台本概要

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タイトル 黎明のラグナロク-暁-
作者名 芥川ドラ之介
ジャンル ファンタジー
演者人数 4人用台本(男1、女1、不問2)
時間 20 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 有料無料に関わらず全て自由にお使いください。
過度のアドリブ、内容や性別、役名の改編も好きにしてください。
わたしへの連絡や、作者名の表記なども特に必要ありません。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
ハウル 99 無詠唱で、念じただけで人を殺せる現代最強の魔法使い。
ドロシー 57 ハウルの学友。
オズ 不問 74 ハウルの学友。
マスター 不問 45 喫茶店『トレモノ』のマスター。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

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ハウル:例え君が僕を忘れても、僕は、君を忘れない・・・。 0: 0:【間】 0: ドロシー:午後の陽ざしを優しく浴びながら、静かな通りの片隅に佇む喫茶『トレモノ』。 ドロシー:その扉を開けると、心地よいコーヒーの香りが漂い、暖かな光が店内を包み込む。 マスター:「いらっしゃいませ。お好きなお席にどうぞ」 ドロシー:マスターの落ち着きのある声と上品なクラシックが心地よく混ざり合う。 ドロシー:私は、カウンター前の古い木製の椅子に腰かけた。 マスター:「ご注文が決まりましたら、お声かけ下さい」 ドロシー:「はい・・・。じゃあ、ブラックをお願いします」 マスター:「かしこまりました」 0: 0:レトロなバリスタが淹れるコーヒーの音が店内に響く。 0: マスター:「おまたせしました。どうぞ、ごゆっくり」 ドロシー:「はい・・・」 ハウル:「やぁ!」 ドロシー:「あっ」 ハウル:「あぁ、マスター。僕は、コーヒーを飲むとトイレがめちゃくちゃ近くなっちゃうから、オレンジジュースを頼むよ」 マスター:「かしこまりました」 ドロシー:「・・・」 ハウル:「あれ?定刻通りのはずだけど、どうして、そんなに不機嫌そうな顔をしているんだい?」 ドロシー:「・・・」 マスター:「・・・失礼します。オレンジジュースです」 ハウル:「あぁ、ありがとう」 ドロシー:「・・・」 ハウル:「ん?どうしたんだい?」 ドロシー:「・・・私はね。今、すっごく優雅な気持ちになっていたわけよ」 ハウル:「ん?優雅な気持ち?」 ドロシー:「それなのに、あなたがきて、台無しよ」 ハウル:「え?どうして?」 ドロシー:「(溜息)。それは、自分で考えて」 ハウル:「意味がわからない。そもそも僕を呼び出したのは、君だろう?」 ドロシー:「だから?」 0: 0:ドロシーは、凄みのある目でハウルを睨む。 0: ハウル:「もう!睨まないでよ!スマイル!スマイル!」 ドロシー:「(溜息)。まぁ、ハウルだもんね。仕方ないか・・・」 ハウル:「どういうこと?」 ドロシー:「そういうこと!じゃあ、本題に入るよ」 ハウル:「本題?あぁ、どうぞ」 ドロシー:「・・・オズのこと、どう思う?」 ハウル:「オズ?あぁ、ベストフレンドだと思ってるけど?」 ドロシー:「ベストフレンドね・・・」 ハウル:「それが、どうかしたのかい?」 ドロシー:「悪いことは言わない。もう、オズとは関わらないほうがいい」 ハウル:「・・・は?」 ドロシー:「あなたは、オズの本質に、まだ気づけていない。彼の思想は危険よ。私には、あなたが彼に利用される未来が見える」 ハウル:「僕がオズに?利用される?何の目的で?ちょっと、ありえない話なんだけど?」 ドロシー:「・・・彼は、地上界を魔界に変えようとしている」 ハウル:「・・・ちょっとちょっとちょっと?話が突拍子もなさすぎて、ついていけないんだけど?そもそも、オズの口からそんな話は一度も聞いたことがないんだけど?」 ドロシー:「声が大きい・・・。喫茶店よ」 ハウル:「あぁ、ごめんよ」 ドロシー:「私は、彼からスカウトされた。仲間にならないかって・・・」 ハウル:「そ、そうなの?僕はまだ声をかけられていないなぁ」 ドロシー:「知ってる。あなたには、これから声をかける予定だって言っていたし」 ハウル:「そうなんだ。なんで、一番最初にベストフレンドである僕に声をかけてくれなかったのかな」 ドロシー:「それは、私の魔法をあてにしていたんだと思う」 ハウル:「あぁ、それならば、納得がいく。君の魔法ほど交渉や説得、詐欺にベストマッチしたものはないからね」 ドロシー:「詐欺?」 ハウル:「いやぁ。ごめん。詐欺は、余計だったね」 ドロシー:「(溜息)。とにかく、あなたは、地上界を魔界に変えようだなんて馬鹿げた計画に乗っからないでね」 ハウル:「どうしてだい?」 