台本概要

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タイトル 野郎Dis-discord
作者名 机の上の地球儀  (@tsukuenoueno)
ジャンル その他
演者人数 2人用台本(男2)
時間 20 分
台本使用規定 商用、非商用問わず連絡不要
説明 (やろうディス・ディスコード)

通話/会話劇/会ったことのないネット友達

商用・非商用利用に問わず連絡不要。
告知画像・動画の作成もお好きにどうぞ。
(その際各画像・音源の著作権等にご注意・ご配慮ください)
ただし、有料チケット販売による公演の場合は、可能ならTwitterにご一報いただけますと嬉しいです。
台本の一部を朗読・練習する配信なども問題ございません。
兼ね役OK。1人全役演じ分けもご自由に。

地球儀の個人台本サイト:https://lit.link/tsukuenoueno

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
男① 171 男②のネット友達。男②がSNSにあげた自撮りが好みど真ん中でむかついている。
男② 169 男①のネット友達。ちやほやされたい時はSNSに自撮りをアップする。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
男①:ねえ。 男②:なんだよ? 男①:いい加減俺を解放してくれ……。 男②:…………(ため息をついて水を飲む)。 男①:もしもし?おい、無視すんなって。 男②:俺にどうしろって言うんだよ? 男①:言ってんじゃん。どうして欲しいかはずっと。 男②:無理。 男①:なんで? 男②:そのお願いは聞き入れられませんねえ。 男①:だからなんで。 男②:無理だから。 男①:なんで?  :(間) 男②:……え?逆にさ。なんでそんなに俺と会いたいの? 男①:会いたいから。 男②:理由になってねーし、普通に嫌。 男①:なんで? 男②:俺にメリットないじゃん。 男①:デメリットもないだろ。 男②:デメリットしかないよ。 男①:なんで? 男②:いやグイグイ来すぎな、お前!そもそもなんでわざわざ俺がお前に顔晒しにいかなきゃなんないんだよ? 男①:だから!確かめたいの!俺は!それだけ! 男②:俺は何も確かめることないし。 男①:本当に会うだけだから!たった5秒!お買い得!見たら満足して帰るから! 男②:交通費無駄すぎる。 男①:それじゃあ勿体無いから、そのまま飲み行こう!サシ飲み! 男②:やだ。何されるか分かんねーじゃん。 男①:何もしねーよ、別に! 男②:いや、普通に結構怖いよ?俺からすると。 男①:…………。  :(間) 男①:あ、分かった。デメリットを極力減らせば良いわけだ。 男②:いや、何が「あ、分かった」なんだよ。何も分かってねーよ、お前は。 男①:別に2人きりじゃなくてもいいから。10人とかでもいいから。 男②:そういう問題じゃねーよ!  :(間) 男②:え。ちょっと待って。もしかして、これってちょっと口説かれてるわけ?今?俺? 男①:え。逆に今までの会話なんだと思ってたの。 男②:え?本気で口説いてんの、これ?俺男だよ!?  :(間) 男①:ッスー……いや。なんかそういう風に言われるとまあ……違う気もするけど。 男②:うん。好きって言うか、「顔が好き」なだけだもんな?見たらすぐ帰るって、「顔を」だもんな? 男①:うん。俺、お前の顔めっちゃタイプ。 男②:いやー、野郎に言われるのは初めてだわ。 男②:……俺そんなに女顔かな? 男①:いや、女顔だとは思ってないけど。とりあえずめちゃくちゃに好き、お前の顔面。 男②:はあ……。写真載せなきゃ良かったな……。 男①:だから俺は確かめたい!お前が本当にタイプかどうか! 男②:確かめてどうすんだよ。 男①:「うわあ、本当に好きな顔だ」ってなる。 男②:何だそれ。 男①:気になるじゃん? 男②:……別に好みの顔のタイプなんてそこら中にいるだろ。この世の二分の一は女だ。男の俺である必要ないだろ。 男①:いやー。悲しいことに、お前の顔が人生で一番好きなんだよな。 男②:あー……そうなんだ。ありがとう。それは嬉しいなー……。 男①:大丈夫か?顔色悪いぞ。 男②:いや。前から顔が好きってのは聞いてたけどね。