台本概要

 263 views 

タイトル 君は膝の上で丸く。
作者名 雪狐  (@yukikitsune_vg)
ジャンル その他
演者人数 1人用台本(男1)
時間 10 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 僕はある日、雨に濡れる子猫を拾った。その子と過ごしたかけがえのない思い出の話。
短い台本になります。また、作中の手紙の部分は演者様にお任せします。

 263 views 

キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
2 ある雨の日、子猫を拾う。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
0:君は膝の上で丸く。 僕:僕がこいつと出会ったのは、雨の降る夕暮れ時だった。 僕:こいつは段ボール箱に入ったまま、にゃあにゃあと泣いていた。 僕:…まだ生まれたばかりの子猫だった。 僕:このまま放っておくと死んでしまう。 僕:そう思った僕は、こいつを連れて家に帰った。 僕:一人ぼっちだった僕に、新しい家族が増えた瞬間だった。 僕:  僕:急いで動物病院に連れて行ったところ、女の子だということがわかった。 僕:流石にこいつって呼ぶのも可哀想だから、名前をつけることにする。 僕:…名前、何がいいのかな? 僕:タマ、ココ、モモ、きなこ…。 僕:いろんな名前を試してみるけれど、どの名前も反応がない。 僕:「どれも反応悪いなぁ…うーん、猫の女の子だから、音子(ねこ)なんてどう?」 僕:諦めて適当に呼んだ名前だった。 僕:でもこいつは嬉しそうに「にゃあ」と鳴いた。 僕:  僕:それから音子と僕はずっと一緒に生活している。 僕:最初はおとなしかったけれど、慣れるとお転婆な子だった。 僕:でも、教えたことは守ることができる利口な子だった。 僕:撫でると目を細めて擦り寄ってくる、甘え上手な子だった。 僕:…でも最近元気がない。 僕:  僕:不安そうな音子を病院に連れて行く。 僕:…調べて分かったことは、この子の寿命は残り僅かということだった。 僕:それを医師から告げられたとき、音子は寂しそうに「にゃあ」と鳴いた。 僕:  僕:残りの時間、僕は何をしてあげたらいいんだろう? 僕:僕が音子のために、できることはあるのか? 僕:一人頭を抱える。 僕:音子の幸せってなんだろう? 僕:僕は何を残してあげられるんだろう? 僕:そうやって自問自答を繰り返していると、僕の膝の上に音子が乗ってきた。 僕:はっとして音子を見る。 僕:音子はこちらをちらりと見た後、幸せそうにノビをした。 僕:そうしていつもの場所を確認した後、普段と変わらず丸くなる。 僕:音子が撫でて欲しいときは、いつも僕の膝の上に乗って丸くなっている。 僕:ゆっくり伸ばした手で音子をそっと撫でる。 僕:嬉しそうにゴロゴロと喉を鳴らす音子を見て、音子が寂しくないよう沢山の思い出を作ることを決意した。 