台本概要

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タイトル 花詩 -1-
作者名 rampo  (@ranpyonon)
ジャンル その他
演者人数 5人用台本(男1、女2、不問2)
時間 40 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 ココロに花を宿す種族が住む世界。
ダフネが経営するなんでも屋「エヴァーガーデン」
「あなたのお花詩、聴かせてください」

花詩=はなし
役表の【】内は心臓に宿る花

誤字脱字などなどございましたらXDMをいただけると助かります!

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
ダフネ 53 26歳/【沈丁花】/勘が鋭い。よく吐血するが命に別状はない。なんでも屋「エヴァ―ガーデン」を経営する。
キラン 51 18歳/【キランソウ】/元気で愛らしい。ダフネの助手。
レボル 56 19歳(回想時4歳/6歳/14歳有り)/【クリスマスローズ】
スベリア 不問 55 見た目年齢25歳/【サンスベリア】/創られたロボット
コダチ 不問 24 35歳より↑(回想時-10歳有り)/【コダチクリスマスローズ】/レボルの親/父でも母でも可(性別により口調お好きに変更してください)
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
キラン:いや~!今日もお客さんがいないねダフネくん! ダフネ:やかましい!いいんだよ、困ってる人がいない!それくらい平和だってことだ キラン:またまた。強がっちゃって! ダフネ:うるさいな… SE:ドアをたたく音 キラン:うそ!?ダフネくん!きた!お客さんがきたよ!! ダフネ:幽霊だよ、お客さんなわけないだろ キラン:諦めないでよ! SE:ドアが開く音 レボル:あの~… ダフネ:ひぃいいい!げほげほげほ… キラン:きゃあああ! レボル:ひゃわあああ!ごめんなさい!ごめんなさい! ダフネ:な、なんなんですかあなたは!警察呼びますよ! レボル:ちがいます!誤解です!ここは花詩を聞いてくれる「エヴァ―ガーデン」さんですよね?! キラン:お…お客さん…?! レボル:そうです!外の看板を見てきました!…というか、血!吐血してますよ! ダフネ:あ…ああ…大丈夫です!いつものことなんで… レボル:いつものこと?! キラン:ごめんなさい!ダフネくん、体が弱いの!でも全然体には影響ないから大丈夫だよ! レボル:体が弱いのに影響がないって、どういうことなんですか… ダフネ:ははは。俺の特性みたいなもんです。先程は失礼しました。めったにお客さんなんてこないもんで、つい レボル:あ、いえ。こちらこそ、勝手に入ってしまってすみません。 キラン:あらためまして、ようこそエヴァ―ガーデンへ! ダフネ:わたしはトップを勤めております、ダフネと申します。 キラン:助手のキランです! レボル:レボルと申します。よろしくお願いします。 ダフネ:さっそくですが、当方のサービスについてはご存じでしょうか? レボル:大変失礼ながら、外の「花詩をきかせてください」という看板だけで… ダフネ:それだけでよくきてくださいましたね キラン:こら!失礼でしょ! レボル:どんなお店なのかなって、興味もあったんだと思います キラン:わあ!ダフネくん!特殊な人だよ! ダフネ:こら。失礼だよ レボル:あはは、いえいえ。 キラン:エヴァ―ガーデンは、あなたのお花詩をきいて、お客様のご要望をきいて、ココロのお花を元気にする!というお店です! ダフネ:かなり砕けた説明ですが、そういうことです レボル:要するに、なんでもやさん、ですかね? ダフネ:まあ、俺たちのできる範囲で、にはなりますが、そういうことです キラン:弱気だなぁ ダフネ:ハードル上げるのもよくないからね レボル:…私を…助けてくれるんですか? ダフネ:まあ、僕たちのできる範囲で、にはなりますが、そういうことです キラン:2回目だよ ダフネ:うるさいな レボル:…スベリアも助けてくれますか…?! キラン:ん?スベリア? レボル:私を育ててくれた人型ロボットです ダフネ:レボルさんを育てた、ロボット? レボル:私の親は研究者で、ロボットにもココロを、花を宿すことができるのかという研究をしていました。 レボル:その初号機が、スベリアでした。 : :(以下回想、15年前。レボル4歳) : コダチ:レボル。起きて。今日からレボルの友達のスベリアだよ レボル:ん…?ふわぁあ…なあに?すべりあ?…わぁ…!かっこいい花人さんだねえ! コダチ:スベリアの前に立って、おはようと言ってみなさい レボル:…ん?んん?…おはよう! スベリア:…おはようございます レボル:わぁ!!