台本概要
274 views
タイトル | 愛の礫(つぶて) |
---|---|
作者名 | 机の上の地球儀 (@tsukuenoueno) |
ジャンル | その他 |
演者人数 | 1人用台本(不問1) ※兼役あり |
時間 | 10 分 |
台本使用規定 | 商用、非商用問わず連絡不要 |
説明 |
(あいのつぶて) 5分くらいの台本です。 朗読/「これを便宜上、愛と呼ぶことにする」 商用・非商用利用に問わず連絡不要。 告知画像・動画の作成もお好きにどうぞ。 (その際各画像・音源の著作権等にご注意・ご配慮ください) ただし、有料チケット販売による公演の場合は、可能ならTwitterにご一報いただけますと嬉しいです。 台本の一部を朗読・練習する配信なども問題ございません。 地球儀の個人台本サイト:https://lit.link/tsukuenoueno 274 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
語り手 | 不問 | 1 | 読む人。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
語り手:最近、物忘れが酷い気がするんです。
語り手:
語り手:大事じゃないことは、忘れても、まあ、いいか。
語り手:でも、大事なことは?どうなるでしょう。
語り手:
語り手:大事な筈なんです、すごく。確か。たぶん。
語り手:なのに、何故、あれ。
語り手:
語り手:「あ」、という間に忘れてる。
語り手:
語り手:これは単なる、所謂、つまり、
語り手:不安、という一括りで片付けて良いものなのでしょうか。
語り手:
語り手:寂しいからか、一人だからか、
語り手:独り、だからか。
語り手:
語り手:覚えていられないんです。
語り手:全部全部、大切だった筈なのに。
語り手:
語り手:段々と、意識を奪われていくのです。
語り手:あぁ、そうやって奪うのか
語り手: 私
語り手: の
語り手:
語り手:
語り手:
語り手:思い出を思い出し、散歩する。
語り手:思い出の中を、ゆっくり歩いていく。
語り手:歩いていく、前へ。前へ。
語り手:前へ、いや。
語り手:前、とは言うが、
語り手:これは後ろへ、なのかもしれません。
語り手:後ろへ、後ろへ。
語り手:思い出を反芻するのは、過去に縋っているだけなのだと……だけなのだと。
語り手:
語り手:はた、とそれに思い至り、
語り手:足を止めたのです。
語り手:
語り手:「愛のつぶて」という文字を見かけました。
語り手:はて、これは何でしょう。
語り手:はりつけみたいな字だ、と私は思いました。
語り手:
語り手:頭の中で、誰かの声がします。
語り手:
語り手:貴方のためなのよ、と誰かが言います。
語り手:
語り手:私のため?本当に?
語り手:
語り手:貴方のことを想ってるから、
語り手:貴方のことを愛してるから、
語り手:
語り手:やめてください!……やめて、もうやめてください。お願いします。やめてください。
語り手:
語り手:愛のあるはずのそれらの言葉は、
語り手:まるで小石を投げられた仔犬のように、
語り手:私に痣を増やし、増やし、増やし、
語り手:増えて増えて増
語り手: え
語り手: て
語り手: ?
語り手:
語り手:あぁ。
語り手:
語り手:いつの間にか、
語り手:目の前に痣だらけの、
語り手:子供の頃の、私。
語り手:
語り手:私のために、と投げられた小石なら。
語り手:
語り手:私はこれを便宜上、
語り手: 愛のつぶて、と呼ぶことに致しましょう。
語り手:
語り手:愛のつぶてとやらに殴られて、黒い胃液がのぼります。
語り手:心臓の音が、左胸からどんどん離れて、
語り手:頭の中でガンガン響くのは。……何故?
語り手:
語り手:他人事のように、響き、遠く。
語り手:ぼやけた景色の向こうで、だれかが、
語り手:
語り手:わたし、が?
語り手:
語り手:私が、私、が。
語り手:
語り手:忘れないで、忘れないで、と。
語り手:ガンガン、と。響く、響く。響くのです。
語り手:
語り手: ガン
語り手:
語り手:
語り手: ガン
語り手:
語り手: ガン
語り手:
語り手:
語り手: ガン
語り手:
語り手:
語り手:
語り手:
語り手:貴方のためなのよ、と誰かが言います。
語り手:貴方のことを想ってるから、
語り手:貴方のことを愛してるから、
語り手:
語り手:愛してるから……心配なの。
語り手:ごめんなさい、ごめんなさいね。
語り手:貴方に色々押し付けて、
語り手:貴方に色々期待して、
語り手:ごめんね、ごめんね。
語り手:
語り手:でも、心配なの。
語り手:駄目ね。いつまでも子供のように思っては。
語り手:
語り手:あぁ、と私は思います。
語り手:しくしく泣く、その女の背中に。
語り手:私は気付くのです。
語り手:
語り手:私が泣いただけ、
語り手:同じだけ、私も誰かを、
語り手:泣かせてやしないか、と
語り手:
語り手:なら、悪いのはやはり私なのではないか。
語り手:いや、誰が悪いとか、そういう話ではないのかもしれないけれど
語り手:
語り手:貰った愛のつぶてたち。
語り手:私がただ、受け取り方を間違えただけで。
語り手:
語り手:そこに、確かに愛はあったのだ、と。
語り手:そう思い直すことは、できないだろうか。
語り手:
語り手:貴方のためなのよ、と誰かが言います。
語り手:貴方のことを想ってるから、
語り手:貴方のことを愛してるから、
語り手:
語り手:分からなかったことが、
語り手:今は……なんとなく分かる気がするのです。
