台本概要

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タイトル The name makes a person
作者名 ペペドルトン・ササミ  (@pe2dorton)
ジャンル その他
演者人数 2人用台本(女2)
時間 20 分
台本使用規定 商用、非商用問わず連絡不要
説明 女子大生2人。
何気ない会話劇。

性別変更不可。
過度なアドリブ不可。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
ちょこ 80 (M)は独白
ナミ 68 面接官役を兼ねます。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
ちょこ:(M)ほとんどの人が、ほんの少し、可哀想なものを見るかのようになる。どんな立派な志望動機を述べようと、学生生活で何を学んでいようと―― ナミ:(面接官)次の方どうぞ。 ちょこ:失礼します。 0:ちょこ、扉を開けて入ってくる ナミ:(面接官)そちらにお座り下さい。 ちょこ:はい。 ナミ:(面接官)お名前をどうぞ。 ちょこ:はい。『藤田ちょこ』と申します。 ナミ:(面接官)藤田、『ちよこ』さんですね。 ちょこ:あ、あの ナミ:(面接官)どうかされましたか? ちょこ:『ちよこ』ではなく、『ちょこ』なんです。 ナミ:(面接官)え? ちょこ:『藤田ちょこ』と申します。 ナミ:(面接官)そう、ですか。 ちょこ:…すみません。 ナミ:(面接官)こちらこそ失礼しました。では…早速ですが志望動機をお聞かせ下さい。 ちょこ:はい。私が、御社を希望する理由は―― :  ちょこ:(M)――どれだけ会社に貢献できる人材かをアピールしようと…既に押す判は決まっているという目。 ナミ:(面接官)ありがとうございました。面接は以上です。結果は1週間以内にメールでお知らせします。最後に、何か質問や言い残したことはありますか? ちょこ:ございません。本日はありがとうございました。 ナミ:(面接官)お疲れさまでした。 ちょこ:失礼致します。 0:ちょこ、部屋を出ていく ちょこ:……はぁ。  :  ちょこ:(M)ちょこ。それが私の名前。千の代(だい)の子と書いてちょこと読む。両親はカタカナにしたかったけど、おばあちゃんが猛反対して漢字にしたそうだ。今はおばあちゃんに少し感謝している。  :  ちょこ:さむっ。  :  ちょこ:(M)もう2月なのに内定がない。同期のほとんどが残されたキャンパスライフを謳歌してるのに…それもこれも…。  :  ちょこ:あっ。…もう売ってるんだ。  :  ちょこ:(M)30年ぐらい前の2月14日。母が父に手作りのチョコを渡して告白したことで、二人は付き合った。その数年後、同じ日に入籍。そして数年後の2月14日、私が生まれた。まるで狙ったかのように。名前は『ちょこ』。二人にはそれ以外の選択肢は無かったそうだ。 ちょこ:(M)履歴書には「ちよこ」と書いた方がいいか相談した。でも履歴書に嘘を書いてはいけないと言われた。面接でも間違えられたら訂正するようにとも。でも訂正することが本当に正しいのかわからなくなってきた…。  :  ちょこ:はぁ…。 ナミ:ちょこ? ちょこ:……。(振り向かない) ナミ:ねぇ。 ちょこ:……。(振り向かない) ナミ:ねぇ!ちょこってば! ちょこ:わっ! ナミ:なんで無視すんのよ。 ちょこ:ナミ!ごめん。ボーっとしてた。 ナミ:面接帰り? ちょこ:うん。 ナミ:どうだった? ちょこ:きっとダメ。ナミはなにしてんの?買い物? ナミ:まぁそんな感じ。このあと暇? ちょこ:うん。 ナミ:気晴らしにお茶でもしようよ! ちょこ:いいよ。 0:〈カフェ〉 ちょこ:ナミは就職決まったんだっけ? ナミ:うん。 ちょこ:いいなー。 ナミ:でも、蹴った。 ちょこ:え? ナミ:やめたの。就職。 ちょこ:どうして…? ナミ:自分でもよく分かんないんだよね…いい会社だったし。 