台本概要

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タイトル てるてる坊主ofてるてる坊主
作者名 遠野太陽  (@10nonbsun)
ジャンル コメディ
演者人数 2人用台本(女1、不問1)
時間 20 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 てるてる坊主と恋する女子のドタバタコメディ。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
さくら 76 明日はデートなのに天気予報は雨。そんな時に、小学校時代に作った「必ず晴れるてるてる坊主」のことを思い出す。
レン 不問 72 最強のてるてる坊主。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

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さくら:こんなのってない。 さくら:もう・・・諦めるしかないの・・・? さくら:このまま黙って明日を迎えるなんて、絶対に嫌。 さくら:何か・・・何か手は・・・。 さくら:そうだ。アイツだ。 さくら:もうこうなったらアイツに頼るしかない。アイツなら、きっとなんとかしてくれるはず。 さくら:確か、押し入れのこの辺に・・・。 さくら:あった。この箱だ。小学校3年生の夏休みの自由研究・・・。 さくら:名付けて、「最強のてるてる坊主は誰だ!」。  :  さくら:この箱の封印を解く日が来るなんて思ってもみなかった。 さくら:私、こんなにガムテープでぐるぐる巻きにしてたのね。 さくら:よっぽど怖かったんだろうな・・・。 さくら:やっと剥がせた。封印解除。 さくら:(蓋を開けて)よっと。 レン:(箱から飛び出して)うおあーーー! レン:やっと出られたぜー! ひゅうううう! さくら:うるさい! 夜なんだからもう少し静かに出てきてよ。 レン:さくら、久し振りだな。ずいぶん大きくなりやがって。今、いくつだ? さくら:19。 レン:ジューキュー! ってことは10年振りか。 レン:せっかく仲良くなれたと思ったのによ。こっちはずっと寂しかったんだからな。 さくら:だって、てるてる坊主がいきなり喋りだしたのが怖かったから。 レン:それはひどいな。俺が喋れるようになったのはさくらのおかげなのによ。 さくら:私の・・・おかげ? レン:さくらが俺に何度も何度も話しかけてくれたから、あの日奇跡が起きたんだ。 レン:これからはさくらと色んな話が出来るって喜んでたのに、さくらは「怖いー!」って泣き叫びながら俺を箱に押し込んで出られなくしたんだ。 さくら:それは、なんというか、ごめんなさい。 レン:いいっていいって。またこうして箱から出してくれたんだからさ。俺のこと、忘れてなかったんだな。 さくら:ついさっきまで忘れてたんだけど。 レン:忘れてたのかよ! さくら:レン! 思い出した。あなたの名前は、レン。 レン:名前まで忘れてたのか。そう。俺はその頃さくらが観ていたアニメのキャラと同じ名前。ちなみにさくらの初恋のキャラだ。 さくら:そ、それを言わないで。 レン:照れるなよ。本当のことだろ。 さくら:っていうか、今気がついたんだけど、あなたの声、レンと同じ声なのね。 さくら:(相手役の声の感想)○○○○な声。 レン:この声が好きなんだろ。 さくら:そう。大好きだった。だから頑張ってレンの顔を描いたんだよね。あの時は上手く描けたって思ってたけど、今見ると下手くそ。 