台本概要

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タイトル 反転Dis-discord
作者名 机の上の地球儀  (@tsukuenoueno)
ジャンル その他
演者人数 2人用台本(男1、女1)
時間 20 分
台本使用規定 商用、非商用問わず連絡不要
説明 (はんてんディス・ディスコード)

通話/会話劇/会ったことのないネット友達

商用・非商用利用に問わず連絡不要。
告知画像・動画の作成もお好きにどうぞ。
(その際各画像・音源の著作権等にご注意・ご配慮ください)
ただし、有料チケット販売による公演の場合は、可能ならTwitterにご一報いただけますと嬉しいです。
台本の一部を朗読・練習する配信なども問題ございません。
兼ね役OK。1人全役演じ分けもご自由に。

地球儀の個人台本サイト:https://lit.link/tsukuenoueno

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
169 男のネット友達。男がSNSにあげた自撮りが好みど真ん中でむかついている。
167 女のネット友達。ちやほやされたい時はSNSに自撮りをアップする。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
女:ねえ。 男:ん? 女:そろそろ私を解放してよぉ……。 男:…………(ため息をついて水を飲む)。 女:もしもーし?ねえ、無視すんなってば。 男:俺にどうしろって言うの? 女:言ってんじゃん。どうして欲しいかはずっと。 男:無理。 女:なんで? 男:そのお願いは聞き入れられません。 女:だからなんで。 男:無理だから。 女:なんで?  :(間) 男:……え?逆にさ。なんでそんなに俺と会いたいわけ? 女:会いたいから。 男:理由になってませーん。あと俺は会いたくありませーん。 女:なんでそんなこと言うの。 男:だって、会うとして俺にメリットないじゃん。 女:デメリットもないでしょ。 男:デメリットしかないよ。 女:なんで? 男:いやグイグイ来すぎな、お前!そもそもなんでわざわざ俺がお前に顔晒しにいかなきゃなんないんだよ? 女:だから!確かめたいの!私は!それだけ! 男:俺は別に確かめることないし。 女:別に食事とかは行かなくていいよ。会って5秒でいい。見たら満足して帰るから。 男:交通費無駄すぎるだろ。 女:それじゃあ、勿体無いからそのままデートしよっ、デート! 男:やだ。普通に必死すぎて怖い。 女:やめてよ、怖いとか言うの。 男:いや、普通に結構怖いよ? 女:…………。  :(間) 女:あ、分かった。じゃあじゃあ、デメリットを極力減らせば良いわけだ。 男:いや、何が「じゃあじゃあ」なのよ。何も分かってねーよ、お前は。 女:別に2人きりじゃなくてもいいから。10人とかでもいいから。 男:だからやだって。人多いの疲れるじゃん。  :(間) 男:え。ちょっと待って。これってもしかして少しアピールされてる?今?俺? 女:え。逆に今までの会話なんだと思ってたの。 男:え?俺のこと好きなの、お前?  :(間) 女:ッスー……いや。なんかそう言われるとまあ……違う気がする、けど……。 男:うん。好きって言うか、「顔が好き」なだけだもんな?見たらすぐ帰るって、「顔を」だもんな? 女:うん。私、あんたの顔めっちゃタイプ。 男:写真でしか見たことないくせに? 女:だーかーら確かめたいの!本当にあんたがタイプの顔かどうか。 男:確かめてどうすんだよ。 女:「うわあ、本当に好きな顔だ」ってなる。 男:何だそれ。 女:気になるじゃん? 男:……別に好みの顔のタイプなんてそこら中にいるって。俺である必要ないだろ。 女:いやー。悲しいことに、あんたの顔が人生で一番好きなんだよねえ。 男:あーそうなんだ。ありがとう。それは嬉しいわー。 女:軽いな〜。 