台本概要

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タイトル カムバック紙パック
作者名 遠野太陽  (@10nonbsun)
ジャンル コメディ
演者人数 2人用台本(男1、女1)
時間 20 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 ブチギレ女子と穏やか男子。
よくある(?)カップルの日常。

原案:璃月なお

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
トオル 132 優しい彼氏。
カオル 135 怒りっぽい彼女。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
0:土曜日の朝。カオルの部屋。  :  カオル:(怒る)信じられない。昨日トオル言ったよね? 「朝早く起きてゴミ出してくれる?」ってお願いした時、「任せとけ」って言ったよね? なのになんで捨ててくれなかったの? カオル:朝、早くにベッドから抜け出してたよね? しばらくして帰ってきた時に私はてっきりゴミを出してくれたんだなって思ったのよ。あれはなんだったわけ? カオル:それに。朝、起きたらトイレの電気がつけっぱなしだったんだけど。あれ、絶対トオルだよね? カオル:あー、それからなんだっけ、何か言おうとしてたんだ。ええっと・・・あ、そうそう。先週来た時にドレッシング使い切ったの、なんで言ってくれなかったの? カオル:それに、なんで冷蔵庫に飲みかけのイチゴミルクの紙パックが3つも入ってるわけ? カオル:そのうちの1つは賞味期限切れてるからね。あの紙パック、邪魔だからなんとかしてくれる? カオル:あー、イライラするぅぅ。ちょっと、なんとか言いなさいよ! トオル:いや〜、なんて言うか・・・。 カオル:なに? トオル:カオル、朝から絶好調だね。 カオル:なんなのよ! 私の話、聞いてた!? トオル:聞いてた聞いてた。ポンポンよくそれだけ言葉が出てくるなぁって感心してた。 カオル:感心するところじゃない! なんでトオルはそんなに呑気なのよ! トオル:怒ると眉間にシワが残るよ。 カオル:誰のせいだと思ってるのよ! トオル:俺かな? カオル:俺かなじゃないよ。トオルのせいに決まってるでしょ。バカなの? バカなんでしょ? なんでそんなにバカなのよ。さっき私が言ったこと、ちゃんと聞いてた? トオル:まぁ、うん。聞いてたよ。 カオル:どうせ私の言葉なんて、小鳥のさえずりぐらいにしか思ってないんでしょ。 トオル:小鳥の・・・さえずり? カオル:違うの? トオル:(笑)そんな可愛いもんじゃないよ。例えるならクラクションかな。 カオル:なんですってえええ! トオル:ああ、ごめん、クラクションは言いすぎた。もう少しデシベルが低いやつ。 カオル:掃除機か。私の声は掃除機か。騒音レベルみたいに言わないで! トオル:ごめん。悪かったよ。落ち着いて。ええっと、なんだっけ。あ、そうそう、ゴミの件だよね。朝、起きたら忘れてたんだ。ごめん。 カオル:忘れてた!? じゃあなんで朝早くベッドから抜け出してたの? トオル:あれはトイレに行って、冷蔵庫の麦茶飲んで、それでベッドに戻ってきた。 カオル:私、その時に「間に合ったの?」って聞いたら、「うん」って答えてたよね? トオル:だからそれは、トイレに間に合ったのかって意味だと思って。 カオル:ゴミ出しの話に決まってるでしょ! ジジィじゃないんだから、トオルのトイレが間に合ったかなんて、私が心配するわけないでしょうが! トオル:俺もおかしいと思ったんだよ。間に合わないわけがないだろ。なんでカオルはそんなこと聞くんだろうなぁって。 カオル:そこまで思ってたんなら、どうしてそこでゴミ出しのことだって気がつかなかったの!? トオル:カオルが「ゴミ出し、間に合った?」って聞いてくれたら思い出せたのに。 カオル:私が悪いの!? トオル:じゃあ、おあいこってことで。それと、トイレの電気がつけっぱなしだったのは、寝ぼけてたからさ、そういうこともあるよ。ごめん。 カオル:トオルは寝起きじゃなくてもいつでもボーっとしてるじゃない。なんでトオルはそんなに頭の中が空っぽなのよ。「俺の頭は空っぽです」って言ってみなさいよ。ほら、言いなさい。「俺の頭は空っぽです」。リピートアフターミー! トオル:わかったよ。悪かったよ。それからなんだっけ? カオル:何が? トオル:まだ他にも何か言ってただろ。 カオル:ああああ、ドレッシング。使い切ったら教えてって前にも言ったよね。 トオル:言ってた気がする。 カオル:気がするじゃないの。間違いなく言ってたの。 トオル:ごめんなさい。気をつけます。 