台本概要

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タイトル ユースティティアの崩壊【キャンノットキラーⅡ】
作者名 のぼライズ  (@tomisan5012_2)
ジャンル ミステリー
演者人数 6人用台本(男4、女2)
時間 30 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 今から幾許も無く前の事。
とある無差別な事件が多発していた。犯人は「サイレントキラー」だと…

目に映るものは現(うつつ)か。時に目に映らないモノは幻(げん)か。その人間は殺(あや)めるべき存在だったか否(いな)か。そして、目の前の殺し屋は本当に殺し屋だったのか。幻(げん)か現(うつつ)か。それを見極めるには程遠いものである。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
カウ 81 BARの常連客。サイレントキラーを題材にした小説を代表作として持つ小説家。兼サイレントキラーの1人。
マスター 71 BARのマスターであるが、あくまで趣味程度としている。本業は、カウと組んでサイレントキラーとして活動している。
マーチン 100 女性警察官。ライアンとは義理の兄妹であり、警視総監の父を持つ。 警察官としての正義に、常に少し不満を持っている。
ライアン 33 警察官。勘は鋭いが、自信がなく、口に出さない。マーチンとは兄妹であり、本当の妹として思っている。
ブーティー 87 ブーティー・アムステルダム マーチンの前では大人しく演じているが、裏の顔は凄く荒々しい。 警視長の息子であり、全ての汚職を揉み消してくれるのを逆手に、自ら世直しの為に「サイレントキラー」と名乗り、無差別に事件を起こしていく。
リフレクター 74 リフレクター・スクランブル ブーティーの相棒であり、自称プロの殺し屋である。 以前、ブーティーに身柄を拘束されかけたが、一緒に組んで世直しをするを条件に活動している
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

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カウ:「暗さが最も増す時に、人々は星を見る。」思想家 ラルフ・ウォルドー・エマソン 0:  カウ:『ユースティティアの崩壊』 0:  ブーティー:「残念だったな、警察かと思っただろう?違うな…確かに俺は警察官だ。でも俺は、他の警察官とは違うのさ」 0:銃声音(無くても大丈夫です) ブーティー:「俺はブーティー・アムステルダム、又の名を…サイレントキラー」 ブーティー:「あんたに正しい裁きある天誅を、ジグソー・コンシェルジュ」 0:  マーチン:「ブーティー君」 ブーティー:「あっ、マーチン警部!お疲れ様です!」 マーチン:「お疲れ様、配属先には少しは慣れたかしら?」 ブーティー:「えぇ、まぁ…いろいろと、身も心も…いろいろと鍛えられますが…」 マーチン:「だろうね、ブーティー君の配属されてる捜査一課は…ほら…」 ブーティー:「肉体美アピール激しいですよね…」 マーチン:「まぁ…うん…ああいう風にはならない様にね」 ブーティー:「精進いたします」 マーチン:「それにしても、あなたには大変な荷物というプレッシャーを背負っているじゃないか」 ブーティー:「荷物というプレッシャー…?」 マーチン:「警視長の息子だから、いろいろと他方から期待されてたり…」 ブーティー:「いえ、僕は自分の力で警察官になったと思っているので…例え、父が警視長であろうとも、自分の信ずるモノは、譲れない正義だけですから」 マーチン:「家庭を顧みなかった父親が…そんなに憎いかしら?」 ブーティー:「えぇ、母が亡くなったのも…父が殺したも同然…」 マーチン:「…そっか」 ブーティー:「(呟くように)この手で…殺してやりたい…」 0:  マスター:「この手で殺してやりたい…か…」 マーチン:「そう、あたしに聞こえるか聞こえないかのボリュームで言ってたんだよ。そのブーティー君ね、とても大人しく物静かな子なのよ。でもそんな子がボソッと物騒な事を…ねぇ…」 マスター:「うーん、父親が警察官とかなら…そうなるのかな?」 マーチン:「そういうもんかしらね…」 マーチン:「私も同じ家庭環境だったけど、逆に私は警察官である父親の背中を追いかけて、今に至るからね…」 マーチン:「若い子の気持ちは、そう理解出来ないものね」 マスター:「そうだね…若い子は刺激と葛藤を蓄積すればする程、シワの数が増えるって言うからね」 マーチン:「あら、あたしも増えちゃうかな…」 マスター:「あなたは…心配ないんじゃないかな?」 マーチン:「あらマスター、ありがとう!でもさっきの話を聞いた上で言われると、素直に受け取れきれないわ…」 マスター:「おや、余計な事を言いましたかな?」 0:マーチンの電話が鳴る マーチン:「マスター、ちょっと失礼」 マスター:「お構いなく」 マーチン:「私だ、えぇ、すぐ向かうわ」 0:電話を切る マーチン:「…恐ろしいわね」 マスター:「おかえり、その形相は事件かな?」 マーチン:「えぇ、普通の事件なら別に何とも思わないんだけどね…マスター、「サイレントキラー」って知ってる?」 マスター:「…人並みにしか知りませんが、「謎の死」というやり方がお得意な殺し屋ですよね?」 マーチン:「そう。だけど、このサイレントキラーのやり方は無差別に銃弾で仕留めている。その上、警察には予告状が届く…」 マスター:「複数いるように見せていますな…まるで、「捕まえられるものなら捕まえてみろ」と言わんばかり…」 マーチン:「はぁ…せっかく呑みたい気分だったのにね、この事件の臨時招集で潰れるなんて…日頃の行いが悪いみたいね。ご馳走さま、マスター」 マスター:「行ってらっしゃい」 0:扉が閉まる マスター:「予告状…ねぇ」 0:時は遡り、数時間前 リフレクター:「ブーティー」 ブーティー:「ん?…何だリフ」 リフレクター:「1つ聞きたい」 ブーティー:「うん?」 リフレクター:「少しばかり活発過ぎないか?」 ブーティー:「何故、そう思う?」 リフレクター:「いや、でも…あまり動き過ぎると、怪しまれるぞ?」 ブーティー:「リフ、君は肝っ玉の小さい女だねぇ」 リフレクター:「おい」 ブーティー:「失礼、君に「女」のワードチョイスは禁句(タブー)だったね」 リフレクター:「(舌打ち)だが…もしバレた時の策はあるのかい?」 ブーティー:「ある訳がない…俺は、警視長の息子だからだ」 リフレクター:「うちのパパが揉み消してくれる…ってか?」 ブーティー:「その通り。仮に俺が捕まったとしても、すぐに釈放し、無かった事になる」 ブーティー:「何故なら、パパ自身警視長としての立場が揺らぐからさ。警視長の息子が捕まってみろ?メディアに取り上げられてみろ?」 ブーティー:「揺らぐぞ…世間も、警視長としての地位も…」 リフレクター:「これだからボンボンは怖ぇや…」 ブーティー:「母さんを苦しめた「警察様のお仕事」という存在にピリオドを打つ。世間をサイレントキラーで暫く騒がせ、その渦中で警察関係者のトップの人間が殺される。その殺した犯人として、誰が最初に候補として挙がる?」 リフレクター:「そ…そりゃ、世間を騒がしてる最中で殺してるんだから…タイムリーにサイレントキラーの名が挙がるんじゃないか?」 ブーティー:「ザッツライト!もちろんサイレントキラーは俺だ。あの幻と化した殺し屋を、模倣しているのは俺なんだよ」 ブーティー:「警察内部の人間がサイレントキラーって、面白くないか、リフ?」 リフレクター:「それはそうだが、今さらながら警察内部に潜るのは…リスクが高くないか?」 ブーティー:「リフ」 リフレクター:「な…何だよ、急に」 ブーティー:「照明が灯った明るい部屋の中心で、ロウソクに火を灯そうじゃないか」 リフレクター:「ブーティー、頭おかしくなったか?」 ブーティー:「おかしくはないさ…火を灯もすだけだ」 0:ロウソクに火が灯る ブーティー:「ほら灯った、リフ」 リフレクター:「灯ったな…だから何だ?」 ブーティー:「この部屋に暗いとこは無いか?」 リフレクター:「笑わせんな、ある訳ないだろ?この部屋には、照明が灯ってるんだぞ?その上、ロウソクも灯ってる。見る限り、暗いとこなんて…」 ブーティー:「あるさ」 リフレクター:「はぁ…ブーティー、揶揄うのもいい加減にしてくれないか?」 ブーティー:「ロウソクは周囲に明かりを灯す。だが、照らしている下部は暗くないか?」 