台本概要

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タイトル 独立戦隊クロスワン
作者名 VAL  (@bakemonohouse)
ジャンル コメディ
演者人数 2人用台本(男1、不問1)
時間 20 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 特に規約はありません。
楽しんでいただければ幸いです。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
クロスワン 81 ヒーロー
ブライダル 不問 82
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
ブライダル:よし。これで完成だ……くくく。これを教会に届ければ……愚かな人間どものことだ。きっと使用するだろう。これを奪い合う人間ども……容易に想像出来てしまうわ。 クロスワン:そこまでだ!! ブライダル:くっ!貴様は!……バツイチ! クロスワン:ぐあああ!はあ…はあ…さすが極悪な魔人め。出会い頭にこんな強力な一撃を浴びせてくるとはな…… ブライダル:別に何もしておらんが…… クロスワン:お前の魂胆はわかってるぞ!婚姻魔人ブライダル!まだ諦めていなかったのか! ブライダル:ふっ。貴様がどれほど私の邪魔をしようと、この野望は止められはせぬ! クロスワン:地球に住む人間全てを結婚させる……どうやったらそんなおぞましい考えが生まれると言うんだ!ひとでなしが!! ブライダル:私は元より人間では無いからなあ。貴様こそたった独りで止めれるなどと思っているのか?他の生物より優れていると宣うのが人間だろう?それとも貴様が劣った人種なのか?なあ、バツイチ。 クロスワン:ぐああぁ!……くっまたしても。 ブライダル:だから何もしてねーよ。 クロスワン:俺はな。独りでいることで強くなったんだ。他を守るために強くなれると言う奴もいるが。そんなのはまやかしだ!自分を守るためにこそ強くなれる!それが俺、独立戦隊クロスワンだ! ブライダル:…… クロスワン:独立戦隊!クロスワンだ! ブライダル:聞こえておるわ!ダサすぎて絶句しておったのだ! クロスワン:ふん。お前のような魔人に人間のセンスなんて理解出来ないだろう。人間の幸せを理解出来ないのと同じようにな! ブライダル:ほう?ならば聞こう。貴様の言う人間の幸せとは何だ? クロスワン:食う、寝る、遊ぶ。こうに決まっている! ブライダル:……は? クロスワン:食う!寝る!遊ぶ! ブライダル:だから聞こえておるわ!本当に貴様人間か?知性の欠片も感じられんぞ。 クロスワン:ふん。お前のような魔人に人間の── ブライダル:さっき聞いた!NPCか貴様は! クロスワン:ところでブライダル。その後ろにあるものは何だ。 ブライダル:おっと。漸く気付いたか?見てわからぬか? クロスワン:花束……まさか。 ブライダル:そうだ。ウェディングブーケだ。私が丹精込めて作った。これを手にした人間を思い浮かべるだけで……顔が綻んでしまうわ。 クロスワン:何てことを……お前は知っているのか?ブーケは出来が良ければ良いほど、それが持つ魔力は比例して上がる…… ブライダル:…‥魔力? クロスワン:それを奪い合う女達……まさに地獄絵図!自分の彼女がその奪い合いに参加してみろ……最悪だ。もし手にしたとしたら……結婚をせざるを得ない状況が作り出されるんだぞ!! ブライダル:そ、そうなのか。まあ良い!こちらに取っては好都合だ! クロスワン:酷い……酷すぎる! ブライダル:……貴様、何故そこまで結婚を毛嫌いする。 クロスワン:……お前にはわからない。 ブライダル:勘違いするな。お悩み相談をしてやるわけではない。言いたくないなら別に良いのだ。作業に取り掛かるだけだからな。 クロスワン:俺だって……夢見たことはある。 ブライダル:ほう? クロスワン:好きな女と恋に落ちて、結婚して……2人で……2人で……小さいけど一軒家買って、車も中古だけどかっこいいの乗って、ゆくゆくは子供ができて……それで……どうして俺を独りに…… ブライダル:どうしよ。ものっそい重い。 クロスワン:みんなを……俺みたいな気持ちにさせたくないんだ! ブライダル:そうか……独り残される気持ちは私にもわかる。 クロスワン:まさか……お前も? ブライダル:伴侶に先立たれてしまった。一生を共にすると誓ってすぐの事だ。 ブライダル:あやつはどうしようも無く真っ直ぐで、なぜ私のような者を好いておったのか不思議なくらい眩しい奴だった。 クロスワン:どうして亡くなったんだ。 ブライダル:事故だ。魔界に迷い込んだ人間のつがいに凶暴な魔獣が襲いかかろうとしおった。あやつは身を呈して救ったわけだ。自分の命までは守れなかった大馬鹿者だがな。 クロスワン:それは……気の毒に。 ブライダル:よい。疾うに昔の話だ。今はあやつの願いを代わりに叶えてやるのが私の目標だからな。 クロスワン:願い…… ブライダル:そう。「どの世界も僕達みたいに愛し合えれば良い。そんな世界を見てみたい」ははっ……今思い返しても愚鈍で稚拙な考えだ。だが私はあやつのこういう所を愛しておった。 クロスワン:…… ブライダル:おっとすまなんだ。1度話し出すと切る合間を見失うな。貴様も話してみるがいい。次は私が貴様の悲しみを聞こうぞ。 クロスワン:いや……俺は別に。 ブライダル:遠慮するな。存外悪いものでは無い。 クロスワン:いや本当に大丈夫だから…… ブライダル:そうか、まだ未練を捨てきれておらぬか。 クロスワン:え、は!?そんなわけないだろう!あんなクソ女!! ブライダル:なっ……貴様、今は亡き者に対してその言い草……本当にヒーローか!? クロスワン:死んでねーよ! ブライダル:……え?生きてんの? クロスワン:ああ生きてるよ!こないだ流れてきたからな!SNSで俺の元親友とその間に出来たであろう愛の結晶を抱いて幸せそうに笑う俺の元嫁がな!! ブライダル:よもやそれは…… クロスワン:はいそうです!浮気されたんですよ!そんで相手はあろうことか、いつも嫁の事で相談してた親友でしたってな!! ブライダル:なんと惨い…… クロスワン:そうだろう!?結婚した当初はこんなに惨めになるとは思ってなかったぜ! ブライダル:幸せな時はあったのだな。 クロスワン:どうだかな。 ブライダル:……ほら、2人で出かけたりとか。 クロスワン:あーあったなあ。 ブライダル:な?あるじゃないか。 クロスワン:荷物持ち。 ブライダル:え? クロスワン:買い物に行く時の荷物持ち。もしくは車出し。以上だ。 ブライダル:……ほんとに? クロスワン:ああ。 ブライダル:映画とか。 クロスワン:テレビの再放送なら。 ブライダル:動物園。 クロスワン:家のゴミ捨て場の野良猫なら。 ブライダル:水族館。 クロスワン:朝食にめざし1本とかあったなあ。 ブライダル:……食事。 クロスワン:あ、たまに誘われたな。 ブライダル:おお! クロスワン:知らない店の予約取られててメニューが全部時価だったなあ。カード……止まったなあ。 ブライダル:……夜景とかなら…… クロスワン:ああ……忘れられない夜景を見たことがある。 ブライダル:嫌な予感がするぞ…… クロスワン:6時間の残業が終わって外から自分の部屋を見るとさ。嫁と親友のシルエットが── ブライダル:なんやねんそのクソ女!! クロスワン:お。わかってくれたか! ブライダル:ああ!わかった!まだ魔界に住むデーモンハイカブリヘドロムカデの方が上等な生物に思えるくらいだ! クロスワン:見たことはないけど……なんかキモそうだな。 ブライダル:魔人が選ぶ嫌いな生物ランキング850年連続1位の虫だ。 クロスワン:すげえ猛者じゃねえか。てかそこまで来たなら殿堂入りさせろよ。 ブライダル:ちなみに人間はいつも10位辺りを行ったり来たりしておるぞ。 クロスワン:微妙過ぎて反応に困るわ。 ブライダル:で、その女は今どこにおる。 クロスワン:は?わかんねーし、知りたくもないけど……知ってどうすんだよ。 ブライダル:殺す。 クロスワン:え。魔人じゃん。すごい純度の高い魔人じゃん。 ブライダル:そう。私は魔人だ。人間1人消すなど造作もないことだ!さあ手がかりを寄越せ! クロスワン:やめてやってくれ。 ブライダル:貴様……正気か? クロスワン:…… ブライダル:その女を恨んではおらんのか? クロスワン:もちろん。恨んでるよ。殺してやりたいくらい。 ブライダル:では何故、復讐せんのだ。 クロスワン:子供から親を取り上げるなんて俺にはできない。 ブライダル:貴様……もしかしてすごいいい奴なのか? クロスワン:憎しみは何も生まないからな。俺がもしあいつに何かしたとしたら、子供が俺に恨みを持って育ってしまう。そんな人生嫌だろう。 ブライダル:……人間。さっきの言葉は取り消そう。貴様はヒーローだ。 クロスワン:魔人に言われてもな。 ブライダル:それは許せ。 0:少し笑い合う2人。 ブライダル:だが、私には私の目的がある。それを阻止せんとする貴様を看過することはできぬのだ。 クロスワン:ああ。俺たちは敵だ。お互いに譲れない想いがある。そのブーケは処分させてもらうぜ。 ブライダル:くくく……ははははは! クロスワン:どうした。気でも触れたか? ブライダル:やはり貴様は浅はかな人間よ。私がこんな小道具だけで計画を進めると思うたか? クロスワン:何だと……お前、何をした。 ブライダル:ここ最近、懇意にさせていただいている人間がいてな。 クロスワン:人間の協力者か……くそ。1番恐れていたことだ。 ブライダル:お前のよく知る人間だぞ? クロスワン:まさか……俺の元嫁。 ブライダル:なわけないだろうが!引きちぎるぞ貴様! クロスワン:嫌いすぎるだろ……で、誰なんだ。 ブライダル:総理大臣夫妻だ。 クロスワン:なっ……嘘だろ。今の総理大臣は狂信的なほどの愛妻家で、国民が選ぶおしどり夫婦として名高い……まさか国家を相手取ることになるとはな。 ブライダル:偶然が色々重なってな。ブーケを手作りする過程で活花教室に通っていたのだが、そこに偶然、夫人がいらしていたわけだ。 クロスワン:お前、夫人に何を吹き込んだ。 ブライダル:なに。今の日本国は子育てのハードルが高いことをわかっていただいたまでよ。データは街頭アンケートで1万人の適齢期の男女をリサーチした。説得するのに十分な手札であったわ。 クロスワン:子育て問題が解消されれば、比例するように結婚のハードルが下がる……姑息な真似を! ブライダル:100万円だ。 クロスワン:100万円? ブライダル:来週には公布されるであろう。出産育児一時金として100万円が支給されるとな!! クロスワン:っ!馬鹿な!今までの2倍以上じゃないか!つまり……結婚希望者も2倍に…… ブライダル:その計算法の成否はわからぬが、つまりはそういうことだ。何をしようとももう遅い。諦めるんだなヒーロー! クロスワン:……だだ。 ブライダル:ん? クロスワン:まだだ!俺はまだ終わってない! ブライダル:ほう?ならばどうやってこの状況を覆すと言うのだ? クロスワン:お前は一つ。大事なことを見落としている。 ブライダル:何だ。言ってみるがいい。 クロスワン:子供を1人産めば100万円。2人産めば200万円だ。 ブライダル:ふん。何を当たり前のことを。 クロスワン:まだ話は終わっていない。この世はクソ女に溢れている。クソ男もしかり。つまり、望まれない子供が山のように産まれると言うことだ! ブライダル:…… クロスワン:この政策を開始してみろ。一時的に結婚件数、出産件数は増えるだろう。だがな!離婚件数も捨て子の数もましてや死産の数まで増やしてしまう可能性があるんだ! クロスワン:ブライダル。お前の策略は悪魔のそれだ。 ブライダル:わかっている。 クロスワン:……お前、まさか。 ブライダル:そうではない。貴様が懸念する問題を私が気付かないと思うのか? クロスワン:何だと? ブライダル:政策は一つではない。もう一つあるのだ。 ブライダル:もし不正や金のための不誠実極まりない行為だと発覚した場合。一時金は貸付となり利子も発生する。 クロスワン:……いくらだ。 ブライダル:トイチだ。 クロスワン:トイチ!?10日で1割……闇金の中でも極悪の部類と同じ金利だぞ!? ブライダル:それがどうしたと言うのだ。愛より金を取る輩など人間どころか、生物とも思えぬわ! クロスワン:お前……わかってるじゃないか! ブライダル:そうだろう!これなら健全に愛し合う夫婦は増え、邪な考えを持つ者は独り寂しく余生を過ごすことになろうぞ。 クロスワン:俺ももう一度……やり直せるだろうか。 ブライダル:安心しろ。貴様は良い奴だ。きっと良縁が舞い降りると私は思う。 クロスワン:ありがとうブライダル!俺、もう一度頑張ってみるよ! ブライダル:ふふ。期待しておるぞ。えっと……バツイチ! クロスワン:ぐあああああああ!! 0:fin

ブライダル:よし。これで完成だ……くくく。これを教会に届ければ……愚かな人間どものことだ。きっと使用するだろう。これを奪い合う人間ども……容易に想像出来てしまうわ。 クロスワン:そこまでだ!! ブライダル:くっ!貴様は!……バツイチ! クロスワン:ぐあああ!はあ…はあ…さすが極悪な魔人め。出会い頭にこんな強力な一撃を浴びせてくるとはな…… ブライダル:別に何もしておらんが…… クロスワン:お前の魂胆はわかってるぞ!婚姻魔人ブライダル!まだ諦めていなかったのか! ブライダル:ふっ。貴様がどれほど私の邪魔をしようと、この野望は止められはせぬ! クロスワン:地球に住む人間全てを結婚させる……どうやったらそんなおぞましい考えが生まれると言うんだ!ひとでなしが!! ブライダル:私は元より人間では無いからなあ。貴様こそたった独りで止めれるなどと思っているのか?他の生物より優れていると宣うのが人間だろう?それとも貴様が劣った人種なのか?なあ、バツイチ。 クロスワン:ぐああぁ!……くっまたしても。 ブライダル:だから何もしてねーよ。 クロスワン:俺はな。独りでいることで強くなったんだ。他を守るために強くなれると言う奴もいるが。そんなのはまやかしだ!自分を守るためにこそ強くなれる!それが俺、独立戦隊クロスワンだ! ブライダル:…… クロスワン:独立戦隊!クロスワンだ! ブライダル:聞こえておるわ!ダサすぎて絶句しておったのだ! クロスワン:ふん。お前のような魔人に人間のセンスなんて理解出来ないだろう。人間の幸せを理解出来ないのと同じようにな! ブライダル:ほう?ならば聞こう。貴様の言う人間の幸せとは何だ? クロスワン:食う、寝る、遊ぶ。こうに決まっている! ブライダル:……は? クロスワン:食う!寝る!遊ぶ! ブライダル:だから聞こえておるわ!本当に貴様人間か?知性の欠片も感じられんぞ。 クロスワン:ふん。お前のような魔人に人間の── ブライダル:さっき聞いた!NPCか貴様は! クロスワン:ところでブライダル。その後ろにあるものは何だ。 ブライダル:おっと。漸く気付いたか?見てわからぬか? クロスワン:花束……まさか。 ブライダル:そうだ。ウェディングブーケだ。私が丹精込めて作った。これを手にした人間を思い浮かべるだけで……顔が綻んでしまうわ。 クロスワン:何てことを……お前は知っているのか?ブーケは出来が良ければ良いほど、それが持つ魔力は比例して上がる…… ブライダル:…‥魔力? クロスワン:それを奪い合う女達……まさに地獄絵図!自分の彼女がその奪い合いに参加してみろ……最悪だ。もし手にしたとしたら……結婚をせざるを得ない状況が作り出されるんだぞ!! ブライダル:そ、そうなのか。まあ良い!こちらに取っては好都合だ! クロスワン:酷い……酷すぎる! ブライダル:……貴様、何故そこまで結婚を毛嫌いする。 クロスワン:……お前にはわからない。 ブライダル:勘違いするな。お悩み相談をしてやるわけではない。言いたくないなら別に良いのだ。作業に取り掛かるだけだからな。 クロスワン:俺だって……夢見たことはある。 ブライダル:ほう? クロスワン:好きな女と恋に落ちて、結婚して……2人で……2人で……小さいけど一軒家買って、車も中古だけどかっこいいの乗って、ゆくゆくは子供ができて……それで……どうして俺を独りに…… ブライダル:どうしよ。ものっそい重い。 クロスワン:みんなを……俺みたいな気持ちにさせたくないんだ! ブライダル:そうか……独り残される気持ちは私にもわかる。 クロスワン:まさか……お前も? ブライダル:伴侶に先立たれてしまった。一生を共にすると誓ってすぐの事だ。 ブライダル:あやつはどうしようも無く真っ直ぐで、なぜ私のような者を好いておったのか不思議なくらい眩しい奴だった。 クロスワン:どうして亡くなったんだ。 ブライダル:事故だ。魔界に迷い込んだ人間のつがいに凶暴な魔獣が襲いかかろうとしおった。あやつは身を呈して救ったわけだ。自分の命までは守れなかった大馬鹿者だがな。 クロスワン:それは……気の毒に。 ブライダル:よい。疾うに昔の話だ。今はあやつの願いを代わりに叶えてやるのが私の目標だからな。 クロスワン:願い…… ブライダル:そう。「どの世界も僕達みたいに愛し合えれば良い。そんな世界を見てみたい」ははっ……今思い返しても愚鈍で稚拙な考えだ。だが私はあやつのこういう所を愛しておった。 クロスワン:…… ブライダル:おっとすまなんだ。1度話し出すと切る合間を見失うな。貴様も話してみるがいい。次は私が貴様の悲しみを聞こうぞ。 クロスワン:いや……俺は別に。 ブライダル:遠慮するな。存外悪いものでは無い。 クロスワン:いや本当に大丈夫だから…… ブライダル:そうか、まだ未練を捨てきれておらぬか。 クロスワン:え、は!?そんなわけないだろう!あんなクソ女!! ブライダル:なっ……貴様、今は亡き者に対してその言い草……本当にヒーローか!? クロスワン:死んでねーよ! ブライダル:……え?生きてんの? クロスワン:ああ生きてるよ!こないだ流れてきたからな!SNSで俺の元親友とその間に出来たであろう愛の結晶を抱いて幸せそうに笑う俺の元嫁がな!! ブライダル:よもやそれは…… クロスワン:はいそうです!浮気されたんですよ!そんで相手はあろうことか、いつも嫁の事で相談してた親友でしたってな!! ブライダル:なんと惨い…… クロスワン:そうだろう!?結婚した当初はこんなに惨めになるとは思ってなかったぜ! ブライダル:幸せな時はあったのだな。 クロスワン:どうだかな。 ブライダル:……ほら、2人で出かけたりとか。 クロスワン:あーあったなあ。 ブライダル:な?あるじゃないか。 クロスワン:荷物持ち。 ブライダル:え? クロスワン:買い物に行く時の荷物持ち。もしくは車出し。以上だ。 ブライダル:……ほんとに? クロスワン:ああ。 ブライダル:映画とか。 クロスワン:テレビの再放送なら。 ブライダル:動物園。 クロスワン:家のゴミ捨て場の野良猫なら。 ブライダル:水族館。 クロスワン:朝食にめざし1本とかあったなあ。 ブライダル:……食事。 クロスワン:あ、たまに誘われたな。 ブライダル:おお! クロスワン:知らない店の予約取られててメニューが全部時価だったなあ。カード……止まったなあ。 ブライダル:……夜景とかなら…… クロスワン:ああ……忘れられない夜景を見たことがある。 ブライダル:嫌な予感がするぞ…… クロスワン:6時間の残業が終わって外から自分の部屋を見るとさ。嫁と親友のシルエットが── ブライダル:なんやねんそのクソ女!! クロスワン:お。わかってくれたか! ブライダル:ああ!わかった!まだ魔界に住むデーモンハイカブリヘドロムカデの方が上等な生物に思えるくらいだ! クロスワン:見たことはないけど……なんかキモそうだな。 ブライダル:魔人が選ぶ嫌いな生物ランキング850年連続1位の虫だ。 クロスワン:すげえ猛者じゃねえか。てかそこまで来たなら殿堂入りさせろよ。 ブライダル:ちなみに人間はいつも10位辺りを行ったり来たりしておるぞ。 クロスワン:微妙過ぎて反応に困るわ。 ブライダル:で、その女は今どこにおる。 クロスワン:は?わかんねーし、知りたくもないけど……知ってどうすんだよ。 ブライダル:殺す。 クロスワン:え。魔人じゃん。すごい純度の高い魔人じゃん。 ブライダル:そう。私は魔人だ。人間1人消すなど造作もないことだ!さあ手がかりを寄越せ! クロスワン:やめてやってくれ。 ブライダル:貴様……正気か? クロスワン:…… ブライダル:その女を恨んではおらんのか? クロスワン:もちろん。恨んでるよ。殺してやりたいくらい。 ブライダル:では何故、復讐せんのだ。 クロスワン:子供から親を取り上げるなんて俺にはできない。 ブライダル:貴様……もしかしてすごいいい奴なのか? クロスワン:憎しみは何も生まないからな。俺がもしあいつに何かしたとしたら、子供が俺に恨みを持って育ってしまう。そんな人生嫌だろう。 ブライダル:……人間。さっきの言葉は取り消そう。貴様はヒーローだ。 クロスワン:魔人に言われてもな。 ブライダル:それは許せ。 0:少し笑い合う2人。 ブライダル:だが、私には私の目的がある。それを阻止せんとする貴様を看過することはできぬのだ。 クロスワン:ああ。俺たちは敵だ。お互いに譲れない想いがある。そのブーケは処分させてもらうぜ。 ブライダル:くくく……ははははは! クロスワン:どうした。気でも触れたか? ブライダル:やはり貴様は浅はかな人間よ。私がこんな小道具だけで計画を進めると思うたか? クロスワン:何だと……お前、何をした。 ブライダル:ここ最近、懇意にさせていただいている人間がいてな。 クロスワン:人間の協力者か……くそ。1番恐れていたことだ。 ブライダル:お前のよく知る人間だぞ? クロスワン:まさか……俺の元嫁。 ブライダル:なわけないだろうが!引きちぎるぞ貴様! クロスワン:嫌いすぎるだろ……で、誰なんだ。 ブライダル:総理大臣夫妻だ。 クロスワン:なっ……嘘だろ。今の総理大臣は狂信的なほどの愛妻家で、国民が選ぶおしどり夫婦として名高い……まさか国家を相手取ることになるとはな。 ブライダル:偶然が色々重なってな。ブーケを手作りする過程で活花教室に通っていたのだが、そこに偶然、夫人がいらしていたわけだ。 クロスワン:お前、夫人に何を吹き込んだ。 ブライダル:なに。今の日本国は子育てのハードルが高いことをわかっていただいたまでよ。データは街頭アンケートで1万人の適齢期の男女をリサーチした。説得するのに十分な手札であったわ。 クロスワン:子育て問題が解消されれば、比例するように結婚のハードルが下がる……姑息な真似を! ブライダル:100万円だ。 クロスワン:100万円? ブライダル:来週には公布されるであろう。出産育児一時金として100万円が支給されるとな!! クロスワン:っ!馬鹿な!今までの2倍以上じゃないか!つまり……結婚希望者も2倍に…… ブライダル:その計算法の成否はわからぬが、つまりはそういうことだ。何をしようとももう遅い。諦めるんだなヒーロー! クロスワン:……だだ。 ブライダル:ん? クロスワン:まだだ!俺はまだ終わってない! ブライダル:ほう?ならばどうやってこの状況を覆すと言うのだ? クロスワン:お前は一つ。大事なことを見落としている。 ブライダル:何だ。言ってみるがいい。 クロスワン:子供を1人産めば100万円。2人産めば200万円だ。 ブライダル:ふん。何を当たり前のことを。 クロスワン:まだ話は終わっていない。この世はクソ女に溢れている。クソ男もしかり。つまり、望まれない子供が山のように産まれると言うことだ! ブライダル:…… クロスワン:この政策を開始してみろ。一時的に結婚件数、出産件数は増えるだろう。だがな!離婚件数も捨て子の数もましてや死産の数まで増やしてしまう可能性があるんだ! クロスワン:ブライダル。お前の策略は悪魔のそれだ。 ブライダル:わかっている。 クロスワン:……お前、まさか。 ブライダル:そうではない。貴様が懸念する問題を私が気付かないと思うのか? クロスワン:何だと? ブライダル:政策は一つではない。もう一つあるのだ。 ブライダル:もし不正や金のための不誠実極まりない行為だと発覚した場合。一時金は貸付となり利子も発生する。 クロスワン:……いくらだ。 ブライダル:トイチだ。 クロスワン:トイチ!?10日で1割……闇金の中でも極悪の部類と同じ金利だぞ!? ブライダル:それがどうしたと言うのだ。愛より金を取る輩など人間どころか、生物とも思えぬわ! クロスワン:お前……わかってるじゃないか! ブライダル:そうだろう!これなら健全に愛し合う夫婦は増え、邪な考えを持つ者は独り寂しく余生を過ごすことになろうぞ。 クロスワン:俺ももう一度……やり直せるだろうか。 ブライダル:安心しろ。貴様は良い奴だ。きっと良縁が舞い降りると私は思う。 クロスワン:ありがとうブライダル!俺、もう一度頑張ってみるよ! ブライダル:ふふ。期待しておるぞ。えっと……バツイチ! クロスワン:ぐあああああああ!! 0:fin