台本概要
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タイトル | お嬢様とSな執事 |
---|---|
作者名 | ヒデじい (@taltal3014s) |
ジャンル | コメディ |
演者人数 | 2人用台本(男1、女1) |
時間 | 30 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
Sっ気のある執事とお嬢様の茶番劇。
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キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
お嬢様 | 女 | 87 | 天真爛漫。16歳。執事のルイに好意あり。 |
執事 | 男 | 81 | 19歳。どS。名前はルイ。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
お嬢様:ハァァァァ……! シャドウ・ストライク!
執事:くっ……。エターナル・フォース・ブリザード!
お嬢様:はあ……はあ……。
執事:ぐっ……。
お嬢様:なかなかやるわね、ルイ。
執事:お嬢様、いつの間にそこまで闇の力を……。
お嬢様:ふふ、あなたに隠れて猛特訓していたの。
お嬢様:しかも私は、あと三回も変身を残しているわ。この意味が分かる……?
執事:なるほど……大ピンチ、というわけですか……。
お嬢様:ごめんね。私はもう、貴方より強くなりすぎてしまったの……。
お嬢様:大人しくここで散って頂戴? あなたの屍を乗り越えて、私はまた一つ強くなるわ。
執事:ふっ、相変わらず努力家な方だ……。そういうところ、好きですよ。
お嬢様:えっ! す、好き……!? あ、ありがとう……そ、その……私も……ゴニョゴニョ……。
執事:えいっ。超必殺。
お嬢様:……あ。ああーー!! ずるいずるいずるいずるい! 不意打ちずるいっ! まだ変身もしてないのに!!
執事:甘いですよお嬢様? 勝負の最中に気を抜くなんて。
お嬢様:だ、だって……。ルイが急にあんなこと言うんだもん。
執事:おやあ……? 私、何か言いましたっけ……?
お嬢様:それは……ほら……ゴニョゴニョ……あーもう! 再戦するわよ!!
執事:ふふっ、ゲームで遊んでる時のお嬢様はホント可愛いですね。あ、さっきの言葉、本心ですよ?
お嬢様:ぐぬぬ……。ゲーム中の私語禁止にしようかしら……。
お嬢様:
お嬢様:
0:数時間後
お嬢様:うう、また負けた……。0勝99敗……。
執事:まだまだですね、お嬢様は言葉責めに弱すぎます。
お嬢様:あなたの言葉は毎回心臓に悪いのよ……。
執事:……それはそうと、もうこんな時間ですか。
お嬢様:あら……そうね。私、人と会う約束があるから今日はここまでね。
執事:約束……? もしかして相手の方は男性ですか?
お嬢様:うん、そう。男の人と会うの。ふふ、気になる……? 妬けちゃったりする?
執事:いえ、全く。良かったですね。おめでとうございます。
お嬢様:そ、そう……。
執事:ちなみに、その方とはどちらで知り合われたのでしょう?
お嬢様:……え? それは……ほら、前回の社交パーティーでね。
執事:ほう……? あの時のお嬢様は、誰とも話さずに壁際でガチガチに緊張してらっしゃいましたが……。ちゃんとどなたかと親交を深めてらっしゃったのですね。
お嬢様:そ、そうなの。お誘いが多くて困ったわ、おほほ……。
執事:なるほど、さすがお嬢様! では行ってらっしゃいませ!
お嬢様:う、うん。行ってくるわ……。
お嬢様:
お嬢様:
0:路上にて
お嬢様:社交パーティーで知り合ったなんて言ったけど……実は、マッチングアプリで知り合った人と初めて会う予定なのよね……。
お嬢様:でも、こういうアプリってちょっと怖いけど、この人とは不思議と話が合うのよね。
お嬢様:それにしても、ルイったら、私が男性と会うっていうのに心配してくれないのか……。私も良い加減、執事離れしないとなあ……。
お嬢様:
お嬢様:
0:待ち合わせ場所の公園にて
お嬢様:えーと、待ち合わせ場所はここね。
お嬢様:確か相手の服装は、黒のスーツに赤いシャツ、紺色の帽子……。
お嬢様:あっ、あの人かな?
お嬢様:
お嬢様:
0:お嬢様、声をかける
お嬢様:あのー……すみません。『たろう』さん、ですか? マッチングアプリの……。
執事:ああ、『いちご姫』さんですね、どうも。
お嬢様:えっ……! ルイ……?