オハヨウございます! スベリア:お名前を教えてください レボル:レボル! スベリア:「レボル」様。間違いありませんか? レボル:うん! スベリア:承知いたしました。レボル様。これからはあなたの為に、尽くさせていただきます。 レボル:…へ? コダチ:スベリアに困ったことがあったら言うんだよ。いいね? レボル:スベリア… スベリア:はい。なんでしょうか? コダチ:スベリア。レボルを、よろしくね : :(以下、現代) : レボル:私の親は、研究者ゆえに、私にかまっている暇なんてなかったんです レボル:研究の実験ロボットを私が寂しくないように、私のお世話役としてそばに置きました レボル:そうして、親には研究に集中できる余裕ができました ダフネ:なるほど。ついでにロボットの進化過程もみることができると レボル:そうです。私が4歳の時に会った、私の初めての友達でした。 レボル:私は…スベリアは花人と変わらない存在だと思っていました。 : :(以下、13年前 レボル/6歳) : スベリア:レボルさま。ご起床のお時間です。おはようございます。 レボル:んん~…すべりあー…まだ寝てたいよ~ スベリア:かしこまりました。 スベリア:では本日のご予定をすべてキャンセル致します。 スベリア:ご予定は10時はマナーレッスン、12時は講師の方々と会食、14時はピアノレッスン、16時は(遮られます) レボル:(遮ってください)んんんん!もういい、もういい!わかったから! スベリア:いかがされましたか? レボル:ちゃんと起きる!…パパとママが悲しむから、ちゃんとそれもする スベリア:かしこまりました。それではこちらにお着替えください レボル:う…ピンク…嫌いなのに… スベリア:変更されますか? レボル:…いい。ママが喜ぶから スベリア:お着がえください レボル:・・・ スベリア:いかがされました? レボル:…もう…!着替えるからあっちむいててえええ! : :(以下、現代) : レボル:スベリアはずっと、私の意思を尊重してくれていました キラン:ロボットなのに!かしこいねえ ダフネ:ロボットだからね レボル:ある日、親と言い合いになりました。スベリアが来てから、両親と全然会えなくなって…寂しかったの レボル:当時の私は、憎くてたまらなくなっていました : :(以下、5年前 レボル/14歳) :   スベリア:レボル様? レボル:(しくしく泣いている) スベリア:レボル様 レボル:…スベリア…私はいらない子なの…? スベリア:そんなことはありません。お父様もお母様も、レボル様のことをいつも考えていらっしゃいます レボル:嘘よ!じゃあ何で私に会ってくれないの?!パパもママも、私が邪魔なんだよ! スベリア:いつもレボル様のご様子を伺われます。 レボル:それは心配じゃない!監視よ!あなたは私の監視役なの! スベリア:違いますよ、私はあなたの味方です レボル:味方?!味方なら私の言うことをきいてくれるんだよね?! スベリア:もちろんでございます レボル:じゃあパパとママを殺して!いらない!私をみてくれないパパとママなんかいらない…! スベリア:レボル様、落ち着いてください。それは… レボル:できないんでしょ!?私の味方じゃないんだよ!私はひとりぼっちなんだ! スベリア:いいのですね? レボル:・・・ スベリア:後悔はしないのですね? レボル:するわけ…ないじゃない… スベリア:・・・おやすみなさい、レボル様 : :(以下、現代) : ダフネ:…まさか キラン:もしかして… レボル:しばらくして、正気に戻った私はスベリアを呼びつけました。でも…スベリアは来ませんでした。 レボル:普段は入ることを禁止されていた別館の研究室へ行くと、鍵が全部開錠されていて、全てが終わった後でした レボル:両親は、血を流して床に突っ伏して、スベリアは立ったまま起動を停止していました。 キラン:そんな… レボル:私が殺してしまった。本当に、ショックでした。 レボル:でも、不自然だったんです。争った形跡がなく、スベリアは返り血を浴びてなかったんです ダフネ:ふむ…凶器は? レボル:停止したスベリアが手に持っていた包丁だと思われます。両親は即死だったみたいです キラン:スベリアさん… ダフネ:それで、依頼は? レボル:研究室に動かないでいるスベリアを、起動させてほしいんです キラン:ど、どうやって? レボル:わからないんです…ロボットだということを忘れてしまうくらいだったから…お願いできませんか? キラン:わかりました! ダフネ:ちょっ、キランちゃん!キランちゃん!!ちょっと!こっちきて! ダフネ:(ひそひそ声で)なに勝手に言っちゃってるんだよ! キラン:(ひそひそ声で)やってみないとわかんないじゃない!依頼も受けなきゃお金もないんだし! レボル:あ、あの。無理だったら… ダフネ:…はぁ…わかった。スベリアさんのいる研究室へ連れて行ってください レボル:…!