台本概要

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タイトル プレゼント~奇跡の贈り物~
作者名 青太郎。  (@a_waiiro)
ジャンル その他
演者人数 2人用台本(男1、女1)
時間 50 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明  ~これは希望の物語~

・2人用声劇台本
 (性別不問) #ヒューマンドラマ

(なりきって頂ければ細かく性別は問いませんが、
 演者様にお任せします。)

  ▼登場人物▼

 夫 (アキ)あき

〇優しく温厚だが、少々神経質な部分あり
妻の春夏を愛してるが。

 妻(春夏)はるか

〇明るく陽気だが、少々情緒不安定で
そそっかしい。
夫のアキを愛してる、が。

※名前の後にMはモノローグです。

※もしもの連絡先(X)が、
 鍵付きなので
 フォローリクエストしてくだされば対応できます。
 お手数をおかけします。

※前読み推奨します。
 (任意ですが、
なるべく前読みは推奨します。)

※アキ役・春夏役に
それぞれ語りの文章がありますが
 ここは役の心情は関係ありません。
(読み方は演者様にお任せ致します。)

※結末が大きく変わることがなければ
 基本的に演者様のセンスで
 語尾・間の取り方・アドリブ改変等
 演じやすいようお任せ致します。
(楽しんで声劇しましょう!) 

