台本概要
763 views
タイトル | 半透明彼氏は選ばれたい |
---|---|
作者名 | 遠野太陽 (@10nonbsun) |
ジャンル | コメディ |
演者人数 | 2人用台本(男1、女1) |
時間 | 50 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
目覚めると片思いしている彼がいた。半透明で。 この恋は予測不能。 ※寝子との合作 763 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
花 | 女 | 284 | 同じ会社の星守に一目惚れ。こっそり副業している。 |
マヒロ | 男 | 205 | 星守そっくりな男。半透明。(星守と2役) |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
0:朝。
マヒロ:一日目。
:
マヒロ:花。起きて。一緒に朝ごはん食べよ。
花:んあ? ん?
マヒロ:グッモーニン、マイエンジェル。
花:えっ・・・え⁉
マヒロ:まだ寝ぼけてる? あ、寝ぐせ、可愛い。
花:は? ほし、もり、くん?
マヒロ:ほしもり?
花:なんで星守くんが⁉
マヒロ:星守って誰のこと? 僕はマヒロだよ。
マヒロ:昨日のこと、覚えてないの?
花:え、うん。だから、星守真宙くん・・・だよね?
マヒロ:うん。僕はマヒロだよ。
マヒロ:花のことがだーい好きなマヒロだよ。
花:昨日、どうしてたんだっけ・・・うっ、あいたたた。あったま痛い。昨日飲みに行ったんだっけ?
マヒロ:ホントに忘れちゃったの?
花:全然思い出せない。
マヒロ:ひどい!
花:あ、ああっ、ごごごめんなさい。
マヒロ:昨日、あんなに僕のこと「大好き」って言ってくれたのに!
花:ええっ、私そんなこと言っちゃったの⁉
マヒロ:あんなに激しく、あんなことや、そんなことまで・・・。
花:あんなことや、そんなことまで⁉
マヒロ:昨日の花、とっても可愛かったなぁ。
花:待って。あんなことやそんなことって何?
マヒロ:(耳元で)思い出せないなら、これから思い出させてあげようか。
花:はうっ・・・!
マヒロ:なーんてね。嘘なんだけどね。
花:ちかいちかいちかいちかい!
マヒロ:ごめん。実は僕も覚えてないんだ。
花:はへっ・・・?
マヒロ:ねえ、花。僕って誰なのかな?
花:え? あなたは、星守真宙くん・・・だよね?
マヒロ:自分の名前はマヒロだってわかってるんだけどね。それ以外はぼんやりしててよく覚えてないんだ。
花:記憶・・・喪失?
マヒロ:あ、でも、ひとつだけ確かなことがある。
マヒロ:僕は花のことが大好きだってこと。
花:んんっ⁉
花:あ、えっと・・・その・・・。
マヒロ:とりあえず、花が大好きってことは間違いないから、あとはどうでもいいかなって。
花:いや、私の心臓がどうにもならないんですけど。
マヒロ:僕は、『花のことが大好きなマヒロ』。それでいい。花もそれでいいでしょ?
花:へ?
マヒロ:だから、抱きしめていい?
花:(混乱して)あ、うん。
マヒロ:(微笑)ぎゅううううう。
花:あれ? 頭パニックで気づかなかったけど、あなたの体、透けてる?
マヒロ:え、そうかな?
花:うん。半透明っていうか・・・。ホントに星守くんなんだよね?
マヒロ:星守じゃなくて僕はマヒロだって言っただろ。
花:ああああ! これは夢、もしくは片思いしすぎておかしくなった私が見てる幻か、もしくは妄想⁉
花:そうだよね、じゃなきゃ、星守くんがこんなところにいるわけないし。
花:妄想なら、ずっと呼べなかった名前で呼ぶことも・・・。
マヒロ:(耳元で)僕は幻なんかじゃないよ。
花:ひぃ・・・!!!
マヒロ:(耳元で)ほら、僕の名前を呼んでみて。
花:はぁあああん・・・ま、マヒロ・・・くん。
マヒロ:花。もう一回。
花:ぐっ・・・マヒロ、くん。
マヒロ:照れてる花も可愛い。
マヒロ:僕と花はこれからずーっと一緒だからね。
花:透けてはいるけど、ちゃんと触れるしあったかい。それに耳にかかる吐息にゾクゾクする。こんな近くにマヒロ君がいるなんて、もう何がなんだかわからない。
マヒロ:花?
花:はっ、今何時? はぁああ⁉ もう会社、行かなきゃ!
マヒロ:会社?
花:仕事だよ! マヒロ君は・・・体が透けてると大騒ぎになっちゃうし、とりあえず家にいて。
マヒロ:嫌だよ。僕も一緒に行く。
花:や、だめだよ。
マヒロ:じゃあ会社なんて行かなくていい。僕と一緒にいようよ。
花:いや、そんなこと言われても・・・。
花:あ、わかった。マヒロ君、オムライス好き?
マヒロ:オムライス? うん。大好き。
花:帰ってきたら、特製のオムライス作ってあげる。花スペシャルオムライスだよ。材料買って帰ってくるから、大人しく家で待っててくれる?
マヒロ:ホント⁉ 花の手料理?
花:そう。だから、ね?
マヒロ:うわぁ。楽しみ。・・・あ、でも、やっぱり離れたくないな。
花:えぇぇ。えっとじゃあ・・・。
花:はい、これ。私がいつも抱きしめながら寝てるペンペン!
マヒロ:このペンギンのぬいぐるみ、僕にくれるの?
花:365日、毎日抱きしめて寝てるから、もやは私みたいなもんよ。これ、貸してあげるから。だから・・・。
マヒロ:(匂いを嗅いで)花の匂いがする。
花:うぅ、ちょっと恥ずかしいぃ。
マヒロ:わかった。これを花だと思って我慢する。早く帰ってきてね。
花:うん。急いで準備しなきゃ。
:
0:間
:
マヒロ:朝ごはんは食べなくていいの?
花:朝はいつも時間なくて食べられないの。早く起きたりできないし。
マヒロ:じゃあ、明日からは僕が作ってあげるね。
花:え、ほんと?
マヒロ:実は僕も料理は得意なんだ。任せといて。
花:(興奮)んんんんっ! マヒロ君の手料理ぃ・・・!!
花:ああ、やっば。ほんとに遅刻しちゃう!
花:じゃあ、行ってくる。
マヒロ:あ、うん。行ってらっしゃい。早く帰って来てねー!
:
0:夜
0:大きな買い物袋を抱えて花が帰ってくる。
花:(疲れた溜め息)ただいまぁ。
マヒロ:おかえりー! おかえりおかえりおかえりおかえりおかえりー!
マヒロ:花、遅かったじゃないか。こんな時間まで何やってたの!
花:あ、マヒロくん。ただいま。遅くなっちゃってごめんね。残業になっちゃって・・・。
マヒロ:花、疲れてる?
花:今日も戦ったわ。ほんと疲れた。
マヒロ:お仕事お疲れさま。
花:うん・・・。
花:マヒロ君はさ、やっぱり星守くんじゃないんだよね?
マヒロ:うん。僕はマヒロだよ。
花:うん。そうだよね。今日、会社に行ったら、いつも通り星守くんが出社してた。
マヒロ:その星守って人、僕に似てるの?
花:うん。すっごく似てる。見た目も声も、全部。
花:遠くから見てるだけで、話したことないから中身はわかんないんだけど・・・。
マヒロ:へぇぇ、そうなんだ。
花:でもね、今日星守くんについ話しかけちゃったんだ。
花:「どうしてここにいるの?」って。普段なら絶対にそんなことしないのに、マヒロ君のことがあったからつい、ね。そしたら・・・。
マヒロ:そしたら?
花:なんか訝(いぶか)しげにこっちを見ただけで、返事もしてくれなかった。
花:そりゃ、これまで話したこともなかったんだもん。絶対、変な女だと思われちゃった。
マヒロ:花は、それがショックなの?
花:そりゃまぁ、入社してから一目惚れして、ずっと好きだったんだよ。初めての会話がこれかーって思ったら、なんか悲しくなってきちゃった。
マヒロ:花には僕がいるよ。
花:え?
マヒロ:僕は星守と同じ顔なんだろ。
マヒロ:だったら僕でいいじゃん。
花:いや、でも・・・。
マヒロ:そんな奴のこと忘れて、僕のこと好きになってよ。
花:うーん・・・。
マヒロ:花は僕のこと嫌い?
花:や、嫌いとかじゃないよ。ただ、私は星守くんが・・・。
マヒロ:あああ、そんなことよりも!
マヒロ:オムライス食べるんだろ。一緒に作ろうよ。
花:あ、忘れてた。そっか、そうだね。お腹すいたもんね。ごはん、作ろっか。
マヒロ:教えてよ。花のスペシャルオムライス。
花:おー? 聞いちゃうー?
マヒロ:教えて教えて。
花:私のオムライスはね、チキンライスじゃなくて、豚キムチチャーハンなんだよ。スタミナ満点。
マヒロ:うわぁ、楽しみ。ほらほら、まずは着替えて。
花:あ、うん。じゃあ着替えてくるからキッチンで待ってて。
マヒロ:あ、おかえりハグ、忘れてた。
マヒロ:(抱きしめて)ぎゅううううう。
花:ひゃっ⁉ ちょっちょちょちょっと!
花:距離がちかいいいいいーーー!!!
マヒロ:ああぁ。本物の花の匂いだー。
花:ちょっ・・・匂いかがないでぇえええ!
マヒロ:はあ、幸せ。あ、花のお腹が鳴ってる。
花:うぅ、はずかしい。
マヒロ:(笑)ほら、早く作ろ。
花:うん。
:
0:間
:
マヒロ:ごちそうさまでした。ホントに美味しかった。
花:ふふっ、喜んでくれてよかった。
花:(時計を見て)あ・・・もうこんな時間か。お風呂入って早く寝なきゃ。
マヒロ:今日は一緒に寝ようね。
花:それは無理。
マヒロ:えええええ、なんでえええ!
花:却下!