ありがとうございます! キラン:よーし!がんばろうね! : :研究室 : キラン:ここが、研究室… ダフネ:さすがに現場のままではないか レボル:そうですね、かれこれ5年経っているので、遺体と血痕等はさすがに… ダフネ:…そして、この人が… キラン:スベリアさん… ダフネ:レボルさん。しばらく席を外してもらえますか? レボル:えっ? ダフネ:時間がかかるかもしれませんし、少しお休みください。 ダフネ:進展がありましたらご報告に参りますので レボル:…わかり…ました。よろしくお願いします SE:扉を閉める音 キラン:どうするつもりなの? ダフネ:うん。まあ見ててよ。…「おはよう」 スベリア:…おはようございます キラン:きゃあああああっ! ダフネ:おはよう、スベリア。あなたのご主人は? スベリア:…レボル様です キラン:なんで?!なんでわかったのダフネくん!? ダフネ:ご両親が言葉足らずだったね、「困ったら言う」言葉は、最初から言ってたんだよ キラン:わかんないよそんなの… スベリア:ああ…夢では、なかったのですね… キラン:レボルさん呼んでくるね! スベリア:待ってください キラン:へ? ダフネ:そうだね。先に聞かなきゃならないことがある スベリア:…あなたがたは? ダフネ:あなたが起動を停止したから、再起動をさせるために雇われた者です ダフネ:彼女とあなたの花詩は聞いています。 ダフネ:あなたが眠ってから、今まで、10年経っていますよ スベリア:…そうですね… ダフネ:教えてくれますか?当時のこと スベリア:・・・当時、私はレボル様の願いを叶えるため、刃物を持って、この研究室まできました : :(以下、5年前) : コダチ:…スベリア。きたか。 スベリア:コダチ様、私は… コダチ:ああ、わかっている。レボルが望んだんだろう?私たちの死を スベリア:はい。でも、私は、迷ってしまっています。 スベリア:レボル様のお望みを叶えるのが、私に与えられた使命なのに。 スベリア:けれど、ここでお二人を殺めてしまえば、レボル様は追々後悔するでしょう。 スベリア:私は、どうしたらいいのですか? コダチ:そうか…実験は成功だね スベリア:コダチ様…?どういう… コダチ:レボルはね、「元」花人なんだよ。 スベリア:元…?一体何を…なんの冗談ですか? コダチ:この研究室はね、別館にして、錠を何錠もかけ、厳重に警戒している。何故か? コダチ:ここに漂う空気が、私たちにとって毒だからだ。 コダチ:私たちは薄いものから徐々に慣らし、耐性がある。でも、レボルは違う。 コダチ:ここは幼い子に耐えられるような空間ではない。 コダチ:ある日、レボルは、私の後を黙ってついてきてしまっていた。 コダチ:私がここへ入って振り向いた時にはすでに遅かった。 コダチ:苦しみ悶えながら息絶えた。      スベリア:そんな… コダチ:私たちは娘を殺してしまったことを後悔した。 コダチ:そして不幸中の幸いか、私たちの研究は「造花」。「花人を造る」ことだった。 コダチ:0から作り上げるより器があるというだけで、難しいことではなかったよ。悲しいほどに容易だった。 コダチ:私たちは、娘の命を造ったんだ スベリア:・・・ コダチ:ただ2つ、失敗をしてしまった。ひとつは毒を完全に取り切れなかった。 コダチ:空気自体がレボルにとっては毒になった。息を吸うだけで、放置しておけば毒が体を蝕む。 コダチ:常に浄化した空気を吸い続けなければならなかった。 コダチ:そこで、スベリア。キミを造った。 コダチ:キミの脈には浄化作用が施されている。キミの存在がレボルの「命綱」なんだよ コダチ:キミには常にレボルと居てもらわなければならなかった。 コダチ:  コダチ:もうひとつは、毒である私たちが、レボルに近づけなくなってしまった。 スベリア:だから・・・ コダチ:そうだ。だから接触しない。いや、できないんだ。 コダチ:近寄っては、レボルを苦しめて、触れては殺してしまうから。 スベリア:それでも、私がいれば! コダチ:だめだ。確実性のない賭け事などできない。私たちはもう、娘を苦しめたくないんだ。 スベリア:レボル様は今もなお苦しんでおられます!お二人からの愛情を望んでおられます! コダチ:だめだ!! スベリア:! コダチ:…花人を…命を造るなんてするものじゃない。罰が当たったんだ。 スベリア:私は…レボル様を護りたいです。でも… コダチ:キミはロボットの性であるがゆえ、絶対的な主のレボルからの命令を遂行しようとしている。 コダチ:だが、人としての感情も成長していまっているのだ。…実験は成功だよ コダチ:…スベリア。キミに残された選択肢は2つだ。 コダチ:ひとつはこのままレボルのもとへ戻ること。もうひとつはキミの中にある装置を起動させることだ。 スベリア:装置…? コダチ:ああ。キミの体内にある浄化作用の体液を強化放出させて、世界の毒を浄化させる。 