僕:  僕:それから数ヶ月、音子と沢山の思い出を作った。 僕:音子が、そして僕が寂しくないように。 僕:猫用のケーキを買ってみたり 僕:普段は撮らない写真を撮ってみたり 僕:そんなある日のことだった… 僕:  僕:音子がいつも寝ている場所から動かない。 僕:安らかに眠っている。 僕:本当に寝ているだけなのか…? 僕:もしかしたらもう… 僕:嫌な予感が脳裏をよぎる。 僕:僕は嫌な予感を振り払いたくて、震える手でその丸まった身体に触れる。 僕:…よかった、まだ温もりが感じられる。 僕:「音子?」 僕:消え入りそうな声で彼女の名前を呼ぶ。 僕:音子はゆったりと目を開けて「にゃあ」と嬉しそうに鳴いた。 僕:フラフラしながら僕の膝の上に乗り、そのまま丸くなる。 僕:いつものように僕は優しく音子を撫でる。 僕:…ぽろぽろと目から雫が溢れる、嗚咽が漏れる。 僕:きっと、これが最期の時間だって悟ってしまったから。 僕:だから僕は音子の身体を愛おしく撫でる。 僕:呼吸が止まって、少しずつ冷たくなっていく身体を。 僕:来世ではどうか幸せになれるようにと。 僕:音子は幸せそうな表情(かお)をして、天国へと旅立っていった。 僕:  僕:それから数ヶ月が経った。 僕:未だに僕は音子のことを、忘れられないままでいる。 僕:そんな僕の手元に一通の手紙が届いた。 僕:どこにも差出人は書いていない。 僕:でも、読まなきゃいけない気がした。 僕:急いで封を開け手紙を読む。 僕:手紙は拙い文字で、それでいて丁寧に書き綴られていた。 0:(手紙は読んでも読まなくても大丈夫です) 手紙:「ごしゅじんさまへ 手紙:げんきにしてるかな? 手紙:わたしはげんきだよ。 手紙:さいごまで、わたしのそばにいてくれて、ありがとう。 手紙:わたし、あめのひ、ひとりぼっちだった。 手紙:とっても、さみしかった。 手紙:でも、ごしゅじんさまがひろってくれて、すごくうれしかった。 手紙:いつもいっしょにいてくれて、ありがとう。 手紙:たくさんなでてくれて、ありがとう。 手紙:たいせつにそだててくれて、ありがとう。 手紙:わたし、ごしゅじんさまにそだててもらって、すごくしあわせだった。 手紙:あのね、もしうまれかわったら、またごしゅじんさまのところへいきたい。 手紙:そのときは、またたくさんかわいがってね。 手紙:ごしゅじんさまのこと、だいすきだよ。 手紙:あなたにそだててもらった ねこより。」 僕:それは間違いなく音子からの手紙だった。 僕:沢山の想いが込められた、素敵な手紙だった。 僕:ぼろぼろとあふれる涙が視界を奪う。 僕:音子がいなくなった部屋で、一人嗚咽を漏らす。 僕:しかし、いつのまにか孤独になってしまった寂しさは無くなっていた。 僕:きっとまた、僕は音子に会えるようなそんな気がする。 僕:あまり運命なんて言葉は好きじゃないけど、きっと。 僕:…僕の方こそありがとう。 僕:君と過ごした日々を、僕は必ず忘れない。