ちょこ:もったいない。 ナミ:そこさ。適当に受けたとこだったから。 ナミ:第一志望の業界は全部ダメで、投げやりに受けたトコだったの。でも冷静に考えたら、無理だなと思って。 ちょこ:私なんてどこ受けてもダメだよ。お先真っ暗。 ナミ:ちょこは何したいの? ちょこ:え? ナミ:就職してさ、何したいの? ちょこ:うーん…。 ちょこ:働いて、お金貰って、それで…。 ナミ:それで? ちょこ:…分かんない。 ナミ:私も分かんなかった。 ちょこ:でも、就職しなきゃ。 ナミ:どうして? ちょこ:どうしてって、みんなしてるし。 ナミ:でも、ちょこはちょこじゃん。 ちょこ:そんなの…。 ちょこ:ナミは内定もらった事があるからそんなこと言えるんだよ。一度でも社会に認められたでしょ?でも私は違う…。毎回毎回、名前を言うだけで冷たい目で見られて、何話しても無駄で…ナミには分かんないよ。 0:少しの間 ちょこ:…ごめん。 ナミ:ううん。いいの。私こそごめんね。 0:気まずい沈黙の時間が流れる ちょこ:ナミはさ、就職辞めて何するの? ナミ:決めてない…ずっと学生だったでしょ。社会のこと何も知らないまま、正社員になって仕事に追われたくないなって思ってさ。バイトしながら考えようと思って。 ちょこ:ふーん。 ナミ:周りから見れば甘いって言われるかも知れないけどさ、「やりたい」って思えて、あっちも私が必要だって思ってくれるトコがあればいいなぁって。 ちょこ:あるといいよね。 ナミ:まぁ少なくとも、やりたいって思えて、そのために頑張れる事を見つけたいなって思ってる。それならありそうでしょ? ちょこ:そのために頑張れる、か。 ナミ:でも、それって逃げかもね。 ちょこ:逃げ? ナミ:私、逃げてばっかりだから。 ちょこ:そんなことないよ。 ナミ:あるんだよ。誰にも言ってなかったんだけどさ、私、大学入る前に改名したんだ ちょこ:え? ナミ:私、前は大木ラブって名前だったの。 ちょこ:ラブ? ナミ:そ。愛と書いてラブ。両親が大恋愛の末の結婚らしくてさ、その愛の結晶が私ってことで、そうしたんだって。 ちょこ:ラブ…。 ナミ:ペットみたいでしょ? ちょこ:う…ううん! ナミ:いいのいいの。小さい頃は、その名前が好きだったけど、中学生や高校生になるとどんどん嫌になって、親を恨んで、しんどかったんだよね。それで、高校卒業してすぐ改名したの。 ちょこ:そうなんだ…。 ナミ:親は泣いてたけどね。今でもラブって呼ぶし…だから、ちょこのこと尊敬してる。 ちょこ:……。 ナミ:今だから言うけど、最初にちょこに会った時、可哀想だなって思った。私と同じだって。私みたいに馬鹿親に馬鹿みたいな名前付けられて…でもね、それは違うって思った。 ちょこ:どうして? ナミ:だってちょこ、両親の話、笑顔でするから。 ちょこ:え? ナミ:私はできない、今でも…。だから全部から逃げたの。名前が付くもの全部捨てた。アルバムも卒業証書も寄せ書きとか全部。親ともほとんど口利いてない。今でも両親の事、完全には許せてない。これが自分勝手だって分かってても。愛してくれてるって分かってても。 ちょこ:それは…。 ナミ:名前の時と同じように、就職からも逃げた。だから、逃げてないちょこは偉いと思う。 ちょこ:逃げじゃないよ。 ナミ:いいのいいの、フォローしなくて。 ちょこ:本当にそう思うから。フォローとかじゃない。 ナミ:……。 ちょこ:ナミが逃げなら、私だって逃げだよ。 ナミ:どうしてよ。 ちょこ:私なんか、何にも考えなかった。ナミの話聞くまで、改名なんて考えた事なかった。就職しないって選択も、全然。ただただ何にも考えずに流れに任せて、でも文句ばっかり言って、でも何にも行動しなくて…それだって逃げだよ。 ナミ:ちょこ…。 ちょこ:ナミが逃げなら、私も逃げ。私が逃げじゃないなら、ナミも逃げじゃない。 ナミ:そうかな…。 ちょこ:それに私思うんだけど、逃げだって一歩進んでるんだって。 