台本概要
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タイトル | プリンセスファイブ |
---|---|
作者名 | 天道司 |
ジャンル | コメディ |
演者人数 | 2人用台本(女1、不問1) |
時間 | 20 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
ご自由に演じてください
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キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
白雪姫 | 女 | 86 | 有名な童話の主人公! |
ティンカーベル | 不問 | 83 | 口調は女性ですが、男性変換し、男性が演じるのも可!兼ね役※シリ |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
ティンカーベル:「この子が白雪姫ね。とっても綺麗…」
白雪姫:「…」
ティンカーベル:「童話の通り、王子様のキスを待ちながら呑気(のんき)に寝てるわね。だけど、今は急いでるの。悪いけど物語を改変させてもらうわね」
ティンカーベル:私は、白雪姫に魔法の粉をかけて、強制的にその眠りを醒まさせた。
白雪姫:「…」
ティンカーベル:「あれ?おかしいわね。粉の量が足りなかったのかしら?もう一度、えいっ!」
白雪姫:「…」
ティンカーベル:「えいっ!えいっ!」
白雪姫:「…」
ティンカーベル:「えいっ!えいっ!えいえいえいえいえいっ!」
白雪姫:「ハックションッ!」
ティンカーベル:「あっ!目醒めたわね!白雪姫!」
白雪姫:「…」
ティンカーベル:「目醒めてるわよね!白雪姫!」
白雪姫:「…」
ティンカーベル:「そう。そういうことするわけね。寝たふりなんて姑息(こそく)なことをね。じゃあ、ほっぺたツネって、デコピンして、くすぐって、それからそれから!」
白雪姫:「いやーっ!やめてやめて!もーう!なんなのよ!」
ティンカーベル:「おはよう。白雪姫」
白雪姫:「おはようじゃない!なんなのよ!」
ティンカーベル:「何って、妖精よ」
白雪姫:「それは見たらわけるけど」
ティンカーベル:「私は、ピーターパンが消されたネバーランドから来たの」
白雪姫:「ピーターパン?ネバーランド?」
ティンカーベル:「そうよね。知らないわよね。仕方ない。ざっくり説明すると、ピーターパンは別の物語の主人公で、ネバーランドは、その主人公が活躍する世界よ」
白雪姫:「へぇ。それで?」
ティンカーベル:「それでって…。そう。私はあなたを迎えにきたのって…あれ?きいてる?」
白雪姫:「きいてません。もう少し寝ます。おやすみなさい」
ティンカーベル:「ちょっと!寝ないで!起きて!大変なのよ!」
白雪姫:「ゼットゼットゼット…」
ティンカーベル:「ゼットゼットゼットって!寝てないことわかるから!」
白雪姫:「グーグーグー…」
ティンカーベル:「寝ている効果音を変えたってダメ!ふざけてる場合じゃないの!童話の世界の主人公が真夜中に消されちゃうのよ!」
白雪姫:「ん?消される?」
ティンカーベル:「そう!消されるの!あなたも主人公だから消されるのよ!」
白雪姫:「消えたくないけど、私はまだ眠っていたいの!」
ティンカーベル:「どうして?」
白雪姫:「そ、そりゃあ、私だって乙女だもの。どうせ目醒めるなら、イケメンの王子様のキッスで目醒めたいというか、なんというか…」
ティンカーベル:「はぁ…。あのね。真夜中に消されちゃったら、そのイケメンの王子様も永遠にこないのよ!」
白雪姫:「えっ?どういうこと?」
ティンカーベル:「どういうことって…。あぁ、やっと真面目に私の話しを聞いてくれる気になった?」
