台本概要

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タイトル ラスト・ドライブ
作者名 青太郎。  (@a_waiiro)
ジャンル ラブストーリー
演者人数 2人用台本(男1、女1) ※兼役あり
時間 30 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 それぞれの―
「目的地」に向かって
車は走り出す―――

※男女サシ劇台本です。
 (役になりきって頂ければ性別不問です。)
※兼役あり、となっていますが
 実際のところ2人向けの台本です。
(本編参照。伴って、前読みオススメします。)

読みやすいよう、語尾やアドリブ改変
演者様のセンスでお任せします。

―車の運転は、好きですか?
―夜の高速道路が好きです。

作/青太郎。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
99 運転席の男
92 助手席の女
優人 44 葵を愛している
39 優人を愛している
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
0:ラスト・ドライブ――― 0:  0:   優人: (男役の方は、予めチェック必須) 葵: (女役の方は、予めチェック必須) 0:  0:   0:目的地に向かい車を走らせる男 0:     0:     男:ごめん!お待たせ 女:ああー!やっと来た! 男:やっとってなんだよ 男:俺はね、これでも安全運転で尚且つ急いで―― 女:(遮る)あーもう、わかったわかった、わかったから 男:ちょ、おまえなあ… 女:いくよ? 女:これでも安全運転で尚且つ急いでー 女:それでも法定速度を守りながら、来てくれてどうもー!! 女:…でしょ? 男:う・・・ 女:どう?大正解なんじゃない? 男:…相変わらず、俺の言いたいことはお見通しなのか 女:ははっ!当たり前じゃないのー 女:何年の付き合いだと思ってるの? 男:まあ、そうだな 女:うーん、でもねえ。今日は遅れてほしくなかったな 男:まあ、うん。ですよね… 女:はい!そこの君! 女:今日は何の日でしょうか! 男:・・・誕生日だろ 女:声が小さい、もう一度! 男:だーかーら!あなた様の誕生日でございます! 男:…これでいいだろ 女:そう!そうだよー!やれば出来るじゃないかー! 男:馬鹿にされてる気しかしないんだが 女:ははっ!馬鹿になんてしてないよー… 女:…ちょっとからかっただけ 男:それを馬鹿にしてるって言うんだろうが 女:(いたずらっぽく笑う)えへへっ!  男:―… 男:はあ…えーとじゃあ、やり直させて 女:お?おお?そうだなあーじゃあいいよ!どうぞ! 男:お前のそういうところ、本当に変わらないのな 女:あーもう!いいから、さあ!早く早く! 男:だあーもう!! 男:…―えっと、誕生日という大事な日に遅れてしまって、 男:大変申し訳ございません…でした!! 女:わあ!さっすが私の彼氏様!気分がいいもんだね! 男:お前なあ… 女:はい!じゃあ気を取り直して 女:私の誕生日ドライブ、出発だよー!! 男:はいはい、行きますよ 男:―… 男:あ、 女:ん?なあに? 男:シートベルト 女:あー、はいはい…っと 男:うん。よしそれじゃあ… 男:(棒読み)はーい行きますよー。楽しみだな楽しみだなあー 女:その棒読み、どうにかなりませんかねえー 男:何を今更。俺はもともとこんなんだよ 女:だめー。今日は、だめ 男:(ため息)行きましょうか、お姫様 女:お?!いいねえ!ふふ、本当に相変わらずだね。君も 男:お前だけには言われたくないけどな 女:ははっ!まあまあ、行きましょう! 0:しばらくドライブする二人 0:    0:   0: ・・・―― 女:…うん。そっか 女:私たち二人が訪れた場所… 女:たくさん巡ってくれてるんだね 男:あ、バレた? 女:え?いやいや、逆にバレないと思ったの? 男:もー…恥ずかしいなぁ 男:そこはさ、 男:敢えて気付かないフリしてくれてもいいんじゃないか 女:ははっ!私がそんなに気の利くやつだと思っているのかな? 男:あーそうでした、そうでしたよ! 男:ほんっと、変わらないよお前は 女:そりゃどうもー!! 女:―… 女:はあ・・・ 女:それにしても懐かしいね 男:んー? 女:君の「助手席」 女:ハンドル握る手とか、癖とか、横顔とかさ 女:そういうの見ながら景色も見たりして… 女:なんか…すごく落ち着くんだよねー 女:あ、好きな音楽流したりもしたよね!! 男:そうだなあ…懐かしいな 男:せっかく好きな音楽流してるのに、 男:お前ずっと話しかけてくるからさ 男:ほとんど曲が耳に入ってこなかったけどね 女:あはっ!それはそれは、すみませんね!ふふ 男:…まあ、でも 女:ん? 男:お前が話してると、なんかラジオ流してるみたいでさ 男:全然、飽きなかった 女:むぅ…? 