ナミ:え? ちょこ:ただの屁理屈だし、支離滅裂だけど、一歩動いてるのと同じだって。それが少し方向が違うだけだって。後ろに逃げるってのはターンして一歩踏み出しただけ。鬼ごっこだって逃げてる方が進む方向を決めて、自分の意志で動いてる。だから逃げたっていいんじゃないかな。 ナミ:プッ…ハハハハハハ!、 ちょこ:え、私なんかおかしい事言ったかな。 ナミ:ごめんごめん、ちょこらしいなと思って。 ちょこ:そ、そうかな? ナミ:…ほんとメチャクチャなんだから。 ちょこ:ごめん。 ナミ:逃げたっていい、か。でも、いつかは戦わなきゃね。 ちょこ:そうだね。でも負けてボロボロになるくらいなら逃げていいんじゃないかな。 ナミ:そうかもね。 ちょこ:分かんないけど。私は『今は』そう思ってる。 ナミ:…ねぇ。 ちょこ:なに? ナミ:チョコ買いに行こ ちょこ:え? ナミ:なんか食べたくなっちゃった。もうすぐ誕生日でしょ?ちょっと早いけど、かわいいチョコ買ってあげる! ちょこ:何それ?イジってるの? ナミ:そうじゃないって!ちょこにチョコ買ってあげたくなっただけ。ちょこがかわいいチョコ食べてるのが見たいの! ちょこ:完全にイジってるじゃん! ナミ:ほーら!早く行こ! 0:(カフェを出る二人) ちょこ:(M)今の私は正しいのか、それとも逃げなのか、そんなことは分からない。もしかしたら何年後かに後悔するかも。きっとするんだろうな。でも、何をしてても人は後悔するんだろうなとも思う。堂々めぐりだな。ナミの言う通りメチャクチャだ。 ちょこ:(M)でも…だから…ともかくなんか分かんないけど、私はギリギリまで就活しようと思った。ダメかも知れないけど、やれる事をやろうって。 0:(道を歩く二人) ちょこ:チョコに関係する会社でも受けようかな。 ナミ:え、マジ? ちょこ:もしかしたら興味持ってもらえるかも知れないじゃん。 ナミ:確かに。アリかも…。 ちょこ:興味ないけど。 ナミ:人がせっかく話に乗ったのに… ちょこ:だってホントの事だもん。 ナミ:ま、まあ、いいじゃない? ちょこ:本当にそう思ってる? ナミ:だって、チョコレート屋さんの人がちょこさんなんて、ワクワクするよ。 ちょこ:わくわく? ナミ:ともかく、アリだよ!早速探してみなよ! ちょこ:そうだね。 ナミ:そうと決まれば、いろんなチョコみて勉強しよう!ほら早く早く! ちょこ:ちょ、ちょっと!! 0:〈終劇〉

ちょこ:(M)ほとんどの人が、ほんの少し、可哀想なものを見るかのようになる。どんな立派な志望動機を述べようと、学生生活で何を学んでいようと―― ナミ:(面接官)次の方どうぞ。 ちょこ:失礼します。 0:ちょこ、扉を開けて入ってくる ナミ:(面接官)そちらにお座り下さい。 ちょこ:はい。 ナミ:(面接官)お名前をどうぞ。 ちょこ:はい。『藤田ちょこ』と申します。 ナミ:(面接官)藤田、『ちよこ』さんですね。 ちょこ:あ、あの ナミ:(面接官)どうかされましたか? ちょこ:『ちよこ』ではなく、『ちょこ』なんです。 ナミ:(面接官)え? ちょこ:『藤田ちょこ』と申します。 ナミ:(面接官)そう、ですか。 ちょこ:…すみません。 ナミ:(面接官)こちらこそ失礼しました。では…早速ですが志望動機をお聞かせ下さい。 ちょこ:はい。私が、御社を希望する理由は―― :  ちょこ:(M)――どれだけ会社に貢献できる人材かをアピールしようと…既に押す判は決まっているという目。 ナミ:(面接官)ありがとうございました。面接は以上です。結果は1週間以内にメールでお知らせします。最後に、何か質問や言い残したことはありますか? ちょこ:ございません。本日はありがとうございました。 ナミ:(面接官)お疲れさまでした。 ちょこ:失礼致します。 0:ちょこ、部屋を出ていく ちょこ:……はぁ。  :  ちょこ:(M)ちょこ。それが私の名前。千の代(だい)の子と書いてちょこと読む。両親はカタカナにしたかったけど、おばあちゃんが猛反対して漢字にしたそうだ。