語り手:まだまだ、気付いてないこともあるかもしれないけれど。でも、なんとなく。
語り手:
語り手:だから。
語り手:
語り手:小石を愛して抱えていく。
語り手:大事に手のひらに握って、
語り手:自分の爪が、その掌を抉らないように。
語り手:大事に、優しく、握り込んで。
語り手:
語り手:今の私は……笑えているだろうか。
語り手:
語り手:大丈夫、ここにある。
語り手:小石は、向けられた愛は、私が握ってる。
語り手:
語り手:だからやはり、これは便宜上——
語り手: 愛の礫と呼ぶことにしよう。
語り手:最近、物忘れが酷い気がするんです。
語り手:
語り手:大事じゃないことは、忘れても、まあ、いいか。
語り手:でも、大事なことは?どうなるでしょう。
語り手:
語り手:大事な筈なんです、すごく。確か。たぶん。
語り手:なのに、何故、あれ。
語り手:
語り手:「あ」、という間に忘れてる。
語り手:
語り手:これは単なる、所謂、つまり、
語り手:不安、という一括りで片付けて良いものなのでしょうか。
語り手:
語り手:寂しいからか、一人だからか、
語り手:独り、だからか。
語り手:
語り手:覚えていられないんです。
語り手:全部全部、大切だった筈なのに。
語り手:
語り手:段々と、意識を奪われていくのです。
語り手:あぁ、そうやって奪うのか
語り手: 私
語り手: の
語り手:
語り手:
語り手:
語り手:思い出を思い出し、散歩する。
語り手:思い出の中を、ゆっくり歩いていく。
語り手:歩いていく、前へ。前へ。
語り手:前へ、いや。
語り手:前、とは言うが、
語り手:これは後ろへ、なのかもしれません。
語り手:後ろへ、後ろへ。
語り手:思い出を反芻するのは、過去に縋っているだけなのだと……だけなのだと。
語り手:
語り手:はた、とそれに思い至り、
語り手:足を止めたのです。
語り手:
語り手:「愛のつぶて」という文字を見かけました。
語り手:はて、これは何でしょう。
語り手:はりつけみたいな字だ、と私は思いました。
語り手:
語り手:頭の中で、誰かの声がします。
語り手:
語り手:貴方のためなのよ、と誰かが言います。
語り手:
語り手:私のため?本当に?
語り手:
語り手:貴方のことを想ってるから、
語り手:貴方のことを愛してるから、
語り手:
語り手:やめてください!……やめて、もうやめてください。お願いします。やめてください。
語り手:
語り手:愛のあるはずのそれらの言葉は、
語り手:まるで小石を投げられた仔犬のように、
語り手:私に痣を増やし、増やし、増やし、
語り手:増えて増えて増
語り手: え
語り手: て
語り手: ?
語り手:
語り手:あぁ。
語り手:
語り手:いつの間にか、
語り手:目の前に痣だらけの、
語り手:子供の頃の、私。
語り手:
語り手:私のために、と投げられた小石なら。
語り手:
語り手:私はこれを便宜上、
語り手: 愛のつぶて、と呼ぶことに致しましょう。
語り手:
語り手:愛のつぶてとやらに殴られて、黒い胃液がのぼります。
語り手:心臓の音が、左胸からどんどん離れて、
語り手:頭の中でガンガン響くのは。……何故?
語り手:
語り手:他人事のように、響き、遠く。
語り手:ぼやけた景色の向こうで、だれかが、
語り手:
語り手:わたし、が?
語り手:
語り手:私が、私、が。
語り手:
語り手:忘れないで、忘れないで、と。
語り手:ガンガン、と。響く、響く。響くのです。
語り手:
語り手: ガン
語り手:
語り手:
語り手: ガン
語り手:
語り手: ガン
語り手:
語り手:
語り手: ガン
語り手:
語り手:
語り手:
語り手:
語り手:貴方のためなのよ、と誰かが言います。
語り手:貴方のことを想ってるから、
語り手:貴方のことを愛してるから、
語り手:
語り手:愛してるから……心配なの。
語り手:ごめんなさい、ごめんなさいね。
語り手:貴方に色々押し付けて、
語り手:貴方に色々期待して、
語り手:ごめんね、ごめんね。
語り手:
語り手:でも、心配なの。
語り手:駄目ね。いつまでも子供のように思っては。
語り手:
語り手:あぁ、と私は思います。
語り手:しくしく泣く、その女の背中に。
語り手:私は気付くのです。
語り手:
語り手:私が泣いただけ、
語り手:同じだけ、私も誰かを、
語り手:泣かせてやしないか、と
語り手:
語り手:なら、悪いのはやはり私なのではないか。
語り手:いや、誰が悪いとか、そういう話ではないのかもしれないけれど
語り手:
語り手:貰った愛のつぶてたち。
語り手:私がただ、受け取り方を間違えただけで。
語り手:
語り手:そこに、確かに愛はあったのだ、と。
語り手:そう思い直すことは、できないだろうか。
語り手:
語り手:貴方のためなのよ、と誰かが言います。
語り手:貴方のことを想ってるから、
語り手:貴方のことを愛してるから、
語り手:
語り手:分からなかったことが、
語り手:今は……なんとなく分かる気がするのです。
語り手:まだまだ、気付いてないこともあるかもしれないけれど。でも、なんとなく。
語り手:
語り手:だから。
語り手:
語り手:小石を愛して抱えていく。
語り手:大事に手のひらに握って、
語り手:自分の爪が、その掌を抉らないように。
語り手:大事に、優しく、握り込んで。
語り手:
語り手:今の私は……笑えているだろうか。
語り手:
語り手:大丈夫、ここにある。
語り手:小石は、向けられた愛は、私が握ってる。
語り手:
語り手:だからやはり、これは便宜上——
語り手: 愛の礫と呼ぶことにしよう。