女:それは、褒められてるのかどうか、難しいところだね 男:あれ、伝わらない?どう考えても褒めてるだろ 女:んんー…本当に、相変わらず変わってるなあ 0:他愛もない会話と、ドライブは続く 0:   0:   0:…いつの間にか夕暮れ時に 0:   男:随分、走ったなー 女:うん!ありがとう 男:思い出の場所巡り、だいだい終わったな 男:まあ、車内から景色見るだけだったけどさ 女:いいの、それで! 女:いやあーそれにしても…思い出の場所巡りかあ 女:海沿いの星が綺麗だった場所も、 女:二人でいつまでも話し込んだ公園も…― 女:―…初めて大喧嘩した居酒屋も 男:居酒屋のエピソードは今いらないだろ 女:あはっ!ごめんて! 女:だってさあ、どれも私にとっては、最高の思い出なんだもん 男:そっか・・・ 女:うん、そう。最高の、思い出 男:―…あ、ちょっとコンビニ寄っていい?何か飲む? 女:ふふん、私が何を飲むかは、 女:君が一番よく知ってるはずだよね? 男:やはりそう来ましたか 女:そりゃそうだよー! 男:わかった、じゃあ車で待ってて、すぐ戻る 女:はーい! 0:足早に買い物に向かう男 女:・・・車で待ってて、か 女:くるまで、まってて・・・ 女:なんてね 0:買い物を済ませた男が戻る 男:おまたせー!はいっ(飲み物を渡す) 女:わっ!ありがとう! 男:お前が好きなのは、それだよなあ 女:うんうん!ホットココアだね、さっすが!! 男:いつもそればかり飲んでるんだから、誰でもわかるだろ 女:まあ、そうかも知れないけど… 女:君が買ってきてくれたから嬉しいんだよ? 男:へぇ?可愛いとこあるじゃん 女:いつも可愛いですけど?という訳で、いただきまーす! 男:はいはい、どうぞ。俺はコーヒー飲む 女:あ、じゃあ乾杯する? 男:か、乾杯ってお前…でも 女:しようよー!だって私、誕生日だよ? 男:でも、お前っ―― 女:(食い気味で)お願い! 男:・・・ったく、じゃあ、せーので 女:!!…うんっ!!! 男:いくよ?せーのっ 女:かんぱーーーーーーい!!! 男:(遅れて)んぱい… 女:ちょっ!タイミング合わせてよー!! 女:それに何?『んぱい』って。あははっ! 男:お前の元気が良すぎるんだよ 女:んー…まあ、そういう事にしておいてあげましょう 男:・・・ 男:なあ、こんな誕生日でいいの? 女:え?何言ってんの、最高だよ? 女:あ!そうだ、ココアも温かいうちに飲んじゃおー 男:火傷するぞ 女:だってさー…本当に、楽しいんだもん 男:そっか…うん。俺も 女:ははっ!もうー!可愛いんだからあー!(覗き込む) 男:わっ!やめろっ!ほら、運転するぞ!! 0:二人を乗せた車は、再び走り出す 0:   0:   0:すっかり夜になっていた 0:夜景が綺麗で、綺麗で… 0:なんて、皮肉なのだろうか 0:  0:  男:もう、だいぶ走ったな 男:…なあ、今日が終わる前に、行きたいところとかあるか? 女:えー……まだドライブしてたいのに 男:日付変わっちゃうだろ、誕生日はどうするんだよ 女:あ、そっか 男:ぷっ…ははは!あほか! 女:あ…やっと笑った 男:え? 女:あれ?まさか無自覚? 女:あのねえー! 女:せっかく可愛い彼女の誕生日だというのに、 女:ずっと仏頂面だったんだよ? 男:あ、え…ごめん 女:いや、そこは真面目に謝られても、反応に困る。ふふっ 男:~なんだよ、もう! 女:ふふ。うーん、そっかあ、行きたいところかあ… 男:ああ、そうそう。どこでもいいよ 女:どこでもいいんだ? 男:お、おう… 女:なら君の家だね! 男:はああ!? 男:いやいやお前なあ、 男:こんな夜中にいきなり連れて行ったら、親がびっくりするだろ! 女:どれくらい、びっくりするかな? 男:想像出来ないくらい、びっくりするだろうな 女:あはは!そうだよね 女:…ちょっと久しぶりに、ご挨拶でもって思ったんだけどね 男:それは大丈夫だから…(ため息) 男:こんな突拍子もないことを言ってたって事は、ちゃんと伝えておく 女:ちょっと!?それ私の印象悪くならないように頼むよ? 男:はいはい  :  男:・・・で、どうする? 女:うーん、そうだねえー…… 女:あっ!!! 男:お?どこか行きたいところ見つかった? 女:うん!花屋!お花屋さんに行きたい!! 男:また突拍子もなく… 女:だってだって!私、誕生日なのにまだお花もらってないんだよ? 男:だって、それは… 女:あのねえ、 女:君が毎年くれる花は、センスの欠片(かけら)もないんだよ 男:はいはい、すみませんね。センスの欠片もない花を! 女:うむ。だから今年は私が選ぶ 男:…は? 女:聞こえなかった?私が選ぶの 男:それは… 女:いいから!さあさあ!!お花屋さんに出発だー! 男:(ため息)…一度言い出したら、ほんっと聞かないよなあ… 男:わかった、ちょっと待って。 男:この時間にやってる花屋スマホで探すから 女:おお!さすが頼りになる彼氏様!! 