知ってたけどね、お前が俺のこと格好いいって言ってんのは。 男①:うん。 男②:でも、人生で一番ってのは知らなかったから。しかも男の中で一番じゃなくて、全性別中一番タイプの顔だって思ってるとは思わなかったから、さ……。なんかごめんな、イケメンで。 男①:お前めちゃくちゃ嫌な男だな。 男②:顔がいいって自覚はあるからな。 男①:はー。これだからイケメンは。 男②:いや、でも流石に野郎に好かれる顔ではないぞ、俺は。 男①:いや、世界一イケメンだから、お前。野郎も好きになっちゃうから。あ、いや……「美人」って言えばいいのか……? 男②:美人でもない。あのなあ。ネットに上げてる写真なんて、どうせ虚構だぞ。お前今まで何回も騙されてきただろ。 男①:でも前動画上げてたじゃん。動画はそんな加工できなくない? 男②:加工アプリの技術進化はすごいわけよ。 男①:あー。じゃあやっぱり騙されちゃってんだ、また。 男②:そう。騙されてるの、今回も。現在進行形で。しかも最低の形で!  :(間) 男①:はー、俺ほんとお前のこと嫌いだわ。 男②:なんでだよ。好きなのか嫌いなのかハッキリしろよ。好きって言ったろ、俺の顔。 男①:うん。どちゃくそに好き。 男②:ほら。 男①:だから嫌い。 男②:だからなんでだよ。 男①:だって、人生最高がお前なんだよ? 男②:うん。それは……そうだな。確かに。……残念だったねえ。 男②:いや、でもまあ良いじゃん。人生最高の顔と出会えるなんて中々ないだろ、多分。知らんけど。 男①:いや出会えてないじゃん。 男②:出会ってんじゃん。ほら。こうして話してるだろ。 男①:会えてないんだよな〜〜〜。 男②:大丈夫だって。すぐ他の女が更新するって、人生最高。 男①:いや、「どんぴしゃど真ん中」って中々なくない? 男②:……え?……いや、どうだろ。俺はないからな。ストライクど真ん中に好みの人と出会った経験。 男①:だろ? 男②:まあ。 男①:橋本環奈は可愛いってみんな思うじゃん?吉沢亮はイケメンってみんな思うじゃん?でも、お前の好みどんぴしゃど真ん中ストライクバッターアウトかって言われたら、話変わってこない? 男②:そう、だな。変わるな。 男①:そうなんだよ。変わるんだよ。 男②:……なるほど? 男①:で、現状俺の一番ど真ん中には、お前がいるわけ。 男②:可哀想。俺が。 男①:悔しい。お前が一番格好いい。 男②:……ありがとう? 男①:疑問系にすんな。噛み締めろ、俺の「格好いい」を! 男②:何それ。 男①:噛み締めて、ほら、今! 男②:……俺、格好いい? 男①:格好いい。一番。最高。お前がナンバーワン! 男②:ふ。ありがと。噛み締めた。 男①:おう、よく味わえ。 男②:何か段々自己肯定感上がってきたわ。 男①:おー。そりゃ良かった。 男②:おかげで自撮りをネットに上げていいね集めなくて済むかもな。 男①:え、なんで。それは上げてよ。 男②:食いつくなよ。 男①:いや、新しい自撮りは見たいじゃん。大事な判断材料じゃん。 男②:あんなん、ちやほやされてえなーって時に上げるくらいがちょうど良いんだよ。 男①:そんなもん? 男②:そんなもん。 男①:へえ。 男②:……誰かに肯定されたい時って、あるだろ。 男①:まあ、うん。 男②:自撮りってのは、そういう「寂しい」「認めて」って感情を吐き出した結果なんだよ。 男①:……なるほどね。 男②:ってことで、今お前が俺を認めてくれたから、しばらく撮る必要がなくなったのです。 男①:俺の「格好いい」で、しばらく分チャージできたわけだ。 男②:そういうこと。  :(間) 男①:(早口で)それはそれとして自撮りは見たいけどね? 男②:必死やめろ。 男①:じゃあ会おう! 男②:なんでそんなに会うことに拘るかなあ。 男①:顔が好きだから。 男②:顔だけな。 男①:いや、それは……。んんん。ん〜〜〜!? 男②:何だよ。 男①:いや……これ言うとなんか本当にガチな感じになるからさあ〜〜〜。 男②:今更?大丈夫だよ。お前、現在進行形でヤバい奴ポイントカード押され続けてるから。 男①:あ、そう? 男②:うん。もうすぐ貯まって景品がもらえるレベル。 男①:お前に会える券? 男②:それは絶対ない。それだけは確定でない。マジでない。 男①:一回会ったら冷めるって。会えないから会いたんだって。 男②:あー、ないものねだり的な? 男①:手に入らないから焦がれるわけよ。 