執事:どうかなさいましたか、お嬢様?
お嬢様:え? え? え? 本当にルイ!?
お嬢様:じゃあ、今まで私がずーっとアプリでメッセージのやり取りをしてた相手は貴方だったってこと?
執事:ええ、まあ。
お嬢様:いやいやいや、だって貴方、プロフィールに載せてる写真と全然違うじゃない! 誰よ、このワイルド系のイケメンは!
執事:いえ、それは正真正銘、私の写真ですよ。まあ、その時はたまたま、特殊メイクをしてカツラを被っておりましたが。
お嬢様:特殊メイク……!? カツラ……!?
執事:お嬢様だってメイクをしたり、エクステを付けることもあるでしょう? 何もおかしくありません。
お嬢様:まあ、そうだけど……。いや、おかしいわよね……? どう考えてもおかしい……!
執事:それを言うなら、お嬢様のプロフィールこそ、趣味の欄に『料理とお菓子作り♪』と書いてありますが、お料理なんて出来ましたっけ……?
お嬢様:う……出来ないけど……。でも、お料理動画見るの好きだし、一応趣味と言っても差し支えないの……。
執事:そして将来の夢はお嫁さんですか。これもプロフィールに書いてありますね。実に可愛らしいですね。
お嬢様:うう……そうよ。お嫁さん!
執事:お嬢様の自己PRの文章がまた初々しくて好きですね。
執事:『はじめまして☆ いちご姫と言いますピョン♪』。私は百回ほど音読させていただきました。
お嬢様:うううううう……。(足をバタバタさせる)
執事:理想のタイプは、『少し言葉はキツイけど、優しくてスーツの似合う、一緒にゲームで遊んでくれる人』ですか。へー……ふむふむ。
お嬢様:……いつまで続くの、この拷問……(悶えながら)
執事:ふふっ、すみません。やっぱり面白いですね、お嬢様は。
お嬢様:ああ……恥ずかしい……こういうアプリに登録してるの、誰にもバレたくないのに、まさかルイに筒抜けなんて……。
お嬢様:(小声で)だいたい、ルイが構ってくれないから……私はこんなアプリに頼る羽目に……。
執事:すみません。『いちご姫』がお嬢様だと、私は早い段階で気付いていたのですが、面白……もとい、気の毒だったので、どうにも言い出しづらく……。
お嬢様:面白!? 面白って言った!
執事:失礼、微笑ましいの間違いでした。
お嬢様:はあ……良いわよ……もう。メッセージのやり取り、楽しかったし……。それに……こういう形で誰かと会うのって不安だったし、ルイが相手で安心したかも。
執事:ええ、私もお嬢様とのやり取り、楽しかったですよ。お嬢様、文章だとキャラが違うんですね。
お嬢様:推敲に推敲を重ねて書いたからね……。もう放っておいて……。
執事:はは、流石にいじりすぎましたね。さて、この後はどうします?
お嬢様:この後?
執事:ええ。お嬢様さえ嫌じゃなければ、このまま二人で出かけませんか?
お嬢様:それは、嫌じゃない……けど……。暇だし、むしろ一緒に過ごしてくれるなら嬉しい……。
執事:では映画やショッピングなど、お嬢様の好きな場所を回りましょうか。
お嬢様:うんっ。久しぶりだね。ルイとお出かけするの。嬉しいな。
執事:ええ、行きましょうか。お嬢様、いえ、いちご姫様?
お嬢様:貴方本当にどSね……。
お嬢様:
お嬢様:
0:駄菓子店にて
お嬢様:あ、ねえねえ……ルイ! これ、懐かしくない?
執事:おお、駄菓子ですか……! 子供の頃はよく食べましたね。
お嬢様:わ、しかも私の好きなアニメとコラボしてるみたい。
お嬢様:特製シールがおまけで付いてくるんですって。これは買わなきゃ!
執事:ふむふむ、シールは全四十八種ランダムですか。お嬢様の推しキャラはどれですか?
お嬢様:これこれ。ぷよぷよ丸。
執事:ほほう、お嬢様の運が試されますね。
お嬢様:ふふふー♪ 甘いわね、ルイ。ランダムなんて全部買えば関係ないの。このお店にある十箱、全部、箱買いよ!
執事:おお……これが噂に聞く大人買い……。
お嬢様:ふっふーん♪ まぁね。私もう十六歳だし。大人だからね!
