山田:うう…何でここまで言われないといけないんだ。無理だよこんなの…。 ナレーション:(M)こうして世界は完全にモルダークの魔の手に堕ちた…。 :-------------------終わり : 山田:いや、何すかこれ! 影山:どう?楽しかったでしょ? 山田:楽しい以前に訳わかんないっすよ! 影山:だから言ったじゃん、マルチエンディング台本だって。主人公は君なんだから自由に演じたら良いのよ。 山田:そんな事言われましても…。 影山:どうする?もう諦める? 山田:…いや、もう一度!もう一度挑戦させてください! 影山:良いね!よしよし。じゃあ準備は良いかな? 山田:はい!よろしくお願いします! 影山:「あなたから意志の光が消えるまで」第二ラウンド3・2・1アクト! : :-------------------即興劇第二ラウンド開始 山田:(今度こそやってやるぞ!)僕は勇者だ!悪の帝王モルダークは僕が必ず倒す! ナレーション:とまあ、気合いたっぷりに打倒モルダークを宣言する一人の青年。彼の名は山田。ここに勇者山田の新たな伝説が始まろうとしていた! 山田:(前回はいきなり武器屋に行ったからまずかったんだ。それなら…。)よし!まずは国王に*謁見《えっけん》する所からだな。 :-------------------お城にて 国王:よくぞ参った。そなたか?この世界を救わんとする勇者は? 山田:はい。山田と申します。私が悪の帝王モルダークを打ち倒し、必ずやこの世界に平和をもたらしてみせましょう! 国王:ほっほっほ!これは何とも頼もしい勇者が現れたものだ! 山田:お褒めに預かり光栄に存じます! 国王:ぜひとも頑張ってくれたまえ! 山田:はい!命に替えても! 国王:うむ!では下がって良いぞ! 山田:…え?…あの、国王様? 国王:ん? 山田:い、いえ…何でもありません…。 国王:何か不服そうだな? 山田:そんな事はありませんが…。ただ、冒険に出るにあたっては色々と先立つ物が必要でして…。 国王:何じゃ?その奥歯に物が挟まったような話し方は?言いたい事があるならハッキリと申してみよ! 山田:そ、それでは恐れながら申し上げます!モルダーク討伐にあたり、国王様には支度金や装備等のご支援をいただけないかと…。 国王:何…?お前はこのワシに金品をせびるつもりか? 山田:せ、せびるだなんて滅相もございません!ただ…お恥ずかしながら今の私は一文無しでございまして、このままですとモルダークはおろか、その辺の魔物にも勝てません。だからどうか!私をご支援いただけないでしょうか? 国王:……なぁ山田。勇者が何故偉大なのかお前に分かるか? 山田:い、いえ…。 国王:真の勇者とはどんな困難にも決して屈することのない強靭な肉体と魂を持ち、「悪を倒し平和な世界を取り戻す」という*崇高《すうこう》な目的の元、我が身の危険をも省みず立ち向かう存在の事を言うのだ。そしてその勇ましき姿は人々に勇気と希望を与える…だからこそ勇者は偉大なのだ!それを何だお前は…たかが一文無しという程度の困難も乗り越えることが出来ず、初めから他人を頼ろうとするような軟弱な魂の持ち主に世界を救うなどと大それたことが出来るはずがないであろう! 山田:で、ですが国王様! 国王:もう良い…お前は勇者には向いておらぬ。故郷に帰って静かに暮らせ。それがお前のためじゃ。 山田:あ、あの…。 国王:弱いながらも我が国の未来を憂いてくれた事、ワシは嬉しかったぞ。 山田:…あ、はい…失礼します。 ナレーション:(M)こうして世界は悪の帝王モルダークによって滅ぼされた…。 :-------------------終わり : 山田:あああ!!何だよこれ!!モヤモヤする!! 影山:惜しかったわね。かなり良い所までは行ったんだけどね。 