リフレクター:「まぁ、だからなんだ?」 ブーティー:「日本のことわざで、「灯台下暗し」という言葉がある。「身近な出来事には気づきにくい」という意味らしいが、」 ブーティー:「それと重ねて言うならば、警察組織に犯人が居ても、皆が皆、外に居ると言えば外を疑いたがる。身内には一切、疑いの目を掛けないのだよ」 リフレクター:「改めて君という存在が怖くなったよ」 ブーティー:「それに、警察の中じゃ俺は物静かなイメージを植え付けてある。そんなやつが大胆な事をすると思うか?」 リフレクター:「いや…思わないというか、思えないな」 ブーティー:「我ながら、素晴らしい役者だと思うよ」 リフレクター:「さすがだな」 リフレクター:「そろそろ送った予告状を読んで貰えた頃じゃないかな…?」 ブーティー:「そうかもな、そして緊急招集の電話が鳴る…」 0:ブーティーの電話が鳴る リフレクター:「ビンゴ!ナイスタイミング!」 ブーティー:「しっ!静かに…(咳払い)…もしもし?はい…はい…えっ、あぁはい…分かりました…では、後ほど…」 0:電話を切る ブーティー:「あの女警部からの招集だ」 リフレクター:「あの色っぽい警部か?」 ブーティー:「いつかは手玉に取ってやりたいものだな!じゃ、俺は行くぜ」 0:  マーチン:「ブーティー君」 ブーティー:「お疲れ様です」 マーチン:「夜遅くに申し訳ないね。だがこれも、警察組織の宿命だ」 ブーティー:「存じ上げています」 マーチン:「早速だがブーティー君、君はグロテスクな映画は好き?」 ブーティー:「?…どういう事でしょう」 マーチン:「溺死の仏さんが打ち上がったのさ」 ブーティー:「で…溺死…ですか…」 マーチン:「死後約2日といったところらしい」 ブーティー:「んで、その仏さんは?」 マーチン:「目の前だよ」 0:マーチン、覆われたシートを剥ぐ。 ブーティー:「うぷっ…」 マーチン:「あぁ、吐くなら海でね」 ブーティー:「失礼致します…うっ…」 マーチン:「あーぁ、盛大に吐いてるねぇ…新米のマーライオンはそうじゃなくちゃ」 マーチン:でもこの溺死体…何か引っ掛かるわね… 0:  カウ:「マスター、急に呼び出してどうした?」 マスター:「ここんとこ最近、サイレントキラーの模倣犯がいる」 カウ:「あぁ、名前だけだがな。暫く各メディアもサイレントキラーで持ち切りだ。ネタには困らねぇだろな」 マスター:「そんな呑気な事言ってる場合か?」 カウ:「まぁ…だが幸い、サイレントキラーの表舞台に立つ俺の顔はあまり少数にしか割れてない」 マスター:「あまり過信するな。少数は少数でも、見られている事は確かだ」 カウ:「…確かに。暫くは、そう気楽に街も歩けなくなるな」 マスター:「少しの期間、身を潜めていた方が良いのかもしれない」 カウ:「そのつもりでいよう、今のところは…」 0:扉が開く マスター:「…話は終わりだ、いらっしゃい」 リフレクター:「空いてるところで良いか?」 マスター:「えぇ、どこでも」 カウ:「マスター、ミルクを貰えないか?」 マスター:「ミルクね、はいよ」 リフレクター:「BARでミルクか…あんた、変わってるな?」 カウ:「いや、単なるそういう気分なだけさ」 マスター:「この人ね、小説家なんだよ?」 リフレクター:「へぇ…あんた、何を書いてんだ?」 カウ:「…これさ」 リフレクター:「!?…この小説、あのサイレントキラーが主人公の有名な小説じゃないか?」 カウ:「まぁそうだが、今暫くはあまり大きな声で言えないけどな」 リフレクター:「全く…物騒な世の中になっちまったな。今お騒がせなサイレントキラーによって、売れ行き悪いんだな?」 カウ:「まぁ…そんなところかな」 マスター:「ところでお客さん、何飲まれます?」 リフレクター:「そうだな…んじゃ、そのボトルを貰おうか?」 マスター:「ボトル?…どのボトルだい?」 リフレクター:「そのボトルだよ…そうそう、そのボトル」 マスター:「?…このボトルかい?」 カウ:マスターが完全にボトルを取ろうと後ろを向いた時、男は背を向けたマスターへ銃を向けた。 カウ:「マ…マスター!!」 0:銃声音(無くても大丈夫です) リフレクター:「うあぁ!」 マスター:「ったく…商品のボトルが1本、ダメになっちゃったね。これは高く付いちゃうよ?」 リフレクター:「(苦し紛れに)あんた…何者だ…?」 マスター:「そこら辺に居るマスターだが?」 リフレクター:「(苦し紛れに)嘘をつけ…そこら辺のマスターが…後ろ向きで…ノールックで銃なんか撃てるか…」 マスター:「何故、僕を狙う?」 リフレクター:「(苦し紛れに)ふっ…教えらんねぇな…」 0:銃声音(無くても大丈夫です) マスター:「質問に答えてもらおう、何故…僕を狙うんだ?」 リフレクター:「その前に、あんた…何者なんだよ…」 マスター:「なるほど…詳細を知らされてない状態で依頼を受けたんだな?」 リフレクター:「(苦し紛れに)あぁ、だが依頼じゃない。俺は殺し屋の遣いだ。あのサイレントキラーの遣いだ!」 マスター:「続けろ」 リフレクター:「(苦し紛れに)それだけだ、俺はサイレントキラーからの命(めい)を預かり、実行したまでだ」 カウ:「…愚かな」 マスター:「美しくないな…」 リフレクター:「(苦し紛れに)残念だったな、そこの小説家さんよ。売れ行きが悪いのは…俺達のせいみたいだ」 カウ:「…もうじきに警察が来る」 リフレクター:「あぁ?脅しのつもりか?」 カウ:「あぁ、脅していると言われればな?」 リフレクター:「舐めてるのか?」 マスター:「あぁ」 リフレクター:「っ…痛い目見てぇのか!コラ!」 0:銃口をマスターへ向ける。 マスター:「さっき発砲した硝煙が、まだ残っているな…」 リフレクター:「…これで3度目だ、あんた…本当に何者なんなんだよ…」 0:銃声音(無くても大丈夫です) マスター:「暫く黙ってろ」 0: マーチン:「身元が割れた、名前はジグソー・コンシェルジュ 34歳 男…」 ブーティー:「指名手配犯…ですか」 マーチン:「えぇ、本署もかれこれ12年も追いかけていたのだが…まさか、こんな出会い方をするとはね…」 ブーティー:「まさか、溺死で発見されるとは…自ら身を投げたとか…?」 マーチン:「そこまでの肝っ玉の小ささなら、12年も逃げられないさ…」 ブーティー:「では…何で?」 マーチン:「さぁね、仏さんに聞いてみな?」 ブーティー:「はぁ…」 マーチン:「溺死体に慣れるのも、仕事だよ」 ブーティー:「そうですか…うぷっ!?」 マーチン:「吐くなら海ね」 ブーティー:「すいません、思い出したらつい…」 マーチン:「思い出して吐けるなんて幸せねぇ…」 0:  マスター:「命拾いしたな?」 リフレクター:「あんた…これが脅しのつもりか?」 マスター:「こっちはいつだって、あんたを殺せる…」 リフレクター:「(舌打ち)」 カウ:「さぁ本題だ、マスターを殺せと依頼したのは誰だ?」 リフレクター:「あのなぁ…こう見えても一応、殺し屋をやっているんだ。そんな容易く口割る訳無いだろ?ぺっ」 カウ:「……」 0:カウ、リフレクターの頭上から液体をかける。 リフレクター:「え、あつ、あつ!?熱いってば!!」 カウ:「マスター」 マスター:「あぁ、そういやホットミルクは嫌いだったね、君は」 リフレクター:「お前ら…2人ともグルって訳か?」 カウ:「無駄口を叩くな、依頼主は誰だ?」 リフレクター:「さぁな…」 カウ:「意地でも口を割らないってか?」 リフレクター:「言ってやってもいいさ…サイレントキラーってな?」 カウ:「サイレントキラー…ねぇ?」 リフレクター:「あぁ、俺の前でそう言っていたさ…」 カウ:「なら、僕らはその模倣犯を始末しないと…ね?」 マスター:「まずは、あんたからという訳…ね?」 リフレクター:「待ってくれよ、あんた…いや、あんたら…何者なんだよ…」 0:扉が開く ライアン:「そこまでだ!全員手を挙げろ!」 マスター:「やぁ、ライアン君。いらっしゃい」 ライアン:「あっ、ども…じゃなくて!マスター、どうしたの?」 マスター:「いやいや、思ったより早く来て助かったよ…少しばかり撃たれ損なっただけさ」 ライアン:「その言い回しは初めて聞くけども…それより、無事で良かった」 マスター:「あっ、そこのお客さん」 カウ:「?…俺か?」 マスター:「あたり見回しても、客はあんたしかいないさ。今回はお代はいらないよ」 ライアン:「あんたも無事で良かった」 カウ:「…どうも」 リフレクター:「おい、そこの警察官」 ライアン:「はいはい、両手出して…」 リフレクター:「手錠掛けるのはまだ早いぜ…」 ライアン:「はぁ?」 