執事:ふむ。大人どころか、大人気(おとなげ)ない買い物に見えますが。
執事:まあそんなお嬢様も子供っぽくて微笑ましいです。ええ。
お嬢様:ふっふーん♪ でしょう? 身体は大人! 心は少女だからね! 問題なし!
お嬢様:
お嬢様:
0:お屋敷にて
お嬢様:ただいま〜♪
執事:ただいま戻りました。
お嬢様:あー、楽しかった。映画見てご飯食べてショッピングして、遊園地行って……えへへ、いっぱい遊べたね。
お嬢様:それになんだか、いっぱい奢ってもらっちゃったね。ありがとう。ごちそう様でした。
執事:いえいえ。お嬢様、最近少し元気が無かったようなので……。楽しんでいただけたなら何よりです。
お嬢様:え……私が元気ないの、気付いてたんだ?
執事:そりゃまあ。もう十年も一緒に住んでいますし。
お嬢様:そっか……。それで、連れ出してくれたんだ。ありがとう。
執事:……何かあったのですか?
お嬢様:うーん……。ほら、私、趣味で漫画描いてるでしょう?
執事:ええ。
お嬢様:それでね、実はこの前のコミケでひっそり同人誌を出してみたんだけど……たくさん売れ残っちゃって……自信喪失してたの。
執事:……。
お嬢様:部屋に在庫の本が積み上がってて、それを見るたびに落ち込んじゃうの。私、才能無いのかなって。頑張って描いたものだから捨てるのも嫌だし……。
執事:なるほど……。良かったらその作品、見せていただけますか? 漫画好きとして、ぜひ読んでみたいです。
お嬢様:う……うん、じゃあ持ってくるね。ちょっと待ってて。
お嬢様:
お嬢様:
0:お嬢様、本を手渡す
お嬢様:はい、これだよ。
執事:おお、表紙からとても凝っていますね……! 凄い。
執事:デジタル全盛時代にコピック塗りは目を引きます。
お嬢様:そう! そうなの! 頑張って描いたの! 分かってくれて嬉しい!
執事:ええ、気合が入ってるのがわかります。さて、中身を拝読。
お嬢様:……どう……かな?
執事:……。
お嬢様:……。
執事:……うん、面白い! 面白いですよ、これは。
お嬢様:ほんと……!?
執事:はい。キャラクターが可愛いし、オチも斬新で面白いです。ちなみに、読んでくれた方の反応はどうだったんですか?
お嬢様:それは……割と良かったかも。
執事:でしょう? 間違いなく面白いですよ、これは。ただ、コミケだとオリジナルは売れにくいですからね……全年齢向けは特に。あと、値段設定もこれでは少し高いかもしれません。
お嬢様:詳しいね、さすがルイ! そっか、そうなんだ……。
執事:ええ、今回はタイミングや客層が合わなかっただけ。気にしなくて良いと思いますよ?
執事:少なくとも私は大好きです。
お嬢様:そっか……。えへへ……ルイがそう言ってくれるなら、それだけで十分かな。ありがとう、ルイ。
執事:いえいえ。そうだ。良ければこの本、私にも売っていただけますか?
お嬢様:え、そんな。あげるよ?
執事:いえ、お嬢様が魂を込めて描いた作品ですから。敬意を込めて、客として買わせてください。
お嬢様:そう? ありがとう……! うん、じゃあ一冊千円だけど、それで良かったら。
執事:ちなみに在庫は何冊くらいあるのですか?
お嬢様:え、百冊くらいあるけど……。
執事:では百冊全部買いましょう。
お嬢様:え、全部!?
執事:ええ、全部。
執事:観賞用、保存用に十冊ずつ。残りの八十冊は布教用として友人に配ります。
お嬢様:そ、それはちょっと恥ずかしいけど……。でもありがとう、ルイ。凄いね……太っ腹……!
執事:これが正しい『大人買い』というものです、お嬢様。
お嬢様:なるほど……こんなカッコ良い大人買いもあるのね……。覚えとくわ……。えーと、じゃあ……全部で約十万円になるけど、大丈夫?
執事:はい、昨日お給料が出て、お金をおろしてきたばっかりなので、問題ありません。すぐお支払いしますね。
執事:えーと、財布財布っと……。はっ……。
お嬢様:……?
執事:しまった……お金が……無いっ……! くっ……そういえば昨日スロットで大負けしたんだった……!!
