台本概要

 287 views 

タイトル 【第1話】爆食戦士アクアミート「こんな魔法少女なんて嫌ぁぁ!!」
作者名 ふらん☆くりん  (@Frank_lin01)
ジャンル コメディ
演者人数 3人用台本(男1、女2)
時間 60 分
台本使用規定 台本説明欄参照
説明 【あらすじ】
空前の魔法少女ブーム到来!驚異的な技術の進歩によって誰もが憧れの存在へと変身できる時代となった今、世界の闇を祓うべく一人の少女?が立ち上がる!

【著作権について】
本作品の著作権は全て作者である「ふらん☆くりん」に帰属します。
また、いかなる場合であっても当方は著作権の放棄はいたしません。

【禁止事項】
●商業目的での利用
●台本の無断使用、無断転載、自作発言等
●過度なアドリブ、セリフの大幅な改変等

【ご利用に際してのお願い】
●台本の利用に際しては作者X(旧ツイッター)DMに連絡をお願いいたします。
●配信等で利用される場合は①作品名、②作者名、③台本掲載URLを掲示していただけると嬉しいです。
●たくさんの方の演技を聴きに行きたいので、可能であれば告知文にメンションを付けていただけると嬉しいです。

 287 views 

キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
仁美 157 松嶋 仁美(まつしま ひとみ)35歳。中堅企業に勤めるOL。しっかり者で面倒見が良い。困っている人を見ると放っておけない性格。
響子 72 田村 響子(たむら きょうこ)34歳。仁美と同じ会社に勤めるOL。魔法少女の熱狂的なファン。新しい変身アイテムが発売される度に後先考えずに購入してしまう。
政信 85 荒木 政信(あらき まさのぶ)30歳。謎の組織に所属する一人の男。普段は冴えない感じだが、一度スイッチが入るとキャラが変わる。基本、人の話を聞かないゴーイングマイウェイタイプ。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
タイトル:【第1話】爆食戦士アクアミート「こんな魔法少女なんて嫌ぁぁ!!」 : 登場人物: 仁美:*松嶋 仁美《まつしま ひとみ》35歳。中堅企業に勤めるOL。しっかり者で面倒見が良い。困っている人を見ると放っておけない性格。 響子:*田村 響子《たむら きょうこ》34歳。仁美と同じ会社に勤めるOL。魔法少女の熱狂的なファン。新しい変身アイテムが発売される度に後先考えずに購入してしまう。 政信:*荒木 政信《あらき まさのぶ》30歳。謎の組織に所属する一人の男。普段は冴えない感じだが、一度スイッチが入るとキャラが変わる。基本、人の話を聞かないゴーイングマイウェイタイプ。 :(M)はモロノーグ(独白)、〈〉はト書き、()は心の声です。 : : 本編: 仁美:(M)「魔法少女」…それは、か弱き乙女達が変身アイテムでミラクルキュートなヒロインに変身し強大な悪に立ち向かう、子供から大人まで誰もが一度は憧れた特別な存在…だった。…今までは。 : 響子:ねぇ知ってる?こないだイビルレーベン社から新型変身アイテム「マジカルミストチェンジャー」が発売されたんだって! 仁美:へぇ、そうなんだ。 響子:それがね!めっちゃ凄いらしいのよ! 仁美:ふーん。今までのとどう違うのよ? 響子:ふふふ…聞いて驚け!何と!変身シーンがめちゃめちゃゴージャスで、たくさんのリボンに包まれて超絶キュートな魔法少女に変身できるらしいのよ!しかもね、実年齢不問で誰でも10代の女の子になれるんだって! 仁美:え!?10代!マジか…。えー、私も欲しいなぁ。うーん…でも次のボーナスまでだいぶ先だしなぁ。 響子:ふっふっふ…実は一足先に注文しちゃったのであった! 仁美:うそ!あんたまた買ったの?今月カツカツだって言ってたじゃん! 響子:そこはクレジットカード様のお力をお借りしてだね…。 仁美:言いなさい!何回払いで買ったのよ? 響子:に、20回…。 仁美:20回!って大丈夫?あんた前のローンも残ってんでしょ? 響子:…うん。あと5回分。はぁ…今月から一日一食の納豆ご飯生活に突入だわ…。 仁美:あんたねぇ。魔法少女も良いけど、ちゃんと食べるもん食べないと死んじゃうわよ。 響子:だって…だって!アラフォーがアイテム一つで10代のピチピチギャルになれるんだよ!こんなの買わない手はないじゃん! 仁美:そう言ってバッタもん*掴《つか》まされてたのはどちらさんでしたっけ? 響子:はう!…あれはたまたま運が悪かっただけで…。 仁美:ほほぅ…。だから今回は大丈夫だと? 響子:うん!今回は間違いないって私の中の何かがそう叫んでるんだ! 仁美:はぁ…懲りないわねぇ…。 響子:それでさ…仁美にちょっとお願いがあるんだけど…お金貸してくんない? 仁美:だーめ!良い歳こいたおばさんが自分の生活かなぐり捨ててまでやることじゃないでしょ!少しは反省しなさい。 響子:うー…仁美の意地悪。 仁美:それにね、そんなことやってるとマジで婚期逃しちゃうわよ。 響子:良いもーん!私は結婚よりも夢に生きる乙女だもん!それに、それを言うなら仁美も同じじゃない。 仁美:うぐっ…だから私も頑張ってんでしょーが! 響子:ねぇ仁美、お願いだから私より先に結婚しないでね。 仁美:どーよーかなぁ。響子がぐずぐずしてたら知らないうちに置いて行っちゃうかもよ? 響子:うぇぇん…そんなのヤダぁ! 仁美:はいはい。そろそろお昼終わっちゃうから仕事戻るわよ。 響子:はぁ…これが現実なのよね…。 仁美:そういうこと。ほら、文句言わずに行った行った。 響子:へーい…。 : 仁美:(M)この世はまさに空前の魔法少女ブーム。始まりは子供のおもちゃからだった。技術の進歩とは凄まじいもので、従来のようなフェイクではなく本当に変身できる商品が発売されたと知るや、夢見る大人の女性達を中心に爆発的に広まっていった。街には至る所で変身シーンが繰り広げられ、それを使った新たなショービジネスまで登場する始末。そして今や、女性なら持っていない人はいないと言われる程のメガヒット商品となった。かくいう私もその魅力に取り憑かれたうちの一人だ。 : 響子:ふぁああ!〈大きく伸びをする〉終わったぁ! 仁美:響子、お疲れ。 響子:仁美もね。私、今日は大事な用事があるから先に上がるね。 仁美:大事な用事?あんたまさか、魔法少女絡みじゃないでしょうね?、 響子:ギクッ!あはは…実は注文していた例のブツが届くから開封式の様子をネットで生配信することになってるの。だからお願い!残業だけは見逃して! 仁美:はぁ…仕方ないわね。今日だけよ。 響子:仁美ぃぃ!ありがとう!!やっぱり持つべき物は仁美様だぁ!〈泣きながら縋り付く〉 仁美:こら!離れろ、抱き着くな! 響子:うぇぇん!だってぇぇ! 仁美:まったくあんたときたら魔法少女の事となるとすぐに周りが見えなくなるんだから。ほんと大好きだよね。まあ楽しんどいで。 響子:えへへ…ありがとう!!この借りは必ず返すからね!〈足早に退社する〉 仁美:気を付けて帰るんだよ。…魔法少女かぁ。いやいや、そんなことより仕事仕事! : :-------------------その日の夜。 政信:はぁ…今日も契約取れなかった。やっぱり僕、営業向いてないのかな? 仁美:ああ…何だかんだで遅くなっちゃった。早く帰ってゆっくりしよっと。 政信:この変身ブレスレット…本当は凄いのにな。一体何がダメなんだろう…。 仁美:そういや響子、配信上手くいったかな?…良いなぁ…私もなれるものならもっと可愛く変身したいよ。 政信:ん?…変身?〈同時に〉 仁美:ん?…変身?〈同時に〉 政信:あの、ひょっとして、今「変身したい」っておっしゃいました? 仁美:え、ええ…言いましたけど。私もあなたから「変身ブレスレット」ってワードが聞こえたんですけど…おっしゃいました? 政信:はい!確かに言いました。