      制作協力・月太郎。様
      Special Thanks‼

  皆さんに、素敵なプレゼントを
     素敵な日々を。

  ――――例えXmasじゃなくても
        特別な一日を。

  かげかえのない日々を。
    記憶を。奇跡を。

    ~present for you~
                  
                 2024.3.10 作/青太郎。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
アキ 130 夫 (アキ)あき 〇優しく温厚だが、少々神経質な部分あり 妻の春夏を愛してるが。
春夏 128 妻(春夏)はるか 〇明るく陽気だが、少々情緒不安定 そそっかしい。夫のアキを愛してるが。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
0:プレゼント――― 0:  0: 0:   0:   0:   (春夏・語り) 0:    0: さんたさんって 0: なんでもねがいを 0: かなえてくれるってきいたんだ 0:   0: なら、かなえてよ 0:   0: さんたさん 0:   0:   0:―――――間 0:   0:   0:―――――夕食後、机で向き合うアキと春夏 0:   0:   アキ:「今年もこの季節がきたね」 春夏:「だねぇ」 アキ:「言っておくけど…譲らないよ?」 春夏:「望むところですー!」 春夏:  春夏:    アキ(Ⅿ:俺たち夫婦はちょっと変わっている アキ(Ⅿ:毎年この時期になると アキ(Ⅿ:そう アキ(Ⅿ:クリスマスが近づき街が彩り始めると アキ(Ⅿ:   春夏(Ⅿ:私たちは、クリスマスプレゼントのサプライズで 春夏(Ⅿ:どちらがより、喜ばせることが出来るか 春夏(Ⅿ:対決している 春夏(Ⅿ:今年も、街はキラキラとしてきた 春夏(Ⅿ:  春夏(Ⅿ:    アキ:「・・・よし、とりあえず口頭ではお互いにノーヒント アキ: って条件は大丈夫そうだな!」 春夏:「そうだね… 春夏: 難しいけど、口では何も伝えてない! 春夏: 私の行動や言動でバレバレじゃない限り、勝てる自信はあるもん!」 アキ:「ほう?」 春夏:「……なによ」 アキ:「その、行動や言動、随分と自信があるのかな?今年は。 アキ: 去年はバレバレ過ぎて、俺が勝ったなあ~」 春夏:「ちょっと!去年はたまたま! 春夏: 去年は去年!今年は今年! 春夏: …そういうアキこそ、随分と自信があるのかなー?」 アキ:「…ふふ」 アキ:「ちょっと煽っただけでこの反応かあ… アキ: やりごたえがありそうだ」 春夏:「アキぃ……ああ、もう!! 春夏: 今年こそ、ギャフンと言わせてやるからね!」 アキ:「……その、ギャフンってさ」 春夏:「え?」 アキ:「ギャフンって…… アキ: 今どき、実際に使う人いるのかな…」 0: ・・・ アキ:「…ぷっ! アキ:ははっ!(耐えきれず吹き出す)」 春夏:「なっ!?」 春夏:「人の揚げ足ばっかとってないでよ! 春夏: いっつもそうやってバカにするんだから… 春夏: …でも、確かに 春夏: ギャフン…か……ぷふっ!(釣られて笑う)」 春夏:   アキ:「ははっ!じゃあ俺がその、ギャフン?って言わせるくらい アキ: 頑張らないとね!」 春夏:「ギャフンなんて言わないでしょ、今どき!」 アキ:「春夏が最初に言ったんでしょ!」 春夏:「あーもう!この話終わりー!」 アキ:「はいはい」 アキ:   春夏:「…さてさて!買い物は明日だから、 春夏: 今日は私の大事な手帳に作戦の続きを書こう… 春夏: アキはずる賢いから、何パターンか用意しないとな…(ぶつぶつ)」 0:―――――そっと手帳を覗き込むアキ 0:  アキ:「ふむふむ、今年もですか」 春夏:「わっ!?」 0:―――――すかさず手帳を覆って隠す春夏 0:    春夏:「ちょっと、見ちゃダメ!」 アキ:「大丈夫見えてない」 春夏:「…やっぱり寝室で書く! 春夏: 覗き見さんがいるところで書けないもんね!」 0:―――――春夏、席を立つ 0:   アキ:「覗き見って! アキ: そこでいきなり何かし出したら気になるだろー?」 春夏:「個人情報なの!」 アキ:「個人情報?俺もダメなの?」 春夏:「だーめ!私あと寝るだけだから、 春夏: リビングの電気とか水周り、忘れないでね? 春夏: よろしくねー!じゃあおやすみー!」 アキ:「…いつものことじゃん(小声)」 春夏:「はい?!」 アキ:「はーい、オヤスミー(棒)」 0:  ・・・ アキ:「あ、春夏」 春夏:「ん?なに?」 アキ:「その手帳、さっきの…」 春夏:「なあに?時間稼ぎならやめてよ?」 アキ:「いや、そうじゃなくて アキ: …さっき、作戦?のことで、 アキ: 何パターンか用意するって言ってたじゃん? アキ: それってプレゼントのこと?」 春夏:・・・  春夏:「へ?」 アキ:「プレゼントを何パターンか用意するの?」 春夏:「…ん?ああ!違う違う!」 アキ:・・・  アキ:「へ?」 春夏:「作戦パターンを何パターンか用意するだけだよ、 春夏: プレゼントはもちろん1つ」 アキ:「ああ、だよね」 春夏:「そんなずるいことしませんー!」 春夏:  アキ:「ごめんごめん。じゃあ… アキ: 俺も正々堂々戦う為に、作戦練ろうかな? アキ: ………ギャフン、の!(ギャフンを誇張)」 アキ:    春夏:「……(睨みながら)おやすみっ…!」 0:――――――春夏がいつもより大きく音を立てて寝室にバタン!と入る 0:  アキ:「……こっわ(笑)」 アキ: まあでも、作戦…か」 アキ:  アキ(Ⅿ:寝室から微かに春夏の声が聞こえる アキ(Ⅿ:春夏は集中すると、文字を書きながら、 アキ(Ⅿ:それをそのまま口にする癖がある アキ(Ⅿ:聞き取れるほどではないので アキ(Ⅿ:春夏の独り言は、作業用BGMにして アキ(Ⅿ:寝る準備を進める アキ(Ⅿ:   アキ:「明日は、朝から戦いかな(クスッと笑う) アキ: 言わせてみたいもんだよ。 アキ: …ギャフン、か」 0:  0:―――――間 0:  春夏(Ⅿ:リビングのほうで、 春夏(Ⅿ:ガチャガチャと寝る支度の音がする 春夏(Ⅿ:作戦は、あまり進まない 春夏(Ⅿ:このままアキが寝室に来る方が早そうだ 春夏(Ⅿ:明日は早いので、私は手帳を閉じて 春夏(Ⅿ:眠りにつくことにした 春夏(Ⅿ:    春夏:「…ギャフン、か」 春夏:  春夏(Ⅿ:他愛もない話で過ごす 春夏(Ⅿ:アキとの時間が、心地いい 春夏(Ⅿ:    春夏:「言わせてみたいもんだなあ。 春夏: …ギャフンって」 0:  0:   (語り・アキ役) 0:  0: さんたさんって 0: なんでもねがいを 0: かなえてくれるってきいたんだ 0:   0: なら、かなえてよ 0:  0: さんたさん 0:  0: 0:―――――翌日 0:  0: ・・・ アキ:「よし、着いた!」 アキ:   アキ(Ⅿ:自宅から車で30分ほどの アキ(Ⅿ:大型ショッピングモールに到着して アキ(Ⅿ:車を停める アキ(Ⅿ:   アキ:「あれ?………あ。」 アキ:    0:―――――助手席で爆睡する春夏の耳元で アキ:「着いたよー!!!(大声)」 春夏:「ひゃうっ!?」 アキ:「おはよ。のび太かお前は(笑)」 春夏:「うわーごめん!寝ちゃってたのかあ! 春夏: 気合い入り過ぎちゃって、 春夏: あの後寝付きが悪かったんだもん~ごめんね」 アキ:「はいはい、慣れた慣れた」 アキ:   アキ:「はい、ココア買っといたよ」 春夏:「あ、ありがと…」 春夏:      春夏(Ⅿ:本当に手馴れてる 春夏(Ⅿ:まるで赤子をあやす様に 春夏(Ⅿ:嫌な顔ひとつせず、責めたりもせず 春夏(Ⅿ:穏やかに微笑むアキ 春夏(Ⅿ:   春夏(Ⅿ:この人と結婚して良かった……なんて 春夏(Ⅿ:普段は意識しないようにしている事を 春夏(Ⅿ:寝ぼけた頭でココアを飲みながら 春夏(Ⅿ:ぼんやりと思う 春夏(Ⅿ:  春夏:「・・・」 0:―――――何か言いたげに春夏を見つめるアキ 春夏:「…あ!そっか着いたんだっけ!? 春夏: よし! 春夏: 惚気けてる場合じゃないね、戦いだ!」 アキ:「え?いつ惚気けたの?」 春夏:「え!?