お嬢様:えーと、ルイ……?
執事:いえ全然大丈夫! あー……カード払いでも良いでしょうか……? 出切れば分割で……!!
お嬢様:いや、カードでは流石に無理……。えーと、大丈夫? 余裕無いなら良いよ?
執事:いや全然平気です! ちょちょちょ、ちょっと待ってて下さいっ!
執事:
執事:
0:執事、廊下に出て電話をかける
執事:あー、もしもし! 母さん? ごめん、お金貸して! 大至急! お願い! 来月絶対返すから! お願いしますっ! この通り! 母上! 大明神! 美魔女様! お願いしますっ!! 一生のお願い!!
お嬢様:(……カッコ良いんだかカッコ悪いんだか分からない……)
お嬢様:
お嬢様:
0:翌日
執事:あ、お嬢様。おはようございます。早起きですね。
お嬢様:あ、ルイ。おはよー。昨日はありがとう。えへへ、お陰で元気出たよ。
執事:はは、それなら何よりです。そうだ、これ、作ってみたのですが……良かったら。
お嬢様:え、これは、もしかして……チョコレート?
執事:ええ。バレンタインが近いですし。いつもお世話になっていますからね。
お嬢様:わあ、嬉しい! それにしても、これ、凄く綺麗で美味しそう……! 私の作ったお菓子と大違い……。
執事:ふふ、お菓子作りで良かったらいつでも私がお教えしますよ?
お嬢様:ホント? じゃあ今度教わろうかな……。ねね、早速食べても良い?
執事:ええ、どうぞ。
お嬢様:わーい! いただきまーす♪ もぐもぐ……♪
執事:どうですか?
お嬢様:うん、美味しいよー♪
お嬢様:えへへ、ルイ、この間から妙に優しいけど、どうしたの? 私の魅力にようやく気付いたの?
執事:いえ、それはありません。
お嬢様:そ、そう……。
執事:もともとベタぼれですから。
執事:最近お嬢様の魅力に気づいたわけではありません。
お嬢様:……。
お嬢様:え……え……!?
お嬢様:は? はあああああああ!!?!?!!?!?!??
お嬢様:あの……それは……どういう……?
執事:冗談です。
お嬢様:じょじょじょじょじょ冗談ねっ……あなた、本当に心臓に悪いわ……。
執事:それはそうと、隠し味に『あるもの』を入れてみたのですが、いかがでしょうか。
お嬢様:へ、へー、隠し味……? なんだろう……。ブランデーとか?
お嬢様:ん……? ぐはっ!
執事:(ニヤリ)
お嬢様:ルイ……貴方……まさか毒を……。
執事:ふふ、気付きました……? ええ、そうです。一服、盛らせていただきました。申し訳ありません、お嬢様……。
お嬢様:ルイ……どうして……。
執事:ふふ……これは心外……。お嬢様が悪いのですよ? だって、私の大切なものを盗んでいったのですから……。だからこれは罰なのです……。ごめんなさい、お嬢様……。
お嬢様:大切なもの……。そっか……貴方の心を盗んでしまったのね……罪な女ね、私……。
執事:いえ、そうではなく……。
執事:もっと大事なものです。ほら、身に覚えがあるでしょう? 昨日の晩。
お嬢様:ふふふ、ふふふ……はーっはっはっはっ! 気付いていたのね。
お嬢様:そうよ、犯人は私。ごめんね。冷蔵庫に入ってたプリン、食べちゃって……!
お嬢様:とーっても美味だったわ! でも残念だったわね……! 私は四天王の中では最弱!
お嬢様:例え私がいなくなっても、貴方のプリンはパパ、ママ、そして執事長のポールが狙い続けるわ!
お嬢様:考えが甘かったわね! おーっほっほっほっ……!! ……ぐふっ……。(ぱたり)
執事:……。
お嬢様:……。
執事:……。(つんつん)
お嬢様:……。(すぴー)
執事:気絶している……。チョコの中にお嬢様の嫌いなワサビを入れただけなのですが……。そんなに苦手だったとは……。あ、プリンに名前書いとこう……ルイ……と。
お嬢様:むにゃむにゃ……。
お嬢様:
お嬢様:
0:執事、お嬢様のほっぺをぷにぷにしながら
執事:……というか、相変わらず面白い方ですね、お嬢様は。
執事:面と向かっては言えませんが、いつもありがとうございます。お嬢様のおかげで私は毎日楽しいですよ。
執事:ちなみに先程お渡したチョコは義理ではなく本命ですが……、それを伝えるのはまだやめておきましょうかね。
お嬢様:ハァァァァ……! シャドウ・ストライク!