もしかして、あなた魔法少女にご興味があったりしますか? 仁美:あ…いや…その…。 政信:その反応…さては興味ありますよね!間違いないですよね! 仁美:え…あ、ちょっと待ってくださ… 政信:〈セリフを被せて〉あぁ!!やっと!やっと見つけた!これで世界は救われる! 仁美:勝手に話を進めないでください!! 政信:ひぃぃ!ご、ごめんなさい!! 仁美:よろしい…。それでさっきの件ですが、あの、ちょっとだけなら変身ブレスレットの話を聞きたいかな…なんて。 政信:え?ほんとですか!じゃあ早速…と言いたい所ですが、ここじゃ誰かに話を聞かれる可能性もありますので場所を変えませんか? 仁美:え?そんなに聞かれちゃマズイ話なんですか? 政信:ええ。そうなんです。機密事項満載でして…。 仁美:じゃあ個室のあるレストランとかにします? 政信:いいえ。今から我々の組織の作戦会議室に転送しますので一緒に行きましょう!それっ! 仁美:え?転送?あ…ちょっと!!〈転送される〉 : :-------------------作戦会議室 仁美:…あれ?ここは? 政信:ようこそ。ここは我々、*侵略文明対策組織《しんりゃくぶんめいたいさくそしき》アークの作戦会議室となっております。申し遅れましたが、僕はここの人材スカウト部に所属しております*荒木 政信《あらき まさのぶ》と申します。よろしくお願いいたします。〈名刺を渡す〉 仁美:あ、どうも…。私は、*松嶋 仁美《まつしま ひとみ》と申します。よろしくお願いします。〈名刺を渡す〉 政信:へぇ、仁美さんって言うんですね。素敵なお名前ですね。 仁美:あ、ありがとうございます。 政信:それじゃあ早速お話の続きをさせていただきますね。 仁美:あ、その前に侵略文明対策組織って何ですか? 政信:それも含めてこれから説明しますよ。 仁美:あ、すみません。 政信:まず我々、侵略文明対策組織アークは文明を破壊しようとする異世界の侵略者からこの世界を守るために結成された秘密防衛組織なのです。 仁美:秘密防衛組織…?フィクションにしてはずいぶんと手の込んだ設定ですね? 政信:フィクション?何を言ってるんですか?これは真面目な話ですよ。 仁美:は、はぁ…。(え?もしかして私、とんでもない事に巻き込まれてる?) 政信:今、地球は闇の侵略者に狙われています。 仁美:まさか…そんなことなんてあるわけないじゃないですか。 政信:いいえ。それがあるんです。現に侵略作戦は水面下で着々と進んでいます。 仁美:で、でも…この世には溢れんばかりの魔法少女がいるじゃないですか。彼女らに任せておけば良いんじゃないですか? 政信:あんな物はただのコスプレの延長に過ぎません。それに*巷《ちまた》に溢れている変身アイテムは、単に外見を変えるだけの機能しかない*紛い物《まがいもの》です。そんなアイテムで変身した人間が何人*束《たば》になった所で、本物の侵略者に勝てるはずがないでしょう? 仁美:じゃ、じゃあ、あなたの言う変身ブレスレットって…。 政信:ええ。仁美さんには本物の魔法少女になって世界を救っていただきたいのです! 仁美:…私が…本物の魔法少女に…? 政信:そうです!さあ!共に世界を救いましょう! 仁美:あの…えっと…あまりにも唐突な話過ぎてまだ頭が追い付いていません。少し考える時間をいただいてもよろしいですか? 政信:ふむ…本当は今すぐにでもご契約いただきたい所ではありますが…分かりました。それでは後日、改めてあなたの意志を確認させていただきます。 仁美:はい。そうしていただけると助かります。 政信:本日はわざわざお越しいただき、ありがとうございました。それではあなたを元いた場所まで転送します。 仁美:よろしくお願いします。〈転送される〉 : 仁美:う…うん。ここは…あの人と出会った場所。良かった、ちゃんと送り届けてくれたのね。それにしても私が魔法少女かぁ…うふふ…なぁんてね。さぁて、帰るか。 : :-------------------翌日 仁美:響子おはよう。 響子:おはよう仁美。ふふふ…。 仁美:何朝からニヤついてんのよ? 響子:はぁ♡最高だわ♡ 仁美:へぇ、そんなに良かったの?新型の変身アイテム。 響子:何言ってるの…?良いなんてもんじゃないわ♡ 仁美:そうなんだ。羨ましいなぁ…私も買おうかしら。ねぇ、あんたのことだから会社に持って来てるんでしょ?後で私にも貸してよ。 響子:嫌よ!あれは私だけの物…誰にも触らせない…! 仁美:そ、そう…それなら良いわ。(どうしたんだろ?何かいつもと様子が違う気が…。) 響子:うふふ…早く帰って変身したいわ♡ 仁美:じゃあ今日も一日頑張りましょ。 響子:…。 仁美:響子、聞いてる? 響子:何?私は忙しいの。用がないならこれ以上話しかけないで。 仁美:あ…ごめん…。(やっぱり変だ。私何か気に障る事でもしたかしら?) : :-------------------昼休み 仁美:(やっぱり響子のあの態度は気になるわ。そういやあの子、昼休みだってのにどこに行ったんだろう?) 響子:はぁ♡…やっぱり帰るまでお預けなんて無理だわ!もう我慢出来ないの…♡ 仁美:(あ、響子だ。一体どこへ行くつもりかしら?ちょっと後を*尾《つ》けてみよう。) 響子:ふふふ…正式なお披露目はこれからだけど、こっそり楽しむ分には問題ないわよね? 仁美:(こっそり楽しむ?やっぱり会社で変身するつもりなのね。) 響子:この辺で良いかしら?さてと…〈変身アイテムを取り出す〉 仁美:(え?誰もいない会議室?こんな所で変身するの?) 響子:『全ての呪われし魂よ!我に闇の力を授けたまえ!ダークネスチェンジ!スタンバイ!』 仁美:(えっ…!?真っ黒いリボンが響子の体を包み込んでいく…。) 響子:〈変身完了〉『闇夜に咲くは漆黒の花、魔導戦士ミスティブラック見参♡さぁ、私の魅力に溺れなさい♡』 仁美:(凄い…本当に魔法少女になっちゃった…) 響子:そこにいるのは誰? 仁美:(しまった!気付かれた!)くっ!〈慌てて逃げ出す〉 響子:ふふふ…逃げても無駄だと言うのに…。見せてあげるわ!闇の力の素晴らしさを!ブラックワールド展開! 仁美:何これ?空間が闇に染まっていく! 響子:無駄な抵抗はやめなさい。ブラックワールドは永遠に続く闇のフィールド。私が作り出す漆黒の空間から逃げ出す術なんてないわ。ゆっくりといたぶってあげる♡ 仁美:(やばい!やばい!絶対おかしいって!何なのよこの状況は!) 政信:〈回想〉(今、地球は闇の侵略者に狙われています。現に侵略作戦は水面下で着々と進んでいます。) 仁美:(まさか…あの人が言ってた侵略作戦ってこの事なの?)とりあえずあの人に連絡しなきゃ!名刺…名刺は…。 響子:あらぁ?…誰かと思えば仁美、あなただったの? 仁美:ひぃっ!あなた…本当に響子…なの? 響子:そうよ!どうかしら?変身した私の姿は? 仁美:うそ…まるで別人だわ。信じられない…。 響子:嘘じゃないわ。私はこのアイテムを手にしてから生まれ変わったの。とあるお方にお仕えする忠実な戦士としてね! 仁美:お願い…助けて…。 響子:うふふ…だーめ♡あなたは見てはいけない物を見てしまった。だからここで私が闇に葬ってあげる♡ 仁美:いや…誰か、助けて! 響子:さぁ、大人しく死になさい! 仁美:きゃあああ!!!〈転送される〉 響子:ん?…消えた?ちっ!…誰だか知らないけどやってくれるじゃないの!まあ良いわ。次に会ったら目いっぱい可愛がってあげる。うふふ…。 : :-------------------侵略文明対策組織アークの作戦会議室 仁美:う…うーん。あ、あれ?確か私、響子に襲われて…。 政信:危なかったですね。まさに間一髪って感じでした。 仁美:え…荒木さん!?…それにどうして私ここにいるんですか? 政信:いやー、こんな事もあろうかとあなたに緊急転送装置を渡しておいて正解でしたよ。 仁美:緊急転送装置…?