いや……その」 春夏:   春夏(Ⅿ:頭で考えていた事と繋げて会話をしてしまった 春夏(Ⅿ:……恥ずかしい 春夏(Ⅿ:私は本当に幸せ者のはず 春夏(Ⅿ:そんな私を見るアキのニヤニヤ顔は 春夏(Ⅿ:少し腹立たしいけれど 春夏(Ⅿ:   春夏(Ⅿ:今のは私が1本とられたか… 春夏(Ⅿ:  アキ:「おやおや?そんなに寝ぼけて アキ: 優しい俺に惚れ直したのかな?ん?」 春夏:「違う!」 アキ:「顔、真っ赤じゃん(笑)」 春夏:「……っ!と、とにかく! 春夏: もう勝負は始まりだよ!」 アキ:「もちろん!まかせろ!」 春夏:「さあ行こう!ココアありがとうね!」 春夏:  0:―――――せわしなく車を出る春夏 アキ:「どういたしまして…って、 アキ: ちょっと、転ばないでね!?」 春夏:「大丈夫だよー!!」 春夏:   アキ(Ⅿ:そんな楽しそうな表情をされると アキ(Ⅿ:何も言えなくなってしまう アキ(Ⅿ:そう、 アキ(Ⅿ:何も言えなく―…………―ならないな。 アキ(Ⅿ:   アキ:「春夏ちゃん♪」 春夏:「ん?」 アキ:「半ドアだから。これ7回目ね」 春夏:「あ、ごめん!」 アキ:「バッテリーあがったらどうするんだよー」 春夏:「ごめんってばー! 春夏: でも、アキが気付くから大丈夫だよ! 春夏: …それにぃー……(ニヤニヤ)」 春夏:  アキ:「それに?」 アキ:  春夏:「ハザードランプついたままだよ?」 アキ:「あっ!やばっ!!」 春夏:「ほぉ~?半ドアには気付くのに、 春夏: その点滅には気付かないのか… 春夏: さては戦(いくさ)を前にして怖気付いてるな?」 春夏:   アキ:「違うわ!たまたま、うっかりだわ!」 春夏:「あらあらぁ♪」 春夏:   アキ(Ⅿ:前言撤回。 アキ(Ⅿ:どうやら、やはり アキ(Ⅿ:何も言えないようだ アキ(Ⅿ:   アキ(Ⅿ:毎年この時期は、自分自身も余裕がないらしい アキ(Ⅿ:おそらく理由はアレだ アキ(Ⅿ:春夏のカバンからチラりと見えている、 アキ(Ⅿ:例の手帳 アキ(Ⅿ:    アキ:「持ってきたんだね、手帳」 春夏:「当たり前でしょー? 春夏: あ、見せないからね!これは私の!」 アキ:「はいはい、個人情報ね」 春夏:「そういうこと!」 春夏:     春夏(Ⅿ:持ってこないわけがない 春夏(Ⅿ:私の大事な大事な、この手帳 春夏(Ⅿ:絶対喜ばせるためのヒントが 春夏(Ⅿ:たくさん散りばめられている 春夏(Ⅿ:まさに奥義! 春夏(Ⅿ:名付けて手帳大作戦! 春夏(Ⅿ:    春夏(Ⅿ:…待っててよね、「ギャフン」 春夏(Ⅿ:これを言うのは私じゃないぞー 春夏(Ⅿ:  アキ(Ⅿ:気がつけばいつからか、 アキ(Ⅿ:ずっと肌身離さず春夏は手帳を持っている アキ(Ⅿ:よほど張り切っているのか アキ(Ⅿ:随分と色々書き込んでいる様子だ アキ(Ⅿ:   アキ(Ⅿ:手帳もすっかり、古くなっている アキ(Ⅿ:   アキ(Ⅿ:…でも、待ってろよ。 アキ(Ⅿ:「ギャフン」と言うのは アキ(Ⅿ:俺じゃないからな! 0:  アキ:「今年もいざ!」 春夏:「プレゼント探しスタート!!!」   春夏:    0:―――――別行動でプレゼント探し開始 0:   春夏(Ⅿ:最高のプレゼント 春夏(Ⅿ:    春夏(Ⅿ:     アキ(Ⅿ:あいつにとって最高のプレゼント アキ(Ⅿ:     アキ(Ⅿ:    春夏(Ⅿ:あの子を笑顔にさせるプレゼント 春夏(Ⅿ:    春夏(Ⅿ:    アキ(Ⅿ:ギャフンと言わせるプレゼント アキ(Ⅿ:   アキ(Ⅿ:   春夏(Ⅿ:ぴょんぴょん跳ねて喜ぶプレゼントを 春夏(Ⅿ:   春夏(Ⅿ:   アキ(Ⅿ:無邪気な笑顔で自慢してくれるプレゼントを アキ(Ⅿ:   アキ(Ⅿ:   春夏(Ⅿ:きっと、パパが 春夏(Ⅿ:   春夏(Ⅿ:   アキ(Ⅿ:きっと、ママが アキ(Ⅿ:   アキ(Ⅿ:   0:―――――間 0:  春夏(Ⅿ:クリスマスが大好きな 春夏(Ⅿ:クリスマスに生まれてきた男の子。 春夏(Ⅿ:私たちの息子は生まれつき心臓が悪かった 春夏(Ⅿ:その為、 春夏(Ⅿ:過度な運動はお医者さんに禁止されていた 春夏(Ⅿ:     春夏(Ⅿ:     アキ(Ⅿ:小学校に入ってすぐの頃 アキ(Ⅿ:体育でサッカーの見学をした日 アキ(Ⅿ:サッカーをする同級生たちを アキ(Ⅿ:羨ましそうに見ていた アキ(Ⅿ:    アキ(Ⅿ:    春夏(Ⅿ:息子は身体は強くなかったが 春夏(Ⅿ:心は強い子だった。 春夏(Ⅿ:何事も諦めない子だった 春夏(Ⅿ:苦痛を伴う通院も 春夏(Ⅿ:ずっとずっと耐えて平気な顔をしてみせた 春夏(Ⅿ:     春夏(Ⅿ:     アキ(Ⅿ:そんな息子は アキ(Ⅿ:サンタクロースにお願いするプレゼントを アキ(Ⅿ:最期まで俺たちに教えてくれなかった アキ(Ⅿ:    アキ(Ⅿ:     春夏(Ⅿ:毎年、流行りのものや、息子の好きな物を 春夏(Ⅿ:夫婦で探してはプレゼントをしていた 春夏(Ⅿ:結果は惨敗。 春夏(Ⅿ:流行りのゲームも、オモチャも 春夏(Ⅿ:喜んではくれるけど、本命ではないとわかる 春夏(Ⅿ:   春夏(Ⅿ:   アキ(Ⅿ:結局俺たちは、 アキ(Ⅿ:息子がサンタクロースにお願いしていたプレゼントが分からないまま アキ(Ⅿ:置いてけぼりにされてしまった アキ(Ⅿ:    アキ(Ⅿ:そんな息子は最期まで頑張った アキ(Ⅿ:そんな息子に最高のプレゼントを贈りたかった アキ(Ⅿ:   アキ(Ⅿ:   春夏(Ⅿ:最期まで辛い姿を見せようとしなかった 春夏(Ⅿ:最期まで、穏やかに眠るようだった 春夏(Ⅿ:   春夏(Ⅿ:だから 春夏(Ⅿ:私たちは落ち込んではいけない 春夏(Ⅿ:そんな暇は無い 春夏(Ⅿ:息子のように強く、強く。 春夏(Ⅿ:   春夏(Ⅿ:   アキ(Ⅿ:俺たちの息子が遺した宿題 アキ(Ⅿ:命日であり、誕生日であり アキ(Ⅿ:クリスマスに アキ(Ⅿ:   アキ(Ⅿ:本当に欲しかった最高のプレゼントを アキ(Ⅿ:贈りたい アキ(Ⅿ:   アキ(Ⅿ:サンタクロースが本当にいるのなら アキ(Ⅿ:欲しかったものを聞いていないのだろうか アキ(Ⅿ:   アキ(Ⅿ:   春夏(Ⅿ:私たちは、毎年 春夏(Ⅿ:街がキラキラ輝く季節に 春夏(Ⅿ:   春夏(Ⅿ:胸が締め付けられる思いで 春夏(Ⅿ:息子のプレゼントを探している 春夏(Ⅿ:   春夏(Ⅿ:   春夏(Ⅿ:涙を流したりなんかしない 春夏(Ⅿ:キラキラした街がぼやけて 春夏(Ⅿ:余計にキラキラして見えるのは 春夏(Ⅿ:きっと眩しいイルミネーションのせいだから 春夏(Ⅿ:    0:―――――待ち合わせ場所にて 0:  アキ:「おっす、迷わなかった?」 春夏:「アキじゃないんだから」 アキ:「はあ!?」 春夏:「ふふっ!冗談だよー! 春夏: 私はね、もうバッチリ!準備万端だよ!! 春夏: 今年はかなり自信あるかも!」  アキ:「ほんと?実は俺も! アキ: なんか聞けそうな気がするもん」 春夏:「………ギャフン?」 アキ:「そ、ギャフン!」 春夏:「…まあ去年は確かに、 春夏: アキのプレゼントのほうが 春夏: 笑ってた気がしたけどさ… 春夏: でもね!! 春夏: 今年はなんだか負ける気がしないの!」 春夏:    アキ:「そりゃー楽しみだ(クスッと笑う)」 春夏:「楽しみにしてて?さあ!帰ろうか!」 アキ:「はいはーい」 アキ:   0:―――――車に乗り込む春夏のカバンから 0:   何かが落ちそうになる アキ:「おっとぉ、ナイスキャッチ俺! アキ: ほら、落としたぞ」 春夏:「わっ!危なかった、ありがとう!!」 アキ:「本当…大事にしてるな」 春夏:「ふふっ!当たり前でしょー? 春夏: 大事な判断材料なんだから! 春夏: それに…ほら見て!この写真なんて、 春夏: 私のほうが喜んでくれそうな顔してると思わない!?」 アキ:「いや~俺だろ」 春夏:「いや~私でしょ」 春夏: ……それにしても、そろそろ重くなってきたから 春夏: 落とさないようにしないとね!」 春夏:   アキ(Ⅿ:…そんなに書き込んだり、 アキ(Ⅿ:写真を貼ったりしているからだよ、と アキ(Ⅿ:喉まで出かかって アキ(Ⅿ:言うのをやめた アキ(Ⅿ:   アキ(Ⅿ:   春夏(Ⅿ:大事な、古びれた手帳 春夏(Ⅿ:   春夏(Ⅿ:手放せるはずもない 春夏(Ⅿ:母子手帳 春夏(Ⅿ:   春夏(Ⅿ:あの子が生きていた、証。 春夏(Ⅿ:   春夏(Ⅿ:   0:―――――買い物を終え帰宅 0:  アキ:「……お互い、親バカだな」 春夏:「……だね」 アキ:「めっちゃ買ってるじゃん春夏ー!!」 