執事:くっ……。エターナル・フォース・ブリザード!
お嬢様:はあ……はあ……。
執事:ぐっ……。
お嬢様:なかなかやるわね、ルイ。
執事:お嬢様、いつの間にそこまで闇の力を……。
お嬢様:ふふ、あなたに隠れて猛特訓していたの。
お嬢様:しかも私は、あと三回も変身を残しているわ。この意味が分かる……?
執事:なるほど……大ピンチ、というわけですか……。
お嬢様:ごめんね。私はもう、貴方より強くなりすぎてしまったの……。
お嬢様:大人しくここで散って頂戴? あなたの屍を乗り越えて、私はまた一つ強くなるわ。
執事:ふっ、相変わらず努力家な方だ……。そういうところ、好きですよ。
お嬢様:えっ! す、好き……!? あ、ありがとう……そ、その……私も……ゴニョゴニョ……。
執事:えいっ。超必殺。
お嬢様:……あ。ああーー!! ずるいずるいずるいずるい! 不意打ちずるいっ! まだ変身もしてないのに!!
執事:甘いですよお嬢様? 勝負の最中に気を抜くなんて。
お嬢様:だ、だって……。ルイが急にあんなこと言うんだもん。
執事:おやあ……? 私、何か言いましたっけ……?
お嬢様:それは……ほら……ゴニョゴニョ……あーもう! 再戦するわよ!!
執事:ふふっ、ゲームで遊んでる時のお嬢様はホント可愛いですね。あ、さっきの言葉、本心ですよ?
お嬢様:ぐぬぬ……。ゲーム中の私語禁止にしようかしら……。
お嬢様:
お嬢様:
0:数時間後
お嬢様:うう、また負けた……。0勝99敗……。
執事:まだまだですね、お嬢様は言葉責めに弱すぎます。
お嬢様:あなたの言葉は毎回心臓に悪いのよ……。
執事:……それはそうと、もうこんな時間ですか。
お嬢様:あら……そうね。私、人と会う約束があるから今日はここまでね。
執事:約束……? もしかして相手の方は男性ですか?
お嬢様:うん、そう。男の人と会うの。ふふ、気になる……? 妬けちゃったりする?
執事:いえ、全く。良かったですね。おめでとうございます。
お嬢様:そ、そう……。
執事:ちなみに、その方とはどちらで知り合われたのでしょう?
お嬢様:……え? それは……ほら、前回の社交パーティーでね。
執事:ほう……? あの時のお嬢様は、誰とも話さずに壁際でガチガチに緊張してらっしゃいましたが……。ちゃんとどなたかと親交を深めてらっしゃったのですね。
お嬢様:そ、そうなの。お誘いが多くて困ったわ、おほほ……。
執事:なるほど、さすがお嬢様! では行ってらっしゃいませ!
お嬢様:う、うん。行ってくるわ……。
お嬢様:
お嬢様:
0:路上にて
お嬢様:社交パーティーで知り合ったなんて言ったけど……実は、マッチングアプリで知り合った人と初めて会う予定なのよね……。
お嬢様:でも、こういうアプリってちょっと怖いけど、この人とは不思議と話が合うのよね。
お嬢様:それにしても、ルイったら、私が男性と会うっていうのに心配してくれないのか……。私も良い加減、執事離れしないとなあ……。
お嬢様:
お嬢様:
0:待ち合わせ場所の公園にて
お嬢様:えーと、待ち合わせ場所はここね。
お嬢様:確か相手の服装は、黒のスーツに赤いシャツ、紺色の帽子……。
お嬢様:あっ、あの人かな?
お嬢様:
お嬢様:
0:お嬢様、声をかける
お嬢様:あのー……すみません。『たろう』さん、ですか? マッチングアプリの……。
執事:ああ、『いちご姫』さんですね、どうも。
お嬢様:えっ……! ルイ……?
執事:どうかなさいましたか、お嬢様?
お嬢様:え? え? え? 本当にルイ!?
お嬢様:じゃあ、今まで私がずーっとアプリでメッセージのやり取りをしてた相手は貴方だったってこと?