そんな物を受け取った覚えはないですけど? 政信:名刺ですよ、名刺。 仁美:名刺…? 政信:そうです。昨日お渡しした僕の名刺には、まさかの時のために所持者の心の悲鳴に呼応して自動的に転送する機能が組み込んでありました。そして先程の危機的状況に装置が反応し、それによってあなたはここに飛ばされたという次第です。 仁美:そうだったんですか。助かりました…。 政信:それで一つ確認したい事があるのですがよろしいですか? 仁美:は、はい。 政信:あなたはあそこで何を見たのですか? 仁美:私の親友、田村 響子が…新型の変身アイテムで闇の戦士になって私を殺そうと…あぁ…何なの!…一体何が起きているのよ! 政信:仁美さん、落ち着いてください。 仁美:はぁ…はぁ…ごめんなさい、取り乱してしまって。でもあれはただの変身アイテムなんかじゃない。きっと人間を邪悪な存在へと変えるとても恐ろしい物のように見えました。 政信:仁美さん、その響子さんという方は変身した際に何か言っていませんでしたか? 仁美:えっと…確か本人は「魔導戦士ミスティブラック」とか名乗っていました。あとは自分の事を「とある方にお仕えする忠実な戦士」だとも…。 政信:やはりそうですか…まさか奴らの侵略作戦がここまで進んでいたとは…。 仁美:じゃあ昨日言ってた事って…。 政信:ええ。全て本当のことです。しかも事態はかなり深刻な所まで来ています。この世界に実害が出るのも時間の問題かもしれません。 仁美:そう言えば、「正式なお披露目はこれから」とも話していました。 政信:何ですって!?その話が本当なら、奴らは近々人類に対して総攻撃を仕掛けて来るに違いありません! 仁美:そんな…じゃあ私たちはもう…。 政信:ええ。そうなったら我々人類に対抗する術はありません。一方的に*嬲《なぶ》り殺されて終わりでしょうね。 仁美:あぁ…最悪だわ…。 政信:だからこそ、我々にも奴らに対抗する力が必要なのです。こんな時に申し訳ありませんが、もう時間がありません。仁美さんにはぜひこのブレスレットで魔法少女に変身して、奴らの魔の手から人類を救っていただきたいのです! 仁美:…分かりました。この手で侵略者の手から世界を救い、響子を元に戻すことが出来るなら喜んでやらせていただきます! 政信:おお!それはありがたい!それではまず、認証登録をさせていただきますので、こちらの画面から個人情報を入力したうえで、このスキャナーの上に手を置いてください。 仁美:〈個人情報を入力してスキャナーに手を置く〉はい…これで良いですか? 政信:大丈夫です。これであなたは我が組織の専属魔法少女として登録されました。次に、具体的な説明に移らせていただきます。あなたはこれから魔法少女「爆食戦士アクアミート」として侵略者と戦っていただきます。そしてこれが… 仁美:〈セリフを遮って〉ちょ!ちょっと良いですか? 政信:はい。どうしました? 仁美:そのネーミング、どうにかなりませんか? 政信:と、申しますと? 仁美:「爆食戦士アクアミート」って何と言うか…魔法少女っぽくないと言うか、ただの大食いのイメージしか伝わって来なくて、いまいち戦う気が起きないんですけど…。 政信:仁美さん、良いですか。我々人類にはもう一刻の猶予もありません。そんな小さな事を気にしていては世界はあっという間に侵略者の手に堕ちてしまうのですよ! 仁美:(小さな事って…。)そ、そうですよね。ごめんなさい。続けてください。 政信:コホン。そしてこれが我が組織が開発した最新型変身ブレスレット、名付けて「ミラクルファットイリュージョン」です! 仁美:あー…もう完全にそっち路線ですよね?開発者アタマ*湧《わ》いてんなぁ…。 政信:つべこべ言わずにこれを腕にはめてください。 仁美:あ…はい。〈ブレスレットを腕にはめる〉 政信:よろしい。ではブレスレットをはめた腕を高々と真上に上げながらこう叫んでください! 政信:『メタボルフォーゼ!!』 仁美:『め…メタボルフォーゼ!!』(…げっ、何これ!体がギトギトのラードに包まれていく…気持ち悪っ!) 政信:さぁ!ここからが変身シーンのクライマックスですよ!変身後はかっこよく次のセリフで決めちゃってください!『*滴《したた》る汗は元気の証!爆食戦士アクアミート見参!』 仁美:〈変身後〉(えぇい!こうなりゃヤケクソよ!)『*滴《したた》る汗は元気の証!爆食戦士アクアミート見参!』 政信:〈拍手しながら〉いやぁ、実に素晴らしい!!そうですねぇ…欲を言えば最後に『あなたの全て、食べちゃうぞ♡』と可愛く決めてくれれば完璧です。 仁美:…え?それマジで言わないといけませんか?いろんな意味でマズイ気がするのですが…。 政信:決めゼリフはその後のモチベーションに大きく影響いたしますので必ず言ってくださいね。 仁美:はぁ…分かりました。(逆にこっちはテンションだだ下がりなんですけど!) 政信:ここまでが変身までの一連の流れです。ではもう一度おさらいしてみましょう。 仁美:いえ!もう覚えたので大丈夫です! 政信:そうですか…ですが念の為もう一度… 仁美:〈セリフを遮って〉いいえ!もう完璧ですから!(こんなの何度もやってたらメンタルが持たないわよ!) 政信:ふむ…そうですか。残念です。 仁美:あなた今残念って言いましたよね? 政信:ええ。言いましたけど何か? 仁美:(素直に認めやがった…。)結局あなたが見たいだけじゃないですか! 政信:まあまあ、そうカッカしないでください。それはそうと、変身してみた感じはいかがですか? 仁美:あ、えっと…自分じゃ良く分かんないんですけど、特に若返ったりしている感覚はないですね…むしろ変身前より体が重くなった気がします。あと全身がヌルヌルしていて気持ち悪いのは何故なんですか? 政信:よくぞ気付いてくれました!それは我が組織が技術の*粋《すい》を結集して作り上げた特殊コーティングでして、まあ言ってみればあらゆる物理攻撃を受け流すシールドのような物です。また、圧倒的なパワーと引き替えに体重が2倍になっておりますが、その辺はご愛嬌という事で。 仁美:へ、へぇー…そうなんですね。(もはや凄いのか凄くないのか分からなくなって来たわ…。) 政信:ちなみに変身を解く時は『今日も満腹!ごちそうさま!』って唱えれば元の姿に戻れますよ。 仁美:(何それ、恥っず)…分かりました。『今日も満腹!ごちそうさま!』〈変身が解除される〉 政信:仁美さん、お疲れ様でした。 仁美:ふぅ…やっと楽になった。あ、そういや大事な事を聞き忘れていましたが、攻撃するための武器や魔法はないんですか? 政信:武器はボンレスハム形超大型格闘兵器、名付けて「ラブリーミートハンマー」を使ってください。普段はブレスレットに格納されていますので、使用時に青いボタンを押しながら武器名を叫べばいつでも呼び出すことが出来ます。あと魔法は…特にないです。 仁美:そう…何かもうツッこむ気力も起きないです。それより!魔法がないってどういう事ですか! 政信:やだなぁ仁美さんったら何を言っているんですか?魔法少女と言えば物理攻撃で敵をボコボコにしていくのがセオリーでしょうに。魔法なんてただの演出に過ぎません。 仁美:えっと…魔法少女の意味とは…? 政信:まあ強いて言えば武器自体に聖なる力が込められているので、それで相手をぶっ潰すことで闇の力を浄化することが出来るはずです。 仁美:あの…それだと闇の力以前に本体もぐちゃぐちゃになるんじゃ…。 政信:大丈夫です!多分…。 仁美:おい! 政信:ちなみに必殺技の名は…。 仁美:〈セリフを遮って〉結構です!自分で決めますから!(これ以上恥ずかしい技名叫ばされたらたまんないわよ!) 政信:ふむ、そうですか…。他に聞きたいことはありますか? 仁美:はぁ…。〈溜息〉いえ、特には。 政信:よろしい。なお、今後は僕が仁美さんの専属バディとしてサポートしますのでよろしくお願いします。また、必要な情報はブレスレットを通して*逐次《ちくじ》お伝えいたしますので。 