今はおばあちゃんに少し感謝している。  :  ちょこ:さむっ。  :  ちょこ:(M)もう2月なのに内定がない。同期のほとんどが残されたキャンパスライフを謳歌してるのに…それもこれも…。  :  ちょこ:あっ。…もう売ってるんだ。  :  ちょこ:(M)30年ぐらい前の2月14日。母が父に手作りのチョコを渡して告白したことで、二人は付き合った。その数年後、同じ日に入籍。そして数年後の2月14日、私が生まれた。まるで狙ったかのように。名前は『ちょこ』。二人にはそれ以外の選択肢は無かったそうだ。 ちょこ:(M)履歴書には「ちよこ」と書いた方がいいか相談した。でも履歴書に嘘を書いてはいけないと言われた。面接でも間違えられたら訂正するようにとも。でも訂正することが本当に正しいのかわからなくなってきた…。  :  ちょこ:はぁ…。 ナミ:ちょこ? ちょこ:……。(振り向かない) ナミ:ねぇ。 ちょこ:……。(振り向かない) ナミ:ねぇ!ちょこってば! ちょこ:わっ! ナミ:なんで無視すんのよ。 ちょこ:ナミ!ごめん。ボーっとしてた。 ナミ:面接帰り? ちょこ:うん。 ナミ:どうだった? ちょこ:きっとダメ。ナミはなにしてんの?買い物? ナミ:まぁそんな感じ。このあと暇? ちょこ:うん。 ナミ:気晴らしにお茶でもしようよ! ちょこ:いいよ。 0:〈カフェ〉 ちょこ:ナミは就職決まったんだっけ? ナミ:うん。 ちょこ:いいなー。 ナミ:でも、蹴った。 ちょこ:え? ナミ:やめたの。就職。 ちょこ:どうして…? ナミ:自分でもよく分かんないんだよね…いい会社だったし。 ちょこ:もったいない。 ナミ:そこさ。適当に受けたとこだったから。 ナミ:第一志望の業界は全部ダメで、投げやりに受けたトコだったの。でも冷静に考えたら、無理だなと思って。 ちょこ:私なんてどこ受けてもダメだよ。お先真っ暗。 ナミ:ちょこは何したいの? ちょこ:え? ナミ:就職してさ、何したいの? ちょこ:うーん…。 ちょこ:働いて、お金貰って、それで…。 ナミ:それで? ちょこ:…分かんない。 ナミ:私も分かんなかった。 ちょこ:でも、就職しなきゃ。 ナミ:どうして? ちょこ:どうしてって、みんなしてるし。 ナミ:でも、ちょこはちょこじゃん。 ちょこ:そんなの…。 ちょこ:ナミは内定もらった事があるからそんなこと言えるんだよ。一度でも社会に認められたでしょ?でも私は違う…。毎回毎回、名前を言うだけで冷たい目で見られて、何話しても無駄で…ナミには分かんないよ。 0:少しの間 ちょこ:…ごめん。 ナミ:ううん。いいの。私こそごめんね。 0:気まずい沈黙の時間が流れる ちょこ:ナミはさ、就職辞めて何するの? ナミ:決めてない…ずっと学生だったでしょ。社会のこと何も知らないまま、正社員になって仕事に追われたくないなって思ってさ。バイトしながら考えようと思って。 ちょこ:ふーん。 ナミ:周りから見れば甘いって言われるかも知れないけどさ、「やりたい」って思えて、あっちも私が必要だって思ってくれるトコがあればいいなぁって。 ちょこ:あるといいよね。 ナミ:まぁ少なくとも、やりたいって思えて、そのために頑張れる事を見つけたいなって思ってる。それならありそうでしょ? ちょこ:そのために頑張れる、か。 ナミ:でも、それって逃げかもね。 ちょこ:逃げ? ナミ:私、逃げてばっかりだから。 ちょこ:そんなことないよ。 ナミ:あるんだよ。誰にも言ってなかったんだけどさ、私、大学入る前に改名したんだ ちょこ:え? ナミ:私、前は大木ラブって名前だったの。 ちょこ:ラブ? ナミ:そ。愛と書いてラブ。両親が大恋愛の末の結婚らしくてさ、その愛の結晶が私ってことで、そうしたんだって。 ちょこ:ラブ…。 ナミ:ペットみたいでしょ? ちょこ:う…ううん! ナミ:いいのいいの。小さい頃は、その名前が好きだったけど、中学生や高校生になるとどんどん嫌になって、親を恨んで、しんどかったんだよね。それで、高校卒業してすぐ改名したの。 