白雪姫:「そりゃあ、王子様が来ないのは困る!ぜったいに困る!王子様が来なければ、私は毒林檎を食べて眠る美少女のお話しということで物語が完結してしまう」
白雪姫:「王子様のキスで目醒めるってところが、私の物語で、いっちばーん重要な要素なの!クライマックス!物語のサビって奴よ!」
ティンカーベル:「そうよね。そもそも物語が終われば、毒林檎を食べる件(くだり)もなくなるし、あなたの存在そのものも消えてしまう」
白雪姫:「待って!なんで?なんで、そんなことになるの?」
ティンカーベル:「だから、さっきから言ってるでしょ!真夜中よ!」
白雪姫:「真夜中って、なんなの?」
ティンカーベル:「元々は、ある天才作家の書いた(童話の中で)」
白雪姫:「(かぶせて)待って!」
ティンカーベル:「ん?どうしたの?」
白雪姫:「天才作家って何?」
ティンカーベル:「天才作家は、天才作家よ。確か名前は…」
白雪姫:「いやっ!いい!話を続けて!その作家の書いた童話の中で、何?」
ティンカーベル:「真夜中は、ある天才作家の書いた童話の中で、世界を真夜中の時間に固定する存在だったらしいんだけど…」
白雪姫:「(小声で)天才作家はどうしても強調したいのね…。(通常ボイスで)それで?真夜中の時間に固定?どういうこと?」
ティンカーベル:「まぁ、その童話の中で、何か大きな改変が起きたらしく、その物語が壊れて、物語の中から真夜中が抜け出してしまったの」
白雪姫:「物語が壊れる?物語って壊れるものなの?」
ティンカーベル:「現に私も、あなたの物語をすでに少しだけ壊してる」
白雪姫:「少しだけ?」
ティンカーベル:「ごめんなさい。かなり壊してます」
白雪姫:「そうよ!かなり壊されてる!王子様のキッスの前に私を起こすなんて、なんてことしてくれちゃってるのよ!私は、王子様の、イケメンの王子様の熱いキッスで目醒めたかったのよ!」
ティンカーベル:「それは、その、ごめんなさい」
白雪姫:「さらば…。私の青春。青い春と書いて、青春。さよなら。私のハッピーエンド」
ティンカーベル:「まぁまぁまぁ。そう悲観(ひかん)しないで!真夜中を倒したら、改変された物語は、すべて元に戻るはずだから、安心して!」
白雪姫:「それで?その真夜中っていう奴は、何をしようとしているの?」
ティンカーベル:「本当の目的は、わからないんだけど、童話の主人公たちを次々に消していってる。そして、主人公が消えた童話は、誰も思い出せなくなって、世界から完全に消滅する」
白雪姫:「えっ?」
ティンカーベル:「少なくとも私が把握(はあく)しているだけでも、ピノキオ、赤ずきん。そして、私の世界の主人公であるピーターパンも、すでに真夜中によって消されてしまった」
白雪姫:「え?その人たち、有名なの?」
ティンカーベル:「一般常識レベル。幼稚園児でも答えられるレベルには有名な童話の主人公たちね」
白雪姫:「ぜんぜん知らない」
ティンカーベル:「そりゃそうよ。真夜中に消された主人公ですからね。人間のあなたは、彼ら、彼女らの名前や活躍(かつやく)を忘れてる。でも、私は、妖精だからさ。ずっと覚えてる」
白雪姫:「そのっ、私も消されちゃうの?」
ティンカーベル:「今のままだとね」
白雪姫:「いやだ!私、消えたくない!どうすればいいの?」
ティンカーベル:「魔法少女になって、現実の世界で、真夜中を倒す」
白雪姫:「魔法少女?現実の世界?」
ティンカーベル:「魔法少女になってくれる?魔法少女になれば、魔法の鏡から、現実の世界に行き来できるようになる。現実の世界っていうのは、読者のいる世界のことよ」
白雪姫:「うーん…。魔法少女にならなければ、このまま真夜中に消されちゃうんだよね?」
ティンカーベル:「そうだよ。じきに真夜中は、この世界も滅ぼしにくる。あなたも含めてね」
白雪姫:「だったら、なるよ。その、魔法少女に!」
ティンカーベル:「やった!そうと決まれば、まず、その服装がダメね。そーれっ!」