リフレクター:「こいつらも、人殺しだぁ…殺し屋の稼業を担っている」 ライアン:「ふーん…」 リフレクター:「はっ、終わりだ…お前らも道連れだ?ははっ」 マーチン:「兄さん、遅くなった…」 マスター:「おや、さっきぶりだね?」 マーチン:「マスター、大丈夫?」 マスター:「あぁ、少しばかり撃たれ損なっただけさ」 マーチン:「なかなか聞き慣れない言い回しね?」 マスター:「それ、あんたのお兄さんにも言われたよ」 ライアン:「マーチンお前、溺死体の引き上げに行ってたんじゃ?」 マーチン:「無線でこっちの加勢に加えられたのよ」 ライアン:「そうか…」 リフレクター:「おいおい、俺の話を聞いていたか?こいつらは…」 ライアン:「(遮るように)マーチン、誰か手の空いてる部下はいるか?こいつを連行したい」 リフレクター:「なっ、おいおい」 マスター:「確かその子、「サイレントキラーの遣い」だとか名乗ってたけども?」 マーチン:「サイレントキラー…そういや最近、予告嬢が来るわよね?」 ライアン:「あぁ、それこそ…つい先ほど、うちの署に予告状が届いてね。ここを名指しして、マスターを殺すとか書いてあったけど…見る限り、失敗に終わってるみたいだな」 カウ:「ちなみに、犯人の目星は付いてるのかい?」 マーチン:「分からないわ。でも、サイレントキラーをモデルにしている小説の模倣犯って事だけは確かよ」 カウ:「悪かったな、それを書いているのは俺だ」 ライアン:「おや、あの小説の作者?…でも、あくまでサイレントキラーはフィクション。あなたを逮捕なんてしない…」 カウ:「もし、サイレントキラーが存在するとしたら?」 マーチン:「な、何ですって!?」 ライアン:「そいつは悪い冗談だ…」 カウ:「警察内部で極秘にしているはずだ、サイレントキラーは「幻の殺し屋」では無く、実際に存在している真実が…」 マーチン:「じょ…冗談言わないで頂戴?あっ、そうだ…ブーティー巡査、その容疑者を署まで」 ブーティー:「はい、警部」 リフレクター:「お、おい…」 ブーティー:「黙ってろ」 リフレクター:「っ…あぁ?」 マスター:「……?」 0:パトカー内にて ブーティー:「…やってくれたな」 リフレクター:「すまない、だが…」 ブーティー:「言い訳なんか聞きたくもない…(運転手に話しかけるように)そこの君、この先を曲がったら広い路肩に出る、そこで止まってくれ」 0:銃声音(無くても大丈夫です) リフレクター:「ヒュー、大胆だねぇ。運転手を撃つとか」 ブーティー:「例えお前が、あのマスターを殺そうが殺さないが、俺の中では筋書き通りに事は進む。何故なら、これで警察にサイレントキラーはいないと皆が思い込む」 ブーティー:「そして、周りのサイレントキラーの捜査線上に2度と、俺の名前は出ない。同じ場所に、同じ時間に居た人間が犯人だとは思い込まないからな」 ブーティー:「これでサイレントキラーの正体は闇に葬られた」 リフレクター:「……」 0:ブーティー、自分の肩に銃口を当てる。 ブーティー:「警察なんてものは、ただの烏合の衆に過ぎないから…ね?」 0:銃声音(無くても大丈夫です) 0:  0:ブーティーからの電話 マーチン:「もしもし…ブーティー巡査?…え、撃たれた!?」 ブーティー:「えぇ、犯人が急に運転手を撃って、その後に僕が肩を撃たれました…犯人、逃げられました…」 マーチン:「んで、あなたは今どこ?…分かったわ、そっちに向かうわ」 0:電話を切る ライアン:「何があった?」 マーチン:「今さっき、容疑者を連行したパトカーに同乗した運転手の警察官と…ブーティー巡査が撃たれた」 ライアン:「あの容疑者にか…?」 マーチン:「えぇ、そうよ…あの犯人、ここを襲撃したり、またしては警察官を撃ったり…何が狙いなのかしら?」 マスター:「あの犯人、一体…どうやって…?」 マーチン:「?…マスター、それどういう事?」 マスター:「それは、その…」 0:数時間後(3秒、間を開ける) ブーティー:「マーチン警部…」 マーチン:「ブーティー巡査…無事で何よりよ…」 ブーティー:「すいません…犯人を取り逃して…」 マーチン:「良いのよ…さぁ…」 0:手を差し出す ブーティー:「いえ、手を差し伸ばさなくても…1人で歩けますよ…」 マーチン:「そうじゃないわ」 ブーティー:「え?」 マーチン:「あなたの銃を見せなさい」 ブーティー:「マ…マーチン警部?」 0:3秒空ける ブーティー:「いや…急に何を言い出すんですか?」 マーチン:「これは命令よ?」 ブーティー:「僕の銃を見たからって、何かあるんですか?何も無いですよ?」 マーチン:「再度、あなたに申告するわ…あなたの銃を、見せなさい」 0:ブーティーがマーチンへ銃を構える マーチン:「そう…」 ブーティー:「マーチン警部、あなたが見たがっていた「俺の銃」ですよ?」 マーチン:「その銃を地面に置いて、こっちへ転がしなさい?」 ブーティー:「いちいち注文の多い女だ…」 マーチン:「さぁ、早く」 ブーティー:「ごちゃごちゃうるせぇんだよぉ!」 マーチン:「ひっ!」 ライアン:「今だ!そいつを取り押さえろ!」 ブーティー:「動くなぁぁぁあ!!」 0:銃声音(無くても大丈夫です) ブーティー:「一歩でも動いてみろ、この女にトリガーを引くぞ」 ライアン:「余計な罪を重ねるな、武器を下ろせ…」 ブーティー:「妹と言い兄貴と言い、ごちゃごちゃうるさい兄妹だなっ!」 ブーティー:「妹が死んで欲しいのか?あぁ?」 ライアン:「黙って武器を下ろせ!!」 0:銃声音(無くても大丈夫です) ブーティー:「うっ!?」 マーチン:「!?」 ライアン:「…上の連中が怖くて、妹が守れるか」 ブーティー:「っ…俺に発砲したこと…後悔させてやる…」 ライアン:「好きにしな」 ブーティー:「っ…ここで捕まってたまるかよ!」 マーチン:「逃げるな!!」 ライアン:「逃すな!捕まえろ!!」 0:  ブーティー:「警察なんてものは、ただの烏合の衆に過ぎないから…ね?」 0:銃声音(無くても大丈夫です) ブーティー:「くっ…」 リフレクター:「こっから、計画はどうするんだ…」 ブーティー:「俺は今から迎えに来るマーチン警部を待つ、リフはアジトへ戻れ。暫くは活動を自粛する」 リフレクター:「っ…だから言ったんだ、活発すぎるって」 ブーティー:「何だと」 リフレクター:「活発になれば、必ずタガが外れる…もう少し冷静に動いてれば、上手くいくものがそのまま上手くいっていたのに…」 ブーティー:「頭の悪い単細胞な女が何言ってやがる!!」 リフレクター:「(舌打ち)…あぁ?」 ブーティー:「計画変更だ、そのまま警察に帰って…アジトの場所を匿名の情報として吐いてやる。パパの権限なら、署内総員を動かせられるからな?」 リフレクター:「地に堕ちたな…好きにしろ」 0:  ブーティー:「ここで捕まってたまるかよ…」 ブーティー:「烏合の衆のクセに…勘繰りやがって…」 カウ:「よぉ…よくもまぁ、人の名前で大暴れしてくれたな?」 ブーティー:「あ?…お前は?」 カウ:「あぁ、お察しの通りだ。俺は無差別に殺さないし、警察に予告状を書く程、その場しのぎのお調子者ではない」 カウ:「この雪辱、どう果たしてくれようか?」 ブーティー:「まさか、「幻の殺し屋」に出会えるとはな…」 マーチン:「ブーティー巡査…見つけたわ…」 ブーティー:「マーチン警部…この優先順位、分かりますよね?」 マーチン:「えぇ、トップシークレットを捕まえるのが優先…」 カウ:「…これは計算外だな」 ブーティー:「そうですよ…今はあの男が優先でしょう…」 マーチン:「サイレントキラー…」 カウ:「あぁ…なんだ?」 マーチン:「まさか、あなたがサイレントキラーとして、かつ小説家として自叙本を出してたなんてね…」 マーチン:「予告状よりも憎たらしいわ…」 カウ:「そりゃどうも」 マーチン:「だけど、私の知っているサイレントキラーは、無差別に殺さず、重罪者を裁いている」 マーチン:「それも、我々が捕まえるのに手こずっているトップシークレットを狙っている」 カウ:「まぁ…」 マーチン:「いろいろ聞きたい事は山ほどある…けど、まさか貴方みたいな人がサイレントキラーだったんだという衝撃が大きいわね」 カウ:「おいおい、俺はあらかじめ匂わせたはずだぜ?」 マーチン:「匂…わせ…た?」 0:マーチンの回想 カウ:「もし、サイレントキラーが存在するとしたら?」 カウ:「警察内部で極秘にしているはずだ、サイレントキラーは「幻の殺し屋」では無く、実際に存在している真実が…」 0:  マーチン:「まさか…」 カウ:「思い出したかい?」 マーチン:「でも、あなたみたいに地味な人が派手な事やるとは思わないんじゃない?」 