台本概要
158 views
タイトル | The name makes a person |
---|---|
作者名 | ペペドルトン・ササミ (@pe2dorton) |
ジャンル | その他 |
演者人数 | 2人用台本(女2) |
時間 | 20 分 |
台本使用規定 | 商用、非商用問わず連絡不要 |
説明 |
女子大生2人。 何気ない会話劇。 性別変更不可。 過度なアドリブ不可。 158 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
ちょこ | 女 | 80 | (M)は独白 |
ナミ | 女 | 68 | 面接官役を兼ねます。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
ちょこ:(M)ほとんどの人が、ほんの少し、可哀想なものを見るかのようになる。どんな立派な志望動機を述べようと、学生生活で何を学んでいようと――
ナミ:(面接官)次の方どうぞ。
ちょこ:失礼します。
0:ちょこ、扉を開けて入ってくる
ナミ:(面接官)そちらにお座り下さい。
ちょこ:はい。
ナミ:(面接官)お名前をどうぞ。
ちょこ:はい。『藤田ちょこ』と申します。
ナミ:(面接官)藤田、『ちよこ』さんですね。
ちょこ:あ、あの
ナミ:(面接官)どうかされましたか?
ちょこ:『ちよこ』ではなく、『ちょこ』なんです。
ナミ:(面接官)え?
ちょこ:『藤田ちょこ』と申します。
ナミ:(面接官)そう、ですか。
ちょこ:…すみません。
ナミ:(面接官)こちらこそ失礼しました。では…早速ですが志望動機をお聞かせ下さい。
ちょこ:はい。私が、御社を希望する理由は――
:
ちょこ:(M)――どれだけ会社に貢献できる人材かをアピールしようと…既に押す判は決まっているという目。
ナミ:(面接官)ありがとうございました。面接は以上です。結果は1週間以内にメールでお知らせします。最後に、何か質問や言い残したことはありますか?
ちょこ:ございません。本日はありがとうございました。
ナミ:(面接官)お疲れさまでした。
ちょこ:失礼致します。
0:ちょこ、部屋を出ていく
ちょこ:……はぁ。
:
ちょこ:(M)ちょこ。それが私の名前。千の代(だい)の子と書いてちょこと読む。両親はカタカナにしたかったけど、おばあちゃんが猛反対して漢字にしたそうだ。今はおばあちゃんに少し感謝している。
:
ちょこ:さむっ。
:
ちょこ:(M)もう2月なのに内定がない。同期のほとんどが残されたキャンパスライフを謳歌してるのに…それもこれも…。
:
ちょこ:あっ。…もう売ってるんだ。
:
ちょこ:(M)30年ぐらい前の2月14日。母が父に手作りのチョコを渡して告白したことで、二人は付き合った。その数年後、同じ日に入籍。そして数年後の2月14日、私が生まれた。まるで狙ったかのように。名前は『ちょこ』。二人にはそれ以外の選択肢は無かったそうだ。
ちょこ:(M)履歴書には「ちよこ」と書いた方がいいか相談した。でも履歴書に嘘を書いてはいけないと言われた。面接でも間違えられたら訂正するようにとも。でも訂正することが本当に正しいのかわからなくなってきた…。
:
ちょこ:はぁ…。
ナミ:ちょこ?
ちょこ:……。(振り向かない)
ナミ:ねぇ。
ちょこ:……。(振り向かない)
ナミ:ねぇ!ちょこってば!
ちょこ:わっ!
ナミ:なんで無視すんのよ。
ちょこ:ナミ!ごめん。ボーっとしてた。
ナミ:面接帰り?
ちょこ:うん。
ナミ:どうだった?
ちょこ:きっとダメ。ナミはなにしてんの?買い物?
ナミ:まぁそんな感じ。このあと暇?
ちょこ:うん。
ナミ:気晴らしにお茶でもしようよ!
ちょこ:いいよ。
0:〈カフェ〉
ちょこ:ナミは就職決まったんだっけ?
ナミ:うん。
ちょこ:いいなー。
ナミ:でも、蹴った。
ちょこ:え?
ナミ:やめたの。就職。
ちょこ:どうして…?
ナミ:自分でもよく分かんないんだよね…いい会社だったし。
ちょこ:もったいない。
ナミ:そこさ。適当に受けたとこだったから。
ナミ:第一志望の業界は全部ダメで、投げやりに受けたトコだったの。でも冷静に考えたら、無理だなと思って。
ちょこ:私なんてどこ受けてもダメだよ。お先真っ暗。
ナミ:ちょこは何したいの?