ティンカーベル:私は、白雪姫に魔法の粉をかけて、学生服に着替えさせた。
白雪姫:「え?何この服装?なんか、露出度(ろしゅつど)高くない?下がスースーするんだけど!」
ティンカーベル:「我慢してよね。現実の世界だと、その服装が一番ポピュラーなんだよ」
白雪姫:「そう、なんだ。おそるべし露出狂(ろしゅつきょう)がポピュラーな現実世界」
ティンカーベル:「それと、これもプレゼント!」
白雪姫:「なに?この板?手鏡?」
ティンカーベル:「それは、スマホ型空間元素固定装置(すまほがたくうかんげんそこていそうち)。通称『ドウワフォン』よ!」
白雪姫:「ドウワフォン?」
ティンカーベル:「そう。ドウワフォン」
白雪姫:「どうやって使うの?」
ティンカーベル:「へいシリ!と話しかける」
白雪姫:「へいシリ」
シリ:「こんにちは。シリです。何かお手伝いできることはありますか?」
白雪姫:「うわっ!しゃべった!」
ティンカーベル:「ちょっと!私の話の最中にシリを起動しない!私の話を最後まで聞きなさい!」
白雪姫:「あっ、ごめん」
シリ:「大丈夫ですよ」
白雪姫:「あっ!反応した!」
ティンカーベル:「はぁ…。あのね。とりあえず、魔法少女への変身方法についてなんだけど」
白雪姫:「変身方法?」
ティンカーベル:「へいシリ!とシリを起動させてから、童話改変!って叫ぶ」
白雪姫:「へいシリ!」
ティンカーベル:「ちょちょ、ちょっと!」
シリ:「こんにちは。シリです。何かお手伝いできることはありますか?」
白雪姫:「童話改変!」
ティンカーベル:「うわっ!まぶしい!変身の最中は、なんか、すっごいまぶしい!多分、一瞬だけ裸のシルエットになってるんだと思う!今のご時世的にエヌジーなんだと思う!まぶしくて、ほんっと、変身中は何も見えない!」
白雪姫:「あっ!服が変わった!なんか、すっごく強そうなんだけど!ひらひら度ふわふわ度がパネェっす!羽根なんかも付いちゃってるし!」
ティンカーベル:「そうね…。強そうね。ただ、その姿で現実世界を歩いたらダメよ。現実世界で、その姿で活動していいのは、アキバくらいよ」
白雪姫:「アキバ?」
ティンカーベル:「そう。アキバ!あと、その羽根は、ただの飾りだから、飛べると思って、高いところから飛び降りたらダメよ?確実に骨が何本か折れるから!血もビューって出るし、高い確率で死ぬから!」
白雪姫:「わっ、わかった。でも、真夜中と戦う時は、この姿になって戦うんだよね?」
ティンカーベル:「そうだけど、真夜中が出現すると、現実世界の人間の時間は止まるから、問題ないのよ」
白雪姫:「そうなんだ。でも、それだと私の時間も止まるのでは?」
ティンカーベル:「あなたは大丈夫よ。童話のプリンセスだもの」
白雪姫:「童話のプリンセス…」
ティンカーベル:「真夜中を倒せるのは、五人の童話のプリンセスだけなの」
白雪姫:「五人?」
ティンカーベル:「そう。五人の選ばれしプリンセスが力を合わせれば、真夜中を倒せる!」
白雪姫:「私、選ばれしプリンセスなのね!ふふっ」
ティンカーベル:「(小声で)不本意なんだけどね」
白雪姫:「ん?なにか言った?」
ティンカーベル:「いえ、なにも!」
白雪姫:「ちなみに、どうすれば元の姿に戻れるの?何か、この服、ピッタリと体にくっついているみたいで、全く脱げる気がしないんだけど!」
ティンカーベル:「そりゃそうよ。超魔導装甲(ちょうまどうそうこう)ですから!あなたの体とピッタリフィットして、攻撃力十倍!防御力十倍!知能そのまんまよ!」
白雪姫:「知能は、そのまんまなんだ…。で、元の姿に戻るには?」
ティンカーベル:「強烈なダメージを食らうか、変身可動限界時間である十分を過ぎるか、だね」
白雪姫:「えっ?十分?」
ティンカーベル:「そう。十分しか変身していられないの。つまり、その十分の間に真夜中を倒さないとダメなの」
白雪姫:「でも、変身解除後に、すぐにまた変身すれば、いいんじゃないの?」