執事:ええ、まあ。
お嬢様:いやいやいや、だって貴方、プロフィールに載せてる写真と全然違うじゃない! 誰よ、このワイルド系のイケメンは!
執事:いえ、それは正真正銘、私の写真ですよ。まあ、その時はたまたま、特殊メイクをしてカツラを被っておりましたが。
お嬢様:特殊メイク……!? カツラ……!?
執事:お嬢様だってメイクをしたり、エクステを付けることもあるでしょう? 何もおかしくありません。
お嬢様:まあ、そうだけど……。いや、おかしいわよね……? どう考えてもおかしい……!
執事:それを言うなら、お嬢様のプロフィールこそ、趣味の欄に『料理とお菓子作り♪』と書いてありますが、お料理なんて出来ましたっけ……?
お嬢様:う……出来ないけど……。でも、お料理動画見るの好きだし、一応趣味と言っても差し支えないの……。
執事:そして将来の夢はお嫁さんですか。これもプロフィールに書いてありますね。実に可愛らしいですね。
お嬢様:うう……そうよ。お嫁さん!
執事:お嬢様の自己PRの文章がまた初々しくて好きですね。
執事:『はじめまして☆ いちご姫と言いますピョン♪』。私は百回ほど音読させていただきました。
お嬢様:うううううう……。(足をバタバタさせる)
執事:理想のタイプは、『少し言葉はキツイけど、優しくてスーツの似合う、一緒にゲームで遊んでくれる人』ですか。へー……ふむふむ。
お嬢様:……いつまで続くの、この拷問……(悶えながら)
執事:ふふっ、すみません。やっぱり面白いですね、お嬢様は。
お嬢様:ああ……恥ずかしい……こういうアプリに登録してるの、誰にもバレたくないのに、まさかルイに筒抜けなんて……。
お嬢様:(小声で)だいたい、ルイが構ってくれないから……私はこんなアプリに頼る羽目に……。
執事:すみません。『いちご姫』がお嬢様だと、私は早い段階で気付いていたのですが、面白……もとい、気の毒だったので、どうにも言い出しづらく……。
お嬢様:面白!? 面白って言った!
執事:失礼、微笑ましいの間違いでした。
お嬢様:はあ……良いわよ……もう。メッセージのやり取り、楽しかったし……。それに……こういう形で誰かと会うのって不安だったし、ルイが相手で安心したかも。
執事:ええ、私もお嬢様とのやり取り、楽しかったですよ。お嬢様、文章だとキャラが違うんですね。
お嬢様:推敲に推敲を重ねて書いたからね……。もう放っておいて……。
執事:はは、流石にいじりすぎましたね。さて、この後はどうします?
お嬢様:この後?
執事:ええ。お嬢様さえ嫌じゃなければ、このまま二人で出かけませんか?
お嬢様:それは、嫌じゃない……けど……。暇だし、むしろ一緒に過ごしてくれるなら嬉しい……。
執事:では映画やショッピングなど、お嬢様の好きな場所を回りましょうか。
お嬢様:うんっ。久しぶりだね。ルイとお出かけするの。嬉しいな。
執事:ええ、行きましょうか。お嬢様、いえ、いちご姫様?
お嬢様:貴方本当にどSね……。
お嬢様:
お嬢様:
0:駄菓子店にて
お嬢様:あ、ねえねえ……ルイ! これ、懐かしくない?
執事:おお、駄菓子ですか……! 子供の頃はよく食べましたね。
お嬢様:わ、しかも私の好きなアニメとコラボしてるみたい。
お嬢様:特製シールがおまけで付いてくるんですって。これは買わなきゃ!
執事:ふむふむ、シールは全四十八種ランダムですか。お嬢様の推しキャラはどれですか?
お嬢様:これこれ。ぷよぷよ丸。
執事:ほほう、お嬢様の運が試されますね。
お嬢様:ふふふー♪ 甘いわね、ルイ。ランダムなんて全部買えば関係ないの。このお店にある十箱、全部、箱買いよ!
執事:おお……これが噂に聞く大人買い……。
お嬢様:ふっふーん♪ まぁね。私もう十六歳だし。大人だからね!
執事:ふむ。大人どころか、大人気(おとなげ)ない買い物に見えますが。
執事:まあそんなお嬢様も子供っぽくて微笑ましいです。ええ。
お嬢様:ふっふーん♪ でしょう? 身体は大人! 心は少女だからね! 問題なし!