マヒロ:この部屋、ベッド一つしかないよ。
花:マヒロ君はそっちのソファー使って。
マヒロ:やだ。花と一緒に寝る。花を抱き枕にして寝る。
花:人を抱き枕にするんじゃない。
マヒロ:じゃあ腕枕してあげる。僕の腕、寝心地いいよ。仕事の疲れ、吹っ飛ぶよ。
花:あ、そう言えば、私疲れてたんだった。なんか、マヒロ君と話してたら、そんなこと忘れちゃってた。
マヒロ:(笑)疲れてる花より、笑ってる花のほうが好きだな。
花:うん。ありがとう。
マヒロ:花、可愛い。好き。大好き。
マヒロ:僕は花を笑顔にするために生まれたのかもしれない。
花:・・・でも、マヒロ君はソファーだからね。
マヒロ:くぅぅ、ダメかぁぁぁ。もうちょっと押せば、気持ち変わるかと思ったのに。
花:残念でした(笑)
マヒロ:わかった。今日はソファーで寝るよ。だから早くお風呂入っておいで。
花:はーい。
:
0:朝
:
マヒロ:二日目。
:
花:(寝息)
マヒロ:よく寝てるなぁ。こっそりベッドに入っちゃお。よいしょっと。
マヒロ:あああぁ。好き。このまま時が止まっちゃえばいいのになぁ。ずーっと見てられる。
花:んー・・・んぇ・・・マヒロくん? おはよ、おおおおおおお??
マヒロ:うわっ!
花:な、なんで隣に寝てるの⁉
マヒロ:そこに花が寝てたから。
花:答えになってない。
マヒロ:いや起こそうと思ったんだよ。でもぐっすり寝てるから、もう少し寝かせてあげようかなって思って。で、寝顔をずーっとずーっと見てたら、我慢できなくなっちゃって。つい・・・。
マヒロ:あ、でも何もしてないよ。まだ。
花:まだ・・・まだって⁉
マヒロ:あと3秒でキスしてた。
花:!!!!(言葉にならない)
マヒロ:あ、唇じゃないよ。ほっぺにだからね。僕、花の柔らかいほっぺが大好きなんだ。
花:そういう問題じゃない! まったく、油断も隙もあったもんじゃないんだから。
マヒロ:もう朝ごはんできてるよ。それとも、もうちょっとベッドでイチャイチャする?
花:イチャイチャなんてしてません。って、朝ごはん、ほんとに作ってくれたの?
マヒロ:(微笑)約束しただろ。ほら、一緒に食べよ。
花:うん。何作ったの?
マヒロ:あったかご飯とお味噌汁。それと、昨日買ってきてくれた揚げ出し豆腐。
花:へぇ。意外にちゃんとしてる。
マヒロ:いつも食べてないなら、控えめでいいかなって。明日のリクエストあったら教えてね。
花:ん、いただきます。
マヒロ:はーい。召し上がれ。
花:(食べる)んー、おいしい。やっぱり日本人はご飯と味噌汁だよねぇ。しみるぅ。
マヒロ:よかった。一緒に朝ごはん食べるって、なんか幸せだよね。
花:うん、そうだね。あ、お味噌汁にジャガイモ入ってる。ジャガイモのお味噌汁大好きなんだぁ。
マヒロ:(微笑)花、幸せそうな顔してる。
花:そうかな? こんなにゆっくり朝ごはん食べるの久しぶりだから。
花:って、はっ⁉ ちょっとまって、今何時⁉
マヒロ:え?
花:仕事! 早く着替えて準備しないと、遅刻する!(急いで食べる)
マヒロ:ゆっくり食べなよ、もう。
花:(少しせき込みながらもご飯を食べ終わる)ごちそうさま。おいしかった、ありがと。
マヒロ:どういたしまして。
花:急いで準備しなきゃ。ああああああ、髪の毛ハネてる!
マヒロ:寝ぐせ可愛いからそのままでいいよ。
花:ダメだよー! あああ、アイロンかけたシャツどこだっけ⁉
マヒロ:ちょっと待って。はい、どうぞ。
花:ありがと。あ、今日の仕事で使う書類、確認したまま机に出しっぱなしだった。
マヒロ:ちゃんとバッグに入れておいたから。
花:ええ、ほんとに? 気が利くー!
マヒロ:心配だなぁ。僕も一緒に行こうか?
花:(悩む)んんんん・・・大丈夫。仕事にはついてこないで。ややこしくなるから。
マヒロ:そっか。・・・やっぱり寂しいなぁ。
花:そんな子犬みたいな顔しないでよぉ。
花:あれ? マヒロ君、なんか濃くなった?
マヒロ:濃くなったって、何が?
花:体がね。昨日はもっと薄かったような・・・。
花:あ、いや何でもない。あああああ、もう行かなきゃ!
花:忘れ物は・・・よし、大丈夫。
マヒロ:忘れてるよ。
花:ん?
マヒロ:行ってきますのハグ。ほら、おいで。
花:(マヒロを無視して)いってきまーす!
マヒロ:あああっ、もう! いってらっしゃい。早く帰ってきてね。
花:はーい!
:
0:夜
:
マヒロ:おっかえりーーーーー!!!
マヒロ:おかえりおかえりおかえりおかえりおかえりー!
花:た、ただいまあ。相変わらずすごい勢いでくるなぁ。
マヒロ:お仕事お疲れ様。
花:うん。今日も戦ってきたよぉ。
マヒロ:(抱きついて)おかえりのハグ、ぎゅうううううううう!
花:ちょっ、あーもう。
マヒロ:今日の僕は偉いんだよ。
花:へ?
マヒロ:お部屋を掃除して、晩御飯も作って。準備万端で花を待ってたんだ。
花:えぇ⁉ お掃除までしてくれたの?
マヒロ:ベッドメイクも完璧。もちろん枕は二つ並べて。いつでも準備OK!
花:うわぁあ、部屋中ピッカピカだ。
花:枕もちゃんと二つ・・・ん? 二つ?
マヒロ:うん♪
花:いつでも準備OKって・・・。
マヒロ:(耳元で)今夜は寝かさないからね。
花:ふぇっ⁉ ちょ、やめてよ、それどころじゃないんだって!
マヒロ:どうしたの?
花:なんか今日会社でね。
マヒロ:うん。
花:星守くんが話しかけてきたの。今度は向こうから。
マヒロ:(ムッとして)また星守の話?
花:私びっくりしちゃっておろおろしてたんだけど、そしたら真剣な顔で「なにかおかしなことに関わってるんじゃないか?」って。
マヒロ:なにそれ?
花:わかんない。一体どういう意味だったんだろう。
マヒロ:さあね。
花:おかしなこと・・・。うん。確かになくはないんだけど・・・。
花:さすがに、言えるわけないよね。こんなこと。
マヒロ:星守の話なんかどうでもいいよ。星守じゃなくて僕を見てって言っただろ。
花:それになんか、星守くん具合悪そうだったんだよね。大丈夫かな。
マヒロ:具合悪そうだったんだ。へぇぇ、そうなんだ。
マヒロ:おかしいのはそいつの頭なんじゃない?
マヒロ:心配することないよ。花は何も気にしなくていい。
花:いや、でも・・・。
マヒロ:おかしなことなんて何もない。花のことが大好きな僕がここにいる。花は僕だけを見ていればいいんだよ。
花:・・・うん。
マヒロ:さあ、ご飯にしよう。
花:あ、うん。今日は何作ったの?
マヒロ:アクアパッツァ作ったんだ。僕の得意料理。
花:へぇぇ、おっしゃれ!
花:あ、イタリアンなら貰い物だけどいいワインがあるんだ。
花:マヒロ君、飲めるのかな?
マヒロ:飲めるよ。花はいいの? 明日も仕事なのに。
花:あー、そうだなぁ。確かに。
マヒロ:でも、一杯だけなら大丈夫だよね。乾杯しよっか。
花:そうだね。うん、せっかくだしね。
マヒロ:決まり。グラスも準備してそっち持ってくね。
花:はーい。
:
0:間
:
マヒロ:そう言えば、今日さ。
花:うん。
マヒロ:なんとなくテレビ観てたんだけど、ドラマやってて。
マヒロ:なんてタイトルだったかな。主人公が双子の弟でね。
花:うん。
マヒロ:好きな子がいるんだけど、その子は兄のことが好きで、主人公の弟は優秀な兄のことが大嫌いなわけ。
花:ほう・・・それで?
マヒロ:で、好きな子が兄をデートに誘う。弟の気持ちに薄々感づいている兄は弟に「代わりに行け」って言う。
花:えー?
マヒロ:弟は兄のフリをして、好きな子とデートを楽しむんだ。
マヒロ:いい感じの雰囲気になって、そして弟は告白する。
マヒロ:「俺は兄じゃない。弟のほうだ。ずっと前から好きだった」って。
花:わお・・・。
マヒロ:そして弟はフラれてしまう。
花:あらら・・・。
マヒロ:その後、女の子は兄に告白するんだけど、「つきあえない」って言われちゃう。
マヒロ:泣いて悲しむ女の子に、弟はもう一度告白するんだ。「俺がいるだろ」って。
花:うん。
マヒロ:それで、どうなったと思う?
花:えー、わかんない。どうなったの?
マヒロ:またフラれちゃうんだ。兄の代わりにはならないからって。
花:そっか。なんか報われないね。
マヒロ:それで弟は、兄に負けないように男を磨く。いつか好きな子に振り向いてもらえるように。弟が頑張ってるシーンでエンディング。
マヒロ:そんなお話だった。
花:なんかうまくいかないもんだね。
マヒロ:それ観てたらさ。思ったんだよね。
花:ん?
マヒロ:女の子はさ、最初から弟を選べばよかったんだよ。だってさ。「自分が好きな人」より、「自分を好きな人」と一緒にいるほうが幸せになれるって思わない?
花:んー、どうだろう。
花:でも、好きな気持ちを捨てられなかったら、空しくなっちゃうんじゃないかな。
花:それに弟だって辛いと思うんだ。たとえ今はよくても、いつかは耐えられなくなっちゃうんじゃない?
マヒロ:そうかな? いつかは自分のほうを好きになってくれるって頑張ると思うけど。女の子のほうも、ずっと弟と一緒にいたら気持ちだって変わると思う。
花:そういうもん?
マヒロ:自分のことを好きじゃない人といて苦しくなるより、自分を好きでいてくれる人といたほうが安心できるし、心が満たされると思うんだ。
花:まぁ・・・うん。それはある、かも。
マヒロ:あっ。今、僕のこと考えてたでしょ?
花:へっ⁉ ち、ちが、そんなんじゃないんもん。
マヒロ:そういう顔してた。
花:どんな顔よ。
マヒロ:(微笑)僕のことが大好きって顔。
花:ばっ、ばーーーか! そんなわけないでしょ!
マヒロ:花、可愛い。好き。大好きだよ。
花:や、ちょっと・・・なんでいきなりっ・・・。
マヒロ:そう思ったから。いつも思ってるんだけど。たまに言いたくなっちゃうんだ。
花:うぅ・・・。
マヒロ:(微笑)大丈夫? 顔赤いよ?