レン:俺は気に入ってるぜ。さくらが一生懸命に描いてくれた顔だからな。 さくら:布にペンで顔を描くのが難しくて何枚も失敗してた。変な顔のてるてる坊主をいっぱい作って、それでそれを自由研究にまとめることにしたんだった。 レン:そう。120体のてるてる坊主の中からランダムに10体選んで窓際に吊るして、雨が降ったら負け。晴れたら勝ちで2回戦進出。 さくら:全部のてるてる坊主に名前つけるの大変だったなぁ。一番上手く描けたレンをレンって名前にしたのよ。他はハゲ太郎とかクリリンとか。 レン:勝ち残ったてるてる坊主をシャッフルして、またランダムに選んで窓際に吊るす。 さくら:その年は雨が多くて、どんどん数が減っていったのよね。 レン:そうやって厳選して、勝ち残った4体を最後はリーグ戦で戦わせて、見事、全勝優勝した『必ず晴れるてるてる坊主』が俺ってわけさ。 さくら:名付けて、てるてる坊主オブてるてる坊主! レン:この俺にかかれば、どんな天気も晴れにしてやるぜ! さくら:イェーイ、カッコいい! レン:ハッキリ思い出したみたいだな。 レン:それで、俺を箱から出してくれたってことは、俺を必要としているってことだよな? さくら:そうなの。どうしてもレンの力が必要なの。 レン:明日、何かあるのか? さくら:花火大会。和也くんとデートなんだ♪ レン:和也くん? デート? さくら:うん。そうだよ。 レン:さくらは俺以外の男とデートする気なのか? さくら:そうだけど。 さくら:え、なに? てるてる坊主の分際で何言ってるの? レン:さくらは俺が優勝した時はあんなに喜んでくれたのに。俺のことが大好きだって言ってくれたのに。 さくら:え? それを愛情だと勘違いしてたわけ? もう一回言うけど、あなた、てるてる坊主よ? レン:そんな・・・ひどいよ。 さくら:私もまだ子供だったから。誤解させたんならごめんなさい。 さくら:でも、よく考えてみて。レンのことが本当に好きだったら十年も箱の中に封印するわけないでしょ。 レン:封印・・・? 俺は封印されていたのか? さくら:え? レンは箱の中に閉じ込められたこと、どう思ってたわけ? レン:人間とてるてる坊主。俺たちは許されない関係だ。だから、燃え上がる恋心を落ち着かせるために少し距離を置いた。さくらが冷静に俺の愛を受け止めるには時間が必要だった。そういうことだと思ってた。 さくら:気持ち悪い。勘違いもそこまでいくと恐怖でしかない。 レン:まさか、再会してすぐに失恋するとは思わなかった。 レン:立ち直れない。もう永遠の眠りにつくことにするよ。 さくら:ちょ、待って待って! さくら:レンの力が必要だって言ったでしょ。私に手を貸してよ。 レン:今の話の流れで俺が手を貸すなんて、そんな都合のいいこと、あると思う? さくら:あなた、てるてる坊主でしょ。 レン:今はそんな気分になれない。ショックで頭に力が入らないんだ。逆さになってる俺はふれふれ坊主、あめあめ坊主、るてるて坊主だ。晴れにするどころか、必ず雨を降らせてしまう。 さくら:それは困る。明日の花火大会はどうしても中止になってほしくないの。 レン:他の男とデートするんだろ。 さくら:そうだよ。せっかく可愛い浴衣買ったんだよ。人ゴミの中で離れないように手を繋いで、2人で花火見て、「キレイだね」「さくらのほうがキレイだよ」「やだ、和也くん」っていうのやりたいの。わかるでしょ、こういう気持ち。 レン:それ聞いて、ますます雨を降らせたくなった。 さくら:そんなこと言わないで。 さくら:覚えてる? 3年生の秋の遠足。降水確率は70%だったのに、レンを吊るしたら雲一つない青空になった。 