カウ:「おやおや、警察官にしては頭が堅いじゃないか?」 マーチン:「っ……」 カウ:「そういう固定概念こそ、捜査を狂わす原因だ…覚えておけ」 マーチン:「これは、1本やられたわね」 ブーティー:「マーチン警部、何をベラベラと…早く捕まえましょうよ?」 マーチン:「えぇ、お喋りはこれで終わりにするわ…」 マーチン:「サイレントキラー」 カウ:「捕まえるかい?」 マーチン:「いいえ?」 マーチン:「聞いてくれるかしら?私のお願いを」 カウ:「何なりと」 ブーティー:「あんた…何を企んでいやがる…」 マーチン:「ニセモノのサイレントキラーに天誅を下して欲しいの」 カウ:「ほぉ…」 ブーティー:「何だと…撤回しろ、マーチン警部!じゃないと、パパに言いつけてやるからな」 マーチン:「あんた、さっきから「パパ」「パパ」うるさいのよ…」 ブーティー:「使える権限は使わないとな…」 マーチン:「じゃあ私も使わせてもらうよ、「警視総監の娘」として…」 カウ:「(出来れば口笛で)ヒュー」 マーチン:「使える権限は使わないと…ね?」 カウ:「あんたの依頼、承知したよ…」 0:カウ、ブーティーに指鉄砲を向ける。 ブーティー:「サイレントキラー、ふざけているのか?」 カウ:「あんたを殺す依頼なんてな、この女警察官で3人目だ…」 カウ:「1人は女警察官、1人はあんたに殺された指名手配犯、そして1人は…」 0:3秒、間を開ける。 ブーティー:「っ…あいつめ、あいつも殺せ!あいつも…地獄へ道連れだぁ!」 カウ:「バーン…」 0:  0:ブーティーからの電話 マーチン:「もしもし…ブーティー巡査?…え、撃たれた!?」 ブーティー:「えぇ、犯人が急に運転手を撃って、その後に僕が肩を撃たれました…犯人、逃げられました…」 マーチン:「んで、あなたは今どこ?…分かったわ、そっちに向かうわ」 0:電話を切る ライアン:「何があった?」 マーチン:「今さっき、容疑者を連行したパトカーに同乗した運転手の警察官と…ブーティー巡査が撃たれた」 ライアン:「あの容疑者にか…?」 マーチン:「えぇ、そうよ…あの犯人、ここを襲撃したり、またしては警察官を撃ったり…何が狙いなのかしら?」 マスター:「あの犯人、一体…どうやって…?」 マーチン:「?…マスター、それどういう事?」 マスター:「それは、その…」 0:マスター、リフレクターの銃を取り出す。 マスター:「あの容疑者が置いていっていた物だ」 ライアン:「?…銃?」 マスター:「あぁ」 マーチン:「こ…これとさっきの電話に、何が関係あるのよ?」 マスター:「マーチン君も見ただろう?あの容疑者の服装を?」 マーチン:「えぇ、ボディラインがしっかり分かる服装だったわね」 マスター:「そのボディラインがしっかりしたところに、胸以外の膨らみはあったかい?」 マーチン:「いえ、ちゃんとあたしがボディチェックして武器が他に無いか、徹底的に触っ…て…」 ライアン:「まさか…あの容疑者は、丸腰?」 カウ:「やっと分かったか」 マーチン:「…いえ、参考までに。でも、警察組織に犯罪者なんていないわよ?だって、ブーティー巡査もまた警察よ?」 ライアン:「一刻を争う、俺は応援を呼ぶ。俺の車に乗れ、マーチン」 0:扉が閉まる。 マスター:「行ってしまわれましたな」 カウ:「あぁ、そうだな…」 マスター:「これからどうします?」 カウ:「マスター、決まってるだろ?俺らの名前を汚された雪辱果たしと行こう」 マスター:「やれやれ、また店じまいですか…最近これだから、売上が悪いこと悪いこと…」 カウ:「この店なんか、カモフラージュでやってるも同然だろう?それか趣味か?」 マスター:「君からの仕事が舞い込まない限り、このお店が本業でね?」 カウ:「それは失敬」 マスター:「さぁ、準備をしよう。君は本来の立場である僕の表舞台…あっ、いや…サイレントキラーの表舞台の役割を果たしてくれ。君に手は汚させない、僕が汚れよう…」 カウ:「仰せのままに」 マスター:「手口はいつものでいいのかな?」 カウ:「あぁ、ニセのサイレントキラーには、本物の手口を見せないと…ね?」 マスター:「また1つ、良い小説のネタが出来そうだね?どうせ、これも君にとっては「取材」だろ?」 カウ:「あぁ」 0:間を空ける マーチン:ブーティーが亡くなって数日後。とあるプレハブ小屋で…共犯であるリフレクターの遺体が見つかった。 カウ:「よぉ、依頼主」 リフレクター:「な…何しに来たんだ…」 カウ:「嫌だなぁ、きちんと依頼を片付けたんだから、その報告だよ…」 リフレクター:「あ…あの時!あのBarに居た小説家の客!?」 カウ:「ご名答、あぁそうか!電話で依頼を受けたから、直接会うのは初めてか!」 リフレクター:「まさか…あんたが本物のサイレントキラーだったとはな…」 カウ:「そう…ところで、サイレントキラーの遣いと名乗っていたね?その君に問うが、サイレントキラーの手口は何だろうか?」 リフレクター:「サイレントキラーの手口は知らないが、サイレントキラー遣いとしての手口なら…あるぜ?」 カウ:「おや、銃口を俺に向けるという事は、今から味わえるのかい?」 リフレクター:「あぁ、待たずとも…すぐに味わせてやるさ」 0:銃声音(無くても大丈夫です) リフレクター:「ぐあぁぁぁ!!」 カウ:「あっ、ごめん!それ全部こっちのセリフだ!正しくは…「本物の手口を味わせてやるよ」だったね」 リフレクター:「ま…まさか…ってかお前、さっきどっから撃った!銃も向けてないのに…撃てる訳ないだろ…」 カウ:「どっから?…さぁ?」 リフレクター:「あんた…本当は何者なんだよ…」 カウ:「何者?…さぁ?」 リフレクター:「…くそ、嫌な殺され方だ…」 0:間を空ける マーチン:「急に呼び出して申し訳ないね」 カウ:「まぁ、ちょうど暇してたとこだ」 マーチン:「そう、では本題ね…今から十年も前、数ある事件から何件かは、サイレントキラーが関わっている事件だった。しかも、今のサイレントキラーと手口は一緒」 カウ:「何が言いたい?」 マーチン:「このサイレントキラーが関わっていた約十年前の犯行、これもあなた?」 カウ:「だとしたらどうする、ここで捕まえるか?」 マーチン:「いえ、捕まえはしないわ」 カウ:「そいつは結構。それと、1つ聞きたい事がある」 マーチン:「何かしら?」 カウ:「何故、俺らに近づく?捕まえる気か?」 マーチン:「さぁね、捕まえる気は無いわよ」 カウ:「謎だらけなんだ、ニセモノのサイレントキラー2人の依頼…あんた、何を企んでいる?」 マーチン:「じゃあ、あたしは業務に戻るわ」 カウ:「(舌打ち)」 0:間を空ける マスター:「いらっしゃい、何だあなたですか」 カウ:「何だとは何だ、何だとは」 マスター:「いや失敬」 カウ:「ミルクを」 マスター:「おや?せっかくいいネタを提供したつもりですが…まだ何か執筆に足りない物でも?」 カウ:「いや、ちょっとだけ不透明な事があってな?」 マスター:「…聞いてみたいものですね」 カウ:「マーチンという彼女は事件でサイレントキラーを追っていたはずだ。なのに、今回のニセサイレントキラー2人を殺す依頼をしたのは彼女」 マスター:「そのマーチンさんという彼女が何か…?」 カウ:「普通、犯人として今まで追っていた殺し屋に、依頼をするか?」 マスター:「さぁね、でも裏はあるかもしれない…そう疑っているんだろ?」 カウ:「いずれ、あいつは裏切るだろうさ」 マスター:「まぁ、あの子も警察署内では1番の検挙率高いらしいよ」 カウ:「…余計に怪しいぜ」 マスター:「はい、ミルク。これで落ち着きな?」 カウ:「ありがとう、マスター」 マスター:「マーチンという彼女はきっと、警察署内の「ユースティティア」なのかもしれないね」 カウ:「ユースティティア?何だそれ」 マスター:「おや、知らないかい?片手に天秤を持っている、ギリシア神話に出てきた正義の女神さ」 カウ:「警察署内高検挙率1番からの正義の裏切り…ねぇ」 マスター:「これこそ、ユースティティアの崩壊…」 0:間を空ける(数日後) マーチン:「兄さん!」 ライアン:「おや、マーチンじゃないか!」 マーチン:「聞いたよ、何で警察を辞めたりするのさ…」 ライアン:「あはは、少し憧れだった探偵業をやってみようと…ね!」 マーチン:「もぉ…兄さんの馬鹿…」 ライアン:「マーチン、少し耳を貸せ…」 マーチン:「え…」 ライアン:「アムステルダム警視長が辞任した今、この警察は混乱している…」 マーチン:「確かに、警察の中に凶悪犯が潜んでて、挙句には警視長が揉み消していた…そりゃ混乱するよね…」 ライアン:「あぁもしかしたら、身近に居るかもしれない…」 ライアン:「BARのマスターだったり…とか」 マーチン:「兄さん…?」 ライアン:「あはは、冗談さ…じゃあな!」 マーチン:「…サイレントキラーがバレるのも、時間の問題かもね」 ライアン:「ふん…悪いな、マーチン。俺は辞めてないさ…「表面上の辞職」扱いだよ、マスターがサイレントキラーである決定的な証拠を掴むまで、公安課に異動さ」 ライアン:「マーチンには内緒にしとけって…親父も悪い奴だ…」 マーチン:「時間の問題なら…早めに消しておかないと…ってあれ、君は…あぁ、今日からここに赴任してきた新人巡査だったね!」 マーチン:「初めまして、階級は警部のマーチンよ…よろしくね、ミミ巡査」 0:間を空ける カウ:目に映るものは現(うつつ)か。時に目に映らないモノは幻(げん)か。その人間は殺(あや)めるべき存在だったか否(いな)か。そして、目の前の殺し屋は本当に殺し屋だったのか。幻(げん)か現(うつつ)か。それを見極めるには程遠いものである。私の名はカウ。サイレントキラーの表舞台だけに立つI can’t killer(アイ キャント キラー)である。ではまた、何処かで。

カウ:「暗さが最も増す時に、人々は星を見る。」思想家 ラルフ・ウォルドー・エマソン 0:  カウ:『ユースティティアの崩壊』 0:  ブーティー:「残念だったな、警察かと思っただろう?違うな…確かに俺は警察官だ。でも俺は、他の警察官とは違うのさ」 0:銃声音(無くても大丈夫です) ブーティー:「俺はブーティー・アムステルダム、又の名を…サイレントキラー」 ブーティー:「あんたに正しい裁きある天誅を、ジグソー・コンシェルジュ」 0:  マーチン:「ブーティー君」 ブーティー:「あっ、マーチン警部!お疲れ様です!」 マーチン:「お疲れ様、配属先には少しは慣れたかしら?」 ブーティー:「えぇ、まぁ…いろいろと、身も心も…いろいろと鍛えられますが…」 マーチン:「だろうね、ブーティー君の配属されてる捜査一課は…ほら…」 ブーティー:「肉体美アピール激しいですよね…」 マーチン:「まぁ…うん…ああいう風にはならない様にね」 ブーティー:「精進いたします」 マーチン:「それにしても、あなたには大変な荷物というプレッシャーを背負っているじゃないか」 ブーティー:「荷物というプレッシャー…?」 マーチン:「警視長の息子だから、いろいろと他方から期待されてたり…」 ブーティー:「いえ、僕は自分の力で警察官になったと思っているので…例え、父が警視長であろうとも、自分の信ずるモノは、譲れない正義だけですから」 マーチン:「家庭を顧みなかった父親が…そんなに憎いかしら?」 ブーティー:「えぇ、母が亡くなったのも…父が殺したも同然…」 マーチン:「…そっか」 ブーティー:「(呟くように)この手で…殺してやりたい…」 0:  マスター:「この手で殺してやりたい…か…」 マーチン:「そう、あたしに聞こえるか聞こえないかのボリュームで言ってたんだよ。そのブーティー君ね、とても大人しく物静かな子なのよ。でもそんな子がボソッと物騒な事を…ねぇ…」 マスター:「うーん、父親が警察官とかなら…そうなるのかな?」 マーチン:「そういうもんかしらね…」 マーチン:「私も同じ家庭環境だったけど、逆に私は警察官である父親の背中を追いかけて、今に至るからね…」 マーチン:「若い子の気持ちは、そう理解出来ないものね」 マスター:「そうだね…若い子は刺激と葛藤を蓄積すればする程、シワの数が増えるって言うからね」 マーチン:「あら、あたしも増えちゃうかな…」 マスター:「あなたは…心配ないんじゃないかな?」 マーチン:「あらマスター、ありがとう!でもさっきの話を聞いた上で言われると、素直に受け取れきれないわ…」 マスター:「おや、余計な事を言いましたかな?」 0:マーチンの電話が鳴る マーチン:「マスター、ちょっと失礼」 マスター:「お構いなく」 マーチン:「私だ、えぇ、すぐ向かうわ」 0:電話を切る マーチン:「…恐ろしいわね」 マスター:「おかえり、その形相は事件かな?」 マーチン:「えぇ、普通の事件なら別に何とも思わないんだけどね…マスター、「サイレントキラー」って知ってる?」 マスター:「…人並みにしか知りませんが、「謎の死」というやり方がお得意な殺し屋ですよね?」 マーチン:「そう。だけど、このサイレントキラーのやり方は無差別に銃弾で仕留めている。その上、警察には予告状が届く…」 マスター:「複数いるように見せていますな…まるで、「捕まえられるものなら捕まえてみろ」と言わんばかり…」 マーチン:「はぁ…せっかく呑みたい気分だったのにね、この事件の臨時招集で潰れるなんて…日頃の行いが悪いみたいね。ご馳走さま、マスター」 マスター:「行ってらっしゃい」 0:扉が閉まる マスター:「予告状…ねぇ」 0:時は遡り、数時間前 リフレクター:「ブーティー」 ブーティー:「ん?…何だリフ」 リフレクター:「1つ聞きたい」 ブーティー:「うん?」 リフレクター:「少しばかり活発過ぎないか?」 ブーティー:「何故、そう思う?」 リフレクター:「いや、でも…あまり動き過ぎると、怪しまれるぞ?」 ブーティー:「リフ、君は肝っ玉の小さい女だねぇ」 リフレクター:「おい」 ブーティー:「失礼、君に「女」のワードチョイスは禁句(タブー)だったね」 リフレクター:「(舌打ち)だが…もしバレた時の策はあるのかい?」 ブーティー:「ある訳がない…俺は、警視長の息子だからだ」 リフレクター:「うちのパパが揉み消してくれる…ってか?」 ブーティー:「その通り。仮に俺が捕まったとしても、すぐに釈放し、無かった事になる」 ブーティー:「何故なら、パパ自身警視長としての立場が揺らぐからさ。警視長の息子が捕まってみろ?メディアに取り上げられてみろ?」 ブーティー:「揺らぐぞ…世間も、警視長としての地位も…」 リフレクター:「これだからボンボンは怖ぇや…」 ブーティー:「母さんを苦しめた「警察様のお仕事」という存在にピリオドを打つ。世間をサイレントキラーで暫く騒がせ、その渦中で警察関係者のトップの人間が殺される。その殺した犯人として、誰が最初に候補として挙がる?」 リフレクター:「そ…そりゃ、世間を騒がしてる最中で殺してるんだから…タイムリーにサイレントキラーの名が挙がるんじゃないか?」 ブーティー:「ザッツライト!もちろんサイレントキラーは俺だ。あの幻と化した殺し屋を、模倣しているのは俺なんだよ」 ブーティー:「警察内部の人間がサイレントキラーって、面白くないか、リフ?」 リフレクター:「それはそうだが、今さらながら警察内部に潜るのは…リスクが高くないか?」 ブーティー:「リフ」 リフレクター:「な…何だよ、急に」 ブーティー:「照明が灯った明るい部屋の中心で、ロウソクに火を灯そうじゃないか」 リフレクター:「ブーティー、頭おかしくなったか?」 ブーティー:「おかしくはないさ…火を灯もすだけだ」 0:ロウソクに火が灯る ブーティー:「ほら灯った、リフ」 リフレクター:「灯ったな…だから何だ?」 ブーティー:「この部屋に暗いとこは無いか?」 リフレクター:「笑わせんな、ある訳ないだろ?この部屋には、照明が灯ってるんだぞ?その上、ロウソクも灯ってる。見る限り、暗いとこなんて…」 ブーティー:「あるさ」 リフレクター:「はぁ…ブーティー、揶揄うのもいい加減にしてくれないか?」 ブーティー:「ロウソクは周囲に明かりを灯す。だが、照らしている下部は暗くないか?」 リフレクター:「まぁ、だからなんだ?」 ブーティー:「日本のことわざで、「灯台下暗し」という言葉がある。「身近な出来事には気づきにくい」という意味らしいが、」 ブーティー:「それと重ねて言うならば、警察組織に犯人が居ても、皆が皆、外に居ると言えば外を疑いたがる。身内には一切、疑いの目を掛けないのだよ」 リフレクター:「改めて君という存在が怖くなったよ」 ブーティー:「それに、警察の中じゃ俺は物静かなイメージを植え付けてある。そんなやつが大胆な事をすると思うか?」 リフレクター:「いや…思わないというか、思えないな」 ブーティー:「我ながら、素晴らしい役者だと思うよ」 リフレクター:「さすがだな」 リフレクター:「そろそろ送った予告状を読んで貰えた頃じゃないかな…?」 ブーティー:「そうかもな、そして緊急招集の電話が鳴る…」 0:ブーティーの電話が鳴る リフレクター:「ビンゴ!ナイスタイミング!」 ブーティー:「しっ!静かに…(咳払い)…もしもし?はい…はい…えっ、あぁはい…分かりました…では、後ほど…」 0:電話を切る ブーティー:「あの女警部からの招集だ」 リフレクター:「あの色っぽい警部か?」 ブーティー:「いつかは手玉に取ってやりたいものだな!じゃ、俺は行くぜ」 0:  マーチン:「ブーティー君」 ブーティー:「お疲れ様です」 マーチン:「夜遅くに申し訳ないね。だがこれも、警察組織の宿命だ」 ブーティー:「存じ上げています」 マーチン:「早速だがブーティー君、君はグロテスクな映画は好き?」 ブーティー:「?…どういう事でしょう」 マーチン:「溺死の仏さんが打ち上がったのさ」 ブーティー:「で…溺死…ですか…」 マーチン:「死後約2日といったところらしい」 ブーティー:「んで、その仏さんは?」 マーチン:「目の前だよ」 0:マーチン、覆われたシートを剥ぐ。 ブーティー:「うぷっ…」 マーチン:「あぁ、吐くなら海でね」 ブーティー:「失礼致します…うっ…」 マーチン:「あーぁ、盛大に吐いてるねぇ…新米のマーライオンはそうじゃなくちゃ」 マーチン:でもこの溺死体…何か引っ掛かるわね… 0:  カウ:「マスター、急に呼び出してどうした?」 マスター:「ここんとこ最近、サイレントキラーの模倣犯がいる」 カウ:「あぁ、名前だけだがな。暫く各メディアもサイレントキラーで持ち切りだ。ネタには困らねぇだろな」 マスター:「そんな呑気な事言ってる場合か?」 カウ:「まぁ…だが幸い、サイレントキラーの表舞台に立つ俺の顔はあまり少数にしか割れてない」 マスター:「あまり過信するな。少数は少数でも、見られている事は確かだ」 カウ:「…確かに。暫くは、そう気楽に街も歩けなくなるな」 マスター:「少しの期間、身を潜めていた方が良いのかもしれない」 カウ:「そのつもりでいよう、今のところは…」 0:扉が開く マスター:「…話は終わりだ、いらっしゃい」 リフレクター:「空いてるところで良いか?」 マスター:「えぇ、どこでも」 カウ:「マスター、ミルクを貰えないか?」 マスター:「ミルクね、はいよ」 リフレクター:「BARでミルクか…あんた、変わってるな?」 カウ:「いや、単なるそういう気分なだけさ」 マスター:「この人ね、小説家なんだよ?」 リフレクター:「へぇ…あんた、何を書いてんだ?」 カウ:「…これさ」 リフレクター:「!?…この小説、あのサイレントキラーが主人公の有名な小説じゃないか?」 カウ:「まぁそうだが、今暫くはあまり大きな声で言えないけどな」 リフレクター:「全く…物騒な世の中になっちまったな。今お騒がせなサイレントキラーによって、売れ行き悪いんだな?」 カウ:「まぁ…そんなところかな」 マスター:「ところでお客さん、何飲まれます?」 リフレクター:「そうだな…んじゃ、そのボトルを貰おうか?」 マスター:「ボトル?…どのボトルだい?」 リフレクター:「そのボトルだよ…そうそう、そのボトル」 マスター:「?…このボトルかい?」 カウ:マスターが完全にボトルを取ろうと後ろを向いた時、男は背を向けたマスターへ銃を向けた。 カウ:「マ…マスター!!」 0:銃声音(無くても大丈夫です) リフレクター:「うあぁ!」 マスター:「ったく…商品のボトルが1本、ダメになっちゃったね。これは高く付いちゃうよ?」 リフレクター:「(苦し紛れに)あんた…何者だ…?」 マスター:「そこら辺に居るマスターだが?」 リフレクター:「(苦し紛れに)嘘をつけ…そこら辺のマスターが…後ろ向きで…ノールックで銃なんか撃てるか…」 マスター:「何故、僕を狙う?」 リフレクター:「(苦し紛れに)ふっ…教えらんねぇな…」 0:銃声音(無くても大丈夫です) マスター:「質問に答えてもらおう、何故…僕を狙うんだ?」 リフレクター:「その前に、あんた…何者なんだよ…」 マスター:「なるほど…詳細を知らされてない状態で依頼を受けたんだな?」 リフレクター:「(苦し紛れに)あぁ、だが依頼じゃない。俺は殺し屋の遣いだ。あのサイレントキラーの遣いだ!」 マスター:「続けろ」 リフレクター:「(苦し紛れに)それだけだ、俺はサイレントキラーからの命(めい)を預かり、実行したまでだ」 カウ:「…愚かな」 マスター:「美しくないな…」 リフレクター:「(苦し紛れに)残念だったな、そこの小説家さんよ。売れ行きが悪いのは…俺達のせいみたいだ」 カウ:「…もうじきに警察が来る」 リフレクター:「あぁ?脅しのつもりか?」 カウ:「あぁ、脅していると言われればな?」 リフレクター:「舐めてるのか?」 マスター:「あぁ」 リフレクター:「っ…痛い目見てぇのか!コラ!」 0:銃口をマスターへ向ける。 マスター:「さっき発砲した硝煙が、まだ残っているな…」 リフレクター:「…これで3度目だ、あんた…本当に何者なんなんだよ…」 0:銃声音(無くても大丈夫です) マスター:「暫く黙ってろ」 0: マーチン:「身元が割れた、名前はジグソー・コンシェルジュ 34歳 男…」 ブーティー:「指名手配犯…ですか」 マーチン:「えぇ、本署もかれこれ12年も追いかけていたのだが…まさか、こんな出会い方をするとはね…」 ブーティー:「まさか、溺死で発見されるとは…自ら身を投げたとか…?」 マーチン:「そこまでの肝っ玉の小ささなら、12年も逃げられないさ…」 ブーティー:「では…何で?」 マーチン:「さぁね、仏さんに聞いてみな?」 ブーティー:「はぁ…」 マーチン:「溺死体に慣れるのも、仕事だよ」 ブーティー:「そうですか…うぷっ!?」 マーチン:「吐くなら海ね」 ブーティー:「すいません、思い出したらつい…」 マーチン:「思い出して吐けるなんて幸せねぇ…」 0:  マスター:「命拾いしたな?」 リフレクター:「あんた…これが脅しのつもりか?」 マスター:「こっちはいつだって、あんたを殺せる…」 リフレクター:「(舌打ち)」 カウ:「さぁ本題だ、マスターを殺せと依頼したのは誰だ?」 リフレクター:「あのなぁ…こう見えても一応、殺し屋をやっているんだ。そんな容易く口割る訳無いだろ?ぺっ」 カウ:「……」 0:カウ、リフレクターの頭上から液体をかける。 リフレクター:「え、あつ、あつ!?熱いってば!!」 カウ:「マスター」 マスター:「あぁ、そういやホットミルクは嫌いだったね、君は」 リフレクター:「お前ら…2人ともグルって訳か?」 カウ:「無駄口を叩くな、依頼主は誰だ?」 リフレクター:「さぁな…」 カウ:「意地でも口を割らないってか?」 リフレクター:「言ってやってもいいさ…サイレントキラーってな?」 カウ:「サイレントキラー…ねぇ?」 リフレクター:「あぁ、俺の前でそう言っていたさ…」 カウ:「なら、僕らはその模倣犯を始末しないと…ね?」 マスター:「まずは、あんたからという訳…ね?」 リフレクター:「待ってくれよ、あんた…いや、あんたら…何者なんだよ…」 0:扉が開く ライアン:「そこまでだ!全員手を挙げろ!」 マスター:「やぁ、ライアン君。いらっしゃい」 ライアン:「あっ、ども…じゃなくて!マスター、どうしたの?」 マスター:「いやいや、思ったより早く来て助かったよ…少しばかり撃たれ損なっただけさ」 ライアン:「その言い回しは初めて聞くけども…それより、無事で良かった」 マスター:「あっ、そこのお客さん」 カウ:「?…俺か?」 マスター:「あたり見回しても、客はあんたしかいないさ。今回はお代はいらないよ」 ライアン:「あんたも無事で良かった」 カウ:「…どうも」 リフレクター:「おい、そこの警察官」 ライアン:「はいはい、両手出して…」 リフレクター:「手錠掛けるのはまだ早いぜ…」 ライアン:「はぁ?」 リフレクター:「こいつらも、人殺しだぁ…殺し屋の稼業を担っている」 ライアン:「ふーん…」 リフレクター:「はっ、終わりだ…お前らも道連れだ?ははっ」 マーチン:「兄さん、遅くなった…」 マスター:「おや、さっきぶりだね?」 マーチン:「マスター、大丈夫?」 マスター:「あぁ、少しばかり撃たれ損なっただけさ」 マーチン:「なかなか聞き慣れない言い回しね?」 マスター:「それ、あんたのお兄さんにも言われたよ」 ライアン:「マーチンお前、溺死体の引き上げに行ってたんじゃ?」 マーチン:「無線でこっちの加勢に加えられたのよ」 ライアン:「そうか…」 リフレクター:「おいおい、俺の話を聞いていたか?こいつらは…」 ライアン:「(遮るように)マーチン、誰か手の空いてる部下はいるか?こいつを連行したい」 リフレクター:「なっ、おいおい」 マスター:「確かその子、「サイレントキラーの遣い」だとか名乗ってたけども?」 マーチン:「サイレントキラー…そういや最近、予告嬢が来るわよね?」 ライアン:「あぁ、それこそ…つい先ほど、うちの署に予告状が届いてね。