ドロシー:「・・・すっごい癪だけど、あなたは・・・、最強で・・・、その・・・、彼の計画に加担すれば、本当に実現しそうな気がするからよ」 ハウル:「確かに・・・。でも、僕は、平和主義者だ。人が血を流す状況を良しとはしない。だから、仮にベストフレンドのオズから誘いがあったとしても、乗っかることはないよ。安心して」 ドロシー:「うん・・・」 ハウル:「でも・・・」 ドロシー:「でも?」 ハウル:「それが、ドロシーの頼みだったら、乗っかるかもね」 ドロシー:「ん?」 ハウル:「愛する人の願いならば、『世界にだって喧嘩を売る』って意味さ」 ドロシー:「(溜息)。あなた、いつか女の子から刺されちゃうよ」 ハウル:「刺される?」 ドロシー:「・・・わからないならいい・・・」 ハウル:「あぁ・・・」 ドロシー:「・・・っ・・・」 ハウル:「ん?どうした?」 ドロシー:「なんだか・・・急に眠気が・・・」 ハウル:「は?・・・っ・・・僕も・・・」 0: マスター:「・・・おやすみなさい」 0: 0:ハウルとドロシーは、カウンターに突っ伏して眠っている。 0:トレモノの入り口の扉に『closed』の札がかかる。 0: オズ:「ご苦労さん。入口に札をかけておいたよ」 マスター:「ありがとうございます」 オズ:「さすがは、マスターの魔法だ。二人ともぐっすり眠っている」 マスター:「それは、どうも・・・。あなたの予想通りでしたね」 オズ:「あぁ・・・。とても残念だ」 マスター:「殺しますか?」 オズ:「殺さないよ。殺したら、利用できなくなるだろう?」 マスター:「利用できるんですか?」 オズ:「二人の会話を聞いていなかったのか?ハウルはね、ドロシーに好意を寄せている。つまり、ドロシーの命がかかっている状況であれば、世界にだって牙を向く」 マスター:「そんなことが・・・」 オズ:「彼は、そういう男だ。ずっと『友達ごっこ』をしていたのだから、そこらへんのことはリサーチ済みだよ」 マスター:「ほぉ・・・」 オズ:「ドロシーを人質にとり、ハウルには、まず、この魔界の政治機能を破壊してもらう」 マスター:「政治機能の破壊?」 オズ:「あぁ、『頭の固い老害たち』の間違いだったか?」 マスター:「フフフ・・・」 オズ:「コイツは、馬鹿だ。無詠唱でトリプルSランクの魔法を発動するという規格外の力を持って産まれながら、その力の有効な使い方を知らない・・・。地上界を魔界に変える計画の崇高さに気が付けない愚者。だから、この俺が上手く利用してやる」 マスター:「・・・」 オズ:「うーん・・・。そうだな・・・。今からマスターには、ドロシーをアジトCに連れて行き、そこで監禁するという任を与えよう」 マスター:「・・・はい」 オズ:「コイツが目覚めたら、水晶通信を繋ぐ」 マスター:「承りました」 0: 0:【間】 0: マスター:遥か昔、地上界にも魔法を使うためのエネルギー、マナが満ちていた。魔界と同じく、魔法の使えていた時代があった。 マスター:地上界の王は、科学を発展させるために、マナ吸収装置『エニグマ』を発動し、マナを枯渇させ、魔法を永久に封印した。 マスター:そして、僅かなマナを使って魔法を使おうとする魔法使いたちは、『魔女狩り』と称し、ことごとく処刑された。 マスター:しかし、一部の魔法使いたちは、エニグマの効果範囲が地底にまでは及ばないことを知り、地底に『魔界』という名の魔法国家を創り上げた。 0: 0:【間】 0: ハウル:「・・・っ・・・うっ・・・」 オズ:「目覚めたか?親友」 ハウル:「ん・・・?・・・オズ?・・・ふあっ!なんだ?このロープは!?」 0: 0:ハウルは、椅子に座ったままロープで身体を縛られている。 0: オズ:「魔法が使えなくなるロープだ」 ハウル:「あん?なんだよ?どういうことだ?」 オズ:「ドロシーから、話は聞いただろ?」 ハウル:「・・・まさか・・・」 オズ:「その、まさかだよ。ハウル、俺に協力しろ」 ハウル:「協力?」 オズ:「俺は、地上界にあるエニグマを破壊したいんだ」 ハウル:「何を言ってるんだ?そんなことできるわけないだろ?」 オズ:「できるわけない?できるだろ?お前なら」 ハウル:「・・・無理だ。地上界では、僕は魔法が」 オズ:(さえぎって)「魔法が使えたなら、なんだってできるだろ?お前の魔法は、そういう魔法だ」 ハウル:「・・・戦争でも、起こそうとしているのか?」 オズ:「戦争?否っ!これは、聖戦だ!ハウル!お前は、過去の文献に目を通したことがないのか?」 ハウル:「文献?」 オズ:「魔法使いとしての才がなかった地上の王の話だ。自分が、魔法を上手く扱えないからと、魔法使いたちを虐げ、挙句の果てには、神代の兵器『エニグマ』を発動させ、地上界から魔法を消し去った」 ハウル:「・・・」 オズ:「ハウル、一緒に地上を取り戻そう!」 ハウル:「断る」 オズ:「何故だ?お前は、魔法で創り上げられた太陽ではなく、本物の太陽の光を浴びたくはないのか?」 ハウル:「浴びれるじゃないか?一時的にではあるが、通行許可証さえもらえば、地上にも出ることができる」 オズ:「だが、そこに自由はない!」 ハウル:「・・・オズ、頭、おかしくなっちまったのか?」 オズ:「おかしいのは、お前だろ?