コダチ:私たちの血は日々の研究で毒そのものになってしまっているからね。私たちは死ぬだろう。 コダチ:キミはキミで、体液を世界へ散布させるほどのエネルギーを使うんだ。永久に動かなくなる可能性がある。 コダチ:娘は助かる。ただ今度こそ、1人になってしまうだろう。 コダチ:私たちは、それを望まない。 スベリア:望まないのなら、どうしてそれを伝えたのですか コダチ:…さあ。どうしてだろうね。私たちが死にたくないだけなのかもしれないよ スベリア:それは、傲慢です コダチ:ああそうだ。実に、傲慢だよ。…時間がない。選びなさい。キミにはその権利がある。 スベリア:なぜですか…? コダチ:キミは、私たちの罰だからだ : :以下、現代に戻る :  ダフネ:そして、自爆装置を起動させた。と キラン:レボルさんが、造花なんて、いまだに信じられない…スベリアさんは、この結果を望んだの? スベリア:わかりません…私はここで意識を保ったまま、この10年を生きてきました。それでも、わからないのです。 ダフネ:意識を保ったまま…ですか… キラン:むごい…で、でもこれでレボルさんに、会えるじゃないですか! スベリア:それは… ダフネ:・・・ スベリア:それは…できません スベリア:コダチ様が、起動キーワードを私に最後に言ったんです。 : コダチ:キミなら、選んでくれると思ったよ。 スベリア:最後に、教えてください コダチ:なんだ? スベリア:なぜ、私に意思を持たせたのですか? コダチ:ああ、それはね : スベリア:「レボル、愛している」と キラン:深すぎるよ スベリア:私は涙を流して、動けなくなっていました。あとは、ご存じの通り… ダフネ:なるほどね キラン:なにが?! ダフネ:ま、言いたいことはわかりました スベリア:…理解が早いかたで、助かります キラン:わかんないよ!? ダフネ:キランちゃん黙って!…いいんですね? スベリア:はい。私は、このままここで、いつまでも彼女を見守ります スベリア:私の前に、立って「さよなら」と言ってください。あと、これを、レボル様に。 キラン:…え…この写真は… スベリア:停止する直前にコダチ様が、私の服に忍ばせたようです。これを…いえ、これは、お任せいたします。 ダフネ:…わかった。「さよなら」、スベリア スベリア:ありがとう…。ああ…レボル様…どうか、おし…あ…せ…… : :本館 : レボル:…あ!ダフネさん!キランさん!どうでした? キラン:・・・ ダフネ:いやぁ!どうにもこうにも!うんともすんとも~! レボル:そう…でしたか… キラン:あの、これ(遮られます) ダフネ:(遮ってください)お役に立てずにすみません!お代はいりませんので!さ、キランちゃん、帰ろう~! キラン:(腕を引っ張られる)あ!? えっ!? ちょっと!ちょっとおおお! レボル:……あーあ……まだ死ねないのかぁ… : :帰り道 : キラン:ダフネくん!どういうこと?なんでなんで? ダフネ:何がだよ? キラン:だってほら、起動キーワードもわかって、レボルさんの依頼完了できてたじゃない! ダフネ:本人が会うの嫌がってたんだから、尊重したまでだよ キラン:それも意味わかんないよ! ダフネ:野暮だなあ… キラン:むうー ダフネ:子どもだったレボルさんは逆らえないスベリアさんに衝動的なお願いをしちゃったんだよ ダフネ:実は自分は愛されてたって知ったら、レボルさんはどうなる? ダフネ:それこそ正気じゃいられないだろ キラン:う…でも…じゃあそれは言わなかったらいいじゃない… ダフネ:レボルさんの言うことは逆らえないんだってば。何を言われるかわかんないだろ。 ダフネ:本当のことを言ってって言われたら、ロボットの本質で言っちゃうかもしれない ダフネ:それは、スベリアさんの意志にそぐわない キラン:それなら、ずっと意識をもったまま、永遠に黙っていたほうがいいってこと…? ダフネ:まあ、そういうことなんだろうね。だから最初から嫌だったんだ。あと、それ。 キラン:あ、スベリアさんからもらった、写真? ダフネ:家族写真だね。たぶん、スベリアさんができて、すぐかな?裏に何が書いてる? キラン:写ってるのは…ご両親と、レボルさんと、スベリアさん。でしょ? キラン:裏は「おはよう」「レボル愛してる」「忘れない」「さようなら」? ダフネ:予測するに、おそらくスベリアさんの機能の起動キーワードだ ダフネ:その中で、言ってないキーワードは? キラン:…「忘れない」?これは、何が起こったのかな? : コダチ:レボル。抱きしめてあげられなくて、ごめんなさい。 コダチ:私たちのこの世で一番美しい、愛しい花人。生きて、いつまでも生きて。永遠に愛しているよ。 : ダフネ:…さあね!そんなものはすぐに紙飛行機にして飛ばしてしまいなさい キラン:そんなことできないよ! ダフネ:その写真は、世界の「毒」だよ キラン:仲睦まじい家族写真になんてこと言うの!!!

