台本概要

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タイトル 暗き輪廻は永遠(とわ)へと続く
作者名 ふらん☆くりん  (@Frank_lin01)
ジャンル ファンタジー
演者人数 4人用台本(男2、女2) ※兼役あり
時間 30 分
台本使用規定 台本説明欄参照
説明 【あらすじ】
常闇(とこやみ)の国「ダストフォール」。天国でも地獄でもないこの世界で日夜行われている魂の不正取引。
これは、清き魂を救うべく潜入した一人の特務調査員の物語である…。

【著作権について】
本作品の著作権は全て作者である「ふらん☆くりん」に帰属します。
また、いかなる場合であっても当方は著作権の放棄はいたしません。

【禁止事項】
●商業目的での利用
●台本の無断使用、無断転載、自作発言等
●過度なアドリブ、セリフの大幅な改変等

【ご利用に際してのお願い】
●台本の利用に際しては作者X(旧ツイッター)DMに連絡をお願いいたします。
●配信等で利用される場合は①作品名、②作者名、③台本掲載URLを掲示していただけると嬉しいです。
●たくさんの方の演技を聴きに行きたいので、可能であれば告知文にメンションを付けていただけると嬉しいです。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
美咲 42 みさき。違法霊魂取締局ISEB(アイエスイービー)の特務調査員。25歳。男勝りな性格で思考よりも感情で行動する所がある。女性と兼役。
さつき 42 適正輪廻監視院ARSI(エーアールエスアイ)のエージェント。14歳。おしとやかな性格とは裏腹にやるべき時は大胆な行動に出ることもある。少女と兼役。
カリム 5 ダストフォールの警備隊長。任務に忠実で真面目な性格。警備兵A、警備兵B、警備兵Cと兼役。
ルシウス 13 常闇(とこやみ)の国ダストフォール国王。一見紳士的で優しい性格のように見えるが、かなりの策士。心の奥底にどす黒い野望を持っている。
女性 13 ダストフォールに連れて来られた一人の女性。美咲役の方が演じてください。
少女 6 謎の少女。さつき役の方が演じてください。
警備兵A 5 ダストフォールの警備兵。カリム役の方が演じてください。
警備兵B 5 ダストフォールの警備兵。カリム役の方が演じてください。
警備兵C 4 ダストフォールの警備兵。カリム役の方が演じてください。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

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タイトル:暗き輪廻は*永遠《とわ》へと続く : 登場人物: 美咲:みさき。*違法霊魂取締局《いほうれいこんとりしまりきょく》ISEBの特務調査員。25歳。男勝りな性格で思考よりも感情で行動する所がある。女性と兼役。 さつき:*適正輪廻監視院《てきせいりんねかんしいん》ARSIのエージェント。14歳。おしとやかな性格とは裏腹にやるべき時は大胆な行動に出ることもある。少女と兼役。 カリム:ダストフォールの警備隊長。任務に忠実で真面目な性格。警備兵A、警備兵B、警備兵Cと兼役。 ルシウス:*常闇《とこやみ》の国ダストフォール国王。一見紳士的で優しい性格のように見えるが、かなりの策士。心の奥底にどす黒い野望を持っている。 :(M)はモノローグ(独白)、〈〉はト書き、()は心の声です。 : : 本編: :〈雨がしとしと降っている〉 女性:〈消え入りそうな声で〉…あーした天気になーあれ… 警備兵A:あん?何言ってやがる。絶望のあまりついに頭がいかれちまったか?この世界に光なんて差すわけねーだろ。なんせここは… 女性:(M)*常闇《とこやみ》の国「ダストフォール」…生きる希望を失った者たちが死後にたどり着く天国でも地獄でもない魂の終末世界。 