何故、理解できない?」 ハウル:「理解なんてできるわけないだろ?今の魔界は、平和だ。オズのやろうとしていることは、この平穏をぶち壊すことになるんだぞ?そんなの誰も望んじゃいない」 オズ:「誰も望んじゃいないだと?フッ・・・」 0: 0:オズが指を鳴らすと、部屋全体を武装した屈強な男たちが埋め尽くす。 0: ハウル:「ん?」 オズ:「革命軍『メイガス』だ」 ハウル:「メイガス?」 オズ:「魔界各地から、俺の思想に賛同する精鋭たちを集めた。みんな、戦闘魔法に秀でた武闘派だ」 ハウル:「準備は、万端ってことか?でも、幾ら強い魔法使いを集めたところで、魔法の使えない地上に出てしまえば、科学兵器の前に倒れる未来しか見えない」 オズ:「そう思うだろう?普通はな」 ハウル:「ん?」 オズ:「魔王は知っているよな?」 ハウル:「魔王?」 オズ:「生きているだけで無尽蔵のマナを生み出せる特異体質の存在」 ハウル:「そんなの御伽噺だろ?」 オズ:「あぁ、俺も御伽噺だと思っていたさ。でも、御伽噺じゃなかった」 ハウル:「ん?」 オズ:「魔王の転生者と思わしき人間が見つかった」 ハウル:「おいおい。冗談だよな?」 オズ:「冗談ではないさ。俺は、この目で見てきた。そいつは、あろうことか魔界ではなく、地上界で『普通の学生』として生活していた」 ハウル:「地上界・・・」 オズ:「だから、まだ、接触はできていない。しかし、上手く味方に加えることができたならば、そいつが存在する半径一キロ圏内であれば、地上界でも自由に魔法が使える」 ハウル:「・・・」 オズ:「どうだ?これは、確実に勝算のある戦争だ。手札も、ほぼ揃っていると言っても過言ではない」 ハウル:「・・・それでも、俺は、戦争に加担することはできない」 オズ:(かぶせて)「これを見ても、まだ、そんなことが言えるのかな?」 ハウル:「ん?」 0: 0:オズは、水晶玉をハウルの目の前に付きつける。 0: オズ:「マスター、応答せよ!」 0: マスター:「・・・はい」 0: 0:水晶玉に、十字架に張り付けにされたドロシーの姿が映し出される。 0: ハウル:「どっ、ドロシー!」 オズ:「フフフ」 ハウル:「なんてことしてんだ?」 オズ:「なんてこと?人質だよ?お前が断れば、彼女は死ぬ。フフッ。これで、少しは協力する気になっただろう?」 ハウル:「ふざけるな!」 オズ:「・・・やれ!」 0: マスター:「・・・禁忌術式・第十番、『ライブラ・リブラ・モナトリアス』」 ドロシー:「うっ!」 0: ハウル:「ドロシー!」 オズ:「フフフ・・・」 ハウル:「ドロシーに何をした?」 オズ:「何って・・・。禁忌の術式を施した」 ハウル:「・・・禁忌の術式?」 オズ:「マスター、説明してあげてくれ」 0: マスター:「わかりました。禁忌術式・第十番・ライブラ・リブラ・モナトリアスは、術式を施した対象者の記憶を、時間経過と共に徐々に奪い去って行きます」 0: ハウル:「記憶を奪う魔法?」 0: マスター:「ご名答。今、この瞬間にも、この方の記憶は零れ落ちています」 0: ハウル:「は!?おい!オズ!今すぐドロシーにかけた術式を解け!」 オズ:「だったら、俺の言うことを聞いてくれるのかい?」 ハウル:「ん?」 オズ:「等価交換だよ。ハウル、俺には、お前の力が必要なんだ」 ハウル:「くっ・・・」 オズ:「マスター、彼女の記憶が完全に消えるまで、どのくらいだ?」 0: マスター:「うーん・・・。一時間といったところでしょうか?」 0: オズ:「だそうだ。どうする?」 ハウル:「・・・何をすればいい?」 オズ:「うーん。そうだな・・・。まずは、俺の嫌いな保守派の政治家、スターク議員でも殺してもらおうかな?お前なら、一時間と言わず、数秒もあれば、余裕だろ?」 ハウル:「・・・その要求を呑めば、ドロシーの術式を解いてくれるのか?」 オズ:「フフフ。もちろんさ!」 ハウル:「だったら、早くこのロープを解け!」 オズ:「その前に一つ忠告しておこう」 ハウル:「ん?」 オズ:「ハウル、お前の魔法は厄介だ。なんせ、念じただけで対象者を殺せるという超チート級の代物だ」 ハウル:「・・・」 オズ:「だから、もしも、お前が、我々の仲間の誰かを殺した場合、ドロシーも死ぬ術式も施している。フフフ。それだけ伝えておこうと思ってね。優しいだろ?」 ハウル:「御託はいらない。さっさとしろ」 オズ:「あぁ・・・。うん・・・」 0: 0:オズが指を鳴らすと、ハウルを拘束していたロープが消える。 0: ハウル:「スターク議員でいいんだな?」 オズ:「あぁ。よろしく頼むよ」 ハウル:「・・・っ。終わったぞ」 オズ:「え?もう、終わったの?」 ハウル:「あぁ。だから、早く、ドロシーの術式を解け!」 オズ:「はいはいはい。その前に、ちょっと、スターク議員のクッサイ魔力を探ってみるね。うーん・・・。あっ・・・。ほんとに死んでる・・・。ハウルは、やっぱりすごいなぁ・・・。オーケー。マスター!」 0: マスター:「術式解除」 ドロシー:「・・・んっ・・・ここは・・・え?何?」 0: ハウル:「ドロシー!」 0: ドロシー:「ん?」 0: ハウル:「ドロシー、大丈夫だよ。