仁美:分かりました。よろしくお願いします。えっと…。 政信:*政信《まさのぶ》と呼んでください。あと敬語も不要です。 仁美:それじゃ遠慮なく。政信さんよろしくね。 政信:こちらこそよろしくな!仁美! 仁美:(呼び捨て?しかも妙に馴れ馴れしい所が腹立つ!けど、ここは我慢、我慢…。) 仁美:え、ええ。 政信:そんじゃまあ、いざ出陣と行きますか!仁美、準備は良いか? 仁美:はいはい…て言うか、あんたキャラ変わりすぎ! 政信:目標、ポイント*A503《えーごーまるさん》行っくぜぇぇぇ!!転送ぉぉ!! : :-------------------仁美の会社にて 仁美:〈転送される〉ここは? 政信:〈通信〉「無事に目標地点に着いたようだな。良いか仁美。君を襲った敵はすぐ近くにいるはずだ。くれぐれも気を付けろよ!」 仁美:でしょうね!だってここ、うちの会社の屋上だもん!それに普通こういうのって人的被害が出ないように誰もいない空き地とかでやるもんじゃないの?ここじゃ襲って来られても逃げ場ないじゃない! 政信:「文句言うなよ。「*虎穴《こけつ》に*入《い》らずんば*虎子《こじ》を得ず」って言うだろう?これが一番手っ取り早いんだよ。」 仁美:はぁ…分かったわよ。全く…こっちは色々と心の準備が出来てないって言うのに…。 響子:あらあら、屋上で何やら大きな声がすると思ったら、さっき仕留め損ねた子猫ちゃんじゃない。 仁美:き、響子! 響子:わざわざ私のために戻って来てくれるなんて本当に嬉しいわぁ♡ 仁美:響子!良い加減目を覚まして! 響子:うふふ…あなた変なことを言うのね?私はとっくに目が覚めてるわよ。新たに手にしたこの闇の力によってね!さぁ今度こそ逃がさないわよ。覚悟しなさい♡ 響子:『全ての呪われし魂よ!我に闇の力を授けたまえ!ダークネスチェンジ!スタンバイ!』〈響子の体が漆黒のリボンに包まれる〉 響子:〈変身完了〉『闇夜に咲くは漆黒の花、魔導戦士ミスティブラック見参♡さぁ、私の魅力に溺れなさい♡』 仁美:くっ…やるしかないのね。行くわよ! 響子:何? 仁美:『メタボルフォーゼ!!』〈仁美の体がギトギトのラードに包まれる〉 仁美:〈変身完了〉『*滴《したた》る汗は元気の証!爆食戦士アクアミート見参!あなたの全て、食べちゃうぞ♡』 響子:…おい、何だそのダサいセリフとヘンテコな変身は。馬鹿にしてんのか? 仁美:ほらぁ!だから嫌だったのよ!こんな空気になるって分かってたからさぁ! 政信:「よし!とりあえずは変身成功だな!そのままぶっ潰せ!」 仁美:できるかぁぁ!!あんたね!こんなメンタルボロボロの状態で戦えるわけないでしょーが!それに、こんな所で戦ったらうちの会社消し飛ぶわ! 政信:「大丈夫だ。気にする程の事でもない。」 仁美:気にするわ!! 響子:急に変身したかと思ったら、私を前にしてどこまでも*舐《な》めた態度を取るのね。良いわ!それじゃあなたが存分に戦えるよう私のフィールドに*誘《いざな》ってあげる。ブラックワールド展開!〈空間が闇に染まっていく〉 仁美:(くっ…またこの魔法ね!) 響子:うふふ…これで周りを気にすることなく思う存分戦えるわよ。あ、そうそう、一つ良いことを教えてあげる。このフィールド内では私のステイタスは全て2倍になるの。だから万に一つもあなたに勝ち目なんて…〈仁美が目の前から消える〉 響子:うそ…消えた? 仁美:うぉりゃあああ!!〈響子の背後から蹴りを入れる〉 響子:ぐぁあああ!!〈背中を蹴られ飛ばされる〉 仁美:聞こえなかったわ。万に一つも…何だって? 響子:ぐっ…許さない…お前だけは絶対に許さない!!はああああ!!〈仁美めがけて殴り掛かる〉 仁美:無駄よ。 響子:〈攻撃がヌルっと受け流される〉何っ!私の攻撃が滑って…。 仁美:そんな攻撃私には効かないわよ!…っと。〈体勢を崩した所を蹴り飛ばす〉 響子:きゃあああ!!〈吹き飛ぶ〉 仁美:凄い…何故だか分かんないけど、どんどん力が*漲《みなぎ》っていくわ! 響子:はぁ…はぁ…馬鹿な。この私が、あんなふざけた奴に手も足も出ないなんて…。 仁美:諦めなさい。外見だけで判断したあなたの負けよ。 響子:ふ…ふふふ…。 仁美:ん?何がおかしいの? 響子:やっぱり第一形態じゃこんなもんか。 仁美:第一形態? 政信:「仁美!気を付けろ!奴の魔力が爆発的に増大している!こいつはかなりヤバいぞ!」 仁美:一体何が起きているの? 響子:見せてあげる。私の真の姿をね!闇進化『*影憑き《かげつき》』〈響子の姿が人外の物に変貌していく〉 仁美:何よ…アレ?響子の姿が悪魔の姿に変貌していく! 響子:〈進化完了〉フフフ…さっきまでの威勢はどうした? 仁美:くそっ!はああああ!!〈響子に殴り掛かる〉 仁美:え…?(嘘でしょ!攻撃が通らない!) 響子:ん?今何かしたのか?ふん!〈仁美の顔を殴る〉 仁美:きゃあああ!!!〈吹き飛ばされる〉 響子:フフフ…アハハハハ!!これは愉快だ!あのお方の力を借りた今の私に勝てる者などいないわ! 仁美:が…がはっ…。つ、強い…こんなの聞いてないわよ。まさか…特殊コーティングも役に立たないなんて…。 政信:「仁美!大丈夫か!」 仁美:うぅ…とりあえずは…まだ生きてるみたい。でもこのままじゃ…。 響子:さて、私を馬鹿にした報い、その身を*以《もっ》て受けてもらうぞ! 政信:「仁美!武器を使え!」 仁美:で、できる訳ないじゃない…あんなの使ったら響子が…死んじゃう。 政信:「まさかお前、そんな事を気にして…。」 仁美:〈ゆらりと立ち上がる〉ぐっ…当たり前じゃない…響子は私の大切な親友なんだから! 響子:ほう…まだ立ち上がる力があったとはな。その根性だけは認めてやろう。だが、お前と遊ぶのもいささか飽きた。次で終わりにしてやる。私の最大奥義でな!はああああ!!〈響子の目の前に巨大な魔力の塊が形成される〉 政信:「仁美!もう良い!今すぐそこから離脱しろ!」 響子:もう遅い!闇の力を凝縮したこの*魔光弾《まこうだん》で塵一つ残さず消え去るが良い!くらえ!「メテオバースト」!!〈巨大な魔力の塊が仁美に向かう〉 仁美:…誰が逃げるもんですか…私は響子を取り戻すんだ!*顕現《けんげん》せよ!「ラブリーミートハンマー」!! 響子:フハハハハ!今さらそんなおもちゃで何をしようと言うのだ?無駄な悪あがきは辞めて素直に死を受け入れろ! 政信:「仁美ぃぃぃ!!!」 仁美:(私はこの時を待っていた!)行くわよ!必殺!「ギガンティック・ミートクラッシャー」!!!どぉりゃあああ!!!〈魔光弾をハンマーで打ち返す〉 響子:な!馬鹿な!私のメテオバーストを打ち返しただと!!ま、まずい!魔光弾の威力に聖なる力がプラスされてどんどん膨れ上がっていく…あぁダメぇ!かわせない!!グギャアアアア!!!! : 仁美:はぁ…はぁ…や、やったわ。 政信:「凄い…完全に闇の力が浄化されている。」 仁美:漆黒の空間が元に戻っていく…私、闇の力に勝ったのね! 政信:「仁美、お疲れ様。本当によくやった。君は見事親友の命と世界の危機を同時に救ったんだ。」 仁美:まだよ…まだ響子をこんな風にした親玉が残っているわ! 政信:「ああ、そうだな。だが君の活躍で奴らも戦力を大きく削られたはずだ。しばらくは何も仕掛けて来ないさ。」 仁美:そうだと良いけど…。 政信:「とりあえずはゆっくり休んでくれ。あ、それと響子さんの記憶はこちらで書き換えておく。そうだな…階段から落ちたという事にでもしておこうか。」 仁美:まぁ便利だこと…分かったわ。じゃあね政信。 政信:「ああ。お疲れ。」〈通信切れる〉 仁美:さてと…変身を解くか。『今日も満腹!ごちそうさま!』〈変身が解除される〉 : :-------------------数日後 響子:あ…あれ?ここは? 仁美:響子!ようやく目を覚ましたのね!良かった…ここは病院よ。 響子:病院?何で私こんな所にいるの? 仁美:階段から落ちたって聞いた時は本当に驚いたわよ。 響子:え?私階段から落ちたの? 仁美:そうよ。たまたま私が近くにいたから良かったけど。そうじゃなかったら危なかったんだからね。 響子:そっか…ありがとう、仁美。 仁美:ううん。響子が無事でいてくれたらそれで良いの。 : 政信:(M)こうして、突如現れた魔法少女による一連の騒動は、仁美…いや、爆食戦士アクアミートの活躍により無事解決した。だが時を同じくして、侵略者による恐ろしい計画が今まさに遂行されようとしている事など、この時の我々に知る*由《よし》もなかった。 : :-------------------【 次回予告 】 仁美:(M)響子の一件以来、平和な日々を送る私の元に一通の手紙が届く。その中身は何と果たし状だった。一体誰から?困惑する私に侵略者の魔の手が忍び寄る。次回、爆食戦士アクアミート第2話「えっ!?魔法少女失格?」。あなたの全て、食べちゃうぞ♡…ってやっぱり恥ずかしいよ!このセリフ!! : :~完~

