台本概要

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タイトル 水槽のあった部屋
作者名 おちり補佐官  (@called_makki)
ジャンル ラブストーリー
演者人数 2人用台本(男1、女1)
時間 10 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 昔飼っていた金魚の水槽。
空いた水槽は、中に何も居なくても、ふとこちらを見る視線に溢れている。
悠に、その慣れた感覚を卒業すべき瞬間が来た。水槽をどかすことを嫌がる悠をよそに、瑞希は更に迫る。遂には悠の心をどこか取り囲んでいる水槽に対し、立ち代わりたいとすら思う。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
41 大学生、一人暮らし。4か月目。
瑞希 41 大学生。悠があまりに草食なため、時々強引になる。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
瑞希:何か飼う予定なの? 悠:え? どうして? 瑞希:だって。 悠:ん? あ、ああ。もしかしてあの球体水槽のこと? 瑞希:......うん。 悠:やっぱ変かな。なにも入ってないと。 瑞希:悠くんの部屋だし、私は気にしないけど、変だとは思うよ。空っぽの水槽なんてさ。 悠:そっか。 瑞希:うん。 悠:実家に帰ったんだよ、前の日曜。で、物置の整理してたらさ、昔飼ってた金魚の水槽見つけて、思い出しちゃって。 瑞希:金魚のこと? 悠:うん。金魚。小学校三年のときに学校の祭りで掬ったやつ。ちっちゃい出目金でさ。 瑞希:へぇ、出目金かぁ。可愛かったの? 悠:んー? どうだろ。毎日エサはあげてたけど、特別可愛いやつだとは思ってなかったな。 瑞希:え? 悠:そうだよな。ははっ。いや、可愛かったのかも。じゃなきゃ、空の水槽なんて置かないよな。 瑞希:そんなに好きだったんだ。 悠:どうだろうなぁ。 瑞希:......。 悠:どうしたの? まさか嫉妬した? 瑞希:なわけないじゃん。魚相手に嫉妬なんて。 悠:ははっ。 瑞希:......でも、してるかも。嫉妬。 悠:え? 瑞希:だって、ただの黒い出目金なのに、どうしてそんなに悠くんに思ってもらっているのかって。ちょっと気になっちゃった。 悠:どうしてなんだろうな。......あのさ。出目金って、その名の通り、目が大きいわけじゃん? 瑞希:うん。 悠:それが良かったんだよな。ずっと視線を感じるというか。その感覚が。 瑞希:ふぅん。よくわかんないの。で、その金魚が死んじゃってからは他のは飼わなかったの? 悠:飼わな、かったなぁ。他の動物も一切。 瑞希:どうして? 悠:うん。わかんない。 瑞希:それこそ変なのー。 悠:......あー。うん、僕もよくわかんないんだけどさ。 瑞希:なあに? 悠:この水槽が部屋にあったから、かも。出目金が死んでからも綺麗に洗って、同じ場所に置いてたんだ。 瑞希:......え? なんのために? 悠:これがあるとさ、なんだか見られてる気がするんだよ。あいつがまだそこに居るみたいな、さ。 瑞希:そ。 悠:え、なに、おこった? 瑞希:......私が初めての彼女だって言ってたのに。 悠:や、ほんとだよ? どうして金魚と比べるのさ。 瑞希:私たち、付き合ってもうすぐ三ヶ月じゃん? なのにさ。 悠:なに。 瑞希:その、してないよね。 悠:してないって? 瑞希:言わせないでよ。 悠:ごめん。 瑞希:ね。ここでチューしてもいい? 悠:え? 急にそんな。 瑞希:ほんとに急かな? 悠:......。 瑞希:悠くんの部屋で、何回も何回もこんなに近くに居るのに、全然してくれないじゃん。 悠:それは。 瑞希:ねえ。今、この球体水槽の前でキスして。愛してるって言って。ねぇ今すぐ......言って。(じゃないと......) 悠:す、好きだよ。もちろん。ただ。 瑞希:ただ何よ。......言えないんだ。 悠:違うんだ、本当に、そういうことじゃなくて。 瑞希:じゃあなに。 悠:愛してるよ! もっと、愛してるって言いたいけどさ。......でもさ。ごめんね。 瑞希:......ごめんって、なによ。 悠:笑わないでよ。ホントのこと言うと、本当に瑞希が初めての彼女だから。だから、どうしていいか分からなかったんだ。 瑞希:悠くん......。 悠:瑞希。 瑞希:じゃあさ。水槽、どけよ。 悠:え、いや、それは。 瑞希:ダメなの? 悠:ダメじゃないけど。 瑞希:じゃあ水槽の前でする? 悠:え......。 瑞希:どうしていやがるの。 悠:別に嫌がってるわけじゃ。 瑞希:じゃあ良いじゃん。 悠:待って! 待って、瑞希! 0:球体水槽が落ちる。 0:SE(ガラスが落ちて割れる音) 悠:ぁあ! ......水槽が。水槽が。 瑞希:水槽なんかなくても、私が悠くんのこと見てるよ? 悠:......瑞希。 瑞希:だから、ほら。 悠:あっ。 瑞希:ね。触って、私の金魚。 悠:......うん。 瑞希:もう誰も見てないもんね。