警備兵A:いい加減諦めるんだな。ここに来た時点でお前の未来は決まっているんだからよ。 女性:(M)そう、ここは*輪廻《りんね》の輪から外れた*彷徨《さまよ》える魂が流れ着く場所。そして、その先に待つ未来とは…。 警備兵A:お前みたいな使えなくなったクズのような魂はな、ここで輪廻の輪を動かす燃料として加工され、出荷されるんだよ。 女性:…私が…燃料に? 警備兵A:そうだ。ふふふ…なぁ、知ってるか?魂を原料にした燃料は高く売れるんだぜ。ありがたく思うんだな。俺達がその腐った魂に新たな価値を与えてやるんだからよ。さぁ、分かったらさっさと加工機に入り…〈喉元を掴まれる〉ぐぁ!き、貴様!何をする! 女性:燃料になんて…なるわけねーだろ!!〈警備兵の首を握り潰す〉 警備兵A:がぁぁぁ!!〈絶命する〉 女性:全く…人が大人しくしてりゃ良い気になりやがって。…あ…やっべ、つい怒りに任せてやっちまった。えっと、どこか隠れる場所は…。 少女:こっちよ。 女性:き、君は? 少女:いいから、今は黙って私に着いて来て。 女性:あ、ああ。 :------------------隠れ家 少女:はぁ…はぁ、ここまで来ればもう安心よ。 女性:はぁ…はぁ、あ、ありがとな。おかげで助かったよ。 少女:いいえ、どういたしまして。 女性:ところで、どうしてアタイを助けてくれたんだ? 少女:あら?本部から連絡行ってなかったかしら? 女性:へ?連絡?…ってまさか!協力者!? 少女:そう。私は*適正輪廻監視院《てきせいりんねかんしいん》、通称ARSIのエージェント、さつきよ。 女性:ひょえ~!まさか噂のARSIのエージェントが君のような女の子だったなんて。 さつき:あら、いけないかしら? 女性:い、いや、そんなことはねーけどよ…。おっといけね、アタイは*違法霊魂取締局《いほうれいこんとりしまりきょく》ISEBの特務調査員、*美咲《みさき》だ。よろしくな。 さつき:美咲さんね、よろしく。 美咲:それにしても、さすがは魂の終末世界と言うだけあって違法現場のオンパレードだな。 さつき:そうね、私も独自に内偵調査を進めてきたけど、本来であれば輪廻の輪に乗るべき魂まで加工されて高額で取引されてるみたいね。 美咲:ひでぇことしやがる。で、これからどうする?ヘタに動けばアタイらも捕まって燃料にされちまうぞ。 さつき:そうね、まずは二人で不正の証拠を掴むことから始めましょう。 美咲:オーケー!それじゃあ一丁やるとするか! : : :-------------------ダストフォール王宮の間 ルシウス:おや?…C地区の製造ラインに異常発生ですか。どうやらネズミが食い付いたみたいですね。どれどれ…ほう、これはなかなか面白いことになっているじゃないですか。ふむ…カリム警備隊長はおりますか? カリム:はい、ここに。 ルシウス:例の物を準備してください。アレの実戦テストをやります。パターン*302《さんまるに》で侵入者をポイント*α《アルファ》に誘導してください。 カリム:ふふふ…ついにアレを試されるのですね。 ルシウス:ええ。このテストが成功すれば我々は*巨万《きょまん》の富を得ることが出来ます。現場の警備兵にも心してかかるよう伝達してください。あとは頼みましたよ。 カリム:はっ!仰せのままに! ルシウス:ふふふ…せいぜい私を楽しませてくださいね。 : : :-------------------C地区魂加工プラント 美咲:さつき、まずは二手に分かれて不正に連れて来られた魂がないかチェックするよ。これ使って。〈さつきに手帳型の機械を渡す〉 さつき:美咲さんありがとう。へぇ、ジャッジメントチェッカーかぁ…懐かしいわね。 美咲:美咲でいいって。それより使い方は大丈夫か? さつき:ええ。対象に向けてボタンを押せば不正輸入された魂か判別できるのよね? 美咲:その通りだ。