ティンカーベル:「それは無理。変身解除後は、童話エネルギーを充電しなきゃ変身できない」
白雪姫:「童話エネルギー?」
ティンカーベル:「そう。童話エネルギー。童話エネルギーはね。あなたの物語が、並行世界(へいこうせかい)で…」
ティンカーベル:「あっ、並行世界っていうのは、ここではない別の世界ってことね」
ティンカーベル:「その並行世界で、誰かに読まれれば読まれるほど溜まって行くの」
ティンカーベル:「白雪姫の物語だと、フル充電までに、だいたい一時間といったところね」
白雪姫:「一時間?たったの一時間で、また変身できるようになるの?」
ティンカーベル:「たったの一時間?たったの一時間って言うけど、真夜中との戦闘で一時間も逃げ切れるわけないでしょ!普通の人間の姿に戻ったら一瞬で消されちゃうわ!」
白雪姫:「真夜中って、そんなにヤバい奴なの?」
ティンカーベル:「童話界における最凶最悪のヴィランといっても過言ではないかもね」
白雪姫:「そうなんだ」
ティンカーベル:「とりあえず、せっかくその姿になったんだし、少し戦闘訓練でもしましょうか?いきなり真夜中と戦うってなっても、どう戦えばいいのかわからないでしょ?」
白雪姫:「それもそうね。あのっ、なにか武器はないの?」
ティンカーベル:「変身している間だけは、そのドウワフォンが武器になる」
白雪姫:「ドウワフォンが武器に?」
ティンカーベル:「シリを起動させてから、『童話神器(どうわじんぎ)』と叫ぶ」
白雪姫:「へいシリ!」
シリ:「こんにちは。シリです。何かお手伝いできることはありますか?」
白雪姫:「童話神器!」
ティンカーベル:「うわっ!まぶしいっ!」
0:
白雪姫:「あれっ?本だ!分厚い本。私の武器は、本なの?本の角で真夜中を攻撃すればいいの?」
ティンカーベル:「そんなわけないでしょ!多分…」
白雪姫:「多分?」
ティンカーベル:「その本のタイトルを読んでみて」
白雪姫:「え?本のタイトル?うーん…。星空魔導書(ほしぞらまどうしょ)アスタリオン。なんか、中二病全開な名前」
ティンカーベル:「あなたが中二病とか言わないの!えっと、星空魔導書アスタリオンね」
ティンカーベル:「ちょっと待ってて。使い方について調べてみるから」
白雪姫:「えっ?あなた知らないの?」
ティンカーベル:「へいシリ!」
シリ:「こんにちは。シリです。何かお手伝いできることはありますか?」
白雪姫:「あれ?あなたもドウワフォン持ってるんだ」
ティンカーベル:「星空魔導書アスタリオン」
シリ:「星空魔導書アスタリオン。一件の検索結果が出ました。星空魔導書アスタリオン」
シリ:「願い事を頭の中で思い浮かべて、適当にページを開いてみる」
シリ:「すると、そのページに魔法の言葉が記されているので、それを声に出せば、どんな願い事もすぐに叶えられます」
白雪姫:「なんか、ざっくりした説明だね」
ティンカーベル:「ちょっと、ちょっとおおお!」
白雪姫:「なに?」
ティンカーベル:「あなたの武器ーっ!」
白雪姫:「ん?」
ティンカーベル:「チートよ!チート武器よ!最強すぎる!どんな願い事も叶えられるって?それって、もう、無敵じゃない!」
白雪姫:「確かに、そうね」
ティンカーベル:「もう、今すぐ真夜中倒しちゃいましょ!真夜中を倒したいと願いながら、適当にページ開いちゃって!」
白雪姫:「えっ?でも、それって、ズルくない?他の四人の選ばれしプリンセスは、どうなるの?」
ティンカーベル:「ズルくない!ズルくない!他のプリンセスなんて、もう、どうでもいい!他でよろしくやってるだろうから、大丈夫!」
白雪姫:「じゃあ、私、真夜中倒しちゃうよ?まだ会ったこともないんだけど、倒しちゃっていいんだよね?」
ティンカーベル:「もちろん!早く早く~っ!真夜中倒しちゃって~!あなたが、世界を救う英雄よ!」
白雪姫:「世界を救う英雄か…。ふふっ(笑)。よしっ!真夜中をやっつけたい!えいっ!ってアレ?」