ちょこ:そうなんだ…。 ナミ:親は泣いてたけどね。今でもラブって呼ぶし…だから、ちょこのこと尊敬してる。 ちょこ:……。 ナミ:今だから言うけど、最初にちょこに会った時、可哀想だなって思った。私と同じだって。私みたいに馬鹿親に馬鹿みたいな名前付けられて…でもね、それは違うって思った。 ちょこ:どうして? ナミ:だってちょこ、両親の話、笑顔でするから。 ちょこ:え? ナミ:私はできない、今でも…。だから全部から逃げたの。名前が付くもの全部捨てた。アルバムも卒業証書も寄せ書きとか全部。親ともほとんど口利いてない。今でも両親の事、完全には許せてない。これが自分勝手だって分かってても。愛してくれてるって分かってても。 ちょこ:それは…。 ナミ:名前の時と同じように、就職からも逃げた。だから、逃げてないちょこは偉いと思う。 ちょこ:逃げじゃないよ。 ナミ:いいのいいの、フォローしなくて。 ちょこ:本当にそう思うから。フォローとかじゃない。 ナミ:……。 ちょこ:ナミが逃げなら、私だって逃げだよ。 ナミ:どうしてよ。 ちょこ:私なんか、何にも考えなかった。ナミの話聞くまで、改名なんて考えた事なかった。就職しないって選択も、全然。ただただ何にも考えずに流れに任せて、でも文句ばっかり言って、でも何にも行動しなくて…それだって逃げだよ。 ナミ:ちょこ…。 ちょこ:ナミが逃げなら、私も逃げ。私が逃げじゃないなら、ナミも逃げじゃない。 ナミ:そうかな…。 ちょこ:それに私思うんだけど、逃げだって一歩進んでるんだって。 ナミ:え? ちょこ:ただの屁理屈だし、支離滅裂だけど、一歩動いてるのと同じだって。それが少し方向が違うだけだって。後ろに逃げるってのはターンして一歩踏み出しただけ。鬼ごっこだって逃げてる方が進む方向を決めて、自分の意志で動いてる。だから逃げたっていいんじゃないかな。 ナミ:プッ…ハハハハハハ!、 ちょこ:え、私なんかおかしい事言ったかな。 ナミ:ごめんごめん、ちょこらしいなと思って。 ちょこ:そ、そうかな? ナミ:…ほんとメチャクチャなんだから。 ちょこ:ごめん。 ナミ:逃げたっていい、か。でも、いつかは戦わなきゃね。 ちょこ:そうだね。でも負けてボロボロになるくらいなら逃げていいんじゃないかな。 ナミ:そうかもね。 ちょこ:分かんないけど。私は『今は』そう思ってる。 ナミ:…ねぇ。 ちょこ:なに? ナミ:チョコ買いに行こ ちょこ:え? ナミ:なんか食べたくなっちゃった。もうすぐ誕生日でしょ?ちょっと早いけど、かわいいチョコ買ってあげる! ちょこ:何それ?イジってるの? ナミ:そうじゃないって!ちょこにチョコ買ってあげたくなっただけ。ちょこがかわいいチョコ食べてるのが見たいの! ちょこ:完全にイジってるじゃん! ナミ:ほーら!早く行こ! 0:(カフェを出る二人) ちょこ:(M)今の私は正しいのか、それとも逃げなのか、そんなことは分からない。もしかしたら何年後かに後悔するかも。きっとするんだろうな。でも、何をしてても人は後悔するんだろうなとも思う。堂々めぐりだな。ナミの言う通りメチャクチャだ。 ちょこ:(M)でも…だから…ともかくなんか分かんないけど、私はギリギリまで就活しようと思った。ダメかも知れないけど、やれる事をやろうって。 0:(道を歩く二人) ちょこ:チョコに関係する会社でも受けようかな。 ナミ:え、マジ? ちょこ:もしかしたら興味持ってもらえるかも知れないじゃん。 ナミ:確かに。アリかも…。 ちょこ:興味ないけど。 ナミ:人がせっかく話に乗ったのに… ちょこ:だってホントの事だもん。 ナミ:ま、まあ、いいじゃない? ちょこ:本当にそう思ってる? ナミ:だって、チョコレート屋さんの人がちょこさんなんて、ワクワクするよ。 ちょこ:わくわく? ナミ:ともかく、アリだよ!早速探してみなよ! ちょこ:そうだね。 ナミ:そうと決まれば、いろんなチョコみて勉強しよう!ほら早く早く! ちょこ:ちょ、ちょっと!! 0:〈終劇〉