キラン:いや~!今日もお客さんがいないねダフネくん! ダフネ:やかましい!いいんだよ、困ってる人がいない!それくらい平和だってことだ キラン:またまた。強がっちゃって! ダフネ:うるさいな… SE:ドアをたたく音 キラン:うそ!?ダフネくん!きた!お客さんがきたよ!! ダフネ:幽霊だよ、お客さんなわけないだろ キラン:諦めないでよ! SE:ドアが開く音 レボル:あの~… ダフネ:ひぃいいい!げほげほげほ… キラン:きゃあああ! レボル:ひゃわあああ!ごめんなさい!ごめんなさい! ダフネ:な、なんなんですかあなたは!警察呼びますよ! レボル:ちがいます!誤解です!ここは花詩を聞いてくれる「エヴァ―ガーデン」さんですよね?! キラン:お…お客さん…?! レボル:そうです!外の看板を見てきました!…というか、血!吐血してますよ! ダフネ:あ…ああ…大丈夫です!いつものことなんで… レボル:いつものこと?! キラン:ごめんなさい!ダフネくん、体が弱いの!でも全然体には影響ないから大丈夫だよ! レボル:体が弱いのに影響がないって、どういうことなんですか… ダフネ:ははは。俺の特性みたいなもんです。先程は失礼しました。めったにお客さんなんてこないもんで、つい レボル:あ、いえ。こちらこそ、勝手に入ってしまってすみません。 キラン:あらためまして、ようこそエヴァ―ガーデンへ! ダフネ:わたしはトップを勤めております、ダフネと申します。 キラン:助手のキランです! レボル:レボルと申します。よろしくお願いします。 ダフネ:さっそくですが、当方のサービスについてはご存じでしょうか? レボル:大変失礼ながら、外の「花詩をきかせてください」という看板だけで… ダフネ:それだけでよくきてくださいましたね キラン:こら!失礼でしょ! レボル:どんなお店なのかなって、興味もあったんだと思います キラン:わあ!ダフネくん!特殊な人だよ! ダフネ:こら。失礼だよ レボル:あはは、いえいえ。 キラン:エヴァ―ガーデンは、あなたのお花詩をきいて、お客様のご要望をきいて、ココロのお花を元気にする!というお店です! ダフネ:かなり砕けた説明ですが、そういうことです レボル:要するに、なんでもやさん、ですかね? ダフネ:まあ、俺たちのできる範囲で、にはなりますが、そういうことです キラン:弱気だなぁ ダフネ:ハードル上げるのもよくないからね レボル:…私を…助けてくれるんですか? ダフネ:まあ、僕たちのできる範囲で、にはなりますが、そういうことです キラン:2回目だよ ダフネ:うるさいな レボル:…スベリアも助けてくれますか…?! キラン:ん?スベリア? レボル:私を育ててくれた人型ロボットです ダフネ:レボルさんを育てた、ロボット? レボル:私の親は研究者で、ロボットにもココロを、花を宿すことができるのかという研究をしていました。 レボル:その初号機が、スベリアでした。 : :(以下回想、15年前。レボル4歳) : コダチ:レボル。起きて。今日からレボルの友達のスベリアだよ レボル:ん…?ふわぁあ…なあに?すべりあ?…わぁ…!かっこいい花人さんだねえ! コダチ:スベリアの前に立って、おはようと言ってみなさい レボル:…ん?んん?…おはよう! スベリア:…おはようございます レボル:わぁ!!オハヨウございます! スベリア:お名前を教えてください レボル:レボル! スベリア:「レボル」様。間違いありませんか? レボル:うん! スベリア:承知いたしました。レボル様。これからはあなたの為に、尽くさせていただきます。 レボル:…へ? コダチ:スベリアに困ったことがあったら言うんだよ。いいね? レボル:スベリア… スベリア:はい。なんでしょうか? コダチ:スベリア。レボルを、よろしくね : :(以下、現代) : レボル:私の親は、研究者ゆえに、私にかまっている暇なんてなかったんです レボル:研究の実験ロボットを私が寂しくないように、私のお世話役としてそばに置きました レボル:そうして、親には研究に集中できる余裕ができました ダフネ:なるほど。ついでにロボットの進化過程もみることができると レボル:そうです。私が4歳の時に会った、私の初めての友達でした。 レボル:私は…スベリアは花人と変わらない存在だと思っていました。 : :(以下、13年前 レボル/6歳) : スベリア:レボルさま。ご起床のお時間です。おはようございます。 レボル:んん~…すべりあー…まだ寝てたいよ~ スベリア:かしこまりました。 