レン:・・・まあな。 レン:70%なんか、俺にとっちゃ晴れ予報みたいなもんさ。 さくら:それに、その後の運動会。降水確率は80%だったのに、雨は1滴も落ちてこなかった。閉会式が終わった直後に大雨になって、みんなでびしょ濡れになりながら大笑いして後片付けをした。 レン:あの日は雲が厚かったけど、運動会が終わるまで、なんとか持ちこたえたんだ。 さくら:そんなこと、レンにしか出来ない。 さくら:何度もレンは私を助けてくれた。 さくら:あなたは私の味方。最後の希望。占いや天気予報は私を裏切っても、あなたは裏切らない。 さくら:だってレンは、てるてる坊主オブてるてる坊主なんだもん。 レン:さくら・・・。 レン:(舌打ち)仕方ねぇな。惚れた女にそこまで言われちゃ、やらないわけにはいかないだろ。 さくら:レン! レン:それで、明日の降水確率はいくつだ? さくら:100%。 レン:ん、よく聞こえなかった。もう一回言ってくれ。 さくら:100%。 レン:ヒャクパーーーー!? レン:無理無理無理無理。だって100パーだよ? これがまだ90パーならわかるよ。70、80ときたら、次は90だって思うじゃん。それが100パー! レン:あのな、洗剤やスプレーに99%除菌って書かれた商品があるだろ? あれがなんで100%じゃないのか知ってるか。 レン:あれはな、「家庭用合成洗剤・石けんの表示に関する公正競争規約」において、100%という表記が出来ないからなんだ。 レン:メーカーとしては100%の自信を持っていても99%という控えめな数字を出しているんだ。 レン:でも天気予報は違う。気象予報士にそんな謙虚さは必要ない。間違いないと判断すれば迷うことなく100%を出してくる。 レン:その気象予報士が絶対の自信を持って出してきた100%に勝てるわけがないだろう! レン:何をどうやったところで必ず雨は降る。 レン:晴れにするなんて絶対に出来ない! さくら:(泣きそう)・・・。 レン:(ドヤ顔)俺以外のてるてる坊主には、な! キラーン! さくら:レン! レン:久し振りの大仕事だ。燃えてきたぜ! レン:さくら、俺を窓際に吊るせ! さくら:うん! レン:そうだ。そのカーテンレールに結ぶんだ。よく覚えてるじゃねぇか。 さくら:出来たよ。 レン:それじゃあ始めるぜ! レン:ハレハレダンスだ! さくら:え、なにそれ? レン:(歌って)ハレハレ〜♪ ハレハレ〜♪ レン:明日はきっと晴れるのさ〜♪ レン:ハレハレ〜♪ ハレハレ〜♪ レン:明日は絶対晴れるのさ〜♪ レン:(歌うのを止めて)・・・おい、さくら。なんでポカンとした顔で俺を見てるんだ。 さくら:なにその変な踊りと歌。 レン:忘れたのかよ! 昔は俺と一緒に歌ってくれただろ! レン:この歌も、この踊りも、さくらが教えてくれたんだ! レン:さあ、あの時みたいに一緒に歌おう! さくら:絶対嫌。そんな変な歌、歌いたくない。 レン:なんでだよ! レン:一緒にやらなきゃ晴れないぞ。それでもいいのか? さくら:それはもっと嫌。 さくら:わかった。やるよ。やればいいんでしょ。 さくら:ホントにそんな歌、私が作ったの? レン:ああ。さくらが覚えてないのがショックだよ。 レン:じゃあ俺の後に続いて真似をするんだ。わかったな? さくら:うん。 