山田:ちょっと厳しすぎません? 影山:だから言ったじゃん。究極の「やる気が起きない台本」だって。 山田:…部長、お願いです!次こそ、次こそは必ず! 影山:え?ええ…良いわよ。準備は良いかしら? 山田:はい! 影山:じゃあ始めるわよ。「あなたから意志の光が消えるまで」第三ラウンド3・2・1アクト! :-------------------即興劇第三ラウンド開始 山田:(そうか、お金がないからいけないんだな。だったら…) 山田:(M)僕の名前は山田。ただの村人だ。今日は待ちに待った給料日。僕はウキウキしながら一日の仕事に精を出す。 店長:おお!山田!今日はヤケに楽しそうだな! 山田:そりゃそうですよ。今日は待ちに待った給料日ですから。 店長:おー、そういやそうだったな。あまりの忙しさに忘れる所だったよ。 山田:やだなぁ店長ったら。冗談キツいっすよ! 店長:ははは!はいこれ!今月分の給料だ。よく頑張ってくれたから少し多めに入れておいたぞ。 山田:わぁ!ありがとうございます!すごい!1500ゴールドも入ってる!良いんですか?こんなにもらって? 店長:なぁに、いつも山田には助けられてるからな。気にせず受け取ってくれ。 山田:嬉しいです!それじゃ店長、お疲れ様でした! 店長:おう!気をつけて帰れよ! : 山田:さてと…たんまり給料も入ったし、武器でも買うか。すみませーん! 武器屋:おう兄ちゃん!武器をお探しかい? 山田:はい!このロングソードはいくらですか? 武器屋:ああ、それなら800ゴールドだよ。 山田:(やった!買える!)じゃあこれください。 武器屋:毎度あり! : 山田:次は防具屋か…ごめんくださーい! 防具屋:あいよ!何かお探しかい? 山田:この木の盾が欲しいんですが…。 防具屋:あー、それも良いけどよ、オススメはこっちの鉄の盾だ!何と言っても頑丈さが違うからな! 山田:ちなみにおいくらですか? 防具屋:750ゴールドだ。 山田:(くっ…50ゴールド足りないな…。)あの!どうにかお安くして貰えませんか! 防具屋:うーん…こっちも商売なんでね…と言いたい所だが、お前さんの熱意に応えて700ゴールドで売ってやるよ! 山田:ほんとですか!ありがとうございます! : 山田:(M)武器と防具を手に入れた僕は国王の元を訪れた。 国王:よくぞ参った。勇者山田よ!そなたがこの世界を救ってくれると申すか! 山田:はい!必ずや悪の帝王モルダークを倒し、この世界に平和をもたらしてみせます! 国王:おお!頼もしい!何と頼もしい勇者じゃ!この世界の未来はそなたに託した。よろしく頼むぞ! 山田:はっ!この命に替えても!(いける!今度こそいけるぞ!) : ナレーション:(M)こうして勇者山田はようやく旅立ちの村を離れ、冒険の旅に出ることができたのだった。しかし…。 山田:(しかし?)あ、あんな所にスライムが! スライム:お主…よもや私を殺そうとしているのではあるまいな? 山田:え?ま、まあ…一応設定上ではあなたは敵ですし…。 スライム:設定上?これはおかしなことを言う。私がいつお主の事を敵だと言ったのだ?私は*日夜《にちや》こうして武道の*研鑽《けんさん》を積んでいるだけのしがない剣士。お主に危害を加えた覚えも、これから加える気もないと言うのに…。 山田:いや、まあそれはそうなんですけど、僕があなた方を倒して経験値を積んでいかないと最終的に悪の帝王モルダークを倒すことが出来ないので、ここは一つ僕に倒されてはもらえませんか? スライム:貴様!命を何だと思っている!確かにお主らからすれば*異形《いぎょう》の存在かもしれぬ。だが!我らとてお主ら同様、一日一日を精一杯生きようともがくか弱き生き物に過ぎぬ。故に、*何人《なんぴと》たりともその命を奪う権利などあろうはずがない! 