スベリア:では本日のご予定をすべてキャンセル致します。 スベリア:ご予定は10時はマナーレッスン、12時は講師の方々と会食、14時はピアノレッスン、16時は(遮られます) レボル:(遮ってください)んんんん!もういい、もういい!わかったから! スベリア:いかがされましたか? レボル:ちゃんと起きる!…パパとママが悲しむから、ちゃんとそれもする スベリア:かしこまりました。それではこちらにお着替えください レボル:う…ピンク…嫌いなのに… スベリア:変更されますか? レボル:…いい。ママが喜ぶから スベリア:お着がえください レボル:・・・ スベリア:いかがされました? レボル:…もう…!着替えるからあっちむいててえええ! : :(以下、現代) : レボル:スベリアはずっと、私の意思を尊重してくれていました キラン:ロボットなのに!かしこいねえ ダフネ:ロボットだからね レボル:ある日、親と言い合いになりました。スベリアが来てから、両親と全然会えなくなって…寂しかったの レボル:当時の私は、憎くてたまらなくなっていました : :(以下、5年前 レボル/14歳) :   スベリア:レボル様? レボル:(しくしく泣いている) スベリア:レボル様 レボル:…スベリア…私はいらない子なの…? スベリア:そんなことはありません。お父様もお母様も、レボル様のことをいつも考えていらっしゃいます レボル:嘘よ!じゃあ何で私に会ってくれないの?!パパもママも、私が邪魔なんだよ! スベリア:いつもレボル様のご様子を伺われます。 レボル:それは心配じゃない!監視よ!あなたは私の監視役なの! スベリア:違いますよ、私はあなたの味方です レボル:味方?!味方なら私の言うことをきいてくれるんだよね?! スベリア:もちろんでございます レボル:じゃあパパとママを殺して!いらない!私をみてくれないパパとママなんかいらない…! スベリア:レボル様、落ち着いてください。それは… レボル:できないんでしょ!?私の味方じゃないんだよ!私はひとりぼっちなんだ! スベリア:いいのですね? レボル:・・・ スベリア:後悔はしないのですね? レボル:するわけ…ないじゃない… スベリア:・・・おやすみなさい、レボル様 : :(以下、現代) : ダフネ:…まさか キラン:もしかして… レボル:しばらくして、正気に戻った私はスベリアを呼びつけました。でも…スベリアは来ませんでした。 レボル:普段は入ることを禁止されていた別館の研究室へ行くと、鍵が全部開錠されていて、全てが終わった後でした レボル:両親は、血を流して床に突っ伏して、スベリアは立ったまま起動を停止していました。 キラン:そんな… レボル:私が殺してしまった。本当に、ショックでした。 レボル:でも、不自然だったんです。争った形跡がなく、スベリアは返り血を浴びてなかったんです ダフネ:ふむ…凶器は? レボル:停止したスベリアが手に持っていた包丁だと思われます。両親は即死だったみたいです キラン:スベリアさん… ダフネ:それで、依頼は? レボル:研究室に動かないでいるスベリアを、起動させてほしいんです キラン:ど、どうやって? レボル:わからないんです…ロボットだということを忘れてしまうくらいだったから…お願いできませんか? キラン:わかりました! ダフネ:ちょっ、キランちゃん!キランちゃん!!ちょっと!こっちきて! ダフネ:(ひそひそ声で)なに勝手に言っちゃってるんだよ! キラン:(ひそひそ声で)やってみないとわかんないじゃない!依頼も受けなきゃお金もないんだし! レボル:あ、あの。無理だったら… ダフネ:…はぁ…わかった。スベリアさんのいる研究室へ連れて行ってください レボル:…!ありがとうございます! キラン:よーし!がんばろうね! : :研究室 : キラン:ここが、研究室… ダフネ:さすがに現場のままではないか レボル:そうですね、かれこれ5年経っているので、遺体と血痕等はさすがに… ダフネ:…そして、この人が… キラン:スベリアさん… ダフネ:レボルさん。しばらく席を外してもらえますか? レボル:えっ? ダフネ:時間がかかるかもしれませんし、少しお休みください。 ダフネ:進展がありましたらご報告に参りますので レボル:…わかり…ました。よろしくお願いします SE:扉を閉める音 キラン:どうするつもりなの? ダフネ:うん。まあ見ててよ。…「おはよう」 スベリア:…おはようございます キラン:きゃあああああっ! ダフネ:おはよう、スベリア。