花:ちょ、こっち見ないで。
マヒロ:見るよ。ずーっと花だけを見てる。
花:なんか、ちょっと酔いが回ってきたみたい。
マヒロ:そっか。片付けは僕がやっておくから、お風呂入りなよ。
花:そ、そうする。お風呂行ってくるね。
マヒロ:うん。じゃあ、僕はベッドに入って待ってるね。
花:また、そんなことばっかり言って。
マヒロ:冗談だよ。仕事で疲れてる花の邪魔したくないから。大人しくソファーで寝る。
花:え? あ、うん・・・。
マヒロ:あれ? 残念だった?
花:別にそんなことないもん!
マヒロ:そう? あ、そうだ。明日の朝ごはんは何がいい?
花:あ、えっと・・・なんか、体力つくやつ。
マヒロ:了解。任せといて。
花:うん。ありがと。
花:(呟く)・・・私、残念そうな顔、してた?
:
0:朝
:
マヒロ:三日目。
:
花:(寝息を立てている)
花:・・・ん?
マヒロ:あ、おはよ。
花:(寝ぼけて)んぅぅ・・。
マヒロ:あぁっ、寝ぼけてる花、可愛い。
花:マヒロ君・・・おはよ・・・。
マヒロ:よく眠れた?
花:ねぇ、マヒロ君、なんでベッドにいるの?
マヒロ:花がね。寝言で僕の名前を呼んでたんだ。
花:え、呼んでた?
マヒロ:だから、そばにいてほしいのかなって思って。
花:そうなんだ・・・。
マヒロ:うん。そうだよ。ほんとだよ。
花:そっか。あったかい・・・。
マヒロ:あーー、ちょっと待って。なにこれ、可愛すぎるんだけど!
花:あれ? マヒロ君、また濃くなった?
マヒロ:え?
花:もうほとんど透明じゃなくなってる。
マヒロ:そうかな?
花:(嬉しい)マヒロ君、ぎゅう・・・。
マヒロ:花・・・。
花:なに?
マヒロ:花が僕のことを好きになればなるほど、僕という存在は確定していくんだよ。
花:え、どういうこと?
マヒロ:なんでもない。
花:へんなのー。
マヒロ:花の中で僕の存在が大きくなってるのが嬉しいってこと。
花:ねぇ、お腹すいた。
マヒロ:おっけぃ。朝ごはんできてるよ。今、準備するね。
花:やった。今日は何かなぁー?
マヒロ:ポテトサラダピラフ。美味しいよ。朝食にピッタリだから。
花:へー、初めてかも。おいしそう。
マヒロ:で、食べた後はどうする? 会社休んでイチャイチャする?
花:えー? 仕事、行かなきゃ。
マヒロ:僕と仕事とどっちが大事なの?
花:ホントにそんなセリフ言う人いるんだ。
マヒロ:ちょ、感心しないで答えてよ。
花:頑張って働きますよ。マヒロ君との生活のために。
マヒロ:わかった。変なこと聞いてごめんね。
花:(笑)今日は聞き分けがいいね。
マヒロ:うん。花が僕との生活を大事に思ってくれてるのが嬉しいから。
マヒロ:これから毎日、僕がご飯作ってあげる。だから、ずーっと一緒にいようね。
花:・・・うん。
:
0:間
:
花:忘れ物はなしっと・・・。
マヒロ:ほら、また忘れてる。
花:え? 何も忘れてないよ。
マヒロ:行ってきますのハグ。ほら、おいで。
花:あ。(微笑む)・・・うん。
マヒロ:(抱きしめて)ぎゅうううう。
花:ちょ、マヒロ君、力強すぎ。苦しいよ。
マヒロ:(微笑)お仕事頑張ってね。いってらっしゃい。
花:うん。いってきます!
マヒロ:早く帰ってきてね。
花:がんばる!
:
0:夜
:
花:(息を切らして)はぁ、はぁ、はぁ・・・。
花:ただいま、マヒロ君・・・。
マヒロ:おかえり!
花:(マヒロを強く抱きしめる)マヒロ君!
マヒロ:うわわわ。いきなり抱きついてどうしたの? 僕に会えなくて寂しかった?
花:星守くんが・・・星守くんが急に私のこと・・・。
マヒロ:星守?
花:「お前の仕業なのか」って押さえつけられて、首絞められた。
花:わけわかんないよ。
マヒロ:えっ、どういうこと?
花:わかんない。急に襲われて、「助けて」って叫んだら、星守くんが苦しみだして。だからその隙に逃げてきたの。
花:私、星守くんに嫌われちゃったのかな。
マヒロ:許せない。僕の花になんてことを。
花:でも、私にはマヒロ君がいる。
マヒロ:花・・・。
花:だから、平気。大丈夫。
マヒロ:そうだよ。僕がいる。もう星守のことなんか考えるな。
花:ずっと私と一緒にいてくれるよね?
マヒロ:当たり前だろ。僕はずっと花のそばにいる。だから星守のことなんか忘れてしまえ。
花:うん。
マヒロ:ねえ、花・・・。
花:ん?
マヒロ:もしも・・・。
花:うん。
マヒロ:もしも、僕と星守のどちらかを選ばなきゃいけなくなった時、花はどっちを選ぶ?
マヒロ:僕のことを選んでくれる?
花:えっ、それってどういう・・・。
マヒロ:選んでくれるよね?
花:私は・・・。
星守:(窓ガラスを割って突入)バリーン!
花:きゃっ! 窓ガラスが割れた!
星守:そこまでだ!!!
花:え、星守くん⁉
花:どうして・・・。
星守:(苦しい)やっぱりそういうことか。
花:何が?
星守:そいつから離れろ!
マヒロ:おまえは・・・星守!
花:え⁉ なに⁉
星守:こいつは人間じゃない。恋心を餌にして人を呪い殺す人形だ。
花:人形?
マヒロ:あーあ。バレちゃった。
花:マヒロ君?
マヒロ:もう少しで僕が本物の星守になれたのに。
花:どういうこと?
マヒロ:星守の言うとおりだよ。僕はね、こいつを呪い殺すために生まれたんだ。
マヒロ:花が僕を好きになればなるほど星守は弱っていく。花が僕を愛してくれた瞬間に星守は死んで、僕が星守になる。僕はそういう存在なんだ。
花:そんな・・・。最近、星守くんの具合が悪そうだったのは私のせいなの?
マヒロ:花、愛してる。花は星守よりも僕を選んでくれるよね?
星守:やめろ! (殴る)バキィッ!
マヒロ:(殴られて)ぐあっ!
花:ああっ、マヒロ君!!!
マヒロ:僕を選ぶって言ってくれたら、僕はずっと君のそばにいる。こいつと違って、僕は君を愛してるんだ。
花:私・・・。
星守:うおおおお! (殴る)バキィッ!
マヒロ:(殴られて)ぐはぁっ!
星守:だまされるな! こいつの言葉に耳を傾けるんじゃない!
花:やめてえええええ!!
マヒロ:ぐ、うぅぅ。
花:マヒロ君、大丈夫⁉
マヒロ:(弱々しく)花、僕を選んで・・・。
花:しっかりして! マヒロ君!
マヒロ:「僕を選ぶ」って・・・言うんだ・・・うぅぅ。(気絶)
花:マヒロ君!
星守:ふん。気を失ったか。今、とどめをさしてやる。
花:やめて!
星守:君は利用されただけだ。それがどうしてわからない!
花:マヒロ君にひどいことしないで!
星守:そこから離れろ!
花:いや! 離れない!
星守:こいつは呪いの人形だ! こいつの目的は俺を殺すことなんだ!
星守:もう一度だけ言う。そいつから離れろ。
花:いや!
星守:・・・だったら君もそいつの仲間とみなして処分することになるが、それでもいいのか。
花:処分・・・?
星守:そうだ。星守真宙は仮の姿。
星守:本当の俺は・・・。
星守:変身! (ジャンプ)とうっ!
星守:(カッコいいBGM)ターン! タララタータータタンタタンタタン!
星守:光り輝くこの星に
星守:悪が栄える事は無い
星守:この世が闇に染まろうと
星守:二度と明けない夜はない
星守:闇夜に輝く星一つ
星守:シャイン・ユニバース! ここに見参!
星守:(効果音)シャキーーン!
花:星守くん、あなたが⁉
星守:そうだ。俺は地球を守るヒーロー、シャイン・ユニバースだ!
花:・・・あなたがシャイン・ユニバースだったなんて。
星守:わかったら、そこをどけ!
星守:こいつは秘密結社ネオガーデンに作られた呪いの人形なんだ!
花:ふっ、ふふふふ・・・。
星守:何がおかしい?
花:あなたがシャイン・ユニバースだとわかってしまったからには、私も打ち明けなければいけないわね・・・。
星守:なにっ⁉
花:我こそは、秘密結社ネオガーデン幹部、デスフラワー。
星守:えっ、嘘。マジで⁉
花:それはこっちのセリフよ!
星守:マジで? ホントにデスフラワー?
花:そうだって言ってるでしょ。
星守:だって、いつもは顔が半分仮面で隠れてるし、服も違うだろ! こんな地味な服じゃなくて、もっとこう・・・。
花:あのコスチュームは指定なのよ! レンタルだし・・・。
星守:証拠を見せろ!
花:はぁ? 証拠?
星守:お前が本物のデスフラワーであるという証拠だ!
星守:ここで変身してみせろ!
花:えぇぇ・・・。
星守:いつもみたいに、胸元の開いたセクシードレスで、その美脚を俺に見せつけてみろ!
花:あれ恥ずかしいんですよ!
星守:いいからやれ! 早く!
花:んもう! どうにでもなれ・・・!
花:クルリと回転して取り出したマントをバサァァッ!
花:闇の力を受けし花々との盟約により深淵より参らん。
花:我こそ、ネオガーデン幹部、デスフラワー!
花:こ、これで信じる気になった?
星守:デ、デスフラワー様・・・、いや、なんでもない!
花:ん?
星守:まさか本当に貴様がデスフラワーだったとはな!
星守:同じ会社にいるとは思わなかった。
花:こっちこそ。まさかシャイン・ユニバースが会社員(カイ・シャイン)だったなんて。
星守:ダジャレみたいに言うな!
星守:デスフラワー、俺を呪い殺そうとしていたのは作戦だったのか。
花:あ、それは全然知らない。
星守:嘘をつけ!
花:ホントですって。呪いの人形のことなんて聞かされてなかったし。たぶん、人形を貰った時の記憶を消されたんだと思う。
星守:そんなこと信じられるか。
花:信じてよ。秘密結社の中でも派閥があるのよ! おそらくダークブロッサムが私のことを・・・。くっ、なんたる失態!