山田:うん…そうですね。(何かだんだん相手をするのが面倒臭くなってきたな) 山田:まあとりあえず…でやぁぁ!!〈切り捨てる〉 スライム:ぐあああ!…これが…お主らの正義か?…ぐっ…お主とは仲良くなれると…思っていた…のに。〈息絶える〉 山田:うわぁ…何この凄まじい罪悪感。やり辛過ぎるだろ。まあいいや、とりあえずこんな感じでじゃんじゃん倒して経験値を上げていこう。 ナレーション:(M)だがこの時山田は気付いていなかった。徐々に自分自身が闇に染まりつつあることに…。そして月日は流れ。ついに勇者山田は悪の帝王モルダークの元へと辿り着いた。 : 山田:ふふふ…モルダーク!ようやく貴様と殺り合うことが出来る!俺はこの日をどれだけ待ち*詫《わ》びたことか! モルダーク:よくも!私の愛する民を大勢手にかけてくれたな!お前だけは…お前だけは絶対に許さぬぞ! 山田:ほう…やれるものならやってみな! モルダーク:覚悟!うおおおおお!! 山田:はああああ!! : 山田:はぁ…はぁ…どうだ。思い知ったか! モルダーク:ぐはっ…わ、私は愛する民を守ることが出来なかった…すまぬ…許してくれ…。〈息絶える〉 山田:ふ…ふふふ…あはははは!!ついに!ついにモルダークを倒したぞ!これでこの世界は俺の物だ!! : ナレーション:(M)勇者山田の活躍により悪の帝王モルダークの脅威は完全に取り払われた…かに思えた。だがその時、突如として生まれた新たなる脅威、大魔王山田によってこの世界は深い闇の底へと沈んでいくのであった…。 :-------------------終わり : 山田:えっと…これはクリアしたってことで良いんですかね? 影山:お疲れ様!すごいじゃない!まさか君が真のエンディングに*辿《たど》り着けるなんて思ってもみなかったわ! 山田:え?これが真のエンデイング?何一つハッピーエンドじゃないんですけど…? 影山:ん?私一言もハッピーで終わるなんて言ってないわよ。 山田:いや、それはそうなんですけど…何て言うか、ものすごく後味の悪い台本でしたね。 影山:ぐふふ…そんなに褒めないでくれたまえ。 山田:いや…褒めてませんて。それにしても、第三ラウンドは意外とすんなり行けたような気がするのですが…。 影山:え?そ、そうかなぁ…。きっと山田君の演技が上手かったからじゃない? 山田:ん?何か怪しいなぁ…あ!もしかして、だんだん話考えるのが面倒臭くなって適当に合わせてただけとかじゃないでしょうね? 影山:ギクッ!そ、そんなことある訳ないじゃん! 山田:その慌てっぷり…さては! 影山:だ、だって仕方ないじゃん!…てっきり第二ラウンドで諦めるもんだと思ってたからさ…。 山田:ほう…それで?思いの*外《ほか》ノリノリだったからさっさと終わらせようと? 影山:あ…いや、それは…。 山田:でもそのままハッピーエンドで終わるのは*癪《しゃく》だから無理矢理話をねじ曲げたと? 影山:あは…あはは…。 山田:コラァ!!もっとやる気出さんかい!作者ぁぁ!! 影山:ひぃぃぃ!!ごめんなさぁぁい!! : :~完~

タイトル:「起きないやる気」のその先に : 登場人物: 影山:声劇サークルの部長。演技のことに対しては妥協を許さない熱血タイプ。今回兼役多め。頑張ってね! 山田:影山の声劇サークルに所属する部員。いつも影山の暴走に振り回され飽き飽きしている。基本ツッコミ役。 ナレーション:劇中劇のナレーション。影山役の方が読んでください。 武器屋:少しクセの強い武器屋の店主。影山役の方が演じてください。 国王:国を治める国王様。影山役の方が演じてください。 店長:明るく元気な店長。影山役の方が演じてください。 防具屋:情に厚い防具屋の店主。影山役の方が演じてください。 