お嬢様:
お嬢様:
0:お屋敷にて
お嬢様:ただいま〜♪
執事:ただいま戻りました。
お嬢様:あー、楽しかった。映画見てご飯食べてショッピングして、遊園地行って……えへへ、いっぱい遊べたね。
お嬢様:それになんだか、いっぱい奢ってもらっちゃったね。ありがとう。ごちそう様でした。
執事:いえいえ。お嬢様、最近少し元気が無かったようなので……。楽しんでいただけたなら何よりです。
お嬢様:え……私が元気ないの、気付いてたんだ?
執事:そりゃまあ。もう十年も一緒に住んでいますし。
お嬢様:そっか……。それで、連れ出してくれたんだ。ありがとう。
執事:……何かあったのですか?
お嬢様:うーん……。ほら、私、趣味で漫画描いてるでしょう?
執事:ええ。
お嬢様:それでね、実はこの前のコミケでひっそり同人誌を出してみたんだけど……たくさん売れ残っちゃって……自信喪失してたの。
執事:……。
お嬢様:部屋に在庫の本が積み上がってて、それを見るたびに落ち込んじゃうの。私、才能無いのかなって。頑張って描いたものだから捨てるのも嫌だし……。
執事:なるほど……。良かったらその作品、見せていただけますか? 漫画好きとして、ぜひ読んでみたいです。
お嬢様:う……うん、じゃあ持ってくるね。ちょっと待ってて。
お嬢様:
お嬢様:
0:お嬢様、本を手渡す
お嬢様:はい、これだよ。
執事:おお、表紙からとても凝っていますね……! 凄い。
執事:デジタル全盛時代にコピック塗りは目を引きます。
お嬢様:そう! そうなの! 頑張って描いたの! 分かってくれて嬉しい!
執事:ええ、気合が入ってるのがわかります。さて、中身を拝読。
お嬢様:……どう……かな?
執事:……。
お嬢様:……。
執事:……うん、面白い! 面白いですよ、これは。
お嬢様:ほんと……!?
執事:はい。キャラクターが可愛いし、オチも斬新で面白いです。ちなみに、読んでくれた方の反応はどうだったんですか?
お嬢様:それは……割と良かったかも。
執事:でしょう? 間違いなく面白いですよ、これは。ただ、コミケだとオリジナルは売れにくいですからね……全年齢向けは特に。あと、値段設定もこれでは少し高いかもしれません。
お嬢様:詳しいね、さすがルイ! そっか、そうなんだ……。
執事:ええ、今回はタイミングや客層が合わなかっただけ。気にしなくて良いと思いますよ?
執事:少なくとも私は大好きです。
お嬢様:そっか……。えへへ……ルイがそう言ってくれるなら、それだけで十分かな。ありがとう、ルイ。
執事:いえいえ。そうだ。良ければこの本、私にも売っていただけますか?
お嬢様:え、そんな。あげるよ?
執事:いえ、お嬢様が魂を込めて描いた作品ですから。敬意を込めて、客として買わせてください。
お嬢様:そう? ありがとう……! うん、じゃあ一冊千円だけど、それで良かったら。
執事:ちなみに在庫は何冊くらいあるのですか?
お嬢様:え、百冊くらいあるけど……。
執事:では百冊全部買いましょう。
お嬢様:え、全部!?
執事:ええ、全部。
執事:観賞用、保存用に十冊ずつ。残りの八十冊は布教用として友人に配ります。
お嬢様:そ、それはちょっと恥ずかしいけど……。でもありがとう、ルイ。凄いね……太っ腹……!
執事:これが正しい『大人買い』というものです、お嬢様。
お嬢様:なるほど……こんなカッコ良い大人買いもあるのね……。覚えとくわ……。えーと、じゃあ……全部で約十万円になるけど、大丈夫?
執事:はい、昨日お給料が出て、お金をおろしてきたばっかりなので、問題ありません。すぐお支払いしますね。
執事:えーと、財布財布っと……。はっ……。
お嬢様:……?
執事:しまった……お金が……無いっ……! くっ……そういえば昨日スロットで大負けしたんだった……!!
お嬢様:えーと、ルイ……?
執事:いえ全然大丈夫! あー……カード払いでも良いでしょうか……? 出切れば分割で……!!