ここを名指しして、マスターを殺すとか書いてあったけど…見る限り、失敗に終わってるみたいだな」 カウ:「ちなみに、犯人の目星は付いてるのかい?」 マーチン:「分からないわ。でも、サイレントキラーをモデルにしている小説の模倣犯って事だけは確かよ」 カウ:「悪かったな、それを書いているのは俺だ」 ライアン:「おや、あの小説の作者?…でも、あくまでサイレントキラーはフィクション。あなたを逮捕なんてしない…」 カウ:「もし、サイレントキラーが存在するとしたら?」 マーチン:「な、何ですって!?」 ライアン:「そいつは悪い冗談だ…」 カウ:「警察内部で極秘にしているはずだ、サイレントキラーは「幻の殺し屋」では無く、実際に存在している真実が…」 マーチン:「じょ…冗談言わないで頂戴?あっ、そうだ…ブーティー巡査、その容疑者を署まで」 ブーティー:「はい、警部」 リフレクター:「お、おい…」 ブーティー:「黙ってろ」 リフレクター:「っ…あぁ?」 マスター:「……?」 0:パトカー内にて ブーティー:「…やってくれたな」 リフレクター:「すまない、だが…」 ブーティー:「言い訳なんか聞きたくもない…(運転手に話しかけるように)そこの君、この先を曲がったら広い路肩に出る、そこで止まってくれ」 0:銃声音(無くても大丈夫です) リフレクター:「ヒュー、大胆だねぇ。運転手を撃つとか」 ブーティー:「例えお前が、あのマスターを殺そうが殺さないが、俺の中では筋書き通りに事は進む。何故なら、これで警察にサイレントキラーはいないと皆が思い込む」 ブーティー:「そして、周りのサイレントキラーの捜査線上に2度と、俺の名前は出ない。同じ場所に、同じ時間に居た人間が犯人だとは思い込まないからな」 ブーティー:「これでサイレントキラーの正体は闇に葬られた」 リフレクター:「……」 0:ブーティー、自分の肩に銃口を当てる。 ブーティー:「警察なんてものは、ただの烏合の衆に過ぎないから…ね?」 0:銃声音(無くても大丈夫です) 0:  0:ブーティーからの電話 マーチン:「もしもし…ブーティー巡査?…え、撃たれた!?」 ブーティー:「えぇ、犯人が急に運転手を撃って、その後に僕が肩を撃たれました…犯人、逃げられました…」 マーチン:「んで、あなたは今どこ?…分かったわ、そっちに向かうわ」 0:電話を切る ライアン:「何があった?」 マーチン:「今さっき、容疑者を連行したパトカーに同乗した運転手の警察官と…ブーティー巡査が撃たれた」 ライアン:「あの容疑者にか…?」 マーチン:「えぇ、そうよ…あの犯人、ここを襲撃したり、またしては警察官を撃ったり…何が狙いなのかしら?」 マスター:「あの犯人、一体…どうやって…?」 マーチン:「?…マスター、それどういう事?」 マスター:「それは、その…」 0:数時間後(3秒、間を開ける) ブーティー:「マーチン警部…」 マーチン:「ブーティー巡査…無事で何よりよ…」 ブーティー:「すいません…犯人を取り逃して…」 マーチン:「良いのよ…さぁ…」 0:手を差し出す ブーティー:「いえ、手を差し伸ばさなくても…1人で歩けますよ…」 マーチン:「そうじゃないわ」 ブーティー:「え?」 マーチン:「あなたの銃を見せなさい」 ブーティー:「マ…マーチン警部?」 0:3秒空ける ブーティー:「いや…急に何を言い出すんですか?」 マーチン:「これは命令よ?」 ブーティー:「僕の銃を見たからって、何かあるんですか?何も無いですよ?」 マーチン:「再度、あなたに申告するわ…あなたの銃を、見せなさい」 0:ブーティーがマーチンへ銃を構える マーチン:「そう…」 ブーティー:「マーチン警部、あなたが見たがっていた「俺の銃」ですよ?」 マーチン:「その銃を地面に置いて、こっちへ転がしなさい?」 ブーティー:「いちいち注文の多い女だ…」 マーチン:「さぁ、早く」 ブーティー:「ごちゃごちゃうるせぇんだよぉ!」 マーチン:「ひっ!」 ライアン:「今だ!そいつを取り押さえろ!」 ブーティー:「動くなぁぁぁあ!!」 0:銃声音(無くても大丈夫です) ブーティー:「一歩でも動いてみろ、この女にトリガーを引くぞ」 ライアン:「余計な罪を重ねるな、武器を下ろせ…」 ブーティー:「妹と言い兄貴と言い、ごちゃごちゃうるさい兄妹だなっ!」 ブーティー:「妹が死んで欲しいのか?あぁ?」 ライアン:「黙って武器を下ろせ!!」 0:銃声音(無くても大丈夫です) ブーティー:「うっ!?」 マーチン:「!?」 ライアン:「…上の連中が怖くて、妹が守れるか」 ブーティー:「っ…俺に発砲したこと…後悔させてやる…」 ライアン:「好きにしな」 ブーティー:「っ…ここで捕まってたまるかよ!」 マーチン:「逃げるな!!」 ライアン:「逃すな!捕まえろ!!」 0:  ブーティー:「警察なんてものは、ただの烏合の衆に過ぎないから…ね?」 0:銃声音(無くても大丈夫です) ブーティー:「くっ…」 リフレクター:「こっから、計画はどうするんだ…」 ブーティー:「俺は今から迎えに来るマーチン警部を待つ、リフはアジトへ戻れ。暫くは活動を自粛する」 リフレクター:「っ…だから言ったんだ、活発すぎるって」 ブーティー:「何だと」 リフレクター:「活発になれば、必ずタガが外れる…もう少し冷静に動いてれば、上手くいくものがそのまま上手くいっていたのに…」 ブーティー:「頭の悪い単細胞な女が何言ってやがる!!」 リフレクター:「(舌打ち)…あぁ?」 ブーティー:「計画変更だ、そのまま警察に帰って…アジトの場所を匿名の情報として吐いてやる。パパの権限なら、署内総員を動かせられるからな?」 リフレクター:「地に堕ちたな…好きにしろ」 0:  ブーティー:「ここで捕まってたまるかよ…」 ブーティー:「烏合の衆のクセに…勘繰りやがって…」 カウ:「よぉ…よくもまぁ、人の名前で大暴れしてくれたな?」 ブーティー:「あ?…お前は?」 カウ:「あぁ、お察しの通りだ。俺は無差別に殺さないし、警察に予告状を書く程、その場しのぎのお調子者ではない」 カウ:「この雪辱、どう果たしてくれようか?」 ブーティー:「まさか、「幻の殺し屋」に出会えるとはな…」 マーチン:「ブーティー巡査…見つけたわ…」 ブーティー:「マーチン警部…この優先順位、分かりますよね?」 マーチン:「えぇ、トップシークレットを捕まえるのが優先…」 カウ:「…これは計算外だな」 ブーティー:「そうですよ…今はあの男が優先でしょう…」 マーチン:「サイレントキラー…」 カウ:「あぁ…なんだ?」 マーチン:「まさか、あなたがサイレントキラーとして、かつ小説家として自叙本を出してたなんてね…」 マーチン:「予告状よりも憎たらしいわ…」 カウ:「そりゃどうも」 マーチン:「だけど、私の知っているサイレントキラーは、無差別に殺さず、重罪者を裁いている」 マーチン:「それも、我々が捕まえるのに手こずっているトップシークレットを狙っている」 カウ:「まぁ…」 マーチン:「いろいろ聞きたい事は山ほどある…けど、まさか貴方みたいな人がサイレントキラーだったんだという衝撃が大きいわね」 カウ:「おいおい、俺はあらかじめ匂わせたはずだぜ?」 マーチン:「匂…わせ…た?」 0:マーチンの回想 カウ:「もし、サイレントキラーが存在するとしたら?」 カウ:「警察内部で極秘にしているはずだ、サイレントキラーは「幻の殺し屋」では無く、実際に存在している真実が…」 0:  マーチン:「まさか…」 カウ:「思い出したかい?」 マーチン:「でも、あなたみたいに地味な人が派手な事やるとは思わないんじゃない?」 カウ:「おやおや、警察官にしては頭が堅いじゃないか?」 マーチン:「っ……」 カウ:「そういう固定概念こそ、捜査を狂わす原因だ…覚えておけ」 マーチン:「これは、1本やられたわね」 ブーティー:「マーチン警部、何をベラベラと…早く捕まえましょうよ?」 マーチン:「えぇ、お喋りはこれで終わりにするわ…」 マーチン:「サイレントキラー」 カウ:「捕まえるかい?」 マーチン:「いいえ?」 マーチン:「聞いてくれるかしら?私のお願いを」 カウ:「何なりと」 ブーティー:「あんた…何を企んでいやがる…」 マーチン:「ニセモノのサイレントキラーに天誅を下して欲しいの」 カウ:「ほぉ…」 ブーティー:「何だと…撤回しろ、マーチン警部!じゃないと、パパに言いつけてやるからな」 マーチン:「あんた、さっきから「パパ」「パパ」うるさいのよ…」 ブーティー:「使える権限は使わないとな…」 マーチン:「じゃあ私も使わせてもらうよ、「警視総監の娘」として…」 カウ:「(出来れば口笛で)ヒュー」 マーチン:「使える権限は使わないと…ね?」 カウ:「あんたの依頼、承知したよ…」 0:カウ、ブーティーに指鉄砲を向ける。 