0:君は膝の上で丸く。 僕:僕がこいつと出会ったのは、雨の降る夕暮れ時だった。 僕:こいつは段ボール箱に入ったまま、にゃあにゃあと泣いていた。 僕:…まだ生まれたばかりの子猫だった。 僕:このまま放っておくと死んでしまう。 僕:そう思った僕は、こいつを連れて家に帰った。 僕:一人ぼっちだった僕に、新しい家族が増えた瞬間だった。 僕:  僕:急いで動物病院に連れて行ったところ、女の子だということがわかった。 僕:流石にこいつって呼ぶのも可哀想だから、名前をつけることにする。 僕:…名前、何がいいのかな? 僕:タマ、ココ、モモ、きなこ…。 僕:いろんな名前を試してみるけれど、どの名前も反応がない。 僕:「どれも反応悪いなぁ…うーん、猫の女の子だから、音子(ねこ)なんてどう?」 僕:諦めて適当に呼んだ名前だった。 僕:でもこいつは嬉しそうに「にゃあ」と鳴いた。 僕:  僕:それから音子と僕はずっと一緒に生活している。 僕:最初はおとなしかったけれど、慣れるとお転婆な子だった。 僕:でも、教えたことは守ることができる利口な子だった。 僕:撫でると目を細めて擦り寄ってくる、甘え上手な子だった。 僕:…でも最近元気がない。 僕:  僕:不安そうな音子を病院に連れて行く。 僕:…調べて分かったことは、この子の寿命は残り僅かということだった。 僕:それを医師から告げられたとき、音子は寂しそうに「にゃあ」と鳴いた。 僕:  僕:残りの時間、僕は何をしてあげたらいいんだろう? 僕:僕が音子のために、できることはあるのか? 僕:一人頭を抱える。 僕:音子の幸せってなんだろう? 僕:僕は何を残してあげられるんだろう? 僕:そうやって自問自答を繰り返していると、僕の膝の上に音子が乗ってきた。 僕:はっとして音子を見る。 僕:音子はこちらをちらりと見た後、幸せそうにノビをした。 僕:そうしていつもの場所を確認した後、普段と変わらず丸くなる。 僕:音子が撫でて欲しいときは、いつも僕の膝の上に乗って丸くなっている。 僕:ゆっくり伸ばした手で音子をそっと撫でる。 僕:嬉しそうにゴロゴロと喉を鳴らす音子を見て、音子が寂しくないよう沢山の思い出を作ることを決意した。 僕:  僕:それから数ヶ月、音子と沢山の思い出を作った。 僕:音子が、そして僕が寂しくないように。 僕:猫用のケーキを買ってみたり 僕:普段は撮らない写真を撮ってみたり 僕:そんなある日のことだった… 僕:  僕:音子がいつも寝ている場所から動かない。 僕:安らかに眠っている。 僕:本当に寝ているだけなのか…? 僕:もしかしたらもう… 僕:嫌な予感が脳裏をよぎる。 僕:僕は嫌な予感を振り払いたくて、震える手でその丸まった身体に触れる。 僕:…よかった、まだ温もりが感じられる。 僕:「音子?」 僕:消え入りそうな声で彼女の名前を呼ぶ。 僕:音子はゆったりと目を開けて「にゃあ」と嬉しそうに鳴いた。 僕:フラフラしながら僕の膝の上に乗り、そのまま丸くなる。 僕:いつものように僕は優しく音子を撫でる。 僕:…ぽろぽろと目から雫が溢れる、嗚咽が漏れる。 僕:きっと、これが最期の時間だって悟ってしまったから。 僕:だから僕は音子の身体を愛おしく撫でる。 僕:呼吸が止まって、少しずつ冷たくなっていく身体を。 僕:来世ではどうか幸せになれるようにと。 僕:音子は幸せそうな表情(かお)をして、天国へと旅立っていった。 僕:  僕:それから数ヶ月が経った。 僕:未だに僕は音子のことを、忘れられないままでいる。 僕:そんな僕の手元に一通の手紙が届いた。 僕:どこにも差出人は書いていない。 僕:でも、読まなきゃいけない気がした。 僕:急いで封を開け手紙を読む。 僕:手紙は拙い文字で、それでいて丁寧に書き綴られていた。 0:(手紙は読んでも読まなくても大丈夫です) 手紙:「ごしゅじんさまへ 手紙:げんきにしてるかな? 手紙:わたしはげんきだよ。 手紙:さいごまで、わたしのそばにいてくれて、ありがとう。 手紙:わたし、あめのひ、ひとりぼっちだった。 手紙:とっても、さみしかった。 手紙:でも、ごしゅじんさまがひろってくれて、すごくうれしかった。 手紙:いつもいっしょにいてくれて、ありがとう。 手紙:たくさんなでてくれて、ありがとう。 手紙:たいせつにそだててくれて、ありがとう。 手紙:わたし、ごしゅじんさまにそだててもらって、すごくしあわせだった。 手紙:あのね、もしうまれかわったら、またごしゅじんさまのところへいきたい。 手紙:そのときは、またたくさんかわいがってね。 手紙:ごしゅじんさまのこと、だいすきだよ。 手紙:あなたにそだててもらった ねこより。」 僕:それは間違いなく音子からの手紙だった。 僕:沢山の想いが込められた、素敵な手紙だった。 僕:ぼろぼろとあふれる涙が視界を奪う。 僕:音子がいなくなった部屋で、一人嗚咽を漏らす。 僕:しかし、いつのまにか孤独になってしまった寂しさは無くなっていた。 僕:きっとまた、僕は音子に会えるようなそんな気がする。 僕:あまり運命なんて言葉は好きじゃないけど、きっと。 僕:…僕の方こそありがとう。 僕:君と過ごした日々を、僕は必ず忘れない。