星守:じゃあ、本当に知らなかったのか。
花:ええ。ダークブロッサムは、星守=(イコール)シャイン・ユニバースだって突き止めてたってことか。やるわね。
星守:状況を整理していいか。
花:ええ。
星守:つまり、君は会社で働きながら、秘密結社ネオガーデンで幹部をやってるってことか?
花:ええ。会社の給料だけじゃやっていけないから、副業で応募した会社がたまたま秘密結社ネオガーデンだったの。
星守:うちの会社、副業は禁止だろ!
花:あなたがそれを言う⁉
星守:俺はヒーローが本職だ。君とは違う!
花:職業差別よ。秘密結社も立派な仕事。夜の仕事だからってバカにしないで。
星守:そりゃ確かに夜の仕事だろうけどひとくくりにするな。どうして秘密結社なんかで副業してるんだ。
花:顔隠してるからバレないと思って。
星守:ダメだろ。秘密結社ネオガーデンだよ。しかも幹部。どんな手柄を立てたら幹部になれるんだよ。君、うちの会社じゃ、ただの一般社員じゃなかったか?
花:いやー、なんかこっちの才能あったみたいで、あれよあれよというまに幹部に。えへへ。
星守:どんな才能だよ。
花:本当は会社やめてこっちに専念しようかとも思ったんだけど、でもそしたら星守くんに会えなくなっちゃうし・・・。
星守:俺に?
花:あっ、いやそれは・・・。
星守:そうだよな。その人形が俺にそっくりってことは・・・。
花:や、ちょっと、これはその!
星守:俺のことを好きってことだよな・・・。
星守:そうか。デスフラワーが、俺のことを・・・。
花:でも、今はマヒロ君がいる。
星守:えっ?
花:マヒロ君を傷つける奴は、私が許さない!
花:それにあなたのせいで毎晩残業続きなのよ!
星守:うるさい! こっちも迷惑してるんだ! 行くぞ!
星守:スターダスト・バーニング・エクスクラメーション!
星守:(効果音)ドゴーン!
花:ふっ、そんなものか!
星守:これはほんの挨拶代わりだ。
星守:続けていくぞ! スターライト・エクスプレス・プラズマ!!
星守:(効果音)ドガシャアアア! バリバリバリバリ!
花:くぅっ・・・やるわね。
星守:その人形を庇っていてはそこから動くこともできまい。
花:くそっ・・・。
星守:そんなに俺そっくりの人形が大切か。
花:それは・・・。
星守:答えろ、デスフラワー!
花:そうよ! マヒロ君は私を大好きだって言ってくれる! 私を必要としてくれている!
星守:なんだと・・・。
花:星守くんは私のことなんて、なんとも思ってないでしょ!
星守:くっ! 俺とお前は敵同士! 俺はこの星を守る使命があるんだ!
星守:いくらデスフラワーがめっちゃ好みだとしても、倒さなければいけない敵なんだ!
星守:くらえ! ネビュラ・ローリング・クラーーッシュ!!!
星守:(効果音)ズガゴオオオオオオン!!!
花:ちょおっと待ってええ⁉
花:今、なんて言いました???
星守:ぐっ、これも防ぐのか!
星守:こうなったら一撃必殺の最終奥義!
花:くぅっ・・・!
星守:これで終わりだ、マイスイートハート!
星守:ギャラクティック・エターナル・インフェルノ!!!
星守:(効果音)ドドドドオオオォォォン!!!
花:ぐはああああああ!!!
星守:やったか⁉
花:かはっ・・・。
星守:まだ倒れないか。ギャラクティック・エターナル・インフェルノをまともにくらって立っていたのはお前が初めてだ。
花:それよりも、さっき私のことなんて言いました?
星守:どうしてだ。どうしていつもお前は俺の技を喰らうばかりで反撃してこない。なんでなんだ!
花:聞いてないし。
星守:もう反撃する力も残ってないのか。そうではないだろう。お前の目はまだ死んでいない。
花:そこまで言うなら見せてやる。
花:あんたのせいで私の家がメチャクチャよ! 弁償しなさい!
花:ローズ・エレメント・アロー!!!
花:(効果音)ズキューーーン!
星守:ぬはあああああああ!! これを待っていたああああああ!!
星守:いい! いいぞ、デスフラワー!!
星守:もっと来い! もっとだ!
花:モーニング・グローリー・フォールド!!
花:(効果音)ドガドガドガーン!!
星守:うほおおおおおおおお!! たまんねええええええ!!
星守:(興奮)はぁ、はぁ・・・。
花:(疲労)はぁ、はぁ・・・
星守:やるな、デスフラワー!
花:ダメだ。ちっとも効いてない。いや、むしろ元気になってる気がする。
星守:やっぱりお前は最高だ!
花:私ではシャイン・ユニバースを倒せない。
花:マヒロ君を守れない。
花:ねぇ、起きてよ、マヒロ君。ブラック・シャイン・ユニバースに変身して、私と一緒にアイツを倒して。
星守:ブラック社員みたいに言うな!
星守:そいつはただの人形だと言っているだろう!
花:人形でもかまわない。私はマヒロ君にそばにいてほしい。
花:(思い出して)そうだ。マヒロ君はさっき、なんて言ってた?
マヒロ:(回想)「僕を選ぶ」って・・・言うんだ・・・言うんだ・・・言うんだ。(セルフエコー)
花:まだ・・・終わってない!
花:シャイン・ユニバース!
星守:どうした。命乞いか。
花:あなたを倒す方法を、マヒロ君が教えてくれた。
星守:なんだと?
花:あなたを呪い殺す最後の言葉。
花:『私はマヒロ君を選ぶ』
星守:(苦悶)ぐっ、ぐああああああ!!!
星守:ああああ、だああああ、あぐあっ、ぐううううっっ!
花:さよなら、シャイン・ユニバース。
花:私は、マヒロ君がいれば、他に何もいらない。
星守:うあああ、あああああ!!!
星守:ぐがあああ、がはぁっ!
星守:ぐっ・・・うう・・・。
星守:(大興奮して荒い息を繰り返す)
星守:どうやら呪いで俺を殺すことは出来ないようだな。
花:どうして・・・。
星守:人形が意識を失くしているからな。俺を殺すほどの呪いを生み出せなかったんだろうさ。
花:マヒロ君・・・。
星守:デスフラワー、お前は勘違いをしている。
花:勘違い?
星守:俺はお前に惚れている。はっきり言って一目ぼれだった。隠されて半分しか見えない顔も、セクシーな胸元も、そのプリっとしたお尻も、スラッと伸びる美脚もドストライクだ。
星守:なによりもその声!
星守:その声が俺の耳を喜ばせるんだ!
星守:ようするに、俺もお前が大好きだー!
花:はへっ⁉
花:それは、つまり、両想い・・・?
星守:こんなに近くに愛しのデスフラワーがいたなんて。声で気づかなかった俺はなんて馬鹿なんだ。
星守:デスフラワー・・・。
星守:あ、すまない。君の名前は?
花:あ、花です。
星守:花・・・素敵な名前だ。
花:(照れる)やだぁ・・・。
星守:花が好きだ。俺とつきあってくれ。
花:え、でも! あなたはヒーローで、私は悪の幹部・・・。
星守:シャイン・ユニバースとデスフラワーじゃない。星守真宙は花のことが好きなんだ。
花:はぅ!!!
花:星守君・・・。
星守:(抱きしめる)花・・・。
花:星守君、嬉しい・・・。
マヒロ:う、ううぅ・・・あ、あれ? 僕はどうして・・・。あ、そうか。星守に殴られて気を失っていたのか・・・。
マヒロ:って、ええええええええ!
マヒロ:これ、どういうこと⁉
マヒロ:なんで花と星守が抱き合ってるのおおお⁉
花:星守くん、大好き。
マヒロ:いや、ちょっと待ってよ、花。おかしくない? 星守よりも僕を選ぶ流れじゃなかったの⁉
花:あ、選んだよ。さっきはマヒロ君を選んだんだけど、それはもういいの。
マヒロ:もういいって、どういうこと⁉
花:だって、本物の星守くんが私のこと好きだって言ってくれたんだよ。
花:しかも一目惚れだなんて!
マヒロ:えええええええ!
マヒロ:じゃあ僕は? ずっと一緒だって約束したのに。僕だけいればいいって言ってくれたのに。全部嘘だったの?
マヒロ:そんなのひどいよ。僕はもう必要ないの?
花:うん。もういらない。
マヒロ:きっぱりぃぃぃぃぃ!
花:だって、マヒロ君、人形なんでしょう?
マヒロ:そうだけど。
花:さっきはそれでもいいって思ったんだけど、やっぱり人形じゃあ、代わりにはならない。
マヒロ:ああっ! 体が消える! 僕の存在が消えてしまう!
マヒロ:嫌だ。僕は花を愛してるんだ。
花:マヒロ君、今までありがとう。あなたのことは忘れない。星守くんと幸せになるね。
マヒロ:花あああぁぁぁっ!
花:じゃあね。
マヒロ:あああ・・・ああ・・・・ぁ・・・。(消える)
星守:消えたか。
花:消えちゃったね。
星守:ふぅ。体が軽い。やっと呪いが解けたようだ。
花:大丈夫? ごめんなさい。私のせいで。
星守:いいんだ。気にしないでくれ。むしろご褒美だ。
花:え?
星守:それにあの人形のおかげでデスフラ・・・いや、花の気持ちを知ることができたんだ。
花:うん。
星守:変身解除。
星守:(効果音)シュイイイン。
星守:・・・ふぅ。
花:私も変身解除しよっと。
星守:あっ、ちょっと待て!
花:え?
星守:もう少し、その姿のままでいてくれないか。
花:え、いやですよ。だってほんとすっごい恥ずかしいんですよ。無駄に露出度高いし!
星守:お願いだ。俺の夢だったんだ。
花:は? 夢?
星守:シャイン・ユニバースとしてはデスフラワーと戦わなくてはならない。でも、星守真宙としての俺は、ずっと前からデスフラワーに罵られたかった。
星守:殴られて、蹴られるのを想像して興奮していたんだ。
星守:その夢がついに叶う。
花:はいーーーー⁉
星守:さあ! 花、俺を殴ってくれ!
星守:そのハイヒールで俺を踏みつけてくれ!
星守:そして罵詈雑言を俺に浴びせるんだ。この豚野郎と罵ってくれ!
星守:頼む!
花:完全なドМじゃない!!!