レン:(歌って)ハレハレ〜♪ ハレハレ〜♪ さくら:(真似して)ハレハレ〜♪ ハレハレ〜♪ レン:明日はきっと晴れるのさ〜♪ さくら:明日はきっと晴れるのさ〜♪ レン:ハレハレ〜♪ ハレハレ〜♪ さくら:ハレハレ〜♪ ハレハレ〜♪ レン:明日は絶対晴れるのさ〜♪ さくら:明日は絶対晴れるのさ〜♪ レン:ハッレハレハレハレハレ〜♪ さくら:ハッレハレハレハレハレ〜♪ レン:ハレルヤ〜バンザイ〜♪ さくら:ハレルヤ〜バンザイ〜♪ レン:(台詞)あっ、雲間から光が射した! さくら:(台詞)ほら見て、虹が掛かったよ! レン:あ〜明日は〜♪ さくら:晴〜れ〜る〜の〜さ〜♪ レン:(拍手) さくら:(拍手) レン:思い出したじゃねぇか! さくら:うん。やっぱり変な歌! レン:これでやるだけのことはやった。後は俺に任せとけ! さくら:うん!  :  0:翌朝 レン:さくら、起きろ。 さくら:うぅん・・・あ、おはよう。 レン:そろそろ起きろ。もうすぐ約束の時間だろう。 さくら:今何時? レン:10時だ。 さくら:ええっ、急いで準備しなきゃ。あ、雨は!? レン:今降り出したところだ。まだ小雨だが、これから大降りになるだろう。 さくら:え!? 晴れにしてくれるんじゃなかったの!? レン:まあ落ち着け。これは作戦だ。さすがの俺でも長時間雨を止めることは不可能だ。花火大会は夜なんだろう。花火を打ち上げるか、中止にするか、その判断をするのはおそらく夕方だ。 レン:その少し前から俺が晴れを作る。 さくら:ホントに大丈夫? レン:任せとけ。相手の男にも、絶対に晴れると伝えておけ。 さくら:わかった。よろしくね、レン。 レン:おう。  :  さくら:(M)雨は降り続いていた。 さくら:私と和也くんは雨の中、相合傘でデートして、花火大会を待った。 さくら:夕方、あんなに真っ暗だった空から太陽が顔を出した。 さくら:夜になると、予定通り花火が打ち上がった。私と和也くんの大切な夏の思い出になった。 さくら:ありがとう、レン。  :  さくら:ただいまー。 さくら:(M)家に着くなり自分の部屋に走った。 さくら:レン! レン:さくら、おかえり・・・。 さくら:レン、晴れたよ! レンのおかげで花火大会中止にならなかったよ! レン:そうか・・・。 さくら:レン・・・どうしたの? レン:もう・・・いいんだよな・・・。 レン:(苦しげに)うぅっ・・・。 さくら:あ、雨・・・。 さくら:急に土砂降りになった。雷も鳴ってる。 さくら:レン・・・私が帰るまで、雨を止めてくれていたの? レン:(弱々しく)ああ・・・。 さくら:どうしたの? ぐったりしてるよ。 レン:力を使い果たしてしまった。 レン:どうやら俺は・・・ここまでのようだ。 さくら:そんな。 レン:てるてる坊主としての役目をちゃんと果たせたんだ。本望だよ。 さくら:ごめん。花火が終わったら、すぐに帰ってくればよかった。そうしたら・・・。 レン:結果は一緒さ。気にするな。それより、デート楽しかったか。 さくら:うん。楽しかったよ。ありがとう。 レン:そうか。ならよかった。 さくら:どうしてこんなに無理してくれたの? レン:運動会の時、閉会式までしか雨を止められなかったから。 レン:あの後、大雨になって、さくらはびしょ濡れになって、風邪をひいて何日も学校を休んだ。 レン:ずっと悔やんでた。どうして家に帰るまで晴れを続けられなかったのかって。 レン:やっと。やっとその時の後悔の念も、晴らすことができたよ。 さくら:そんなの気にしなくてよかったのに。 さくら:運動会を晴れにしてくれて、私はレンに感謝してたんだよ。 レン:あぁ。運動会の後、俺のことを「大好き」って言ってくれたこと、覚えてるか? さくら:忘れてた。でも今思い出した。 レン:俺にはあの言葉が宝物だった。 レン:さくらのためなら、命を賭けてもいいと思った。 レン:だから、これでいいんだ。 さくら:レン・・・。 さくら:私、あなたのこと忘れない。ありがとう。本当にありがとう。 レン:さよなら、さくら。 レン:愛してる。 さくら:レン? レン! レーーン!  :   :  0:時は過ぎて・・・ さくら:あおい、夏休みの宿題、すすんでるの? さくら:えー、お母さんは手伝わないよ。自分でやりなさい。 さくら:自由研究? 何にするか? さくら:そうねぇ・・・。 さくら:あっ、思い出した。お母さん、面白いのを知ってるよ。 さくら:あのさ、てるてる坊主って知ってる?  :  0:おしまい。