タイトル:【第1話】爆食戦士アクアミート「こんな魔法少女なんて嫌ぁぁ!!」 : 登場人物: 仁美:*松嶋 仁美《まつしま ひとみ》35歳。中堅企業に勤めるOL。しっかり者で面倒見が良い。困っている人を見ると放っておけない性格。 響子:*田村 響子《たむら きょうこ》34歳。仁美と同じ会社に勤めるOL。魔法少女の熱狂的なファン。新しい変身アイテムが発売される度に後先考えずに購入してしまう。 政信:*荒木 政信《あらき まさのぶ》30歳。謎の組織に所属する一人の男。普段は冴えない感じだが、一度スイッチが入るとキャラが変わる。基本、人の話を聞かないゴーイングマイウェイタイプ。 :(M)はモロノーグ(独白)、〈〉はト書き、()は心の声です。 : : 本編: 仁美:(M)「魔法少女」…それは、か弱き乙女達が変身アイテムでミラクルキュートなヒロインに変身し強大な悪に立ち向かう、子供から大人まで誰もが一度は憧れた特別な存在…だった。…今までは。 : 響子:ねぇ知ってる?こないだイビルレーベン社から新型変身アイテム「マジカルミストチェンジャー」が発売されたんだって! 仁美:へぇ、そうなんだ。 響子:それがね!めっちゃ凄いらしいのよ! 仁美:ふーん。今までのとどう違うのよ? 響子:ふふふ…聞いて驚け!何と!変身シーンがめちゃめちゃゴージャスで、たくさんのリボンに包まれて超絶キュートな魔法少女に変身できるらしいのよ!しかもね、実年齢不問で誰でも10代の女の子になれるんだって! 仁美:え!?10代!マジか…。えー、私も欲しいなぁ。うーん…でも次のボーナスまでだいぶ先だしなぁ。 響子:ふっふっふ…実は一足先に注文しちゃったのであった! 仁美:うそ!あんたまた買ったの?今月カツカツだって言ってたじゃん! 響子:そこはクレジットカード様のお力をお借りしてだね…。 仁美:言いなさい!何回払いで買ったのよ? 響子:に、20回…。 仁美:20回!って大丈夫?あんた前のローンも残ってんでしょ? 響子:…うん。あと5回分。はぁ…今月から一日一食の納豆ご飯生活に突入だわ…。 仁美:あんたねぇ。魔法少女も良いけど、ちゃんと食べるもん食べないと死んじゃうわよ。 響子:だって…だって!アラフォーがアイテム一つで10代のピチピチギャルになれるんだよ!こんなの買わない手はないじゃん! 仁美:そう言ってバッタもん*掴《つか》まされてたのはどちらさんでしたっけ? 響子:はう!…あれはたまたま運が悪かっただけで…。 仁美:ほほぅ…。だから今回は大丈夫だと? 響子:うん!今回は間違いないって私の中の何かがそう叫んでるんだ! 仁美:はぁ…懲りないわねぇ…。 響子:それでさ…仁美にちょっとお願いがあるんだけど…お金貸してくんない? 仁美:だーめ!良い歳こいたおばさんが自分の生活かなぐり捨ててまでやることじゃないでしょ!少しは反省しなさい。 響子:うー…仁美の意地悪。 仁美:それにね、そんなことやってるとマジで婚期逃しちゃうわよ。 響子:良いもーん!私は結婚よりも夢に生きる乙女だもん!それに、それを言うなら仁美も同じじゃない。 仁美:うぐっ…だから私も頑張ってんでしょーが! 響子:ねぇ仁美、お願いだから私より先に結婚しないでね。 仁美:どーよーかなぁ。響子がぐずぐずしてたら知らないうちに置いて行っちゃうかもよ? 響子:うぇぇん…そんなのヤダぁ! 仁美:はいはい。そろそろお昼終わっちゃうから仕事戻るわよ。 響子:はぁ…これが現実なのよね…。 仁美:そういうこと。ほら、文句言わずに行った行った。 響子:へーい…。 : 仁美:(M)この世はまさに空前の魔法少女ブーム。始まりは子供のおもちゃからだった。技術の進歩とは凄まじいもので、従来のようなフェイクではなく本当に変身できる商品が発売されたと知るや、夢見る大人の女性達を中心に爆発的に広まっていった。街には至る所で変身シーンが繰り広げられ、それを使った新たなショービジネスまで登場する始末。そして今や、女性なら持っていない人はいないと言われる程のメガヒット商品となった。かくいう私もその魅力に取り憑かれたうちの一人だ。 : 響子:ふぁああ!〈大きく伸びをする〉終わったぁ! 仁美:響子、お疲れ。 響子:仁美もね。私、今日は大事な用事があるから先に上がるね。 仁美:大事な用事?あんたまさか、魔法少女絡みじゃないでしょうね?、 響子:ギクッ!あはは…実は注文していた例のブツが届くから開封式の様子をネットで生配信することになってるの。だからお願い!残業だけは見逃して! 仁美:はぁ…仕方ないわね。今日だけよ。 響子:仁美ぃぃ!ありがとう!!やっぱり持つべき物は仁美様だぁ!〈泣きながら縋り付く〉 仁美:こら!離れろ、抱き着くな! 響子:うぇぇん!だってぇぇ! 仁美:まったくあんたときたら魔法少女の事となるとすぐに周りが見えなくなるんだから。ほんと大好きだよね。まあ楽しんどいで。 響子:えへへ…ありがとう!!この借りは必ず返すからね!〈足早に退社する〉 仁美:気を付けて帰るんだよ。…魔法少女かぁ。いやいや、そんなことより仕事仕事! : :-------------------その日の夜。 政信:はぁ…今日も契約取れなかった。やっぱり僕、営業向いてないのかな? 仁美:ああ…何だかんだで遅くなっちゃった。早く帰ってゆっくりしよっと。 政信:この変身ブレスレット…本当は凄いのにな。一体何がダメなんだろう…。 仁美:そういや響子、配信上手くいったかな?…良いなぁ…私もなれるものならもっと可愛く変身したいよ。 政信:ん?…変身?〈同時に〉 仁美:ん?…変身?〈同時に〉 政信:あの、ひょっとして、今「変身したい」っておっしゃいました? 仁美:え、ええ…言いましたけど。私もあなたから「変身ブレスレット」ってワードが聞こえたんですけど…おっしゃいました? 政信:はい!確かに言いました。もしかして、あなた魔法少女にご興味があったりしますか? 仁美:あ…いや…その…。 政信:その反応…さては興味ありますよね!間違いないですよね! 仁美:え…あ、ちょっと待ってくださ… 政信:〈セリフを被せて〉あぁ!!やっと!やっと見つけた!これで世界は救われる! 仁美:勝手に話を進めないでください!! 政信:ひぃぃ!ご、ごめんなさい!! 仁美:よろしい…。それでさっきの件ですが、あの、ちょっとだけなら変身ブレスレットの話を聞きたいかな…なんて。 政信:え?ほんとですか!じゃあ早速…と言いたい所ですが、ここじゃ誰かに話を聞かれる可能性もありますので場所を変えませんか? 仁美:え?そんなに聞かれちゃマズイ話なんですか? 政信:ええ。そうなんです。機密事項満載でして…。 仁美:じゃあ個室のあるレストランとかにします? 政信:いいえ。今から我々の組織の作戦会議室に転送しますので一緒に行きましょう!それっ! 仁美:え?転送?あ…ちょっと!!