カオル:(舌打ち) トオル:あ、舌打ちした? カオル:したくもなるよ。一番ムカつくのが紙パックよ。なんで飲みかけの紙パックが3つも冷蔵庫に入ってるのよ。 トオル:あのイチゴミルク、カオルの部屋に来る途中のスーパーにしか売ってなんだよ。だから仕方ないじゃん。 カオル:だからなんで3つ? トオル:先々週のやつと、先週のやつと、昨日買ってきたやつ。 カオル:それはわかってる。なんでいつも冷蔵庫に置きっぱなしにして帰るのよ。全部飲みきらなかったんなら、持って帰ればいいでしょ。 トオル:ごもっとも。次からはそうするよ。 カオル:次はない。もうイチゴミルク禁止。私の冷蔵庫に紙パック入れないで。 トオル:ええぇぇ。 カオル:文句あるの? トオル:ビールはいいの? カオル:いいよ。 トオル:ストロングゼロは? カオル:いいよ。 トオル:おつまみは? カオル:いいよ。 トオル:イチゴミルクは? カオル:ダメ。 トオル:なんでだよ。 カオル:私が甘い飲み物嫌いなの知ってるでしょ。冷蔵庫を開けた時に、ほんのりイチゴミルクの香りが漂うのよ。それが嫌なの! トオル:部屋に俺の物、他にもいろいろあるだろ。じゃあ、お箸は? カオル:いいよ。 トオル:歯ブラシは? カオル:いいよ。 トオル:枕は? カオル:いいよ。 トオル:イチゴミルクは? カオル:ダメ。 トオル:なんでだよ。 カオル:トオルの私物が部屋に増えてくのはいいの。でもイチゴミルクだけは許せないの。 トオル:許してくれよ。あれを飲むのが1週間の楽しみなんだ。 カオル:イチゴミルク買うついでに私の部屋に遊びに来てるってこと? 私よりイチゴミルクが大事なの!? トオル:そんなわけないだろ。何をそんなに怒ってるんだよ。 カオル:どうしてかわからない? トオル:わかんないよ。 カオル:抱っこが足りないんだよ! トオル:は? カオル:もっと抱っこしてくれよ! トオル:そこが着地点!? カオル:そうよ。 トオル:そんなことでカオルの気持ちは落ち着くの? カオル:当たり前でしょ。だいたい、なんでいつもトオルは目が覚めたら私に背中を向けてるわけ? トオル:寝返りうっちゃうんだよ。仕方ないだろ。 カオル:寝返りうつのはいいよ。だったら一往復してこっちに戻ってくればいいじゃない。なんで目が覚めたらいつも背中向けてるの? 私のこと嫌いなの? トオル:そんなわけないだろ。無意識だよ。 カオル:無意識なのがなおさら嫌なの。本能的に私を避けてるってことでしょ。 トオル:そんなことないって。 カオル:あるもん! それに腕枕して寝てくれないし。 トオル:腕枕してたら俺が眠れないって言ってるだろ。 カオル:私が寝るまで待っててくれてもいいでしょ。私が眠ったらシャッて腕を引き抜けばいいんだから。 トオル:無理だよ。絶対起こしちゃうから。 カオル:やってみなきゃわかんないでしょ。 トオル:(呆れて笑う) カオル:なに笑ってるの? トオル:いや、怒るのと同じテンションで甘えてくるのが面白くて。 カオル:悪い!? トオル:悪くない。抱っこするよ。ほら。 カオル:(抱きつく)んんんんん。 トオル:どうした? カオル:んんんんん。文句ばっかり言ってごめんなさい。 トオル:よしよし。ごめんなさい出来たね。偉い偉い。俺も悪かったから、ごめんな。 カオル:うん。全面的にトオルが悪い。 トオル:そうだな。怒らせてごめん。 カオル:トオルは優しいね。優しいだけが取り柄だね。 トオル:他にもいろいろあると思うけど。 カオル:例えば? トオル:あーー。いや、ないわ。 カオル:そうでしょ。優しくなかったらトオルじゃないよ。 トオル:オレ、ヤサシイ。ソレダケノオトコ。 カオル:なんでカタコト? トオル:なんとなく。もういい? カオル:まだ足りない。 トオル:今日は「つきあって3ヶ月記念日」で寄席(よせ)に行くんだろ。前座から見るなら近くでメシ食ってからじゃないと途中でお腹すくから。そろそろ準備しないと。 カオル:もう少し。あのね、女の子は彼氏の体温を摂取しないと死んじゃう生き物なんだよ。 トオル:そんなことないだろうよ。 カオル:私はそうなの。っていうかトオル、お腹のお肉、増えてない? トオル:ぎくっ。 カオル:回した手が前より届かなくなってる気がする。イチゴミルク飲みすぎなんじゃない? お腹たゆんたゆんの彼氏は嫌だな。 トオル:気をつける。 カオル:じゃあ、出かける準備しよっか。 トオル:おう。  :  0:その日の夜。  :  カオル:ただいまー。あー、楽しかったー。 トオル:ほんと楽しい時間って過ぎるの速いよな。 カオル:うん。部屋を出たのがついさっきみたい。 トオル:お腹すいたな。 カオル:パスタでいいならすぐ作るよ。 トオル:あー。いや、帰るよ。 カオル:明日も休みでしょ? トオル:そうなんだけど、明日はちょっとやりたいことあるから。 カオル:ふーん。 