スライム:その辺にいる最弱の魔物。影山役の方が演じてください。 モルダーク:悪の帝王モルダーク。影山役の方が演じてください。 : :(M)はモノローグ(独白)、〈〉はト書き、()は心の声です。 : : 本編: 影山:あー!嘆かわしい!何と嘆かわしいことか! 山田:…。 影山:〈山田に見せつけるように〉あーあ!嘆かわしいなぁ!ほんと嘆かわしいよなー! 山田:…。 影山:おい、山田君…いい加減にしないと泣くぞ?それにしても、君ともあろう者がここまで無反応とは…さては貴様、山田君ではないな? 山田:いや、山田ですって…。 影山:いいや!貴様が本当の山田君ならば「〈イケボで〉(おや?僕が尊敬して止まない影山部長が困っていらっしゃる!ここは僕が何とかしなければ!)影山部長、どうなさったんですか?」って聞いてくるはずだ! 山田:…ていうか、勝手に僕の心の中や口調まで*捏造《ねつぞう》しないでください。 山田:はぁ…分かりましたよ。それで、今日はどうしたんすか? 影山:おお!やっと聞いてくれたか!実はな…。 山田:〈セリフに被せて〉どうせまた部長が書いた台本に付き合えって言うんでしょ? 影山:いや…その逆だよ。 山田:ん?逆ってどういうことですか? 影山:書けないのだよ!いつもなら、ぱぱーってストーリーが思いつくんだけど、何と言うか…何も出て来ないのだよ…。 山田:えっ?あなたこそ本当に影山部長ですか?部長に限って台本が書けないなんてことある訳ないでしょう? 影山:いや、本物だってば。それに私にだって書けない時くらいあるわいな!だからこうして嘆かわしやタイムに*浸《ひた》ってんでしょーが! 山田:はぁ…。それで、僕にどうしろと? 影山:君には私に台本のネタを供給してもらいたいのだよ。 山田:ネタ…ですか? 影山:私さ、スタートさえ切れればあとは何とかなるんだよね。だからさ、何でも良いから思い付いたままのワードをくれないか? 山田:うーん…そう言われましても。 影山:ほらほら、ドンと来い、カモン! 山田:じゃ、じゃあ…最近だいぶ暖かくなりましたね。 影山:うん、そうだな。春だしね。で、他には? 山田:昨日の晩御飯はカレーでした。 影山:ふーん。あとは? 山田:昨日は家でゴロゴロしてました。 影山:そっか。それで? 山田:ぐっ…何だろう、言葉を発するたびに心にダメージが…。 影山:あ、そう言えば、今日は何故元気がないのだ? 山田:それが…最近何をするにもやる気が起きなくて…。 影山:ビンゴ!ナイスだ山田君! 山田:へ?僕何か言いましたっけ? 影山:ああ言ったとも!「やる気が起きない」とね! 山田:ま、まさか…。 影山:そう!そのまさかだよ!私は究極の「やる気が起きない」台本を書くことに決めた! 山田:あの…言ってる意味が分かんないんですけど…。 影山:まあ黙って目の前で大作が生まれる瞬間を見ていたまえ。 山田:はあ…。 影山:ふむ…そもそも究極にやる気が起きないとはどういうことか…。それは演じる側にとって?いや、ここはそうだな…。 山田:ダメだ…一度ゾーンに入った部長は外界からの情報を一切受け付けなくなる。言うなれば…結界! 影山:ほうほう…なるほど。そうなると、ここで必要になってくるのは…。 山田:はぁ…。〈深い溜息〉 山田:本当は僕の話、もっと聞いて欲しかったのにな…。 影山:〈書きながら〉んー?どーした山田君? 山田:ぶ、部長!?今、何と? 影山:〈書きながら〉だから、どーしたのって聞いてんだけど? 山田:も、もしやこれは夢か?幻か?こんなことある訳… 影山:〈書きながらセリフに被せて〉話、聞いて欲しかったんでしょ?ほれほれ、何でも言ってみ。 山田:ゆ、夢じゃない!あの…本当に良いんですか? 影山:〈書きながら〉もちろんよ!