さくら:こんなのってない。 さくら:もう・・・諦めるしかないの・・・? さくら:このまま黙って明日を迎えるなんて、絶対に嫌。 さくら:何か・・・何か手は・・・。 さくら:そうだ。アイツだ。 さくら:もうこうなったらアイツに頼るしかない。アイツなら、きっとなんとかしてくれるはず。 さくら:確か、押し入れのこの辺に・・・。 さくら:あった。この箱だ。小学校3年生の夏休みの自由研究・・・。 さくら:名付けて、「最強のてるてる坊主は誰だ!」。  :  さくら:この箱の封印を解く日が来るなんて思ってもみなかった。 さくら:私、こんなにガムテープでぐるぐる巻きにしてたのね。 さくら:よっぽど怖かったんだろうな・・・。 さくら:やっと剥がせた。封印解除。 さくら:(蓋を開けて)よっと。 レン:(箱から飛び出して)うおあーーー! レン:やっと出られたぜー! ひゅうううう! さくら:うるさい! 夜なんだからもう少し静かに出てきてよ。 レン:さくら、久し振りだな。ずいぶん大きくなりやがって。今、いくつだ? さくら:19。 レン:ジューキュー! ってことは10年振りか。 レン:せっかく仲良くなれたと思ったのによ。こっちはずっと寂しかったんだからな。 さくら:だって、てるてる坊主がいきなり喋りだしたのが怖かったから。 レン:それはひどいな。俺が喋れるようになったのはさくらのおかげなのによ。 さくら:私の・・・おかげ? レン:さくらが俺に何度も何度も話しかけてくれたから、あの日奇跡が起きたんだ。 レン:これからはさくらと色んな話が出来るって喜んでたのに、さくらは「怖いー!」って泣き叫びながら俺を箱に押し込んで出られなくしたんだ。 さくら:それは、なんというか、ごめんなさい。 レン:いいっていいって。またこうして箱から出してくれたんだからさ。俺のこと、忘れてなかったんだな。 さくら:ついさっきまで忘れてたんだけど。 レン:忘れてたのかよ! さくら:レン! 思い出した。あなたの名前は、レン。 レン:名前まで忘れてたのか。そう。俺はその頃さくらが観ていたアニメのキャラと同じ名前。ちなみにさくらの初恋のキャラだ。 さくら:そ、それを言わないで。 レン:照れるなよ。本当のことだろ。 さくら:っていうか、今気がついたんだけど、あなたの声、レンと同じ声なのね。 さくら:(相手役の声の感想)○○○○な声。 レン:この声が好きなんだろ。 さくら:そう。大好きだった。だから頑張ってレンの顔を描いたんだよね。あの時は上手く描けたって思ってたけど、今見ると下手くそ。 レン:俺は気に入ってるぜ。さくらが一生懸命に描いてくれた顔だからな。 さくら:布にペンで顔を描くのが難しくて何枚も失敗してた。変な顔のてるてる坊主をいっぱい作って、それでそれを自由研究にまとめることにしたんだった。 レン:そう。120体のてるてる坊主の中からランダムに10体選んで窓際に吊るして、雨が降ったら負け。晴れたら勝ちで2回戦進出。 さくら:全部のてるてる坊主に名前つけるの大変だったなぁ。一番上手く描けたレンをレンって名前にしたのよ。