男:またそうやって、からかって 女:からかってません!からかってませんー!! 男:はいはい 男:・・・ 女:・・・どう?ありそう? 男:あ、ここギリギリ! 男:もうすぐ閉まっちゃうから早く行こう! 女:やったあー!!お花お花ー!! 男:ほら!シートベルト! 女:あ、はいはい…っと!さあ行こうー!! 男:ほんっと…元気だなあ 0:   0:花屋へと車は走り出す 0:   0:   男:よし、ギリギリセーフ 男:さあ着きましたよ、お姫様 女:うんうん!素晴らしい! 女:早く行こうと言いつつも、 女:法定速度をちゃんと守るのが実に君らしかったよ! 男:俺は安全運転なの! 女:わかってるって!ほら、早くしないとお店閉まっちゃうよ 男:ああ、えーと…車から花見える? 女:うーん…あ、見える見える! 男:良かった、どんな花がいいの? 女:えーと、そうだなあ・・・― 女:あっ!あの花束になってるやつがいい! 男:ん?どれ? 女:あれあれ、あの右手前の、ほら 男:え?…どれだ? 女:ほら、ピンクとかオレンジとかの・・・ 女:明るい色が花束になってるやつ!! 男:・・あーあれか…あれはちょっと違―― 女:(遮る)あれがいいの!! 女:明るくて楽しくて元気が出る花束…絶対あれがいい! 男:でも…―え? 男:俺が毎年あげてる花、そんなに嫌だった…? 女:だから、センスがないと言ったはずだよ 男:う……まあ確かに、あの明るい花束とは真逆だったかもな 女:でしょう?わかればよろしい! 女:―ささっ!早く早く、お店閉まっちゃうんでしょ 男:ああ、うん。すぐ買ってくるからちょっと待ってて 女:はーい!! 0:閉店ギリギリで花束を買いに行く男 0:その様子は、どこか気恥ずかしそうで 0:  0:そんな男を、優しく見つめる瞳 0:  男:はい、お待たせ。どうぞ(花束を渡す) 女:わあ・・・っ! 男:誕生日おめでとう。今年のプレゼントは、その花束ですよ 女:ありがとう… 女:明るくてすごく元気をもらえる花束だね!…嬉しい 男:…買うの、ちょっと恥ずかしかった 女:知ってる!ふふ、ありがとう本当に 女:今日一日、私のわがままに付き合ってくれて 男:いや、俺も楽しんでたからさ 男:やっぱりあれだな…助手席は少しやかましいくらいがいいな 女:やかましいって何よ、やかましいって 男:何というか、いい意味でだよ 女:ふうん? 男:・・・ 男:…じゃあ、そろそろ行くか 女:うん。日付変わっちゃうもんね 男:よし任せろ。 男:安全運転で、尚且つ法定速度を守りながら向かいますね 女:うん!頼みましたよー!よし、出発だー! 0:「目的地」へと、車を走らす 0:  0:   0:二人の「目的地」とは  0:       0:車が止まる  0:       男:・・・着いたよ 男:少し、歩きながら話そうか 0:ゆっくりと歩き出す 男:お前のお願いとは言え、 男:今日は本当に一日中運転してた気がするよ 男:しばらく運転なんてしてなかったから、 男:久しぶりにドライブなんてしたなあ… 男:助手席にはやかましい奴がいて、なんか俺、本当に楽しかった 0:ジャリジャリと足音が響く 男:俺さ、もう車の運転なんて出来ないと思ってたから 男:―…あの日、俺の車で出かける途中だっけ。 男:俺、思わずハンドル左に切ったのにさ…なんで… 男:俺のほうだけ助かっちゃったんだろうな 男:あの日はお前の誕生日で、最高の一日にするはずだったのに… 男:まさか、目の前から車が突っ込んでくるなんて、あんまりだよな 0:   男:なあ…葵。 0:  男:病院で目が覚めて、葵が即死だったって聞いて… 男:俺しばらく頭の中真っ白になっちゃってさ。 男:―だってさっきまで笑ってたんだよ葵は、俺の中で。 男:そんなの信じろっていうほうが無理だろ? 男:葵がいなくなったなんて思えなかったし、実感なんて全然わかなくて… 男:なのに、車に乗るたびに考えちゃうんだよ 男:なんで…俺の助手席はこんなに静かなんだろうって… 男:やかましい葵の声が聞きたいなあって 男:そしたら、だんだん運転するのも怖くなっちゃってさ… 男:本当、情けないよな 男:―…もう運転なんて、出来ないんだって思ってたのに… 男:葵にはわかってたんだな。 男:だから今日、わざわざドライブなんて行きたがったんだよな 男:俺が運転することから逃げないように・・・ 男:葵の死から、現実から逃げないように 男:ちゃんと、前に進んで欲しかったんだよな・・・― 0:葵のお墓の前に着く 0:   男:葵、着いたよ。花、ここに置くよ 男:――…なあ、そろそろ返事してくれよ… 0:   葵:ばか優人 優人:葵… 0:悲しく微笑む葵と、優人と、静寂 0:   0:  0:  0:・・・ 葵:ははっ…優人にはやっぱり、全部お見通しかあ 葵:さすが優人だね、花のセンスはないけど 優人:葵…っ 葵:もう!またそんな暗い顔して。 葵:優人さ、いつも私の命日にお花と一緒に来てくれるけどね 葵:お花も優人も…なんだか辛気臭いの 優人:だって、それは…! 