ちょこ:え?
ナミ:就職してさ、何したいの?
ちょこ:うーん…。
ちょこ:働いて、お金貰って、それで…。
ナミ:それで?
ちょこ:…分かんない。
ナミ:私も分かんなかった。
ちょこ:でも、就職しなきゃ。
ナミ:どうして?
ちょこ:どうしてって、みんなしてるし。
ナミ:でも、ちょこはちょこじゃん。
ちょこ:そんなの…。
ちょこ:ナミは内定もらった事があるからそんなこと言えるんだよ。一度でも社会に認められたでしょ?でも私は違う…。毎回毎回、名前を言うだけで冷たい目で見られて、何話しても無駄で…ナミには分かんないよ。
0:少しの間
ちょこ:…ごめん。
ナミ:ううん。いいの。私こそごめんね。
0:気まずい沈黙の時間が流れる
ちょこ:ナミはさ、就職辞めて何するの?
ナミ:決めてない…ずっと学生だったでしょ。社会のこと何も知らないまま、正社員になって仕事に追われたくないなって思ってさ。バイトしながら考えようと思って。
ちょこ:ふーん。
ナミ:周りから見れば甘いって言われるかも知れないけどさ、「やりたい」って思えて、あっちも私が必要だって思ってくれるトコがあればいいなぁって。
ちょこ:あるといいよね。
ナミ:まぁ少なくとも、やりたいって思えて、そのために頑張れる事を見つけたいなって思ってる。それならありそうでしょ?
ちょこ:そのために頑張れる、か。
ナミ:でも、それって逃げかもね。
ちょこ:逃げ?
ナミ:私、逃げてばっかりだから。
ちょこ:そんなことないよ。
ナミ:あるんだよ。誰にも言ってなかったんだけどさ、私、大学入る前に改名したんだ
ちょこ:え?
ナミ:私、前は大木ラブって名前だったの。
ちょこ:ラブ?
ナミ:そ。愛と書いてラブ。両親が大恋愛の末の結婚らしくてさ、その愛の結晶が私ってことで、そうしたんだって。
ちょこ:ラブ…。
ナミ:ペットみたいでしょ?
ちょこ:う…ううん!
ナミ:いいのいいの。小さい頃は、その名前が好きだったけど、中学生や高校生になるとどんどん嫌になって、親を恨んで、しんどかったんだよね。それで、高校卒業してすぐ改名したの。
ちょこ:そうなんだ…。
ナミ:親は泣いてたけどね。今でもラブって呼ぶし…だから、ちょこのこと尊敬してる。
ちょこ:……。
ナミ:今だから言うけど、最初にちょこに会った時、可哀想だなって思った。私と同じだって。私みたいに馬鹿親に馬鹿みたいな名前付けられて…でもね、それは違うって思った。
ちょこ:どうして?
ナミ:だってちょこ、両親の話、笑顔でするから。
ちょこ:え?
ナミ:私はできない、今でも…。だから全部から逃げたの。名前が付くもの全部捨てた。アルバムも卒業証書も寄せ書きとか全部。親ともほとんど口利いてない。今でも両親の事、完全には許せてない。これが自分勝手だって分かってても。愛してくれてるって分かってても。
ちょこ:それは…。
ナミ:名前の時と同じように、就職からも逃げた。だから、逃げてないちょこは偉いと思う。
ちょこ:逃げじゃないよ。
ナミ:いいのいいの、フォローしなくて。
ちょこ:本当にそう思うから。フォローとかじゃない。
ナミ:……。
ちょこ:ナミが逃げなら、私だって逃げだよ。
ナミ:どうしてよ。
ちょこ:私なんか、何にも考えなかった。ナミの話聞くまで、改名なんて考えた事なかった。就職しないって選択も、全然。ただただ何にも考えずに流れに任せて、でも文句ばっかり言って、でも何にも行動しなくて…それだって逃げだよ。
ナミ:ちょこ…。
ちょこ:ナミが逃げなら、私も逃げ。私が逃げじゃないなら、ナミも逃げじゃない。
ナミ:そうかな…。
ちょこ:それに私思うんだけど、逃げだって一歩進んでるんだって。
ナミ:え?
ちょこ:ただの屁理屈だし、支離滅裂だけど、一歩動いてるのと同じだって。それが少し方向が違うだけだって。後ろに逃げるってのはターンして一歩踏み出しただけ。鬼ごっこだって逃げてる方が進む方向を決めて、自分の意志で動いてる。だから逃げたっていいんじゃないかな。
ナミ:プッ…ハハハハハハ!、
ちょこ:え、私なんかおかしい事言ったかな。
ナミ:ごめんごめん、ちょこらしいなと思って。
ちょこ:そ、そうかな?