瑞希:何か飼う予定なの? 悠:え? どうして? 瑞希:だって。 悠:ん? あ、ああ。もしかしてあの球体水槽のこと? 瑞希:......うん。 悠:やっぱ変かな。なにも入ってないと。 瑞希:悠くんの部屋だし、私は気にしないけど、変だとは思うよ。空っぽの水槽なんてさ。 悠:そっか。 瑞希:うん。 悠:実家に帰ったんだよ、前の日曜。で、物置の整理してたらさ、昔飼ってた金魚の水槽見つけて、思い出しちゃって。 瑞希:金魚のこと? 悠:うん。金魚。小学校三年のときに学校の祭りで掬ったやつ。ちっちゃい出目金でさ。 瑞希:へぇ、出目金かぁ。可愛かったの? 悠:んー? どうだろ。毎日エサはあげてたけど、特別可愛いやつだとは思ってなかったな。 瑞希:え? 悠:そうだよな。ははっ。いや、可愛かったのかも。じゃなきゃ、空の水槽なんて置かないよな。 瑞希:そんなに好きだったんだ。 悠:どうだろうなぁ。 瑞希:......。 悠:どうしたの? まさか嫉妬した? 瑞希:なわけないじゃん。魚相手に嫉妬なんて。 悠:ははっ。 瑞希:......でも、してるかも。嫉妬。 悠:え? 瑞希:だって、ただの黒い出目金なのに、どうしてそんなに悠くんに思ってもらっているのかって。ちょっと気になっちゃった。 悠:どうしてなんだろうな。......あのさ。出目金って、その名の通り、目が大きいわけじゃん? 瑞希:うん。 悠:それが良かったんだよな。ずっと視線を感じるというか。その感覚が。 瑞希:ふぅん。よくわかんないの。で、その金魚が死んじゃってからは他のは飼わなかったの? 悠:飼わな、かったなぁ。他の動物も一切。 瑞希:どうして? 悠:うん。わかんない。 瑞希:それこそ変なのー。 悠:......あー。うん、僕もよくわかんないんだけどさ。 瑞希:なあに? 悠:この水槽が部屋にあったから、かも。出目金が死んでからも綺麗に洗って、同じ場所に置いてたんだ。 瑞希:......え? なんのために? 悠:これがあるとさ、なんだか見られてる気がするんだよ。あいつがまだそこに居るみたいな、さ。 瑞希:そ。 悠:え、なに、おこった? 瑞希:......私が初めての彼女だって言ってたのに。 悠:や、ほんとだよ? どうして金魚と比べるのさ。 瑞希:私たち、付き合ってもうすぐ三ヶ月じゃん? なのにさ。 悠:なに。 瑞希:その、してないよね。 悠:してないって? 瑞希:言わせないでよ。 悠:ごめん。 瑞希:ね。ここでチューしてもいい? 悠:え? 急にそんな。 瑞希:ほんとに急かな? 悠:......。 瑞希:悠くんの部屋で、何回も何回もこんなに近くに居るのに、全然してくれないじゃん。 悠:それは。 瑞希:ねえ。今、この球体水槽の前でキスして。愛してるって言って。ねぇ今すぐ......言って。(じゃないと......) 悠:す、好きだよ。もちろん。ただ。 瑞希:ただ何よ。......言えないんだ。 悠:違うんだ、本当に、そういうことじゃなくて。 瑞希:じゃあなに。 悠:愛してるよ! もっと、愛してるって言いたいけどさ。......でもさ。ごめんね。 瑞希:......ごめんって、なによ。 悠:笑わないでよ。ホントのこと言うと、本当に瑞希が初めての彼女だから。だから、どうしていいか分からなかったんだ。 瑞希:悠くん......。 悠:瑞希。 瑞希:じゃあさ。水槽、どけよ。 悠:え、いや、それは。 瑞希:ダメなの? 悠:ダメじゃないけど。 瑞希:じゃあ水槽の前でする? 悠:え......。 瑞希:どうしていやがるの。 悠:別に嫌がってるわけじゃ。 瑞希:じゃあ良いじゃん。 悠:待って! 待って、瑞希! 0:球体水槽が落ちる。 0:SE(ガラスが落ちて割れる音) 悠:ぁあ! ......水槽が。水槽が。 瑞希:水槽なんかなくても、私が悠くんのこと見てるよ? 悠:......瑞希。 瑞希:だから、ほら。 悠:あっ。 瑞希:ね。触って、私の金魚。 悠:......うん。 瑞希:もう誰も見てないもんね。