他はハゲ太郎とかクリリンとか。 レン:勝ち残ったてるてる坊主をシャッフルして、またランダムに選んで窓際に吊るす。 さくら:その年は雨が多くて、どんどん数が減っていったのよね。 レン:そうやって厳選して、勝ち残った4体を最後はリーグ戦で戦わせて、見事、全勝優勝した『必ず晴れるてるてる坊主』が俺ってわけさ。 さくら:名付けて、てるてる坊主オブてるてる坊主! レン:この俺にかかれば、どんな天気も晴れにしてやるぜ! さくら:イェーイ、カッコいい! レン:ハッキリ思い出したみたいだな。 レン:それで、俺を箱から出してくれたってことは、俺を必要としているってことだよな? さくら:そうなの。どうしてもレンの力が必要なの。 レン:明日、何かあるのか? さくら:花火大会。和也くんとデートなんだ♪ レン:和也くん? デート? さくら:うん。そうだよ。 レン:さくらは俺以外の男とデートする気なのか? さくら:そうだけど。 さくら:え、なに? てるてる坊主の分際で何言ってるの? レン:さくらは俺が優勝した時はあんなに喜んでくれたのに。俺のことが大好きだって言ってくれたのに。 さくら:え? それを愛情だと勘違いしてたわけ? もう一回言うけど、あなた、てるてる坊主よ? レン:そんな・・・ひどいよ。 さくら:私もまだ子供だったから。誤解させたんならごめんなさい。 さくら:でも、よく考えてみて。レンのことが本当に好きだったら十年も箱の中に封印するわけないでしょ。 レン:封印・・・? 俺は封印されていたのか? さくら:え? レンは箱の中に閉じ込められたこと、どう思ってたわけ? レン:人間とてるてる坊主。俺たちは許されない関係だ。だから、燃え上がる恋心を落ち着かせるために少し距離を置いた。さくらが冷静に俺の愛を受け止めるには時間が必要だった。そういうことだと思ってた。 さくら:気持ち悪い。勘違いもそこまでいくと恐怖でしかない。 レン:まさか、再会してすぐに失恋するとは思わなかった。 レン:立ち直れない。もう永遠の眠りにつくことにするよ。 さくら:ちょ、待って待って! さくら:レンの力が必要だって言ったでしょ。私に手を貸してよ。 レン:今の話の流れで俺が手を貸すなんて、そんな都合のいいこと、あると思う? さくら:あなた、てるてる坊主でしょ。 レン:今はそんな気分になれない。ショックで頭に力が入らないんだ。逆さになってる俺はふれふれ坊主、あめあめ坊主、るてるて坊主だ。晴れにするどころか、必ず雨を降らせてしまう。 さくら:それは困る。明日の花火大会はどうしても中止になってほしくないの。 レン:他の男とデートするんだろ。 さくら:そうだよ。せっかく可愛い浴衣買ったんだよ。人ゴミの中で離れないように手を繋いで、2人で花火見て、「キレイだね」「さくらのほうがキレイだよ」「やだ、和也くん」っていうのやりたいの。わかるでしょ、こういう気持ち。 レン:それ聞いて、ますます雨を降らせたくなった。 さくら:そんなこと言わないで。 さくら:覚えてる? 3年生の秋の遠足。降水確率は70%だったのに、レンを吊るしたら雲一つない青空になった。 レン:・・・まあな。 レン:70%なんか、俺にとっちゃ晴れ予報みたいなもんさ。 さくら:それに、その後の運動会。降水確率は80%だったのに、雨は1滴も落ちてこなかった。閉会式が終わった直後に大雨になって、みんなでびしょ濡れになりながら大笑いして後片付けをした。 レン:あの日は雲が厚かったけど、運動会が終わるまで、なんとか持ちこたえたんだ。 さくら:そんなこと、レンにしか出来ない。 さくら:何度もレンは私を助けてくれた。 さくら:あなたは私の味方。