〈転送される〉 : :-------------------作戦会議室 仁美:…あれ?ここは? 政信:ようこそ。ここは我々、*侵略文明対策組織《しんりゃくぶんめいたいさくそしき》アークの作戦会議室となっております。申し遅れましたが、僕はここの人材スカウト部に所属しております*荒木 政信《あらき まさのぶ》と申します。よろしくお願いいたします。〈名刺を渡す〉 仁美:あ、どうも…。私は、*松嶋 仁美《まつしま ひとみ》と申します。よろしくお願いします。〈名刺を渡す〉 政信:へぇ、仁美さんって言うんですね。素敵なお名前ですね。 仁美:あ、ありがとうございます。 政信:それじゃあ早速お話の続きをさせていただきますね。 仁美:あ、その前に侵略文明対策組織って何ですか? 政信:それも含めてこれから説明しますよ。 仁美:あ、すみません。 政信:まず我々、侵略文明対策組織アークは文明を破壊しようとする異世界の侵略者からこの世界を守るために結成された秘密防衛組織なのです。 仁美:秘密防衛組織…?フィクションにしてはずいぶんと手の込んだ設定ですね? 政信:フィクション?何を言ってるんですか?これは真面目な話ですよ。 仁美:は、はぁ…。(え?もしかして私、とんでもない事に巻き込まれてる?) 政信:今、地球は闇の侵略者に狙われています。 仁美:まさか…そんなことなんてあるわけないじゃないですか。 政信:いいえ。それがあるんです。現に侵略作戦は水面下で着々と進んでいます。 仁美:で、でも…この世には溢れんばかりの魔法少女がいるじゃないですか。彼女らに任せておけば良いんじゃないですか? 政信:あんな物はただのコスプレの延長に過ぎません。それに*巷《ちまた》に溢れている変身アイテムは、単に外見を変えるだけの機能しかない*紛い物《まがいもの》です。そんなアイテムで変身した人間が何人*束《たば》になった所で、本物の侵略者に勝てるはずがないでしょう? 仁美:じゃ、じゃあ、あなたの言う変身ブレスレットって…。 政信:ええ。仁美さんには本物の魔法少女になって世界を救っていただきたいのです! 仁美:…私が…本物の魔法少女に…? 政信:そうです!さあ!共に世界を救いましょう! 仁美:あの…えっと…あまりにも唐突な話過ぎてまだ頭が追い付いていません。少し考える時間をいただいてもよろしいですか? 政信:ふむ…本当は今すぐにでもご契約いただきたい所ではありますが…分かりました。それでは後日、改めてあなたの意志を確認させていただきます。 仁美:はい。そうしていただけると助かります。 政信:本日はわざわざお越しいただき、ありがとうございました。それではあなたを元いた場所まで転送します。 仁美:よろしくお願いします。〈転送される〉 : 仁美:う…うん。ここは…あの人と出会った場所。良かった、ちゃんと送り届けてくれたのね。それにしても私が魔法少女かぁ…うふふ…なぁんてね。さぁて、帰るか。 : :-------------------翌日 仁美:響子おはよう。 響子:おはよう仁美。ふふふ…。 仁美:何朝からニヤついてんのよ? 響子:はぁ♡最高だわ♡ 仁美:へぇ、そんなに良かったの?新型の変身アイテム。 響子:何言ってるの…?良いなんてもんじゃないわ♡ 仁美:そうなんだ。羨ましいなぁ…私も買おうかしら。ねぇ、あんたのことだから会社に持って来てるんでしょ?後で私にも貸してよ。 響子:嫌よ!あれは私だけの物…誰にも触らせない…! 仁美:そ、そう…それなら良いわ。(どうしたんだろ?何かいつもと様子が違う気が…。) 響子:うふふ…早く帰って変身したいわ♡ 仁美:じゃあ今日も一日頑張りましょ。 響子:…。 仁美:響子、聞いてる? 響子:何?私は忙しいの。用がないならこれ以上話しかけないで。 仁美:あ…ごめん…。(やっぱり変だ。私何か気に障る事でもしたかしら?) : :-------------------昼休み 仁美:(やっぱり響子のあの態度は気になるわ。そういやあの子、昼休みだってのにどこに行ったんだろう?) 響子:はぁ♡…やっぱり帰るまでお預けなんて無理だわ!もう我慢出来ないの…♡ 仁美:(あ、響子だ。一体どこへ行くつもりかしら?ちょっと後を*尾《つ》けてみよう。) 響子:ふふふ…正式なお披露目はこれからだけど、こっそり楽しむ分には問題ないわよね? 仁美:(こっそり楽しむ?やっぱり会社で変身するつもりなのね。) 響子:この辺で良いかしら?さてと…〈変身アイテムを取り出す〉 仁美:(え?誰もいない会議室?こんな所で変身するの?) 響子:『全ての呪われし魂よ!我に闇の力を授けたまえ!ダークネスチェンジ!スタンバイ!』 仁美:(えっ…!?真っ黒いリボンが響子の体を包み込んでいく…。) 響子:〈変身完了〉『闇夜に咲くは漆黒の花、魔導戦士ミスティブラック見参♡さぁ、私の魅力に溺れなさい♡』 仁美:(凄い…本当に魔法少女になっちゃった…) 響子:そこにいるのは誰? 仁美:(しまった!気付かれた!)くっ!〈慌てて逃げ出す〉 響子:ふふふ…逃げても無駄だと言うのに…。見せてあげるわ!闇の力の素晴らしさを!ブラックワールド展開! 仁美:何これ?空間が闇に染まっていく! 響子:無駄な抵抗はやめなさい。ブラックワールドは永遠に続く闇のフィールド。私が作り出す漆黒の空間から逃げ出す術なんてないわ。ゆっくりといたぶってあげる♡ 仁美:(やばい!やばい!絶対おかしいって!何なのよこの状況は!) 政信:〈回想〉(今、地球は闇の侵略者に狙われています。現に侵略作戦は水面下で着々と進んでいます。) 仁美:(まさか…あの人が言ってた侵略作戦ってこの事なの?)とりあえずあの人に連絡しなきゃ!名刺…名刺は…。 響子:あらぁ?…誰かと思えば仁美、あなただったの? 仁美:ひぃっ!あなた…本当に響子…なの? 響子:そうよ!どうかしら?変身した私の姿は? 仁美:うそ…まるで別人だわ。信じられない…。 響子:嘘じゃないわ。私はこのアイテムを手にしてから生まれ変わったの。とあるお方にお仕えする忠実な戦士としてね! 仁美:お願い…助けて…。 響子:うふふ…だーめ♡あなたは見てはいけない物を見てしまった。だからここで私が闇に葬ってあげる♡ 仁美:いや…誰か、助けて! 響子:さぁ、大人しく死になさい! 仁美:きゃあああ!!!〈転送される〉 響子:ん?…消えた?ちっ!…誰だか知らないけどやってくれるじゃないの!まあ良いわ。次に会ったら目いっぱい可愛がってあげる。うふふ…。 : :-------------------侵略文明対策組織アークの作戦会議室 仁美:う…うーん。あ、あれ?確か私、響子に襲われて…。 政信:危なかったですね。まさに間一髪って感じでした。 仁美:え…荒木さん!?…それにどうして私ここにいるんですか? 政信:いやー、こんな事もあろうかとあなたに緊急転送装置を渡しておいて正解でしたよ。 仁美:緊急転送装置…?そんな物を受け取った覚えはないですけど? 政信:名刺ですよ、名刺。 仁美:名刺…? 政信:そうです。昨日お渡しした僕の名刺には、まさかの時のために所持者の心の悲鳴に呼応して自動的に転送する機能が組み込んでありました。そして先程の危機的状況に装置が反応し、それによってあなたはここに飛ばされたという次第です。 仁美:そうだったんですか。助かりました…。 政信:それで一つ確認したい事があるのですがよろしいですか? 仁美:は、はい。 政信:あなたはあそこで何を見たのですか? 仁美:私の親友、田村 響子が…新型の変身アイテムで闇の戦士になって私を殺そうと…あぁ…何なの!…一体何が起きているのよ! 政信:仁美さん、落ち着いてください。 仁美:はぁ…はぁ…ごめんなさい、取り乱してしまって。でもあれはただの変身アイテムなんかじゃない。きっと人間を邪悪な存在へと変えるとても恐ろしい物のように見えました。 政信:仁美さん、その響子さんという方は変身した際に何か言っていませんでしたか? 