台本概要
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タイトル | 魔族制戦 |
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作者名 | あまくケイ (@amak0331) |
ジャンル | ファンタジー |
演者人数 | 5人用台本(女1、不問4) |
時間 | 50 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
人がよりつかない、クリーチャーの多い地域 ある場所で、4人の魔族が集結する 強い魔族達が争うお話 コメディ要素ありのダークバトルファンタジー 「ラップトップソリューターズ」シリーズ作品 50分程度 雰囲気が崩れない程度の言い換え、アドリブは可 944 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
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斬光 | 女 | 138 | 斬光(ざんこう) 白い髪・赤い眼光・黒いコート 妖艶な雰囲気を漂わせる魔族 痛ぶることが好きで、悲鳴や苦しみの声が自分の快楽 光を自由に操り、針や鞭の形にして戦う (イントネーション…閃光と同じ 必殺技に斬光が含まれているものもあるが、イントネーション指定なし) |
摩天 | 不問 | 123 | 摩天(まてん) 青髪・黄色眼・龍のような角と白い装束 弱肉強食主義ののリアル思考魔族 魔族の中でもよくツッコミ役に回る 龍の炎や風、雷の力を用いて戦う |
影浪 | 不問 | 114 | 影浪(かげろう) 黒いスーツに帽子・黒い羽根のようなものが見える おちゃらけていてだるそうだが、何かを思案しているような、考えを読めないところがある 「傍観、ゆえにいただく」がモットー 自身の影を用いて戦う |
覇尽 | 不問 | 118 | 覇尽(はじん) 大柄な体つき・まがまがしいフォルム 己の剛体と剣を用いて豪快に戦う 自分なりの魔族哲学(?)を持っていて、周りから変わっているといわれる いちいち声がでかく、騒がしく、斬光からはうざがられている 叫び多め |
獄炎 | 不問 | 115 | 獄炎(ごくえん) 赤と白の袴のような服・黄色い兜に砕けた仮面 突如現れた謎の魔族。長らく封印されていたらしい 炎の刀を使って戦う 喋り方が古風 並みならぬ信念を持つ |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
0:暗くおぞましい雰囲気が漂う場所
0:そこに、1人の存在が、鎖のようなもので縛られていた
獄炎:……来たか
獄炎:我と談話をしにきたわけではあるまい
0:獄炎が呼びかけると、そこから誰かが出てきた
0:その誰かは、獄炎に手を向ける。すると、獄炎の後ろに生成されていた大きな魔方陣が少しずつ崩れ、鎖が粉々になった
獄炎:ほう。このような芸当ができるとは……否(いな)。
獄炎:外側から解(ほど)けるまでには、封印が弱まっていたか……
0:封印から解放された獄炎は、ゆっくりと足を動かし、手から炎を生み出す
獄炎:いずれにせよ、刻(とき)は満ちた
獄炎:少しばかり、面白い魂を感じてな
0:獄炎は怪しく笑う
獄炎:運命が呼ぶのなら、この身をもって行くとしよう……!
0:
0:場所が変わり、赤い月が夜空を照らし、その下にそびえたつ巨大な城
覇尽:たのもーーーー!
覇尽:……
覇尽:たのもーーーー!
覇尽:……場所を間違えたか?
斬光:斬光の痛技(つうぎ)「ペインニードル」
覇尽:むむっ? この針は……!
斬光:そのまま黙ってくれたら良かったのに。面白くない
覇尽:声もかけずにブスリと刺す。流石、「斬光のサティ」殿……。いつぶりでござったかな?
斬光:覚えてないわ。あなたうるさいから
覇尽:なんとぉ!?
影浪:はは~。仲良く会話している時って、足元って気にならないよねぇ。いつの間にか穴があることも知らずに、奈落の底に真っ逆さまだ
0:突如、二人の間に出来た影から、ひょいっと頭を出して姿を現す
斬光:っ……影浪……
覇尽:いつの間にいたのだ!?
影浪:よっ……と。そりゃ、君らが来る前に、だよ。
覇尽:声をかければよかったものを……
影浪:変なやつが来たら面倒だから、隠れてたのさ
覇尽:変な奴…?
斬光:あなたでしょ
覇尽:拙者のことぉ!?
摩天:他の魔族のことやろ、影浪ちゃんが言ってるのは
影浪:やぁ、摩天さん。お元気そうで
摩天:心配せんでも、この場所のこと言っとらん
覇尽:ぬぬ? この城は、お主のテリトリーではなかったのか?
摩天:せや。魔族同士のドンパチがあった後の、ただの廃墟や。わざわざホーム選ぶんは、不公平やろ
影浪:摩天さんが召集したんだっけ?
覇尽:我々、いつも争っている立場であるが、話し合いの場を設けるというのは、なかなか新鮮であるな……
摩天:その件で、先に言わせてもらうと……同盟を組むんや
影浪:同盟? そりゃまた、どういう風の吹きまわしだい?
覇尽:魔族同士、一致団結と?
摩天:団結は固すぎな表現や。もう少し柔らかくするなら、協力関係ってところか
斬光:ぶっ(吹く)……。今更仲良くしましょうって? 面白い冗談ね
摩天:冗談は斬光ちゃんの性癖くらいにしてくれんか?
斬光:なんて言った?
覇尽:おおおちつくのだ斬光殿!
影浪:はは~! そんな煽っちゃうからぁ~
摩天:話を聞かんからや
斬光:誰に言ってるか、分かってる?
摩天:今は、ワイが喋っとる。崇高な魔族なら、大人しくしてくれへんか?
斬光:……まぁいいわ。あとで殺してやるから。……続けて
摩天:最近、人間共がどうにも、勢いを増してきているように思えてな
覇尽:なに、人間が?
摩天:そう、人間風情と、つい最近まで思っとった
摩天:ワイが管理している洞窟に、人間が入り込んでな。おそらく4人くらいか
影浪:帝国の人?
摩天:いや、別やな
摩天:部下がそいつらにやられてしまっての……見込みあったんやが、幻滅したわ
斬光:見込み? あなたの眼がイカれてたんじゃないの?
摩天:残念、斬光ちゃんよりキャリアが長いんやわ
覇尽:あぁつまりその……! 魔族レベルのクリーチャーを、その人間たちが倒したと?
摩天:そういうことや。で、何が言いたいかっちゅうと……そろそろ人間共に脅しをかける頃合いやと思ってな
影浪:そこで、同盟ってわけかぁ
摩天:ただ、バケモン揃いでも、旗振りがおらんとな
摩天:人間どもに攻め入る時、「頭(かしら)」がおったほうがええ
影浪:摩天さんが仕切ればいいのに
摩天:それも考えたが……魔族は弱肉強食、上か下かの世界。横で手を組むより、実力で決める。そっちのほうが、各々納得するやろ
斬光:……そういうことね
摩天:ただ、トップ決める争いで戦力を削るのもアホらしい。あくまで戦闘不能になるまで、やりあうのがルールや
摩天:その名を「魔族制戦」
覇尽:魔族を制する戦い……いいな!
影浪:な~るほど。殺さずに自分の配下におくって発想が、いかにも摩天さんだ
摩天:勝ったもんが同盟の長。現時点で、魔族の中でレベル高いのはこの4人。だから招集をかけた
斬光:いいわ、話は分かった
0:斬光は怪しく笑う
斬光:別に同盟なんて組まなくても、私一人でどうにでもなる
斬光:だから……これはお遊び。勝てば貴方たち全員を、私の手中に……ふふ
0:斬光は針を図太く大きくし、その針をぺろりと舐める
斬光:なら、さっそく始めましょうよ
斬光:貴方の言う「魔族制戦」を……!
覇尽:うおおおおおおおおお! みなぎってきたあああああああ!
斬光:……(舌打ち)
影浪:あー。空気ブレイカーって目立つよねぇ。将来有名人になれるんだっけ?
摩天:魔名(まめい)持ちって意味じゃあ、もう有名やけどな
0:そこで、斬光は、何者かの気配を感じ取り、後ろを振り返る
斬光:……誰?
獄炎:その制戦(せいせん)、我も混ざろう
摩天:なんや、あいつ?
影浪:混ざりたいんなら、魔族じゃない?
摩天:いや、どういうことやねん
覇尽:名を名乗れい!
獄炎:我は……「獄炎」
摩天:「獄炎」? 魔名(まめい)持ちか?
獄炎:ああ
覇尽:お主も魔族か?
獄炎:いかにも
覇尽:何をしに来た!
獄炎:ここに、強き魔族が集まると聞いたものでな
摩天:ほんまにいうとるんかいな、それ?
獄炎:偽りはない
影浪:あらららぁ~? この場所誰か喋っちゃった~?
影浪:お喋りな魔族さんはだーれだ?
摩天:まぁええわ、別に
摩天:それよりワイが聞きたいのは、今ここにいる連中のこと、分かってるんか?
獄炎:承知している。うぬらの強さも。その風貌からも、よく伝わる
覇尽:やる気十分……よき!
0:覇尽は高らかに獄炎に声をかける
覇尽:獄炎殿! なれば拙者たちと混ざらぬか?
摩天:あいつも混ぜるんか? ただの下級魔族やろ
覇尽:そうだ。その魔族たるもの、挑む姿勢は評価に値する。それに、弱ければそこまでの話。この制戦に影響はないだろう?
摩天:まぁ、そやけど……
斬光:生意気ね
獄炎:常(つね)とは、時に大きく破られる
斬光:は?
獄炎:うぬらが勝つという未来は、まだ決まってはいまい
斬光:何、こいつ
影浪:それ、君が勝っちゃうっていいたいの?
獄炎:でなければ、このような場所に来ぬ
影浪:わーお!
摩天:自信満々やなぁ。斬光ちゃん以来やで、ああいうタイプは
斬光:あれと一緒にしないでくれる?
覇尽:よし……ならさっそく!
摩天:……いや、ワイが相手したるわ
覇尽:ぬぬ!? 摩天殿が?
摩天:やられた部下の代わりが欲しいって思ってたところや。ま、あいつがワイの眼に適(かな)ったらの、話やが
覇尽:そうなれば…拙者は、お主らと!
斬光:……元気な馬鹿を見ると、つい踏み潰したくなるのはなぜかしらね?
影浪:おっかなぁ~い
覇尽:しかし、おっかないで終わらせない! それが魔族というものぉ!
0:覇尽の手が黒くなり、そこから剣が現れる
覇尽:いざ、勝負に参ろうぞ!
影浪:あのー。個人的に、見学したいんだけどねぇ~。……日陰で
0:
摩天:というわけで、よろしくな、獄炎ちゃん
摩天:……にしても、「獄炎」。どっかで聞いたことあるような……駄目や、思い出せへん
獄炎:まずはうぬか
摩天:ワイは摩天。ドラゴン系統の魔族や
獄炎:龍の血……油断ならないな
摩天:その龍の中にも、出来る奴がおったんやがなぁ。人間にばっさりやられての
獄炎:期待をしていた、か
摩天:せやで、魔族候補やったけどなぁ……しょうもないわ、ホンマ
摩天:だから、あんさんはその代わり
獄炎:買いかぶられたものだ
摩天:まだ買うとは決めとらん。これはテストや
獄炎:試練を与えるか、どのようなものだ?
摩天:そりゃ、ワイのしもべに、なれるかどうかの、な……!
0:獄炎の上空から、大きな雷がふりそそぐ
摩天:摩天の楼技(ろうぎ)。「サンダーボルスター」!
獄炎:雷から龍の息吹を感じる……身を引き締めてかからねばな
摩天:ちょいちょい! そんなブツクサほざいとる場合ちゃうで。ほれ、もう一発!
獄炎:この威力を続けて出せるか。格の違いは、技の中にある、とな
摩天:まだや
獄炎:……これは?
摩天:摩天の楼技(ろうぎ)「フレアボルト」!
獄炎:「炎」が「落ちてくる」か
摩天:正解や。まるで雷を落とすように、炎を上から……!