ティンカーベル:「なになに?どうしたの?」
白雪姫:「知らない漢字がたくさん書いてあって、読めない。しかも、長い。噛みそう」
ティンカーベル:「はあああーっ!」
白雪姫:「なんか、ごめん」
ティンカーベル:「あの、ね…。真夜中と戦う前に、まずは漢字練習からしましょうね」
白雪姫:「えっ、えええええーっ!」
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0:―本編につづく―
ティンカーベル:「この子が白雪姫ね。とっても綺麗…」
白雪姫:「…」
ティンカーベル:「童話の通り、王子様のキスを待ちながら呑気(のんき)に寝てるわね。だけど、今は急いでるの。悪いけど物語を改変させてもらうわね」
ティンカーベル:私は、白雪姫に魔法の粉をかけて、強制的にその眠りを醒まさせた。
白雪姫:「…」
ティンカーベル:「あれ?おかしいわね。粉の量が足りなかったのかしら?もう一度、えいっ!」
白雪姫:「…」
ティンカーベル:「えいっ!えいっ!」
白雪姫:「…」
ティンカーベル:「えいっ!えいっ!えいえいえいえいえいっ!」
白雪姫:「ハックションッ!」
ティンカーベル:「あっ!目醒めたわね!白雪姫!」
白雪姫:「…」
ティンカーベル:「目醒めてるわよね!白雪姫!」
白雪姫:「…」
ティンカーベル:「そう。そういうことするわけね。寝たふりなんて姑息(こそく)なことをね。じゃあ、ほっぺたツネって、デコピンして、くすぐって、それからそれから!」
白雪姫:「いやーっ!やめてやめて!もーう!なんなのよ!」
ティンカーベル:「おはよう。白雪姫」
白雪姫:「おはようじゃない!なんなのよ!」
ティンカーベル:「何って、妖精よ」
白雪姫:「それは見たらわけるけど」
ティンカーベル:「私は、ピーターパンが消されたネバーランドから来たの」
白雪姫:「ピーターパン?ネバーランド?」
ティンカーベル:「そうよね。知らないわよね。仕方ない。ざっくり説明すると、ピーターパンは別の物語の主人公で、ネバーランドは、その主人公が活躍する世界よ」
白雪姫:「へぇ。それで?」
ティンカーベル:「それでって…。そう。私はあなたを迎えにきたのって…あれ?きいてる?」
白雪姫:「きいてません。もう少し寝ます。おやすみなさい」
ティンカーベル:「ちょっと!寝ないで!起きて!大変なのよ!」
白雪姫:「ゼットゼットゼット…」
ティンカーベル:「ゼットゼットゼットって!寝てないことわかるから!」
白雪姫:「グーグーグー…」
ティンカーベル:「寝ている効果音を変えたってダメ!ふざけてる場合じゃないの!童話の世界の主人公が真夜中に消されちゃうのよ!」
白雪姫:「ん?消される?」
ティンカーベル:「そう!消されるの!あなたも主人公だから消されるのよ!」
白雪姫:「消えたくないけど、私はまだ眠っていたいの!」
ティンカーベル:「どうして?」
白雪姫:「そ、そりゃあ、私だって乙女だもの。どうせ目醒めるなら、イケメンの王子様のキッスで目醒めたいというか、なんというか…」
ティンカーベル:「はぁ…。あのね。真夜中に消されちゃったら、そのイケメンの王子様も永遠にこないのよ!」
白雪姫:「えっ?どういうこと?」
ティンカーベル:「どういうことって…。あぁ、やっと真面目に私の話しを聞いてくれる気になった?」
白雪姫:「そりゃあ、王子様が来ないのは困る!ぜったいに困る!王子様が来なければ、私は毒林檎を食べて眠る美少女のお話しということで物語が完結してしまう」
白雪姫:「王子様のキスで目醒めるってところが、私の物語で、いっちばーん重要な要素なの!クライマックス!物語のサビって奴よ!」
ティンカーベル:「そうよね。そもそも物語が終われば、毒林檎を食べる件(くだり)もなくなるし、あなたの存在そのものも消えてしまう」
白雪姫:「待って!なんで?なんで、そんなことになるの?」