あなたのご主人は? スベリア:…レボル様です キラン:なんで?!なんでわかったのダフネくん!? ダフネ:ご両親が言葉足らずだったね、「困ったら言う」言葉は、最初から言ってたんだよ キラン:わかんないよそんなの… スベリア:ああ…夢では、なかったのですね… キラン:レボルさん呼んでくるね! スベリア:待ってください キラン:へ? ダフネ:そうだね。先に聞かなきゃならないことがある スベリア:…あなたがたは? ダフネ:あなたが起動を停止したから、再起動をさせるために雇われた者です ダフネ:彼女とあなたの花詩は聞いています。 ダフネ:あなたが眠ってから、今まで、10年経っていますよ スベリア:…そうですね… ダフネ:教えてくれますか?当時のこと スベリア:・・・当時、私はレボル様の願いを叶えるため、刃物を持って、この研究室まできました : :(以下、5年前) : コダチ:…スベリア。きたか。 スベリア:コダチ様、私は… コダチ:ああ、わかっている。レボルが望んだんだろう?私たちの死を スベリア:はい。でも、私は、迷ってしまっています。 スベリア:レボル様のお望みを叶えるのが、私に与えられた使命なのに。 スベリア:けれど、ここでお二人を殺めてしまえば、レボル様は追々後悔するでしょう。 スベリア:私は、どうしたらいいのですか? コダチ:そうか…実験は成功だね スベリア:コダチ様…?どういう… コダチ:レボルはね、「元」花人なんだよ。 スベリア:元…?一体何を…なんの冗談ですか? コダチ:この研究室はね、別館にして、錠を何錠もかけ、厳重に警戒している。何故か? コダチ:ここに漂う空気が、私たちにとって毒だからだ。 コダチ:私たちは薄いものから徐々に慣らし、耐性がある。でも、レボルは違う。 コダチ:ここは幼い子に耐えられるような空間ではない。 コダチ:ある日、レボルは、私の後を黙ってついてきてしまっていた。 コダチ:私がここへ入って振り向いた時にはすでに遅かった。 コダチ:苦しみ悶えながら息絶えた。      スベリア:そんな… コダチ:私たちは娘を殺してしまったことを後悔した。 コダチ:そして不幸中の幸いか、私たちの研究は「造花」。「花人を造る」ことだった。 コダチ:0から作り上げるより器があるというだけで、難しいことではなかったよ。悲しいほどに容易だった。 コダチ:私たちは、娘の命を造ったんだ スベリア:・・・ コダチ:ただ2つ、失敗をしてしまった。ひとつは毒を完全に取り切れなかった。 コダチ:空気自体がレボルにとっては毒になった。息を吸うだけで、放置しておけば毒が体を蝕む。 コダチ:常に浄化した空気を吸い続けなければならなかった。 コダチ:そこで、スベリア。キミを造った。 コダチ:キミの脈には浄化作用が施されている。キミの存在がレボルの「命綱」なんだよ コダチ:キミには常にレボルと居てもらわなければならなかった。 コダチ:  コダチ:もうひとつは、毒である私たちが、レボルに近づけなくなってしまった。 スベリア:だから・・・ コダチ:そうだ。だから接触しない。いや、できないんだ。 コダチ:近寄っては、レボルを苦しめて、触れては殺してしまうから。 スベリア:それでも、私がいれば! コダチ:だめだ。確実性のない賭け事などできない。私たちはもう、娘を苦しめたくないんだ。 スベリア:レボル様は今もなお苦しんでおられます!お二人からの愛情を望んでおられます! コダチ:だめだ!! スベリア:! コダチ:…花人を…命を造るなんてするものじゃない。罰が当たったんだ。 スベリア:私は…レボル様を護りたいです。でも… コダチ:キミはロボットの性であるがゆえ、絶対的な主のレボルからの命令を遂行しようとしている。 コダチ:だが、人としての感情も成長していまっているのだ。…実験は成功だよ コダチ:…スベリア。キミに残された選択肢は2つだ。 コダチ:ひとつはこのままレボルのもとへ戻ること。もうひとつはキミの中にある装置を起動させることだ。 スベリア:装置…? コダチ:ああ。キミの体内にある浄化作用の体液を強化放出させて、世界の毒を浄化させる。 コダチ:私たちの血は日々の研究で毒そのものになってしまっているからね。私たちは死ぬだろう。 コダチ:キミはキミで、体液を世界へ散布させるほどのエネルギーを使うんだ。永久に動かなくなる可能性がある。 コダチ:娘は助かる。ただ今度こそ、1人になってしまうだろう。 コダチ:私たちは、それを望まない。 スベリア:望まないのなら、どうしてそれを伝えたのですか コダチ:…さあ。