男②:そんなもんですか。 男①:そんなもんですよ。 男②:ふぅん。 男①:俺が冷めたら、お前もこれ以上面倒じゃないじゃん。 男②:確かに。 男②:(ハッとして)……いや、でも別に好きでいてくれるんならそれに越したことはない、か……? 男①:は? 男②:好かれるのって気持ちいいもんな。 男①:え? 男②:(笑って)やっぱ一生好きでいていいよ。俺の顔。 男①:悪魔かお前は。 男②:天使だろ。 男①:顔だけな!?  :(間) 男①:(大きなため息)本当にお前の言う通りになりそうで怖い……。 男②:ご愁傷さまでーす。 男①:お前のことが気になって夜しか眠れない。 男②:寝れてんじゃん。 男①:俺の貴重な時間を無駄にしているという罪悪感はないのか。 男②:ない。俺にとったらそれ、貴重でもなんでもないもん。 男①:……お前、嫌な男ポイントカード作ったら一瞬で貯まるぞ。 男②:ウケる。 男①:ウケるな! 男②:(笑って)……で? 男①:え? 男②:ガチな感じになるけど、なに?  :(間) 男①:……俺さあ。 男②:うん? 男①:お前のさあ。 男②:うん。なに? 男①:……性格悪いとこ……好きなんだよね……。 男②:はい? 男①:あと、良い感じにクズい所も……。  :(間) 男②:趣味悪。 男①:……だよな。知ってる。 男②:えー。流石にキモいな、お前。 男①:だよな?……はーあ。だから余計翻弄されるんだよなあ。 男②:勝手に転がってるだけね、お前が。 男①:そういう感じも結構好きなんだよなあ。ずるい。 男②:何にもずるくないからね。どこの琴線に触れてんの、お前は。 男①:……人生最高がお前って事実が許せないんだよな。 男②:そう言われましても。 男①:だって、よりによってお前って。 男②:まあまあ、良いじゃん俺が一番。最高じゃん俺が一番。 男①:助けてくれよ、俺を。 男②:どうやってだよ、無理だよ。もう手遅れだろ、どう考えても。 男①:人助けだと思って救ってくれ、頼む。 男②:お前と会う時間があるなら、駅前で困ってるばあちゃん探す方が有意義だろうなー。 男①:お前俺に冷たすぎない? 男②:深夜3時の電話に出てる時点ですんごく優しいよ。 男①:……確かに。 男②:な? 男①:……でもさ。こうしてお前に縛られてる俺、可哀想すぎると思わない? 男②:思わない。むしろネタとして面白いからずっとそのままでいて欲しい。 男①:え?俺、一生お前を頭の特等席に置き続けなきゃなんないの? 男②:え。俺、今お前の頭の特等席にいんの?  :(間) 男①:いる……ね。 男②:それは草。 男①:草生やすな! 男②:ウケる。 男①:ウケんなって。 男②:ははっ。 男①:あーーー。 男②:あー腹痛ぇ、腹筋割れるわ。 男①:どうせもうバキバキだろ、イケメンなんだから。 男②:お前のイケメン像なんなの? 男①:しんどい……。 男②:俺は今、結構良い気分。 男①:あのさあ。 男②:なに? 男①:頼むから早く老いてくんない? 男②:は? 男①:早くじじいになってくれ。 男②:こらこらこら。人の老化を望むな。 男①:そうしたらタイプじゃなくなるかもしれない。ほら!早くしわくちゃになれ!ビールっ腹になれ!小太りになれー! 男②:人生でそう命令されるの、これが最初で最後だろうなー、多分。 男①:やった!俺が最初で最後の男! 男②:どこで喜んでんだ、お前は。  :(間) 男②:なあ。 男①:ん? 男②:……年取ってじじいになったら、もう俺に興味なくなっちゃうの? 男①:…………。 男②:なあってば。 男①:あのさ。「なくなっちゃうの?」って訊き方ずるくない?あざとくない、お前? 男②:ふは。……よし。今しわくちゃでも格好いいロマンスグレーになるって目標ができたわ。 男①:おー。勝手になれなれ。 男②:なれますかねえ?格好いいおじいちゃんに。 男①:あり得る。全然ある。保証する。 男②:会ったことないのに? 男①:ないのに。 男②:会ったことない人の言葉はな〜。信じられないからな〜。 男①:いや。なら、会ってよ。 男②:会ったらどうなんの? 男①:は?  :(間) 男②:会ったら、実際どういう反応するの? 男①:どうって……。 男②:写真と違ったら? 男①:違ったら? 男②:うん。 男①:写真と違って好みじゃなかったら……そうだな。  :(間) 男①:(咳払い)「あ、こんにちは」 男②:「こんにちは」 男①:「はじめまして」 男②:「はじめまして」 男①:(上から下まで男②を見て)「ッスー……はい。ありがとうございました」 男②:「もう良いんですか?」 男①:「はい、もういいです。それでは」 男②:「それでは」  :(間) 男①:……って、現地解散する。 男②:どっ最低じゃん。 男①:現地集合現地リリース。 男②:リリースって言うな。その時点じゃ捕まってねーわ! 男①:いや……ってかまあ、普通にそのまま遊ぶだろ。顔がタイプじゃなくても。お前はお前なんだし。 男②:まあ、な……。 男①:で、俺の熱も冷めて、俺はお前の呪縛から解放される。 男②:最初から呪ってねーし。 男①:呪われてんの、現在進行形で。 男②:人聞き悪いな。騙されてるだけだって。現在進行形で。  :(間) 男①:それ変わんなくない?どっちも。 男②:……変わんない、か。どっちも。  :(間) 男②:で? 男①:ん? 男②:実際会ってみて、写真通り好みだったらどうするの? 男①:好みだったら…… 男②:うん。  :(間) 男①:告白する……? 男②:ぷっ、はは……!お前なあ……! 男①:いやそりゃそうでしょ。性格好き、顔好き、そんなんもうそれしかないじゃん! 男②:だから俺男だって。 男①:今時、男も女も関係ないだろ! 男②:俺別に野郎から告白されたくないし、顔見られて「はい、ありがとうございました」って言われるのも癪に触るんだけど? 男①:癪に触るってお前なあ……。 男②:むかつくじゃん、なんか。 男①:まあ、そうだよな。顔見て「チェンジ」って言われてるようなもんだもんな。 男②:ほらな?やっぱりメリットないわ。 男①:そっか〜。 男②:……っていうか、そもそも俺に告白する想像ちゃんとできんの、お前? 男①:え?……いや。でき、ない、かも……? 男②:な?できないだろ?  :(間) 男①:え、でもさ。 男②:なんだよ? 男①:あ、ちょうどそれ。 男②:え? 男①:その「なんだよ?」って言うの、結構好き。 男②:ええ? 男①:俺、お前の声も割と好きだよって話! 男②:…………ふ。 男①:おい、ちょっとにやけたのバレてるぞ。 男②:だって。 男①:なに? 男②:そうは言っても嬉しいじゃん、普通に。 男①:うん。 男②:顔に、性格に、声も? 男①:……うん。 男②:全部じゃねーか。 男①:ね。全部なんだよね。 男②:ふぅん。 男①:だから、会って実際タイプかどうか確かめたいわけだ。 男②:あ、結局そこに戻るんだ。 男①:戻るだろ。 男②:そこで顔もチェックするあたりがクズなんだよな〜。そこは男らしく「顔は関係ない」って言えないもんかね? 男①:ばっか、お前。そういうこと言う奴の方が胡散臭いだろ。 男②:そうかな。 男①:そうだよ。俺くらい正直な方が絶対いい。 男②:正直すぎるのもどうかと思うけど。 男①:言いたいことは言う。やりたいことはすぐ実行する。現代人に足りてない要素の2つだぞ。 男②:あー、だから電話も突然かけてくるんだ。 男①:電話なんて突然以外かけようがないだろ。 男②:急なんだよ。今だってこんな遅い時間じゃねーか。 男①:出たじゃん。 男②:出たけど。 男①:な? 男②:「な?」じゃないよ。そんなんだから俺、お前の電話滅多に出ないんだからな。 男①:そう!お前ほんっと俺の電話出ないよな!? 男②:お前の着信履歴すごいよ。 男①:何が? 男②:まるでレッドカーペット。 男①:それはお前が俺の電話ずっと無視するからだろ!?不在着信の赤文字履歴がずっと溜まってるってことだろ!? 男②:別に無視してる訳じゃないよ。お前が毎回出るのだるい時にかけてくるだけ。 男①:それを世間では無視って言うんだよ。 男②:メッセージは別に無視してないだろ。電話だけじゃん。 男①:電話は無視するじゃん。 男②:頻度と時間帯が悪い。そんな頻繁に話したいことないし。 男①:あー、まあ時間帯は確かに俺が悪いけど!……え?頻度は10日に1回とかしかかけてなくない? 男②:3ヶ月に1回とかで良い。 男①:少な。  :(間) 男①:え、待って。なんかずっと俺がお前にめちゃくちゃ惚れてて、ストーカーみたいにしつこい感じになってるけどさ? 男②:うん。 男①:俺ら友達だよね? 男②:うん。 男①:ネットだけど3年くらいの付き合いだよね? 男②:うん、かなり長い付き合い。 男①:割と仲良いよね? 