ティンカーベル:「だから、さっきから言ってるでしょ!真夜中よ!」
白雪姫:「真夜中って、なんなの?」
ティンカーベル:「元々は、ある天才作家の書いた(童話の中で)」
白雪姫:「(かぶせて)待って!」
ティンカーベル:「ん?どうしたの?」
白雪姫:「天才作家って何?」
ティンカーベル:「天才作家は、天才作家よ。確か名前は…」
白雪姫:「いやっ!いい!話を続けて!その作家の書いた童話の中で、何?」
ティンカーベル:「真夜中は、ある天才作家の書いた童話の中で、世界を真夜中の時間に固定する存在だったらしいんだけど…」
白雪姫:「(小声で)天才作家はどうしても強調したいのね…。(通常ボイスで)それで?真夜中の時間に固定?どういうこと?」
ティンカーベル:「まぁ、その童話の中で、何か大きな改変が起きたらしく、その物語が壊れて、物語の中から真夜中が抜け出してしまったの」
白雪姫:「物語が壊れる?物語って壊れるものなの?」
ティンカーベル:「現に私も、あなたの物語をすでに少しだけ壊してる」
白雪姫:「少しだけ?」
ティンカーベル:「ごめんなさい。かなり壊してます」
白雪姫:「そうよ!かなり壊されてる!王子様のキッスの前に私を起こすなんて、なんてことしてくれちゃってるのよ!私は、王子様の、イケメンの王子様の熱いキッスで目醒めたかったのよ!」
ティンカーベル:「それは、その、ごめんなさい」
白雪姫:「さらば…。私の青春。青い春と書いて、青春。さよなら。私のハッピーエンド」
ティンカーベル:「まぁまぁまぁ。そう悲観(ひかん)しないで!真夜中を倒したら、改変された物語は、すべて元に戻るはずだから、安心して!」
白雪姫:「それで?その真夜中っていう奴は、何をしようとしているの?」
ティンカーベル:「本当の目的は、わからないんだけど、童話の主人公たちを次々に消していってる。そして、主人公が消えた童話は、誰も思い出せなくなって、世界から完全に消滅する」
白雪姫:「えっ?」
ティンカーベル:「少なくとも私が把握(はあく)しているだけでも、ピノキオ、赤ずきん。そして、私の世界の主人公であるピーターパンも、すでに真夜中によって消されてしまった」
白雪姫:「え?その人たち、有名なの?」
ティンカーベル:「一般常識レベル。幼稚園児でも答えられるレベルには有名な童話の主人公たちね」
白雪姫:「ぜんぜん知らない」
ティンカーベル:「そりゃそうよ。真夜中に消された主人公ですからね。人間のあなたは、彼ら、彼女らの名前や活躍(かつやく)を忘れてる。でも、私は、妖精だからさ。ずっと覚えてる」
白雪姫:「そのっ、私も消されちゃうの?」
ティンカーベル:「今のままだとね」
白雪姫:「いやだ!私、消えたくない!どうすればいいの?」
ティンカーベル:「魔法少女になって、現実の世界で、真夜中を倒す」
白雪姫:「魔法少女?現実の世界?」
ティンカーベル:「魔法少女になってくれる?魔法少女になれば、魔法の鏡から、現実の世界に行き来できるようになる。現実の世界っていうのは、読者のいる世界のことよ」
白雪姫:「うーん…。魔法少女にならなければ、このまま真夜中に消されちゃうんだよね?」
ティンカーベル:「そうだよ。じきに真夜中は、この世界も滅ぼしにくる。あなたも含めてね」
白雪姫:「だったら、なるよ。その、魔法少女に!」
ティンカーベル:「やった!そうと決まれば、まず、その服装がダメね。そーれっ!」
ティンカーベル:私は、白雪姫に魔法の粉をかけて、学生服に着替えさせた。
白雪姫:「え?何この服装?なんか、露出度(ろしゅつど)高くない?下がスースーするんだけど!」
ティンカーベル:「我慢してよね。現実の世界だと、その服装が一番ポピュラーなんだよ」
白雪姫:「そう、なんだ。おそるべし露出狂(ろしゅつきょう)がポピュラーな現実世界」
ティンカーベル:「それと、これもプレゼント!」
白雪姫:「なに?この板?手鏡?」