仁美:えっと…確か本人は「魔導戦士ミスティブラック」とか名乗っていました。あとは自分の事を「とある方にお仕えする忠実な戦士」だとも…。 政信:やはりそうですか…まさか奴らの侵略作戦がここまで進んでいたとは…。 仁美:じゃあ昨日言ってた事って…。 政信:ええ。全て本当のことです。しかも事態はかなり深刻な所まで来ています。この世界に実害が出るのも時間の問題かもしれません。 仁美:そう言えば、「正式なお披露目はこれから」とも話していました。 政信:何ですって!?その話が本当なら、奴らは近々人類に対して総攻撃を仕掛けて来るに違いありません! 仁美:そんな…じゃあ私たちはもう…。 政信:ええ。そうなったら我々人類に対抗する術はありません。一方的に*嬲《なぶ》り殺されて終わりでしょうね。 仁美:あぁ…最悪だわ…。 政信:だからこそ、我々にも奴らに対抗する力が必要なのです。こんな時に申し訳ありませんが、もう時間がありません。仁美さんにはぜひこのブレスレットで魔法少女に変身して、奴らの魔の手から人類を救っていただきたいのです! 仁美:…分かりました。この手で侵略者の手から世界を救い、響子を元に戻すことが出来るなら喜んでやらせていただきます! 政信:おお!それはありがたい!それではまず、認証登録をさせていただきますので、こちらの画面から個人情報を入力したうえで、このスキャナーの上に手を置いてください。 仁美:〈個人情報を入力してスキャナーに手を置く〉はい…これで良いですか? 政信:大丈夫です。これであなたは我が組織の専属魔法少女として登録されました。次に、具体的な説明に移らせていただきます。あなたはこれから魔法少女「爆食戦士アクアミート」として侵略者と戦っていただきます。そしてこれが… 仁美:〈セリフを遮って〉ちょ!ちょっと良いですか? 政信:はい。どうしました? 仁美:そのネーミング、どうにかなりませんか? 政信:と、申しますと? 仁美:「爆食戦士アクアミート」って何と言うか…魔法少女っぽくないと言うか、ただの大食いのイメージしか伝わって来なくて、いまいち戦う気が起きないんですけど…。 政信:仁美さん、良いですか。我々人類にはもう一刻の猶予もありません。そんな小さな事を気にしていては世界はあっという間に侵略者の手に堕ちてしまうのですよ! 仁美:(小さな事って…。)そ、そうですよね。ごめんなさい。続けてください。 政信:コホン。そしてこれが我が組織が開発した最新型変身ブレスレット、名付けて「ミラクルファットイリュージョン」です! 仁美:あー…もう完全にそっち路線ですよね?開発者アタマ*湧《わ》いてんなぁ…。 政信:つべこべ言わずにこれを腕にはめてください。 仁美:あ…はい。〈ブレスレットを腕にはめる〉 政信:よろしい。ではブレスレットをはめた腕を高々と真上に上げながらこう叫んでください! 政信:『メタボルフォーゼ!!』 仁美:『め…メタボルフォーゼ!!』(…げっ、何これ!体がギトギトのラードに包まれていく…気持ち悪っ!) 政信:さぁ!ここからが変身シーンのクライマックスですよ!変身後はかっこよく次のセリフで決めちゃってください!『*滴《したた》る汗は元気の証!爆食戦士アクアミート見参!』 仁美:〈変身後〉(えぇい!こうなりゃヤケクソよ!)『*滴《したた》る汗は元気の証!爆食戦士アクアミート見参!』 政信:〈拍手しながら〉いやぁ、実に素晴らしい!!そうですねぇ…欲を言えば最後に『あなたの全て、食べちゃうぞ♡』と可愛く決めてくれれば完璧です。 仁美:…え?それマジで言わないといけませんか?いろんな意味でマズイ気がするのですが…。 政信:決めゼリフはその後のモチベーションに大きく影響いたしますので必ず言ってくださいね。 仁美:はぁ…分かりました。(逆にこっちはテンションだだ下がりなんですけど!) 政信:ここまでが変身までの一連の流れです。ではもう一度おさらいしてみましょう。 仁美:いえ!もう覚えたので大丈夫です! 政信:そうですか…ですが念の為もう一度… 仁美:〈セリフを遮って〉いいえ!もう完璧ですから!(こんなの何度もやってたらメンタルが持たないわよ!) 政信:ふむ…そうですか。残念です。 仁美:あなた今残念って言いましたよね? 政信:ええ。言いましたけど何か? 仁美:(素直に認めやがった…。)結局あなたが見たいだけじゃないですか! 政信:まあまあ、そうカッカしないでください。それはそうと、変身してみた感じはいかがですか? 仁美:あ、えっと…自分じゃ良く分かんないんですけど、特に若返ったりしている感覚はないですね…むしろ変身前より体が重くなった気がします。あと全身がヌルヌルしていて気持ち悪いのは何故なんですか? 政信:よくぞ気付いてくれました!それは我が組織が技術の*粋《すい》を結集して作り上げた特殊コーティングでして、まあ言ってみればあらゆる物理攻撃を受け流すシールドのような物です。また、圧倒的なパワーと引き替えに体重が2倍になっておりますが、その辺はご愛嬌という事で。 仁美:へ、へぇー…そうなんですね。(もはや凄いのか凄くないのか分からなくなって来たわ…。) 政信:ちなみに変身を解く時は『今日も満腹!ごちそうさま!』って唱えれば元の姿に戻れますよ。 仁美:(何それ、恥っず)…分かりました。『今日も満腹!ごちそうさま!』〈変身が解除される〉 政信:仁美さん、お疲れ様でした。 仁美:ふぅ…やっと楽になった。あ、そういや大事な事を聞き忘れていましたが、攻撃するための武器や魔法はないんですか? 政信:武器はボンレスハム形超大型格闘兵器、名付けて「ラブリーミートハンマー」を使ってください。普段はブレスレットに格納されていますので、使用時に青いボタンを押しながら武器名を叫べばいつでも呼び出すことが出来ます。あと魔法は…特にないです。 仁美:そう…何かもうツッこむ気力も起きないです。それより!魔法がないってどういう事ですか! 政信:やだなぁ仁美さんったら何を言っているんですか?魔法少女と言えば物理攻撃で敵をボコボコにしていくのがセオリーでしょうに。魔法なんてただの演出に過ぎません。 仁美:えっと…魔法少女の意味とは…? 政信:まあ強いて言えば武器自体に聖なる力が込められているので、それで相手をぶっ潰すことで闇の力を浄化することが出来るはずです。 仁美:あの…それだと闇の力以前に本体もぐちゃぐちゃになるんじゃ…。 政信:大丈夫です!多分…。 仁美:おい! 政信:ちなみに必殺技の名は…。 仁美:〈セリフを遮って〉結構です!自分で決めますから!(これ以上恥ずかしい技名叫ばされたらたまんないわよ!) 政信:ふむ、そうですか…。他に聞きたいことはありますか? 仁美:はぁ…。〈溜息〉いえ、特には。 政信:よろしい。なお、今後は僕が仁美さんの専属バディとしてサポートしますのでよろしくお願いします。また、必要な情報はブレスレットを通して*逐次《ちくじ》お伝えいたしますので。 仁美:分かりました。よろしくお願いします。えっと…。 政信:*政信《まさのぶ》と呼んでください。あと敬語も不要です。 仁美:それじゃ遠慮なく。政信さんよろしくね。 政信:こちらこそよろしくな!仁美! 仁美:(呼び捨て?しかも妙に馴れ馴れしい所が腹立つ!けど、ここは我慢、我慢…。) 仁美:え、ええ。 政信:そんじゃまあ、いざ出陣と行きますか!仁美、準備は良いか? 仁美:はいはい…て言うか、あんたキャラ変わりすぎ! 政信:目標、ポイント*A503《えーごーまるさん》行っくぜぇぇぇ!!転送ぉぉ!! : :-------------------仁美の会社にて 仁美:〈転送される〉ここは? 政信:〈通信〉「無事に目標地点に着いたようだな。良いか仁美。君を襲った敵はすぐ近くにいるはずだ。くれぐれも気を付けろよ!」 仁美:でしょうね!だってここ、うちの会社の屋上だもん!それに普通こういうのって人的被害が出ないように誰もいない空き地とかでやるもんじゃないの?