トオル:来週またくる。 カオル:わかった。じゃあ、私を送るために部屋までついてきたの? トオル:うん。夜の帰り道は心配だからね。 カオル:大丈夫だよ。 トオル:それにイチゴミルク持って帰らなきゃだし。 カオル:そうだった。これ全部飲むの? トオル:飲まないよ。賞味期限切れてるのあるんだろ。 カオル:だよね。あー、これでやっと私の冷蔵庫から紙パックが消えるのかぁ。 トオル:なんか袋ある? カオル:レジ袋でいい? トオル:お、ありがと。そんなに嫌だったの? カオル:嫌だった。冷蔵庫開けるたびにテンション下がってた。 トオル:捨てればよかったのに。 カオル:捨ててよかったの? トオル:嫌だけど。 カオル:そうでしょ。捨てたらトオルが可哀想かなって思って。 トオル:カオルは優しいね。 カオル:ホントにそう思ってる? トオル:思ってるよ。それじゃ、帰るわ。 カオル:うん。またね。  :  0:数週間後。金曜の夜。  :  カオル:(怒る)トオル。聞きたいことがあるんだけど。 トオル:え、なに? カオル:ちょっとここに座りなさい。早く。 トオル:なんなの? ちょっと怖いんだけど。 カオル:いいから早く。ここに正座して。 トオル:正座? わ、わかったよ。 カオル:(ため息) トオル:あの、えっと、ごめん。 カオル:なにが? トオル:いや、なんか怒ってるから、とりあえず謝っとこうと思って。 カオル:心当たりがあるの? トオル:ありすぎてわかんないよ。いつもカオルに怒られてるから。俺、またなにかやらかした? カオル:トオルがトイレに入ってる時にトオルのスマホにメッセージ届いたんだけど。 トオル:え? カオル:ミキって人から「今夜も一緒に汗かくよね?」って書いてあった。 トオル:あ。 カオル:これ、どういうこと? トオル:それは・・・。 カオル:今日もお泊りしないで帰るって言ってたのはそういうことだったのね。先週は部屋に来ても、ご飯も食べないで帰っちゃうし。 カオル:このミキって女、誰よ! トオル:だからそれは・・・。 カオル:なんでハッキリ答えないの。浮気でしょ。浮気なんでしょ。トオルのバカ! 浮気するなんて許せない! 別れる! トオル:ちょ、ちょっと待ってよ。 カオル:出てけ! もう二度と来るな! バカ! 大嫌い! この!(リモコンを投げる) トオル:うわ、リモコン投げるな。イテッ。やめろって。コップも投げるな。イテッ。だから違うんだって。 カオル:(唸る)うううう! トオル:(額を押さえて)痛ってぇぇぇ。顔はやめろよ。わかった。ちゃんと話すから。とりあえず、一旦落ち着け。 カオル:・・・言ってみなさいよ。 トオル:このミキって人は男。名字が三木なの。 カオル:じゃ、男と浮気してるってこと? トオル:そんなわけないだろ。この人はジムのトレーナー。 カオル:ジム? トオル:寄席に行った日のこと覚えてるか。あの時、カオルに太ったって言われただろ。カオルに言われる前から気にしてたんだよ。最近、体重増えたなって。それで、同期の奴に相談したらジム勧められて、2週間前に始めたんだ。 カオル:ホントに? トオル:ほら、これ会員証。トレーナーがついてくれてて、食事とかトレーニングメニューとかメッセージくれるんだ。 カオル:それが三木って人? トオル:そう。笑顔がうるさいマッチョなイケメン。ほら、写真見る?(スマホを見せる) カオル:うわ、ホントだ。笑顔が暑苦しい。なんでこんなツーショット撮ってるの? トオル:なんでだったかな? 勢いに押されて。トレーニング開始記念とかなんとか。 カオル:そうだったんだ。それならそうと言ってくれたらよかったのに。 トオル:カオルが気づいてくれるまで鍛えようって思ってたから。痛ってぇ。リモコンの角がオデコに刺さった。 カオル:大丈夫? あ、赤くなってる。 トオル:大丈夫だよ。 カオル:ごめんなさい。 トオル:もういいって。黙ってた俺も悪かったし。 カオル:こんなんじゃ浮気されても仕方ないね。怒りっぽくて口悪くてリモコン投げる彼女なんかトオルも嫌でしょ。 トオル:そりゃちょっとは直してほしいけど。 カオル:ほらやっぱり。 トオル:カオルは昔からずっとこんな感じなんだろ。性格なんてそんな簡単に変えられないよ。 カオル:違うよ。私がこんななのはトオルが初めて。 トオル:マジで? カオル:前の私はこんなじゃなかった。 トオル:えええぇ。じゃあ何がきっかけでこうなったの? カオル:それは・・・たぶん元カレのせい。 トオル:元カレ? カオル:聞きたい? 聞いて楽しい話じゃないよ。 トオル:聞きたい。っていうか聞いておきたい。 カオル:ん、わかった。 トオル:うん。 カオル:元カレは私のこと「可愛い可愛い」って言ってくれて、それが嬉しかったから、私は元カレの前で可愛い彼女を演じてたのね。 トオル:うん。 カオル:言いたいことを我慢して、不満があっても口に出せなくて。でもある日、耐えられなくなって爆発したのよ。 トオル:あぁ、目に浮かぶ。 カオル:そしたら元カレまで爆発して大喧嘩になって。で、元カレが台所から包丁を取り出して私に迫ってきた。 トオル:マジで!? カオル:包丁を振り上げるのを見て、殺されるって思った。そしたら元カレは包丁を私じゃなく自分の太ももに刺したの。「ぐあああ! 俺がお前を殺すわけないだろ。お前を殺すくらいなら俺が死ぬー!」って。 トオル:わけわかんねぇ。 カオル:わけわかんないよね。急いで救急車呼んで、それで逃げるようにソイツと別れた。 トオル:凄い話だな。 カオル:それで、アイツが狂ったのは私のせいだ。これからは自分に正直に生きようって思ったの。で、その後にトオルとつきあった。 トオル:それで俺には思ったことをなんでも言うようになったってことか。 カオル:うん。 トオル:いいんじゃないか。 カオル:え? トオル:思ったことを言い合えるって大事なことだと思うよ。嫌なことは嫌って言い合える関係のほうが絶対上手くいくと思う。 カオル:トオルはこんな私でもいいの? 頭おかしいんじゃない? トオル:おかしくないよ、普通だよ。口は悪くても自分に正直でわかりやすい。そんなカオルが俺は好きだよ。 カオル:私、このままでもいいの? トオル:少しは遠慮しろ。直してほしいところがあれば言うからさ。俺もダメなところ、いっぱいあるし。 カオル:そうだよね。いっぱいあるよね。むしろダメなところばっかりだよね。 トオル:そういうところな。 カオル:じゃあ、トオルは私に言いたいことちゃんと言ってる? 我慢してることない? トオル:そうだなぁ。あ、1つあった。 カオル:なに? トオル:「つきあって3ヶ月記念日」とか、どうでもよくない? カオル:は? トオル:1年ならわかるよ。記念日が小刻みすぎると多すぎて疲れるんだよ。 カオル:つきあって3ヶ月だよ。大事じゃん。つきあったカップルが半年継続する可能性は30%だって何かに書いてあったよ。だから記念日を迎えるたびに積み上げてきた時間を思い返して愛情を実感したいの。それの何がいけないの? トオル:わかるよ。わかるけど、これから1ヶ月ごとに記念日がやってくるかと思うと正直面倒くさいんだよ。 カオル:別に何かプレゼントが欲しいとか言ってるわけじゃないでしょ。 トオル:でも忘れたら怒るだろ。 カオル:怒るよ。当たり前でしょ。 トオル:俺にとっちゃどうでもいいんだよ。お互いの誕生日とクリスマスとバレンタインだけでいいじゃん。 カオル:よぉし、わかった。この件について、じっくり話しあいましょう。 トオル:おう。望むところだ。 カオル:そもそもね。なんで女の子が記念日を大事にするかっていうとね・・・。  :  0:いつもの朝。  :  カオル:(怒る)あーー、もう。何回言ったらわかるのよ。私のマグカップはこっちに置いてっていつも言ってるでしょ。お皿洗ってくれるのは嬉しいけど、定位置ってものがあるんだからね。それに、ちゃんと洗えてない時があるよ。洗ってくれるんならキレイに洗って。 カオル:それと、麦茶ちょっとだけ残すのやめてくれる? 補充するのがそんなに嫌? 麦茶の補充を嫌がる男とは結婚しないほうがいいって何かに書いてあったよ。 カオル:それと、プロテインの袋を私の冷蔵庫にしまうのやめて。パッケージを見るだけでウンザリなの! トオル:今日も朝から絶好調だね。 カオル:ちゃんと聞け! トオル:そんなに怒ると寿命が縮むよ。 カオル:誰のせいだ、誰の! 私が早死にしたらトオルのせいだからね。 トオル:それは困る。だって俺はずーっとカオルと一緒にいたいから。 カオル:え? トオル:だから麦茶の補充もちゃんとやるね。これからは気をつける。 カオル:ん、あれ? トオル? 私、今、プロポーズされた? トオル:どうかな。プロテインの話はしてたけど。 カオル:そうよ。なんでプロテインが私の冷蔵庫に入ってるの? トオル:開封したプロテインは冷蔵庫で保存しないと雑菌が繁殖したり、ダニが発生したりするんだ。仕方ないだろ。 カオル:だからって、なんで私の冷蔵庫を使うの!? トオル:俺の部屋にもあるけど、毎週来てるんだから、置いといてもいいだろ。 カオル:嫌なの! プロテインを見るたびに「お前も運動しろ」って言われてる気がするの! トオル:カオルもやればいいじゃん。 カオル:絶・対・嫌! 私、運動嫌いだし、汗かくの大嫌い。ただ走るとか、ただ筋トレするとか、ホントに無理。ドMか! トオル:いつか一緒にジョギングしようね。 カオル:なんでそんな筋肉バカになっちゃったのよ。ただでさえ少ない脳みそを筋肉にしてどうするの。ホントにバカになっちゃうよ。ああ、もう手遅れか。トオル、バカだもんね。 トオル:太った俺とマッチョな俺、どっちがいいの? カオル:どっちも嫌。ああ、これじゃあ紙パックがプロテインに代わっただけじゃない。 トオル:プロテインにもイチゴミルク風味があるんだよ。これがけっこう美味くてさ。 カオル:プレッシャーかけられないぶん、まだ紙パックのほうがマシだった。 カオル:あああぁ、どうしてこうなっちゃったの! カオル:カムバック、紙パーーーック!  :  0:おしまい。

0:土曜日の朝。カオルの部屋。  :  カオル:(怒る)信じられない。昨日トオル言ったよね? 「朝早く起きてゴミ出してくれる?」ってお願いした時、「任せとけ」って言ったよね? なのになんで捨ててくれなかったの? カオル:朝、早くにベッドから抜け出してたよね? しばらくして帰ってきた時に私はてっきりゴミを出してくれたんだなって思ったのよ。あれはなんだったわけ? カオル:それに。朝、起きたらトイレの電気がつけっぱなしだったんだけど。あれ、絶対トオルだよね? カオル:あー、それからなんだっけ、何か言おうとしてたんだ。ええっと・・・あ、そうそう。先週来た時にドレッシング使い切ったの、なんで言ってくれなかったの? カオル:それに、なんで冷蔵庫に飲みかけのイチゴミルクの紙パックが3つも入ってるわけ? カオル:そのうちの1つは賞味期限切れてるからね。あの紙パック、邪魔だからなんとかしてくれる? カオル:あー、イライラするぅぅ。ちょっと、なんとか言いなさいよ! トオル:いや〜、なんて言うか・・・。 カオル:なに? トオル:カオル、朝から絶好調だね。 カオル:なんなのよ! 私の話、聞いてた!? トオル:聞いてた聞いてた。ポンポンよくそれだけ言葉が出てくるなぁって感心してた。 カオル:感心するところじゃない! なんでトオルはそんなに呑気なのよ! トオル:怒ると眉間にシワが残るよ。 カオル:誰のせいだと思ってるのよ! トオル:俺かな? カオル:俺かなじゃないよ。トオルのせいに決まってるでしょ。バカなの? バカなんでしょ? なんでそんなにバカなのよ。さっき私が言ったこと、ちゃんと聞いてた? トオル:まぁ、うん。聞いてたよ。 カオル:どうせ私の言葉なんて、小鳥のさえずりぐらいにしか思ってないんでしょ。 トオル:小鳥の・・・さえずり? カオル:違うの? トオル:(笑)そんな可愛いもんじゃないよ。例えるならクラクションかな。 カオル:なんですってえええ! トオル:ああ、ごめん、クラクションは言いすぎた。もう少しデシベルが低いやつ。 カオル:掃除機か。私の声は掃除機か。騒音レベルみたいに言わないで! トオル:ごめん。悪かったよ。落ち着いて。ええっと、なんだっけ。あ、そうそう、ゴミの件だよね。朝、起きたら忘れてたんだ。ごめん。 カオル:忘れてた!? じゃあなんで朝早くベッドから抜け出してたの? トオル:あれはトイレに行って、冷蔵庫の麦茶飲んで、それでベッドに戻ってきた。 カオル:私、その時に「間に合ったの?」って聞いたら、「うん」って答えてたよね? トオル:だからそれは、トイレに間に合ったのかって意味だと思って。 カオル:ゴミ出しの話に決まってるでしょ! ジジィじゃないんだから、トオルのトイレが間に合ったかなんて、私が心配するわけないでしょうが! トオル:俺もおかしいと思ったんだよ。間に合わないわけがないだろ。なんでカオルはそんなこと聞くんだろうなぁって。 カオル:そこまで思ってたんなら、どうしてそこでゴミ出しのことだって気がつかなかったの!? トオル:カオルが「ゴミ出し、間に合った?」って聞いてくれたら思い出せたのに。 カオル:私が悪いの!? トオル:じゃあ、おあいこってことで。それと、トイレの電気がつけっぱなしだったのは、寝ぼけてたからさ、そういうこともあるよ。ごめん。 カオル:トオルは寝起きじゃなくてもいつでもボーっとしてるじゃない。なんでトオルはそんなに頭の中が空っぽなのよ。「俺の頭は空っぽです」って言ってみなさいよ。ほら、言いなさい。「俺の頭は空っぽです」。リピートアフターミー! トオル:わかったよ。悪かったよ。それからなんだっけ? カオル:何が? トオル:まだ他にも何か言ってただろ。 カオル:ああああ、ドレッシング。使い切ったら教えてって前にも言ったよね。 トオル:言ってた気がする。 カオル:気がするじゃないの。間違いなく言ってたの。 トオル:ごめんなさい。気をつけます。 カオル:(舌打ち) トオル:あ、舌打ちした? カオル:したくもなるよ。一番ムカつくのが紙パックよ。なんで飲みかけの紙パックが3つも冷蔵庫に入ってるのよ。 トオル:あのイチゴミルク、カオルの部屋に来る途中のスーパーにしか売ってなんだよ。だから仕方ないじゃん。 カオル:だからなんで3つ? トオル:先々週のやつと、先週のやつと、昨日買ってきたやつ。 カオル:それはわかってる。なんでいつも冷蔵庫に置きっぱなしにして帰るのよ。全部飲みきらなかったんなら、持って帰ればいいでしょ。 トオル:ごもっとも。次からはそうするよ。 カオル:次はない。もうイチゴミルク禁止。私の冷蔵庫に紙パック入れないで。 トオル:ええぇぇ。 カオル:文句あるの? トオル:ビールはいいの? カオル:いいよ。 トオル:ストロングゼロは? カオル:いいよ。 トオル:おつまみは? カオル:いいよ。 トオル:イチゴミルクは? カオル:ダメ。 トオル:なんでだよ。 カオル:私が甘い飲み物嫌いなの知ってるでしょ。冷蔵庫を開けた時に、ほんのりイチゴミルクの香りが漂うのよ。それが嫌なの! トオル:部屋に俺の物、他にもいろいろあるだろ。じゃあ、お箸は? カオル:いいよ。 トオル:歯ブラシは? カオル:いいよ。 トオル:枕は? カオル:いいよ。 トオル:イチゴミルクは? カオル:ダメ。 トオル:なんでだよ。 カオル:トオルの私物が部屋に増えてくのはいいの。でもイチゴミルクだけは許せないの。 トオル:許してくれよ。あれを飲むのが1週間の楽しみなんだ。 カオル:イチゴミルク買うついでに私の部屋に遊びに来てるってこと? 私よりイチゴミルクが大事なの!? トオル:そんなわけないだろ。何をそんなに怒ってるんだよ。 カオル:どうしてかわからない? トオル:わかんないよ。 カオル:抱っこが足りないんだよ! トオル:は? カオル:もっと抱っこしてくれよ! トオル:そこが着地点!? カオル:そうよ。 トオル:そんなことでカオルの気持ちは落ち着くの? カオル:当たり前でしょ。だいたい、なんでいつもトオルは目が覚めたら私に背中を向けてるわけ? トオル:寝返りうっちゃうんだよ。仕方ないだろ。 カオル:寝返りうつのはいいよ。だったら一往復してこっちに戻ってくればいいじゃない。なんで目が覚めたらいつも背中向けてるの? 私のこと嫌いなの? トオル:そんなわけないだろ。無意識だよ。 カオル:無意識なのがなおさら嫌なの。本能的に私を避けてるってことでしょ。 トオル:そんなことないって。 カオル:あるもん! それに腕枕して寝てくれないし。 トオル:腕枕してたら俺が眠れないって言ってるだろ。 カオル:私が寝るまで待っててくれてもいいでしょ。私が眠ったらシャッて腕を引き抜けばいいんだから。 トオル:無理だよ。絶対起こしちゃうから。 カオル:やってみなきゃわかんないでしょ。 トオル:(呆れて笑う) カオル:なに笑ってるの? トオル:いや、怒るのと同じテンションで甘えてくるのが面白くて。 カオル:悪い!? トオル:悪くない。抱っこするよ。ほら。 カオル:(抱きつく)んんんんん。 トオル:どうした? カオル:んんんんん。文句ばっかり言ってごめんなさい。 トオル:よしよし。ごめんなさい出来たね。偉い偉い。俺も悪かったから、ごめんな。 カオル:うん。全面的にトオルが悪い。 トオル:そうだな。怒らせてごめん。 カオル:トオルは優しいね。優しいだけが取り柄だね。 トオル:他にもいろいろあると思うけど。 カオル:例えば? トオル:あーー。いや、ないわ。 カオル:そうでしょ。優しくなかったらトオルじゃないよ。 トオル:オレ、ヤサシイ。ソレダケノオトコ。 カオル:なんでカタコト? トオル:なんとなく。もういい? カオル:まだ足りない。 トオル:今日は「つきあって3ヶ月記念日」で寄席(よせ)に行くんだろ。前座から見るなら近くでメシ食ってからじゃないと途中でお腹すくから。そろそろ準備しないと。 カオル:もう少し。あのね、女の子は彼氏の体温を摂取しないと死んじゃう生き物なんだよ。 トオル:そんなことないだろうよ。 カオル:私はそうなの。っていうかトオル、お腹のお肉、増えてない? トオル:ぎくっ。 カオル:回した手が前より届かなくなってる気がする。イチゴミルク飲みすぎなんじゃない? お腹たゆんたゆんの彼氏は嫌だな。 トオル:気をつける。 カオル:じゃあ、出かける準備しよっか。 トオル:おう。  :  0:その日の夜。  :  カオル:ただいまー。あー、楽しかったー。 トオル:ほんと楽しい時間って過ぎるの速いよな。 カオル:うん。部屋を出たのがついさっきみたい。 トオル:お腹すいたな。 カオル:パスタでいいならすぐ作るよ。 トオル:あー。いや、帰るよ。 カオル:明日も休みでしょ? トオル:そうなんだけど、明日はちょっとやりたいことあるから。 カオル:ふーん。 トオル:来週またくる。 カオル:わかった。じゃあ、私を送るために部屋までついてきたの? トオル:うん。夜の帰り道は心配だからね。 カオル:大丈夫だよ。 トオル:それにイチゴミルク持って帰らなきゃだし。 カオル:そうだった。これ全部飲むの? トオル:飲まないよ。賞味期限切れてるのあるんだろ。 カオル:だよね。あー、これでやっと私の冷蔵庫から紙パックが消えるのかぁ。 トオル:なんか袋ある? カオル:レジ袋でいい? トオル:お、ありがと。そんなに嫌だったの? カオル:嫌だった。冷蔵庫開けるたびにテンション下がってた。 トオル:捨てればよかったのに。 カオル:捨ててよかったの? トオル:嫌だけど。 カオル:そうでしょ。捨てたらトオルが可哀想かなって思って。 トオル:カオルは優しいね。 カオル:ホントにそう思ってる? トオル:思ってるよ。それじゃ、帰るわ。 カオル:うん。またね。  :  0:数週間後。金曜の夜。  :  カオル:(怒る)トオル。聞きたいことがあるんだけど。 トオル:え、なに? カオル:ちょっとここに座りなさい。早く。 トオル:なんなの? ちょっと怖いんだけど。 カオル:いいから早く。ここに正座して。 トオル:正座? わ、わかったよ。 カオル:(ため息) トオル:あの、えっと、ごめん。 カオル:なにが? トオル:いや、なんか怒ってるから、とりあえず謝っとこうと思って。 カオル:心当たりがあるの? トオル:ありすぎてわかんないよ。いつもカオルに怒られてるから。俺、またなにかやらかした? カオル:トオルがトイレに入ってる時にトオルのスマホにメッセージ届いたんだけど。 トオル:え? カオル:ミキって人から「今夜も一緒に汗かくよね?」って書いてあった。 トオル:あ。 カオル:これ、どういうこと? トオル:それは・・・。 カオル:今日もお泊りしないで帰るって言ってたのはそういうことだったのね。先週は部屋に来ても、ご飯も食べないで帰っちゃうし。 カオル:このミキって女、誰よ! トオル:だからそれは・・・。 カオル:なんでハッキリ答えないの。浮気でしょ。浮気なんでしょ。トオルのバカ! 浮気するなんて許せない! 別れる! トオル:ちょ、ちょっと待ってよ。 カオル:出てけ! もう二度と来るな! バカ! 大嫌い! この!(リモコンを投げる) トオル:うわ、リモコン投げるな。イテッ。やめろって。コップも投げるな。イテッ。だから違うんだって。 カオル:(唸る)うううう! トオル:(額を押さえて)痛ってぇぇぇ。顔はやめろよ。わかった。ちゃんと話すから。とりあえず、一旦落ち着け。 カオル:・・・言ってみなさいよ。 トオル:このミキって人は男。名字が三木なの。 カオル:じゃ、男と浮気してるってこと? トオル:そんなわけないだろ。この人はジムのトレーナー。 カオル:ジム? トオル:寄席に行った日のこと覚えてるか。あの時、カオルに太ったって言われただろ。カオルに言われる前から気にしてたんだよ。最近、体重増えたなって。それで、同期の奴に相談したらジム勧められて、2週間前に始めたんだ。 カオル:ホントに? トオル:ほら、これ会員証。トレーナーがついてくれてて、食事とかトレーニングメニューとかメッセージくれるんだ。 カオル:それが三木って人? トオル:そう。笑顔がうるさいマッチョなイケメン。ほら、写真見る?(スマホを見せる) カオル:うわ、ホントだ。笑顔が暑苦しい。なんでこんなツーショット撮ってるの? トオル:なんでだったかな? 勢いに押されて。トレーニング開始記念とかなんとか。 カオル:そうだったんだ。それならそうと言ってくれたらよかったのに。 トオル:カオルが気づいてくれるまで鍛えようって思ってたから。痛ってぇ。リモコンの角がオデコに刺さった。 カオル:大丈夫? あ、赤くなってる。 トオル:大丈夫だよ。 カオル:ごめんなさい。 トオル:もういいって。黙ってた俺も悪かったし。 カオル:こんなんじゃ浮気されても仕方ないね。怒りっぽくて口悪くてリモコン投げる彼女なんかトオルも嫌でしょ。 トオル:そりゃちょっとは直してほしいけど。 カオル:ほらやっぱり。 トオル:カオルは昔からずっとこんな感じなんだろ。性格なんてそんな簡単に変えられないよ。 カオル:違うよ。私がこんななのはトオルが初めて。 トオル:マジで? カオル:前の私はこんなじゃなかった。 トオル:えええぇ。じゃあ何がきっかけでこうなったの? カオル:それは・・・たぶん元カレのせい。 トオル:元カレ? カオル:聞きたい? 聞いて楽しい話じゃないよ。 トオル:聞きたい。っていうか聞いておきたい。 カオル:ん、わかった。 トオル:うん。 カオル:元カレは私のこと「可愛い可愛い」って言ってくれて、それが嬉しかったから、私は元カレの前で可愛い彼女を演じてたのね。 トオル:うん。 カオル:言いたいことを我慢して、不満があっても口に出せなくて。でもある日、耐えられなくなって爆発したのよ。 トオル:あぁ、目に浮かぶ。 カオル:そしたら元カレまで爆発して大喧嘩になって。で、元カレが台所から包丁を取り出して私に迫ってきた。 トオル:マジで!? カオル:包丁を振り上げるのを見て、殺されるって思った。そしたら元カレは包丁を私じゃなく自分の太ももに刺したの。「ぐあああ! 俺がお前を殺すわけないだろ。お前を殺すくらいなら俺が死ぬー!」って。 トオル:わけわかんねぇ。 カオル:わけわかんないよね。急いで救急車呼んで、それで逃げるようにソイツと別れた。 トオル:凄い話だな。 カオル:それで、アイツが狂ったのは私のせいだ。これからは自分に正直に生きようって思ったの。で、その後にトオルとつきあった。 トオル:それで俺には思ったことをなんでも言うようになったってことか。 カオル:うん。 トオル:いいんじゃないか。 カオル:え? トオル:思ったことを言い合えるって大事なことだと思うよ。嫌なことは嫌って言い合える関係のほうが絶対上手くいくと思う。 カオル:トオルはこんな私でもいいの? 頭おかしいんじゃない? トオル:おかしくないよ、普通だよ。口は悪くても自分に正直でわかりやすい。そんなカオルが俺は好きだよ。 カオル:私、このままでもいいの? トオル:少しは遠慮しろ。直してほしいところがあれば言うからさ。俺もダメなところ、いっぱいあるし。 カオル:そうだよね。いっぱいあるよね。むしろダメなところばっかりだよね。 トオル:そういうところな。 カオル:じゃあ、トオルは私に言いたいことちゃんと言ってる? 我慢してることない? トオル:そうだなぁ。あ、1つあった。 カオル:なに? トオル:「つきあって3ヶ月記念日」とか、どうでもよくない? カオル:は? トオル:1年ならわかるよ。記念日が小刻みすぎると多すぎて疲れるんだよ。 カオル:つきあって3ヶ月だよ。大事じゃん。つきあったカップルが半年継続する可能性は30%だって何かに書いてあったよ。だから記念日を迎えるたびに積み上げてきた時間を思い返して愛情を実感したいの。それの何がいけないの? トオル:わかるよ。わかるけど、これから1ヶ月ごとに記念日がやってくるかと思うと正直面倒くさいんだよ。 カオル:別に何かプレゼントが欲しいとか言ってるわけじゃないでしょ。 トオル:でも忘れたら怒るだろ。 カオル:怒るよ。当たり前でしょ。 トオル:俺にとっちゃどうでもいいんだよ。お互いの誕生日とクリスマスとバレンタインだけでいいじゃん。 カオル:よぉし、わかった。この件について、じっくり話しあいましょう。 トオル:おう。望むところだ。 カオル:そもそもね。なんで女の子が記念日を大事にするかっていうとね・・・。  :  0:いつもの朝。  :  カオル:(怒る)あーー、もう。何回言ったらわかるのよ。私のマグカップはこっちに置いてっていつも言ってるでしょ。お皿洗ってくれるのは嬉しいけど、定位置ってものがあるんだからね。それに、ちゃんと洗えてない時があるよ。洗ってくれるんならキレイに洗って。 カオル:それと、麦茶ちょっとだけ残すのやめてくれる? 補充するのがそんなに嫌? 麦茶の補充を嫌がる男とは結婚しないほうがいいって何かに書いてあったよ。 カオル:それと、プロテインの袋を私の冷蔵庫にしまうのやめて。パッケージを見るだけでウンザリなの! トオル:今日も朝から絶好調だね。 カオル:ちゃんと聞け! トオル:そんなに怒ると寿命が縮むよ。 カオル:誰のせいだ、誰の! 私が早死にしたらトオルのせいだからね。 トオル:それは困る。だって俺はずーっとカオルと一緒にいたいから。 カオル:え? トオル:だから麦茶の補充もちゃんとやるね。これからは気をつける。 カオル:ん、あれ? トオル? 私、今、プロポーズされた? トオル:どうかな。プロテインの話はしてたけど。 カオル:そうよ。なんでプロテインが私の冷蔵庫に入ってるの? トオル:開封したプロテインは冷蔵庫で保存しないと雑菌が繁殖したり、ダニが発生したりするんだ。仕方ないだろ。 カオル:だからって、なんで私の冷蔵庫を使うの!? トオル:俺の部屋にもあるけど、毎週来てるんだから、置いといてもいいだろ。 カオル:嫌なの! プロテインを見るたびに「お前も運動しろ」って言われてる気がするの! トオル:カオルもやればいいじゃん。 カオル:絶・対・嫌! 私、運動嫌いだし、汗かくの大嫌い。ただ走るとか、ただ筋トレするとか、ホントに無理。ドMか! トオル:いつか一緒にジョギングしようね。 カオル:なんでそんな筋肉バカになっちゃったのよ。ただでさえ少ない脳みそを筋肉にしてどうするの。ホントにバカになっちゃうよ。ああ、もう手遅れか。トオル、バカだもんね。 トオル:太った俺とマッチョな俺、どっちがいいの? カオル:どっちも嫌。ああ、これじゃあ紙パックがプロテインに代わっただけじゃない。 トオル:プロテインにもイチゴミルク風味があるんだよ。これがけっこう美味くてさ。 カオル:プレッシャーかけられないぶん、まだ紙パックのほうがマシだった。 カオル:あああぁ、どうしてこうなっちゃったの! カオル:カムバック、紙パーーーック!  :  0:おしまい。