男②:うん、結構仲良い。 男①:だよな!?……あー、良かった。  :(間) 男②:まあ、お前とは気ぃ合うし、電話出ても良いかな、って思うくらいには、俺お前のこと好きだよ。 男①:……3ヶ月に1回くらいだろ。 男②:そう。3ヶ月に1回くらい。 男①:そっか……。まあ、嫌われてないならいいわ。 男②:……おう。  :(間) 男①:……また、かける。 男②:3ヶ月後な。近況報告溜めといて、3ヶ月分。 男①:明日かける。 男②:絶対出ない。 男①:お前ほんっとに嫌い。 男②:顔は? 男①:……はあ?お前なあ。 男②:顔は? 男①:……好き。 男②:ふふ。良い気分。 男①:……はぁ。ほんっと嫌な男。

男①:ねえ。 男②:なんだよ? 男①:いい加減俺を解放してくれ……。 男②:…………(ため息をついて水を飲む)。 男①:もしもし?おい、無視すんなって。 男②:俺にどうしろって言うんだよ? 男①:言ってんじゃん。どうして欲しいかはずっと。 男②:無理。 男①:なんで? 男②:そのお願いは聞き入れられませんねえ。 男①:だからなんで。 男②:無理だから。 男①:なんで?  :(間) 男②:……え?逆にさ。なんでそんなに俺と会いたいの? 男①:会いたいから。 男②:理由になってねーし、普通に嫌。 男①:なんで? 男②:俺にメリットないじゃん。 男①:デメリットもないだろ。 男②:デメリットしかないよ。 男①:なんで? 男②:いやグイグイ来すぎな、お前!そもそもなんでわざわざ俺がお前に顔晒しにいかなきゃなんないんだよ? 男①:だから!確かめたいの!俺は!それだけ! 男②:俺は何も確かめることないし。 男①:本当に会うだけだから!たった5秒!お買い得!見たら満足して帰るから! 男②:交通費無駄すぎる。 男①:それじゃあ勿体無いから、そのまま飲み行こう!サシ飲み! 男②:やだ。何されるか分かんねーじゃん。 男①:何もしねーよ、別に! 男②:いや、普通に結構怖いよ?俺からすると。 男①:…………。  :(間) 男①:あ、分かった。デメリットを極力減らせば良いわけだ。 男②:いや、何が「あ、分かった」なんだよ。何も分かってねーよ、お前は。 男①:別に2人きりじゃなくてもいいから。10人とかでもいいから。 男②:そういう問題じゃねーよ!  :(間) 男②:え。ちょっと待って。もしかして、これってちょっと口説かれてるわけ?今?俺? 男①:え。逆に今までの会話なんだと思ってたの。 男②:え?本気で口説いてんの、これ?俺男だよ!?  :(間) 男①:ッスー……いや。なんかそういう風に言われるとまあ……違う気もするけど。 男②:うん。好きって言うか、「顔が好き」なだけだもんな?見たらすぐ帰るって、「顔を」だもんな? 男①:うん。俺、お前の顔めっちゃタイプ。 男②:いやー、野郎に言われるのは初めてだわ。 男②:……俺そんなに女顔かな? 男①:いや、女顔だとは思ってないけど。とりあえずめちゃくちゃに好き、お前の顔面。 男②:はあ……。写真載せなきゃ良かったな……。 男①:だから俺は確かめたい!お前が本当にタイプかどうか! 男②:確かめてどうすんだよ。 男①:「うわあ、本当に好きな顔だ」ってなる。 男②:何だそれ。 男①:気になるじゃん? 男②:……別に好みの顔のタイプなんてそこら中にいるだろ。この世の二分の一は女だ。男の俺である必要ないだろ。 男①:いやー。悲しいことに、お前の顔が人生で一番好きなんだよな。 男②:あー……そうなんだ。ありがとう。それは嬉しいなー……。 男①:大丈夫か?顔色悪いぞ。 男②:いや。前から顔が好きってのは聞いてたけどね。知ってたけどね、お前が俺のこと格好いいって言ってんのは。 男①:うん。 男②:でも、人生で一番ってのは知らなかったから。しかも男の中で一番じゃなくて、全性別中一番タイプの顔だって思ってるとは思わなかったから、さ……。なんかごめんな、イケメンで。 男①:お前めちゃくちゃ嫌な男だな。 男②:顔がいいって自覚はあるからな。 男①:はー。これだからイケメンは。 男②:いや、でも流石に野郎に好かれる顔ではないぞ、俺は。 男①:いや、世界一イケメンだから、お前。野郎も好きになっちゃうから。あ、いや……「美人」って言えばいいのか……? 男②:美人でもない。あのなあ。ネットに上げてる写真なんて、どうせ虚構だぞ。お前今まで何回も騙されてきただろ。 