葵:優人。確かに命日だけど、私の大事な誕生日でもあるんだよ 優人:・・・っ! 葵:それにあの事故は、優人は何も悪くない。 葵:だって優人だって被害者なんだよ? 葵:なのに自分の事ばかり責めて、いつも暗い顔してさ 優人:―…ごめん、ごめんな、葵 葵:ほら!また謝った! 葵:毎年毎年そんなんだから今年こそはね、 葵:優人のそんな顔見たくないなーって思ってたのに 葵:優人はさ、名前の通り、優しすぎるんだよ… 優人:…ごめん 葵:はい出た!もう謝るの禁止!…次、謝ったらもう知らないからね 優人:・・・本当に、相変わらずだな葵は 葵:優人もね!…はぁー…今年は本当に嬉しかったなあ 優人:うん 葵:久しぶりに思い出の場所巡りも出来たし 葵:…優人の隣は、やっぱり心地よかった 優人:うん… 葵:それに――… 優人:…それに? 葵:ここに置いてあるじゃん 葵:私らしく明るくて元気な花束がある 葵:それが、最高のプレゼントなの 優人:俺、本当にセンスなかったんだな 葵:ほんとだよ!私のこと、誰よりも知ってるくせに 優人:だな・・・― 優人:なあ、葵。今日の命日、本当にこれで良かったのか? 葵:…命日だけど、私の誕生日だよ 葵:私はね、優人。今、最高に幸せなんだ 優人:…うん 葵:ありがとう、本当に 優人:・・・ 葵:私のわがままにたくさん付き合ってくれて、 葵:ありがとう。だから…― 葵:―…笑って?笑ってる優人でいてほしい。 葵:私ね、優人の笑顔が大好きなんだ 0:日付が変わる 0:  葵:・・・ 葵:誕生日、終わっちゃったね 優人:…ん 葵:ずっとドライブが終わらなきゃ良かったのになぁ…なんてね 葵:わがままだよね。私バカだからさ、色々考えちゃった 優人:色々って、何を? 葵:―・・・助手席、優人のとなり 優人:え? 葵:私の特等席。 葵:あの「助手席」に、いつか違う子が座るのかなあって… 葵:優人はその子に、どんな顔して笑うんだろうなって考えちゃって 葵:おかしいよね…?それを望んでたはずなのに、 葵:なんか想像したら嫉妬しちゃってさ… 葵:―こんな事言ったら優人困らせちゃうのに、ほんと私バカだ―… 優人:バカじゃない!!あの助手席は葵の特等席なんだろ!? 優人:だったら俺はっ― 葵:(遮る)それじゃだめなんだって!!前に進んでよ!! 葵:私の事なんて忘れてさあ…! 葵:とっとと幸せになってよっ…!!! 優人:忘れられる訳ないだろ!? 優人:俺は車に乗るたびにっ…葵を…っ―― 葵:もういないんだって!!私もう死んじゃったんだよ! 葵:…っお願いだから…! 葵:お願いだからっ!!笑ってる優人でいてよ…っ! 優人:なに、言って… 葵:…あれ、私…言ってる事めちゃくちゃだ 葵:嫉妬するとか、前に進んでとか…ごめん優人 優人:葵っ!!! 葵:っ・・・! 葵:本当は忘れてほしくなんかないよ!!! 葵:他の誰かに笑いかけてる優人なんて、いやだよ…っ! 葵:寂しいに決まってるじゃん…! 優人:っ…だから俺は!! 葵:でもっ!!…お願い。最後のわがまま聞いて… 葵:私にかっこつけさせてよ…。 葵:ほんと、ごめん、言ってる事めちゃくちゃで 葵:忘れろって言ったり、寂しいって言ったり、 葵:私ほんとバカだけどさ… 優人:…葵がバカなのは、いつもだろ 葵:ははっ…そうだったね、あのね。優人 優人:…うん 葵:ありがとう。本当に、ありがとう…幸せになってね 優人:・・・ 葵:せっかくかっこつけたんだから、返事くらいしてよ 優人:…ばか 葵:っふふ…ばかなのは知ってるよ 0:  葵:――…さてと、私もしっかりしなきゃね 優人:・・・葵? 0:「覚悟」の時が二人にやってくる 0:  0:  0:  0:夜の暗さが、冷たさが、「別れ」を意識させた 0:  葵:――…もう、いくね。優人 優人:・・・ 葵:私いなくても、ちゃんと笑っててね? 優人:…わかった、わかったから、もう 葵:ほんとに?ちゃんとだよ、笑っててね? 優人:葵、本当に変わらない 葵:え? 優人:…しつこい 葵:ははっ!名残惜しくなちゃって…バカだね私 葵:…でも、かっこつけるね 0:葵、深く深呼吸をする 0:  葵:―…それじゃあ、ばいばい。優人 優人:…っ!! 優人:バカなんかじゃないっ!葵はっ… 優人:ばか正直なんだよ、ばか…!! 0:葵が優しく微笑む 優人:っ…!葵っ!!葵の笑顔、俺、大好きだよ!! 優人:ずっと…っ! 0:  0:  優人:Ⅿ)葵はそれを聞くと、涙をこぼしながら 優人:Ⅿ)くしゃくしゃに笑って消えていった 0:   優人:やっぱりその笑顔反則だな…っばか… 0:  0:・・・ 0:  優人:Ⅿ)車に戻ると助手席には 優人:未開封のホットココアがポツンと置かれている 優人:もうとっくに冷たくなった「ホットココア」 0:  優人:Ⅿ)俺はエンジンをかける 優人:今日、あんなにやかましかった助手席が 優人:こんなにも静まり返っている 優人:――来年は 優人:来年はどんな花にしようか 優人:葵、俺はどうすればいいだろう 0:  優人:Ⅿ)葵の言葉、一つ一つを思い出す 葵:Ⅿ)私らしく明るくて元気な花束がある 葵:Ⅿ)それが最高のプレゼントなの 優人:Ⅿ)そう、葵のような… 葵:Ⅿ)優人はさ、名前の通り、優しすぎるんだよ 優人:Ⅿ)明るくて元気な優しい花を… 葵:Ⅿ)優人の笑顔が大好きなんだ 優人:Ⅿ)そんな花束を君に届けよう 0:   0:  0:… 優人:ちゃんと笑顔で前を向くよ 優人:これからは…きっと 0:  0:  優人:「葵。ありがとう」 0:了