流石だな。 さつき:これくらいエージェントなら常識よ。 美咲:それは頼もしいことで。調査データはある程度溜まってから本部に一括送信するから、さつきは片っ端からジャッジしてくれればいい。 さつき:分かったわ。任せて。 美咲:あとこれが通信機だ。何かあったらすぐに連絡しな。アタイはBルート搬入口に行くからAルートはさつきに任せた。1時間後に隠れ家で合流な。 さつき:了解! 美咲:それじゃあ行くよ! さつき:美咲、くれぐれも気を付けて。 美咲:ああ、さつきもな。 : : :-------------------Aルート搬入口 さつき:(よし、Aルート搬入口に到着。ここなら警備兵にバレることなく搬入された魂をチェック出来るわ。) 警備兵B:もうすぐ搬入時間だ。最近上層部が新たな闇ブローカーと手を組んだらしくてよ、前以上に魂の搬入量が増えて俺たちとしてはウハウハだぜ。 さつき:(これは…どう見ても怪しすぎるわね。) 警備兵B:さてと、お待ちかねの搬入タイムだ。今回は量も多いらしいからな。気合い入れていかねぇとな。 さつき:(搬入された魂が出て来たわ!ジャッジメントチェッカー起動!…え!?ほとんどが輪廻の輪に乗るべき魂じゃない!これは決定的な証拠になるわ。) 警備兵B:良いねぇ。なかなかの*上物揃《じょうものぞろ》いじゃねぇか! さつき:(見てなさい。こんな所、すぐにでも稼働出来なくさせてやるんだから!) 警備兵B:お、来た来た。今回の目玉商品のご到着だ。 さつき:(何?あの子、明らかに他とは違う。うそ…上位ランクの魂じゃない!何でこんな所に連れて来られてるのよ…。) 警備兵B:お前はこっちだ。着いて来い。 さつき:(ん?あの子だけ別の所に連行されてる。まずい!追わなきゃ。) :-------------------数分後 さつき:確か、この倉庫に連れて行かれたような気がしたけど。それにしてもすごく大きな倉庫ね。何にせよ、早く助けないと。〈扉を開ける〉 さつき:あれ?鍵が開いてる…丁度良いわ。バレないように侵入してっと…。 : :-------------------Bルート搬入口 美咲:(さてと、あっちはさつきが上手くやってるだろうからこっちも早いとこ証拠を掴まないとな。) 警備兵C:Aルートの方は荷物が届いたみたいだな。こっちももうすぐ搬入時刻だ。今日は忙しくなるぞ。 美咲:(早く出て来い。アタイがバッチリ証拠を押さえてやる!) 警備兵C:そろそろ到着時刻だ。頑張るか。 美咲:(いよいよだな。よーし、チェッカー起動!はてさて、白と出るか黒と出るか…なっ!おいおい何だこの反応は!黒どころか真っ黒じゃねーか!) 警備兵C:ほう…今回の魂はまたずいぶんと*粒揃《つぶぞろ》いじゃないか。これはたんまり稼げるぜ!ハッハッハ! 美咲:(許せねぇ…魂を加工して売り*捌《さば》いてるってだけでもイラつくのに、未来ある魂まで燃料に変えるなんざ我慢出来ねぇ!…とは言え、今ヘタにアタイが動けばこの人達の魂まで危険に*晒《さら》しちまう。悔しいが、ここはしばらく様子見だな。) 警備兵C:〈無線を取る〉ああ、俺だ。…何?そうか、分かった。〈通信終了〉 警備兵C:くく…これは面白くなりそうだ。 美咲:(アイツ何の話をしてるんだ?〈通信機が鳴る〉ん?さつきから通信?)どうした? さつき:〈通信〉ごめん美咲。不測の事態が起きたの。急いでC地区外れの保管倉庫に来て。 美咲:分かった、すぐに向かう。一人で無茶すんじゃねーぞ! さつき:〈通信〉ええ。分かったわ。〈通信切れる〉 美咲:不測の事態って何だ?とにかくこうしちゃいられねぇ。 美咲:(M)アタイはさつきに渡したジャッジメントチェッカーのGPS機能を頼りに、さつきの指定した倉庫らしき場所に向かった。 : さつき:美咲。こっちよ。 美咲:さつき!…無事で良かった。それで、不測の事態って何だ? さつき:Aルート搬入口の魂をチェックしていた時に、上位ランクの魂を持つ女の子がいてね、警備兵に連れられてこの中に入って行ったの。