ナミ:…ほんとメチャクチャなんだから。
ちょこ:ごめん。
ナミ:逃げたっていい、か。でも、いつかは戦わなきゃね。
ちょこ:そうだね。でも負けてボロボロになるくらいなら逃げていいんじゃないかな。
ナミ:そうかもね。
ちょこ:分かんないけど。私は『今は』そう思ってる。
ナミ:…ねぇ。
ちょこ:なに?
ナミ:チョコ買いに行こ
ちょこ:え?
ナミ:なんか食べたくなっちゃった。もうすぐ誕生日でしょ?ちょっと早いけど、かわいいチョコ買ってあげる!
ちょこ:何それ?イジってるの?
ナミ:そうじゃないって!ちょこにチョコ買ってあげたくなっただけ。ちょこがかわいいチョコ食べてるのが見たいの!
ちょこ:完全にイジってるじゃん!
ナミ:ほーら!早く行こ!
0:(カフェを出る二人)
ちょこ:(M)今の私は正しいのか、それとも逃げなのか、そんなことは分からない。もしかしたら何年後かに後悔するかも。きっとするんだろうな。でも、何をしてても人は後悔するんだろうなとも思う。堂々めぐりだな。ナミの言う通りメチャクチャだ。
ちょこ:(M)でも…だから…ともかくなんか分かんないけど、私はギリギリまで就活しようと思った。ダメかも知れないけど、やれる事をやろうって。
0:(道を歩く二人)
ちょこ:チョコに関係する会社でも受けようかな。
ナミ:え、マジ?
ちょこ:もしかしたら興味持ってもらえるかも知れないじゃん。
ナミ:確かに。アリかも…。
ちょこ:興味ないけど。
ナミ:人がせっかく話に乗ったのに…
ちょこ:だってホントの事だもん。
ナミ:ま、まあ、いいじゃない?
ちょこ:本当にそう思ってる?
ナミ:だって、チョコレート屋さんの人がちょこさんなんて、ワクワクするよ。
ちょこ:わくわく?
ナミ:ともかく、アリだよ!早速探してみなよ!
ちょこ:そうだね。
ナミ:そうと決まれば、いろんなチョコみて勉強しよう!ほら早く早く!
ちょこ:ちょ、ちょっと!!
0:〈終劇〉
ちょこ:(M)ほとんどの人が、ほんの少し、可哀想なものを見るかのようになる。どんな立派な志望動機を述べようと、学生生活で何を学んでいようと――
ナミ:(面接官)次の方どうぞ。
ちょこ:失礼します。
0:ちょこ、扉を開けて入ってくる
ナミ:(面接官)そちらにお座り下さい。
ちょこ:はい。
ナミ:(面接官)お名前をどうぞ。
ちょこ:はい。『藤田ちょこ』と申します。
ナミ:(面接官)藤田、『ちよこ』さんですね。
ちょこ:あ、あの
ナミ:(面接官)どうかされましたか?
ちょこ:『ちよこ』ではなく、『ちょこ』なんです。
ナミ:(面接官)え?
ちょこ:『藤田ちょこ』と申します。
ナミ:(面接官)そう、ですか。
ちょこ:…すみません。
ナミ:(面接官)こちらこそ失礼しました。では…早速ですが志望動機をお聞かせ下さい。
ちょこ:はい。私が、御社を希望する理由は――
:
ちょこ:(M)――どれだけ会社に貢献できる人材かをアピールしようと…既に押す判は決まっているという目。
ナミ:(面接官)ありがとうございました。面接は以上です。結果は1週間以内にメールでお知らせします。最後に、何か質問や言い残したことはありますか?