男①:でも前動画上げてたじゃん。動画はそんな加工できなくない? 男②:加工アプリの技術進化はすごいわけよ。 男①:あー。じゃあやっぱり騙されちゃってんだ、また。 男②:そう。騙されてるの、今回も。現在進行形で。しかも最低の形で!  :(間) 男①:はー、俺ほんとお前のこと嫌いだわ。 男②:なんでだよ。好きなのか嫌いなのかハッキリしろよ。好きって言ったろ、俺の顔。 男①:うん。どちゃくそに好き。 男②:ほら。 男①:だから嫌い。 男②:だからなんでだよ。 男①:だって、人生最高がお前なんだよ? 男②:うん。それは……そうだな。確かに。……残念だったねえ。 男②:いや、でもまあ良いじゃん。人生最高の顔と出会えるなんて中々ないだろ、多分。知らんけど。 男①:いや出会えてないじゃん。 男②:出会ってんじゃん。ほら。こうして話してるだろ。 男①:会えてないんだよな〜〜〜。 男②:大丈夫だって。すぐ他の女が更新するって、人生最高。 男①:いや、「どんぴしゃど真ん中」って中々なくない? 男②:……え?……いや、どうだろ。俺はないからな。ストライクど真ん中に好みの人と出会った経験。 男①:だろ? 男②:まあ。 男①:橋本環奈は可愛いってみんな思うじゃん?吉沢亮はイケメンってみんな思うじゃん?でも、お前の好みどんぴしゃど真ん中ストライクバッターアウトかって言われたら、話変わってこない? 男②:そう、だな。変わるな。 男①:そうなんだよ。変わるんだよ。 男②:……なるほど? 男①:で、現状俺の一番ど真ん中には、お前がいるわけ。 男②:可哀想。俺が。 男①:悔しい。お前が一番格好いい。 男②:……ありがとう? 男①:疑問系にすんな。噛み締めろ、俺の「格好いい」を! 男②:何それ。 男①:噛み締めて、ほら、今! 男②:……俺、格好いい? 男①:格好いい。一番。最高。お前がナンバーワン! 男②:ふ。ありがと。噛み締めた。 男①:おう、よく味わえ。 男②:何か段々自己肯定感上がってきたわ。 男①:おー。そりゃ良かった。 男②:おかげで自撮りをネットに上げていいね集めなくて済むかもな。 男①:え、なんで。それは上げてよ。 男②:食いつくなよ。 男①:いや、新しい自撮りは見たいじゃん。大事な判断材料じゃん。 男②:あんなん、ちやほやされてえなーって時に上げるくらいがちょうど良いんだよ。 男①:そんなもん? 男②:そんなもん。 男①:へえ。 男②:……誰かに肯定されたい時って、あるだろ。 男①:まあ、うん。 男②:自撮りってのは、そういう「寂しい」「認めて」って感情を吐き出した結果なんだよ。 男①:……なるほどね。 男②:ってことで、今お前が俺を認めてくれたから、しばらく撮る必要がなくなったのです。 男①:俺の「格好いい」で、しばらく分チャージできたわけだ。 男②:そういうこと。  :(間) 男①:(早口で)それはそれとして自撮りは見たいけどね? 男②:必死やめろ。 男①:じゃあ会おう! 男②:なんでそんなに会うことに拘るかなあ。 男①:顔が好きだから。 男②:顔だけな。 男①:いや、それは……。んんん。ん〜〜〜!? 男②:何だよ。 男①:いや……これ言うとなんか本当にガチな感じになるからさあ〜〜〜。 男②:今更?大丈夫だよ。お前、現在進行形でヤバい奴ポイントカード押され続けてるから。 男①:あ、そう? 男②:うん。もうすぐ貯まって景品がもらえるレベル。 男①:お前に会える券? 男②:それは絶対ない。それだけは確定でない。マジでない。 男①:一回会ったら冷めるって。会えないから会いたんだって。 男②:あー、ないものねだり的な? 男①:手に入らないから焦がれるわけよ。 男②:そんなもんですか。 男①:そんなもんですよ。 男②:ふぅん。 男①:俺が冷めたら、お前もこれ以上面倒じゃないじゃん。 男②:確かに。 男②:(ハッとして)……いや、でも別に好きでいてくれるんならそれに越したことはない、か……? 男①:は? 男②:好かれるのって気持ちいいもんな。 男①:え? 男②:(笑って)やっぱ一生好きでいていいよ。俺の顔。 男①:悪魔かお前は。 男②:天使だろ。 男①:顔だけな!?  :(間) 男①:(大きなため息)本当にお前の言う通りになりそうで怖い……。 男②:ご愁傷さまでーす。 男①:お前のことが気になって夜しか眠れない。 男②:寝れてんじゃん。 