春夏:「だってえ! 春夏: 選べなかったんだもんー!!」 春夏:    アキ:「まあ俺も人の事言えないか(笑)」 春夏:「ほんとだよ、なにその量!」 アキ:「つい……ね?」 春夏:「あははっ!これじゃ困らせちゃうね?」 アキ:「そうかあ? アキ: きっと喜んでくれるんじゃないか?」 春夏:「気を使わせちゃいそう、ふふっ」 アキ:「あいつなら有り得るな、はは!」 アキ:    0:―――――間 0:  アキ:「そう言えば、 アキ: 作戦はどうしたの?」 0:・・・ 春夏:「ん?」 春夏:    アキ:「いや、作戦。何作戦だったの?」 アキ:   春夏:「あー……そんなこと言ってた?」 アキ:「いや、とぼけるの!?」 0:・・・   春夏:「いやぁー…えーとですね… 春夏: なんか最初は好きな色とかから色々考えてたんだけど、 春夏: なかなかいいのが思いつかなくて……」 アキ:「うん…」 アキ:   春夏:「とりあえずいっぱい 春夏: プレゼント買う作戦!!!…かな?」 アキ:「はあ!?」 アキ:    春夏:「てへ…!」 アキ:「てへ…じゃなくて! アキ: 最初に確認したじゃんー!!」 アキ:   春夏:「ごめん!でも、まあ数打ちゃ当たるってことで、作戦は、作戦!!」 アキ:「本当にしょうもないな……お互い(笑) アキ: まあ、 アキ: この時期の出費は考えないことにしよう」 春夏:「わーい!!!」 アキ:「はしゃがないの!」 春夏:「てへっ…」 春夏:   春夏:     0:―――――笑顔がぎこちない二人の 0:―――――夜は更けてゆく・・・  0:―――間 0:   アキ:「春夏?まだ寝ないの?」 春夏:「んー、このラッピング終わったらー」 アキ:「よし!手伝おう」 アキ:   春夏:「んー?もう終わるよ? 春夏: 妙に優しいじゃん」 アキ:「俺はいつも優しいけど」 春夏:「はいはい、そうですねー」 春夏:   0:―――――しばらく作業する二人 0:・・・ 春夏:「…よし!終わったねー!ありがと!」 アキ:「……」 春夏:「……ん?どした?」 アキ:「…前にさ、小学校上がってすぐの頃」 アキ: サッカーしたそうに見てたんだよ」 春夏:「……」 アキ:「みんなと一緒にやりたかったのかなあー、サッカー」 春夏:「……だね」 アキ:「耐える漢(おとこ)は強いね、俺のほうが弱いかも」 春夏:「……うん、そうかもね」 アキ:「……」 春夏:「……」 アキ:「……・・・会いたいなあ……」 春夏:「……」 アキ:「医者に止められてるとか無視して、 アキ: 思いっっっきり アキ: サッカーやらせてあげたかったなあ」 アキ:   春夏:「…心臓に負担かかっちゃうよ」 アキ:「入院してからも、連れ出して一日中遊べば良かった」 春夏:「……」 アキ:「……ずっとずーっと我慢してきたんだから、 アキ: どんなわがままでも聞いてやってさ アキ: 行きたいとことか、したいこと、全部全部 アキ: 全部全部……叶えて、それで(遮)」 春夏:「アキ」 アキ:「世界旅行とかもいいな! アキ: あいつなら世界一周とかもできたよ、強いもんな!」 春夏:「…アキ!」 アキ:「真っ黒に日焼けしちゃって、それ見て春夏も笑うんだよ! アキ: つられて皆で笑うんだよ、それから…それから(遮)」 春夏:「パパっ!!」 アキ:「っ!」 アキ:    0:―――――気付くと静かに涙を零している春夏 0:   春夏:「…わかるから」 アキ:「……春夏」 アキ:   春夏:「……わかってるから…」 アキ:「……」   春夏:「言葉にしちゃうとさ、 春夏: 止まらなくなっちゃうから、やめよう? 春夏: あ、明日はさ、 春夏: きっと最高の日になるんだからさ! 春夏: だから、大丈夫…大丈夫だよ、あの子は強いんだから、 春夏: …だから、私たちが弱くなってちゃダメ…… 春夏: ダメなんだって…」 春夏:  アキ:「別にいいんだよ…… アキ: 弱くたっていいんだよ…!!」 アキ:    春夏:「………ダメなの……」 春夏:   アキ:「え?」 アキ:   春夏:「…だからっ!!ダメなのっ!!! 春夏: 私たちはあの子の親なんだから、強いのっ!! 春夏: あの子はあんなに最期まで強く、強く…! 春夏: …生き抜いてくれたの!! 春夏: それをちゃんとこの目で見たから…! 春夏: しっかりしないといけないの…っ!!」 春夏:   アキ:「……春夏?」 アキ:   春夏:「あんなに、か細い手でも……っ!指でバイバイしたんだよ!? 春夏: あんなに管に繋がれてるのに… 春夏: 私たちに向かって、震える指で…!!バイバイって…っ!!」 春夏:   アキ:「……っ!」 アキ:   春夏:「もうそんな力も、とっくに残ってないはずなのにっ……!! 春夏: …あの時ちゃんと…! 春夏: あの子の強さをもらったから…っ!!だから、だからっ!(遮)」 アキ:「そうやって強い強いって……!!」 アキ:   春夏:「…え?」 春夏:     アキ:「……じゃあ、なんでだよ…!! アキ: 強かったらなんでいないんだよっ!!」 アキ:   春夏:「…っ!?」 春夏:   アキ:「今、ここに!!! アキ: あいつはなんでいないんだよっ!? アキ: なんでか……!!わかるだろ!? アキ: そんなの決まってんだよっ!! アキ: 強く見えたけど!! アキ: あいつは一生懸命頑張ってただけなんだよ!! アキ: 本当は弱くて弱くて、辛くて、痛くて、でもっ!! アキ: 俺たちに心配かけないように アキ: 一生懸命強く見せてただけなんだよ…っ!!」 アキ:    春夏:「…っ!  春夏: …わかってるよっ!! 春夏: そんなのわかってるの!!! 春夏: わかってる……けどっ!! 春夏: 全然頭が言う事聞かないのっ!!」 アキ:「春夏…!」 春夏:「私だって会いたいっ!! 春夏: 今すぐにでも抱きしめたい!!! 春夏: 痛いよママ、恥ずかしいよママってどれだけ言われても 春夏: 離したくない!!離したくなかったんだよ…っ!!!」 アキ:「…っ!!」 春夏:「なんでここにいないかって!? 春夏: 死んじゃったんだもん!!! 春夏: あんなに頑張って頑張って頑張って 春夏: でもっ!! 春夏: 死んじゃったからいないんだよっ!!! 春夏: 死んじゃったらさ!! 春夏: どんなに抱きしめたくても 春夏: 抱きしめることも、欲しいプレゼントを買ってあげることも 春夏: あの笑顔を見ることもっ!! 春夏: もう何も出来ないんだよっ!!!」 アキ:「春夏っ!ちょっと落ち着けって!」 春夏:「落ち着けたことなんて1度もない!!! 春夏: あの日から、ずっと…ずっと……っ……」 春夏:    アキ:「っ…ごめん…!」 アキ:    春夏:「………」 春夏:   アキ:「春夏、ごめん… アキ: 春夏だって我慢してるのわかってたのに、 アキ: 弱くてごめん…っ! アキ: …………っくそ!!!」 アキ:     春夏:「……」 アキ:「……くそっ!くそくそ…っ!!!」 0:  ・・・ 春夏:「…パパ……もうやめよう…… 春夏: あの子に笑われちゃう……」 春夏:   アキ:「………」 アキ:   春夏:「…ごめん、私も取り乱しちゃった… 春夏:  パパが辛いのもわかってるのに……」 春夏:   アキ:「…ごめん、ごめんごめん……っ…」 アキ:   春夏:「………パパ… 春夏: 今からちょっと強がろう……」 春夏:    アキ:「…うん……そうだね…… アキ: …やっぱり、強いよ、あいつ」 アキ:   春夏:「……そうだね…かなわないね……」 春夏:   春夏:    0:―――――長い間 0:  アキ(Ⅿ:翌日。 アキ(Ⅿ:俺のプレゼントやら、 アキ(Ⅿ:春夏のプレゼントやらで アキ(Ⅿ:部屋はプレゼントだらけだ アキ(Ⅿ:   アキ(Ⅿ:昨日の今日ということも影響したようで アキ(Ⅿ:春夏は体調が良くないそうだ アキ(Ⅿ:   アキ(Ⅿ:今日はクリスマス アキ(Ⅿ:あいつの誕生日 アキ(Ⅿ:   アキ(Ⅿ:プレゼント アキ(Ⅿ:気に入ってくれるかな アキ(Ⅿ:      春夏(Ⅿ:おはようと挨拶をした後 春夏(Ⅿ:お互いの泣き腫らした顔を見て 春夏(Ⅿ:思わず吹き出した 春夏(Ⅿ:     春夏(Ⅿ:生憎(あいにく)体調が優れなくて 春夏(Ⅿ:寝室に戻り 春夏(Ⅿ:二度寝をさせてもらっていた 春夏(Ⅿ:        春夏(Ⅿ:今日はクリスマス 春夏(Ⅿ:あの子の誕生日 春夏(Ⅿ:       春夏(Ⅿ:今年のプレゼント 春夏(Ⅿ:気に入ってもらえるかな 春夏(Ⅿ:     春夏(Ⅿ:来年も 春夏(Ⅿ:私たちは同じ事をするのかな… 0:・・・ 春夏(Ⅿ:眠りに落ちかけた寸前 春夏(Ⅿ:勢いよく寝室の扉が開いた 春夏(Ⅿ:     アキ:「春夏!!!!!」 