ブーティー:「サイレントキラー、ふざけているのか?」 カウ:「あんたを殺す依頼なんてな、この女警察官で3人目だ…」 カウ:「1人は女警察官、1人はあんたに殺された指名手配犯、そして1人は…」 0:3秒、間を開ける。 ブーティー:「っ…あいつめ、あいつも殺せ!あいつも…地獄へ道連れだぁ!」 カウ:「バーン…」 0:  0:ブーティーからの電話 マーチン:「もしもし…ブーティー巡査?…え、撃たれた!?」 ブーティー:「えぇ、犯人が急に運転手を撃って、その後に僕が肩を撃たれました…犯人、逃げられました…」 マーチン:「んで、あなたは今どこ?…分かったわ、そっちに向かうわ」 0:電話を切る ライアン:「何があった?」 マーチン:「今さっき、容疑者を連行したパトカーに同乗した運転手の警察官と…ブーティー巡査が撃たれた」 ライアン:「あの容疑者にか…?」 マーチン:「えぇ、そうよ…あの犯人、ここを襲撃したり、またしては警察官を撃ったり…何が狙いなのかしら?」 マスター:「あの犯人、一体…どうやって…?」 マーチン:「?…マスター、それどういう事?」 マスター:「それは、その…」 0:マスター、リフレクターの銃を取り出す。 マスター:「あの容疑者が置いていっていた物だ」 ライアン:「?…銃?」 マスター:「あぁ」 マーチン:「こ…これとさっきの電話に、何が関係あるのよ?」 マスター:「マーチン君も見ただろう?あの容疑者の服装を?」 マーチン:「えぇ、ボディラインがしっかり分かる服装だったわね」 マスター:「そのボディラインがしっかりしたところに、胸以外の膨らみはあったかい?」 マーチン:「いえ、ちゃんとあたしがボディチェックして武器が他に無いか、徹底的に触っ…て…」 ライアン:「まさか…あの容疑者は、丸腰?」 カウ:「やっと分かったか」 マーチン:「…いえ、参考までに。でも、警察組織に犯罪者なんていないわよ?だって、ブーティー巡査もまた警察よ?」 ライアン:「一刻を争う、俺は応援を呼ぶ。俺の車に乗れ、マーチン」 0:扉が閉まる。 マスター:「行ってしまわれましたな」 カウ:「あぁ、そうだな…」 マスター:「これからどうします?」 カウ:「マスター、決まってるだろ?俺らの名前を汚された雪辱果たしと行こう」 マスター:「やれやれ、また店じまいですか…最近これだから、売上が悪いこと悪いこと…」 カウ:「この店なんか、カモフラージュでやってるも同然だろう?それか趣味か?」 マスター:「君からの仕事が舞い込まない限り、このお店が本業でね?」 カウ:「それは失敬」 マスター:「さぁ、準備をしよう。君は本来の立場である僕の表舞台…あっ、いや…サイレントキラーの表舞台の役割を果たしてくれ。君に手は汚させない、僕が汚れよう…」 カウ:「仰せのままに」 マスター:「手口はいつものでいいのかな?」 カウ:「あぁ、ニセのサイレントキラーには、本物の手口を見せないと…ね?」 マスター:「また1つ、良い小説のネタが出来そうだね?どうせ、これも君にとっては「取材」だろ?」 カウ:「あぁ」 0:間を空ける マーチン:ブーティーが亡くなって数日後。とあるプレハブ小屋で…共犯であるリフレクターの遺体が見つかった。 カウ:「よぉ、依頼主」 リフレクター:「な…何しに来たんだ…」 カウ:「嫌だなぁ、きちんと依頼を片付けたんだから、その報告だよ…」 リフレクター:「あ…あの時!あのBarに居た小説家の客!?」 カウ:「ご名答、あぁそうか!電話で依頼を受けたから、直接会うのは初めてか!」 リフレクター:「まさか…あんたが本物のサイレントキラーだったとはな…」 カウ:「そう…ところで、サイレントキラーの遣いと名乗っていたね?その君に問うが、サイレントキラーの手口は何だろうか?」 リフレクター:「サイレントキラーの手口は知らないが、サイレントキラー遣いとしての手口なら…あるぜ?」 カウ:「おや、銃口を俺に向けるという事は、今から味わえるのかい?」 リフレクター:「あぁ、待たずとも…すぐに味わせてやるさ」 0:銃声音(無くても大丈夫です) リフレクター:「ぐあぁぁぁ!!」 カウ:「あっ、ごめん!それ全部こっちのセリフだ!正しくは…「本物の手口を味わせてやるよ」だったね」 リフレクター:「ま…まさか…ってかお前、さっきどっから撃った!銃も向けてないのに…撃てる訳ないだろ…」 カウ:「どっから?…さぁ?」 リフレクター:「あんた…本当は何者なんだよ…」 カウ:「何者?…さぁ?」 リフレクター:「…くそ、嫌な殺され方だ…」 0:間を空ける マーチン:「急に呼び出して申し訳ないね」 カウ:「まぁ、ちょうど暇してたとこだ」 マーチン:「そう、では本題ね…今から十年も前、数ある事件から何件かは、サイレントキラーが関わっている事件だった。しかも、今のサイレントキラーと手口は一緒」 カウ:「何が言いたい?」 マーチン:「このサイレントキラーが関わっていた約十年前の犯行、これもあなた?」 カウ:「だとしたらどうする、ここで捕まえるか?」 マーチン:「いえ、捕まえはしないわ」 カウ:「そいつは結構。それと、1つ聞きたい事がある」 マーチン:「何かしら?」 カウ:「何故、俺らに近づく?捕まえる気か?」 マーチン:「さぁね、捕まえる気は無いわよ」 カウ:「謎だらけなんだ、ニセモノのサイレントキラー2人の依頼…あんた、何を企んでいる?」 マーチン:「じゃあ、あたしは業務に戻るわ」 カウ:「(舌打ち)」 0:間を空ける マスター:「いらっしゃい、何だあなたですか」 カウ:「何だとは何だ、何だとは」 マスター:「いや失敬」 カウ:「ミルクを」 マスター:「おや?せっかくいいネタを提供したつもりですが…まだ何か執筆に足りない物でも?」 カウ:「いや、ちょっとだけ不透明な事があってな?」 マスター:「…聞いてみたいものですね」 カウ:「マーチンという彼女は事件でサイレントキラーを追っていたはずだ。なのに、今回のニセサイレントキラー2人を殺す依頼をしたのは彼女」 マスター:「そのマーチンさんという彼女が何か…?」 カウ:「普通、犯人として今まで追っていた殺し屋に、依頼をするか?」 マスター:「さぁね、でも裏はあるかもしれない…そう疑っているんだろ?」 カウ:「いずれ、あいつは裏切るだろうさ」 マスター:「まぁ、あの子も警察署内では1番の検挙率高いらしいよ」 カウ:「…余計に怪しいぜ」 マスター:「はい、ミルク。これで落ち着きな?」 カウ:「ありがとう、マスター」 マスター:「マーチンという彼女はきっと、警察署内の「ユースティティア」なのかもしれないね」 カウ:「ユースティティア?何だそれ」 マスター:「おや、知らないかい?片手に天秤を持っている、ギリシア神話に出てきた正義の女神さ」 カウ:「警察署内高検挙率1番からの正義の裏切り…ねぇ」 マスター:「これこそ、ユースティティアの崩壊…」 0:間を空ける(数日後) マーチン:「兄さん!」 ライアン:「おや、マーチンじゃないか!」 マーチン:「聞いたよ、何で警察を辞めたりするのさ…」 ライアン:「あはは、少し憧れだった探偵業をやってみようと…ね!」 マーチン:「もぉ…兄さんの馬鹿…」 ライアン:「マーチン、少し耳を貸せ…」 マーチン:「え…」 ライアン:「アムステルダム警視長が辞任した今、この警察は混乱している…」 マーチン:「確かに、警察の中に凶悪犯が潜んでて、挙句には警視長が揉み消していた…そりゃ混乱するよね…」 ライアン:「あぁもしかしたら、身近に居るかもしれない…」 ライアン:「BARのマスターだったり…とか」 マーチン:「兄さん…?」 ライアン:「あはは、冗談さ…じゃあな!」 マーチン:「…サイレントキラーがバレるのも、時間の問題かもね」 ライアン:「ふん…悪いな、マーチン。俺は辞めてないさ…「表面上の辞職」扱いだよ、マスターがサイレントキラーである決定的な証拠を掴むまで、公安課に異動さ」 ライアン:「マーチンには内緒にしとけって…親父も悪い奴だ…」 マーチン:「時間の問題なら…早めに消しておかないと…ってあれ、君は…あぁ、今日からここに赴任してきた新人巡査だったね!」 マーチン:「初めまして、階級は警部のマーチンよ…よろしくね、ミミ巡査」 0:間を空ける カウ:目に映るものは現(うつつ)か。時に目に映らないモノは幻(げん)か。その人間は殺(あや)めるべき存在だったか否(いな)か。そして、目の前の殺し屋は本当に殺し屋だったのか。幻(げん)か現(うつつ)か。それを見極めるには程遠いものである。私の名はカウ。サイレントキラーの表舞台だけに立つI can’t killer(アイ キャント キラー)である。ではまた、何処かで。