獄炎:…ぐっ…
摩天:ほれみたことか。実力もないのに、魔名(まめい)を名乗るとこうなる。邪悪の中で「自分が強い」って吠えるんはな、そいつ自身が強さに見合ってなければ……ただの自滅行為やで
獄炎:少々、予想の上を行ったか、この実力は
摩天:悪いけど、こちとら制戦で忙しいんやわ
摩天:まだやるんなら、本気でかかるで
獄炎:クク、まだ序の口か
摩天:降参なら今のうちやで、獄炎ちゃん
獄炎:否(いな)、敗けは決まっておらぬ
摩天:ほぉ~。こりゃ力の差、しっかり教えたらんと、あかんみたいやな
摩天:先輩として、逆らったらどうなるか、叩き込んだるわ
獄炎:なれば、下剋上だ
0:獄炎は炎の刀を出し、摩天に斬りかかる
摩天:おおっとぉ!
獄炎:いただくぞ!
摩天:炎の刀…か? こりゃ
獄炎:……ッ?
摩天:でも、もうちょっとやったな
獄炎:これは……電気の壁?
摩天:摩天の楼技(ろうぎ)「サンダスウォール」
獄炎:雷(いかづち)を操る力ひとつとっても、多彩とな
摩天:身の立場、分かっとるやないか。世渡り上手な才能を感じるで……っ!?
獄炎:……獄炎の刀術「業火突き(ごうかづき)」
摩天:うおっ!? あっぶな!
0:摩天はすぐさま飛び、獄炎の攻撃をよける
獄炎:立派な翼だ
摩天:そりゃ、翼くらいついとるわ
摩天:(……なんや、さっきの? ただの突きなのに、えらい大きく見えたで……。……ワイの技が、一瞬、破られるかと思って、慌てて飛んでしまったわ)
獄炎:どうした? 「ひるんでいる」と顔に書いてあるぞ?
摩天:はっ。そりゃ、ただの見間違いや……!
0:
覇尽:ほおおおおおおおあっ!
斬光:うるさい
覇尽:とおおおおおおおおっ!
斬光:……邪魔!
斬光:斬光の痛技(つうぎ)「ペインニードル」
0:斬光は瞬時に光の針を出し、覇尽に放つ
覇尽:ぐぬぅぅぅぅぅっ!
影浪:あぁ~、もう慣れてきちゃった、覇尽さんの掛け声
斬光:聞けば聞くほど、その体にぶっ刺して、黙らせたくなるわ
影浪:血の気がお盛んだことで~
斬光:……戦う気がないなら、貴方から刺そうかしら?
影浪:あ、後ろ
覇尽:覇尽の砕技(さいぎ)「オーバスザッシュ」!
斬光:っ!
影浪:ふぅ~。豪快~
覇尽:ほおおおおお……って!? 居ない!?
斬光:こっちよ
覇尽:ぬっ!?
斬光:斬光の痛技(つうぎ)「クロウペインザー」
覇尽:右か!
斬光:……ちっ。残念ね。その巨体が引き裂かれるの、見たかったんだけど
覇尽:……光をまるで粘土のように変えては造る……これが斬光殿の力。鋭利な形を見た時こそ、もっとも警戒する瞬間であるな
斬光:よく分かってるのね、嬉しいわ
斬光:ほら、見てよ、これ? この白くて艶やかな光が、あなたを斬って刺したいって訴えかけてくるの。伝わらないかしら?
覇尽:いや、わからん!
斬光:なら頑張って理解しなよ……ほうらっ!
0:斬光は光の大きな針状にして、覇尽に投げつける
覇尽:呆気なくやられるほどヤワではないぞ!
斬光:クソ脳筋が
影浪:斬光さん、おクチ悪いよぉ~。女帝様ならもっと凛々しくいなきゃ
斬光:っ!
0:影浪は、斬光の後ろから現れて、
影浪:影浪の滅技(めつぎ)「シャドウチェイン」
斬光:ちっ。うざい鎖……
影浪:形を変えられるのは、君と同じだけど……刺す趣味、ちょ~っとねぇ。どうかと思うんですわ~
斬光:それ、その影、目障りだからしまってくれない? ……あぁ、ごめん。あなた自身が目障りか。間違えたわ
影浪:その言い方、若いな~。僕も覇尽さんも、君より先輩なんだから、敬(うやま)って欲しいなぁ~
斬光:先輩なら、後輩の頼みを聞いてくれるわよね?
影浪:どんな?
斬光:そこのうるさい唐変木(とうへんぼく)……潰してくれない?
覇尽:唐変木!?
影浪:ごめんちゃい。うるさいより、痛いほうが嫌だからぁ、僕。
斬光:ゴミ
影浪:はは! ひっどぉ~い!
覇尽:というか影浪殿! 先ほどは助かった
影浪:いや、助けてるわけじゃないよ?
覇尽:なぬっ!?
影浪:僕の中じゃ、斬光さんが一番だとは思ってるのよ。だから数的有利作ったほうが、安パイだと思ってね~。
覇尽:ふむ……確かに。ただ最強は拙者だが!
斬光:あっそう。せいぜいほざいてなさいな
0:斬光は瞬時に近づいて、覇尽と影浪に向かって、光の針を飛ばす
覇尽:おっとあぶない!
斬光:まとめて串刺しにしてやるわ……!
影浪:魔族の串刺し団子って? 美味しくないと思うよ~?
0:影浪が自らの影を宙に浮かせ、形を変える
斬光:っ、周りに影?
影浪:影浪の滅技(めつぎ)「ダークパッチャー」
影浪:はてはてここで、指を鳴らすと
0:影浪が設定していた影が、指を鳴らすとともに小規模な爆発を起こす
影浪:あら不思議、ちっちゃな影が爆発しちゃったぁ~!
斬光:チッ……!
影浪:今だよ、ゴー
覇尽:任せろぉぉぉ!
覇尽:覇尽の砕技(さいぎ)「クラッシュウェイブ」!
0:覇尽が地面に大剣を叩き込むと、衝撃波のようなものが地を割るように斬光へ向かう
覇尽:我が覇道(はどう)……地を割るがごとく!
斬光:やかましい……
覇尽:ぬ!?
斬光:斬光の痛技(つうぎ)「トラッカーペイン」
覇尽:針が、斬光殿の周りに……?
斬光:さぁ、行きなさい
覇尽:拙者の技を、避けながらっ……!
0:斬光が光の針をいくつか生成し、様々な軌道をえがいて、覇尽に襲い掛かる
影浪:やらせないよ
影浪:影浪の滅技(めつぎ)「シャドウシュート」
斬光:っ、トラッカーペインを撃ち落とした…?
影浪:こっちも警戒しないと~
覇尽:影浪殿!
影浪:やられると困るからね
覇尽:さっきのは助けなくとも、なんとかなったぞ
影浪:あ……そうですか
斬光:魔族のくせにチームワーク抜群ね
斬光:二人ともまとめて、痛ぶりたくなるわ……!
影浪:おおう、ペットにするって?
斬光:分かってるじゃない……ええ、そうね
斬光:そこの脳筋覇尽を椅子代わりにして、影浪、あなた文字通り影薄いから、踏み台にでもしようかしら
覇尽:……ぬ? 椅子代わり? それ、ペットではなくないか……?
影浪:そこは突っ込まないほうがいいと思うよ、覇尽さん
覇尽:……悪趣味は健在のようだ
斬光:魔族の常識、知らないの?
影浪:後輩君から、常識教わっちゃうのぉ?
覇尽:その常識とは一体……からのぉ……!
0:覇尽は再び剣を構えて、斬光にふるう
覇尽:覇尽の砕技(さいぎ) 「オーバスザッシュ」
覇尽:とおおおっ!
斬光:ちっ、またそれかよ……無駄!
0;斬光は多く針を生成し、覇尽の攻撃を喰いとめる
覇尽:ぐぬぅ……さらに針を増やして、衝撃波の勢いを……やはり侮れないな
0:そこで、獄炎に押される摩天が、3人の下にまで移動していた
摩天:ぐっ……。なんやねん……こいつは
覇尽:摩天殿? まさか、押されているのか!?
斬光:あなた、そんなに雑魚だったの。魔名(まめい)持ちなのに。
摩天:何をいうとんねん。見てわからんかいな
斬光:分からないから聞いてるんでしょうが
影浪:……ほう。あの魔族さん、やるぅ
斬光:……嘘でしょ?
摩天:……まぁ。及第点やな
獄炎:龍の力、とくと拝見した
摩天:余裕やな。まるで手でも抜いてるっちゅう言い方やないか?
獄炎:その通りだ
摩天:……冗談やろ、それ?
獄炎:長らく体がなまっておる
摩天:かーっ!
覇尽:どうした?!
摩天:なんやこの魔族君、自分がめちゃめちゃ強い言うとるんやって
影浪:へぇ~
斬光:イタイ魔族ね、気持ち悪い
摩天:イタイって……痛い技つかうあんさんが言うなや
覇尽:……お主、自らを強いと豪語するか……
影浪:覇尽さん?
覇尽:……実に良き、良きかなァァァァ!!
影浪:あーらら。魔族の熱血大興奮
覇尽:おおお、拙者の血が……みなぎってきたぁああああ!
斬光:(舌打ち)
覇尽:どれ…そうしたら拙者が相手いたそう!
影浪:あれ? そっち行っちゃうの?
斬光:あなたが行ってしまえば、影浪一人、いたぶることになるけど、いいのかしら?
影浪:……ん?
覇尽:健闘を祈る!
影浪:えぇ~! ちょっとぉ~! 嘘でしょ~!?
0:
獄炎:次は、うぬか
覇尽:拙者は「覇尽のヴァルーガ」。覇尽と呼んでいただければ結構
覇尽:魔族の中で最も強い……魔名(まめい)持ちである!
獄炎:闇を身に着けた巨人、か。邪悪を現したような外観から、強さが伝わってくるぞ
覇尽:我らの血筋は、闇の力に手を染めた巨人の血を持っていてな。普通の巨人とはわけがちがう。つまり、オールインワンというやつだ!
獄炎:ただ……巨人にしては、我の身長より、少し上といったところだが
覇尽:その通り。体の大きさも変えられるのだが、でかすぎると不便だからなぁ
獄炎:なれば、その邪悪を纏った剛体で、かかってくるがよい
覇尽:ぬぬ、その台詞。強い魔族のいうそれと代わりなき!
覇尽:しかしぃ……言ってられるのも今のうち……!
摩天:ちょい、ワイも忘れんといて
覇尽:なっ、邪魔をするのか摩天殿……!
摩天:邪魔? どこ見たらそう思うねん
覇尽:そのまんまだ!
摩天:なにがまんまや!
覇尽:これは拙者と獄炎殿との勝負。2対1で戦うつもりはない
摩天:さっき斬光ちゃんと2ー1(にーいち)でやっとったがな
覇尽:それはそれ、これはこれ!
摩天:めんどくさいなぁもう……
覇尽:それに、摩天殿の力を借りずとも、拙者一人で十分だ
摩天:あぁー、まぁ痛い思いしたいなら、ええけどな
覇尽:お主……よもや、そのようなことを言うとは! 魔名(まめい)持ちだというのに
摩天:これはワイの感想やけど……侮れんで
覇尽:……
獄炎:二人か……構わぬ。まとめて挑んでくるといい
摩天:それ、言って後悔せんか?
獄炎:後悔など、とうの昔に置いてきた
覇尽:魔族に二言目は不要。いざ、勝負……!
獄炎:ほう……構えもよく出来ている
覇尽:覇尽の砕技(さいぎ)「ジェノサイローダー」!
獄炎:魔気(まき)……これは闇か。それを纏った突進と……まさに獰猛の権化(ごんけ)
摩天:何処見とるんや
獄炎:っ?!
摩天:摩天の楼技(ろうぎ)「ドラグフレアード」
獄炎:後ろに、龍の炎……
摩天:覇尽ちゃん、しばらくそいつ、ひきつけておき!
覇尽:ひきつける前に、成敗いたす!