男①:俺の貴重な時間を無駄にしているという罪悪感はないのか。 男②:ない。俺にとったらそれ、貴重でもなんでもないもん。 男①:……お前、嫌な男ポイントカード作ったら一瞬で貯まるぞ。 男②:ウケる。 男①:ウケるな! 男②:(笑って)……で? 男①:え? 男②:ガチな感じになるけど、なに?  :(間) 男①:……俺さあ。 男②:うん? 男①:お前のさあ。 男②:うん。なに? 男①:……性格悪いとこ……好きなんだよね……。 男②:はい? 男①:あと、良い感じにクズい所も……。  :(間) 男②:趣味悪。 男①:……だよな。知ってる。 男②:えー。流石にキモいな、お前。 男①:だよな?……はーあ。だから余計翻弄されるんだよなあ。 男②:勝手に転がってるだけね、お前が。 男①:そういう感じも結構好きなんだよなあ。ずるい。 男②:何にもずるくないからね。どこの琴線に触れてんの、お前は。 男①:……人生最高がお前って事実が許せないんだよな。 男②:そう言われましても。 男①:だって、よりによってお前って。 男②:まあまあ、良いじゃん俺が一番。最高じゃん俺が一番。 男①:助けてくれよ、俺を。 男②:どうやってだよ、無理だよ。もう手遅れだろ、どう考えても。 男①:人助けだと思って救ってくれ、頼む。 男②:お前と会う時間があるなら、駅前で困ってるばあちゃん探す方が有意義だろうなー。 男①:お前俺に冷たすぎない? 男②:深夜3時の電話に出てる時点ですんごく優しいよ。 男①:……確かに。 男②:な? 男①:……でもさ。こうしてお前に縛られてる俺、可哀想すぎると思わない? 男②:思わない。むしろネタとして面白いからずっとそのままでいて欲しい。 男①:え?俺、一生お前を頭の特等席に置き続けなきゃなんないの? 男②:え。俺、今お前の頭の特等席にいんの?  :(間) 男①:いる……ね。 男②:それは草。 男①:草生やすな! 男②:ウケる。 男①:ウケんなって。 男②:ははっ。 男①:あーーー。 男②:あー腹痛ぇ、腹筋割れるわ。 男①:どうせもうバキバキだろ、イケメンなんだから。 男②:お前のイケメン像なんなの? 男①:しんどい……。 男②:俺は今、結構良い気分。 男①:あのさあ。 男②:なに? 男①:頼むから早く老いてくんない? 男②:は? 男①:早くじじいになってくれ。 男②:こらこらこら。人の老化を望むな。 男①:そうしたらタイプじゃなくなるかもしれない。ほら!早くしわくちゃになれ!ビールっ腹になれ!小太りになれー! 男②:人生でそう命令されるの、これが最初で最後だろうなー、多分。 男①:やった!俺が最初で最後の男! 男②:どこで喜んでんだ、お前は。  :(間) 男②:なあ。 男①:ん? 男②:……年取ってじじいになったら、もう俺に興味なくなっちゃうの? 男①:…………。 男②:なあってば。 男①:あのさ。「なくなっちゃうの?」って訊き方ずるくない?あざとくない、お前? 男②:ふは。……よし。今しわくちゃでも格好いいロマンスグレーになるって目標ができたわ。 男①:おー。勝手になれなれ。 男②:なれますかねえ?格好いいおじいちゃんに。 男①:あり得る。全然ある。保証する。 男②:会ったことないのに? 男①:ないのに。 男②:会ったことない人の言葉はな〜。信じられないからな〜。 男①:いや。なら、会ってよ。 男②:会ったらどうなんの? 男①:は?  :(間) 男②:会ったら、実際どういう反応するの? 男①:どうって……。 男②:写真と違ったら? 男①:違ったら? 男②:うん。 男①:写真と違って好みじゃなかったら……そうだな。  :(間) 男①:(咳払い)「あ、こんにちは」 男②:「こんにちは」 男①:「はじめまして」 男②:「はじめまして」 男①:(上から下まで男②を見て)「ッスー……はい。ありがとうございました」 男②:「もう良いんですか?」 男①:「はい、もういいです。それでは」 男②:「それでは」  :(間) 男①:……って、現地解散する。 男②:どっ最低じゃん。 男①:現地集合現地リリース。 男②:リリースって言うな。その時点じゃ捕まってねーわ! 男①:いや……ってかまあ、普通にそのまま遊ぶだろ。顔がタイプじゃなくても。お前はお前なんだし。 男②:まあ、な……。 男①:で、俺の熱も冷めて、俺はお前の呪縛から解放される。 男②:最初から呪ってねーし。 