男:いや。だって前から顔が好きってのは聞いてたし。知ってたし、お前が俺の顔好きなの。 女:うん。 男:でも、人生で一番ってのは知らなかったから。「へー、そっかー、嬉しいなー」って。な? 女:……性格悪。 男:知ってる。 女:はー。これだからイケメンは。 男:イケメンじゃないよ。 女:イケメンだよ。 男:だからイケメンじゃねえよ。ってか、お前、仮にも女なんだから分かるだろ。 女:え? 男:ネットに上げてる写真なんて所詮虚構なの。嘘と理想のフィルターがガッツリかかってんの。 女:……でも前動画上げてたじゃん。動画はそんなに加工できなくない? 男:加工アプリの技術進化はすごいわけよ。 女:あー。じゃあ騙されちゃってんだ、私。 男:そう。騙されてんの、現在進行形で。  :(間) 女:あーあ。私ほんとあんたのこと嫌い。 男:は?なんで。好きって言ったじゃん、俺の顔。 女:うん。どちゃくそに好き。 男:ほら。 女:だから嫌い。 男:なんでだよ。 女:だって、人生最高があんたなんだよ? 男:うん。良いじゃん。良かったな、人生最高の顔と出会えて。 女:いや出会えてないじゃん。 男:出会ってるじゃん。ほら。こうして話してる。 女:会えてないんだよな〜〜〜。 男:大丈夫だって。すぐ他の奴が更新するって、人生最高。 女:いや、「どんぴしゃど真ん中」って中々なくない? 男:……え?……いや、どうだろ。俺はないからなー。ストライクど真ん中に好みの人と出会った経験。 女:でしょ? 男:まあ。 女:吉沢亮はイケメンってみんな思うじゃん。でも、お前の好みどんぴしゃど真ん中ストライクバッターアウトかって言われたら、話変わってこない? 男:そうだな。変わるな。 女:そうなんだよ。変わるんだよ。 男:……なるほど? 女:で、現状私のいっちばんド真ん中には、あんたがいるわけ。 男:うわあ。可哀想。 女:悔しい。あんたが一番格好いい。 男:……ありがとう? 女:疑問系にすんな。噛み締めろ、私の「格好いい」を。 男:何だそれ。 女:噛み締めて、ほら、今! 男:……俺、イケメン? 女:イケメン。一番。最高。あんたがナンバーワン。 男:ふふ。サンキュ。噛み締めたわ。 女:おう、よく味わえ。 男:なんか自己肯定感上がるわー。 女:おー。そりゃ良かった。 男:おかげで自撮りをネットに上げて、いいね集めなくて済むわー。 女:え、なんで。それは上げてよ。 男:いやそこ食いつくなよ。 女:いや、新しい自撮りは見たいじゃん。大事な判断材料じゃん。 男:あんなん、ちやほやされてえなーって時に上げるくらいがちょうど良いんだよ。 女:そんなもん? 男:そんなもん。 女:ふぅん。 男:……誰かに肯定されたい時って、あるじゃん。 女:まあ、うん。 男:自撮りってのは、そういう「寂しい」「構って」って感情を吐き出した結果なわけ。 女:……男でもそういうのあるんだ。 男:男女差別やめろー?あってもいいだろ、男だって。 女:……はい、確かに。ごめんなさい 男:謝れてえらい。……まあでも、今お前が俺を認めてくれたから、しばらく撮る必要がなくなったのです。 女:私の「格好いい」で、しばらく分チャージできたわけだ。 男:そういうこと。  :(間) 女:(早口で)それはそれとして自撮りは見たいけどね!? 男:必死やめろ。 女:じゃあ会おうよ! 男:なんでそんなに会うことに拘るわけ? 女:顔が好きだから。 男:顔だけね。 女:いや、それは……。んんん。ん〜〜〜!? 男:ん?何だよ。 女:いや……これ言うとなんか負けた感じになるからさあ〜〜〜。 男:今更?大丈夫だよ。お前、現在進行形で黒星ポイントカード押され続けてんだから。 女:あ、そう? 男:うん。もうすぐ貯まって景品がもらえるレベル。 女:あんたに会える券? 男:それは絶対ない。それだけは確定でない。 女:一回会ったら冷めるって。会えないから会いたんだって。 男:ないものねだり的な? 女:手に入らないから焦がれるわけよ。 