最後の希望。占いや天気予報は私を裏切っても、あなたは裏切らない。 さくら:だってレンは、てるてる坊主オブてるてる坊主なんだもん。 レン:さくら・・・。 レン:(舌打ち)仕方ねぇな。惚れた女にそこまで言われちゃ、やらないわけにはいかないだろ。 さくら:レン! レン:それで、明日の降水確率はいくつだ? さくら:100%。 レン:ん、よく聞こえなかった。もう一回言ってくれ。 さくら:100%。 レン:ヒャクパーーーー!? レン:無理無理無理無理。だって100パーだよ? これがまだ90パーならわかるよ。70、80ときたら、次は90だって思うじゃん。それが100パー! レン:あのな、洗剤やスプレーに99%除菌って書かれた商品があるだろ? あれがなんで100%じゃないのか知ってるか。 レン:あれはな、「家庭用合成洗剤・石けんの表示に関する公正競争規約」において、100%という表記が出来ないからなんだ。 レン:メーカーとしては100%の自信を持っていても99%という控えめな数字を出しているんだ。 レン:でも天気予報は違う。気象予報士にそんな謙虚さは必要ない。間違いないと判断すれば迷うことなく100%を出してくる。 レン:その気象予報士が絶対の自信を持って出してきた100%に勝てるわけがないだろう! レン:何をどうやったところで必ず雨は降る。 レン:晴れにするなんて絶対に出来ない! さくら:(泣きそう)・・・。 レン:(ドヤ顔)俺以外のてるてる坊主には、な! キラーン! さくら:レン! レン:久し振りの大仕事だ。燃えてきたぜ! レン:さくら、俺を窓際に吊るせ! さくら:うん! レン:そうだ。そのカーテンレールに結ぶんだ。よく覚えてるじゃねぇか。 さくら:出来たよ。 レン:それじゃあ始めるぜ! レン:ハレハレダンスだ! さくら:え、なにそれ? レン:(歌って)ハレハレ〜♪ ハレハレ〜♪ レン:明日はきっと晴れるのさ〜♪ レン:ハレハレ〜♪ ハレハレ〜♪ レン:明日は絶対晴れるのさ〜♪ レン:(歌うのを止めて)・・・おい、さくら。なんでポカンとした顔で俺を見てるんだ。 さくら:なにその変な踊りと歌。 レン:忘れたのかよ! 昔は俺と一緒に歌ってくれただろ! レン:この歌も、この踊りも、さくらが教えてくれたんだ! レン:さあ、あの時みたいに一緒に歌おう! さくら:絶対嫌。そんな変な歌、歌いたくない。 レン:なんでだよ! レン:一緒にやらなきゃ晴れないぞ。それでもいいのか? さくら:それはもっと嫌。 さくら:わかった。やるよ。やればいいんでしょ。 さくら:ホントにそんな歌、私が作ったの? レン:ああ。さくらが覚えてないのがショックだよ。 レン:じゃあ俺の後に続いて真似をするんだ。わかったな? さくら:うん。 レン:(歌って)ハレハレ〜♪ ハレハレ〜♪ さくら:(真似して)ハレハレ〜♪ ハレハレ〜♪ レン:明日はきっと晴れるのさ〜♪ さくら:明日はきっと晴れるのさ〜♪ レン:ハレハレ〜♪ ハレハレ〜♪ さくら:ハレハレ〜♪ ハレハレ〜♪ レン:明日は絶対晴れるのさ〜♪ さくら:明日は絶対晴れるのさ〜♪ レン:ハッレハレハレハレハレ〜♪ さくら:ハッレハレハレハレハレ〜♪ レン:ハレルヤ〜バンザイ〜♪ さくら:ハレルヤ〜バンザイ〜♪ レン:(台詞)あっ、雲間から光が射した! さくら:(台詞)ほら見て、虹が掛かったよ! レン:あ〜明日は〜♪ さくら:晴〜れ〜る〜の〜さ〜♪ レン:(拍手) さくら:(拍手) レン:思い出したじゃねぇか! さくら:うん。やっぱり変な歌! レン:これでやるだけのことはやった。後は俺に任せとけ! さくら:うん!  :  0:翌朝 レン:さくら、起きろ。 さくら:うぅん・・・あ、おはよう。 レン:そろそろ起きろ。もうすぐ約束の時間だろう。 さくら:今何時? レン:10時だ。 さくら:ええっ、急いで準備しなきゃ。あ、雨は!? レン:今降り出したところだ。まだ小雨だが、これから大降りになるだろう。 さくら:え!? 晴れにしてくれるんじゃなかったの!? レン:まあ落ち着け。これは作戦だ。さすがの俺でも長時間雨を止めることは不可能だ。花火大会は夜なんだろう。花火を打ち上げるか、中止にするか、その判断をするのはおそらく夕方だ。 レン:その少し前から俺が晴れを作る。 さくら:ホントに大丈夫? レン:任せとけ。相手の男にも、絶対に晴れると伝えておけ。 さくら:わかった。よろしくね、レン。 レン:おう。  :  さくら:(M)雨は降り続いていた。 さくら:私と和也くんは雨の中、相合傘でデートして、花火大会を待った。 さくら:夕方、あんなに真っ暗だった空から太陽が顔を出した。 さくら:夜になると、予定通り花火が打ち上がった。私と和也くんの大切な夏の思い出になった。 さくら:ありがとう、レン。  :  さくら:ただいまー。 さくら:(M)家に着くなり自分の部屋に走った。 さくら:レン! レン:さくら、おかえり・・・。 さくら:レン、晴れたよ! レンのおかげで花火大会中止にならなかったよ! レン:そうか・・・。 さくら:レン・・・どうしたの? レン:もう・・・いいんだよな・・・。 レン:(苦しげに)うぅっ・・・。 さくら:あ、雨・・・。 さくら:急に土砂降りになった。雷も鳴ってる。 さくら:レン・・・私が帰るまで、雨を止めてくれていたの? レン:(弱々しく)ああ・・・。 さくら:どうしたの? ぐったりしてるよ。 レン:力を使い果たしてしまった。 レン:どうやら俺は・・・ここまでのようだ。 さくら:そんな。 レン:てるてる坊主としての役目をちゃんと果たせたんだ。本望だよ。 さくら:ごめん。花火が終わったら、すぐに帰ってくればよかった。そうしたら・・・。 レン:結果は一緒さ。気にするな。それより、デート楽しかったか。 さくら:うん。楽しかったよ。ありがとう。 レン:そうか。ならよかった。 さくら:どうしてこんなに無理してくれたの? レン:運動会の時、閉会式までしか雨を止められなかったから。 レン:あの後、大雨になって、さくらはびしょ濡れになって、風邪をひいて何日も学校を休んだ。 レン:ずっと悔やんでた。どうして家に帰るまで晴れを続けられなかったのかって。 レン:やっと。やっとその時の後悔の念も、晴らすことができたよ。 さくら:そんなの気にしなくてよかったのに。 さくら:運動会を晴れにしてくれて、私はレンに感謝してたんだよ。 レン:あぁ。運動会の後、俺のことを「大好き」って言ってくれたこと、覚えてるか? さくら:忘れてた。でも今思い出した。 レン:俺にはあの言葉が宝物だった。 レン:さくらのためなら、命を賭けてもいいと思った。 レン:だから、これでいいんだ。 さくら:レン・・・。 さくら:私、あなたのこと忘れない。ありがとう。本当にありがとう。 レン:さよなら、さくら。 レン:愛してる。 さくら:レン? レン! レーーン!  :   :  0:時は過ぎて・・・ さくら:あおい、夏休みの宿題、すすんでるの? さくら:えー、お母さんは手伝わないよ。自分でやりなさい。 さくら:自由研究? 何にするか? さくら:そうねぇ・・・。 さくら:あっ、思い出した。お母さん、面白いのを知ってるよ。 さくら:あのさ、てるてる坊主って知ってる?  :  0:おしまい。