星守:さあ、早く!!
花:もしかして私・・・選択まちがえちゃった⁉
花:嘘だと言ってーーーーー!!!
星守:カモン、花! いや、デスフラワー様あああああ!!!
花:いやあぁああああああああああ!!!
:
0:おしまい。
0:朝。
マヒロ:一日目。
:
マヒロ:花。起きて。一緒に朝ごはん食べよ。
花:んあ? ん?
マヒロ:グッモーニン、マイエンジェル。
花:えっ・・・え⁉
マヒロ:まだ寝ぼけてる? あ、寝ぐせ、可愛い。
花:は? ほし、もり、くん?
マヒロ:ほしもり?
花:なんで星守くんが⁉
マヒロ:星守って誰のこと? 僕はマヒロだよ。
マヒロ:昨日のこと、覚えてないの?
花:え、うん。だから、星守真宙くん・・・だよね?
マヒロ:うん。僕はマヒロだよ。
マヒロ:花のことがだーい好きなマヒロだよ。
花:昨日、どうしてたんだっけ・・・うっ、あいたたた。あったま痛い。昨日飲みに行ったんだっけ?
マヒロ:ホントに忘れちゃったの?
花:全然思い出せない。
マヒロ:ひどい!
花:あ、ああっ、ごごごめんなさい。
マヒロ:昨日、あんなに僕のこと「大好き」って言ってくれたのに!
花:ええっ、私そんなこと言っちゃったの⁉
マヒロ:あんなに激しく、あんなことや、そんなことまで・・・。
花:あんなことや、そんなことまで⁉
マヒロ:昨日の花、とっても可愛かったなぁ。
花:待って。あんなことやそんなことって何?
マヒロ:(耳元で)思い出せないなら、これから思い出させてあげようか。
花:はうっ・・・!
マヒロ:なーんてね。嘘なんだけどね。
花:ちかいちかいちかいちかい!
マヒロ:ごめん。実は僕も覚えてないんだ。
花:はへっ・・・?
マヒロ:ねえ、花。僕って誰なのかな?
花:え? あなたは、星守真宙くん・・・だよね?
マヒロ:自分の名前はマヒロだってわかってるんだけどね。それ以外はぼんやりしててよく覚えてないんだ。
花:記憶・・・喪失?
マヒロ:あ、でも、ひとつだけ確かなことがある。
マヒロ:僕は花のことが大好きだってこと。
花:んんっ⁉
花:あ、えっと・・・その・・・。
マヒロ:とりあえず、花が大好きってことは間違いないから、あとはどうでもいいかなって。
花:いや、私の心臓がどうにもならないんですけど。
マヒロ:僕は、『花のことが大好きなマヒロ』。それでいい。花もそれでいいでしょ?
花:へ?
マヒロ:だから、抱きしめていい?
花:(混乱して)あ、うん。
マヒロ:(微笑)ぎゅううううう。
花:あれ? 頭パニックで気づかなかったけど、あなたの体、透けてる?
マヒロ:え、そうかな?
花:うん。半透明っていうか・・・。ホントに星守くんなんだよね?
マヒロ:星守じゃなくて僕はマヒロだって言っただろ。
花:ああああ! これは夢、もしくは片思いしすぎておかしくなった私が見てる幻か、もしくは妄想⁉
花:そうだよね、じゃなきゃ、星守くんがこんなところにいるわけないし。
花:妄想なら、ずっと呼べなかった名前で呼ぶことも・・・。
マヒロ:(耳元で)僕は幻なんかじゃないよ。
花:ひぃ・・・!!!
マヒロ:(耳元で)ほら、僕の名前を呼んでみて。
花:はぁあああん・・・ま、マヒロ・・・くん。
マヒロ:花。もう一回。
花:ぐっ・・・マヒロ、くん。
マヒロ:照れてる花も可愛い。
マヒロ:僕と花はこれからずーっと一緒だからね。
花:透けてはいるけど、ちゃんと触れるしあったかい。それに耳にかかる吐息にゾクゾクする。こんな近くにマヒロ君がいるなんて、もう何がなんだかわからない。
マヒロ:花?
花:はっ、今何時? はぁああ⁉ もう会社、行かなきゃ!
マヒロ:会社?
花:仕事だよ! マヒロ君は・・・体が透けてると大騒ぎになっちゃうし、とりあえず家にいて。
マヒロ:嫌だよ。僕も一緒に行く。
花:や、だめだよ。
マヒロ:じゃあ会社なんて行かなくていい。僕と一緒にいようよ。
花:いや、そんなこと言われても・・・。
花:あ、わかった。マヒロ君、オムライス好き?
マヒロ:オムライス? うん。大好き。
花:帰ってきたら、特製のオムライス作ってあげる。花スペシャルオムライスだよ。材料買って帰ってくるから、大人しく家で待っててくれる?
マヒロ:ホント⁉ 花の手料理?
花:そう。だから、ね?
マヒロ:うわぁ。楽しみ。・・・あ、でも、やっぱり離れたくないな。
花:えぇぇ。えっとじゃあ・・・。
花:はい、これ。私がいつも抱きしめながら寝てるペンペン!
マヒロ:このペンギンのぬいぐるみ、僕にくれるの?
花:365日、毎日抱きしめて寝てるから、もやは私みたいなもんよ。これ、貸してあげるから。だから・・・。
マヒロ:(匂いを嗅いで)花の匂いがする。
花:うぅ、ちょっと恥ずかしいぃ。
マヒロ:わかった。これを花だと思って我慢する。早く帰ってきてね。
花:うん。急いで準備しなきゃ。
:
0:間
:
マヒロ:朝ごはんは食べなくていいの?
花:朝はいつも時間なくて食べられないの。早く起きたりできないし。
マヒロ:じゃあ、明日からは僕が作ってあげるね。
花:え、ほんと?
マヒロ:実は僕も料理は得意なんだ。任せといて。
花:(興奮)んんんんっ! マヒロ君の手料理ぃ・・・!!
花:ああ、やっば。ほんとに遅刻しちゃう!
花:じゃあ、行ってくる。
マヒロ:あ、うん。行ってらっしゃい。早く帰って来てねー!
:
0:夜
0:大きな買い物袋を抱えて花が帰ってくる。
花:(疲れた溜め息)ただいまぁ。
マヒロ:おかえりー! おかえりおかえりおかえりおかえりおかえりー!
マヒロ:花、遅かったじゃないか。こんな時間まで何やってたの!
花:あ、マヒロくん。ただいま。遅くなっちゃってごめんね。残業になっちゃって・・・。
マヒロ:花、疲れてる?
花:今日も戦ったわ。ほんと疲れた。
マヒロ:お仕事お疲れさま。
花:うん・・・。
花:マヒロ君はさ、やっぱり星守くんじゃないんだよね?
マヒロ:うん。僕はマヒロだよ。
花:うん。そうだよね。今日、会社に行ったら、いつも通り星守くんが出社してた。
マヒロ:その星守って人、僕に似てるの?
花:うん。すっごく似てる。見た目も声も、全部。
花:遠くから見てるだけで、話したことないから中身はわかんないんだけど・・・。
マヒロ:へぇぇ、そうなんだ。
花:でもね、今日星守くんについ話しかけちゃったんだ。
花:「どうしてここにいるの?」って。普段なら絶対にそんなことしないのに、マヒロ君のことがあったからつい、ね。そしたら・・・。
マヒロ:そしたら?
花:なんか訝(いぶか)しげにこっちを見ただけで、返事もしてくれなかった。
花:そりゃ、これまで話したこともなかったんだもん。絶対、変な女だと思われちゃった。
マヒロ:花は、それがショックなの?
花:そりゃまぁ、入社してから一目惚れして、ずっと好きだったんだよ。初めての会話がこれかーって思ったら、なんか悲しくなってきちゃった。
マヒロ:花には僕がいるよ。
花:え?
マヒロ:僕は星守と同じ顔なんだろ。
マヒロ:だったら僕でいいじゃん。
花:いや、でも・・・。
マヒロ:そんな奴のこと忘れて、僕のこと好きになってよ。
花:うーん・・・。
マヒロ:花は僕のこと嫌い?
花:や、嫌いとかじゃないよ。ただ、私は星守くんが・・・。
マヒロ:あああ、そんなことよりも!
マヒロ:オムライス食べるんだろ。一緒に作ろうよ。
花:あ、忘れてた。そっか、そうだね。お腹すいたもんね。ごはん、作ろっか。
マヒロ:教えてよ。花のスペシャルオムライス。
花:おー? 聞いちゃうー?
マヒロ:教えて教えて。
花:私のオムライスはね、チキンライスじゃなくて、豚キムチチャーハンなんだよ。スタミナ満点。
マヒロ:うわぁ、楽しみ。ほらほら、まずは着替えて。
花:あ、うん。じゃあ着替えてくるからキッチンで待ってて。
マヒロ:あ、おかえりハグ、忘れてた。
マヒロ:(抱きしめて)ぎゅううううう。
花:ひゃっ⁉ ちょっちょちょちょっと!
花:距離がちかいいいいいーーー!!!
マヒロ:ああぁ。本物の花の匂いだー。
花:ちょっ・・・匂いかがないでぇえええ!
マヒロ:はあ、幸せ。あ、花のお腹が鳴ってる。
花:うぅ、はずかしい。
マヒロ:(笑)ほら、早く作ろ。
花:うん。
:
0:間
:
マヒロ:ごちそうさまでした。ホントに美味しかった。
花:ふふっ、喜んでくれてよかった。
花:(時計を見て)あ・・・もうこんな時間か。お風呂入って早く寝なきゃ。
マヒロ:今日は一緒に寝ようね。
花:それは無理。
マヒロ:えええええ、なんでえええ!
花:却下!
マヒロ:この部屋、ベッド一つしかないよ。
花:マヒロ君はそっちのソファー使って。
マヒロ:やだ。花と一緒に寝る。花を抱き枕にして寝る。
花:人を抱き枕にするんじゃない。
マヒロ:じゃあ腕枕してあげる。僕の腕、寝心地いいよ。仕事の疲れ、吹っ飛ぶよ。
花:あ、そう言えば、私疲れてたんだった。なんか、マヒロ君と話してたら、そんなこと忘れちゃってた。
マヒロ:(笑)疲れてる花より、笑ってる花のほうが好きだな。
花:うん。ありがとう。
マヒロ:花、可愛い。好き。大好き。
マヒロ:僕は花を笑顔にするために生まれたのかもしれない。
花:・・・でも、マヒロ君はソファーだからね。
マヒロ:くぅぅ、ダメかぁぁぁ。もうちょっと押せば、気持ち変わるかと思ったのに。
花:残念でした(笑)
マヒロ:わかった。今日はソファーで寝るよ。だから早くお風呂入っておいで。
花:はーい。
:
0:朝
:
マヒロ:二日目。
:
花:(寝息)
マヒロ:よく寝てるなぁ。こっそりベッドに入っちゃお。よいしょっと。
マヒロ:あああぁ。好き。このまま時が止まっちゃえばいいのになぁ。ずーっと見てられる。
花:んー・・・んぇ・・・マヒロくん? おはよ、おおおおおおお??