ここじゃ襲って来られても逃げ場ないじゃない! 政信:「文句言うなよ。「*虎穴《こけつ》に*入《い》らずんば*虎子《こじ》を得ず」って言うだろう?これが一番手っ取り早いんだよ。」 仁美:はぁ…分かったわよ。全く…こっちは色々と心の準備が出来てないって言うのに…。 響子:あらあら、屋上で何やら大きな声がすると思ったら、さっき仕留め損ねた子猫ちゃんじゃない。 仁美:き、響子! 響子:わざわざ私のために戻って来てくれるなんて本当に嬉しいわぁ♡ 仁美:響子!良い加減目を覚まして! 響子:うふふ…あなた変なことを言うのね?私はとっくに目が覚めてるわよ。新たに手にしたこの闇の力によってね!さぁ今度こそ逃がさないわよ。覚悟しなさい♡ 響子:『全ての呪われし魂よ!我に闇の力を授けたまえ!ダークネスチェンジ!スタンバイ!』〈響子の体が漆黒のリボンに包まれる〉 響子:〈変身完了〉『闇夜に咲くは漆黒の花、魔導戦士ミスティブラック見参♡さぁ、私の魅力に溺れなさい♡』 仁美:くっ…やるしかないのね。行くわよ! 響子:何? 仁美:『メタボルフォーゼ!!』〈仁美の体がギトギトのラードに包まれる〉 仁美:〈変身完了〉『*滴《したた》る汗は元気の証!爆食戦士アクアミート見参!あなたの全て、食べちゃうぞ♡』 響子:…おい、何だそのダサいセリフとヘンテコな変身は。馬鹿にしてんのか? 仁美:ほらぁ!だから嫌だったのよ!こんな空気になるって分かってたからさぁ! 政信:「よし!とりあえずは変身成功だな!そのままぶっ潰せ!」 仁美:できるかぁぁ!!あんたね!こんなメンタルボロボロの状態で戦えるわけないでしょーが!それに、こんな所で戦ったらうちの会社消し飛ぶわ! 政信:「大丈夫だ。気にする程の事でもない。」 仁美:気にするわ!! 響子:急に変身したかと思ったら、私を前にしてどこまでも*舐《な》めた態度を取るのね。良いわ!それじゃあなたが存分に戦えるよう私のフィールドに*誘《いざな》ってあげる。ブラックワールド展開!〈空間が闇に染まっていく〉 仁美:(くっ…またこの魔法ね!) 響子:うふふ…これで周りを気にすることなく思う存分戦えるわよ。あ、そうそう、一つ良いことを教えてあげる。このフィールド内では私のステイタスは全て2倍になるの。だから万に一つもあなたに勝ち目なんて…〈仁美が目の前から消える〉 響子:うそ…消えた? 仁美:うぉりゃあああ!!〈響子の背後から蹴りを入れる〉 響子:ぐぁあああ!!〈背中を蹴られ飛ばされる〉 仁美:聞こえなかったわ。万に一つも…何だって? 響子:ぐっ…許さない…お前だけは絶対に許さない!!はああああ!!〈仁美めがけて殴り掛かる〉 仁美:無駄よ。 響子:〈攻撃がヌルっと受け流される〉何っ!私の攻撃が滑って…。 仁美:そんな攻撃私には効かないわよ!…っと。〈体勢を崩した所を蹴り飛ばす〉 響子:きゃあああ!!〈吹き飛ぶ〉 仁美:凄い…何故だか分かんないけど、どんどん力が*漲《みなぎ》っていくわ! 響子:はぁ…はぁ…馬鹿な。この私が、あんなふざけた奴に手も足も出ないなんて…。 仁美:諦めなさい。外見だけで判断したあなたの負けよ。 響子:ふ…ふふふ…。 仁美:ん?何がおかしいの? 響子:やっぱり第一形態じゃこんなもんか。 仁美:第一形態? 政信:「仁美!気を付けろ!奴の魔力が爆発的に増大している!こいつはかなりヤバいぞ!」 仁美:一体何が起きているの? 響子:見せてあげる。私の真の姿をね!闇進化『*影憑き《かげつき》』〈響子の姿が人外の物に変貌していく〉 仁美:何よ…アレ?響子の姿が悪魔の姿に変貌していく! 響子:〈進化完了〉フフフ…さっきまでの威勢はどうした? 仁美:くそっ!はああああ!!〈響子に殴り掛かる〉 仁美:え…?(嘘でしょ!攻撃が通らない!) 響子:ん?今何かしたのか?ふん!〈仁美の顔を殴る〉 仁美:きゃあああ!!!〈吹き飛ばされる〉 響子:フフフ…アハハハハ!!これは愉快だ!あのお方の力を借りた今の私に勝てる者などいないわ! 仁美:が…がはっ…。つ、強い…こんなの聞いてないわよ。まさか…特殊コーティングも役に立たないなんて…。 政信:「仁美!大丈夫か!」 仁美:うぅ…とりあえずは…まだ生きてるみたい。でもこのままじゃ…。 響子:さて、私を馬鹿にした報い、その身を*以《もっ》て受けてもらうぞ! 政信:「仁美!武器を使え!」 仁美:で、できる訳ないじゃない…あんなの使ったら響子が…死んじゃう。 政信:「まさかお前、そんな事を気にして…。」 仁美:〈ゆらりと立ち上がる〉ぐっ…当たり前じゃない…響子は私の大切な親友なんだから! 響子:ほう…まだ立ち上がる力があったとはな。その根性だけは認めてやろう。だが、お前と遊ぶのもいささか飽きた。次で終わりにしてやる。私の最大奥義でな!はああああ!!〈響子の目の前に巨大な魔力の塊が形成される〉 政信:「仁美!もう良い!今すぐそこから離脱しろ!」 響子:もう遅い!闇の力を凝縮したこの*魔光弾《まこうだん》で塵一つ残さず消え去るが良い!くらえ!「メテオバースト」!!〈巨大な魔力の塊が仁美に向かう〉 仁美:…誰が逃げるもんですか…私は響子を取り戻すんだ!*顕現《けんげん》せよ!「ラブリーミートハンマー」!! 響子:フハハハハ!今さらそんなおもちゃで何をしようと言うのだ?無駄な悪あがきは辞めて素直に死を受け入れろ! 政信:「仁美ぃぃぃ!!!」 仁美:(私はこの時を待っていた!)行くわよ!必殺!「ギガンティック・ミートクラッシャー」!!!どぉりゃあああ!!!〈魔光弾をハンマーで打ち返す〉 響子:な!馬鹿な!私のメテオバーストを打ち返しただと!!ま、まずい!魔光弾の威力に聖なる力がプラスされてどんどん膨れ上がっていく…あぁダメぇ!かわせない!!グギャアアアア!!!! : 仁美:はぁ…はぁ…や、やったわ。 政信:「凄い…完全に闇の力が浄化されている。」 仁美:漆黒の空間が元に戻っていく…私、闇の力に勝ったのね! 政信:「仁美、お疲れ様。本当によくやった。君は見事親友の命と世界の危機を同時に救ったんだ。」 仁美:まだよ…まだ響子をこんな風にした親玉が残っているわ! 政信:「ああ、そうだな。だが君の活躍で奴らも戦力を大きく削られたはずだ。しばらくは何も仕掛けて来ないさ。」 仁美:そうだと良いけど…。 政信:「とりあえずはゆっくり休んでくれ。あ、それと響子さんの記憶はこちらで書き換えておく。そうだな…階段から落ちたという事にでもしておこうか。」 仁美:まぁ便利だこと…分かったわ。じゃあね政信。 政信:「ああ。お疲れ。」〈通信切れる〉 仁美:さてと…変身を解くか。『今日も満腹!ごちそうさま!』〈変身が解除される〉 : :-------------------数日後 響子:あ…あれ?ここは? 仁美:響子!ようやく目を覚ましたのね!良かった…ここは病院よ。 響子:病院?何で私こんな所にいるの? 仁美:階段から落ちたって聞いた時は本当に驚いたわよ。 響子:え?私階段から落ちたの? 仁美:そうよ。たまたま私が近くにいたから良かったけど。そうじゃなかったら危なかったんだからね。 響子:そっか…ありがとう、仁美。 仁美:ううん。響子が無事でいてくれたらそれで良いの。 : 政信:(M)こうして、突如現れた魔法少女による一連の騒動は、仁美…いや、爆食戦士アクアミートの活躍により無事解決した。だが時を同じくして、侵略者による恐ろしい計画が今まさに遂行されようとしている事など、この時の我々に知る*由《よし》もなかった。 : :-------------------【 次回予告 】 仁美:(M)響子の一件以来、平和な日々を送る私の元に一通の手紙が届く。その中身は何と果たし状だった。一体誰から?困惑する私に侵略者の魔の手が忍び寄る。次回、爆食戦士アクアミート第2話「えっ!?魔法少女失格?」。あなたの全て、食べちゃうぞ♡…ってやっぱり恥ずかしいよ!このセリフ!! : :~完~