アキ:      春夏:「っ!?」 春夏:    アキ:「ちょ、ちょっとこっちきて!!い、今すぐ!!」 アキ:    春夏(Ⅿ:アキは明らかに動揺していた 春夏(Ⅿ:何事かと思い 春夏(Ⅿ:私はリビングへと足を運んで 春夏(Ⅿ:アキの指差す方へ目を向けた 春夏(Ⅿ:   春夏:「……え」 春夏:    アキ:「…なかったよな?」 春夏:「…どういうこと…?」 アキ:「昨日の夜一緒にプレゼント置いたから、俺のプレゼントも、 アキ: 春夏のプレゼントもわかる…」 アキ:       春夏:「でも、あれ……?」 アキ:「やっぱり…あんなプレゼント アキ: なかったよな?」 春夏:「…なかった…どうして?」 春夏:   0:―――――ゆっくりとプレゼントのもとへ向かう二人 春夏:「なにが入ってるの…」 アキ:「分からない…」 春夏:「開けてみる…?」 アキ:「……うん」 0: ・・・ 春夏(Ⅿ:お互いの勘違いでは無いことを確認した上で 春夏(Ⅿ:見知らぬプレゼントを開けることにした 春夏(Ⅿ:   春夏(Ⅿ:何故だか、そのプレゼントを開けることに 春夏(Ⅿ:二人とも抵抗はなかった 春夏(Ⅿ:   春夏(Ⅿ:   アキ:「……サッカーボール?」 アキ:    アキ:     春夏(Ⅿ:『サッカー』 春夏(Ⅿ:      春夏(Ⅿ:ぐらぐらと目眩(めまい)がした 春夏(Ⅿ:あの子との会話がよみがえる 春夏(Ⅿ:    春夏(Ⅿ:   アキ:「……そうか…… アキ: サッカー羨ましそうに見てたもんな… アキ: サッカーボールがずっと欲しかったのか… アキ: ・・・ アキ: …なあ……いるなら教えてくれよ…」 アキ:    春夏(Ⅿ:あの子がずっと欲しかったものは 春夏(Ⅿ:サッカーボール 春夏(Ⅿ:    春夏(Ⅿ:記憶がより鮮明によみがえる 春夏(Ⅿ:    春夏(Ⅿ:サッカーを羨ましそうに見ていたという 春夏(Ⅿ:あの日の会話 春夏(Ⅿ:見学に付き添ったアキから 春夏(Ⅿ:事情も聞いていた 春夏(Ⅿ:    春夏(Ⅿ:帰宅したあの子は、確か… 0:―――――アキに歩み寄る春夏 0:  春夏:「だから… 春夏: サッカーボールが欲しかったんだ」 アキ:「…え?」 春夏:「思い出したの、あの日のこと…」 アキ:「思い出した!?え、なにを…?」 春夏:「帰ってきてからの会話を」 アキ:「…会話……?」 春夏:「…うん」 春夏:    アキ:「ちょっと待って。あの日は…… アキ: あいつと一緒に帰ってきてから、 アキ: お風呂とか色々済ませて、それから……」 アキ:    アキ(Ⅿ:あの日の帰り道 アキ(Ⅿ:あいつはずっと何かを考えているようだった アキ(Ⅿ:俺は、 アキ(Ⅿ:友達とサッカーが一緒にできなくて アキ(Ⅿ:落ち込んでいるのか、拗ねているのか アキ(Ⅿ:分からなかった アキ(Ⅿ:    アキ(Ⅿ:そのまま帰宅して アキ(Ⅿ:春夏に事情も話した アキ(Ⅿ:   アキ(Ⅿ:その日は アキ(Ⅿ:家族でいつも通り過ごした アキ(Ⅿ:   アキ(Ⅿ:そして…… アキ(Ⅿ:   アキ(Ⅿ:   アキ:「……夢…… アキ: そうだ…夢があるって言ってた…」 春夏:「……思い出した? 春夏: なんで私たち、忘れちゃってたんだろうね」 春夏:  アキ(Ⅿ:家族三人でゆっくり過ごしていたら アキ(Ⅿ:急に アキ(Ⅿ:『夢をみつけたんだ』と言った アキ(Ⅿ:   アキ(Ⅿ:もしお兄ちゃんになったら アキ(Ⅿ:サッカーを教えてあげたい アキ(Ⅿ:それでいつか アキ(Ⅿ:サッカー選手になってほしい アキ(Ⅿ:    アキ(Ⅿ:あいつは確かにそう言った アキ(Ⅿ:    アキ(Ⅿ:    春夏:「自分がサッカー出来ないから… 春夏: せめて、教えてあげたかったのかな」 アキ:「……そうだな」 春夏:「だからずっと 春夏: サッカーボールが欲しかったんだね… 春夏: ………すぐにでも買ってあげたのにね」 春夏:   春夏:   春夏(Ⅿ:忘れていてごめん 春夏(Ⅿ:思い出すのに 春夏(Ⅿ:こんなに時間がかかってしまってごめん 春夏(Ⅿ:    春夏(Ⅿ:何気ない会話に 春夏(Ⅿ:ヒントはあったんだ 春夏(Ⅿ:    春夏:「やっと、見つけたね…」 アキ:「……」 春夏:「…どうしたの?」 春夏:    アキ:「……ギャフン」 春夏:「え?」 アキ:「……これ見て……」 春夏:「サッカーボール……2個目?」 春夏:   アキ:「なるほどな……そういうことか…(優しく)」 春夏:「もしかして……!」 アキ:「これ、軽くて柔らかい… アキ: …そっか…怪我しないように……っ!! アキ:(ため息)ほんっと……どこまでかっこいいんだよ!」 アキ:     春夏:「…そっか…うん! 春夏: そっかそっかあ……っ!!」 春夏:     アキ:「強くて、優しいとか、 アキ: あいつ……ほんとにすごいな…っ!!」 春夏:「…うん…!もうとっくに、 春夏: 立派なお兄ちゃんだったんだね…!!」 春夏:    アキ:「…つまりさ… アキ: あいつが本当に欲しかったものは……」 アキ:   アキ:   アキ(Ⅿ:春夏の少し膨らんだお腹を アキ(Ⅿ:優しく撫でる アキ(Ⅿ:    春夏(Ⅿ:私はアキの手に 春夏(Ⅿ:自分の手を重ねた 春夏(Ⅿ:   春夏(Ⅿ:   春夏:「…ここにいたね… 春夏: あの子、ずっと欲しかったんだね…… 春夏: ・・・ 春夏: たくさん待たせちゃってごめんね……っ 春夏: ありがとう、お兄ちゃん…!」 春夏:    春夏:「ギャフン……! 春夏: 言わされちゃったね…!!」 春夏:   春夏:   アキ(Ⅿ:よく晴れた庭で アキ(Ⅿ:子供たちが嬉しそうに アキ(Ⅿ:サッカーボールで遊んでいる姿が アキ(Ⅿ:目に浮かぶ アキ(Ⅿ:   アキ(Ⅿ:そんな景色を アキ(Ⅿ:実際に眺められたら… アキ(Ⅿ:   アキ(Ⅿ:   アキ(Ⅿ:諦めない漢は強い アキ(Ⅿ:強くて、最高にかっこいい  0:―――――短い間 アキ:「結局…… アキ: 俺たちがプレゼントもらっちゃったな」 春夏:「…そうだね、あっ!」 アキ:「どした?」 春夏:「今、赤ちゃん動いた…」 アキ:「……そっか!元気で良かった…! アキ: 年明けに検診だもんな」 アキ:   春夏:「うん!…でも、もうわかるよ私。」 春夏:   春夏:    春夏:「強くて、可愛い男の子だと思う」 春夏:   0:―――――間 0:  アキ(Ⅿ:あの日の アキ(Ⅿ:奇跡のような出来事は アキ(Ⅿ:本当に夢を見ているようだった アキ(Ⅿ:   アキ(Ⅿ:その後、検診で アキ(Ⅿ:お腹の子は男の子だとわかった アキ(Ⅿ:   アキ(Ⅿ:   アキ(Ⅿ:春夏と俺の大事な手帳が、2冊になった  アキ(Ⅿ:   アキ(Ⅿ:    0:―――――長い間――――― 0:   0:―――――二十年後 0:  アキ:「…綺麗になったな! アキ: それじゃあ、バケツとか片してくるよ」 アキ:   春夏:「うん、ありがとう」 春夏:   春夏:   春夏:「…よく晴れたねえー 春夏: お兄ちゃん、応援してくれてるのね 春夏: なんだか、私まで緊張してきちゃった 春夏: でもね、ああ見えて 春夏: お父さん、きっと私より緊張してるのよ。 春夏:  ・・・ 春夏: ……あれから二十年か… 春夏: あの日の事、今でも鮮明に思い出すの。 春夏: ありがとう、お兄ちゃん 春夏: あなた達を生んだことは 春夏: 私の人生において1番の誇りよ」 春夏:    アキ:「おまたせ! アキ: そろそろ行かないと、 アキ: 試合に間に合わなくなるよ」 アキ:     春夏:「そうね…じゃあ行ってくるね!」 春夏:   春夏:   0:―――(声を揃えて)  アキ:「誕生日おめでとう」 春夏:「誕生日おめでとう」 春夏:   春夏:   0:  0:   (語り・春夏) 0:  0:  0: さんたさんって 0: なんでもねがいを 0: かなえてくれるってきいたんだ 0:  0: かなえてくれて 0:  0: ありがとう 0:  0: さんたさん 0:  0:  0:  0:――――了  0: 