ちょこ:ございません。本日はありがとうございました。
ナミ:(面接官)お疲れさまでした。
ちょこ:失礼致します。
0:ちょこ、部屋を出ていく
ちょこ:……はぁ。
:
ちょこ:(M)ちょこ。それが私の名前。千の代(だい)の子と書いてちょこと読む。両親はカタカナにしたかったけど、おばあちゃんが猛反対して漢字にしたそうだ。今はおばあちゃんに少し感謝している。
:
ちょこ:さむっ。
:
ちょこ:(M)もう2月なのに内定がない。同期のほとんどが残されたキャンパスライフを謳歌してるのに…それもこれも…。
:
ちょこ:あっ。…もう売ってるんだ。
:
ちょこ:(M)30年ぐらい前の2月14日。母が父に手作りのチョコを渡して告白したことで、二人は付き合った。その数年後、同じ日に入籍。そして数年後の2月14日、私が生まれた。まるで狙ったかのように。名前は『ちょこ』。二人にはそれ以外の選択肢は無かったそうだ。
ちょこ:(M)履歴書には「ちよこ」と書いた方がいいか相談した。でも履歴書に嘘を書いてはいけないと言われた。面接でも間違えられたら訂正するようにとも。でも訂正することが本当に正しいのかわからなくなってきた…。
:
ちょこ:はぁ…。
ナミ:ちょこ?
ちょこ:……。(振り向かない)
ナミ:ねぇ。
ちょこ:……。(振り向かない)
ナミ:ねぇ!ちょこってば!
ちょこ:わっ!
ナミ:なんで無視すんのよ。
ちょこ:ナミ!ごめん。ボーっとしてた。
ナミ:面接帰り?
ちょこ:うん。
ナミ:どうだった?
ちょこ:きっとダメ。ナミはなにしてんの?買い物?
ナミ:まぁそんな感じ。このあと暇?
ちょこ:うん。
ナミ:気晴らしにお茶でもしようよ!
ちょこ:いいよ。
0:〈カフェ〉
ちょこ:ナミは就職決まったんだっけ?
ナミ:うん。
ちょこ:いいなー。
ナミ:でも、蹴った。
ちょこ:え?
ナミ:やめたの。就職。
ちょこ:どうして…?
ナミ:自分でもよく分かんないんだよね…いい会社だったし。
ちょこ:もったいない。
ナミ:そこさ。適当に受けたとこだったから。
ナミ:第一志望の業界は全部ダメで、投げやりに受けたトコだったの。でも冷静に考えたら、無理だなと思って。
ちょこ:私なんてどこ受けてもダメだよ。お先真っ暗。
ナミ:ちょこは何したいの?
ちょこ:え?
ナミ:就職してさ、何したいの?
ちょこ:うーん…。
ちょこ:働いて、お金貰って、それで…。
ナミ:それで?
ちょこ:…分かんない。
ナミ:私も分かんなかった。
ちょこ:でも、就職しなきゃ。
ナミ:どうして?
ちょこ:どうしてって、みんなしてるし。
ナミ:でも、ちょこはちょこじゃん。
ちょこ:そんなの…。
ちょこ:ナミは内定もらった事があるからそんなこと言えるんだよ。一度でも社会に認められたでしょ?でも私は違う…。毎回毎回、名前を言うだけで冷たい目で見られて、何話しても無駄で…ナミには分かんないよ。
0:少しの間
ちょこ:…ごめん。
ナミ:ううん。いいの。私こそごめんね。
0:気まずい沈黙の時間が流れる
ちょこ:ナミはさ、就職辞めて何するの?
ナミ:決めてない…ずっと学生だったでしょ。社会のこと何も知らないまま、正社員になって仕事に追われたくないなって思ってさ。バイトしながら考えようと思って。
ちょこ:ふーん。
ナミ:周りから見れば甘いって言われるかも知れないけどさ、「やりたい」って思えて、あっちも私が必要だって思ってくれるトコがあればいいなぁって。
ちょこ:あるといいよね。
ナミ:まぁ少なくとも、やりたいって思えて、そのために頑張れる事を見つけたいなって思ってる。それならありそうでしょ?
ちょこ:そのために頑張れる、か。
ナミ:でも、それって逃げかもね。
ちょこ:逃げ?
ナミ:私、逃げてばっかりだから。
ちょこ:そんなことないよ。
ナミ:あるんだよ。誰にも言ってなかったんだけどさ、私、大学入る前に改名したんだ
ちょこ:え?
ナミ:私、前は大木ラブって名前だったの。
ちょこ:ラブ?
ナミ:そ。愛と書いてラブ。両親が大恋愛の末の結婚らしくてさ、その愛の結晶が私ってことで、そうしたんだって。
ちょこ:ラブ…。
ナミ:ペットみたいでしょ?
ちょこ:う…ううん!
ナミ:いいのいいの。小さい頃は、その名前が好きだったけど、中学生や高校生になるとどんどん嫌になって、親を恨んで、しんどかったんだよね。それで、高校卒業してすぐ改名したの。
ちょこ:そうなんだ…。
ナミ:親は泣いてたけどね。今でもラブって呼ぶし…だから、ちょこのこと尊敬してる。
ちょこ:……。
ナミ:今だから言うけど、最初にちょこに会った時、可哀想だなって思った。私と同じだって。私みたいに馬鹿親に馬鹿みたいな名前付けられて…でもね、それは違うって思った。
ちょこ:どうして?