ティンカーベル:「それは、スマホ型空間元素固定装置(すまほがたくうかんげんそこていそうち)。通称『ドウワフォン』よ!」
白雪姫:「ドウワフォン?」
ティンカーベル:「そう。ドウワフォン」
白雪姫:「どうやって使うの?」
ティンカーベル:「へいシリ!と話しかける」
白雪姫:「へいシリ」
シリ:「こんにちは。シリです。何かお手伝いできることはありますか?」
白雪姫:「うわっ!しゃべった!」
ティンカーベル:「ちょっと!私の話の最中にシリを起動しない!私の話を最後まで聞きなさい!」
白雪姫:「あっ、ごめん」
シリ:「大丈夫ですよ」
白雪姫:「あっ!反応した!」
ティンカーベル:「はぁ…。あのね。とりあえず、魔法少女への変身方法についてなんだけど」
白雪姫:「変身方法?」
ティンカーベル:「へいシリ!とシリを起動させてから、童話改変!って叫ぶ」
白雪姫:「へいシリ!」
ティンカーベル:「ちょちょ、ちょっと!」
シリ:「こんにちは。シリです。何かお手伝いできることはありますか?」
白雪姫:「童話改変!」
ティンカーベル:「うわっ!まぶしい!変身の最中は、なんか、すっごいまぶしい!多分、一瞬だけ裸のシルエットになってるんだと思う!今のご時世的にエヌジーなんだと思う!まぶしくて、ほんっと、変身中は何も見えない!」
白雪姫:「あっ!服が変わった!なんか、すっごく強そうなんだけど!ひらひら度ふわふわ度がパネェっす!羽根なんかも付いちゃってるし!」
ティンカーベル:「そうね…。強そうね。ただ、その姿で現実世界を歩いたらダメよ。現実世界で、その姿で活動していいのは、アキバくらいよ」
白雪姫:「アキバ?」
ティンカーベル:「そう。アキバ!あと、その羽根は、ただの飾りだから、飛べると思って、高いところから飛び降りたらダメよ?確実に骨が何本か折れるから!血もビューって出るし、高い確率で死ぬから!」
白雪姫:「わっ、わかった。でも、真夜中と戦う時は、この姿になって戦うんだよね?」
ティンカーベル:「そうだけど、真夜中が出現すると、現実世界の人間の時間は止まるから、問題ないのよ」
白雪姫:「そうなんだ。でも、それだと私の時間も止まるのでは?」
ティンカーベル:「あなたは大丈夫よ。童話のプリンセスだもの」
白雪姫:「童話のプリンセス…」
ティンカーベル:「真夜中を倒せるのは、五人の童話のプリンセスだけなの」
白雪姫:「五人?」
ティンカーベル:「そう。五人の選ばれしプリンセスが力を合わせれば、真夜中を倒せる!」
白雪姫:「私、選ばれしプリンセスなのね!ふふっ」
ティンカーベル:「(小声で)不本意なんだけどね」
白雪姫:「ん?なにか言った?」
ティンカーベル:「いえ、なにも!」
白雪姫:「ちなみに、どうすれば元の姿に戻れるの?何か、この服、ピッタリと体にくっついているみたいで、全く脱げる気がしないんだけど!」
ティンカーベル:「そりゃそうよ。超魔導装甲(ちょうまどうそうこう)ですから!あなたの体とピッタリフィットして、攻撃力十倍!防御力十倍!知能そのまんまよ!」
白雪姫:「知能は、そのまんまなんだ…。で、元の姿に戻るには?」
ティンカーベル:「強烈なダメージを食らうか、変身可動限界時間である十分を過ぎるか、だね」
白雪姫:「えっ?十分?」
ティンカーベル:「そう。十分しか変身していられないの。つまり、その十分の間に真夜中を倒さないとダメなの」
白雪姫:「でも、変身解除後に、すぐにまた変身すれば、いいんじゃないの?」
ティンカーベル:「それは無理。変身解除後は、童話エネルギーを充電しなきゃ変身できない」
白雪姫:「童話エネルギー?」
ティンカーベル:「そう。童話エネルギー。童話エネルギーはね。あなたの物語が、並行世界(へいこうせかい)で…」
ティンカーベル:「あっ、並行世界っていうのは、ここではない別の世界ってことね」
ティンカーベル:「その並行世界で、誰かに読まれれば読まれるほど溜まって行くの」
ティンカーベル:「白雪姫の物語だと、フル充電までに、だいたい一時間といったところね」
白雪姫:「一時間?たったの一時間で、また変身できるようになるの?」
ティンカーベル:「たったの一時間?たったの一時間って言うけど、真夜中との戦闘で一時間も逃げ切れるわけないでしょ!普通の人間の姿に戻ったら一瞬で消されちゃうわ!」
白雪姫:「真夜中って、そんなにヤバい奴なの?」
ティンカーベル:「童話界における最凶最悪のヴィランといっても過言ではないかもね」
白雪姫:「そうなんだ」
ティンカーベル:「とりあえず、せっかくその姿になったんだし、少し戦闘訓練でもしましょうか?いきなり真夜中と戦うってなっても、どう戦えばいいのかわからないでしょ?」
白雪姫:「それもそうね。あのっ、なにか武器はないの?」
ティンカーベル:「変身している間だけは、そのドウワフォンが武器になる」
白雪姫:「ドウワフォンが武器に?」
ティンカーベル:「シリを起動させてから、『童話神器(どうわじんぎ)』と叫ぶ」
白雪姫:「へいシリ!」
シリ:「こんにちは。シリです。何かお手伝いできることはありますか?」
白雪姫:「童話神器!」
ティンカーベル:「うわっ!まぶしいっ!」
0:
白雪姫:「あれっ?本だ!分厚い本。私の武器は、本なの?本の角で真夜中を攻撃すればいいの?」
ティンカーベル:「そんなわけないでしょ!多分…」
白雪姫:「多分?」
ティンカーベル:「その本のタイトルを読んでみて」
白雪姫:「え?本のタイトル?うーん…。星空魔導書(ほしぞらまどうしょ)アスタリオン。なんか、中二病全開な名前」
ティンカーベル:「あなたが中二病とか言わないの!えっと、星空魔導書アスタリオンね」
ティンカーベル:「ちょっと待ってて。使い方について調べてみるから」
白雪姫:「えっ?あなた知らないの?」
ティンカーベル:「へいシリ!」
シリ:「こんにちは。シリです。何かお手伝いできることはありますか?」
白雪姫:「あれ?あなたもドウワフォン持ってるんだ」
ティンカーベル:「星空魔導書アスタリオン」
シリ:「星空魔導書アスタリオン。一件の検索結果が出ました。星空魔導書アスタリオン」
シリ:「願い事を頭の中で思い浮かべて、適当にページを開いてみる」
シリ:「すると、そのページに魔法の言葉が記されているので、それを声に出せば、どんな願い事もすぐに叶えられます」
白雪姫:「なんか、ざっくりした説明だね」
ティンカーベル:「ちょっと、ちょっとおおお!」
白雪姫:「なに?」
ティンカーベル:「あなたの武器ーっ!」
白雪姫:「ん?」
ティンカーベル:「チートよ!チート武器よ!最強すぎる!どんな願い事も叶えられるって?それって、もう、無敵じゃない!」
白雪姫:「確かに、そうね」
ティンカーベル:「もう、今すぐ真夜中倒しちゃいましょ!真夜中を倒したいと願いながら、適当にページ開いちゃって!」
白雪姫:「えっ?でも、それって、ズルくない?他の四人の選ばれしプリンセスは、どうなるの?」
ティンカーベル:「ズルくない!ズルくない!他のプリンセスなんて、もう、どうでもいい!他でよろしくやってるだろうから、大丈夫!」
白雪姫:「じゃあ、私、真夜中倒しちゃうよ?まだ会ったこともないんだけど、倒しちゃっていいんだよね?」
ティンカーベル:「もちろん!早く早く~っ!真夜中倒しちゃって~!あなたが、世界を救う英雄よ!」
白雪姫:「世界を救う英雄か…。ふふっ(笑)。よしっ!真夜中をやっつけたい!えいっ!ってアレ?」
ティンカーベル:「なになに?どうしたの?」
白雪姫:「知らない漢字がたくさん書いてあって、読めない。しかも、長い。噛みそう」
ティンカーベル:「はあああーっ!」
白雪姫:「なんか、ごめん」
ティンカーベル:「あの、ね…。真夜中と戦う前に、まずは漢字練習からしましょうね」
白雪姫:「えっ、えええええーっ!」
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0:―本編につづく―