0:プレゼント――― 0:  0: 0:   0:   0:   (春夏・語り) 0:    0: さんたさんって 0: なんでもねがいを 0: かなえてくれるってきいたんだ 0:   0: なら、かなえてよ 0:   0: さんたさん 0:   0:   0:―――――間 0:   0:   0:―――――夕食後、机で向き合うアキと春夏 0:   0:   アキ:「今年もこの季節がきたね」 春夏:「だねぇ」 アキ:「言っておくけど…譲らないよ?」 春夏:「望むところですー!」 春夏:  春夏:    アキ(Ⅿ:俺たち夫婦はちょっと変わっている アキ(Ⅿ:毎年この時期になると アキ(Ⅿ:そう アキ(Ⅿ:クリスマスが近づき街が彩り始めると アキ(Ⅿ:   春夏(Ⅿ:私たちは、クリスマスプレゼントのサプライズで 春夏(Ⅿ:どちらがより、喜ばせることが出来るか 春夏(Ⅿ:対決している 春夏(Ⅿ:今年も、街はキラキラとしてきた 春夏(Ⅿ:  春夏(Ⅿ:    アキ:「・・・よし、とりあえず口頭ではお互いにノーヒント アキ: って条件は大丈夫そうだな!」 春夏:「そうだね… 春夏: 難しいけど、口では何も伝えてない! 春夏: 私の行動や言動でバレバレじゃない限り、勝てる自信はあるもん!」 アキ:「ほう?」 春夏:「……なによ」 アキ:「その、行動や言動、随分と自信があるのかな?今年は。 アキ: 去年はバレバレ過ぎて、俺が勝ったなあ~」 春夏:「ちょっと!去年はたまたま! 春夏: 去年は去年!今年は今年! 春夏: …そういうアキこそ、随分と自信があるのかなー?」 アキ:「…ふふ」 アキ:「ちょっと煽っただけでこの反応かあ… アキ: やりごたえがありそうだ」 春夏:「アキぃ……ああ、もう!! 春夏: 今年こそ、ギャフンと言わせてやるからね!」 アキ:「……その、ギャフンってさ」 春夏:「え?」 アキ:「ギャフンって…… アキ: 今どき、実際に使う人いるのかな…」 0: ・・・ アキ:「…ぷっ! アキ:ははっ!(耐えきれず吹き出す)」 春夏:「なっ!?」 春夏:「人の揚げ足ばっかとってないでよ! 春夏: いっつもそうやってバカにするんだから… 春夏: …でも、確かに 春夏: ギャフン…か……ぷふっ!(釣られて笑う)」 春夏:   アキ:「ははっ!じゃあ俺がその、ギャフン?って言わせるくらい アキ: 頑張らないとね!」 春夏:「ギャフンなんて言わないでしょ、今どき!」 アキ:「春夏が最初に言ったんでしょ!」 春夏:「あーもう!この話終わりー!」 アキ:「はいはい」 アキ:   春夏:「…さてさて!買い物は明日だから、 春夏: 今日は私の大事な手帳に作戦の続きを書こう… 春夏: アキはずる賢いから、何パターンか用意しないとな…(ぶつぶつ)」 0:―――――そっと手帳を覗き込むアキ 0:  アキ:「ふむふむ、今年もですか」 春夏:「わっ!?」 0:―――――すかさず手帳を覆って隠す春夏 0:    春夏:「ちょっと、見ちゃダメ!」 アキ:「大丈夫見えてない」 春夏:「…やっぱり寝室で書く! 春夏: 覗き見さんがいるところで書けないもんね!」 0:―――――春夏、席を立つ 0:   アキ:「覗き見って! アキ: そこでいきなり何かし出したら気になるだろー?」 春夏:「個人情報なの!」 アキ:「個人情報?俺もダメなの?」 春夏:「だーめ!私あと寝るだけだから、 春夏: リビングの電気とか水周り、忘れないでね? 春夏: よろしくねー!じゃあおやすみー!」 アキ:「…いつものことじゃん(小声)」 春夏:「はい?!」 アキ:「はーい、オヤスミー(棒)」 0:  ・・・ アキ:「あ、春夏」 春夏:「ん?なに?」 アキ:「その手帳、さっきの…」 春夏:「なあに?時間稼ぎならやめてよ?」 アキ:「いや、そうじゃなくて アキ: …さっき、作戦?のことで、 アキ: 何パターンか用意するって言ってたじゃん? アキ: それってプレゼントのこと?」 春夏:・・・  春夏:「へ?」 アキ:「プレゼントを何パターンか用意するの?」 春夏:「…ん?ああ!違う違う!」 アキ:・・・  アキ:「へ?」 春夏:「作戦パターンを何パターンか用意するだけだよ、 春夏: プレゼントはもちろん1つ」 アキ:「ああ、だよね」 春夏:「そんなずるいことしませんー!」 春夏:  アキ:「ごめんごめん。じゃあ… アキ: 俺も正々堂々戦う為に、作戦練ろうかな? アキ: ………ギャフン、の!(ギャフンを誇張)」 アキ:    春夏:「……(睨みながら)おやすみっ…!」 0:――――――春夏がいつもより大きく音を立てて寝室にバタン!と入る 0:  アキ:「……こっわ(笑)」 アキ: まあでも、作戦…か」 アキ:  アキ(Ⅿ:寝室から微かに春夏の声が聞こえる アキ(Ⅿ:春夏は集中すると、文字を書きながら、 アキ(Ⅿ:それをそのまま口にする癖がある アキ(Ⅿ:聞き取れるほどではないので アキ(Ⅿ:春夏の独り言は、作業用BGMにして アキ(Ⅿ:寝る準備を進める アキ(Ⅿ:   アキ:「明日は、朝から戦いかな(クスッと笑う) アキ: 言わせてみたいもんだよ。 アキ: …ギャフン、か」 0:  0:―――――間 0:  春夏(Ⅿ:リビングのほうで、 春夏(Ⅿ:ガチャガチャと寝る支度の音がする 春夏(Ⅿ:作戦は、あまり進まない 春夏(Ⅿ:このままアキが寝室に来る方が早そうだ 春夏(Ⅿ:明日は早いので、私は手帳を閉じて 春夏(Ⅿ:眠りにつくことにした 春夏(Ⅿ:    春夏:「…ギャフン、か」 春夏:  春夏(Ⅿ:他愛もない話で過ごす 春夏(Ⅿ:アキとの時間が、心地いい 春夏(Ⅿ:    春夏:「言わせてみたいもんだなあ。 春夏: …ギャフンって」 0:  0:   (語り・アキ役) 0:  0: さんたさんって 0: なんでもねがいを 0: かなえてくれるってきいたんだ 0:   0: なら、かなえてよ 0:  0: さんたさん 0:  0: 0:―――――翌日 0:  0: ・・・ アキ:「よし、着いた!」 アキ:   アキ(Ⅿ:自宅から車で30分ほどの アキ(Ⅿ:大型ショッピングモールに到着して アキ(Ⅿ:車を停める アキ(Ⅿ:   アキ:「あれ?………あ。」 アキ:    0:―――――助手席で爆睡する春夏の耳元で アキ:「着いたよー!!!(大声)」 春夏:「ひゃうっ!?」 アキ:「おはよ。のび太かお前は(笑)」 春夏:「うわーごめん!寝ちゃってたのかあ! 春夏: 気合い入り過ぎちゃって、 春夏: あの後寝付きが悪かったんだもん~ごめんね」 アキ:「はいはい、慣れた慣れた」 アキ:   アキ:「はい、ココア買っといたよ」 春夏:「あ、ありがと…」 春夏:      春夏(Ⅿ:本当に手馴れてる 春夏(Ⅿ:まるで赤子をあやす様に 春夏(Ⅿ:嫌な顔ひとつせず、責めたりもせず 春夏(Ⅿ:穏やかに微笑むアキ 春夏(Ⅿ:   春夏(Ⅿ:この人と結婚して良かった……なんて 春夏(Ⅿ:普段は意識しないようにしている事を 春夏(Ⅿ:寝ぼけた頭でココアを飲みながら 春夏(Ⅿ:ぼんやりと思う 春夏(Ⅿ:  春夏:「・・・」 0:―――――何か言いたげに春夏を見つめるアキ 春夏:「…あ!そっか着いたんだっけ!? 春夏: よし! 春夏: 惚気けてる場合じゃないね、戦いだ!」 アキ:「え?いつ惚気けたの?」 春夏:「え!?いや……その」 春夏:   春夏(Ⅿ:頭で考えていた事と繋げて会話をしてしまった 春夏(Ⅿ:……恥ずかしい 春夏(Ⅿ:私は本当に幸せ者のはず 春夏(Ⅿ:そんな私を見るアキのニヤニヤ顔は 春夏(Ⅿ:少し腹立たしいけれど 春夏(Ⅿ:   春夏(Ⅿ:今のは私が1本とられたか… 春夏(Ⅿ:  アキ:「おやおや?そんなに寝ぼけて アキ: 優しい俺に惚れ直したのかな?ん?」 春夏:「違う!」 アキ:「顔、真っ赤じゃん(笑)」 春夏:「……っ!と、とにかく! 春夏: もう勝負は始まりだよ!」 アキ:「もちろん!まかせろ!」 春夏:「さあ行こう!ココアありがとうね!」 春夏:  0:―――――せわしなく車を出る春夏 アキ:「どういたしまして…って、 アキ: ちょっと、転ばないでね!?」 春夏:「大丈夫だよー!!」 春夏:   アキ(Ⅿ:そんな楽しそうな表情をされると アキ(Ⅿ:何も言えなくなってしまう アキ(Ⅿ:そう、 アキ(Ⅿ:何も言えなく―…………―ならないな。 アキ(Ⅿ:   アキ:「春夏ちゃん♪」 春夏:「ん?」 アキ:「半ドアだから。これ7回目ね」 春夏:「あ、ごめん!」 アキ:「バッテリーあがったらどうするんだよー」 春夏:「ごめんってばー! 春夏: でも、アキが気付くから大丈夫だよ! 春夏: …それにぃー……(ニヤニヤ)」 春夏:  アキ:「それに?」 アキ:  春夏:「ハザードランプついたままだよ?」 アキ:「あっ!やばっ!!」 春夏:「ほぉ~?半ドアには気付くのに、 春夏: その点滅には気付かないのか… 春夏: さては戦(いくさ)を前にして怖気付いてるな?」 春夏:   アキ:「違うわ!たまたま、うっかりだわ!」 春夏:「あらあらぁ♪」 春夏:   アキ(Ⅿ:前言撤回。 アキ(Ⅿ:どうやら、やはり アキ(Ⅿ:何も言えないようだ アキ(Ⅿ:   アキ(Ⅿ:毎年この時期は、自分自身も余裕がないらしい アキ(Ⅿ:おそらく理由はアレだ アキ(Ⅿ:春夏のカバンからチラりと見えている、 アキ(Ⅿ:例の手帳 アキ(Ⅿ:    アキ:「持ってきたんだね、手帳」 春夏:「当たり前でしょー? 春夏: あ、見せないからね!これは私の!」 アキ:「はいはい、個人情報ね」 春夏:「そういうこと!」 春夏:     春夏(Ⅿ:持ってこないわけがない 春夏(Ⅿ:私の大事な大事な、この手帳 春夏(Ⅿ:絶対喜ばせるためのヒントが 春夏(Ⅿ:たくさん散りばめられている 春夏(Ⅿ:まさに奥義! 春夏(Ⅿ:名付けて手帳大作戦! 春夏(Ⅿ:    春夏(Ⅿ:…待っててよね、「ギャフン」 春夏(Ⅿ:これを言うのは私じゃないぞー 春夏(Ⅿ:  アキ(Ⅿ:気がつけばいつからか、 アキ(Ⅿ:ずっと肌身離さず春夏は手帳を持っている アキ(Ⅿ:よほど張り切っているのか アキ(Ⅿ:随分と色々書き込んでいる様子だ アキ(Ⅿ:   アキ(Ⅿ:手帳もすっかり、古くなっている アキ(Ⅿ:   アキ(Ⅿ:…でも、待ってろよ。 アキ(Ⅿ:「ギャフン」と言うのは アキ(Ⅿ:俺じゃないからな! 0:  アキ:「今年もいざ!」 春夏:「プレゼント探しスタート!!!」   春夏:    0:―――――別行動でプレゼント探し開始 0:   春夏(Ⅿ:最高のプレゼント 春夏(Ⅿ:    春夏(Ⅿ:     アキ(Ⅿ:あいつにとって最高のプレゼント アキ(Ⅿ:     アキ(Ⅿ:    春夏(Ⅿ:あの子を笑顔にさせるプレゼント 春夏(Ⅿ:    春夏(Ⅿ:    アキ(Ⅿ:ギャフンと言わせるプレゼント アキ(Ⅿ:   アキ(Ⅿ:   春夏(Ⅿ:ぴょんぴょん跳ねて喜ぶプレゼントを 春夏(Ⅿ:   春夏(Ⅿ:   アキ(Ⅿ:無邪気な笑顔で自慢してくれるプレゼントを アキ(Ⅿ:   アキ(Ⅿ:   春夏(Ⅿ:きっと、パパが 春夏(Ⅿ:   春夏(Ⅿ:   アキ(Ⅿ:きっと、ママが アキ(Ⅿ:   アキ(Ⅿ:   0:―――――間 0:  春夏(Ⅿ:クリスマスが大好きな 春夏(Ⅿ:クリスマスに生まれてきた男の子。 