それで私一人じゃとても対応出来ないって思ったからあなたに連絡したの。 美咲:上位ランクの魂!?アイツらそんな魂にまで手を出してやがったのか!いずれにせよナイス判断だ。まずは連行された女の子の発見と救出、そして本部に応援要請だ。 さつき:了解!それじゃ行きましょう! 美咲:おう!〈中に入る〉 : :-------------------保管倉庫内部 美咲:ここは…。 さつき:加工された魂の保管場所のようね。 美咲:ああ。それにしてもその女の子とやらはどこにいるんだ?まるで人の気配がしないんだが。 さつき:そうね。でも警備兵に連れられて二人でここに入って行く所までは確認済よ。 美咲:そうか。エージェントのさつきが言うなら間違いないな。(それはそうと、何だ?この花のような香りは?) さつき:ねぇ、ちょっと来て美咲。 美咲:どうした? さつき:この端末に表示されているのって、ここにある商品の管理リストじゃないかしら? 美咲:どれどれ…確かに。それもかなりの数だな。 さつき:一つ一つ見ていきましょう。 美咲:ん?…ああ…そうだな。一つ一つ見ていかないとな。(あれ…?アタイ、何か大事な事をしなきゃいけなかった気がするんだけど。) さつき:ほら、上から順番に読んでいって…。 美咲:あ、ああ…商品管理番号1商品名タンザイト重量3キロ。商品管理番号2商品名マルチコア重量2キロ…。 さつき:そう、その調子よ…続けて…。 美咲:商品管理番号3…商品名ミクロバイト…(あぁ…何かだんだん面倒臭くなってきた…。) さつき:あら?美咲、ちょっと疲れてきたんじゃない?それじゃあ一旦深呼吸しましょうか。吸ってぇ…。 美咲:すぅ…。 さつき:吐いてぇ…。 美咲:はぁ…。 さつき:ほら、もう一回。吸ってぇ…。 美咲:すぅ…。 さつき:吐いてぇ…。 美咲:はぁ…。 さつき:今の気分はどう? 美咲:〈虚ろな表情で〉ふぇ?…気分?…何のこと? さつき:…だいぶ効いてきたみたいね。 美咲:(何だろう…全てがどうでも良くなってきた。もう何にもしたくない…) さつき:さぁ美咲…この香りを胸いっぱいに吸い込んで…。 美咲:すぅ……。(あぁ…頭が真っ白に…) さつき:ねぇ…あなたはだぁれ? 美咲:…。 さつき:ふふふ…これであなたも立派なお人形さんになれたわね。 さつき:〈通信〉ルシウス様、ご命令通り美咲の人形化が完了いたしました。最後の仕上げをお願いします。 ルシウス:〈通信〉うむ。ご苦労でしたね。さつき、君は警備兵と協力して美咲を私の元に連れて来てください。 さつき:〈通信〉はい…ルシウス様の仰せのままに。 : : :-------------------数時間後、王宮の間 ルシウス:さぁ目覚めなさい。私の可愛いお人形さん。 美咲:〈美咲目を開ける〉ん…あなたはどなた? ルシウス:私はあなたの新しい主人、*常闇《とこやみ》の国ダストフォール国王ルシウスと申します。 美咲:あぁ…!ルシウス様ぁ♡貴方様が私の新しいご主人様なのですね! ルシウス:そうですよ。美咲、あなたはこれから私の忠実なる人形としてその命尽きるまで私に仕えるのです。よろしいですか? 美咲:はい!美咲はルシウス様に永遠の忠誠を誓います! ルシウス:よろしい。それでは早速ですが美咲とさつきに命令します。あなた方はこれから我々のスパイとして*違法霊魂取締局《いほうれいこんとりしまりきょく》ISEB及び*適正輪廻監視院《てきせいりんねかんしいん》ARSIに帰還してください。その際、ここでの不正の証拠はダミー情報と差し替えたうえで本部に提出、そしてこう伝えるのです。「ダストフォールを調査したが怪しい所は何も確認出来なかった。ただ、今後も監視の必要があるため専属調査員として調査を継続する」とね。 美咲:はっ!ルシウス様の仰せのままに! さつき:はっ!我が命はルシウス様のために! ルシウス:よろしい。