マヒロ:うわっ!
花:な、なんで隣に寝てるの⁉
マヒロ:そこに花が寝てたから。
花:答えになってない。
マヒロ:いや起こそうと思ったんだよ。でもぐっすり寝てるから、もう少し寝かせてあげようかなって思って。で、寝顔をずーっとずーっと見てたら、我慢できなくなっちゃって。つい・・・。
マヒロ:あ、でも何もしてないよ。まだ。
花:まだ・・・まだって⁉
マヒロ:あと3秒でキスしてた。
花:!!!!(言葉にならない)
マヒロ:あ、唇じゃないよ。ほっぺにだからね。僕、花の柔らかいほっぺが大好きなんだ。
花:そういう問題じゃない! まったく、油断も隙もあったもんじゃないんだから。
マヒロ:もう朝ごはんできてるよ。それとも、もうちょっとベッドでイチャイチャする?
花:イチャイチャなんてしてません。って、朝ごはん、ほんとに作ってくれたの?
マヒロ:(微笑)約束しただろ。ほら、一緒に食べよ。
花:うん。何作ったの?
マヒロ:あったかご飯とお味噌汁。それと、昨日買ってきてくれた揚げ出し豆腐。
花:へぇ。意外にちゃんとしてる。
マヒロ:いつも食べてないなら、控えめでいいかなって。明日のリクエストあったら教えてね。
花:ん、いただきます。
マヒロ:はーい。召し上がれ。
花:(食べる)んー、おいしい。やっぱり日本人はご飯と味噌汁だよねぇ。しみるぅ。
マヒロ:よかった。一緒に朝ごはん食べるって、なんか幸せだよね。
花:うん、そうだね。あ、お味噌汁にジャガイモ入ってる。ジャガイモのお味噌汁大好きなんだぁ。
マヒロ:(微笑)花、幸せそうな顔してる。
花:そうかな? こんなにゆっくり朝ごはん食べるの久しぶりだから。
花:って、はっ⁉ ちょっとまって、今何時⁉
マヒロ:え?
花:仕事! 早く着替えて準備しないと、遅刻する!(急いで食べる)
マヒロ:ゆっくり食べなよ、もう。
花:(少しせき込みながらもご飯を食べ終わる)ごちそうさま。おいしかった、ありがと。
マヒロ:どういたしまして。
花:急いで準備しなきゃ。ああああああ、髪の毛ハネてる!
マヒロ:寝ぐせ可愛いからそのままでいいよ。
花:ダメだよー! あああ、アイロンかけたシャツどこだっけ⁉
マヒロ:ちょっと待って。はい、どうぞ。
花:ありがと。あ、今日の仕事で使う書類、確認したまま机に出しっぱなしだった。
マヒロ:ちゃんとバッグに入れておいたから。
花:ええ、ほんとに? 気が利くー!
マヒロ:心配だなぁ。僕も一緒に行こうか?
花:(悩む)んんんん・・・大丈夫。仕事にはついてこないで。ややこしくなるから。
マヒロ:そっか。・・・やっぱり寂しいなぁ。
花:そんな子犬みたいな顔しないでよぉ。
花:あれ? マヒロ君、なんか濃くなった?
マヒロ:濃くなったって、何が?
花:体がね。昨日はもっと薄かったような・・・。
花:あ、いや何でもない。あああああ、もう行かなきゃ!
花:忘れ物は・・・よし、大丈夫。
マヒロ:忘れてるよ。
花:ん?
マヒロ:行ってきますのハグ。ほら、おいで。
花:(マヒロを無視して)いってきまーす!
マヒロ:あああっ、もう! いってらっしゃい。早く帰ってきてね。
花:はーい!
:
0:夜
:
マヒロ:おっかえりーーーーー!!!
マヒロ:おかえりおかえりおかえりおかえりおかえりー!
花:た、ただいまあ。相変わらずすごい勢いでくるなぁ。
マヒロ:お仕事お疲れ様。
花:うん。今日も戦ってきたよぉ。
マヒロ:(抱きついて)おかえりのハグ、ぎゅうううううううう!
花:ちょっ、あーもう。
マヒロ:今日の僕は偉いんだよ。
花:へ?
マヒロ:お部屋を掃除して、晩御飯も作って。準備万端で花を待ってたんだ。
花:えぇ⁉ お掃除までしてくれたの?
マヒロ:ベッドメイクも完璧。もちろん枕は二つ並べて。いつでも準備OK!
花:うわぁあ、部屋中ピッカピカだ。
花:枕もちゃんと二つ・・・ん? 二つ?
マヒロ:うん♪
花:いつでも準備OKって・・・。
マヒロ:(耳元で)今夜は寝かさないからね。
花:ふぇっ⁉ ちょ、やめてよ、それどころじゃないんだって!
マヒロ:どうしたの?
花:なんか今日会社でね。
マヒロ:うん。
花:星守くんが話しかけてきたの。今度は向こうから。
マヒロ:(ムッとして)また星守の話?
花:私びっくりしちゃっておろおろしてたんだけど、そしたら真剣な顔で「なにかおかしなことに関わってるんじゃないか?」って。
マヒロ:なにそれ?
花:わかんない。一体どういう意味だったんだろう。
マヒロ:さあね。
花:おかしなこと・・・。うん。確かになくはないんだけど・・・。
花:さすがに、言えるわけないよね。こんなこと。
マヒロ:星守の話なんかどうでもいいよ。星守じゃなくて僕を見てって言っただろ。
花:それになんか、星守くん具合悪そうだったんだよね。大丈夫かな。
マヒロ:具合悪そうだったんだ。へぇぇ、そうなんだ。
マヒロ:おかしいのはそいつの頭なんじゃない?
マヒロ:心配することないよ。花は何も気にしなくていい。
花:いや、でも・・・。
マヒロ:おかしなことなんて何もない。花のことが大好きな僕がここにいる。花は僕だけを見ていればいいんだよ。
花:・・・うん。
マヒロ:さあ、ご飯にしよう。
花:あ、うん。今日は何作ったの?
マヒロ:アクアパッツァ作ったんだ。僕の得意料理。
花:へぇぇ、おっしゃれ!
花:あ、イタリアンなら貰い物だけどいいワインがあるんだ。
花:マヒロ君、飲めるのかな?
マヒロ:飲めるよ。花はいいの? 明日も仕事なのに。
花:あー、そうだなぁ。確かに。
マヒロ:でも、一杯だけなら大丈夫だよね。乾杯しよっか。
花:そうだね。うん、せっかくだしね。
マヒロ:決まり。グラスも準備してそっち持ってくね。
花:はーい。
:
0:間
:
マヒロ:そう言えば、今日さ。
花:うん。
マヒロ:なんとなくテレビ観てたんだけど、ドラマやってて。
マヒロ:なんてタイトルだったかな。主人公が双子の弟でね。
花:うん。
マヒロ:好きな子がいるんだけど、その子は兄のことが好きで、主人公の弟は優秀な兄のことが大嫌いなわけ。
花:ほう・・・それで?
マヒロ:で、好きな子が兄をデートに誘う。弟の気持ちに薄々感づいている兄は弟に「代わりに行け」って言う。
花:えー?
マヒロ:弟は兄のフリをして、好きな子とデートを楽しむんだ。
マヒロ:いい感じの雰囲気になって、そして弟は告白する。
マヒロ:「俺は兄じゃない。弟のほうだ。ずっと前から好きだった」って。
花:わお・・・。
マヒロ:そして弟はフラれてしまう。
花:あらら・・・。
マヒロ:その後、女の子は兄に告白するんだけど、「つきあえない」って言われちゃう。
マヒロ:泣いて悲しむ女の子に、弟はもう一度告白するんだ。「俺がいるだろ」って。
花:うん。
マヒロ:それで、どうなったと思う?
花:えー、わかんない。どうなったの?
マヒロ:またフラれちゃうんだ。兄の代わりにはならないからって。
花:そっか。なんか報われないね。
マヒロ:それで弟は、兄に負けないように男を磨く。いつか好きな子に振り向いてもらえるように。弟が頑張ってるシーンでエンディング。
マヒロ:そんなお話だった。
花:なんかうまくいかないもんだね。
マヒロ:それ観てたらさ。思ったんだよね。
花:ん?
マヒロ:女の子はさ、最初から弟を選べばよかったんだよ。だってさ。「自分が好きな人」より、「自分を好きな人」と一緒にいるほうが幸せになれるって思わない?
花:んー、どうだろう。
花:でも、好きな気持ちを捨てられなかったら、空しくなっちゃうんじゃないかな。
花:それに弟だって辛いと思うんだ。たとえ今はよくても、いつかは耐えられなくなっちゃうんじゃない?
マヒロ:そうかな? いつかは自分のほうを好きになってくれるって頑張ると思うけど。女の子のほうも、ずっと弟と一緒にいたら気持ちだって変わると思う。
花:そういうもん?
マヒロ:自分のことを好きじゃない人といて苦しくなるより、自分を好きでいてくれる人といたほうが安心できるし、心が満たされると思うんだ。
花:まぁ・・・うん。それはある、かも。
マヒロ:あっ。今、僕のこと考えてたでしょ?
花:へっ⁉ ち、ちが、そんなんじゃないんもん。
マヒロ:そういう顔してた。
花:どんな顔よ。
マヒロ:(微笑)僕のことが大好きって顔。
花:ばっ、ばーーーか! そんなわけないでしょ!
マヒロ:花、可愛い。好き。大好きだよ。
花:や、ちょっと・・・なんでいきなりっ・・・。
マヒロ:そう思ったから。いつも思ってるんだけど。たまに言いたくなっちゃうんだ。
花:うぅ・・・。
マヒロ:(微笑)大丈夫? 顔赤いよ?