0:ラスト・ドライブ――― 0:  0:   優人: (男役の方は、予めチェック必須) 葵: (女役の方は、予めチェック必須) 0:  0:   0:目的地に向かい車を走らせる男 0:     0:     男:ごめん!お待たせ 女:ああー!やっと来た! 男:やっとってなんだよ 男:俺はね、これでも安全運転で尚且つ急いで―― 女:(遮る)あーもう、わかったわかった、わかったから 男:ちょ、おまえなあ… 女:いくよ? 女:これでも安全運転で尚且つ急いでー 女:それでも法定速度を守りながら、来てくれてどうもー!! 女:…でしょ? 男:う・・・ 女:どう?大正解なんじゃない? 男:…相変わらず、俺の言いたいことはお見通しなのか 女:ははっ!当たり前じゃないのー 女:何年の付き合いだと思ってるの? 男:まあ、そうだな 女:うーん、でもねえ。今日は遅れてほしくなかったな 男:まあ、うん。ですよね… 女:はい!そこの君! 女:今日は何の日でしょうか! 男:・・・誕生日だろ 女:声が小さい、もう一度! 男:だーかーら!あなた様の誕生日でございます! 男:…これでいいだろ 女:そう!そうだよー!やれば出来るじゃないかー! 男:馬鹿にされてる気しかしないんだが 女:ははっ!馬鹿になんてしてないよー… 女:…ちょっとからかっただけ 男:それを馬鹿にしてるって言うんだろうが 女:(いたずらっぽく笑う)えへへっ!  男:―… 男:はあ…えーとじゃあ、やり直させて 女:お?おお?そうだなあーじゃあいいよ!どうぞ! 男:お前のそういうところ、本当に変わらないのな 女:あーもう!いいから、さあ!早く早く! 男:だあーもう!! 男:…―えっと、誕生日という大事な日に遅れてしまって、 男:大変申し訳ございません…でした!! 女:わあ!さっすが私の彼氏様!気分がいいもんだね! 男:お前なあ… 女:はい!じゃあ気を取り直して 女:私の誕生日ドライブ、出発だよー!! 男:はいはい、行きますよ 男:―… 男:あ、 女:ん?なあに? 男:シートベルト 女:あー、はいはい…っと 男:うん。よしそれじゃあ… 男:(棒読み)はーい行きますよー。楽しみだな楽しみだなあー 女:その棒読み、どうにかなりませんかねえー 男:何を今更。俺はもともとこんなんだよ 女:だめー。今日は、だめ 男:(ため息)行きましょうか、お姫様 女:お?!いいねえ!ふふ、本当に相変わらずだね。君も 男:お前だけには言われたくないけどな 女:ははっ!まあまあ、行きましょう! 0:しばらくドライブする二人 0:    0:   0: ・・・―― 女:…うん。そっか 女:私たち二人が訪れた場所… 女:たくさん巡ってくれてるんだね 男:あ、バレた? 女:え?いやいや、逆にバレないと思ったの? 男:もー…恥ずかしいなぁ 男:そこはさ、 男:敢えて気付かないフリしてくれてもいいんじゃないか 女:ははっ!私がそんなに気の利くやつだと思っているのかな? 男:あーそうでした、そうでしたよ! 男:ほんっと、変わらないよお前は 女:そりゃどうもー!! 女:―… 女:はあ・・・ 女:それにしても懐かしいね 男:んー? 女:君の「助手席」 女:ハンドル握る手とか、癖とか、横顔とかさ 女:そういうの見ながら景色も見たりして… 女:なんか…すごく落ち着くんだよねー 女:あ、好きな音楽流したりもしたよね!! 男:そうだなあ…懐かしいな 男:せっかく好きな音楽流してるのに、 男:お前ずっと話しかけてくるからさ 男:ほとんど曲が耳に入ってこなかったけどね 女:あはっ!それはそれは、すみませんね!ふふ 男:…まあ、でも 女:ん? 男:お前が話してると、なんかラジオ流してるみたいでさ 男:全然、飽きなかった 女:むぅ…? 女:それは、褒められてるのかどうか、難しいところだね 男:あれ、伝わらない?どう考えても褒めてるだろ 女:んんー…本当に、相変わらず変わってるなあ 0:他愛もない会話と、ドライブは続く 0:   0:   0:…いつの間にか夕暮れ時に 0:   男:随分、走ったなー 女:うん!ありがとう 男:思い出の場所巡り、だいだい終わったな 男:まあ、車内から景色見るだけだったけどさ 女:いいの、それで! 女:いやあーそれにしても…思い出の場所巡りかあ 女:海沿いの星が綺麗だった場所も、 女:二人でいつまでも話し込んだ公園も…― 女:―…初めて大喧嘩した居酒屋も 男:居酒屋のエピソードは今いらないだろ 女:あはっ!