ナミ:だってちょこ、両親の話、笑顔でするから。
ちょこ:え?
ナミ:私はできない、今でも…。だから全部から逃げたの。名前が付くもの全部捨てた。アルバムも卒業証書も寄せ書きとか全部。親ともほとんど口利いてない。今でも両親の事、完全には許せてない。これが自分勝手だって分かってても。愛してくれてるって分かってても。
ちょこ:それは…。
ナミ:名前の時と同じように、就職からも逃げた。だから、逃げてないちょこは偉いと思う。
ちょこ:逃げじゃないよ。
ナミ:いいのいいの、フォローしなくて。
ちょこ:本当にそう思うから。フォローとかじゃない。
ナミ:……。
ちょこ:ナミが逃げなら、私だって逃げだよ。
ナミ:どうしてよ。
ちょこ:私なんか、何にも考えなかった。ナミの話聞くまで、改名なんて考えた事なかった。就職しないって選択も、全然。ただただ何にも考えずに流れに任せて、でも文句ばっかり言って、でも何にも行動しなくて…それだって逃げだよ。
ナミ:ちょこ…。
ちょこ:ナミが逃げなら、私も逃げ。私が逃げじゃないなら、ナミも逃げじゃない。
ナミ:そうかな…。
ちょこ:それに私思うんだけど、逃げだって一歩進んでるんだって。
ナミ:え?
ちょこ:ただの屁理屈だし、支離滅裂だけど、一歩動いてるのと同じだって。それが少し方向が違うだけだって。後ろに逃げるってのはターンして一歩踏み出しただけ。鬼ごっこだって逃げてる方が進む方向を決めて、自分の意志で動いてる。だから逃げたっていいんじゃないかな。
ナミ:プッ…ハハハハハハ!、
ちょこ:え、私なんかおかしい事言ったかな。
ナミ:ごめんごめん、ちょこらしいなと思って。
ちょこ:そ、そうかな?
ナミ:…ほんとメチャクチャなんだから。
ちょこ:ごめん。
ナミ:逃げたっていい、か。でも、いつかは戦わなきゃね。
ちょこ:そうだね。でも負けてボロボロになるくらいなら逃げていいんじゃないかな。
ナミ:そうかもね。
ちょこ:分かんないけど。私は『今は』そう思ってる。
ナミ:…ねぇ。
ちょこ:なに?
ナミ:チョコ買いに行こ
ちょこ:え?
ナミ:なんか食べたくなっちゃった。もうすぐ誕生日でしょ?ちょっと早いけど、かわいいチョコ買ってあげる!
ちょこ:何それ?イジってるの?
ナミ:そうじゃないって!ちょこにチョコ買ってあげたくなっただけ。ちょこがかわいいチョコ食べてるのが見たいの!
ちょこ:完全にイジってるじゃん!
ナミ:ほーら!早く行こ!
0:(カフェを出る二人)
ちょこ:(M)今の私は正しいのか、それとも逃げなのか、そんなことは分からない。もしかしたら何年後かに後悔するかも。きっとするんだろうな。でも、何をしてても人は後悔するんだろうなとも思う。堂々めぐりだな。ナミの言う通りメチャクチャだ。
ちょこ:(M)でも…だから…ともかくなんか分かんないけど、私はギリギリまで就活しようと思った。ダメかも知れないけど、やれる事をやろうって。
0:(道を歩く二人)
ちょこ:チョコに関係する会社でも受けようかな。
ナミ:え、マジ?
ちょこ:もしかしたら興味持ってもらえるかも知れないじゃん。
ナミ:確かに。アリかも…。
ちょこ:興味ないけど。
ナミ:人がせっかく話に乗ったのに…
ちょこ:だってホントの事だもん。
ナミ:ま、まあ、いいじゃない?
ちょこ:本当にそう思ってる?
ナミ:だって、チョコレート屋さんの人がちょこさんなんて、ワクワクするよ。
ちょこ:わくわく?
ナミ:ともかく、アリだよ!早速探してみなよ!
ちょこ:そうだね。
ナミ:そうと決まれば、いろんなチョコみて勉強しよう!ほら早く早く!
ちょこ:ちょ、ちょっと!!
0:〈終劇〉