花:ちょ、こっち見ないで。
マヒロ:見るよ。ずーっと花だけを見てる。
花:なんか、ちょっと酔いが回ってきたみたい。
マヒロ:そっか。片付けは僕がやっておくから、お風呂入りなよ。
花:そ、そうする。お風呂行ってくるね。
マヒロ:うん。じゃあ、僕はベッドに入って待ってるね。
花:また、そんなことばっかり言って。
マヒロ:冗談だよ。仕事で疲れてる花の邪魔したくないから。大人しくソファーで寝る。
花:え? あ、うん・・・。
マヒロ:あれ? 残念だった?
花:別にそんなことないもん!
マヒロ:そう? あ、そうだ。明日の朝ごはんは何がいい?
花:あ、えっと・・・なんか、体力つくやつ。
マヒロ:了解。任せといて。
花:うん。ありがと。
花:(呟く)・・・私、残念そうな顔、してた?
:
0:朝
:
マヒロ:三日目。
:
花:(寝息を立てている)
花:・・・ん?
マヒロ:あ、おはよ。
花:(寝ぼけて)んぅぅ・・。
マヒロ:あぁっ、寝ぼけてる花、可愛い。
花:マヒロ君・・・おはよ・・・。
マヒロ:よく眠れた?
花:ねぇ、マヒロ君、なんでベッドにいるの?
マヒロ:花がね。寝言で僕の名前を呼んでたんだ。
花:え、呼んでた?
マヒロ:だから、そばにいてほしいのかなって思って。
花:そうなんだ・・・。
マヒロ:うん。そうだよ。ほんとだよ。
花:そっか。あったかい・・・。
マヒロ:あーー、ちょっと待って。なにこれ、可愛すぎるんだけど!
花:あれ? マヒロ君、また濃くなった?
マヒロ:え?
花:もうほとんど透明じゃなくなってる。
マヒロ:そうかな?
花:(嬉しい)マヒロ君、ぎゅう・・・。
マヒロ:花・・・。
花:なに?
マヒロ:花が僕のことを好きになればなるほど、僕という存在は確定していくんだよ。
花:え、どういうこと?
マヒロ:なんでもない。
花:へんなのー。
マヒロ:花の中で僕の存在が大きくなってるのが嬉しいってこと。
花:ねぇ、お腹すいた。
マヒロ:おっけぃ。朝ごはんできてるよ。今、準備するね。
花:やった。今日は何かなぁー?
マヒロ:ポテトサラダピラフ。美味しいよ。朝食にピッタリだから。
花:へー、初めてかも。おいしそう。
マヒロ:で、食べた後はどうする? 会社休んでイチャイチャする?
花:えー? 仕事、行かなきゃ。
マヒロ:僕と仕事とどっちが大事なの?
花:ホントにそんなセリフ言う人いるんだ。
マヒロ:ちょ、感心しないで答えてよ。
花:頑張って働きますよ。マヒロ君との生活のために。
マヒロ:わかった。変なこと聞いてごめんね。
花:(笑)今日は聞き分けがいいね。
マヒロ:うん。花が僕との生活を大事に思ってくれてるのが嬉しいから。
マヒロ:これから毎日、僕がご飯作ってあげる。だから、ずーっと一緒にいようね。
花:・・・うん。
:
0:間
:
花:忘れ物はなしっと・・・。
マヒロ:ほら、また忘れてる。
花:え? 何も忘れてないよ。
マヒロ:行ってきますのハグ。ほら、おいで。
花:あ。(微笑む)・・・うん。
マヒロ:(抱きしめて)ぎゅうううう。
花:ちょ、マヒロ君、力強すぎ。苦しいよ。
マヒロ:(微笑)お仕事頑張ってね。いってらっしゃい。
花:うん。いってきます!
マヒロ:早く帰ってきてね。
花:がんばる!
:
0:夜
:
花:(息を切らして)はぁ、はぁ、はぁ・・・。
花:ただいま、マヒロ君・・・。
マヒロ:おかえり!
花:(マヒロを強く抱きしめる)マヒロ君!
マヒロ:うわわわ。いきなり抱きついてどうしたの? 僕に会えなくて寂しかった?
花:星守くんが・・・星守くんが急に私のこと・・・。
マヒロ:星守?
花:「お前の仕業なのか」って押さえつけられて、首絞められた。
花:わけわかんないよ。
マヒロ:えっ、どういうこと?
花:わかんない。急に襲われて、「助けて」って叫んだら、星守くんが苦しみだして。だからその隙に逃げてきたの。
花:私、星守くんに嫌われちゃったのかな。
マヒロ:許せない。僕の花になんてことを。
花:でも、私にはマヒロ君がいる。
マヒロ:花・・・。
花:だから、平気。大丈夫。
マヒロ:そうだよ。僕がいる。もう星守のことなんか考えるな。
花:ずっと私と一緒にいてくれるよね?
マヒロ:当たり前だろ。僕はずっと花のそばにいる。だから星守のことなんか忘れてしまえ。
花:うん。
マヒロ:ねえ、花・・・。
花:ん?
マヒロ:もしも・・・。
花:うん。
マヒロ:もしも、僕と星守のどちらかを選ばなきゃいけなくなった時、花はどっちを選ぶ?
マヒロ:僕のことを選んでくれる?
花:えっ、それってどういう・・・。
マヒロ:選んでくれるよね?
花:私は・・・。
星守:(窓ガラスを割って突入)バリーン!
花:きゃっ! 窓ガラスが割れた!
星守:そこまでだ!!!
花:え、星守くん⁉
花:どうして・・・。
星守:(苦しい)やっぱりそういうことか。
花:何が?
星守:そいつから離れろ!
マヒロ:おまえは・・・星守!
花:え⁉ なに⁉
星守:こいつは人間じゃない。恋心を餌にして人を呪い殺す人形だ。
花:人形?
マヒロ:あーあ。バレちゃった。
花:マヒロ君?
マヒロ:もう少しで僕が本物の星守になれたのに。
花:どういうこと?
マヒロ:星守の言うとおりだよ。僕はね、こいつを呪い殺すために生まれたんだ。
マヒロ:花が僕を好きになればなるほど星守は弱っていく。花が僕を愛してくれた瞬間に星守は死んで、僕が星守になる。僕はそういう存在なんだ。
花:そんな・・・。最近、星守くんの具合が悪そうだったのは私のせいなの?
マヒロ:花、愛してる。花は星守よりも僕を選んでくれるよね?
星守:やめろ! (殴る)バキィッ!
マヒロ:(殴られて)ぐあっ!
花:ああっ、マヒロ君!!!
マヒロ:僕を選ぶって言ってくれたら、僕はずっと君のそばにいる。こいつと違って、僕は君を愛してるんだ。
花:私・・・。
星守:うおおおお! (殴る)バキィッ!
マヒロ:(殴られて)ぐはぁっ!
星守:だまされるな! こいつの言葉に耳を傾けるんじゃない!
花:やめてえええええ!!
マヒロ:ぐ、うぅぅ。
花:マヒロ君、大丈夫⁉
マヒロ:(弱々しく)花、僕を選んで・・・。
花:しっかりして! マヒロ君!
マヒロ:「僕を選ぶ」って・・・言うんだ・・・うぅぅ。(気絶)
花:マヒロ君!
星守:ふん。気を失ったか。今、とどめをさしてやる。
花:やめて!
星守:君は利用されただけだ。それがどうしてわからない!
花:マヒロ君にひどいことしないで!
星守:そこから離れろ!
花:いや! 離れない!
星守:こいつは呪いの人形だ! こいつの目的は俺を殺すことなんだ!
星守:もう一度だけ言う。そいつから離れろ。
花:いや!
星守:・・・だったら君もそいつの仲間とみなして処分することになるが、それでもいいのか。
花:処分・・・?
星守:そうだ。星守真宙は仮の姿。
星守:本当の俺は・・・。
星守:変身! (ジャンプ)とうっ!
星守:(カッコいいBGM)ターン! タララタータータタンタタンタタン!
星守:光り輝くこの星に
星守:悪が栄える事は無い
星守:この世が闇に染まろうと
星守:二度と明けない夜はない
星守:闇夜に輝く星一つ
星守:シャイン・ユニバース! ここに見参!
星守:(効果音)シャキーーン!
花:星守くん、あなたが⁉
星守:そうだ。俺は地球を守るヒーロー、シャイン・ユニバースだ!
花:・・・あなたがシャイン・ユニバースだったなんて。
星守:わかったら、そこをどけ!
星守:こいつは秘密結社ネオガーデンに作られた呪いの人形なんだ!
花:ふっ、ふふふふ・・・。
星守:何がおかしい?
花:あなたがシャイン・ユニバースだとわかってしまったからには、私も打ち明けなければいけないわね・・・。
星守:なにっ⁉
花:我こそは、秘密結社ネオガーデン幹部、デスフラワー。
星守:えっ、嘘。マジで⁉
花:それはこっちのセリフよ!
星守:マジで? ホントにデスフラワー?
花:そうだって言ってるでしょ。
星守:だって、いつもは顔が半分仮面で隠れてるし、服も違うだろ! こんな地味な服じゃなくて、もっとこう・・・。
花:あのコスチュームは指定なのよ! レンタルだし・・・。
星守:証拠を見せろ!
花:はぁ? 証拠?
星守:お前が本物のデスフラワーであるという証拠だ!
星守:ここで変身してみせろ!
花:えぇぇ・・・。
星守:いつもみたいに、胸元の開いたセクシードレスで、その美脚を俺に見せつけてみろ!
花:あれ恥ずかしいんですよ!
星守:いいからやれ! 早く!
花:んもう! どうにでもなれ・・・!
花:クルリと回転して取り出したマントをバサァァッ!
花:闇の力を受けし花々との盟約により深淵より参らん。
花:我こそ、ネオガーデン幹部、デスフラワー!
花:こ、これで信じる気になった?
星守:デ、デスフラワー様・・・、いや、なんでもない!
花:ん?
星守:まさか本当に貴様がデスフラワーだったとはな!
星守:同じ会社にいるとは思わなかった。
花:こっちこそ。まさかシャイン・ユニバースが会社員(カイ・シャイン)だったなんて。
星守:ダジャレみたいに言うな!
星守:デスフラワー、俺を呪い殺そうとしていたのは作戦だったのか。
花:あ、それは全然知らない。
星守:嘘をつけ!
花:ホントですって。呪いの人形のことなんて聞かされてなかったし。たぶん、人形を貰った時の記憶を消されたんだと思う。
星守:そんなこと信じられるか。
花:信じてよ。秘密結社の中でも派閥があるのよ! おそらくダークブロッサムが私のことを・・・。くっ、なんたる失態!