可愛い後輩が目の前で悩んでいるのだ。部長として手を差し伸べぬわけがなかろう? 山田:うう…ありがとうございます。実は僕…最近何をやってもダメで…。 影山:〈書きながら〉ほう…ダメとはどんな風に? 山田:ミスばっかり連発してて…。 影山:〈書きながら〉ミスって、例えば? 山田:自分ではちゃんとやったつもりなのに、気付けばとんでもない間違いをしているとか。 影山:〈書きながら〉ふーん…具体的には? 山田:(めっちゃ食い付いてくるな…。)そうですね…最近だと、バイトで発注ミスって温泉卵10ダース届いちゃったとかですかね。 影山:〈書きながら〉ふむふむ…ちなみに1ダースはいくつ入っているのだ? 山田:12個です。 影山:〈書きながら〉ということは10ダースだから…120個か。ちょっとした卵パーティーだな。他には? 山田:あとはセリフの漢字を読み間違えて「心して*挑《いど》むのだ!」っていう所を「心して*桃《もも》むのだ!」って読んだり。 影山:〈書きながら〉「*桃《もも》む」って…それはキミ、面白すぎるだろ。 山田:とにかくこんなミスばっかりで、気付けば何に対しても全くやる気が起きなくなってしまいまして…。 影山:〈書きながら〉なるほどね。…よし!書けたっと! 山田:えっ!?もう書いたんですか? 影山:うん。これも全て山田君のお陰だ。ありがとう! 山田:部長のお役に立てたなら嬉しいですが。あの…ちなみにどんな台本なんですか? 影山:ん?知りたい? 山田:それはまあ…知りたいですけど。 影山:ふふふ…そこまで言うなら一緒にやろうではないか! 山田:しまった!知らないうちにいつものパターンに! 影山:観念するのだ。君はもう、私の台本からは逃れられないのだから! 山田:ぐぬぬ…分かりましたよ。やれば良いんでしょ。 影山:諦めが早くてよろしい。じゃあ始めるわよ! 山田:ちょ、ちょっと待ってください!やるならやるで、せめてタイトルと配役だけでも教えてくださいよ! 影山:あーそれもそうねぇ…強いてタイトルを付けるとすれば「あなたから意志の光が消えるまで」かな。そして配役は山田君、君自身だよ。 山田:何というホラーチックなタイトル…しかも配役は僕自身ってどういうことですか? 影山:一応設定だけ説明しておくわね。ここは旅立ちの村。あなたは悪の帝王モルダークを倒すべく立ち上がった一人の勇者。これからあなたは装備を整え冒険の旅に出るの。そこには様々な敵が待ち構えているわ。あなたの使命は最終的には悪の帝王モルダークを倒し、平和な世界を取り戻すこと。あとはあなたの好きに演じてくれていいから。ちなみに山田君以外の役は私がやるから安心して。 山田:それってつまりエチュード…即興劇ってことですか!? 影山:まあそういうことになるかな?さあ!世界は勇者山田に託されたのだ! 山田:いやいや無理ですって!即興劇なんてほとんどやったことないんですから! 影山:まあそうかしこまらなくて良いから。一種のゲームだと思ってトライしてみて。あ、ただしこの世界ではやる気を*削《そ》がれた時点で物語が終了するマルチエンディング台本になっているから気を付けてね。 山田:へ?それってどういう… 影山:〈セリフに被せて〉てことで早速行ってみよう!即興劇「あなたから意志の光が消えるまで」3・2・1アクト! : :-------------------即興劇スタート 山田:(え!もう始まっちゃったの!)ぼ、僕は勇者だ!あ、悪の帝王…えっと何だっけ?…と、とにかく!悪いヤツを倒して世界を平和にするんだ! ナレーション:(M)熱い思いを胸に、悪の帝王モルダーク討伐に燃える一人の青年がいた。彼の名は山田。今まさに、勇者山田の大冒険が始まろうとしていた! 山田:えっと…冒険と言えばまずは武器の調達からだな。