男①:呪われてんの、現在進行形で。 男②:人聞き悪いな。騙されてるだけだって。現在進行形で。  :(間) 男①:それ変わんなくない?どっちも。 男②:……変わんない、か。どっちも。  :(間) 男②:で? 男①:ん? 男②:実際会ってみて、写真通り好みだったらどうするの? 男①:好みだったら…… 男②:うん。  :(間) 男①:告白する……? 男②:ぷっ、はは……!お前なあ……! 男①:いやそりゃそうでしょ。性格好き、顔好き、そんなんもうそれしかないじゃん! 男②:だから俺男だって。 男①:今時、男も女も関係ないだろ! 男②:俺別に野郎から告白されたくないし、顔見られて「はい、ありがとうございました」って言われるのも癪に触るんだけど? 男①:癪に触るってお前なあ……。 男②:むかつくじゃん、なんか。 男①:まあ、そうだよな。顔見て「チェンジ」って言われてるようなもんだもんな。 男②:ほらな?やっぱりメリットないわ。 男①:そっか〜。 男②:……っていうか、そもそも俺に告白する想像ちゃんとできんの、お前? 男①:え?……いや。でき、ない、かも……? 男②:な?できないだろ?  :(間) 男①:え、でもさ。 男②:なんだよ? 男①:あ、ちょうどそれ。 男②:え? 男①:その「なんだよ?」って言うの、結構好き。 男②:ええ? 男①:俺、お前の声も割と好きだよって話! 男②:…………ふ。 男①:おい、ちょっとにやけたのバレてるぞ。 男②:だって。 男①:なに? 男②:そうは言っても嬉しいじゃん、普通に。 男①:うん。 男②:顔に、性格に、声も? 男①:……うん。 男②:全部じゃねーか。 男①:ね。全部なんだよね。 男②:ふぅん。 男①:だから、会って実際タイプかどうか確かめたいわけだ。 男②:あ、結局そこに戻るんだ。 男①:戻るだろ。 男②:そこで顔もチェックするあたりがクズなんだよな〜。そこは男らしく「顔は関係ない」って言えないもんかね? 男①:ばっか、お前。そういうこと言う奴の方が胡散臭いだろ。 男②:そうかな。 男①:そうだよ。俺くらい正直な方が絶対いい。 男②:正直すぎるのもどうかと思うけど。 男①:言いたいことは言う。やりたいことはすぐ実行する。現代人に足りてない要素の2つだぞ。 男②:あー、だから電話も突然かけてくるんだ。 男①:電話なんて突然以外かけようがないだろ。 男②:急なんだよ。今だってこんな遅い時間じゃねーか。 男①:出たじゃん。 男②:出たけど。 男①:な? 男②:「な?」じゃないよ。そんなんだから俺、お前の電話滅多に出ないんだからな。 男①:そう!お前ほんっと俺の電話出ないよな!? 男②:お前の着信履歴すごいよ。 男①:何が? 男②:まるでレッドカーペット。 男①:それはお前が俺の電話ずっと無視するからだろ!?不在着信の赤文字履歴がずっと溜まってるってことだろ!? 男②:別に無視してる訳じゃないよ。お前が毎回出るのだるい時にかけてくるだけ。 男①:それを世間では無視って言うんだよ。 男②:メッセージは別に無視してないだろ。電話だけじゃん。 男①:電話は無視するじゃん。 男②:頻度と時間帯が悪い。そんな頻繁に話したいことないし。 男①:あー、まあ時間帯は確かに俺が悪いけど!……え?頻度は10日に1回とかしかかけてなくない? 男②:3ヶ月に1回とかで良い。 男①:少な。  :(間) 男①:え、待って。なんかずっと俺がお前にめちゃくちゃ惚れてて、ストーカーみたいにしつこい感じになってるけどさ? 男②:うん。 男①:俺ら友達だよね? 男②:うん。 男①:ネットだけど3年くらいの付き合いだよね? 男②:うん、かなり長い付き合い。 男①:割と仲良いよね? 男②:うん、結構仲良い。 男①:だよな!?……あー、良かった。  :(間) 男②:まあ、お前とは気ぃ合うし、電話出ても良いかな、って思うくらいには、俺お前のこと好きだよ。 男①:……3ヶ月に1回くらいだろ。 男②:そう。3ヶ月に1回くらい。 男①:そっか……。まあ、嫌われてないならいいわ。 男②:……おう。  :(間) 男①:……また、かける。 男②:3ヶ月後な。近況報告溜めといて、3ヶ月分。 男①:明日かける。 男②:絶対出ない。 男①:お前ほんっとに嫌い。 男②:顔は? 男①:……はあ?お前なあ。 男②:顔は? 男①:……好き。 男②:ふふ。良い気分。 男①:……はぁ。ほんっと嫌な男。