ごめんて! 女:だってさあ、どれも私にとっては、最高の思い出なんだもん 男:そっか・・・ 女:うん、そう。最高の、思い出 男:―…あ、ちょっとコンビニ寄っていい?何か飲む? 女:ふふん、私が何を飲むかは、 女:君が一番よく知ってるはずだよね? 男:やはりそう来ましたか 女:そりゃそうだよー! 男:わかった、じゃあ車で待ってて、すぐ戻る 女:はーい! 0:足早に買い物に向かう男 女:・・・車で待ってて、か 女:くるまで、まってて・・・ 女:なんてね 0:買い物を済ませた男が戻る 男:おまたせー!はいっ(飲み物を渡す) 女:わっ!ありがとう! 男:お前が好きなのは、それだよなあ 女:うんうん!ホットココアだね、さっすが!! 男:いつもそればかり飲んでるんだから、誰でもわかるだろ 女:まあ、そうかも知れないけど… 女:君が買ってきてくれたから嬉しいんだよ? 男:へぇ?可愛いとこあるじゃん 女:いつも可愛いですけど?という訳で、いただきまーす! 男:はいはい、どうぞ。俺はコーヒー飲む 女:あ、じゃあ乾杯する? 男:か、乾杯ってお前…でも 女:しようよー!だって私、誕生日だよ? 男:でも、お前っ―― 女:(食い気味で)お願い! 男:・・・ったく、じゃあ、せーので 女:!!…うんっ!!! 男:いくよ?せーのっ 女:かんぱーーーーーーい!!! 男:(遅れて)んぱい… 女:ちょっ!タイミング合わせてよー!! 女:それに何?『んぱい』って。あははっ! 男:お前の元気が良すぎるんだよ 女:んー…まあ、そういう事にしておいてあげましょう 男:・・・ 男:なあ、こんな誕生日でいいの? 女:え?何言ってんの、最高だよ? 女:あ!そうだ、ココアも温かいうちに飲んじゃおー 男:火傷するぞ 女:だってさー…本当に、楽しいんだもん 男:そっか…うん。俺も 女:ははっ!もうー!可愛いんだからあー!(覗き込む) 男:わっ!やめろっ!ほら、運転するぞ!! 0:二人を乗せた車は、再び走り出す 0:   0:   0:すっかり夜になっていた 0:夜景が綺麗で、綺麗で… 0:なんて、皮肉なのだろうか 0:  0:  男:もう、だいぶ走ったな 男:…なあ、今日が終わる前に、行きたいところとかあるか? 女:えー……まだドライブしてたいのに 男:日付変わっちゃうだろ、誕生日はどうするんだよ 女:あ、そっか 男:ぷっ…ははは!あほか! 女:あ…やっと笑った 男:え? 女:あれ?まさか無自覚? 女:あのねえー! 女:せっかく可愛い彼女の誕生日だというのに、 女:ずっと仏頂面だったんだよ? 男:あ、え…ごめん 女:いや、そこは真面目に謝られても、反応に困る。ふふっ 男:~なんだよ、もう! 女:ふふ。うーん、そっかあ、行きたいところかあ… 男:ああ、そうそう。どこでもいいよ 女:どこでもいいんだ? 男:お、おう… 女:なら君の家だね! 男:はああ!? 男:いやいやお前なあ、 男:こんな夜中にいきなり連れて行ったら、親がびっくりするだろ! 女:どれくらい、びっくりするかな? 男:想像出来ないくらい、びっくりするだろうな 女:あはは!そうだよね 女:…ちょっと久しぶりに、ご挨拶でもって思ったんだけどね 男:それは大丈夫だから…(ため息) 男:こんな突拍子もないことを言ってたって事は、ちゃんと伝えておく 女:ちょっと!?それ私の印象悪くならないように頼むよ? 男:はいはい  :  男:・・・で、どうする? 女:うーん、そうだねえー…… 女:あっ!!! 男:お?どこか行きたいところ見つかった? 女:うん!花屋!お花屋さんに行きたい!! 男:また突拍子もなく… 女:だってだって!私、誕生日なのにまだお花もらってないんだよ? 男:だって、それは… 女:あのねえ、 女:君が毎年くれる花は、センスの欠片(かけら)もないんだよ 男:はいはい、すみませんね。センスの欠片もない花を! 女:うむ。だから今年は私が選ぶ 男:…は? 女:聞こえなかった?私が選ぶの 男:それは… 女:いいから!さあさあ!!お花屋さんに出発だー! 男:(ため息)…一度言い出したら、ほんっと聞かないよなあ… 男:わかった、ちょっと待って。 男:この時間にやってる花屋スマホで探すから 女:おお!さすが頼りになる彼氏様!! 男:またそうやって、からかって 女:からかってません!からかってませんー!! 男:はいはい 男:・・・ 女:・・・どう?ありそう? 男:あ、ここギリギリ! 男:もうすぐ閉まっちゃうから早く行こう! 女:やったあー!!お花お花ー!! 男:ほら!シートベルト! 女:あ、はいはい…っと!さあ行こうー!! 男:ほんっと…元気だなあ 0:   0:花屋へと車は走り出す 0:   0:   男:よし、ギリギリセーフ 男:さあ着きましたよ、お姫様 女:うんうん!素晴らしい! 女:早く行こうと言いつつも、 女:法定速度をちゃんと守るのが実に君らしかったよ! 