では行きなさい。 美咲:はい。失礼します。 さつき:我らがダストフォールに繁栄あれ! : ルシウス:ふふふ…どうやら実戦テストは成功のようですね。まず、*対霊魂用神経兵器「夢幻香《たいれいこんようしんけいへいき  むげんこう》」で対象の気力を奪い人形化し、続いて「*傀儡入魂鋲《くぐつにゅうこんびょう》」を直接神経に打ち込むことで忠実な*下僕《しもべ》として自在に*使役《しえき》出来る存在に作り替える。これほどまでに効率的かつ有効な兵器は未だかつてないでしょう。だから、どんなに高値でも買い手はいくらでも付くのですよ。しかも万が一のための解除方法は私しか知らない。それに今回のテストで有能な部下が二人も手に入りました。これで誰にも邪魔されることなく*大手《おおで》を振って商売ができるというものです。 カリム:我々の兵器が世界のパワーバランスをひっくり返すのも時間の問題ですな。 ルシウス:そうですね。天国や地獄と同様に死後の世界でありながらも長きにわたり虐げられてきた屈辱の日々…それももうすぐ終わりを迎えるのです。今後は主力産業を従来の燃料から神経兵器に大々的にシフトします。そのためにはより上位レベルの魂が必要になってきます。皆さんには今まで以上に頑張っていただくことになりますのでよろしくお願いしますね。ふふふ…。 : :~完~

タイトル:暗き輪廻は*永遠《とわ》へと続く : 登場人物: 美咲:みさき。*違法霊魂取締局《いほうれいこんとりしまりきょく》ISEBの特務調査員。25歳。男勝りな性格で思考よりも感情で行動する所がある。女性と兼役。 さつき:*適正輪廻監視院《てきせいりんねかんしいん》ARSIのエージェント。14歳。おしとやかな性格とは裏腹にやるべき時は大胆な行動に出ることもある。少女と兼役。 カリム:ダストフォールの警備隊長。任務に忠実で真面目な性格。警備兵A、警備兵B、警備兵Cと兼役。 ルシウス:*常闇《とこやみ》の国ダストフォール国王。一見紳士的で優しい性格のように見えるが、かなりの策士。心の奥底にどす黒い野望を持っている。 :(M)はモノローグ(独白)、〈〉はト書き、()は心の声です。 : : 本編: :〈雨がしとしと降っている〉 女性:〈消え入りそうな声で〉…あーした天気になーあれ… 警備兵A:あん?何言ってやがる。絶望のあまりついに頭がいかれちまったか?この世界に光なんて差すわけねーだろ。なんせここは… 女性:(M)*常闇《とこやみ》の国「ダストフォール」…生きる希望を失った者たちが死後にたどり着く天国でも地獄でもない魂の終末世界。 警備兵A:いい加減諦めるんだな。ここに来た時点でお前の未来は決まっているんだからよ。 女性:(M)そう、ここは*輪廻《りんね》の輪から外れた*彷徨《さまよ》える魂が流れ着く場所。そして、その先に待つ未来とは…。 警備兵A:お前みたいな使えなくなったクズのような魂はな、ここで輪廻の輪を動かす燃料として加工され、出荷されるんだよ。 女性:…私が…燃料に? 警備兵A:そうだ。ふふふ…なぁ、知ってるか?魂を原料にした燃料は高く売れるんだぜ。ありがたく思うんだな。俺達がその腐った魂に新たな価値を与えてやるんだからよ。さぁ、分かったらさっさと加工機に入り…〈喉元を掴まれる〉ぐぁ!き、貴様!何をする! 女性:燃料になんて…なるわけねーだろ!!〈警備兵の首を握り潰す〉 警備兵A:がぁぁぁ!!〈絶命する〉 女性:全く…人が大人しくしてりゃ良い気になりやがって。…あ…やっべ、つい怒りに任せてやっちまった。えっと、どこか隠れる場所は…。 少女:こっちよ。 女性:き、君は? 少女:いいから、今は黙って私に着いて来て。 女性:あ、ああ。 :------------------隠れ家 少女:はぁ…はぁ、ここまで来ればもう安心よ。 女性:はぁ…はぁ、あ、ありがとな。おかげで助かったよ。 少女:いいえ、どういたしまして。 