お嬢様:いや、カードでは流石に無理……。えーと、大丈夫? 余裕無いなら良いよ?
執事:いや全然平気です! ちょちょちょ、ちょっと待ってて下さいっ!
執事:
執事:
0:執事、廊下に出て電話をかける
執事:あー、もしもし! 母さん? ごめん、お金貸して! 大至急! お願い! 来月絶対返すから! お願いしますっ! この通り! 母上! 大明神! 美魔女様! お願いしますっ!! 一生のお願い!!
お嬢様:(……カッコ良いんだかカッコ悪いんだか分からない……)
お嬢様:
お嬢様:
0:翌日
執事:あ、お嬢様。おはようございます。早起きですね。
お嬢様:あ、ルイ。おはよー。昨日はありがとう。えへへ、お陰で元気出たよ。
執事:はは、それなら何よりです。そうだ、これ、作ってみたのですが……良かったら。
お嬢様:え、これは、もしかして……チョコレート?
執事:ええ。バレンタインが近いですし。いつもお世話になっていますからね。
お嬢様:わあ、嬉しい! それにしても、これ、凄く綺麗で美味しそう……! 私の作ったお菓子と大違い……。
執事:ふふ、お菓子作りで良かったらいつでも私がお教えしますよ?
お嬢様:ホント? じゃあ今度教わろうかな……。ねね、早速食べても良い?
執事:ええ、どうぞ。
お嬢様:わーい! いただきまーす♪ もぐもぐ……♪
執事:どうですか?
お嬢様:うん、美味しいよー♪
お嬢様:えへへ、ルイ、この間から妙に優しいけど、どうしたの? 私の魅力にようやく気付いたの?
執事:いえ、それはありません。
お嬢様:そ、そう……。
執事:もともとベタぼれですから。
執事:最近お嬢様の魅力に気づいたわけではありません。
お嬢様:……。
お嬢様:え……え……!?
お嬢様:は? はあああああああ!!?!?!!?!?!??
お嬢様:あの……それは……どういう……?
執事:冗談です。
お嬢様:じょじょじょじょじょ冗談ねっ……あなた、本当に心臓に悪いわ……。
執事:それはそうと、隠し味に『あるもの』を入れてみたのですが、いかがでしょうか。
お嬢様:へ、へー、隠し味……? なんだろう……。ブランデーとか?
お嬢様:ん……? ぐはっ!
執事:(ニヤリ)
お嬢様:ルイ……貴方……まさか毒を……。
執事:ふふ、気付きました……? ええ、そうです。一服、盛らせていただきました。申し訳ありません、お嬢様……。
お嬢様:ルイ……どうして……。
執事:ふふ……これは心外……。お嬢様が悪いのですよ? だって、私の大切なものを盗んでいったのですから……。だからこれは罰なのです……。ごめんなさい、お嬢様……。
お嬢様:大切なもの……。そっか……貴方の心を盗んでしまったのね……罪な女ね、私……。
執事:いえ、そうではなく……。
執事:もっと大事なものです。ほら、身に覚えがあるでしょう? 昨日の晩。
お嬢様:ふふふ、ふふふ……はーっはっはっはっ! 気付いていたのね。
お嬢様:そうよ、犯人は私。ごめんね。冷蔵庫に入ってたプリン、食べちゃって……!
お嬢様:とーっても美味だったわ! でも残念だったわね……! 私は四天王の中では最弱!
お嬢様:例え私がいなくなっても、貴方のプリンはパパ、ママ、そして執事長のポールが狙い続けるわ!
お嬢様:考えが甘かったわね! おーっほっほっほっ……!! ……ぐふっ……。(ぱたり)
執事:……。
お嬢様:……。
執事:……。(つんつん)
お嬢様:……。(すぴー)
執事:気絶している……。チョコの中にお嬢様の嫌いなワサビを入れただけなのですが……。そんなに苦手だったとは……。あ、プリンに名前書いとこう……ルイ……と。
お嬢様:むにゃむにゃ……。
お嬢様:
お嬢様:
0:執事、お嬢様のほっぺをぷにぷにしながら
執事:……というか、相変わらず面白い方ですね、お嬢様は。
執事:面と向かっては言えませんが、いつもありがとうございます。お嬢様のおかげで私は毎日楽しいですよ。
執事:ちなみに先程お渡したチョコは義理ではなく本命ですが……、それを伝えるのはまだやめておきましょうかね。