すぐに助けに行くから!」 0: ドロシー:「・・・ここはどこなの?あっ!?ねぇ、早くこの拘束具を外してよ!」 マスター:「お静か、にっ!」 0: 0:マスターは、鞭でドロシーを叩く。 0: ドロシー:「がぁっ!」 0: ハウル:「なっ、なんてことするんだ!ドロシーを今すぐ開放しろ!」 オズ:「おいおい。騒ぐなよ。何故、ドロシーを開放しないといけないんだ?」 ハウル:「おい!話が違うだろ?」 オズ:「ん?話が違うだって?馬鹿か?俺は、ドロシーの術式を解くとは言ったが、『解放する』なんて一言も言っていないぞ?」 ハウル:「テメェ、ふざけんなよ!」 オズ:「ふざけてなどいないさ!」 ハウル:「じゃあ、どうしたらドロシーを開放してくれるんだ?」 オズ:「俺の革命に協力してくれるならば、考えてやってもいい」 ハウル:「・・・協力すれば、今度こそ、本当に、ドロシーを開放してくれるんだろうな?」 オズ:「もちろん!」 ハウル:「・・・わかった」 オズ:「じゃあ、この血の契約書にサインをしてくれるかな?」 ハウル:「・・・あぁ」 0: ドロシー:(さえぎって)「だめ!」 0: ハウル:「え?」 0: ドロシー:「この状況、何が何だかわからないけれど、その契約書には、絶対にサインをしたらダメ!」 マスター:「だから、お静か、にっ!」 ドロシー:「ぐふぁっ!」 0: 0:マスターが鞭でドロシーを叩くと、ドロシーは気を失う。 0: ハウル:「くそーっ!!!」 オズ:「フフフ・・・」 ハウル:「最低だ。お前が、そんな奴とは思わなかった」 オズ:「そんな奴?最初っから、そんな奴だよ。目的のためには、手段を選ばない。それが、この俺、オズワルド・バーンスタイン。それに、お前も、もう既に人殺しをしている列記とした『犯罪者』だろう?」 ハウル:「・・・頼むから、何でもするから、これ以上、ドロシーを傷つけないでくれ」 オズ:「フフフ。契約書にサインをしてくれるならね」 ハウル:「・・・わかった」 0: 0:ハウルは、血の契約書にサインをした。 0: ハウル:「あっ・・・!?俺の中から、魔力が消えて行く!?どういうことだ!?」 オズ:「フフフ・・・」 ハウル:「今の契約書は、なんだったんだ?」 オズ:「説明してあげよう!今の契約書にサインをすると、まず、魔力が100分の1になります」 ハウル:「100分の1?」 オズ:「うん。だから、今まで、お前が無詠唱でできていたこと全てに、詠唱が必要になってくるだろうし、殺したい人間を一瞬で殺せるような即死魔法も使えなくなっているだろうね」 ハウル:「・・・どうしてそんなことを?」 オズ:「だってだってだって?無詠唱で、念じただけで、殺したい人間を殺せる魔法なんて、卑怯すぎるだろう?」 ハウル:「・・・」 オズ:「その2。俺の許可した時に限り、お前は本来の魔力を取り戻すことができる。嬉しいだろう?俺が許可した時だけ、今まで通り最強最悪の魔法使いに戻れるんだよ?」 ハウル:「・・・」 オズ:「その3。お前は死ぬまで、俺の命令には、絶対に逆らえません。つまり、お前は、俺の木偶!以上!」 ハウル:「・・・」 オズ:「フハハハハハ!何その顔?ウケるんだけど?フハハッ!これで!これで世界はひっくり返るぞ!!!」 ハウル:「さっさと、ドロシーの拘束を解けよ!」 オズ:「おい!俺に命令すんなよ!・・・でも、まぁ、それは、約束だったからな・・・。マスター!」 0: マスター:「はい」 0: 0:マスターが拘束を解くと、ドロシーは、床に崩れ落ちる 0: ハウル:「ドロシー!」 オズ:「さぁ、ハウル。革命の狼煙を上げるぞ!」 0: 0:【間】 0: 0:水晶玉の映像が途切れた後。 0: マスター:「魔法術式・第二番、『ライトヒール』」 0: 0:マスターの手のひらから光が放たれ、ドロシーの傷が回復する。 0: マスター:「すみませんね。あまり手荒な真似はしたくなかったのですが・・・」 ドロシー:「・・・」 マスター:「私もね。一人娘を人質に取られているんですよ。命がけなんですよ」 ドロシー:「・・・っ・・・」 マスター:「おや?目が覚めましたか?」 ドロシー:「・・・知ってた」 マスター:「・・・」 ドロシー:「あなたは、優しい人。私を鞭で叩く時、凄く辛そうな顔をしていたから」 マスター:「・・・すみません」 ドロシー:「それにしても、あの水晶玉の向こうで、私の名前を叫んでいた人って、一体何者だったんだろう?」 マスター:「わからないのですか?」 ドロシー:「・・・はい」 マスター:「すみません!あの方は・・・あなたの大切な人です」 ドロシー:「私の、大切な人?」 マスター:「そうです。私が、禁忌術式で、あの方との記憶を奪ってしまいました」 ドロシー:「・・・そんな・・・」 マスター:「すみません!」 ドロシー:「・・・大丈夫。失くしたものを嘆く時間があるなら、私は一歩でも前に進む」 マスター:「前に?」 ドロシー:「ねぇ、あなたたちは、何をしようとしているの?」 マスター:「・・・地上界を魔界に変えようとしています」 ドロシー:「そう・・・。それをすることに意味はあるの?」 マスター:「私にもわかり兼ねます」 ドロシー:「だったら、あなたは、望んで彼に協力しているわけじゃないのよね?」 マスター:「・・・はい」 ドロシー:「じゃあ、私と一緒に、この計画をぶち壊そうよ」 マスター:「しかし、娘が・・・」 ドロシー:「娘さんは、どこにいるの?」 マスター:「それもわかり兼ねます」 ドロシー:「ふーん・・・。まぁ、私が協力するからには、何とかなると思うよ」 マスター:「何とか・・・」 ドロシー:「私ね、洗脳魔法のスペシャリストなの」 0: 0:-つづく―

ハウル:例え君が僕を忘れても、僕は、君を忘れない・・・。 0: 0:【間】 0: ドロシー:午後の陽ざしを優しく浴びながら、静かな通りの片隅に佇む喫茶『トレモノ』。 ドロシー:その扉を開けると、心地よいコーヒーの香りが漂い、暖かな光が店内を包み込む。 マスター:「いらっしゃいませ。お好きなお席にどうぞ」 ドロシー:マスターの落ち着きのある声と上品なクラシックが心地よく混ざり合う。 ドロシー:私は、カウンター前の古い木製の椅子に腰かけた。 マスター:「ご注文が決まりましたら、お声かけ下さい」 ドロシー:「はい・・・。じゃあ、ブラックをお願いします」 マスター:「かしこまりました」 0: 0:レトロなバリスタが淹れるコーヒーの音が店内に響く。 0: マスター:「おまたせしました。どうぞ、ごゆっくり」 ドロシー:「はい・・・」 ハウル:「やぁ!」 ドロシー:「あっ」 ハウル:「あぁ、マスター。僕は、コーヒーを飲むとトイレがめちゃくちゃ近くなっちゃうから、オレンジジュースを頼むよ」 マスター:「かしこまりました」 ドロシー:「・・・」 ハウル:「あれ?定刻通りのはずだけど、どうして、そんなに不機嫌そうな顔をしているんだい?」 ドロシー:「・・・」 マスター:「・・・失礼します。オレンジジュースです」 ハウル:「あぁ、ありがとう」 ドロシー:「・・・」 ハウル:「ん?どうしたんだい?」 ドロシー:「・・・私はね。今、すっごく優雅な気持ちになっていたわけよ」 ハウル:「ん?優雅な気持ち?」 ドロシー:「それなのに、あなたがきて、台無しよ」 ハウル:「え?どうして?」 ドロシー:「(溜息)。それは、自分で考えて」 ハウル:「意味がわからない。そもそも僕を呼び出したのは、君だろう?」 ドロシー:「だから?」 0: 0:ドロシーは、凄みのある目でハウルを睨む。 0: ハウル:「もう!睨まないでよ!スマイル!スマイル!」 ドロシー:「(溜息)。まぁ、ハウルだもんね。仕方ないか・・・」 ハウル:「どういうこと?」 ドロシー:「そういうこと!じゃあ、本題に入るよ」 ハウル:「本題?あぁ、どうぞ」 ドロシー:「・・・オズのこと、どう思う?」 ハウル:「オズ?あぁ、ベストフレンドだと思ってるけど?」 ドロシー:「ベストフレンドね・・・」 ハウル:「それが、どうかしたのかい?」 ドロシー:「悪いことは言わない。もう、オズとは関わらないほうがいい」 ハウル:「・・・は?」 ドロシー:「あなたは、オズの本質に、まだ気づけていない。彼の思想は危険よ。私には、あなたが彼に利用される未来が見える」 ハウル:「僕がオズに?利用される?何の目的で?ちょっと、ありえない話なんだけど?」 ドロシー:「・・・彼は、地上界を魔界に変えようとしている」 ハウル:「・・・ちょっとちょっとちょっと?話が突拍子もなさすぎて、ついていけないんだけど?そもそも、オズの口からそんな話は一度も聞いたことがないんだけど?」 ドロシー:「声が大きい・・・。喫茶店よ」 ハウル:「あぁ、ごめんよ」 ドロシー:「私は、彼からスカウトされた。仲間にならないかって・・・」 ハウル:「そ、そうなの?僕はまだ声をかけられていないなぁ」 ドロシー:「知ってる。あなたには、これから声をかける予定だって言っていたし」 ハウル:「そうなんだ。なんで、一番最初にベストフレンドである僕に声をかけてくれなかったのかな」 ドロシー:「それは、私の魔法をあてにしていたんだと思う」 ハウル:「あぁ、それならば、納得がいく。君の魔法ほど交渉や説得、詐欺にベストマッチしたものはないからね」 ドロシー:「詐欺?」 ハウル:「いやぁ。ごめん。詐欺は、余計だったね」 ドロシー:「(溜息)。とにかく、あなたは、地上界を魔界に変えようだなんて馬鹿げた計画に乗っからないでね」 ハウル:「どうしてだい?」 ドロシー:「・・・すっごい癪だけど、あなたは・・・、最強で・・・、その・・・、彼の計画に加担すれば、本当に実現しそうな気がするからよ」 ハウル:「確かに・・・。でも、僕は、平和主義者だ。人が血を流す状況を良しとはしない。だから、仮にベストフレンドのオズから誘いがあったとしても、乗っかることはないよ。安心して」 ドロシー:「うん・・・」 ハウル:「でも・・・」 ドロシー:「でも?」 ハウル:「それが、ドロシーの頼みだったら、乗っかるかもね」 ドロシー:「ん?」 ハウル:「愛する人の願いならば、『世界にだって喧嘩を売る』って意味さ」 ドロシー:「(溜息)。あなた、いつか女の子から刺されちゃうよ」 ハウル:「刺される?」 ドロシー:「・・・わからないならいい・・・」 ハウル:「あぁ・・・」 ドロシー:「・・・っ・・・」 ハウル:「ん?どうした?」 ドロシー:「なんだか・・・急に眠気が・・・」 ハウル:「は?・・・っ・・・僕も・・・」 0: マスター:「・・・おやすみなさい」 0: 0:ハウルとドロシーは、カウンターに突っ伏して眠っている。 0:トレモノの入り口の扉に『closed』の札がかかる。 0: オズ:「ご苦労さん。入口に札をかけておいたよ」 マスター:「ありがとうございます」 オズ:「さすがは、マスターの魔法だ。二人ともぐっすり眠っている」 マスター:「それは、どうも・・・。あなたの予想通りでしたね」 オズ:「あぁ・・・。とても残念だ」 マスター:「殺しますか?」 オズ:「殺さないよ。殺したら、利用できなくなるだろう?」 マスター:「利用できるんですか?」 オズ:「二人の会話を聞いていなかったのか?ハウルはね、ドロシーに好意を寄せている。つまり、ドロシーの命がかかっている状況であれば、世界にだって牙を向く」 マスター:「そんなことが・・・」 オズ:「彼は、そういう男だ。ずっと『友達ごっこ』をしていたのだから、そこらへんのことはリサーチ済みだよ」 マスター:「ほぉ・・・」 オズ:「ドロシーを人質にとり、ハウルには、まず、この魔界の政治機能を破壊してもらう」 マスター:「政治機能の破壊?」 オズ:「あぁ、『頭の固い老害たち』の間違いだったか?」 マスター:「フフフ・・・」 オズ:「コイツは、馬鹿だ。無詠唱でトリプルSランクの魔法を発動するという規格外の力を持って産まれながら、その力の有効な使い方を知らない・・・。地上界を魔界に変える計画の崇高さに気が付けない愚者。だから、この俺が上手く利用してやる」 マスター:「・・・」 オズ:「うーん・・・。そうだな・・・。今からマスターには、ドロシーをアジトCに連れて行き、そこで監禁するという任を与えよう」 マスター:「・・・はい」 オズ:「コイツが目覚めたら、水晶通信を繋ぐ」 マスター:「承りました」 0: 0:【間】 0: マスター:遥か昔、地上界にも魔法を使うためのエネルギー、マナが満ちていた。魔界と同じく、魔法の使えていた時代があった。 マスター:地上界の王は、科学を発展させるために、マナ吸収装置『エニグマ』を発動し、マナを枯渇させ、魔法を永久に封印した。 マスター:そして、僅かなマナを使って魔法を使おうとする魔法使いたちは、『魔女狩り』と称し、ことごとく処刑された。 マスター:しかし、一部の魔法使いたちは、エニグマの効果範囲が地底にまでは及ばないことを知り、地底に『魔界』という名の魔法国家を創り上げた。 0: 0:【間】 0: ハウル:「・・・っ・・・うっ・・・」 オズ:「目覚めたか?親友」 ハウル:「ん・・・?・・・オズ?・・・ふあっ!なんだ?このロープは!?」 0: 0:ハウルは、椅子に座ったままロープで身体を縛られている。 0: オズ:「魔法が使えなくなるロープだ」 ハウル:「あん?なんだよ?どういうことだ?」 オズ:「ドロシーから、話は聞いただろ?」 ハウル:「・・・まさか・・・」 オズ:「その、まさかだよ。ハウル、俺に協力しろ」 ハウル:「協力?」 オズ:「俺は、地上界にあるエニグマを破壊したいんだ」 ハウル:「何を言ってるんだ?そんなことできるわけないだろ?」 オズ:「できるわけない?できるだろ?お前なら」 ハウル:「・・・無理だ。地上界では、僕は魔法が」 オズ:(さえぎって)「魔法が使えたなら、なんだってできるだろ?お前の魔法は、そういう魔法だ」 ハウル:「・・・戦争でも、起こそうとしているのか?」 オズ:「戦争?否っ!これは、聖戦だ!ハウル!お前は、過去の文献に目を通したことがないのか?」 ハウル:「文献?」 オズ:「魔法使いとしての才がなかった地上の王の話だ。自分が、魔法を上手く扱えないからと、魔法使いたちを虐げ、挙句の果てには、神代の兵器『エニグマ』を発動させ、地上界から魔法を消し去った」 ハウル:「・・・」 オズ:「ハウル、一緒に地上を取り戻そう!」 ハウル:「断る」 オズ:「何故だ?お前は、魔法で創り上げられた太陽ではなく、本物の太陽の光を浴びたくはないのか?」 ハウル:「浴びれるじゃないか?一時的にではあるが、通行許可証さえもらえば、地上にも出ることができる」 オズ:「だが、そこに自由はない!」 ハウル:「・・・オズ、頭、おかしくなっちまったのか?」 オズ:「おかしいのは、お前だろ?何故、理解できない?」 ハウル:「理解なんてできるわけないだろ?今の魔界は、平和だ。オズのやろうとしていることは、この平穏をぶち壊すことになるんだぞ?そんなの誰も望んじゃいない」 オズ:「誰も望んじゃいないだと?フッ・・・」 0: 0:オズが指を鳴らすと、部屋全体を武装した屈強な男たちが埋め尽くす。 0: ハウル:「ん?」 オズ:「革命軍『メイガス』だ」 ハウル:「メイガス?」 オズ:「魔界各地から、俺の思想に賛同する精鋭たちを集めた。みんな、戦闘魔法に秀でた武闘派だ」 ハウル:「準備は、万端ってことか?でも、幾ら強い魔法使いを集めたところで、魔法の使えない地上に出てしまえば、科学兵器の前に倒れる未来しか見えない」 オズ:「そう思うだろう?普通はな」 ハウル:「ん?」 オズ:「魔王は知っているよな?」 ハウル:「魔王?」 オズ:「生きているだけで無尽蔵のマナを生み出せる特異体質の存在」 ハウル:「そんなの御伽噺だろ?」 オズ:「あぁ、俺も御伽噺だと思っていたさ。でも、御伽噺じゃなかった」 ハウル:「ん?」 オズ:「魔王の転生者と思わしき人間が見つかった」 ハウル:「おいおい。冗談だよな?」 オズ:「冗談ではないさ。俺は、この目で見てきた。そいつは、あろうことか魔界ではなく、地上界で『普通の学生』として生活していた」 ハウル:「地上界・・・」 オズ:「だから、まだ、接触はできていない。しかし、上手く味方に加えることができたならば、そいつが存在する半径一キロ圏内であれば、地上界でも自由に魔法が使える」 ハウル:「・・・」 オズ:「どうだ?これは、確実に勝算のある戦争だ。手札も、ほぼ揃っていると言っても過言ではない」 ハウル:「・・・それでも、俺は、戦争に加担することはできない」 オズ:(かぶせて)「これを見ても、まだ、そんなことが言えるのかな?」 ハウル:「ん?」 0: 0:オズは、水晶玉をハウルの目の前に付きつける。 0: オズ:「マスター、応答せよ!」 0: マスター:「・・・はい」 0: 0:水晶玉に、十字架に張り付けにされたドロシーの姿が映し出される。 0: ハウル:「どっ、ドロシー!」 オズ:「フフフ」 ハウル:「なんてことしてんだ?」 オズ:「なんてこと?人質だよ?お前が断れば、彼女は死ぬ。フフッ。これで、少しは協力する気になっただろう?」 ハウル:「ふざけるな!」 オズ:「・・・やれ!」 0: マスター:「・・・禁忌術式・第十番、『ライブラ・リブラ・モナトリアス』」 ドロシー:「うっ!」 0: ハウル:「ドロシー!」 オズ:「フフフ・・・」 ハウル:「ドロシーに何をした?」 オズ:「何って・・・。禁忌の術式を施した」 ハウル:「・・・禁忌の術式?」 オズ:「マスター、説明してあげてくれ」 0: マスター:「わかりました。禁忌術式・第十番・ライブラ・リブラ・モナトリアスは、術式を施した対象者の記憶を、時間経過と共に徐々に奪い去って行きます」 0: ハウル:「記憶を奪う魔法?」 0: マスター:「ご名答。今、この瞬間にも、この方の記憶は零れ落ちています」 0: ハウル:「は!?おい!オズ!今すぐドロシーにかけた術式を解け!」 オズ:「だったら、俺の言うことを聞いてくれるのかい?」 ハウル:「ん?」 オズ:「等価交換だよ。ハウル、俺には、お前の力が必要なんだ」 ハウル:「くっ・・・」 オズ:「マスター、彼女の記憶が完全に消えるまで、どのくらいだ?」 0: マスター:「うーん・・・。一時間といったところでしょうか?」 0: オズ:「だそうだ。どうする?」 ハウル:「・・・何をすればいい?」 オズ:「うーん。そうだな・・・。まずは、俺の嫌いな保守派の政治家、スターク議員でも殺してもらおうかな?お前なら、一時間と言わず、数秒もあれば、余裕だろ?」 ハウル:「・・・その要求を呑めば、ドロシーの術式を解いてくれるのか?」 オズ:「フフフ。もちろんさ!」 ハウル:「だったら、早くこのロープを解け!」 オズ:「その前に一つ忠告しておこう」 ハウル:「ん?」 オズ:「ハウル、お前の魔法は厄介だ。なんせ、念じただけで対象者を殺せるという超チート級の代物だ」 ハウル:「・・・」 オズ:「だから、もしも、お前が、我々の仲間の誰かを殺した場合、ドロシーも死ぬ術式も施している。フフフ。それだけ伝えておこうと思ってね。優しいだろ?」 ハウル:「御託はいらない。さっさとしろ」 オズ:「あぁ・・・。うん・・・」 0: 0:オズが指を鳴らすと、ハウルを拘束していたロープが消える。 0: ハウル:「スターク議員でいいんだな?」 オズ:「あぁ。よろしく頼むよ」 ハウル:「・・・っ。終わったぞ」 オズ:「え?もう、終わったの?」 ハウル:「あぁ。だから、早く、ドロシーの術式を解け!」 オズ:「はいはいはい。その前に、ちょっと、スターク議員のクッサイ魔力を探ってみるね。うーん・・・。あっ・・・。ほんとに死んでる・・・。ハウルは、やっぱりすごいなぁ・・・。オーケー。マスター!」 0: マスター:「術式解除」 ドロシー:「・・・んっ・・・ここは・・・え?何?」 0: ハウル:「ドロシー!」 0: ドロシー:「ん?」 0: ハウル:「ドロシー、大丈夫だよ。すぐに助けに行くから!」 0: ドロシー:「・・・ここはどこなの?あっ!?ねぇ、早くこの拘束具を外してよ!」 マスター:「お静か、にっ!」 0: 0:マスターは、鞭でドロシーを叩く。 0: ドロシー:「がぁっ!」 0: ハウル:「なっ、なんてことするんだ!ドロシーを今すぐ開放しろ!」 オズ:「おいおい。騒ぐなよ。何故、ドロシーを開放しないといけないんだ?」 ハウル:「おい!話が違うだろ?」 オズ:「ん?話が違うだって?馬鹿か?俺は、ドロシーの術式を解くとは言ったが、『解放する』なんて一言も言っていないぞ?」 ハウル:「テメェ、ふざけんなよ!」 オズ:「ふざけてなどいないさ!」 ハウル:「じゃあ、どうしたらドロシーを開放してくれるんだ?」 オズ:「俺の革命に協力してくれるならば、考えてやってもいい」 ハウル:「・・・協力すれば、今度こそ、本当に、ドロシーを開放してくれるんだろうな?」 オズ:「もちろん!」 ハウル:「・・・わかった」 オズ:「じゃあ、この血の契約書にサインをしてくれるかな?」 ハウル:「・・・あぁ」 0: ドロシー:(さえぎって)「だめ!」 0: ハウル:「え?」 0: ドロシー:「この状況、何が何だかわからないけれど、その契約書には、絶対にサインをしたらダメ!」 マスター:「だから、お静か、にっ!」 ドロシー:「ぐふぁっ!」 0: 0:マスターが鞭でドロシーを叩くと、ドロシーは気を失う。 0: ハウル:「くそーっ!!!」 オズ:「フフフ・・・」 ハウル:「最低だ。お前が、そんな奴とは思わなかった」 オズ:「そんな奴?最初っから、そんな奴だよ。目的のためには、手段を選ばない。それが、この俺、オズワルド・バーンスタイン。それに、お前も、もう既に人殺しをしている列記とした『犯罪者』だろう?」 ハウル:「・・・頼むから、何でもするから、これ以上、ドロシーを傷つけないでくれ」 オズ:「フフフ。契約書にサインをしてくれるならね」 ハウル:「・・・わかった」 0: 0:ハウルは、血の契約書にサインをした。 0: ハウル:「あっ・・・!?俺の中から、魔力が消えて行く!?どういうことだ!?」 オズ:「フフフ・・・」 ハウル:「今の契約書は、なんだったんだ?」 オズ:「説明してあげよう!今の契約書にサインをすると、まず、魔力が100分の1になります」 ハウル:「100分の1?」 オズ:「うん。だから、今まで、お前が無詠唱でできていたこと全てに、詠唱が必要になってくるだろうし、殺したい人間を一瞬で殺せるような即死魔法も使えなくなっているだろうね」 ハウル:「・・・どうしてそんなことを?」 オズ:「だってだってだって?無詠唱で、念じただけで、殺したい人間を殺せる魔法なんて、卑怯すぎるだろう?」 ハウル:「・・・」 オズ:「その2。俺の許可した時に限り、お前は本来の魔力を取り戻すことができる。嬉しいだろう?俺が許可した時だけ、今まで通り最強最悪の魔法使いに戻れるんだよ?」 ハウル:「・・・」 オズ:「その3。お前は死ぬまで、俺の命令には、絶対に逆らえません。つまり、お前は、俺の木偶!以上!」 ハウル:「・・・」 オズ:「フハハハハハ!何その顔?ウケるんだけど?フハハッ!これで!これで世界はひっくり返るぞ!!!」 ハウル:「さっさと、ドロシーの拘束を解けよ!」 オズ:「おい!俺に命令すんなよ!・・・でも、まぁ、それは、約束だったからな・・・。マスター!」 0: マスター:「はい」 0: 0:マスターが拘束を解くと、ドロシーは、床に崩れ落ちる 0: ハウル:「ドロシー!」 オズ:「さぁ、ハウル。革命の狼煙を上げるぞ!」 0: 0:【間】 0: 0:水晶玉の映像が途切れた後。 0: マスター:「魔法術式・第二番、『ライトヒール』」 0: 0:マスターの手のひらから光が放たれ、ドロシーの傷が回復する。 0: マスター:「すみませんね。あまり手荒な真似はしたくなかったのですが・・・」 ドロシー:「・・・」 マスター:「私もね。一人娘を人質に取られているんですよ。命がけなんですよ」 ドロシー:「・・・っ・・・」 マスター:「おや?目が覚めましたか?」 ドロシー:「・・・知ってた」 マスター:「・・・」 ドロシー:「あなたは、優しい人。私を鞭で叩く時、凄く辛そうな顔をしていたから」 マスター:「・・・すみません」 ドロシー:「それにしても、あの水晶玉の向こうで、私の名前を叫んでいた人って、一体何者だったんだろう?」 マスター:「わからないのですか?」 ドロシー:「・・・はい」 マスター:「すみません!あの方は・・・あなたの大切な人です」 ドロシー:「私の、大切な人?」 マスター:「そうです。私が、禁忌術式で、あの方との記憶を奪ってしまいました」 ドロシー:「・・・そんな・・・」 マスター:「すみません!」 ドロシー:「・・・大丈夫。失くしたものを嘆く時間があるなら、私は一歩でも前に進む」 マスター:「前に?」 ドロシー:「ねぇ、あなたたちは、何をしようとしているの?」 マスター:「・・・地上界を魔界に変えようとしています」 ドロシー:「そう・・・。それをすることに意味はあるの?」 マスター:「私にもわかり兼ねます」 ドロシー:「だったら、あなたは、望んで彼に協力しているわけじゃないのよね?」 マスター:「・・・はい」 ドロシー:「じゃあ、私と一緒に、この計画をぶち壊そうよ」 マスター:「しかし、娘が・・・」 ドロシー:「娘さんは、どこにいるの?」 マスター:「それもわかり兼ねます」 ドロシー:「ふーん・・・。まぁ、私が協力するからには、何とかなると思うよ」 マスター:「何とか・・・」 ドロシー:「私ね、洗脳魔法のスペシャリストなの」 0: 0:-つづく―