女性:ところで、どうしてアタイを助けてくれたんだ? 少女:あら?本部から連絡行ってなかったかしら? 女性:へ?連絡?…ってまさか!協力者!? 少女:そう。私は*適正輪廻監視院《てきせいりんねかんしいん》、通称ARSIのエージェント、さつきよ。 女性:ひょえ~!まさか噂のARSIのエージェントが君のような女の子だったなんて。 さつき:あら、いけないかしら? 女性:い、いや、そんなことはねーけどよ…。おっといけね、アタイは*違法霊魂取締局《いほうれいこんとりしまりきょく》ISEBの特務調査員、*美咲《みさき》だ。よろしくな。 さつき:美咲さんね、よろしく。 美咲:それにしても、さすがは魂の終末世界と言うだけあって違法現場のオンパレードだな。 さつき:そうね、私も独自に内偵調査を進めてきたけど、本来であれば輪廻の輪に乗るべき魂まで加工されて高額で取引されてるみたいね。 美咲:ひでぇことしやがる。で、これからどうする?ヘタに動けばアタイらも捕まって燃料にされちまうぞ。 さつき:そうね、まずは二人で不正の証拠を掴むことから始めましょう。 美咲:オーケー!それじゃあ一丁やるとするか! : : :-------------------ダストフォール王宮の間 ルシウス:おや?…C地区の製造ラインに異常発生ですか。どうやらネズミが食い付いたみたいですね。どれどれ…ほう、これはなかなか面白いことになっているじゃないですか。ふむ…カリム警備隊長はおりますか? カリム:はい、ここに。 ルシウス:例の物を準備してください。アレの実戦テストをやります。パターン*302《さんまるに》で侵入者をポイント*α《アルファ》に誘導してください。 カリム:ふふふ…ついにアレを試されるのですね。 ルシウス:ええ。このテストが成功すれば我々は*巨万《きょまん》の富を得ることが出来ます。現場の警備兵にも心してかかるよう伝達してください。あとは頼みましたよ。 カリム:はっ!仰せのままに! ルシウス:ふふふ…せいぜい私を楽しませてくださいね。 : : :-------------------C地区魂加工プラント 美咲:さつき、まずは二手に分かれて不正に連れて来られた魂がないかチェックするよ。これ使って。〈さつきに手帳型の機械を渡す〉 さつき:美咲さんありがとう。へぇ、ジャッジメントチェッカーかぁ…懐かしいわね。 美咲:美咲でいいって。それより使い方は大丈夫か? さつき:ええ。対象に向けてボタンを押せば不正輸入された魂か判別できるのよね? 美咲:その通りだ。流石だな。 さつき:これくらいエージェントなら常識よ。 美咲:それは頼もしいことで。調査データはある程度溜まってから本部に一括送信するから、さつきは片っ端からジャッジしてくれればいい。 さつき:分かったわ。任せて。 美咲:あとこれが通信機だ。何かあったらすぐに連絡しな。アタイはBルート搬入口に行くからAルートはさつきに任せた。1時間後に隠れ家で合流な。 さつき:了解! 美咲:それじゃあ行くよ! さつき:美咲、くれぐれも気を付けて。 美咲:ああ、さつきもな。 : : :-------------------Aルート搬入口 さつき:(よし、Aルート搬入口に到着。ここなら警備兵にバレることなく搬入された魂をチェック出来るわ。) 警備兵B:もうすぐ搬入時間だ。最近上層部が新たな闇ブローカーと手を組んだらしくてよ、前以上に魂の搬入量が増えて俺たちとしてはウハウハだぜ。 さつき:(これは…どう見ても怪しすぎるわね。) 警備兵B:さてと、お待ちかねの搬入タイムだ。今回は量も多いらしいからな。気合い入れていかねぇとな。 さつき:(搬入された魂が出て来たわ!ジャッジメントチェッカー起動!…え!?ほとんどが輪廻の輪に乗るべき魂じゃない!これは決定的な証拠になるわ。) 警備兵B:良いねぇ。なかなかの*上物揃《じょうものぞろ》いじゃねぇか! さつき:(見てなさい。こんな所、すぐにでも稼働出来なくさせてやるんだから!) 警備兵B:お、来た来た。今回の目玉商品のご到着だ。 さつき:(何?あの子、明らかに他とは違う。うそ…上位ランクの魂じゃない!何でこんな所に連れて来られてるのよ…。) 警備兵B:お前はこっちだ。着いて来い。 さつき:(ん?あの子だけ別の所に連行されてる。まずい!追わなきゃ。) :-------------------数分後 さつき:確か、この倉庫に連れて行かれたような気がしたけど。それにしてもすごく大きな倉庫ね。何にせよ、早く助けないと。〈扉を開ける〉 さつき:あれ?鍵が開いてる…丁度良いわ。バレないように侵入してっと…。 : :-------------------Bルート搬入口 美咲:(さてと、あっちはさつきが上手くやってるだろうからこっちも早いとこ証拠を掴まないとな。) 警備兵C:Aルートの方は荷物が届いたみたいだな。こっちももうすぐ搬入時刻だ。今日は忙しくなるぞ。 美咲:(早く出て来い。アタイがバッチリ証拠を押さえてやる!) 警備兵C:そろそろ到着時刻だ。頑張るか。 美咲:(いよいよだな。よーし、チェッカー起動!はてさて、白と出るか黒と出るか…なっ!おいおい何だこの反応は!黒どころか真っ黒じゃねーか!) 警備兵C:ほう…今回の魂はまたずいぶんと*粒揃《つぶぞろ》いじゃないか。これはたんまり稼げるぜ!ハッハッハ! 美咲:(許せねぇ…魂を加工して売り*捌《さば》いてるってだけでもイラつくのに、未来ある魂まで燃料に変えるなんざ我慢出来ねぇ!…とは言え、今ヘタにアタイが動けばこの人達の魂まで危険に*晒《さら》しちまう。悔しいが、ここはしばらく様子見だな。) 警備兵C:〈無線を取る〉ああ、俺だ。…何?そうか、分かった。〈通信終了〉 警備兵C:くく…これは面白くなりそうだ。 美咲:(アイツ何の話をしてるんだ?〈通信機が鳴る〉ん?さつきから通信?)どうした? さつき:〈通信〉ごめん美咲。不測の事態が起きたの。急いでC地区外れの保管倉庫に来て。 美咲:分かった、すぐに向かう。一人で無茶すんじゃねーぞ! さつき:〈通信〉ええ。分かったわ。〈通信切れる〉 美咲:不測の事態って何だ?とにかくこうしちゃいられねぇ。 美咲:(M)アタイはさつきに渡したジャッジメントチェッカーのGPS機能を頼りに、さつきの指定した倉庫らしき場所に向かった。 : さつき:美咲。こっちよ。 美咲:さつき!…無事で良かった。それで、不測の事態って何だ? さつき:Aルート搬入口の魂をチェックしていた時に、上位ランクの魂を持つ女の子がいてね、警備兵に連れられてこの中に入って行ったの。それで私一人じゃとても対応出来ないって思ったからあなたに連絡したの。 美咲:上位ランクの魂!?アイツらそんな魂にまで手を出してやがったのか!いずれにせよナイス判断だ。まずは連行された女の子の発見と救出、そして本部に応援要請だ。 さつき:了解!それじゃ行きましょう! 美咲:おう!〈中に入る〉 : :-------------------保管倉庫内部 美咲:ここは…。 さつき:加工された魂の保管場所のようね。 美咲:ああ。それにしてもその女の子とやらはどこにいるんだ?まるで人の気配がしないんだが。 さつき:そうね。でも警備兵に連れられて二人でここに入って行く所までは確認済よ。 美咲:そうか。エージェントのさつきが言うなら間違いないな。(それはそうと、何だ?この花のような香りは?) さつき:ねぇ、ちょっと来て美咲。 美咲:どうした? さつき:この端末に表示されているのって、ここにある商品の管理リストじゃないかしら? 美咲:どれどれ…確かに。それもかなりの数だな。 さつき:一つ一つ見ていきましょう。 美咲:ん?…ああ…そうだな。一つ一つ見ていかないとな。(あれ…?アタイ、何か大事な事をしなきゃいけなかった気がするんだけど。) さつき:ほら、上から順番に読んでいって…。 美咲:あ、ああ…商品管理番号1商品名タンザイト重量3キロ。商品管理番号2商品名マルチコア重量2キロ…。 さつき:そう、その調子よ…続けて…。 美咲:商品管理番号3…商品名ミクロバイト…(あぁ…何かだんだん面倒臭くなってきた…。) さつき:あら?美咲、ちょっと疲れてきたんじゃない?それじゃあ一旦深呼吸しましょうか。吸ってぇ…。 美咲:すぅ…。 さつき:吐いてぇ…。 美咲:はぁ…。 さつき:ほら、もう一回。吸ってぇ…。 美咲:すぅ…。 さつき:吐いてぇ…。 美咲:はぁ…。 さつき:今の気分はどう? 美咲:〈虚ろな表情で〉ふぇ?…気分?…何のこと? さつき:…だいぶ効いてきたみたいね。 美咲:(何だろう…全てがどうでも良くなってきた。もう何にもしたくない…) さつき:さぁ美咲…この香りを胸いっぱいに吸い込んで…。 美咲:すぅ……。(あぁ…頭が真っ白に…) さつき:ねぇ…あなたはだぁれ? 美咲:…。 さつき:ふふふ…これであなたも立派なお人形さんになれたわね。 さつき:〈通信〉ルシウス様、ご命令通り美咲の人形化が完了いたしました。最後の仕上げをお願いします。 ルシウス:〈通信〉うむ。ご苦労でしたね。さつき、君は警備兵と協力して美咲を私の元に連れて来てください。 さつき:〈通信〉はい…ルシウス様の仰せのままに。 : : :-------------------数時間後、王宮の間 ルシウス:さぁ目覚めなさい。私の可愛いお人形さん。 美咲:〈美咲目を開ける〉ん…あなたはどなた? ルシウス:私はあなたの新しい主人、*常闇《とこやみ》の国ダストフォール国王ルシウスと申します。 美咲:あぁ…!ルシウス様ぁ♡貴方様が私の新しいご主人様なのですね! ルシウス:そうですよ。美咲、あなたはこれから私の忠実なる人形としてその命尽きるまで私に仕えるのです。よろしいですか? 美咲:はい!美咲はルシウス様に永遠の忠誠を誓います! ルシウス:よろしい。それでは早速ですが美咲とさつきに命令します。あなた方はこれから我々のスパイとして*違法霊魂取締局《いほうれいこんとりしまりきょく》ISEB及び*適正輪廻監視院《てきせいりんねかんしいん》ARSIに帰還してください。その際、ここでの不正の証拠はダミー情報と差し替えたうえで本部に提出、そしてこう伝えるのです。「ダストフォールを調査したが怪しい所は何も確認出来なかった。ただ、今後も監視の必要があるため専属調査員として調査を継続する」とね。 美咲:はっ!ルシウス様の仰せのままに! さつき:はっ!我が命はルシウス様のために! ルシウス:よろしい。では行きなさい。 美咲:はい。失礼します。 さつき:我らがダストフォールに繁栄あれ! : ルシウス:ふふふ…どうやら実戦テストは成功のようですね。まず、*対霊魂用神経兵器「夢幻香《たいれいこんようしんけいへいき  むげんこう》」で対象の気力を奪い人形化し、続いて「*傀儡入魂鋲《くぐつにゅうこんびょう》」を直接神経に打ち込むことで忠実な*下僕《しもべ》として自在に*使役《しえき》出来る存在に作り替える。これほどまでに効率的かつ有効な兵器は未だかつてないでしょう。だから、どんなに高値でも買い手はいくらでも付くのですよ。しかも万が一のための解除方法は私しか知らない。それに今回のテストで有能な部下が二人も手に入りました。これで誰にも邪魔されることなく*大手《おおで》を振って商売ができるというものです。 カリム:我々の兵器が世界のパワーバランスをひっくり返すのも時間の問題ですな。 ルシウス:そうですね。天国や地獄と同様に死後の世界でありながらも長きにわたり虐げられてきた屈辱の日々…それももうすぐ終わりを迎えるのです。今後は主力産業を従来の燃料から神経兵器に大々的にシフトします。そのためにはより上位レベルの魂が必要になってきます。皆さんには今まで以上に頑張っていただくことになりますのでよろしくお願いしますね。ふふふ…。 : :~完~