男:俺は安全運転なの! 女:わかってるって!ほら、早くしないとお店閉まっちゃうよ 男:ああ、えーと…車から花見える? 女:うーん…あ、見える見える! 男:良かった、どんな花がいいの? 女:えーと、そうだなあ・・・― 女:あっ!あの花束になってるやつがいい! 男:ん?どれ? 女:あれあれ、あの右手前の、ほら 男:え?…どれだ? 女:ほら、ピンクとかオレンジとかの・・・ 女:明るい色が花束になってるやつ!! 男:・・あーあれか…あれはちょっと違―― 女:(遮る)あれがいいの!! 女:明るくて楽しくて元気が出る花束…絶対あれがいい! 男:でも…―え? 男:俺が毎年あげてる花、そんなに嫌だった…? 女:だから、センスがないと言ったはずだよ 男:う……まあ確かに、あの明るい花束とは真逆だったかもな 女:でしょう?わかればよろしい! 女:―ささっ!早く早く、お店閉まっちゃうんでしょ 男:ああ、うん。すぐ買ってくるからちょっと待ってて 女:はーい!! 0:閉店ギリギリで花束を買いに行く男 0:その様子は、どこか気恥ずかしそうで 0:  0:そんな男を、優しく見つめる瞳 0:  男:はい、お待たせ。どうぞ(花束を渡す) 女:わあ・・・っ! 男:誕生日おめでとう。今年のプレゼントは、その花束ですよ 女:ありがとう… 女:明るくてすごく元気をもらえる花束だね!…嬉しい 男:…買うの、ちょっと恥ずかしかった 女:知ってる!ふふ、ありがとう本当に 女:今日一日、私のわがままに付き合ってくれて 男:いや、俺も楽しんでたからさ 男:やっぱりあれだな…助手席は少しやかましいくらいがいいな 女:やかましいって何よ、やかましいって 男:何というか、いい意味でだよ 女:ふうん? 男:・・・ 男:…じゃあ、そろそろ行くか 女:うん。日付変わっちゃうもんね 男:よし任せろ。 男:安全運転で、尚且つ法定速度を守りながら向かいますね 女:うん!頼みましたよー!よし、出発だー! 0:「目的地」へと、車を走らす 0:  0:   0:二人の「目的地」とは  0:       0:車が止まる  0:       男:・・・着いたよ 男:少し、歩きながら話そうか 0:ゆっくりと歩き出す 男:お前のお願いとは言え、 男:今日は本当に一日中運転してた気がするよ 男:しばらく運転なんてしてなかったから、 男:久しぶりにドライブなんてしたなあ… 男:助手席にはやかましい奴がいて、なんか俺、本当に楽しかった 0:ジャリジャリと足音が響く 男:俺さ、もう車の運転なんて出来ないと思ってたから 男:―…あの日、俺の車で出かける途中だっけ。 男:俺、思わずハンドル左に切ったのにさ…なんで… 男:俺のほうだけ助かっちゃったんだろうな 男:あの日はお前の誕生日で、最高の一日にするはずだったのに… 男:まさか、目の前から車が突っ込んでくるなんて、あんまりだよな 0:   男:なあ…葵。 0:  男:病院で目が覚めて、葵が即死だったって聞いて… 男:俺しばらく頭の中真っ白になっちゃってさ。 男:―だってさっきまで笑ってたんだよ葵は、俺の中で。 男:そんなの信じろっていうほうが無理だろ? 男:葵がいなくなったなんて思えなかったし、実感なんて全然わかなくて… 男:なのに、車に乗るたびに考えちゃうんだよ 男:なんで…俺の助手席はこんなに静かなんだろうって… 男:やかましい葵の声が聞きたいなあって 男:そしたら、だんだん運転するのも怖くなっちゃってさ… 男:本当、情けないよな 男:―…もう運転なんて、出来ないんだって思ってたのに… 男:葵にはわかってたんだな。 男:だから今日、わざわざドライブなんて行きたがったんだよな 男:俺が運転することから逃げないように・・・ 男:葵の死から、現実から逃げないように 男:ちゃんと、前に進んで欲しかったんだよな・・・― 0:葵のお墓の前に着く 0:   男:葵、着いたよ。花、ここに置くよ 男:――…なあ、そろそろ返事してくれよ… 0:   葵:ばか優人 優人:葵… 0:悲しく微笑む葵と、優人と、静寂 0:   0:  0:  0:・・・ 葵:ははっ…優人にはやっぱり、全部お見通しかあ 葵:さすが優人だね、花のセンスはないけど 優人:葵…っ 葵:もう!またそんな暗い顔して。 葵:優人さ、いつも私の命日にお花と一緒に来てくれるけどね 葵:お花も優人も…なんだか辛気臭いの 優人:だって、それは…! 葵:優人。確かに命日だけど、私の大事な誕生日でもあるんだよ 優人:・・・っ! 葵:それにあの事故は、優人は何も悪くない。 葵:だって優人だって被害者なんだよ? 葵:なのに自分の事ばかり責めて、いつも暗い顔してさ 優人:―…ごめん、ごめんな、葵 葵:ほら!また謝った! 葵:毎年毎年そんなんだから今年こそはね、 葵:優人のそんな顔見たくないなーって思ってたのに 葵:優人はさ、名前の通り、優しすぎるんだよ… 優人:…ごめん 葵:はい出た!もう謝るの禁止!