星守:じゃあ、本当に知らなかったのか。
花:ええ。ダークブロッサムは、星守=(イコール)シャイン・ユニバースだって突き止めてたってことか。やるわね。
星守:状況を整理していいか。
花:ええ。
星守:つまり、君は会社で働きながら、秘密結社ネオガーデンで幹部をやってるってことか?
花:ええ。会社の給料だけじゃやっていけないから、副業で応募した会社がたまたま秘密結社ネオガーデンだったの。
星守:うちの会社、副業は禁止だろ!
花:あなたがそれを言う⁉
星守:俺はヒーローが本職だ。君とは違う!
花:職業差別よ。秘密結社も立派な仕事。夜の仕事だからってバカにしないで。
星守:そりゃ確かに夜の仕事だろうけどひとくくりにするな。どうして秘密結社なんかで副業してるんだ。
花:顔隠してるからバレないと思って。
星守:ダメだろ。秘密結社ネオガーデンだよ。しかも幹部。どんな手柄を立てたら幹部になれるんだよ。君、うちの会社じゃ、ただの一般社員じゃなかったか?
花:いやー、なんかこっちの才能あったみたいで、あれよあれよというまに幹部に。えへへ。
星守:どんな才能だよ。
花:本当は会社やめてこっちに専念しようかとも思ったんだけど、でもそしたら星守くんに会えなくなっちゃうし・・・。
星守:俺に?
花:あっ、いやそれは・・・。
星守:そうだよな。その人形が俺にそっくりってことは・・・。
花:や、ちょっと、これはその!
星守:俺のことを好きってことだよな・・・。
星守:そうか。デスフラワーが、俺のことを・・・。
花:でも、今はマヒロ君がいる。
星守:えっ?
花:マヒロ君を傷つける奴は、私が許さない!
花:それにあなたのせいで毎晩残業続きなのよ!
星守:うるさい! こっちも迷惑してるんだ! 行くぞ!
星守:スターダスト・バーニング・エクスクラメーション!
星守:(効果音)ドゴーン!
花:ふっ、そんなものか!
星守:これはほんの挨拶代わりだ。
星守:続けていくぞ! スターライト・エクスプレス・プラズマ!!
星守:(効果音)ドガシャアアア! バリバリバリバリ!
花:くぅっ・・・やるわね。
星守:その人形を庇っていてはそこから動くこともできまい。
花:くそっ・・・。
星守:そんなに俺そっくりの人形が大切か。
花:それは・・・。
星守:答えろ、デスフラワー!
花:そうよ! マヒロ君は私を大好きだって言ってくれる! 私を必要としてくれている!
星守:なんだと・・・。
花:星守くんは私のことなんて、なんとも思ってないでしょ!
星守:くっ! 俺とお前は敵同士! 俺はこの星を守る使命があるんだ!
星守:いくらデスフラワーがめっちゃ好みだとしても、倒さなければいけない敵なんだ!
星守:くらえ! ネビュラ・ローリング・クラーーッシュ!!!
星守:(効果音)ズガゴオオオオオオン!!!
花:ちょおっと待ってええ⁉
花:今、なんて言いました???
星守:ぐっ、これも防ぐのか!
星守:こうなったら一撃必殺の最終奥義!
花:くぅっ・・・!
星守:これで終わりだ、マイスイートハート!
星守:ギャラクティック・エターナル・インフェルノ!!!
星守:(効果音)ドドドドオオオォォォン!!!
花:ぐはああああああ!!!
星守:やったか⁉
花:かはっ・・・。
星守:まだ倒れないか。ギャラクティック・エターナル・インフェルノをまともにくらって立っていたのはお前が初めてだ。
花:それよりも、さっき私のことなんて言いました?
星守:どうしてだ。どうしていつもお前は俺の技を喰らうばかりで反撃してこない。なんでなんだ!
花:聞いてないし。
星守:もう反撃する力も残ってないのか。そうではないだろう。お前の目はまだ死んでいない。
花:そこまで言うなら見せてやる。
花:あんたのせいで私の家がメチャクチャよ! 弁償しなさい!
花:ローズ・エレメント・アロー!!!
花:(効果音)ズキューーーン!
星守:ぬはあああああああ!! これを待っていたああああああ!!
星守:いい! いいぞ、デスフラワー!!
星守:もっと来い! もっとだ!
花:モーニング・グローリー・フォールド!!
花:(効果音)ドガドガドガーン!!
星守:うほおおおおおおおお!! たまんねええええええ!!
星守:(興奮)はぁ、はぁ・・・。
花:(疲労)はぁ、はぁ・・・
星守:やるな、デスフラワー!
花:ダメだ。ちっとも効いてない。いや、むしろ元気になってる気がする。
星守:やっぱりお前は最高だ!
花:私ではシャイン・ユニバースを倒せない。
花:マヒロ君を守れない。
花:ねぇ、起きてよ、マヒロ君。ブラック・シャイン・ユニバースに変身して、私と一緒にアイツを倒して。
星守:ブラック社員みたいに言うな!
星守:そいつはただの人形だと言っているだろう!
花:人形でもかまわない。私はマヒロ君にそばにいてほしい。
花:(思い出して)そうだ。マヒロ君はさっき、なんて言ってた?
マヒロ:(回想)「僕を選ぶ」って・・・言うんだ・・・言うんだ・・・言うんだ。(セルフエコー)
花:まだ・・・終わってない!
花:シャイン・ユニバース!
星守:どうした。命乞いか。
花:あなたを倒す方法を、マヒロ君が教えてくれた。
星守:なんだと?
花:あなたを呪い殺す最後の言葉。
花:『私はマヒロ君を選ぶ』
星守:(苦悶)ぐっ、ぐああああああ!!!
星守:ああああ、だああああ、あぐあっ、ぐううううっっ!
花:さよなら、シャイン・ユニバース。
花:私は、マヒロ君がいれば、他に何もいらない。
星守:うあああ、あああああ!!!
星守:ぐがあああ、がはぁっ!
星守:ぐっ・・・うう・・・。
星守:(大興奮して荒い息を繰り返す)
星守:どうやら呪いで俺を殺すことは出来ないようだな。
花:どうして・・・。
星守:人形が意識を失くしているからな。俺を殺すほどの呪いを生み出せなかったんだろうさ。
花:マヒロ君・・・。
星守:デスフラワー、お前は勘違いをしている。
花:勘違い?
星守:俺はお前に惚れている。はっきり言って一目ぼれだった。隠されて半分しか見えない顔も、セクシーな胸元も、そのプリっとしたお尻も、スラッと伸びる美脚もドストライクだ。
星守:なによりもその声!
星守:その声が俺の耳を喜ばせるんだ!
星守:ようするに、俺もお前が大好きだー!
花:はへっ⁉
花:それは、つまり、両想い・・・?
星守:こんなに近くに愛しのデスフラワーがいたなんて。声で気づかなかった俺はなんて馬鹿なんだ。
星守:デスフラワー・・・。
星守:あ、すまない。君の名前は?
花:あ、花です。
星守:花・・・素敵な名前だ。
花:(照れる)やだぁ・・・。
星守:花が好きだ。俺とつきあってくれ。
花:え、でも! あなたはヒーローで、私は悪の幹部・・・。
星守:シャイン・ユニバースとデスフラワーじゃない。星守真宙は花のことが好きなんだ。
花:はぅ!!!
花:星守君・・・。
星守:(抱きしめる)花・・・。
花:星守君、嬉しい・・・。
マヒロ:う、ううぅ・・・あ、あれ? 僕はどうして・・・。あ、そうか。星守に殴られて気を失っていたのか・・・。
マヒロ:って、ええええええええ!
マヒロ:これ、どういうこと⁉
マヒロ:なんで花と星守が抱き合ってるのおおお⁉
花:星守くん、大好き。
マヒロ:いや、ちょっと待ってよ、花。おかしくない? 星守よりも僕を選ぶ流れじゃなかったの⁉
花:あ、選んだよ。さっきはマヒロ君を選んだんだけど、それはもういいの。
マヒロ:もういいって、どういうこと⁉
花:だって、本物の星守くんが私のこと好きだって言ってくれたんだよ。
花:しかも一目惚れだなんて!
マヒロ:えええええええ!
マヒロ:じゃあ僕は? ずっと一緒だって約束したのに。僕だけいればいいって言ってくれたのに。全部嘘だったの?
マヒロ:そんなのひどいよ。僕はもう必要ないの?
花:うん。もういらない。
マヒロ:きっぱりぃぃぃぃぃ!
花:だって、マヒロ君、人形なんでしょう?
マヒロ:そうだけど。
花:さっきはそれでもいいって思ったんだけど、やっぱり人形じゃあ、代わりにはならない。
マヒロ:ああっ! 体が消える! 僕の存在が消えてしまう!
マヒロ:嫌だ。僕は花を愛してるんだ。
花:マヒロ君、今までありがとう。あなたのことは忘れない。星守くんと幸せになるね。
マヒロ:花あああぁぁぁっ!
花:じゃあね。
マヒロ:あああ・・・ああ・・・・ぁ・・・。(消える)
星守:消えたか。
花:消えちゃったね。
星守:ふぅ。体が軽い。やっと呪いが解けたようだ。
花:大丈夫? ごめんなさい。私のせいで。
星守:いいんだ。気にしないでくれ。むしろご褒美だ。
花:え?
星守:それにあの人形のおかげでデスフラ・・・いや、花の気持ちを知ることができたんだ。
花:うん。
星守:変身解除。
星守:(効果音)シュイイイン。
星守:・・・ふぅ。
花:私も変身解除しよっと。
星守:あっ、ちょっと待て!
花:え?
星守:もう少し、その姿のままでいてくれないか。
花:え、いやですよ。だってほんとすっごい恥ずかしいんですよ。無駄に露出度高いし!
星守:お願いだ。俺の夢だったんだ。
花:は? 夢?
星守:シャイン・ユニバースとしてはデスフラワーと戦わなくてはならない。でも、星守真宙としての俺は、ずっと前からデスフラワーに罵られたかった。
星守:殴られて、蹴られるのを想像して興奮していたんだ。
星守:その夢がついに叶う。
花:はいーーーー⁉
星守:さあ! 花、俺を殴ってくれ!
星守:そのハイヒールで俺を踏みつけてくれ!
星守:そして罵詈雑言を俺に浴びせるんだ。この豚野郎と罵ってくれ!
星守:頼む!
花:完全なドМじゃない!!!
星守:さあ、早く!!
花:もしかして私・・・選択まちがえちゃった⁉
花:嘘だと言ってーーーーー!!!
星守:カモン、花! いや、デスフラワー様あああああ!!!
花:いやあぁああああああああああ!!!
:
0:おしまい。