摩天:気合十分でええな!
獄炎:龍の攻撃を背にしながら……剛体を相手にする……っ……ぐ……
摩天:まだ終わらんで
摩天:摩天の楼技(ろうぎ)「ドラグトルネイド」
獄炎:今度は風とな……
摩天:前方には巨体。後ろは、龍の炎と風。しかも並大抵のドラゴンのそれとは違う。つまり……
覇尽:ここで終結!
摩天:下剋上(げこくじょう)は諦めるんやな!
獄炎:……獄炎の刀術(とうじゅつ)
0:獄炎の刃に、炎が段々とたまっていく
獄炎: 絶(ぜつ)・火回斬り(ひかいぎり)!
覇尽:!? 炎がっ……ぉぉ!?
獄炎:はぁっ!
0:獄炎の放った回転斬りにより、二人は吹き飛ばされる。摩天の放った攻撃が止む。
摩天:ぐぉっ!?
覇尽:がぁぁっ!
摩天:……でかすぎるんやその炎ッ!
覇尽:……ぐぬぬ……まるで、拙者よりも大きい巨体の攻撃を受けとめているような感覚だった……獄炎殿の刀も、体格も、拙者と比べれば小さいというのに、この迫力は……どこから
獄炎:魔族の上に立つ者が、この程度か?
獄炎:それで統べるなどと、片腹痛いぞ
0:
影浪:ははは~! 摩天さんたち、なんかヤバそう~。しっかし、新人魔族君の攻撃、見れば見るほど……人間の技みたいに見えちゃうよねぇ……摩訶不思議
影浪:でもそれを言うなら……斬光さんもよね~
斬光:ジロジロ見てどうしたの?
影浪:うーむ、見た目の上品さは安定のヴァンパイアって感じだけど、なんというか、妖艶さがサキュバスのようで……色んな血が混じってるのかな? 正直見たことないタイプ……しかも人間に近いし
斬光:私、人の体を鑑賞する奴、好きじゃないのよ。気持ち悪くて、ついなぶりたくなる
斬光:……斬光の痛技(つうぎ) 「ペインウィッパー」
影浪:なるほど、鞭ですか
斬光:光に痛めつけられる影って、どんな声を出すのかしらね?
斬光:……ほら、ほら、ほうらっ!
影浪:とっ、とっ、とっ!
斬光:ちょこまか逃げないでよ、当たらないじゃない
影浪:いやそりゃ逃げますって~!
影浪:っ、影浪の滅技(めつぎ)「シャドルガーディア」
0:影浪は、自分の影から壁を生成し、斬光の攻撃を弾く
斬光:はっ、影を使って壁を……。地味なやつ
影浪:当たらなかったら、こっちのもの
斬光:でもその影……随分とモロそうに見えるけど!?
影浪:ひゅう~、その上から見下ろす表情、百点満点。まさに、女王様万歳!的なやつ
斬光:だったら大人しく受けなさいよ、つまらない
影浪:僕はごめんだ
斬光:へぇ。自分に拒否権があるって思ってるの? すごいわね
影浪:えぇ~? 魔族に権利無しってことぉ~?
斬光:次は、横から!
影浪:あっぶな! ……まぶしい鞭だことで!
斬光;当たったら、痛いどころか、斬れちゃうかもね……!
影浪:……影浪の滅技(めつぎ)「ダークワップ」!
斬光:っ、影の中に消えて……
斬光:……どこに
影浪:こっちだよ~!
斬光:っ!
0:斬光から離れたところ、瓦礫の影から、影浪が現れる
影浪:さぁ、こっから僕のターン。たくさん撃ち込んじゃうよ~
影浪:影浪の滅技(めつぎ)「ナイトメアリッター」!
斬光:っ! 影が、盛りだくさんね……!
影浪:どうしたんだい? 女王様がそんな攻められたら、目も当てられないね~
斬光:知ってる? 受けたものって、返ってくるのよ
斬光:斬光の痛技(つうぎ)「ペインニードル」!
0:斬光は影の弾丸を交わしながら、光の針を生成して抵抗する
影浪:おおっと。……じゃあいっそあんたも、返すなんてやめて、受け専門のどM魔族になってみたらどうだい? 刺される側の気持ち、分かるよ?
斬光:ごめんなさいね、そっちはクソほど興味ないの
斬光:なぜなら……この世の万物は、私に痛めつけられる為にあるのだから
影浪:なんともまぁ都合のいい……って!?
斬光:斬光の痛技(つうぎ)「ペインズレーザー」!
0:斬光は光の針を収縮させ、レーザーのように影浪へ放った
影浪:ぐっ……!
斬光:残念。少しかすった程度ね……でも、痛そう
影浪:あとちょっとズレてたら吹き飛んでたな~……いってて……
斬光:ねぇ、どうかしら? 痛い感想、聞かせてよ
影浪:いや、それ言ったら、あんたが喜ぶだけじゃないのさ
斬光:……私が喜ぶ『だけ』ね。ふふ……ごもっとも
影浪:なんだい? 喜ばない部下でもいたの?
斬光:居たら悪い?
影浪:気になるねぇ、どんな奴?
斬光:歪(ゆが)んだクソ男よ。……いえ、歪んでいたのは私か。何も見えていない、じめじめとした愚かな人間だったから
影浪:……ん? 人間?
斬光:私、元は魔族じゃなくて『人』だった……って言ったら、信じる?
影浪:……初耳だな、それ。人間から魔族になるなんて話は無い。まさか、別世界にいたとか?
斬光:ええ。最初に目覚めたのは、よくわからない門の前だったわ
影浪:……はぁ~。確か、異門(ゲート)だっけか……ただの言い伝えだった気がするけど……
斬光:ほんとのことよ。……もっとも、その時の私に、余裕なんてなかったけど
影浪:誰が召喚したんだい?
斬光:いたぶられるのが、大好きな魔族さん……部下よ
影浪:痛ぶられるのが大好き? それじゃあ、僕や覇尽さんなんて要らないじゃないか。見合ったSMパートナーがいるんだし
斬光:……もう死んだわ、そいつは
影浪:ありゃ、残念
斬光:でも……感謝してるのよ。ふふ……!
0:斬光は怪しく笑う
斬光:この体になってからは、とてもすがすがしい気分
斬光:もう、あのクソ男も、腐った私も終わりを迎えた
斬光:だから今度は、「斬光のサティ」として、この世に痛みと苦しみを与え続けるのよ……!
影浪:あー。いたぶりフェチは、魔族になっても健在そうだね
斬光:当たり前じゃない
斬光:傷つけて、痛めつけて……いえ。いちいち言うのは、もう面倒
斬光:だって、口にしなくても、与えてしまえば反応が返ってくるのだから
影浪:……変な話しちゃったかなぁ、これ
覇尽:ぐぉぉっ!
影浪:……っと、おやおや
斬光:あなたまでやられてるの?
覇尽:こ、この魔族……もはや、拙者たちと同じレベルではないか……?
摩天:ほれ、言った通りやろ
獄炎:いい剣筋だ。どうする? まだ来るか?
覇尽:ぐぐっ……!
獄炎:……なれば。そこの魔族。斬光だったか
斬光:なにかしら?
獄炎:この中で一番に強いと見た
獄炎:うぬを倒すことで、実質、魔族を制したことになるだろう
影浪:……あり? 僕は?
獄炎:そのあとに立ち向かう勇気があるのなら、来るといい
影浪:言うねぇ……。じゃ辞めとこっかなぁ~
斬光:……どれだけ強いのか知らないけど、あなたさ
獄炎:なんだ?
斬光:魔族にしては、普通すぎる
獄炎:……どういう意味だ?
0:斬光は少しずついらいらした口調になっていく
斬光:「何かをモノにしたい」、「優越感に似た何かを感じたい」、「悲鳴を聞きたい」……悪の誰もが心の中に持っている「それ」を解放するために、力は存在する
斬光:でも、貴方からはそれをいっこうに感じ取れない……魔族という立場がありながら、よ
獄炎:そこまで憤りを感じる事か?
斬光:そう。そうよ。ずっと思ってた。なぜこんなにもイライラするのかしら
斬光:ねぇ、教えてよ?
獄炎:簡単なことだ
獄炎:うぬにとっての普通が、普通ではない
獄炎:我には関係のないことゆえ
斬光:……あは、あっははははははははは!
斬光:何それ? ウケ狙ってるつもり?
斬光:それ、なんていうか知ってる?
斬光:「舐めている」っていうのよ
獄炎:舐めていたら、どうすると?
斬光:……くく。
斬光:死(し)に殺(ごろ)す!
獄炎:なれば、生き参ろう
0:獄炎は刀を構え、刀身から勢いよく炎があふれ出す
斬光:生意気ね……ひどく、ひどく。じゃあその見るに堪えない表情を、しっかり切り裂かなくちゃねぇ、はは!
獄炎:何を見てきたかは知らぬが。その愉悦(ゆえつ)、焼き砕いてみせよう……!
0:
影浪:始まりましたな
影浪:……お。おつかれちゃん。二人とも派手にやられたようで
覇尽:未だに信じられん……
摩天:ま……そういうことや。にしても二人でやってもこれか……
影浪:……
摩天:どないした?
影浪:え? いやー。無駄に戦わなくてすんだなーって
摩天:ほんまめんどくさがりやな
影浪:だってだるいし
摩天:よう魔族になったもんや……
影浪:それにさ、ここで斬光さんが倒れてくれたら有難いじゃん?
摩天:……いまんところ、ワイの予想、5割やけどな、どっちも
影浪:そんなに?
覇尽:もしや、そのうちの5割は拙者か!?
摩天:なんでや! 話聞いとったんかい! 斬光ちゃんと、獄炎ちゃんや!
覇尽:残念!
影浪:お、始まるっぽいよ……あの二人
影浪:さてさて、どうなることか
0:
斬光:斬光の痛技(つうぎ)「クロウペインザー」!
獄炎:空(くう)を、白い光で斬る、とな……!
斬光:私の力は、光の形状を痛覚を感じるものへと変えられる……私が意識すれば、いくらでも
獄炎:恐ろしい光だ
斬光:ほら、ついでにこっちも喰らいなさいな……!
斬光:斬光の痛技(つうぎ)「ペインフィーター」
獄炎:爪だけでなく、足にも生成できると……
斬光:引き裂かれるのと、蹴られるの、どっちがいいかしら?
獄炎:どちらにせよ、焼き返せば良いこと
斬光:あっそ! じゃあどっちも、その炎に、光を刻んであげる!
0:
摩天:中々に本気やね。斬光ちゃん
覇尽:……彼女の名前が出てきたのは最近だったな。周りの魔族をなぎ倒すかの如く
摩天:そう、いきなり自分から「魔名(まめい)」を付けた魔族……ワイも最初は気になって、一時(いっとき)はしもべにしようかと思ったがとんでもない。他の魔族たちが悲鳴あげとったわ
覇尽:なぬ?
摩天:最近、やけに大人しかったやろ?
覇尽:そういえば……あまり見かけなかったような
摩天:自分より生きとる魔族ほとんど、半殺しにしとった
覇尽:斬光殿が?
摩天:せや。殺さへんギリギリのところをつく……そんな狂った考え方してる上に、それを実行できるのは、斬光ちゃんくらいや
影浪:だから敵に回したくないのよ~
覇尽:そうだったのか……
摩天:出会った頃から、あの表情。まるで生まれた頃から、強さが滲みでとるみたいに
覇尽:……拙者もはじめて、彼女と交えた時は、苦戦に苦戦を強いられた記憶があるな……あれだけ楽しそうに力をふるう魔族とやりあったのは、久方ぶりだった
摩天:もうすでに、魔名(まめい)持ちの魔族として、素質があったってことや
影浪:……ていうかさ。……僕ら普通に喋ってるけど
覇尽:はっ!? そういえば!
摩天:別にええ。今は見学や
影浪:そりゃよかった
覇尽:ううむ……思うのだが、獄炎殿くらいであれば……魔名が知れ渡っていてもおかしくないのだが
摩天:そこなんよな……なんか、こう、聞き覚えがあるというか
覇尽:……これでは、本当に
摩天:なんや?
覇尽:いや、なんでも。しかし……本当に底の見えない炎であったな……
摩天:ただ、獄炎ちゃんが戦ってるのは、底の見えない光やで
0:
斬光:どうしたのかしら? 避けるばっかり?
獄炎:いいや、ここからだ
斬光:あっそ。そういうの、いらないから
斬光:斬光の痛技(つうぎ)「スパークペイリスタ」!
獄炎:っ? 奴の針に、電気が……このような事もできる、か……
斬光:痺れた悲鳴を聞かせて頂戴!
獄炎:……っ!
斬光:ぶっ……! はは。無様、無様。ひどすぎて笑える
斬光:ほら、もう一つ
斬光:斬光の痛技(つうぎ)「ペインニードル」」!
0:斬光は左手から、光の大きな針を生成し、それを獄炎にぶつける
獄炎:ぐ…ッ……!
斬光:ほんとさぁ、キモいのよ
斬光:人間を脅かす側でありながら、その態度……本当に、気持ち悪い
斬光:そんな奴が? 私を倒す?
斬光:……笑わせんじゃないわよ!
獄炎:……
斬光:ヴィランには……魔族には……悪には、「力」があることで成り立つ
斬光:力こそ、最高の道具で、最高の快楽で、最高の表現……!
斬光:貴方には、それが微塵もなさすぎて……『今まで』あってきた誰よりも、つまらない!
獄炎:笑わせるつもりなど、微塵もない
斬光:もういいわ。このまま会話してたら、私の光が、貴方の炎で腐りそう
0:斬光は光の針を大きくし、鞭の形に変えた
斬光:斬光の痛技(つうぎ)「ペインウィッパー」
獄炎:っ、……
斬光:ほら、ほうらっ!
獄炎:………クク、ククク
斬光:あれ? 喜んでる? 喜んじゃってるんだ?
斬光:刻まれすぎて、気でも狂ったかしら!?
獄炎:いいや、よく使い込んでいると思ってな
斬光:……は?
獄炎:では、こちらも打ち合いといこう
0:獄炎の目が、より鋭くなる
獄炎:獄炎の刀術(とうじゅつ)……「絶火の舞(ぜっかのまい)」!
斬光:っ、なに、これ?
獄炎:熱く……激しく……圧し通るッ!
斬光:勢いが……っ……?!
獄炎:その痛みごと、炎の底へ沈めよう
斬光:うざい……うざい……うざったい!!
0:斬光は白い翼を出し、空中に舞い上がる
獄炎:……? 宙にあがった?
0:
摩天:っ……まずい!
覇尽:こ、これは、まさか!
影浪:ごめん、先に隠れるー
覇尽:影浪殿!イチ抜けずるい! ……ここは、がっちり防御を!
摩天:あぁもう……こっちまで巻きこむなや! 斬光ちゃ~ん!!
覇尽:絶対聞こえてないぞ!
摩天:うるさいわ!
0:
獄炎:(なんだ? 何が来る?)
0:
斬光:『永久の理(ことわり)よ
斬光:その命(めい)に従い、数多(あまた)の痛みをもってして
斬光:世の十字架を、血の空へと昇らせん
斬光:さぁ、逝こう。痛みの先へ
斬光:さぁ、鳴こう。覚めた苦しみへ
斬光:光を斬り、白き痛みを世界に与えよ……!』
0:
獄炎:……光の針が……尋常な数だ
0:
斬光:斬光の大痛技(だいつうぎ)
斬光:『傷苦(しょうく)の嘆(なげ)き 痛白斬光(つうはくざんこう』ッッッ!!
0:
獄炎:っ……まとめて来るか
0:
斬光:あっはははははは! 痛みに吠えろ、苦しみに泣き叫べ!
斬光:その叫びこそが……私の快楽なのだから!
獄炎:笑止(しょうし)!!!
獄炎:己(おの)が快楽のために痛めつけるなど、小童(こわっぱ)の申すことなり!
獄炎:その程度の心意気で、我が炎は破れぬ!
斬光:っは! いくらでも吠えてなさいな
斬光:さぁ、白き光たちよ。あの愚かな炎を、斬って刺して、痛みを教えてあげなさい!
0:斬光が手を獄炎に向けると、一斉にたくさんの光の針が、獄炎に向かっていく
獄炎:……
0:獄炎は深く息を吸い、吐いた
斬光:(っ? ……あいつの刀に炎が……どんどん、膨らんでく?)
斬光:何をするつもり?
0:
獄炎:……獄炎の刀術(とうじゅつ)
獄炎:「絶(ぜつ)・炎(ほのお)返し」!
斬光:っ……な…?
獄炎:はぁぁぁぁぁぁぁアアアアッ!!!!!
斬光:ぐ……っああああっ!
0:
影浪:……ははは。こりゃあ、たまげた
覇尽:まさか……斬光殿の、あの技を
摩天:しかもいっぺんに……炎にして返しおった……
影浪:……流石だねぇ
摩天:ほんまのまんまか、これ……? 斬光ちゃん、追い込まれてるやんか……!
覇尽:やはり、この状況、獄炎殿が押していることに、間違いないようだ……
影浪:だって、あれを返せてるんだよ? こう、炎でズドンズドーンって
摩天:なんでそんな楽しそうなんや……
覇尽:……というか、もしここで獄炎殿が勝ったら……拙者たち、みんな負けたことになるのでは?
影浪:ん? ……あぁー
摩天:斬光ちゃんがやられたら、いよいよ勝ち目がないっていいたいんやな? そういうことやな!
影浪:となれば……?
覇尽:斬光殿が戦える間に、拙者たちも加勢して獄炎殿を叩くしかない! ……ぬぬぬぬ、致し方ないけど!
摩天:いやじゃないとこれ、あとあと不利になるだけや! 行くで!
影浪:なんとまぁ、状況が二転三転するねぇ……
0:
斬光:……っ……ぐ
獄炎:ここまでだ
斬光:……はは
獄炎:なんだ?
斬光:……腹立たしいわ。その目つき
斬光:人に見下されるのって、こんな気分なのね
獄炎:そのようなつもりはない
斬光:ほら、そういうところ
斬光:気に入らない奴は……いくつも見てきたけど
斬光:今の所、トップよ。あなた
獄炎:……悪くない力だったぞ。白き痛みの魔族よ
斬光:……せいぜいほざいてなさい。これで終わりじゃないから
獄炎:クク、いつでもかかって来るといい
摩天:タイマンは、そこまでや!
獄炎:観戦は辞めたのか?
覇尽:見るより実践! 再び戦いへと参った!
摩天:ただ、次は4人同時にフルボッコタイムや。勝てる見込みはないやろ
獄炎:数で押し切る策に変えたか
覇尽:まぁ、フェアではないがな……
摩天:今更おそいわ、やるしかあらへん
摩天:あんさんらとやりあうのは、獄炎ちゃんを叩いてからや
摩天:リスクは早めにつぶしておかんとな
獄炎:まとめてかかってくるがよい
摩天:ほんまにフルパワーじゃないっていうんなら……証明してみせろや
斬光:……ちっ
摩天:斬光ちゃん。あんさん、まだ戦えるか?
摩天:このまま獄炎ちゃんにやられ放題は嫌やろ?
斬光:生意気に命令してんじゃないわよ
摩天:それが言えたら十分や、やるで
影浪:影浪の滅技(めつぎ)「リストシャドレイン」!
覇尽:っ、な!?
影浪:影で動きを縛らせてもらうよ~!
斬光:これは……?
摩天:どういうつもりや! 影浪ちゃん!
影浪:残念。制戦はここまでさ
覇尽:ぐ……動けぬ!
影浪:さっきまで戦い放題だったからねぇ。君らも疲れてないわけがない。僕が自ら解かないかぎり、自力は難しいと思うよ~? 頑張っても一か月かかるかなぁ?
0:影浪はゆっくり獄炎の隣へ行く
獄炎:……
影浪:お疲れ。獄炎さん
獄炎:礼をしたまでだ
影浪:いやいや礼って……。それって「代わりに僕が魔族のトップになれるよう手伝おう」って意味合いじゃないか
影浪:あんたにトップ、なってもらうほうが、よっぽどいい
摩天:……はぁー。最初から、組んでたってことかい
影浪:そう。獄炎さんをここに呼んだのは僕
影浪:摩天さんが召集するって聞いた時、チャンスかなぁと思って
覇尽:わざわざ、影浪殿が呼んだのか?
斬光:そんな奴を?
摩天:……いや、そもそも「そんな奴」やないってことか?
斬光:は?
摩天:獄炎ちゃん、普通の魔族じゃないな?
影浪:正解~!
覇尽:……!
0:影浪は手を広げながらのびのびとはなす
影浪:『その昔、大国に支配されたある時代
影浪:国滅ぼしの魔王、ここに現る』ってねぇ。
影浪:この意味、わかるかい?
覇尽:国滅ぼしの魔王……やはり!
斬光:誰?
摩天:……マジもんかいな
影浪:摩天さんは、身に受けてわかったっしょ?
摩天:ただ、ほんまに実在しとるとは、思わへんやろ……
斬光:あのさぁ、分かるように説明してくれない? それとも説明もできない馬鹿ばっかりなの?
覇尽:昔……この国を滅亡まで追い込んだ存在がいる
覇尽:それは、魔を用いて人を制する王……魔王として語り継がれていた
覇尽:我々、魔族にとっては、とんでもなく偉いお方なのだ……!
摩天:……はぁ、ちっと様子がおかしかったと思ったらそういうことか……覇尽ちゃん、すでに気づいとったんやな?
覇尽:ただ、確証は持てなかった! 「獄炎」というワードでピンとは来ていたが、ここにいるとは到底思えない。拙者はてっきり、魔王に憧れて、わざとその言葉を、魔名(まめい)として使った魔族だと……思っていただけだ……まさか、本物だとは
斬光:……で? だから?
覇尽:斬光どのぉ!! この重さを理解できぬのかぁ!?
斬光:知らないわよ、歴史なんて
摩天:一応、魔族の間では常識なんやがな……
獄炎:昔の事だ。気に触ることなど、何もない
斬光:別に、あなたが魔王だろうとどうでもいいわ
獄炎:構わぬ。魔王だから、などと見方を変える必要はない
斬光:……(舌打ち)
影浪:まぁまぁ、とりあえず制戦は、ここまでということで~
摩天:はぁ。こう見ると貫禄もおかしいわな、確かに。……ま、元締めが魔王なら、何も言う事はあらへんか
影浪:受け入れてくれるかい?
摩天:せやな、敗けた身やし。ただ、とりあえず、影浪ちゃん。……これ、解いてくれへんか?
影浪:あぁ~ごめんごめん。
0:影浪は3人を、影の縛りからを解いた。
獄炎:此度の戦。見事であったぞ
斬光:何様のつもりよ?
獄炎:うぬらと同じ存在だ
斬光:……うざったいわね
覇尽:ご、獄炎殿……そなたについてまいりまする……!
獄炎:かしこまる必要はない
覇尽:いいや! それは逆に失礼に値する
獄炎:なに?
覇尽:このヴァルーガ……魔王のことを聞いたその日から、そのような強き魔族になりたいと目指し、今に至るまで、戦い進んできた次第であります
獄炎:それはうぬの決めた事だ
覇尽:そのきっかけが、獄炎殿なのです!
獄炎:……どういったきっかけであろうが、うぬの進んだ道が今そのものだ。対等でよい
覇尽:あ、ありがたき幸せ……!
獄炎:うぬら魔族の実力。とても滾(たぎ)るものだった
獄炎:現時代の、魔の力、とくと味わわせてもらったぞ
斬光:1人で気持ちよくなってんじゃないわよ
覇尽:ざ、斬光どのぉぉぉ……!
獄炎:かまわぬ
0:獄炎はそう言って、刀を天にかかげた
0:刀から炎があふれ出て、この辺り一帯を制すように、周りを囲む
獄炎:これより……魔族の頂点は、我にあり!
0:
摩天:まさか……制戦がこんな風に締まるとはなぁ
影浪:クク……これはこれで面白いっしょ? 摩天さん
摩天:ワイは未だに、獄炎ちゃんが魔王だってことに、衝撃を忘れられへんわ……しばらくはこれ、続きそうやな
獄炎:ただの魔族だ、気にするな
摩天:いや……一応、伝説級の存在やからな、あんさん
影浪:僕も目の当たりにして、びっくりしたよ……流石、「獄炎のホムラ」さん
獄炎:「獄炎」でよい
摩天:攻め入るまではしばらく準備が必要になる。いまいまじゃあらへん。機会を窺うんや、しっかりと
獄炎:頼りになる
摩天:改めてよろしくな、獄炎ちゃん
影浪:クク……一体これからどうなるだろうねぇ。楽しみだ……。
獄炎:さて……国滅ぼしの、再開だ
0:暗くおぞましい雰囲気が漂う場所
0:そこに、1人の存在が、鎖のようなもので縛られていた
獄炎:……来たか
獄炎:我と談話をしにきたわけではあるまい
0:獄炎が呼びかけると、そこから誰かが出てきた
0:その誰かは、獄炎に手を向ける。すると、獄炎の後ろに生成されていた大きな魔方陣が少しずつ崩れ、鎖が粉々になった
獄炎:ほう。このような芸当ができるとは……否(いな)。
獄炎:外側から解(ほど)けるまでには、封印が弱まっていたか……
0:封印から解放された獄炎は、ゆっくりと足を動かし、手から炎を生み出す
獄炎:いずれにせよ、刻(とき)は満ちた
獄炎:少しばかり、面白い魂を感じてな
0:獄炎は怪しく笑う
獄炎:運命が呼ぶのなら、この身をもって行くとしよう……!
0:
0:場所が変わり、赤い月が夜空を照らし、その下にそびえたつ巨大な城
覇尽:たのもーーーー!
覇尽:……
覇尽:たのもーーーー!
覇尽:……場所を間違えたか?
斬光:斬光の痛技(つうぎ)「ペインニードル」
覇尽:むむっ? この針は……!
斬光:そのまま黙ってくれたら良かったのに。面白くない
覇尽:声もかけずにブスリと刺す。流石、「斬光のサティ」殿……。いつぶりでござったかな?
斬光:覚えてないわ。あなたうるさいから
覇尽:なんとぉ!?
影浪:はは~。仲良く会話している時って、足元って気にならないよねぇ。いつの間にか穴があることも知らずに、奈落の底に真っ逆さまだ
0:突如、二人の間に出来た影から、ひょいっと頭を出して姿を現す
斬光:っ……影浪……
覇尽:いつの間にいたのだ!?
影浪:よっ……と。そりゃ、君らが来る前に、だよ。
覇尽:声をかければよかったものを……
影浪:変なやつが来たら面倒だから、隠れてたのさ
覇尽:変な奴…?
斬光:あなたでしょ
覇尽:拙者のことぉ!?
摩天:他の魔族のことやろ、影浪ちゃんが言ってるのは
影浪:やぁ、摩天さん。お元気そうで
摩天:心配せんでも、この場所のこと言っとらん
覇尽:ぬぬ? この城は、お主のテリトリーではなかったのか?
摩天:せや。魔族同士のドンパチがあった後の、ただの廃墟や。わざわざホーム選ぶんは、不公平やろ
影浪:摩天さんが召集したんだっけ?
覇尽:我々、いつも争っている立場であるが、話し合いの場を設けるというのは、なかなか新鮮であるな……
摩天:その件で、先に言わせてもらうと……同盟を組むんや
影浪:同盟? そりゃまた、どういう風の吹きまわしだい?
覇尽:魔族同士、一致団結と?
摩天:団結は固すぎな表現や。もう少し柔らかくするなら、協力関係ってところか
斬光:ぶっ(吹く)……。今更仲良くしましょうって? 面白い冗談ね
摩天:冗談は斬光ちゃんの性癖くらいにしてくれんか?
斬光:なんて言った?
覇尽:おおおちつくのだ斬光殿!
影浪:はは~! そんな煽っちゃうからぁ~
摩天:話を聞かんからや
斬光:誰に言ってるか、分かってる?
摩天:今は、ワイが喋っとる。崇高な魔族なら、大人しくしてくれへんか?
斬光:……まぁいいわ。あとで殺してやるから。……続けて
摩天:最近、人間共がどうにも、勢いを増してきているように思えてな
覇尽:なに、人間が?
摩天:そう、人間風情と、つい最近まで思っとった
摩天:ワイが管理している洞窟に、人間が入り込んでな。おそらく4人くらいか
影浪:帝国の人?
摩天:いや、別やな
摩天:部下がそいつらにやられてしまっての……見込みあったんやが、幻滅したわ
斬光:見込み? あなたの眼がイカれてたんじゃないの?
摩天:残念、斬光ちゃんよりキャリアが長いんやわ
覇尽:あぁつまりその……! 魔族レベルのクリーチャーを、その人間たちが倒したと?
摩天:そういうことや。で、何が言いたいかっちゅうと……そろそろ人間共に脅しをかける頃合いやと思ってな
影浪:そこで、同盟ってわけかぁ
摩天:ただ、バケモン揃いでも、旗振りがおらんとな
摩天:人間どもに攻め入る時、「頭(かしら)」がおったほうがええ
影浪:摩天さんが仕切ればいいのに
摩天:それも考えたが……魔族は弱肉強食、上か下かの世界。横で手を組むより、実力で決める。そっちのほうが、各々納得するやろ
斬光:……そういうことね
摩天:ただ、トップ決める争いで戦力を削るのもアホらしい。あくまで戦闘不能になるまで、やりあうのがルールや
摩天:その名を「魔族制戦」
覇尽:魔族を制する戦い……いいな!
影浪:な~るほど。殺さずに自分の配下におくって発想が、いかにも摩天さんだ
摩天:勝ったもんが同盟の長。現時点で、魔族の中でレベル高いのはこの4人。だから招集をかけた
斬光:いいわ、話は分かった
0:斬光は怪しく笑う
斬光:別に同盟なんて組まなくても、私一人でどうにでもなる
斬光:だから……これはお遊び。勝てば貴方たち全員を、私の手中に……ふふ
0:斬光は針を図太く大きくし、その針をぺろりと舐める
斬光:なら、さっそく始めましょうよ
斬光:貴方の言う「魔族制戦」を……!
覇尽:うおおおおおおおおお! みなぎってきたあああああああ!
斬光:……(舌打ち)
影浪:あー。空気ブレイカーって目立つよねぇ。将来有名人になれるんだっけ?
摩天:魔名(まめい)持ちって意味じゃあ、もう有名やけどな
0:そこで、斬光は、何者かの気配を感じ取り、後ろを振り返る
斬光:……誰?
獄炎:その制戦(せいせん)、我も混ざろう
摩天:なんや、あいつ?
影浪:混ざりたいんなら、魔族じゃない?
摩天:いや、どういうことやねん
覇尽:名を名乗れい!
獄炎:我は……「獄炎」
摩天:「獄炎」? 魔名(まめい)持ちか?
獄炎:ああ
覇尽:お主も魔族か?
獄炎:いかにも
覇尽:何をしに来た!
獄炎:ここに、強き魔族が集まると聞いたものでな
摩天:ほんまにいうとるんかいな、それ?
獄炎:偽りはない
影浪:あらららぁ~? この場所誰か喋っちゃった~?
影浪:お喋りな魔族さんはだーれだ?
摩天:まぁええわ、別に
摩天:それよりワイが聞きたいのは、今ここにいる連中のこと、分かってるんか?
獄炎:承知している。うぬらの強さも。その風貌からも、よく伝わる
覇尽:やる気十分……よき!
0:覇尽は高らかに獄炎に声をかける
覇尽:獄炎殿! なれば拙者たちと混ざらぬか?
摩天:あいつも混ぜるんか? ただの下級魔族やろ
覇尽:そうだ。その魔族たるもの、挑む姿勢は評価に値する。それに、弱ければそこまでの話。この制戦に影響はないだろう?
摩天:まぁ、そやけど……
斬光:生意気ね
獄炎:常(つね)とは、時に大きく破られる
斬光:は?
獄炎:うぬらが勝つという未来は、まだ決まってはいまい
斬光:何、こいつ
影浪:それ、君が勝っちゃうっていいたいの?
獄炎:でなければ、このような場所に来ぬ
影浪:わーお!
摩天:自信満々やなぁ。斬光ちゃん以来やで、ああいうタイプは
斬光:あれと一緒にしないでくれる?
覇尽:よし……ならさっそく!
摩天:……いや、ワイが相手したるわ
覇尽:ぬぬ!? 摩天殿が?
摩天:やられた部下の代わりが欲しいって思ってたところや。ま、あいつがワイの眼に適(かな)ったらの、話やが
覇尽:そうなれば…拙者は、お主らと!
斬光:……元気な馬鹿を見ると、つい踏み潰したくなるのはなぜかしらね?
影浪:おっかなぁ~い
覇尽:しかし、おっかないで終わらせない! それが魔族というものぉ!
0:覇尽の手が黒くなり、そこから剣が現れる
覇尽:いざ、勝負に参ろうぞ!
影浪:あのー。個人的に、見学したいんだけどねぇ~。……日陰で
0:
摩天:というわけで、よろしくな、獄炎ちゃん
摩天:……にしても、「獄炎」。どっかで聞いたことあるような……駄目や、思い出せへん
獄炎:まずはうぬか
摩天:ワイは摩天。ドラゴン系統の魔族や
獄炎:龍の血……油断ならないな
摩天:その龍の中にも、出来る奴がおったんやがなぁ。人間にばっさりやられての
獄炎:期待をしていた、か
摩天:せやで、魔族候補やったけどなぁ……しょうもないわ、ホンマ
摩天:だから、あんさんはその代わり
獄炎:買いかぶられたものだ
摩天:まだ買うとは決めとらん。これはテストや
獄炎:試練を与えるか、どのようなものだ?
摩天:そりゃ、ワイのしもべに、なれるかどうかの、な……!
0:獄炎の上空から、大きな雷がふりそそぐ
摩天:摩天の楼技(ろうぎ)。「サンダーボルスター」!
獄炎:雷から龍の息吹を感じる……身を引き締めてかからねばな
摩天:ちょいちょい! そんなブツクサほざいとる場合ちゃうで。ほれ、もう一発!
獄炎:この威力を続けて出せるか。格の違いは、技の中にある、とな
摩天:まだや
獄炎:……これは?
摩天:摩天の楼技(ろうぎ)「フレアボルト」!
獄炎:「炎」が「落ちてくる」か
摩天:正解や。まるで雷を落とすように、炎を上から……!
獄炎:…ぐっ…
摩天:ほれみたことか。実力もないのに、魔名(まめい)を名乗るとこうなる。邪悪の中で「自分が強い」って吠えるんはな、そいつ自身が強さに見合ってなければ……ただの自滅行為やで
獄炎:少々、予想の上を行ったか、この実力は
摩天:悪いけど、こちとら制戦で忙しいんやわ
摩天:まだやるんなら、本気でかかるで
獄炎:クク、まだ序の口か
摩天:降参なら今のうちやで、獄炎ちゃん
獄炎:否(いな)、敗けは決まっておらぬ
摩天:ほぉ~。こりゃ力の差、しっかり教えたらんと、あかんみたいやな
摩天:先輩として、逆らったらどうなるか、叩き込んだるわ
獄炎:なれば、下剋上だ
0:獄炎は炎の刀を出し、摩天に斬りかかる
摩天:おおっとぉ!
獄炎:いただくぞ!
摩天:炎の刀…か? こりゃ
獄炎:……ッ?
摩天:でも、もうちょっとやったな
獄炎:これは……電気の壁?
摩天:摩天の楼技(ろうぎ)「サンダスウォール」
獄炎:雷(いかづち)を操る力ひとつとっても、多彩とな
摩天:身の立場、分かっとるやないか。世渡り上手な才能を感じるで……っ!?
獄炎:……獄炎の刀術「業火突き(ごうかづき)」
摩天:うおっ!? あっぶな!
0:摩天はすぐさま飛び、獄炎の攻撃をよける
獄炎:立派な翼だ
摩天:そりゃ、翼くらいついとるわ
摩天:(……なんや、さっきの? ただの突きなのに、えらい大きく見えたで……。……ワイの技が、一瞬、破られるかと思って、慌てて飛んでしまったわ)
獄炎:どうした? 「ひるんでいる」と顔に書いてあるぞ?
摩天:はっ。そりゃ、ただの見間違いや……!
0:
覇尽:ほおおおおおおおあっ!
斬光:うるさい
覇尽:とおおおおおおおおっ!
斬光:……邪魔!
斬光:斬光の痛技(つうぎ)「ペインニードル」
0:斬光は瞬時に光の針を出し、覇尽に放つ
覇尽:ぐぬぅぅぅぅぅっ!
影浪:あぁ~、もう慣れてきちゃった、覇尽さんの掛け声
斬光:聞けば聞くほど、その体にぶっ刺して、黙らせたくなるわ
影浪:血の気がお盛んだことで~
斬光:……戦う気がないなら、貴方から刺そうかしら?
影浪:あ、後ろ
覇尽:覇尽の砕技(さいぎ)「オーバスザッシュ」!
斬光:っ!
影浪:ふぅ~。豪快~
覇尽:ほおおおおお……って!? 居ない!?
斬光:こっちよ
覇尽:ぬっ!?
斬光:斬光の痛技(つうぎ)「クロウペインザー」
覇尽:右か!
斬光:……ちっ。残念ね。その巨体が引き裂かれるの、見たかったんだけど
覇尽:……光をまるで粘土のように変えては造る……これが斬光殿の力。鋭利な形を見た時こそ、もっとも警戒する瞬間であるな
斬光:よく分かってるのね、嬉しいわ
斬光:ほら、見てよ、これ? この白くて艶やかな光が、あなたを斬って刺したいって訴えかけてくるの。伝わらないかしら?
覇尽:いや、わからん!
斬光:なら頑張って理解しなよ……ほうらっ!
0:斬光は光の大きな針状にして、覇尽に投げつける
覇尽:呆気なくやられるほどヤワではないぞ!
斬光:クソ脳筋が
影浪:斬光さん、おクチ悪いよぉ~。女帝様ならもっと凛々しくいなきゃ
斬光:っ!
0:影浪は、斬光の後ろから現れて、
影浪:影浪の滅技(めつぎ)「シャドウチェイン」
斬光:ちっ。うざい鎖……
影浪:形を変えられるのは、君と同じだけど……刺す趣味、ちょ~っとねぇ。どうかと思うんですわ~
斬光:それ、その影、目障りだからしまってくれない? ……あぁ、ごめん。あなた自身が目障りか。間違えたわ
影浪:その言い方、若いな~。僕も覇尽さんも、君より先輩なんだから、敬(うやま)って欲しいなぁ~
斬光:先輩なら、後輩の頼みを聞いてくれるわよね?
影浪:どんな?
斬光:そこのうるさい唐変木(とうへんぼく)……潰してくれない?
覇尽:唐変木!?
影浪:ごめんちゃい。うるさいより、痛いほうが嫌だからぁ、僕。
斬光:ゴミ
影浪:はは! ひっどぉ~い!
覇尽:というか影浪殿! 先ほどは助かった
影浪:いや、助けてるわけじゃないよ?
覇尽:なぬっ!?
影浪:僕の中じゃ、斬光さんが一番だとは思ってるのよ。だから数的有利作ったほうが、安パイだと思ってね~。
覇尽:ふむ……確かに。ただ最強は拙者だが!
斬光:あっそう。せいぜいほざいてなさいな
0:斬光は瞬時に近づいて、覇尽と影浪に向かって、光の針を飛ばす
覇尽:おっとあぶない!
斬光:まとめて串刺しにしてやるわ……!
影浪:魔族の串刺し団子って? 美味しくないと思うよ~?
0:影浪が自らの影を宙に浮かせ、形を変える
斬光:っ、周りに影?
影浪:影浪の滅技(めつぎ)「ダークパッチャー」
影浪:はてはてここで、指を鳴らすと
0:影浪が設定していた影が、指を鳴らすとともに小規模な爆発を起こす
影浪:あら不思議、ちっちゃな影が爆発しちゃったぁ~!
斬光:チッ……!
影浪:今だよ、ゴー
覇尽:任せろぉぉぉ!
覇尽:覇尽の砕技(さいぎ)「クラッシュウェイブ」!
0:覇尽が地面に大剣を叩き込むと、衝撃波のようなものが地を割るように斬光へ向かう
覇尽:我が覇道(はどう)……地を割るがごとく!
斬光:やかましい……
覇尽:ぬ!?
斬光:斬光の痛技(つうぎ)「トラッカーペイン」
覇尽:針が、斬光殿の周りに……?
斬光:さぁ、行きなさい
覇尽:拙者の技を、避けながらっ……!
0:斬光が光の針をいくつか生成し、様々な軌道をえがいて、覇尽に襲い掛かる
影浪:やらせないよ
影浪:影浪の滅技(めつぎ)「シャドウシュート」
斬光:っ、トラッカーペインを撃ち落とした…?
影浪:こっちも警戒しないと~
覇尽:影浪殿!
影浪:やられると困るからね
覇尽:さっきのは助けなくとも、なんとかなったぞ
影浪:あ……そうですか
斬光:魔族のくせにチームワーク抜群ね
斬光:二人ともまとめて、痛ぶりたくなるわ……!
影浪:おおう、ペットにするって?
斬光:分かってるじゃない……ええ、そうね
斬光:そこの脳筋覇尽を椅子代わりにして、影浪、あなた文字通り影薄いから、踏み台にでもしようかしら
覇尽:……ぬ? 椅子代わり? それ、ペットではなくないか……?
影浪:そこは突っ込まないほうがいいと思うよ、覇尽さん
覇尽:……悪趣味は健在のようだ
斬光:魔族の常識、知らないの?
影浪:後輩君から、常識教わっちゃうのぉ?
覇尽:その常識とは一体……からのぉ……!
0:覇尽は再び剣を構えて、斬光にふるう
覇尽:覇尽の砕技(さいぎ) 「オーバスザッシュ」
覇尽:とおおおっ!
斬光:ちっ、またそれかよ……無駄!
0;斬光は多く針を生成し、覇尽の攻撃を喰いとめる
覇尽:ぐぬぅ……さらに針を増やして、衝撃波の勢いを……やはり侮れないな
0:そこで、獄炎に押される摩天が、3人の下にまで移動していた
摩天:ぐっ……。なんやねん……こいつは
覇尽:摩天殿? まさか、押されているのか!?
斬光:あなた、そんなに雑魚だったの。魔名(まめい)持ちなのに。
摩天:何をいうとんねん。見てわからんかいな
斬光:分からないから聞いてるんでしょうが
影浪:……ほう。あの魔族さん、やるぅ
斬光:……嘘でしょ?
摩天:……まぁ。及第点やな
獄炎:龍の力、とくと拝見した
摩天:余裕やな。まるで手でも抜いてるっちゅう言い方やないか?
獄炎:その通りだ
摩天:……冗談やろ、それ?
獄炎:長らく体がなまっておる
摩天:かーっ!
覇尽:どうした?!
摩天:なんやこの魔族君、自分がめちゃめちゃ強い言うとるんやって
影浪:へぇ~
斬光:イタイ魔族ね、気持ち悪い
摩天:イタイって……痛い技つかうあんさんが言うなや
覇尽:……お主、自らを強いと豪語するか……
影浪:覇尽さん?
覇尽:……実に良き、良きかなァァァァ!!
影浪:あーらら。魔族の熱血大興奮
覇尽:おおお、拙者の血が……みなぎってきたぁああああ!
斬光:(舌打ち)
覇尽:どれ…そうしたら拙者が相手いたそう!
影浪:あれ? そっち行っちゃうの?
斬光:あなたが行ってしまえば、影浪一人、いたぶることになるけど、いいのかしら?
影浪:……ん?
覇尽:健闘を祈る!
影浪:えぇ~! ちょっとぉ~! 嘘でしょ~!?
0:
獄炎:次は、うぬか
覇尽:拙者は「覇尽のヴァルーガ」。覇尽と呼んでいただければ結構
覇尽:魔族の中で最も強い……魔名(まめい)持ちである!
獄炎:闇を身に着けた巨人、か。邪悪を現したような外観から、強さが伝わってくるぞ
覇尽:我らの血筋は、闇の力に手を染めた巨人の血を持っていてな。普通の巨人とはわけがちがう。つまり、オールインワンというやつだ!
獄炎:ただ……巨人にしては、我の身長より、少し上といったところだが
覇尽:その通り。体の大きさも変えられるのだが、でかすぎると不便だからなぁ
獄炎:なれば、その邪悪を纏った剛体で、かかってくるがよい
覇尽:ぬぬ、その台詞。強い魔族のいうそれと代わりなき!
覇尽:しかしぃ……言ってられるのも今のうち……!
摩天:ちょい、ワイも忘れんといて
覇尽:なっ、邪魔をするのか摩天殿……!
摩天:邪魔? どこ見たらそう思うねん
覇尽:そのまんまだ!
摩天:なにがまんまや!
覇尽:これは拙者と獄炎殿との勝負。2対1で戦うつもりはない
摩天:さっき斬光ちゃんと2ー1(にーいち)でやっとったがな
覇尽:それはそれ、これはこれ!
摩天:めんどくさいなぁもう……
覇尽:それに、摩天殿の力を借りずとも、拙者一人で十分だ
摩天:あぁー、まぁ痛い思いしたいなら、ええけどな
覇尽:お主……よもや、そのようなことを言うとは! 魔名(まめい)持ちだというのに
摩天:これはワイの感想やけど……侮れんで
覇尽:……
獄炎:二人か……構わぬ。まとめて挑んでくるといい
摩天:それ、言って後悔せんか?
獄炎:後悔など、とうの昔に置いてきた
覇尽:魔族に二言目は不要。いざ、勝負……!
獄炎:ほう……構えもよく出来ている
覇尽:覇尽の砕技(さいぎ)「ジェノサイローダー」!
獄炎:魔気(まき)……これは闇か。それを纏った突進と……まさに獰猛の権化(ごんけ)
摩天:何処見とるんや
獄炎:っ?!
摩天:摩天の楼技(ろうぎ)「ドラグフレアード」
獄炎:後ろに、龍の炎……
摩天:覇尽ちゃん、しばらくそいつ、ひきつけておき!
覇尽:ひきつける前に、成敗いたす!
摩天:気合十分でええな!
獄炎:龍の攻撃を背にしながら……剛体を相手にする……っ……ぐ……
摩天:まだ終わらんで
摩天:摩天の楼技(ろうぎ)「ドラグトルネイド」
獄炎:今度は風とな……
摩天:前方には巨体。後ろは、龍の炎と風。しかも並大抵のドラゴンのそれとは違う。つまり……
覇尽:ここで終結!
摩天:下剋上(げこくじょう)は諦めるんやな!
獄炎:……獄炎の刀術(とうじゅつ)
0:獄炎の刃に、炎が段々とたまっていく
獄炎: 絶(ぜつ)・火回斬り(ひかいぎり)!
覇尽:!? 炎がっ……ぉぉ!?
獄炎:はぁっ!
0:獄炎の放った回転斬りにより、二人は吹き飛ばされる。摩天の放った攻撃が止む。
摩天:ぐぉっ!?
覇尽:がぁぁっ!
摩天:……でかすぎるんやその炎ッ!
覇尽:……ぐぬぬ……まるで、拙者よりも大きい巨体の攻撃を受けとめているような感覚だった……獄炎殿の刀も、体格も、拙者と比べれば小さいというのに、この迫力は……どこから
獄炎:魔族の上に立つ者が、この程度か?
獄炎:それで統べるなどと、片腹痛いぞ
0:
影浪:ははは~! 摩天さんたち、なんかヤバそう~。しっかし、新人魔族君の攻撃、見れば見るほど……人間の技みたいに見えちゃうよねぇ……摩訶不思議
影浪:でもそれを言うなら……斬光さんもよね~
斬光:ジロジロ見てどうしたの?
影浪:うーむ、見た目の上品さは安定のヴァンパイアって感じだけど、なんというか、妖艶さがサキュバスのようで……色んな血が混じってるのかな? 正直見たことないタイプ……しかも人間に近いし
斬光:私、人の体を鑑賞する奴、好きじゃないのよ。気持ち悪くて、ついなぶりたくなる
斬光:……斬光の痛技(つうぎ) 「ペインウィッパー」
影浪:なるほど、鞭ですか
斬光:光に痛めつけられる影って、どんな声を出すのかしらね?
斬光:……ほら、ほら、ほうらっ!
影浪:とっ、とっ、とっ!
斬光:ちょこまか逃げないでよ、当たらないじゃない
影浪:いやそりゃ逃げますって~!
影浪:っ、影浪の滅技(めつぎ)「シャドルガーディア」
0:影浪は、自分の影から壁を生成し、斬光の攻撃を弾く
斬光:はっ、影を使って壁を……。地味なやつ
影浪:当たらなかったら、こっちのもの
斬光:でもその影……随分とモロそうに見えるけど!?
影浪:ひゅう~、その上から見下ろす表情、百点満点。まさに、女王様万歳!的なやつ
斬光:だったら大人しく受けなさいよ、つまらない
影浪:僕はごめんだ
斬光:へぇ。自分に拒否権があるって思ってるの? すごいわね
影浪:えぇ~? 魔族に権利無しってことぉ~?
斬光:次は、横から!
影浪:あっぶな! ……まぶしい鞭だことで!
斬光;当たったら、痛いどころか、斬れちゃうかもね……!
影浪:……影浪の滅技(めつぎ)「ダークワップ」!
斬光:っ、影の中に消えて……
斬光:……どこに
影浪:こっちだよ~!
斬光:っ!
0:斬光から離れたところ、瓦礫の影から、影浪が現れる
影浪:さぁ、こっから僕のターン。たくさん撃ち込んじゃうよ~
影浪:影浪の滅技(めつぎ)「ナイトメアリッター」!
斬光:っ! 影が、盛りだくさんね……!
影浪:どうしたんだい? 女王様がそんな攻められたら、目も当てられないね~
斬光:知ってる? 受けたものって、返ってくるのよ
斬光:斬光の痛技(つうぎ)「ペインニードル」!
0:斬光は影の弾丸を交わしながら、光の針を生成して抵抗する
影浪:おおっと。……じゃあいっそあんたも、返すなんてやめて、受け専門のどM魔族になってみたらどうだい? 刺される側の気持ち、分かるよ?
斬光:ごめんなさいね、そっちはクソほど興味ないの
斬光:なぜなら……この世の万物は、私に痛めつけられる為にあるのだから
影浪:なんともまぁ都合のいい……って!?
斬光:斬光の痛技(つうぎ)「ペインズレーザー」!
0:斬光は光の針を収縮させ、レーザーのように影浪へ放った
影浪:ぐっ……!
斬光:残念。少しかすった程度ね……でも、痛そう
影浪:あとちょっとズレてたら吹き飛んでたな~……いってて……
斬光:ねぇ、どうかしら? 痛い感想、聞かせてよ
影浪:いや、それ言ったら、あんたが喜ぶだけじゃないのさ
斬光:……私が喜ぶ『だけ』ね。ふふ……ごもっとも
影浪:なんだい? 喜ばない部下でもいたの?
斬光:居たら悪い?
影浪:気になるねぇ、どんな奴?
斬光:歪(ゆが)んだクソ男よ。……いえ、歪んでいたのは私か。何も見えていない、じめじめとした愚かな人間だったから
影浪:……ん? 人間?
斬光:私、元は魔族じゃなくて『人』だった……って言ったら、信じる?
影浪:……初耳だな、それ。人間から魔族になるなんて話は無い。まさか、別世界にいたとか?
斬光:ええ。最初に目覚めたのは、よくわからない門の前だったわ
影浪:……はぁ~。確か、異門(ゲート)だっけか……ただの言い伝えだった気がするけど……
斬光:ほんとのことよ。……もっとも、その時の私に、余裕なんてなかったけど
影浪:誰が召喚したんだい?
斬光:いたぶられるのが、大好きな魔族さん……部下よ
影浪:痛ぶられるのが大好き? それじゃあ、僕や覇尽さんなんて要らないじゃないか。見合ったSMパートナーがいるんだし
斬光:……もう死んだわ、そいつは
影浪:ありゃ、残念
斬光:でも……感謝してるのよ。ふふ……!
0:斬光は怪しく笑う
斬光:この体になってからは、とてもすがすがしい気分
斬光:もう、あのクソ男も、腐った私も終わりを迎えた
斬光:だから今度は、「斬光のサティ」として、この世に痛みと苦しみを与え続けるのよ……!
影浪:あー。いたぶりフェチは、魔族になっても健在そうだね
斬光:当たり前じゃない
斬光:傷つけて、痛めつけて……いえ。いちいち言うのは、もう面倒
斬光:だって、口にしなくても、与えてしまえば反応が返ってくるのだから
影浪:……変な話しちゃったかなぁ、これ
覇尽:ぐぉぉっ!
影浪:……っと、おやおや
斬光:あなたまでやられてるの?
覇尽:こ、この魔族……もはや、拙者たちと同じレベルではないか……?
摩天:ほれ、言った通りやろ
獄炎:いい剣筋だ。どうする? まだ来るか?
覇尽:ぐぐっ……!
獄炎:……なれば。そこの魔族。斬光だったか
斬光:なにかしら?
獄炎:この中で一番に強いと見た
獄炎:うぬを倒すことで、実質、魔族を制したことになるだろう
影浪:……あり? 僕は?
獄炎:そのあとに立ち向かう勇気があるのなら、来るといい
影浪:言うねぇ……。じゃ辞めとこっかなぁ~
斬光:……どれだけ強いのか知らないけど、あなたさ
獄炎:なんだ?
斬光:魔族にしては、普通すぎる
獄炎:……どういう意味だ?
0:斬光は少しずついらいらした口調になっていく
斬光:「何かをモノにしたい」、「優越感に似た何かを感じたい」、「悲鳴を聞きたい」……悪の誰もが心の中に持っている「それ」を解放するために、力は存在する
斬光:でも、貴方からはそれをいっこうに感じ取れない……魔族という立場がありながら、よ
獄炎:そこまで憤りを感じる事か?
斬光:そう。そうよ。ずっと思ってた。なぜこんなにもイライラするのかしら
斬光:ねぇ、教えてよ?
獄炎:簡単なことだ
獄炎:うぬにとっての普通が、普通ではない
獄炎:我には関係のないことゆえ
斬光:……あは、あっははははははははは!
斬光:何それ? ウケ狙ってるつもり?
斬光:それ、なんていうか知ってる?
斬光:「舐めている」っていうのよ
獄炎:舐めていたら、どうすると?
斬光:……くく。
斬光:死(し)に殺(ごろ)す!
獄炎:なれば、生き参ろう
0:獄炎は刀を構え、刀身から勢いよく炎があふれ出す
斬光:生意気ね……ひどく、ひどく。じゃあその見るに堪えない表情を、しっかり切り裂かなくちゃねぇ、はは!
獄炎:何を見てきたかは知らぬが。その愉悦(ゆえつ)、焼き砕いてみせよう……!
0:
影浪:始まりましたな
影浪:……お。おつかれちゃん。二人とも派手にやられたようで
覇尽:未だに信じられん……
摩天:ま……そういうことや。にしても二人でやってもこれか……
影浪:……
摩天:どないした?
影浪:え? いやー。無駄に戦わなくてすんだなーって
摩天:ほんまめんどくさがりやな
影浪:だってだるいし
摩天:よう魔族になったもんや……
影浪:それにさ、ここで斬光さんが倒れてくれたら有難いじゃん?
摩天:……いまんところ、ワイの予想、5割やけどな、どっちも
影浪:そんなに?
覇尽:もしや、そのうちの5割は拙者か!?
摩天:なんでや! 話聞いとったんかい! 斬光ちゃんと、獄炎ちゃんや!
覇尽:残念!
影浪:お、始まるっぽいよ……あの二人
影浪:さてさて、どうなることか
0:
斬光:斬光の痛技(つうぎ)「クロウペインザー」!
獄炎:空(くう)を、白い光で斬る、とな……!
斬光:私の力は、光の形状を痛覚を感じるものへと変えられる……私が意識すれば、いくらでも
獄炎:恐ろしい光だ
斬光:ほら、ついでにこっちも喰らいなさいな……!
斬光:斬光の痛技(つうぎ)「ペインフィーター」
獄炎:爪だけでなく、足にも生成できると……
斬光:引き裂かれるのと、蹴られるの、どっちがいいかしら?
獄炎:どちらにせよ、焼き返せば良いこと
斬光:あっそ! じゃあどっちも、その炎に、光を刻んであげる!
0:
摩天:中々に本気やね。斬光ちゃん
覇尽:……彼女の名前が出てきたのは最近だったな。周りの魔族をなぎ倒すかの如く
摩天:そう、いきなり自分から「魔名(まめい)」を付けた魔族……ワイも最初は気になって、一時(いっとき)はしもべにしようかと思ったがとんでもない。他の魔族たちが悲鳴あげとったわ
覇尽:なぬ?
摩天:最近、やけに大人しかったやろ?
覇尽:そういえば……あまり見かけなかったような
摩天:自分より生きとる魔族ほとんど、半殺しにしとった
覇尽:斬光殿が?
摩天:せや。殺さへんギリギリのところをつく……そんな狂った考え方してる上に、それを実行できるのは、斬光ちゃんくらいや
影浪:だから敵に回したくないのよ~
覇尽:そうだったのか……
摩天:出会った頃から、あの表情。まるで生まれた頃から、強さが滲みでとるみたいに
覇尽:……拙者もはじめて、彼女と交えた時は、苦戦に苦戦を強いられた記憶があるな……あれだけ楽しそうに力をふるう魔族とやりあったのは、久方ぶりだった
摩天:もうすでに、魔名(まめい)持ちの魔族として、素質があったってことや
影浪:……ていうかさ。……僕ら普通に喋ってるけど
覇尽:はっ!? そういえば!
摩天:別にええ。今は見学や
影浪:そりゃよかった
覇尽:ううむ……思うのだが、獄炎殿くらいであれば……魔名が知れ渡っていてもおかしくないのだが
摩天:そこなんよな……なんか、こう、聞き覚えがあるというか
覇尽:……これでは、本当に
摩天:なんや?
覇尽:いや、なんでも。しかし……本当に底の見えない炎であったな……
摩天:ただ、獄炎ちゃんが戦ってるのは、底の見えない光やで
0:
斬光:どうしたのかしら? 避けるばっかり?
獄炎:いいや、ここからだ
斬光:あっそ。そういうの、いらないから
斬光:斬光の痛技(つうぎ)「スパークペイリスタ」!
獄炎:っ? 奴の針に、電気が……このような事もできる、か……
斬光:痺れた悲鳴を聞かせて頂戴!
獄炎:……っ!
斬光:ぶっ……! はは。無様、無様。ひどすぎて笑える
斬光:ほら、もう一つ
斬光:斬光の痛技(つうぎ)「ペインニードル」」!
0:斬光は左手から、光の大きな針を生成し、それを獄炎にぶつける
獄炎:ぐ…ッ……!
斬光:ほんとさぁ、キモいのよ
斬光:人間を脅かす側でありながら、その態度……本当に、気持ち悪い
斬光:そんな奴が? 私を倒す?
斬光:……笑わせんじゃないわよ!
獄炎:……
斬光:ヴィランには……魔族には……悪には、「力」があることで成り立つ
斬光:力こそ、最高の道具で、最高の快楽で、最高の表現……!
斬光:貴方には、それが微塵もなさすぎて……『今まで』あってきた誰よりも、つまらない!
獄炎:笑わせるつもりなど、微塵もない
斬光:もういいわ。このまま会話してたら、私の光が、貴方の炎で腐りそう
0:斬光は光の針を大きくし、鞭の形に変えた
斬光:斬光の痛技(つうぎ)「ペインウィッパー」
獄炎:っ、……
斬光:ほら、ほうらっ!
獄炎:………クク、ククク
斬光:あれ? 喜んでる? 喜んじゃってるんだ?
斬光:刻まれすぎて、気でも狂ったかしら!?
獄炎:いいや、よく使い込んでいると思ってな
斬光:……は?
獄炎:では、こちらも打ち合いといこう
0:獄炎の目が、より鋭くなる
獄炎:獄炎の刀術(とうじゅつ)……「絶火の舞(ぜっかのまい)」!
斬光:っ、なに、これ?
獄炎:熱く……激しく……圧し通るッ!
斬光:勢いが……っ……?!
獄炎:その痛みごと、炎の底へ沈めよう
斬光:うざい……うざい……うざったい!!
0:斬光は白い翼を出し、空中に舞い上がる
獄炎:……? 宙にあがった?
0:
摩天:っ……まずい!
覇尽:こ、これは、まさか!
影浪:ごめん、先に隠れるー
覇尽:影浪殿!イチ抜けずるい! ……ここは、がっちり防御を!
摩天:あぁもう……こっちまで巻きこむなや! 斬光ちゃ~ん!!
覇尽:絶対聞こえてないぞ!
摩天:うるさいわ!
0:
獄炎:(なんだ? 何が来る?)
0:
斬光:『永久の理(ことわり)よ
斬光:その命(めい)に従い、数多(あまた)の痛みをもってして
斬光:世の十字架を、血の空へと昇らせん
斬光:さぁ、逝こう。痛みの先へ
斬光:さぁ、鳴こう。覚めた苦しみへ
斬光:光を斬り、白き痛みを世界に与えよ……!』
0:
獄炎:……光の針が……尋常な数だ
0:
斬光:斬光の大痛技(だいつうぎ)
斬光:『傷苦(しょうく)の嘆(なげ)き 痛白斬光(つうはくざんこう』ッッッ!!
0:
獄炎:っ……まとめて来るか
0:
斬光:あっはははははは! 痛みに吠えろ、苦しみに泣き叫べ!
斬光:その叫びこそが……私の快楽なのだから!
獄炎:笑止(しょうし)!!!
獄炎:己(おの)が快楽のために痛めつけるなど、小童(こわっぱ)の申すことなり!
獄炎:その程度の心意気で、我が炎は破れぬ!
斬光:っは! いくらでも吠えてなさいな
斬光:さぁ、白き光たちよ。あの愚かな炎を、斬って刺して、痛みを教えてあげなさい!
0:斬光が手を獄炎に向けると、一斉にたくさんの光の針が、獄炎に向かっていく
獄炎:……
0:獄炎は深く息を吸い、吐いた
斬光:(っ? ……あいつの刀に炎が……どんどん、膨らんでく?)
斬光:何をするつもり?
0:
獄炎:……獄炎の刀術(とうじゅつ)
獄炎:「絶(ぜつ)・炎(ほのお)返し」!
斬光:っ……な…?
獄炎:はぁぁぁぁぁぁぁアアアアッ!!!!!
斬光:ぐ……っああああっ!
0:
影浪:……ははは。こりゃあ、たまげた
覇尽:まさか……斬光殿の、あの技を
摩天:しかもいっぺんに……炎にして返しおった……
影浪:……流石だねぇ
摩天:ほんまのまんまか、これ……? 斬光ちゃん、追い込まれてるやんか……!
覇尽:やはり、この状況、獄炎殿が押していることに、間違いないようだ……
影浪:だって、あれを返せてるんだよ? こう、炎でズドンズドーンって
摩天:なんでそんな楽しそうなんや……
覇尽:……というか、もしここで獄炎殿が勝ったら……拙者たち、みんな負けたことになるのでは?
影浪:ん? ……あぁー
摩天:斬光ちゃんがやられたら、いよいよ勝ち目がないっていいたいんやな? そういうことやな!
影浪:となれば……?
覇尽:斬光殿が戦える間に、拙者たちも加勢して獄炎殿を叩くしかない! ……ぬぬぬぬ、致し方ないけど!
摩天:いやじゃないとこれ、あとあと不利になるだけや! 行くで!
影浪:なんとまぁ、状況が二転三転するねぇ……
0:
斬光:……っ……ぐ
獄炎:ここまでだ
斬光:……はは
獄炎:なんだ?
斬光:……腹立たしいわ。その目つき
斬光:人に見下されるのって、こんな気分なのね
獄炎:そのようなつもりはない
斬光:ほら、そういうところ
斬光:気に入らない奴は……いくつも見てきたけど
斬光:今の所、トップよ。あなた
獄炎:……悪くない力だったぞ。白き痛みの魔族よ
斬光:……せいぜいほざいてなさい。これで終わりじゃないから
獄炎:クク、いつでもかかって来るといい
摩天:タイマンは、そこまでや!
獄炎:観戦は辞めたのか?
覇尽:見るより実践! 再び戦いへと参った!
摩天:ただ、次は4人同時にフルボッコタイムや。勝てる見込みはないやろ
獄炎:数で押し切る策に変えたか
覇尽:まぁ、フェアではないがな……
摩天:今更おそいわ、やるしかあらへん
摩天:あんさんらとやりあうのは、獄炎ちゃんを叩いてからや
摩天:リスクは早めにつぶしておかんとな
獄炎:まとめてかかってくるがよい
摩天:ほんまにフルパワーじゃないっていうんなら……証明してみせろや
斬光:……ちっ
摩天:斬光ちゃん。あんさん、まだ戦えるか?
摩天:このまま獄炎ちゃんにやられ放題は嫌やろ?
斬光:生意気に命令してんじゃないわよ
摩天:それが言えたら十分や、やるで
影浪:影浪の滅技(めつぎ)「リストシャドレイン」!
覇尽:っ、な!?
影浪:影で動きを縛らせてもらうよ~!
斬光:これは……?
摩天:どういうつもりや! 影浪ちゃん!
影浪:残念。制戦はここまでさ
覇尽:ぐ……動けぬ!
影浪:さっきまで戦い放題だったからねぇ。君らも疲れてないわけがない。僕が自ら解かないかぎり、自力は難しいと思うよ~? 頑張っても一か月かかるかなぁ?
0:影浪はゆっくり獄炎の隣へ行く
獄炎:……
影浪:お疲れ。獄炎さん
獄炎:礼をしたまでだ
影浪:いやいや礼って……。それって「代わりに僕が魔族のトップになれるよう手伝おう」って意味合いじゃないか
影浪:あんたにトップ、なってもらうほうが、よっぽどいい
摩天:……はぁー。最初から、組んでたってことかい
影浪:そう。獄炎さんをここに呼んだのは僕
影浪:摩天さんが召集するって聞いた時、チャンスかなぁと思って
覇尽:わざわざ、影浪殿が呼んだのか?
斬光:そんな奴を?
摩天:……いや、そもそも「そんな奴」やないってことか?
斬光:は?
摩天:獄炎ちゃん、普通の魔族じゃないな?
影浪:正解~!
覇尽:……!
0:影浪は手を広げながらのびのびとはなす
影浪:『その昔、大国に支配されたある時代
影浪:国滅ぼしの魔王、ここに現る』ってねぇ。
影浪:この意味、わかるかい?
覇尽:国滅ぼしの魔王……やはり!
斬光:誰?
摩天:……マジもんかいな
影浪:摩天さんは、身に受けてわかったっしょ?
摩天:ただ、ほんまに実在しとるとは、思わへんやろ……
斬光:あのさぁ、分かるように説明してくれない? それとも説明もできない馬鹿ばっかりなの?
覇尽:昔……この国を滅亡まで追い込んだ存在がいる
覇尽:それは、魔を用いて人を制する王……魔王として語り継がれていた
覇尽:我々、魔族にとっては、とんでもなく偉いお方なのだ……!
摩天:……はぁ、ちっと様子がおかしかったと思ったらそういうことか……覇尽ちゃん、すでに気づいとったんやな?
覇尽:ただ、確証は持てなかった! 「獄炎」というワードでピンとは来ていたが、ここにいるとは到底思えない。拙者はてっきり、魔王に憧れて、わざとその言葉を、魔名(まめい)として使った魔族だと……思っていただけだ……まさか、本物だとは
斬光:……で? だから?
覇尽:斬光どのぉ!! この重さを理解できぬのかぁ!?
斬光:知らないわよ、歴史なんて
摩天:一応、魔族の間では常識なんやがな……
獄炎:昔の事だ。気に触ることなど、何もない
斬光:別に、あなたが魔王だろうとどうでもいいわ
獄炎:構わぬ。魔王だから、などと見方を変える必要はない
斬光:……(舌打ち)
影浪:まぁまぁ、とりあえず制戦は、ここまでということで~
摩天:はぁ。こう見ると貫禄もおかしいわな、確かに。……ま、元締めが魔王なら、何も言う事はあらへんか
影浪:受け入れてくれるかい?
摩天:せやな、敗けた身やし。ただ、とりあえず、影浪ちゃん。……これ、解いてくれへんか?
影浪:あぁ~ごめんごめん。
0:影浪は3人を、影の縛りからを解いた。
獄炎:此度の戦。見事であったぞ
斬光:何様のつもりよ?
獄炎:うぬらと同じ存在だ
斬光:……うざったいわね
覇尽:ご、獄炎殿……そなたについてまいりまする……!
獄炎:かしこまる必要はない
覇尽:いいや! それは逆に失礼に値する
獄炎:なに?
覇尽:このヴァルーガ……魔王のことを聞いたその日から、そのような強き魔族になりたいと目指し、今に至るまで、戦い進んできた次第であります
獄炎:それはうぬの決めた事だ
覇尽:そのきっかけが、獄炎殿なのです!
獄炎:……どういったきっかけであろうが、うぬの進んだ道が今そのものだ。対等でよい
覇尽:あ、ありがたき幸せ……!
獄炎:うぬら魔族の実力。とても滾(たぎ)るものだった
獄炎:現時代の、魔の力、とくと味わわせてもらったぞ
斬光:1人で気持ちよくなってんじゃないわよ
覇尽:ざ、斬光どのぉぉぉ……!
獄炎:かまわぬ
0:獄炎はそう言って、刀を天にかかげた
0:刀から炎があふれ出て、この辺り一帯を制すように、周りを囲む
獄炎:これより……魔族の頂点は、我にあり!
0:
摩天:まさか……制戦がこんな風に締まるとはなぁ
影浪:クク……これはこれで面白いっしょ? 摩天さん
摩天:ワイは未だに、獄炎ちゃんが魔王だってことに、衝撃を忘れられへんわ……しばらくはこれ、続きそうやな
獄炎:ただの魔族だ、気にするな
摩天:いや……一応、伝説級の存在やからな、あんさん
影浪:僕も目の当たりにして、びっくりしたよ……流石、「獄炎のホムラ」さん
獄炎:「獄炎」でよい
摩天:攻め入るまではしばらく準備が必要になる。いまいまじゃあらへん。機会を窺うんや、しっかりと
獄炎:頼りになる
摩天:改めてよろしくな、獄炎ちゃん
影浪:クク……一体これからどうなるだろうねぇ。楽しみだ……。
獄炎:さて……国滅ぼしの、再開だ