男:そんなもんですか。 女:そんなもんですよ。 男:ふぅん。 女:私が冷めたら、あんたもこれ以上面倒じゃないじゃん。 男:でも、別に好きでいてくれるんならそれに越したことはないじゃん? 女:は? 男:一生好きでいたら?俺の顔。 女:悪魔かあんたは。 男:悪魔じゃなくて天使だろ。 女:顔だけね!?  :(間) 女:(大きなため息)本当にあんたの言う通りになりそうで怖い……。 男:ご愁傷さまです。 女:あんたのことが気になって夜しか眠れない。 男:寝れてんじゃん。 女:私の貴重な時間を無駄にしているという罪悪感はないの? 男:ないね。それ俺にとったら貴重でもなんでもないもん。 女:……あんた、嫌な男ポイントカード作ったら一瞬で貯まるわよ。 男:ウケる。 女:ウケるな! 男:ふふ。……で? 女:え? 男:負けた感じになるけど、なに?  :(間) 女:……私さあ。 男:ん? 女:あんたのさあ。 男:うん。なに? 女:……性格悪いとこ……結構好きなんだよね……。 男:はい? 女:あと、良い感じにクズい所も……。  :(間) 男:趣味悪。 女:……だよねえ。知ってる……。 男:え、お前って馬鹿なの? 女:そうなの馬鹿なの。……だから余計翻弄されるんだよねー……。 男:勝手に転がってるだけな、お前が。 女:そういう感じも結構好き。ずるい。 男:何にもずるくないからね。 女:……人生最高があんたって事実が許せないよね。 男:なんでだよ。 女:だって、よりによってあんたって。 男:まあまあ、そんなこと言わずに。良いじゃん俺が一番。最高じゃん俺が一番。 女:助けてくれよー、私を 男:どうやってだよ。嫌だよ。 女:人助けだと思って救って!お願い! 男:お前に会う暇があんなら、駅前で困ってるおばあちゃんでも探す方が有意義だろうな。 女:あんた私に冷たすぎない? 男:深夜3時の電話に出てる時点ですんごく優しいよ。 女:……確かに。 男:な? 女:……でもさ。こうしてあんたに縛られてる私、可哀想すぎると思わない? 男:思わない。むしろ面白いからずっとそのままでいて欲しい。 女:え?私、一生あんたを頭の特等席に置き続けなきゃなんないの? 男:え。俺、今お前の頭の特等席にいんの?  :(間) 女:いる……ね。 男:ウケる。 女:全然ウケないかんね!? 男:ウケる。 女:ウケるな! 男:ふふ。 女:あーーー。 男:今、結構良い気分だわ。 女:あんたさあ。 男:なに? 女:頼むから早く老いてくんない? 男:は? 女:おじさんになれ、今すぐ。 男:こらこらこら。人の老化を望むな。 女:早くしわくちゃになれ! 男:人生でそう命令されるの、これが最初で最後だろうね、たぶん。 女:やった。私が最初で最後の女。 男:喜ぶなよ、こんなんで。  :(間) 男:ってかさ。 女:なに? 男:俺がおじさんになったら、構ってくんないの? 女:…………。 男:なあ。 女:あのさ。「構ってくんないの?」って訊き方ずるくない?あざとくない、あんた? 男:ふふ。……よーし。俺、今しわくちゃでも格好いいロマンスグレーになるって目標ができたわ。 女:おー。なれなれ。 男:なれますかねえ?格好いいおじいちゃんに。 女:あり得る。全然ある。保証する。 男:会ったことなくても? 女:ないけど。 男:いやー、でも会ったことない人の言葉はな〜。ちょっと信じられないからな〜。 女:いや。なら、会ってよ。 男:会ったらどうなんの? 女:え?  :(間) 男:会ったら、お前はどういう反応するの? 女:どうって……。 男:写真と違ったら? 女:違ったら? 男:うん。 女:写真と違って好みじゃなかったら……そうだな。  :(間) 女:(咳払い)「あ、こんにちは」 男:「こんにちは」 女:「はじめまして」 男:「はじめまして」 女:(上から下まで男を見て)「ッスー……はい。ありがとうございました」 男:「え。もう良いんですか?」 女:「はい、もういいです。それでは」 男:「それでは」  :(間) 女:……って、現地解散する! 