…次、謝ったらもう知らないからね 優人:・・・本当に、相変わらずだな葵は 葵:優人もね!…はぁー…今年は本当に嬉しかったなあ 優人:うん 葵:久しぶりに思い出の場所巡りも出来たし 葵:…優人の隣は、やっぱり心地よかった 優人:うん… 葵:それに――… 優人:…それに? 葵:ここに置いてあるじゃん 葵:私らしく明るくて元気な花束がある 葵:それが、最高のプレゼントなの 優人:俺、本当にセンスなかったんだな 葵:ほんとだよ!私のこと、誰よりも知ってるくせに 優人:だな・・・― 優人:なあ、葵。今日の命日、本当にこれで良かったのか? 葵:…命日だけど、私の誕生日だよ 葵:私はね、優人。今、最高に幸せなんだ 優人:…うん 葵:ありがとう、本当に 優人:・・・ 葵:私のわがままにたくさん付き合ってくれて、 葵:ありがとう。だから…― 葵:―…笑って?笑ってる優人でいてほしい。 葵:私ね、優人の笑顔が大好きなんだ 0:日付が変わる 0:  葵:・・・ 葵:誕生日、終わっちゃったね 優人:…ん 葵:ずっとドライブが終わらなきゃ良かったのになぁ…なんてね 葵:わがままだよね。私バカだからさ、色々考えちゃった 優人:色々って、何を? 葵:―・・・助手席、優人のとなり 優人:え? 葵:私の特等席。 葵:あの「助手席」に、いつか違う子が座るのかなあって… 葵:優人はその子に、どんな顔して笑うんだろうなって考えちゃって 葵:おかしいよね…?それを望んでたはずなのに、 葵:なんか想像したら嫉妬しちゃってさ… 葵:―こんな事言ったら優人困らせちゃうのに、ほんと私バカだ―… 優人:バカじゃない!!あの助手席は葵の特等席なんだろ!? 優人:だったら俺はっ― 葵:(遮る)それじゃだめなんだって!!前に進んでよ!! 葵:私の事なんて忘れてさあ…! 葵:とっとと幸せになってよっ…!!! 優人:忘れられる訳ないだろ!? 優人:俺は車に乗るたびにっ…葵を…っ―― 葵:もういないんだって!!私もう死んじゃったんだよ! 葵:…っお願いだから…! 葵:お願いだからっ!!笑ってる優人でいてよ…っ! 優人:なに、言って… 葵:…あれ、私…言ってる事めちゃくちゃだ 葵:嫉妬するとか、前に進んでとか…ごめん優人 優人:葵っ!!! 葵:っ・・・! 葵:本当は忘れてほしくなんかないよ!!! 葵:他の誰かに笑いかけてる優人なんて、いやだよ…っ! 葵:寂しいに決まってるじゃん…! 優人:っ…だから俺は!! 葵:でもっ!!…お願い。最後のわがまま聞いて… 葵:私にかっこつけさせてよ…。 葵:ほんと、ごめん、言ってる事めちゃくちゃで 葵:忘れろって言ったり、寂しいって言ったり、 葵:私ほんとバカだけどさ… 優人:…葵がバカなのは、いつもだろ 葵:ははっ…そうだったね、あのね。優人 優人:…うん 葵:ありがとう。本当に、ありがとう…幸せになってね 優人:・・・ 葵:せっかくかっこつけたんだから、返事くらいしてよ 優人:…ばか 葵:っふふ…ばかなのは知ってるよ 0:  葵:――…さてと、私もしっかりしなきゃね 優人:・・・葵? 0:「覚悟」の時が二人にやってくる 0:  0:  0:  0:夜の暗さが、冷たさが、「別れ」を意識させた 0:  葵:――…もう、いくね。優人 優人:・・・ 葵:私いなくても、ちゃんと笑っててね? 優人:…わかった、わかったから、もう 葵:ほんとに?ちゃんとだよ、笑っててね? 優人:葵、本当に変わらない 葵:え? 優人:…しつこい 葵:ははっ!名残惜しくなちゃって…バカだね私 葵:…でも、かっこつけるね 0:葵、深く深呼吸をする 0:  葵:―…それじゃあ、ばいばい。優人 優人:…っ!! 優人:バカなんかじゃないっ!葵はっ… 優人:ばか正直なんだよ、ばか…!! 0:葵が優しく微笑む 優人:っ…!葵っ!!葵の笑顔、俺、大好きだよ!! 優人:ずっと…っ! 0:  0:  優人:Ⅿ)葵はそれを聞くと、涙をこぼしながら 優人:Ⅿ)くしゃくしゃに笑って消えていった 0:   優人:やっぱりその笑顔反則だな…っばか… 0:  0:・・・ 0:  優人:Ⅿ)車に戻ると助手席には 優人:未開封のホットココアがポツンと置かれている 優人:もうとっくに冷たくなった「ホットココア」 0:  優人:Ⅿ)俺はエンジンをかける 優人:今日、あんなにやかましかった助手席が 優人:こんなにも静まり返っている 優人:――来年は 優人:来年はどんな花にしようか 優人:葵、俺はどうすればいいだろう 0:  優人:Ⅿ)葵の言葉、一つ一つを思い出す 葵:Ⅿ)私らしく明るくて元気な花束がある 葵:Ⅿ)それが最高のプレゼントなの 優人:Ⅿ)そう、葵のような… 葵:Ⅿ)優人はさ、名前の通り、優しすぎるんだよ 優人:Ⅿ)明るくて元気な優しい花を… 葵:Ⅿ)優人の笑顔が大好きなんだ 優人:Ⅿ)そんな花束を君に届けよう 0:   0:  0:… 優人:ちゃんと笑顔で前を向くよ 優人:これからは…きっと 0:  0:  優人:「葵。ありがとう」 0:了