…武器屋、武器屋っと…。 武器屋:おや、兄ちゃん、武器をお探しかな? 山田:あ、はい。どんなのがありますか? 武器屋:その前にあんた、金は持っとるんじゃろうな? 山田:え…お金、お金は…ありません。 武器屋:はぁ…。〈溜息〉兄ちゃん…世の中で一番大事なんはやる気よりも金やで。 山田:あの…でも悪の帝王を倒さないと皆さんの世界が大変なことに…。 武器屋:〈セリフに被せて〉そんなん良いから金!…ない言うんなら帰りや。 山田:そんな…武器なしでどうやって帝王に勝てって言うんですか! 武器屋:しらんわ!自分、勇者やろ?そんくらい*己《おのれ》で何とかしーや! 山田:うう…何でここまで言われないといけないんだ。無理だよこんなの…。 ナレーション:(M)こうして世界は完全にモルダークの魔の手に堕ちた…。 :-------------------終わり : 山田:いや、何すかこれ! 影山:どう?楽しかったでしょ? 山田:楽しい以前に訳わかんないっすよ! 影山:だから言ったじゃん、マルチエンディング台本だって。主人公は君なんだから自由に演じたら良いのよ。 山田:そんな事言われましても…。 影山:どうする?もう諦める? 山田:…いや、もう一度!もう一度挑戦させてください! 影山:良いね!よしよし。じゃあ準備は良いかな? 山田:はい!よろしくお願いします! 影山:「あなたから意志の光が消えるまで」第二ラウンド3・2・1アクト! : :-------------------即興劇第二ラウンド開始 山田:(今度こそやってやるぞ!)僕は勇者だ!悪の帝王モルダークは僕が必ず倒す! ナレーション:とまあ、気合いたっぷりに打倒モルダークを宣言する一人の青年。彼の名は山田。ここに勇者山田の新たな伝説が始まろうとしていた! 山田:(前回はいきなり武器屋に行ったからまずかったんだ。それなら…。)よし!まずは国王に*謁見《えっけん》する所からだな。 :-------------------お城にて 国王:よくぞ参った。そなたか?この世界を救わんとする勇者は? 山田:はい。山田と申します。私が悪の帝王モルダークを打ち倒し、必ずやこの世界に平和をもたらしてみせましょう! 国王:ほっほっほ!これは何とも頼もしい勇者が現れたものだ! 山田:お褒めに預かり光栄に存じます! 国王:ぜひとも頑張ってくれたまえ! 山田:はい!命に替えても! 国王:うむ!では下がって良いぞ! 山田:…え?…あの、国王様? 国王:ん? 山田:い、いえ…何でもありません…。 国王:何か不服そうだな? 山田:そんな事はありませんが…。ただ、冒険に出るにあたっては色々と先立つ物が必要でして…。 国王:何じゃ?その奥歯に物が挟まったような話し方は?言いたい事があるならハッキリと申してみよ! 山田:そ、それでは恐れながら申し上げます!モルダーク討伐にあたり、国王様には支度金や装備等のご支援をいただけないかと…。 国王:何…?お前はこのワシに金品をせびるつもりか? 山田:せ、せびるだなんて滅相もございません!ただ…お恥ずかしながら今の私は一文無しでございまして、このままですとモルダークはおろか、その辺の魔物にも勝てません。だからどうか!私をご支援いただけないでしょうか? 国王:……なぁ山田。勇者が何故偉大なのかお前に分かるか? 山田:い、いえ…。 国王:真の勇者とはどんな困難にも決して屈することのない強靭な肉体と魂を持ち、「悪を倒し平和な世界を取り戻す」という*崇高《すうこう》な目的の元、我が身の危険をも省みず立ち向かう存在の事を言うのだ。そしてその勇ましき姿は人々に勇気と希望を与える…だからこそ勇者は偉大なのだ!それを何だお前は…たかが一文無しという程度の困難も乗り越えることが出来ず、初めから他人を頼ろうとするような軟弱な魂の持ち主に世界を救うなどと大それたことが出来るはずがないであろう! 山田:で、ですが国王様! 国王:もう良い…お前は勇者には向いておらぬ。故郷に帰って静かに暮らせ。それがお前のためじゃ。 山田:あ、あの…。 国王:弱いながらも我が国の未来を憂いてくれた事、ワシは嬉しかったぞ。 山田:…あ、はい…失礼します。 ナレーション:(M)こうして世界は悪の帝王モルダークによって滅ぼされた…。 :-------------------終わり : 山田:あああ!!何だよこれ!!モヤモヤする!! 影山:惜しかったわね。かなり良い所までは行ったんだけどね。 山田:ちょっと厳しすぎません? 影山:だから言ったじゃん。究極の「やる気が起きない台本」だって。 山田:…部長、お願いです!次こそ、次こそは必ず! 影山:え?ええ…良いわよ。準備は良いかしら? 山田:はい! 影山:じゃあ始めるわよ。「あなたから意志の光が消えるまで」第三ラウンド3・2・1アクト! :-------------------即興劇第三ラウンド開始 山田:(そうか、お金がないからいけないんだな。だったら…) 山田:(M)僕の名前は山田。ただの村人だ。今日は待ちに待った給料日。僕はウキウキしながら一日の仕事に精を出す。 店長:おお!山田!今日はヤケに楽しそうだな! 山田:そりゃそうですよ。今日は待ちに待った給料日ですから。 店長:おー、そういやそうだったな。あまりの忙しさに忘れる所だったよ。 山田:やだなぁ店長ったら。冗談キツいっすよ! 店長:ははは!はいこれ!今月分の給料だ。よく頑張ってくれたから少し多めに入れておいたぞ。 山田:わぁ!ありがとうございます!すごい!1500ゴールドも入ってる!良いんですか?こんなにもらって? 店長:なぁに、いつも山田には助けられてるからな。気にせず受け取ってくれ。 山田:嬉しいです!それじゃ店長、お疲れ様でした! 店長:おう!気をつけて帰れよ! : 山田:さてと…たんまり給料も入ったし、武器でも買うか。すみませーん! 武器屋:おう兄ちゃん!武器をお探しかい? 山田:はい!このロングソードはいくらですか? 武器屋:ああ、それなら800ゴールドだよ。 山田:(やった!買える!)じゃあこれください。 武器屋:毎度あり! : 山田:次は防具屋か…ごめんくださーい! 防具屋:あいよ!何かお探しかい? 山田:この木の盾が欲しいんですが…。 防具屋:あー、それも良いけどよ、オススメはこっちの鉄の盾だ!何と言っても頑丈さが違うからな! 山田:ちなみにおいくらですか? 防具屋:750ゴールドだ。 山田:(くっ…50ゴールド足りないな…。)あの!どうにかお安くして貰えませんか! 防具屋:うーん…こっちも商売なんでね…と言いたい所だが、お前さんの熱意に応えて700ゴールドで売ってやるよ! 山田:ほんとですか!ありがとうございます! : 山田:(M)武器と防具を手に入れた僕は国王の元を訪れた。 国王:よくぞ参った。勇者山田よ!そなたがこの世界を救ってくれると申すか! 山田:はい!必ずや悪の帝王モルダークを倒し、この世界に平和をもたらしてみせます! 国王:おお!頼もしい!何と頼もしい勇者じゃ!この世界の未来はそなたに託した。よろしく頼むぞ! 山田:はっ!この命に替えても!(いける!今度こそいけるぞ!) : ナレーション:(M)こうして勇者山田はようやく旅立ちの村を離れ、冒険の旅に出ることができたのだった。しかし…。 山田:(しかし?)あ、あんな所にスライムが! スライム:お主…よもや私を殺そうとしているのではあるまいな? 山田:え?ま、まあ…一応設定上ではあなたは敵ですし…。 スライム:設定上?これはおかしなことを言う。私がいつお主の事を敵だと言ったのだ?私は*日夜《にちや》こうして武道の*研鑽《けんさん》を積んでいるだけのしがない剣士。お主に危害を加えた覚えも、これから加える気もないと言うのに…。 山田:いや、まあそれはそうなんですけど、僕があなた方を倒して経験値を積んでいかないと最終的に悪の帝王モルダークを倒すことが出来ないので、ここは一つ僕に倒されてはもらえませんか? スライム:貴様!命を何だと思っている!確かにお主らからすれば*異形《いぎょう》の存在かもしれぬ。だが!我らとてお主ら同様、一日一日を精一杯生きようともがくか弱き生き物に過ぎぬ。故に、*何人《なんぴと》たりともその命を奪う権利などあろうはずがない! 山田:うん…そうですね。(何かだんだん相手をするのが面倒臭くなってきたな) 山田:まあとりあえず…でやぁぁ!!〈切り捨てる〉 スライム:ぐあああ!…これが…お主らの正義か?…ぐっ…お主とは仲良くなれると…思っていた…のに。〈息絶える〉 山田:うわぁ…何この凄まじい罪悪感。やり辛過ぎるだろ。まあいいや、とりあえずこんな感じでじゃんじゃん倒して経験値を上げていこう。 ナレーション:(M)だがこの時山田は気付いていなかった。徐々に自分自身が闇に染まりつつあることに…。そして月日は流れ。ついに勇者山田は悪の帝王モルダークの元へと辿り着いた。 : 山田:ふふふ…モルダーク!ようやく貴様と殺り合うことが出来る!俺はこの日をどれだけ待ち*詫《わ》びたことか! モルダーク:よくも!私の愛する民を大勢手にかけてくれたな!お前だけは…お前だけは絶対に許さぬぞ! 山田:ほう…やれるものならやってみな! モルダーク:覚悟!うおおおおお!! 山田:はああああ!! : 山田:はぁ…はぁ…どうだ。思い知ったか! モルダーク:ぐはっ…わ、私は愛する民を守ることが出来なかった…すまぬ…許してくれ…。〈息絶える〉 山田:ふ…ふふふ…あはははは!!ついに!ついにモルダークを倒したぞ!これでこの世界は俺の物だ!! : ナレーション:(M)勇者山田の活躍により悪の帝王モルダークの脅威は完全に取り払われた…かに思えた。だがその時、突如として生まれた新たなる脅威、大魔王山田によってこの世界は深い闇の底へと沈んでいくのであった…。 :-------------------終わり : 山田:えっと…これはクリアしたってことで良いんですかね? 影山:お疲れ様!すごいじゃない!まさか君が真のエンディングに*辿《たど》り着けるなんて思ってもみなかったわ! 山田:え?これが真のエンデイング?何一つハッピーエンドじゃないんですけど…? 影山:ん?私一言もハッピーで終わるなんて言ってないわよ。 山田:いや、それはそうなんですけど…何て言うか、ものすごく後味の悪い台本でしたね。 影山:ぐふふ…そんなに褒めないでくれたまえ。 山田:いや…褒めてませんて。それにしても、第三ラウンドは意外とすんなり行けたような気がするのですが…。 影山:え?そ、そうかなぁ…。きっと山田君の演技が上手かったからじゃない? 山田:ん?何か怪しいなぁ…あ!もしかして、だんだん話考えるのが面倒臭くなって適当に合わせてただけとかじゃないでしょうね? 影山:ギクッ!そ、そんなことある訳ないじゃん! 山田:その慌てっぷり…さては! 影山:だ、だって仕方ないじゃん!…てっきり第二ラウンドで諦めるもんだと思ってたからさ…。 山田:ほう…それで?思いの*外《ほか》ノリノリだったからさっさと終わらせようと? 影山:あ…いや、それは…。 山田:でもそのままハッピーエンドで終わるのは*癪《しゃく》だから無理矢理話をねじ曲げたと? 影山:あは…あはは…。 山田:コラァ!!もっとやる気出さんかい!作者ぁぁ!! 影山:ひぃぃぃ!!ごめんなさぁぁい!! : :~完~