どうしてだろうね。私たちが死にたくないだけなのかもしれないよ スベリア:それは、傲慢です コダチ:ああそうだ。実に、傲慢だよ。…時間がない。選びなさい。キミにはその権利がある。 スベリア:なぜですか…? コダチ:キミは、私たちの罰だからだ : :以下、現代に戻る :  ダフネ:そして、自爆装置を起動させた。と キラン:レボルさんが、造花なんて、いまだに信じられない…スベリアさんは、この結果を望んだの? スベリア:わかりません…私はここで意識を保ったまま、この10年を生きてきました。それでも、わからないのです。 ダフネ:意識を保ったまま…ですか… キラン:むごい…で、でもこれでレボルさんに、会えるじゃないですか! スベリア:それは… ダフネ:・・・ スベリア:それは…できません スベリア:コダチ様が、起動キーワードを私に最後に言ったんです。 : コダチ:キミなら、選んでくれると思ったよ。 スベリア:最後に、教えてください コダチ:なんだ? スベリア:なぜ、私に意思を持たせたのですか? コダチ:ああ、それはね : スベリア:「レボル、愛している」と キラン:深すぎるよ スベリア:私は涙を流して、動けなくなっていました。あとは、ご存じの通り… ダフネ:なるほどね キラン:なにが?! ダフネ:ま、言いたいことはわかりました スベリア:…理解が早いかたで、助かります キラン:わかんないよ!? ダフネ:キランちゃん黙って!…いいんですね? スベリア:はい。私は、このままここで、いつまでも彼女を見守ります スベリア:私の前に、立って「さよなら」と言ってください。あと、これを、レボル様に。 キラン:…え…この写真は… スベリア:停止する直前にコダチ様が、私の服に忍ばせたようです。これを…いえ、これは、お任せいたします。 ダフネ:…わかった。「さよなら」、スベリア スベリア:ありがとう…。ああ…レボル様…どうか、おし…あ…せ…… : :本館 : レボル:…あ!ダフネさん!キランさん!どうでした? キラン:・・・ ダフネ:いやぁ!どうにもこうにも!うんともすんとも~! レボル:そう…でしたか… キラン:あの、これ(遮られます) ダフネ:(遮ってください)お役に立てずにすみません!お代はいりませんので!さ、キランちゃん、帰ろう~! キラン:(腕を引っ張られる)あ!? えっ!? ちょっと!ちょっとおおお! レボル:……あーあ……まだ死ねないのかぁ… : :帰り道 : キラン:ダフネくん!どういうこと?なんでなんで? ダフネ:何がだよ? キラン:だってほら、起動キーワードもわかって、レボルさんの依頼完了できてたじゃない! ダフネ:本人が会うの嫌がってたんだから、尊重したまでだよ キラン:それも意味わかんないよ! ダフネ:野暮だなあ… キラン:むうー ダフネ:子どもだったレボルさんは逆らえないスベリアさんに衝動的なお願いをしちゃったんだよ ダフネ:実は自分は愛されてたって知ったら、レボルさんはどうなる? ダフネ:それこそ正気じゃいられないだろ キラン:う…でも…じゃあそれは言わなかったらいいじゃない… ダフネ:レボルさんの言うことは逆らえないんだってば。何を言われるかわかんないだろ。 ダフネ:本当のことを言ってって言われたら、ロボットの本質で言っちゃうかもしれない ダフネ:それは、スベリアさんの意志にそぐわない キラン:それなら、ずっと意識をもったまま、永遠に黙っていたほうがいいってこと…? ダフネ:まあ、そういうことなんだろうね。だから最初から嫌だったんだ。あと、それ。 キラン:あ、スベリアさんからもらった、写真? ダフネ:家族写真だね。たぶん、スベリアさんができて、すぐかな?裏に何が書いてる? キラン:写ってるのは…ご両親と、レボルさんと、スベリアさん。でしょ? キラン:裏は「おはよう」「レボル愛してる」「忘れない」「さようなら」? ダフネ:予測するに、おそらくスベリアさんの機能の起動キーワードだ ダフネ:その中で、言ってないキーワードは? キラン:…「忘れない」?これは、何が起こったのかな? : コダチ:レボル。抱きしめてあげられなくて、ごめんなさい。 コダチ:私たちのこの世で一番美しい、愛しい花人。生きて、いつまでも生きて。永遠に愛しているよ。 : ダフネ:…さあね!そんなものはすぐに紙飛行機にして飛ばしてしまいなさい キラン:そんなことできないよ! ダフネ:その写真は、世界の「毒」だよ キラン:仲睦まじい家族写真になんてこと言うの!!!