春夏(Ⅿ:私たちの息子は生まれつき心臓が悪かった 春夏(Ⅿ:その為、 春夏(Ⅿ:過度な運動はお医者さんに禁止されていた 春夏(Ⅿ:     春夏(Ⅿ:     アキ(Ⅿ:小学校に入ってすぐの頃 アキ(Ⅿ:体育でサッカーの見学をした日 アキ(Ⅿ:サッカーをする同級生たちを アキ(Ⅿ:羨ましそうに見ていた アキ(Ⅿ:    アキ(Ⅿ:    春夏(Ⅿ:息子は身体は強くなかったが 春夏(Ⅿ:心は強い子だった。 春夏(Ⅿ:何事も諦めない子だった 春夏(Ⅿ:苦痛を伴う通院も 春夏(Ⅿ:ずっとずっと耐えて平気な顔をしてみせた 春夏(Ⅿ:     春夏(Ⅿ:     アキ(Ⅿ:そんな息子は アキ(Ⅿ:サンタクロースにお願いするプレゼントを アキ(Ⅿ:最期まで俺たちに教えてくれなかった アキ(Ⅿ:    アキ(Ⅿ:     春夏(Ⅿ:毎年、流行りのものや、息子の好きな物を 春夏(Ⅿ:夫婦で探してはプレゼントをしていた 春夏(Ⅿ:結果は惨敗。 春夏(Ⅿ:流行りのゲームも、オモチャも 春夏(Ⅿ:喜んではくれるけど、本命ではないとわかる 春夏(Ⅿ:   春夏(Ⅿ:   アキ(Ⅿ:結局俺たちは、 アキ(Ⅿ:息子がサンタクロースにお願いしていたプレゼントが分からないまま アキ(Ⅿ:置いてけぼりにされてしまった アキ(Ⅿ:    アキ(Ⅿ:そんな息子は最期まで頑張った アキ(Ⅿ:そんな息子に最高のプレゼントを贈りたかった アキ(Ⅿ:   アキ(Ⅿ:   春夏(Ⅿ:最期まで辛い姿を見せようとしなかった 春夏(Ⅿ:最期まで、穏やかに眠るようだった 春夏(Ⅿ:   春夏(Ⅿ:だから 春夏(Ⅿ:私たちは落ち込んではいけない 春夏(Ⅿ:そんな暇は無い 春夏(Ⅿ:息子のように強く、強く。 春夏(Ⅿ:   春夏(Ⅿ:   アキ(Ⅿ:俺たちの息子が遺した宿題 アキ(Ⅿ:命日であり、誕生日であり アキ(Ⅿ:クリスマスに アキ(Ⅿ:   アキ(Ⅿ:本当に欲しかった最高のプレゼントを アキ(Ⅿ:贈りたい アキ(Ⅿ:   アキ(Ⅿ:サンタクロースが本当にいるのなら アキ(Ⅿ:欲しかったものを聞いていないのだろうか アキ(Ⅿ:   アキ(Ⅿ:   春夏(Ⅿ:私たちは、毎年 春夏(Ⅿ:街がキラキラ輝く季節に 春夏(Ⅿ:   春夏(Ⅿ:胸が締め付けられる思いで 春夏(Ⅿ:息子のプレゼントを探している 春夏(Ⅿ:   春夏(Ⅿ:   春夏(Ⅿ:涙を流したりなんかしない 春夏(Ⅿ:キラキラした街がぼやけて 春夏(Ⅿ:余計にキラキラして見えるのは 春夏(Ⅿ:きっと眩しいイルミネーションのせいだから 春夏(Ⅿ:    0:―――――待ち合わせ場所にて 0:  アキ:「おっす、迷わなかった?」 春夏:「アキじゃないんだから」 アキ:「はあ!?」 春夏:「ふふっ!冗談だよー! 春夏: 私はね、もうバッチリ!準備万端だよ!! 春夏: 今年はかなり自信あるかも!」  アキ:「ほんと?実は俺も! アキ: なんか聞けそうな気がするもん」 春夏:「………ギャフン?」 アキ:「そ、ギャフン!」 春夏:「…まあ去年は確かに、 春夏: アキのプレゼントのほうが 春夏: 笑ってた気がしたけどさ… 春夏: でもね!! 春夏: 今年はなんだか負ける気がしないの!」 春夏:    アキ:「そりゃー楽しみだ(クスッと笑う)」 春夏:「楽しみにしてて?さあ!帰ろうか!」 アキ:「はいはーい」 アキ:   0:―――――車に乗り込む春夏のカバンから 0:   何かが落ちそうになる アキ:「おっとぉ、ナイスキャッチ俺! アキ: ほら、落としたぞ」 春夏:「わっ!危なかった、ありがとう!!」 アキ:「本当…大事にしてるな」 春夏:「ふふっ!当たり前でしょー? 春夏: 大事な判断材料なんだから! 春夏: それに…ほら見て!この写真なんて、 春夏: 私のほうが喜んでくれそうな顔してると思わない!?」 アキ:「いや~俺だろ」 春夏:「いや~私でしょ」 春夏: ……それにしても、そろそろ重くなってきたから 春夏: 落とさないようにしないとね!」 春夏:   アキ(Ⅿ:…そんなに書き込んだり、 アキ(Ⅿ:写真を貼ったりしているからだよ、と アキ(Ⅿ:喉まで出かかって アキ(Ⅿ:言うのをやめた アキ(Ⅿ:   アキ(Ⅿ:   春夏(Ⅿ:大事な、古びれた手帳 春夏(Ⅿ:   春夏(Ⅿ:手放せるはずもない 春夏(Ⅿ:母子手帳 春夏(Ⅿ:   春夏(Ⅿ:あの子が生きていた、証。 春夏(Ⅿ:   春夏(Ⅿ:   0:―――――買い物を終え帰宅 0:  アキ:「……お互い、親バカだな」 春夏:「……だね」 アキ:「めっちゃ買ってるじゃん春夏ー!!」 春夏:「だってえ! 春夏: 選べなかったんだもんー!!」 春夏:    アキ:「まあ俺も人の事言えないか(笑)」 春夏:「ほんとだよ、なにその量!」 アキ:「つい……ね?」 春夏:「あははっ!これじゃ困らせちゃうね?」 アキ:「そうかあ? アキ: きっと喜んでくれるんじゃないか?」 春夏:「気を使わせちゃいそう、ふふっ」 アキ:「あいつなら有り得るな、はは!」 アキ:    0:―――――間 0:  アキ:「そう言えば、 アキ: 作戦はどうしたの?」 0:・・・ 春夏:「ん?」 春夏:    アキ:「いや、作戦。何作戦だったの?」 アキ:   春夏:「あー……そんなこと言ってた?」 アキ:「いや、とぼけるの!?」 0:・・・   春夏:「いやぁー…えーとですね… 春夏: なんか最初は好きな色とかから色々考えてたんだけど、 春夏: なかなかいいのが思いつかなくて……」 アキ:「うん…」 アキ:   春夏:「とりあえずいっぱい 春夏: プレゼント買う作戦!!!…かな?」 アキ:「はあ!?」 アキ:    春夏:「てへ…!」 アキ:「てへ…じゃなくて! アキ: 最初に確認したじゃんー!!」 アキ:   春夏:「ごめん!でも、まあ数打ちゃ当たるってことで、作戦は、作戦!!」 アキ:「本当にしょうもないな……お互い(笑) アキ: まあ、 アキ: この時期の出費は考えないことにしよう」 春夏:「わーい!!!」 アキ:「はしゃがないの!」 春夏:「てへっ…」 春夏:   春夏:     0:―――――笑顔がぎこちない二人の 0:―――――夜は更けてゆく・・・  0:―――間 0:   アキ:「春夏?まだ寝ないの?」 春夏:「んー、このラッピング終わったらー」 アキ:「よし!手伝おう」 アキ:   春夏:「んー?もう終わるよ? 春夏: 妙に優しいじゃん」 アキ:「俺はいつも優しいけど」 春夏:「はいはい、そうですねー」 春夏:   0:―――――しばらく作業する二人 0:・・・ 春夏:「…よし!終わったねー!ありがと!」 アキ:「……」 春夏:「……ん?どした?」 アキ:「…前にさ、小学校上がってすぐの頃」 アキ: サッカーしたそうに見てたんだよ」 春夏:「……」 アキ:「みんなと一緒にやりたかったのかなあー、サッカー」 春夏:「……だね」 アキ:「耐える漢(おとこ)は強いね、俺のほうが弱いかも」 春夏:「……うん、そうかもね」 アキ:「……」 春夏:「……」 アキ:「……・・・会いたいなあ……」 春夏:「……」 アキ:「医者に止められてるとか無視して、 アキ: 思いっっっきり アキ: サッカーやらせてあげたかったなあ」 アキ:   春夏:「…心臓に負担かかっちゃうよ」 アキ:「入院してからも、連れ出して一日中遊べば良かった」 春夏:「……」 アキ:「……ずっとずーっと我慢してきたんだから、 アキ: どんなわがままでも聞いてやってさ アキ: 行きたいとことか、したいこと、全部全部 アキ: 全部全部……叶えて、それで(遮)」 春夏:「アキ」 アキ:「世界旅行とかもいいな! アキ: あいつなら世界一周とかもできたよ、強いもんな!」 春夏:「…アキ!」 アキ:「真っ黒に日焼けしちゃって、それ見て春夏も笑うんだよ! アキ: つられて皆で笑うんだよ、それから…それから(遮)」 春夏:「パパっ!!」 アキ:「っ!」 アキ:    0:―――――気付くと静かに涙を零している春夏 0:   春夏:「…わかるから」 アキ:「……春夏」 アキ:   春夏:「……わかってるから…」 アキ:「……」   春夏:「言葉にしちゃうとさ、 春夏: 止まらなくなっちゃうから、やめよう? 春夏: あ、明日はさ、 春夏: きっと最高の日になるんだからさ! 春夏: だから、大丈夫…大丈夫だよ、あの子は強いんだから、 春夏: …だから、私たちが弱くなってちゃダメ…… 春夏: ダメなんだって…」 春夏:  アキ:「別にいいんだよ…… アキ: 弱くたっていいんだよ…!!」 アキ:    春夏:「………ダメなの……」 春夏:   アキ:「え?」 アキ:   春夏:「…だからっ!!ダメなのっ!!! 春夏: 私たちはあの子の親なんだから、強いのっ!! 春夏: あの子はあんなに最期まで強く、強く…! 春夏: …生き抜いてくれたの!! 春夏: それをちゃんとこの目で見たから…! 春夏: しっかりしないといけないの…っ!!」 春夏:   アキ:「……春夏?」 アキ:   春夏:「あんなに、か細い手でも……っ!指でバイバイしたんだよ!? 春夏: あんなに管に繋がれてるのに… 春夏: 私たちに向かって、震える指で…!!バイバイって…っ!!」 春夏:   アキ:「……っ!」 アキ:   春夏:「もうそんな力も、とっくに残ってないはずなのにっ……!! 春夏: …あの時ちゃんと…! 春夏: あの子の強さをもらったから…っ!!だから、だからっ!(遮)」 アキ:「そうやって強い強いって……!!」 アキ:   春夏:「…え?」 春夏:     アキ:「……じゃあ、なんでだよ…!! アキ: 強かったらなんでいないんだよっ!!」 アキ:   春夏:「…っ!?」 春夏:   アキ:「今、ここに!!! アキ: あいつはなんでいないんだよっ!? アキ: なんでか……!!わかるだろ!? アキ: そんなの決まってんだよっ!! アキ: 強く見えたけど!! アキ: あいつは一生懸命頑張ってただけなんだよ!! アキ: 本当は弱くて弱くて、辛くて、痛くて、でもっ!! アキ: 俺たちに心配かけないように アキ: 一生懸命強く見せてただけなんだよ…っ!!」 アキ:    春夏:「…っ!  春夏: …わかってるよっ!! 春夏: そんなのわかってるの!!! 春夏: わかってる……けどっ!! 春夏: 全然頭が言う事聞かないのっ!!」 アキ:「春夏…!」 春夏:「私だって会いたいっ!! 春夏: 今すぐにでも抱きしめたい!!! 春夏: 痛いよママ、恥ずかしいよママってどれだけ言われても 春夏: 離したくない!!