男:どっ最低だな。 女:現地集合現地リリース。 男:リリースって言うな。その時点じゃ捕まってねえわ! 女:いや……ってかまあ、普通にそのまま遊ぶでしょ。顔がタイプじゃなくても。あんたはあんたなんだし。 男:まあ、な……。 女:で、私の熱も冷めて、私はあんたの呪縛から解放される。 男:最初から呪ってねえし。 女:呪われてんの、現在進行形で。 男:人聞き悪いな。騙されてるだけだって。現在進行形で。  :(間) 女:それ変わんなくない?どっちも。 男:……変わんない、か。どっちも。  :(間) 男:で? 女:ん? 男:実際会ってみて、写真通り好みだったらどうするの? 女:好みだったら…… 男:うん。  :(間) 女:告白する……? 男:ぷっ、はは……!何だそれ……! 女:いやそりゃそうでしょ。性格好き、顔好き、そんなんもうそれしかないじゃん。 男:俺別に告白されたくねえし、顔見られて「はい、ありがとうございました」って言われるのも癪に触るんだけど? 女:(笑いながら)癪に触るってあんたねえ。 男:むかつくじゃん、なんか。 女:まあ、そうだよね。顔見て「チェンジ」って言われてるようなもんだもんねぇ……。 男:ほらな。やっぱりメリットない。 女:そっかあ。 男:うん。……っていうか、そもそも俺に告白する想像できんの、お前? 女:……いや。でき、ない、なあ……? 男:な?できないよな?  :(間) 女:え、でもさ。 男:ん? 女:あ、ちょうどそれ。 男:え? 女:その「ん?」って言うの、結構好き。 男:ええ? 女:私、あんたの声も結構好きだよって話。 男:…………ふ。 女:おい、今ちょっとにやけたのバレてんぞ。 男:だって。 女:なに? 男:嬉しいじゃん、普通に。 女:うん。 男:顔に、性格に、声も? 女:……うん。 男:全部じゃん。 女:ね。全部なんだよね。 男:へぇー。 女:だから、会って実際格好いいか確かめてみたいの! 男:あ、結局そこに戻るんだ。 女:戻るでしょ。 男:そこで顔もチェックしたがるのがな〜。そこは「顔は関係ない」って言えないもんですかね、面食いさん? 女:ばっかだなー。例えば喧嘩しても、相手の顔が良かったらなんか許せるでしょ。イケメンは世界を救うの。顔が良い方がいいに決まってる。 男:そういうもんかな。 女:そういうもん! 男:……面食いだって隠しもしないんですねえ。 女:人間素直な方が絶対いいからね。 男:正直すぎるのもどうかと思うけど。 女:言いたいことは言う。やりたいことはすぐ実行する。現代人に足りてない要素の2つだよ! 男:あー、だからお前、電話も突然かけてくるんだ? 女:電話なんて突然以外かけようがないじゃん。 男:急なんだよ。今だってこんな遅い時間じゃねーか。 女:出たじゃん。 男:出たけど。 女:ね? 男:「ね?」じゃないよ。そんなんだから俺お前の電話滅多に出ねえんじゃん。 女:そう!あんたってほんっと私の電話出ないよね!? 男:お前の着信履歴すげーよ。 女:何が? 男:まるでレッドカーペット。 女:それはあんたが私の電話ずっと無視するからでしょ!?不在着信の赤文字履歴がずっと溜まってるってことでしょ!? 男:別に無視してる訳じゃないよ。お前が毎回出るのだるい時にかけてくるだけ。 女:それを世間では無視って言うんだよ。 男:メッセージは別に無視してないだろーが。電話だけだろ? 女:電話は無視するじゃん。 男:頻度と時間帯が悪い。そんな頻繁に話したいこともねえし。 女:えー?まあ時間帯は確かに私が悪いかもだけど!……え?頻度は10日に1回とかしかかけてなくない? 男:3ヶ月に1回とかで良いかな。 女:少な。  :(間) 女:え、待って。なんかずっと私があんたにめちゃくちゃ惚れてて、ストーカーみたいにしつこい感じになってるけどさ? 男:うん。 女:私たちって友達だよね? 男:うん。 女:ネットだけど3年くらいの付き合いだよね? 男:うん、かなり長い付き合い。 女:割と仲良いよね? 男:うん、結構仲良い。 女:だよね!?……あー、良かった。  :(間) 男:まあ、深夜の電話に出ても良いかな、って思うくらいには、お前のこと好きだよ、俺。 女:……でも3ヶ月に1回くらいでしょ。 男:そう。3ヶ月に1回くらい。 女:そっか……。まあ、嫌われてないならいいや。 男:……おう。  :(間) 女:……また、かける。 男:3ヶ月後な。近況報告溜めといて、3ヶ月分。 女:明日かける。 男:絶対出ない。 女:あんたのこと本当に嫌い。 男:顔は? 女:……はあ?あんたねえ。 男:顔は? 女:……好き。 男:はは。良い気分だわ。 女:……はぁ。ほんっと嫌な男。

女:ねえ。 男:ん? 女:そろそろ私を解放してよぉ……。 男:…………(ため息をついて水を飲む)。 女:もしもーし?ねえ、無視すんなってば。 男:俺にどうしろって言うの? 女:言ってんじゃん。どうして欲しいかはずっと。 男:無理。 女:なんで? 男:そのお願いは聞き入れられません。 女:だからなんで。 男:無理だから。 女:なんで?  :(間) 男:……え?逆にさ。なんでそんなに俺と会いたいわけ? 女:会いたいから。 男:理由になってませーん。あと俺は会いたくありませーん。 女:なんでそんなこと言うの。 男:だって、会うとして俺にメリットないじゃん。 女:デメリットもないでしょ。 男:デメリットしかないよ。 女:なんで? 男:いやグイグイ来すぎな、お前!そもそもなんでわざわざ俺がお前に顔晒しにいかなきゃなんないんだよ? 女:だから!確かめたいの!私は!それだけ! 男:俺は別に確かめることないし。 女:別に食事とかは行かなくていいよ。会って5秒でいい。見たら満足して帰るから。 男:交通費無駄すぎるだろ。 女:それじゃあ、勿体無いからそのままデートしよっ、デート! 男:やだ。普通に必死すぎて怖い。 女:やめてよ、怖いとか言うの。 男:いや、普通に結構怖いよ? 女:…………。  :(間) 女:あ、分かった。じゃあじゃあ、デメリットを極力減らせば良いわけだ。 男:いや、何が「じゃあじゃあ」なのよ。何も分かってねーよ、お前は。 女:別に2人きりじゃなくてもいいから。10人とかでもいいから。 男:だからやだって。人多いの疲れるじゃん。  :(間) 男:え。ちょっと待って。これってもしかして少しアピールされてる?今?俺? 女:え。逆に今までの会話なんだと思ってたの。 男:え?俺のこと好きなの、お前?  :(間) 女:ッスー……いや。なんかそう言われるとまあ……違う気がする、けど……。 男:うん。好きって言うか、「顔が好き」なだけだもんな?見たらすぐ帰るって、「顔を」だもんな? 女:うん。私、あんたの顔めっちゃタイプ。 男:写真でしか見たことないくせに? 女:だーかーら確かめたいの!本当にあんたがタイプの顔かどうか。 男:確かめてどうすんだよ。 女:「うわあ、本当に好きな顔だ」ってなる。 男:何だそれ。 女:気になるじゃん? 男:……別に好みの顔のタイプなんてそこら中にいるって。俺である必要ないだろ。 女:いやー。悲しいことに、あんたの顔が人生で一番好きなんだよねえ。 男:あーそうなんだ。ありがとう。それは嬉しいわー。 女:軽いな〜。 男:いや。だって前から顔が好きってのは聞いてたし。知ってたし、お前が俺の顔好きなの。 女:うん。 男:でも、人生で一番ってのは知らなかったから。「へー、そっかー、嬉しいなー」って。な? 女:……性格悪。 男:知ってる。 女:はー。これだからイケメンは。 男:イケメンじゃないよ。 女:イケメンだよ。 男:だからイケメンじゃねえよ。ってか、お前、仮にも女なんだから分かるだろ。 女:え? 男:ネットに上げてる写真なんて所詮虚構なの。嘘と理想のフィルターがガッツリかかってんの。 女:……でも前動画上げてたじゃん。動画はそんなに加工できなくない? 男:加工アプリの技術進化はすごいわけよ。 女:あー。じゃあ騙されちゃってんだ、私。 男:そう。騙されてんの、現在進行形で。  :(間) 女:あーあ。私ほんとあんたのこと嫌い。 男:は?なんで。好きって言ったじゃん、俺の顔。 女:うん。どちゃくそに好き。 男:ほら。 女:だから嫌い。 男:なんでだよ。 女:だって、人生最高があんたなんだよ? 男:うん。良いじゃん。良かったな、人生最高の顔と出会えて。 女:いや出会えてないじゃん。 男:出会ってるじゃん。ほら。こうして話してる。 女:会えてないんだよな〜〜〜。 男:大丈夫だって。すぐ他の奴が更新するって、人生最高。 女:いや、「どんぴしゃど真ん中」って中々なくない? 男:……え?……いや、どうだろ。俺はないからなー。ストライクど真ん中に好みの人と出会った経験。 女:でしょ? 男:まあ。 女:吉沢亮はイケメンってみんな思うじゃん。でも、お前の好みどんぴしゃど真ん中ストライクバッターアウトかって言われたら、話変わってこない? 男:そうだな。変わるな。 女:そうなんだよ。変わるんだよ。 男:……なるほど? 女:で、現状私のいっちばんド真ん中には、あんたがいるわけ。 男:うわあ。可哀想。 女:悔しい。あんたが一番格好いい。 男:……ありがとう? 女:疑問系にすんな。噛み締めろ、私の「格好いい」を。 男:何だそれ。 女:噛み締めて、ほら、今! 男:……俺、イケメン? 女:イケメン。一番。最高。あんたがナンバーワン。 男:ふふ。サンキュ。噛み締めたわ。 女:おう、よく味わえ。 男:なんか自己肯定感上がるわー。 女:おー。そりゃ良かった。 男:おかげで自撮りをネットに上げて、いいね集めなくて済むわー。 女:え、なんで。それは上げてよ。 男:いやそこ食いつくなよ。 女:いや、新しい自撮りは見たいじゃん。大事な判断材料じゃん。 男:あんなん、ちやほやされてえなーって時に上げるくらいがちょうど良いんだよ。 女:そんなもん? 男:そんなもん。 女:ふぅん。 男:……誰かに肯定されたい時って、あるじゃん。 女:まあ、うん。 男:自撮りってのは、そういう「寂しい」「構って」って感情を吐き出した結果なわけ。 女:……男でもそういうのあるんだ。 男:男女差別やめろー?あってもいいだろ、男だって。 女:……はい、確かに。ごめんなさい 男:謝れてえらい。……まあでも、今お前が俺を認めてくれたから、しばらく撮る必要がなくなったのです。 女:私の「格好いい」で、しばらく分チャージできたわけだ。 男:そういうこと。  :(間) 女:(早口で)それはそれとして自撮りは見たいけどね!? 男:必死やめろ。 女:じゃあ会おうよ! 男:なんでそんなに会うことに拘るわけ? 女:顔が好きだから。 男:顔だけね。 女:いや、それは……。んんん。ん〜〜〜!? 男:ん?何だよ。 女:いや……これ言うとなんか負けた感じになるからさあ〜〜〜。 男:今更?大丈夫だよ。お前、現在進行形で黒星ポイントカード押され続けてんだから。 女:あ、そう? 男:うん。もうすぐ貯まって景品がもらえるレベル。 女:あんたに会える券? 男:それは絶対ない。それだけは確定でない。 女:一回会ったら冷めるって。会えないから会いたんだって。 男:ないものねだり的な? 女:手に入らないから焦がれるわけよ。 男:そんなもんですか。 女:そんなもんですよ。 男:ふぅん。 女:私が冷めたら、あんたもこれ以上面倒じゃないじゃん。 男:でも、別に好きでいてくれるんならそれに越したことはないじゃん? 女:は? 男:一生好きでいたら?俺の顔。 女:悪魔かあんたは。 男:悪魔じゃなくて天使だろ。 女:顔だけね!?  :(間) 女:(大きなため息)本当にあんたの言う通りになりそうで怖い……。 男:ご愁傷さまです。 女:あんたのことが気になって夜しか眠れない。 男:寝れてんじゃん。 女:私の貴重な時間を無駄にしているという罪悪感はないの? 男:ないね。それ俺にとったら貴重でもなんでもないもん。 女:……あんた、嫌な男ポイントカード作ったら一瞬で貯まるわよ。 男:ウケる。 女:ウケるな! 男:ふふ。……で? 女:え? 男:負けた感じになるけど、なに?  :(間) 女:……私さあ。 男:ん? 女:あんたのさあ。 男:うん。なに? 女:……性格悪いとこ……結構好きなんだよね……。 男:はい? 女:あと、良い感じにクズい所も……。  :(間) 男:趣味悪。 女:……だよねえ。知ってる……。 男:え、お前って馬鹿なの? 女:そうなの馬鹿なの。……だから余計翻弄されるんだよねー……。 男:勝手に転がってるだけな、お前が。 女:そういう感じも結構好き。ずるい。 男:何にもずるくないからね。 女:……人生最高があんたって事実が許せないよね。 男:なんでだよ。 女:だって、よりによってあんたって。 男:まあまあ、そんなこと言わずに。良いじゃん俺が一番。最高じゃん俺が一番。 女:助けてくれよー、私を 男:どうやってだよ。嫌だよ。 女:人助けだと思って救って!お願い! 男:お前に会う暇があんなら、駅前で困ってるおばあちゃんでも探す方が有意義だろうな。 女:あんた私に冷たすぎない? 男:深夜3時の電話に出てる時点ですんごく優しいよ。 女:……確かに。 男:な? 女:……でもさ。こうしてあんたに縛られてる私、可哀想すぎると思わない? 男:思わない。むしろ面白いからずっとそのままでいて欲しい。 女:え?私、一生あんたを頭の特等席に置き続けなきゃなんないの? 男:え。俺、今お前の頭の特等席にいんの?  :(間) 女:いる……ね。 男:ウケる。 女:全然ウケないかんね!? 男:ウケる。 女:ウケるな! 男:ふふ。 女:あーーー。 男:今、結構良い気分だわ。 女:あんたさあ。 男:なに? 女:頼むから早く老いてくんない? 男:は? 女:おじさんになれ、今すぐ。 男:こらこらこら。人の老化を望むな。 女:早くしわくちゃになれ! 男:人生でそう命令されるの、これが最初で最後だろうね、たぶん。 女:やった。私が最初で最後の女。 男:喜ぶなよ、こんなんで。  :(間) 男:ってかさ。 女:なに? 男:俺がおじさんになったら、構ってくんないの? 女:…………。 男:なあ。 女:あのさ。「構ってくんないの?」って訊き方ずるくない?あざとくない、あんた? 男:ふふ。……よーし。俺、今しわくちゃでも格好いいロマンスグレーになるって目標ができたわ。 女:おー。なれなれ。 男:なれますかねえ?格好いいおじいちゃんに。 女:あり得る。全然ある。保証する。 男:会ったことなくても? 女:ないけど。 男:いやー、でも会ったことない人の言葉はな〜。ちょっと信じられないからな〜。 女:いや。なら、会ってよ。 男:会ったらどうなんの? 女:え?  :(間) 男:会ったら、お前はどういう反応するの? 女:どうって……。 男:写真と違ったら? 女:違ったら? 男:うん。 女:写真と違って好みじゃなかったら……そうだな。  :(間) 女:(咳払い)「あ、こんにちは」 男:「こんにちは」 女:「はじめまして」 男:「はじめまして」 女:(上から下まで男を見て)「ッスー……はい。ありがとうございました」 男:「え。もう良いんですか?」 女:「はい、もういいです。それでは」 男:「それでは」  :(間) 女:……って、現地解散する! 男:どっ最低だな。 女:現地集合現地リリース。 男:リリースって言うな。その時点じゃ捕まってねえわ! 女:いや……ってかまあ、普通にそのまま遊ぶでしょ。顔がタイプじゃなくても。あんたはあんたなんだし。 男:まあ、な……。 女:で、私の熱も冷めて、私はあんたの呪縛から解放される。 男:最初から呪ってねえし。 女:呪われてんの、現在進行形で。 男:人聞き悪いな。騙されてるだけだって。現在進行形で。  :(間) 女:それ変わんなくない?どっちも。 男:……変わんない、か。どっちも。  :(間) 男:で? 女:ん? 男:実際会ってみて、写真通り好みだったらどうするの? 女:好みだったら…… 男:うん。  :(間) 女:告白する……? 男:ぷっ、はは……!何だそれ……! 女:いやそりゃそうでしょ。性格好き、顔好き、そんなんもうそれしかないじゃん。 男:俺別に告白されたくねえし、顔見られて「はい、ありがとうございました」って言われるのも癪に触るんだけど? 女:(笑いながら)癪に触るってあんたねえ。 男:むかつくじゃん、なんか。 女:まあ、そうだよね。顔見て「チェンジ」って言われてるようなもんだもんねぇ……。 男:ほらな。やっぱりメリットない。 女:そっかあ。 男:うん。……っていうか、そもそも俺に告白する想像できんの、お前? 女:……いや。でき、ない、なあ……? 男:な?できないよな?  :(間) 女:え、でもさ。 男:ん? 女:あ、ちょうどそれ。 男:え? 女:その「ん?」って言うの、結構好き。 男:ええ? 女:私、あんたの声も結構好きだよって話。 男:…………ふ。 女:おい、今ちょっとにやけたのバレてんぞ。 男:だって。 女:なに? 男:嬉しいじゃん、普通に。 女:うん。 男:顔に、性格に、声も? 女:……うん。 男:全部じゃん。 女:ね。全部なんだよね。 男:へぇー。 女:だから、会って実際格好いいか確かめてみたいの! 男:あ、結局そこに戻るんだ。 女:戻るでしょ。 男:そこで顔もチェックしたがるのがな〜。そこは「顔は関係ない」って言えないもんですかね、面食いさん? 女:ばっかだなー。例えば喧嘩しても、相手の顔が良かったらなんか許せるでしょ。イケメンは世界を救うの。顔が良い方がいいに決まってる。 男:そういうもんかな。 女:そういうもん! 男:……面食いだって隠しもしないんですねえ。 女:人間素直な方が絶対いいからね。 男:正直すぎるのもどうかと思うけど。 女:言いたいことは言う。やりたいことはすぐ実行する。現代人に足りてない要素の2つだよ! 男:あー、だからお前、電話も突然かけてくるんだ? 女:電話なんて突然以外かけようがないじゃん。 男:急なんだよ。今だってこんな遅い時間じゃねーか。 女:出たじゃん。 男:出たけど。 女:ね? 男:「ね?」じゃないよ。そんなんだから俺お前の電話滅多に出ねえんじゃん。 女:そう!あんたってほんっと私の電話出ないよね!? 男:お前の着信履歴すげーよ。 女:何が? 男:まるでレッドカーペット。 女:それはあんたが私の電話ずっと無視するからでしょ!?不在着信の赤文字履歴がずっと溜まってるってことでしょ!? 男:別に無視してる訳じゃないよ。お前が毎回出るのだるい時にかけてくるだけ。 女:それを世間では無視って言うんだよ。 男:メッセージは別に無視してないだろーが。電話だけだろ? 女:電話は無視するじゃん。 男:頻度と時間帯が悪い。そんな頻繁に話したいこともねえし。 女:えー?まあ時間帯は確かに私が悪いかもだけど!……え?頻度は10日に1回とかしかかけてなくない? 男:3ヶ月に1回とかで良いかな。 女:少な。  :(間) 女:え、待って。なんかずっと私があんたにめちゃくちゃ惚れてて、ストーカーみたいにしつこい感じになってるけどさ? 男:うん。 女:私たちって友達だよね? 男:うん。 女:ネットだけど3年くらいの付き合いだよね? 男:うん、かなり長い付き合い。 女:割と仲良いよね? 男:うん、結構仲良い。 女:だよね!?……あー、良かった。  :(間) 男:まあ、深夜の電話に出ても良いかな、って思うくらいには、お前のこと好きだよ、俺。 女:……でも3ヶ月に1回くらいでしょ。 男:そう。3ヶ月に1回くらい。 女:そっか……。まあ、嫌われてないならいいや。 男:……おう。  :(間) 女:……また、かける。 男:3ヶ月後な。近況報告溜めといて、3ヶ月分。 女:明日かける。 男:絶対出ない。 女:あんたのこと本当に嫌い。 男:顔は? 女:……はあ?あんたねえ。 男:顔は? 女:……好き。 男:はは。良い気分だわ。 女:……はぁ。ほんっと嫌な男。