離したくなかったんだよ…っ!!!」 アキ:「…っ!!」 春夏:「なんでここにいないかって!? 春夏: 死んじゃったんだもん!!! 春夏: あんなに頑張って頑張って頑張って 春夏: でもっ!! 春夏: 死んじゃったからいないんだよっ!!! 春夏: 死んじゃったらさ!! 春夏: どんなに抱きしめたくても 春夏: 抱きしめることも、欲しいプレゼントを買ってあげることも 春夏: あの笑顔を見ることもっ!! 春夏: もう何も出来ないんだよっ!!!」 アキ:「春夏っ!ちょっと落ち着けって!」 春夏:「落ち着けたことなんて1度もない!!! 春夏: あの日から、ずっと…ずっと……っ……」 春夏:    アキ:「っ…ごめん…!」 アキ:    春夏:「………」 春夏:   アキ:「春夏、ごめん… アキ: 春夏だって我慢してるのわかってたのに、 アキ: 弱くてごめん…っ! アキ: …………っくそ!!!」 アキ:     春夏:「……」 アキ:「……くそっ!くそくそ…っ!!!」 0:  ・・・ 春夏:「…パパ……もうやめよう…… 春夏: あの子に笑われちゃう……」 春夏:   アキ:「………」 アキ:   春夏:「…ごめん、私も取り乱しちゃった… 春夏:  パパが辛いのもわかってるのに……」 春夏:   アキ:「…ごめん、ごめんごめん……っ…」 アキ:   春夏:「………パパ… 春夏: 今からちょっと強がろう……」 春夏:    アキ:「…うん……そうだね…… アキ: …やっぱり、強いよ、あいつ」 アキ:   春夏:「……そうだね…かなわないね……」 春夏:   春夏:    0:―――――長い間 0:  アキ(Ⅿ:翌日。 アキ(Ⅿ:俺のプレゼントやら、 アキ(Ⅿ:春夏のプレゼントやらで アキ(Ⅿ:部屋はプレゼントだらけだ アキ(Ⅿ:   アキ(Ⅿ:昨日の今日ということも影響したようで アキ(Ⅿ:春夏は体調が良くないそうだ アキ(Ⅿ:   アキ(Ⅿ:今日はクリスマス アキ(Ⅿ:あいつの誕生日 アキ(Ⅿ:   アキ(Ⅿ:プレゼント アキ(Ⅿ:気に入ってくれるかな アキ(Ⅿ:      春夏(Ⅿ:おはようと挨拶をした後 春夏(Ⅿ:お互いの泣き腫らした顔を見て 春夏(Ⅿ:思わず吹き出した 春夏(Ⅿ:     春夏(Ⅿ:生憎(あいにく)体調が優れなくて 春夏(Ⅿ:寝室に戻り 春夏(Ⅿ:二度寝をさせてもらっていた 春夏(Ⅿ:        春夏(Ⅿ:今日はクリスマス 春夏(Ⅿ:あの子の誕生日 春夏(Ⅿ:       春夏(Ⅿ:今年のプレゼント 春夏(Ⅿ:気に入ってもらえるかな 春夏(Ⅿ:     春夏(Ⅿ:来年も 春夏(Ⅿ:私たちは同じ事をするのかな… 0:・・・ 春夏(Ⅿ:眠りに落ちかけた寸前 春夏(Ⅿ:勢いよく寝室の扉が開いた 春夏(Ⅿ:     アキ:「春夏!!!!!」 アキ:      春夏:「っ!?」 春夏:    アキ:「ちょ、ちょっとこっちきて!!い、今すぐ!!」 アキ:    春夏(Ⅿ:アキは明らかに動揺していた 春夏(Ⅿ:何事かと思い 春夏(Ⅿ:私はリビングへと足を運んで 春夏(Ⅿ:アキの指差す方へ目を向けた 春夏(Ⅿ:   春夏:「……え」 春夏:    アキ:「…なかったよな?」 春夏:「…どういうこと…?」 アキ:「昨日の夜一緒にプレゼント置いたから、俺のプレゼントも、 アキ: 春夏のプレゼントもわかる…」 アキ:       春夏:「でも、あれ……?」 アキ:「やっぱり…あんなプレゼント アキ: なかったよな?」 春夏:「…なかった…どうして?」 春夏:   0:―――――ゆっくりとプレゼントのもとへ向かう二人 春夏:「なにが入ってるの…」 アキ:「分からない…」 春夏:「開けてみる…?」 アキ:「……うん」 0: ・・・ 春夏(Ⅿ:お互いの勘違いでは無いことを確認した上で 春夏(Ⅿ:見知らぬプレゼントを開けることにした 春夏(Ⅿ:   春夏(Ⅿ:何故だか、そのプレゼントを開けることに 春夏(Ⅿ:二人とも抵抗はなかった 春夏(Ⅿ:   春夏(Ⅿ:   アキ:「……サッカーボール?」 アキ:    アキ:     春夏(Ⅿ:『サッカー』 春夏(Ⅿ:      春夏(Ⅿ:ぐらぐらと目眩(めまい)がした 春夏(Ⅿ:あの子との会話がよみがえる 春夏(Ⅿ:    春夏(Ⅿ:   アキ:「……そうか…… アキ: サッカー羨ましそうに見てたもんな… アキ: サッカーボールがずっと欲しかったのか… アキ: ・・・ アキ: …なあ……いるなら教えてくれよ…」 アキ:    春夏(Ⅿ:あの子がずっと欲しかったものは 春夏(Ⅿ:サッカーボール 春夏(Ⅿ:    春夏(Ⅿ:記憶がより鮮明によみがえる 春夏(Ⅿ:    春夏(Ⅿ:サッカーを羨ましそうに見ていたという 春夏(Ⅿ:あの日の会話 春夏(Ⅿ:見学に付き添ったアキから 春夏(Ⅿ:事情も聞いていた 春夏(Ⅿ:    春夏(Ⅿ:帰宅したあの子は、確か… 0:―――――アキに歩み寄る春夏 0:  春夏:「だから… 春夏: サッカーボールが欲しかったんだ」 アキ:「…え?」 春夏:「思い出したの、あの日のこと…」 アキ:「思い出した!?え、なにを…?」 春夏:「帰ってきてからの会話を」 アキ:「…会話……?」 春夏:「…うん」 春夏:    アキ:「ちょっと待って。あの日は…… アキ: あいつと一緒に帰ってきてから、 アキ: お風呂とか色々済ませて、それから……」 アキ:    アキ(Ⅿ:あの日の帰り道 アキ(Ⅿ:あいつはずっと何かを考えているようだった アキ(Ⅿ:俺は、 アキ(Ⅿ:友達とサッカーが一緒にできなくて アキ(Ⅿ:落ち込んでいるのか、拗ねているのか アキ(Ⅿ:分からなかった アキ(Ⅿ:    アキ(Ⅿ:そのまま帰宅して アキ(Ⅿ:春夏に事情も話した アキ(Ⅿ:   アキ(Ⅿ:その日は アキ(Ⅿ:家族でいつも通り過ごした アキ(Ⅿ:   アキ(Ⅿ:そして…… アキ(Ⅿ:   アキ(Ⅿ:   アキ:「……夢…… アキ: そうだ…夢があるって言ってた…」 春夏:「……思い出した? 春夏: なんで私たち、忘れちゃってたんだろうね」 春夏:  アキ(Ⅿ:家族三人でゆっくり過ごしていたら アキ(Ⅿ:急に アキ(Ⅿ:『夢をみつけたんだ』と言った アキ(Ⅿ:   アキ(Ⅿ:もしお兄ちゃんになったら アキ(Ⅿ:サッカーを教えてあげたい アキ(Ⅿ:それでいつか アキ(Ⅿ:サッカー選手になってほしい アキ(Ⅿ:    アキ(Ⅿ:あいつは確かにそう言った アキ(Ⅿ:    アキ(Ⅿ:    春夏:「自分がサッカー出来ないから… 春夏: せめて、教えてあげたかったのかな」 アキ:「……そうだな」 春夏:「だからずっと 春夏: サッカーボールが欲しかったんだね… 春夏: ………すぐにでも買ってあげたのにね」 春夏:   春夏:   春夏(Ⅿ:忘れていてごめん 春夏(Ⅿ:思い出すのに 春夏(Ⅿ:こんなに時間がかかってしまってごめん 春夏(Ⅿ:    春夏(Ⅿ:何気ない会話に 春夏(Ⅿ:ヒントはあったんだ 春夏(Ⅿ:    春夏:「やっと、見つけたね…」 アキ:「……」 春夏:「…どうしたの?」 春夏:    アキ:「……ギャフン」 春夏:「え?」 アキ:「……これ見て……」 春夏:「サッカーボール……2個目?」 春夏:   アキ:「なるほどな……そういうことか…(優しく)」 春夏:「もしかして……!」 アキ:「これ、軽くて柔らかい… アキ: …そっか…怪我しないように……っ!! アキ:(ため息)ほんっと……どこまでかっこいいんだよ!」 アキ:     春夏:「…そっか…うん! 春夏: そっかそっかあ……っ!!」 春夏:     アキ:「強くて、優しいとか、 アキ: あいつ……ほんとにすごいな…っ!!」 春夏:「…うん…!もうとっくに、 春夏: 立派なお兄ちゃんだったんだね…!!」 春夏:    アキ:「…つまりさ… アキ: あいつが本当に欲しかったものは……」 アキ:   アキ:   アキ(Ⅿ:春夏の少し膨らんだお腹を アキ(Ⅿ:優しく撫でる アキ(Ⅿ:    春夏(Ⅿ:私はアキの手に 春夏(Ⅿ:自分の手を重ねた 春夏(Ⅿ:   春夏(Ⅿ:   春夏:「…ここにいたね… 春夏: あの子、ずっと欲しかったんだね…… 春夏: ・・・ 春夏: たくさん待たせちゃってごめんね……っ 春夏: ありがとう、お兄ちゃん…!」 春夏:    春夏:「ギャフン……! 春夏: 言わされちゃったね…!!」 春夏:   春夏:   アキ(Ⅿ:よく晴れた庭で アキ(Ⅿ:子供たちが嬉しそうに アキ(Ⅿ:サッカーボールで遊んでいる姿が アキ(Ⅿ:目に浮かぶ アキ(Ⅿ:   アキ(Ⅿ:そんな景色を アキ(Ⅿ:実際に眺められたら… アキ(Ⅿ:   アキ(Ⅿ:   アキ(Ⅿ:諦めない漢は強い アキ(Ⅿ:強くて、最高にかっこいい  0:―――――短い間 アキ:「結局…… アキ: 俺たちがプレゼントもらっちゃったな」 春夏:「…そうだね、あっ!」 アキ:「どした?」 春夏:「今、赤ちゃん動いた…」 アキ:「……そっか!元気で良かった…! アキ: 年明けに検診だもんな」 アキ:   春夏:「うん!…でも、もうわかるよ私。」 春夏:   春夏:    春夏:「強くて、可愛い男の子だと思う」 春夏:   0:―――――間 0:  アキ(Ⅿ:あの日の アキ(Ⅿ:奇跡のような出来事は アキ(Ⅿ:本当に夢を見ているようだった アキ(Ⅿ:   アキ(Ⅿ:その後、検診で アキ(Ⅿ:お腹の子は男の子だとわかった アキ(Ⅿ:   アキ(Ⅿ:   アキ(Ⅿ:春夏と俺の大事な手帳が、2冊になった  アキ(Ⅿ:   アキ(Ⅿ:    0:―――――長い間――――― 0:   0:―――――二十年後 0:  アキ:「…綺麗になったな! アキ: それじゃあ、バケツとか片してくるよ」 アキ:   春夏:「うん、ありがとう」 春夏:   春夏:   春夏:「…よく晴れたねえー 春夏: お兄ちゃん、応援してくれてるのね 春夏: なんだか、私まで緊張してきちゃった 春夏: でもね、ああ見えて 春夏: お父さん、きっと私より緊張してるのよ。 春夏:  ・・・ 春夏: ……あれから二十年か… 春夏: あの日の事、今でも鮮明に思い出すの。 春夏: ありがとう、お兄ちゃん 春夏: あなた達を生んだことは 春夏: 私の人生において1番の誇りよ」 春夏:    アキ:「おまたせ! アキ: そろそろ行かないと、 アキ: 試合に間に合わなくなるよ」 アキ:     春夏:「そうね…じゃあ行ってくるね!」 春夏:   春夏:   0:―――(声を揃えて)  アキ:「誕生日おめでとう」 春夏:「誕生日おめでとう」 春夏:   春夏:   0:  0:   (語り・春夏) 0:  0:  0: さんたさんって 0: なんでもねがいを 0: かなえてくれるってきいたんだ 0:  0: かなえてくれて 0:  0: ありがとう 0:  0: さんたさん 0:  0:  0:  0:――――了  0: