台本概要
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タイトル | オサキ怪異相談所 一章 一話 呪いトモダチ |
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作者名 | てくす (@daihooon) |
ジャンル | ホラー |
演者人数 | 4人用台本(男1、女3) |
時間 | 30 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
ある街の、ある処に、其処は存在する。 怪異…… そんな不可思議な世界に迷い込んだ人を助ける者がいた。 不可思議な世界に迷い込んだ者が今日もまた、助けを求めにやってきたようだ。 ※詳しい設定等はアルファポリスにて。 続きは投稿するか未定。 180 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
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長木 | 男 | 128 | おさき じんこ。狐の霊を使役する憑物筋の男。 |
茜 | 女 | 133 | やまもと あかね。なにやら心霊現象に悩む女子大生。 |
詩織 | 女 | 58 | まちだ しおり。茜と同じ大学に通う。大学から茜と出会い、友達になったそうだが…。 |
春香 | 女 | 43 | 茜の友達。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
茜:『叩け、叩け』
茜:『人ならざる者に出会ったなら』
茜:『この戸を叩け』
0:【間】
春香:ね、ねぇ…本当に行くの?
茜:うん…だってこのままだと私
春香:だけど、ここ凄く不気味だよ?
茜:それは…確かにそうだけど
春香:ていうか、人住んでるの?
春香:とても人が住めるような雰囲気じゃないよ
茜:うーん…ここのはずなんだけど…
茜:ネット掲示板に書かれてたのは
春香:絶対、信用できないよ!
春香:しかも、ネットでしょ!?
茜:けど!私にはもうこれに頼るしかないの!
春香:っ…
茜:嘘でもなんでもいい!
茜:もし、何か少しでも今の状況が変えれるなら
茜:…私は行くよ
春香:…わかった
春香:だけど、危なそうならすぐに連絡するよ
春香:携帯は構えとくから
茜:ありがとう、春香
茜:…ふぅ
茜:じゃあ、行くよ
0:【怪しい店に入る2人】
茜:…すみませーん…
春香:暗い…電気も付いてないみたい
茜:あのー、誰かいませんかー?
春香:人の気配も全くないみたいな
茜:あの!すみませーん!
茜:誰かいませんかー!
長木:(遮るように)いるし、聞こえているよ
茜:ひっ!?
長木:おいおい、人を見て驚くなんて
長木:随分、失礼な人だな
茜:え、あっ!ごめんなさい!
茜:けど…どこから
長木:ずっと此処にいたんだけど
長木:ちゃんと見てなかったんじゃないかな?
茜:そ、そんなはずは
長木:思い込みは思考を止める
長木:ちゃんと周りを見ることをお勧めするね
長木:ま、そんなことはいい
長木:それで?何か用かな?
茜:あ!あの!
茜:幽霊のことを聞くにはここだと聞いて
長木:ネットかい?全く困ったモンだよ
長木:ここは店でも相談所でもないってのにさ
茜:え、あ、ごめんなさい
長木:名前
茜:え?
長木:な・ま・え
茜:山本 茜です…
長木:ふーん、普通だね
茜:…はぁ?
長木:まぁいいや
長木:俺はオサキ、長い木でオサキ
長木:今日は暇だし聞いてあげるよ、話
茜:え?いいんですか?
長木:怪談話だろ?暇潰し程度に聞いてあげるよ
茜:……
長木:ここに来れば何とかなると思ってたのかい?
長木:取り憑かれでもしたのか
長木:普通そういうのは神社とかでお祓いしてもらうものだろ
茜:意味がなかったんです!
茜:調べられることは全部しました!
茜:でも、全然意味がなくて!
長木:最後に此処ってわけ?
茜:…はい
春香:私、無理、外に出てる
茜:あっ
長木:ふーん、まぁいい
長木:話す分はタダだろう
長木:減るモンじゃないし、どうぞ?
茜:……
茜:(何、この人…話していいのかな
茜:でも、もうやれることもないし…)
茜:わかりました、話します
0:【間】
長木:…長い
長木:要約すると、心霊スポットに友達と2人で行った
長木:その後から霊障がある
長木:お祓い等、よくあるものは全部試したが効果なし
長木:これでいいね?
茜:はい…
長木:山本茜、一緒に行った友達は?
茜:その子は全く何もないみたいです
茜:私のことは全部、話したんですけど
茜:気のせいじゃないかって言われて
長木:名前は?
茜:町田 詩織です
長木:ふーん、普通
茜:あの!さっきから何なんですか!
茜:人の名前に普通普通って!
長木:名前は意味を持っているんだよ
長木:名前1つで霊に好かれやすい人だっているんだ
長木:色々調べたんじゃないのかい?
長木:だとしたら勉強不足だ
長木:ま、それは分かっていたことだからいいとして
長木:山本茜、次はその町田詩織を此処に呼べ
長木:一人で来るように言うんだ
茜:え、私は?
長木:来なくていい、とりあえず普通に生活してくれ
長木:どうせ死にはしない
茜:信じていいんですか?
長木:さぁ?それは自分が決めることだ
長木:なんとかしたくて俺を頼ったんだろう?
長木:だったら俺に文句を言う筋合いは無い筈だ
長木:俺のやり方に文句を言いたいなら
長木:俺と同じ場所に立って経験することだな
長木:少しネットで調べた程度で出てくる怪談話では
長木:助かることも助けることもできないぞ
茜:……はい
長木:今日は帰っていい
長木:暇潰し程度には関わってやるよ
0:【間、店を出る茜】
茜:…なんなのあの人、全然信用できない
春香:あ!出てきた!
茜:春香…大丈夫?
春香:なんか、雰囲気と匂い?かな
春香:気持ち悪くなっちゃって
茜:なんか、ジメジメしてたしね
春香:けど、もう大丈夫だよ
春香:そっちは?
茜:うん、少し話しただけ
茜:信用していいのかも全然わかんない
春香:やめとけば?なんか胡散臭い
茜:うん…だけど他に頼れる場所もないから
春香:…そっか
茜:よし、今日は帰ろう
春香:そうだね、じゃあまた明日、学校でね
茜:うん
0:【窓から茜を見る長木】
長木:霊障…ね
長木:本当にそんなものがあるのか
長木:知ってるのかね、あの子は
0:次の日
春香:おはよう
茜:あ!おはよう、春香
詩織:茜!おはよ〜
茜:おはよう、あ、そういえば昨日行ってきたよ
詩織:例の怪奇現象?
茜:うん…ただ話をしただけだったんだけど
詩織:解決しそうなの?
茜:うーん…全く
詩織:なにそれ、大丈夫なの?
茜:あ、そういえば詩織に来て欲しいって
詩織:私?
茜:一人でって言われたんだけど
詩織:えぇ…それこそ大丈夫なの?
茜:…なんとも言えない
詩織:ま!親友のためだからね
詩織:明日にでも行ってくるよ
茜:ごめんね
詩織:それで体調は大丈夫?
茜:少し寝不足かな
茜:やっぱり気になっちゃって
詩織:幽霊の視線、だっけ?
茜:…うん
詩織:…あ、そうだ
詩織:今日の放課後だけどさ
詩織:美紅たちとこの前できた、あの店行くんだけど
詩織:茜も来ない?
茜:え!今日?
春香:あ、ねぇ
茜:あっ…そうだ
茜:ごめん!詩織!今日予定あるんだった
詩織:そう?それは残念
詩織:少しは息抜きになるかと思ったのに
茜:ごめん、また誘って
詩織:うん、じゃあまた誘うね
詩織:ちゃんと寝なよ
0:【間、放課後】
春香:ごめんね、遊び行けなくて
茜:ううん、先に予定してたのは春香だから
茜:えーっと…道は確か…あれ?
茜:えっと…こっちで…良かった…?
春香:うん、そうだよ
春香:そのまま真っ直ぐ
茜:…だよね…
茜:疲れてるのかな…
春香:大丈夫?
茜:う、うん…
春香:行こ?真っ直ぐ進めば着くから
茜:うん、行こう
長木:山本茜
茜:へ…?
0:【目の前を車が通る】
茜:わっ!!
長木:そんなに車道に寄ってたら轢かれるぞ
長木:ぼーっとして、疲れてるのか?
茜:え、私、今轢かれそうだった…?
長木:おいおい、死にはしないとは言ったが
長木:不注意で死ぬことはあるぞ
長木:そこは俺も助けられん
茜:す、すみません…
茜:あ、明日詩織が行くと言ってました
長木:そうか、お前は気をつけて帰れよ
茜:あ、ありがとうございます
春香:ねぇ、今のって
茜:うん、昨日の…
春香:ていうか、大丈夫!?
茜:ごめん、ぼーっとしてた
春香:今日はやめとく?帰った方がいいんじゃない?
茜:う、うん…そうする
茜:ごめんね、春香
春香:ううん、大丈夫だよ
春香:機会はいつでもあるから
茜:…疲れてるのかな…
0:【間】
詩織:茜に言われてきましたー
詩織:お邪魔しまーす
長木:あぁ、君が町田詩織か
長木:…少し話しを聞かせてくれ
詩織:本当に幽霊の仕業なんですか?
詩織:私には何もなくって
長木:まずは俺の問いに答えてくれ
長木:心霊スポットに行ったのは二週間前
長木:場所は南曜山の拝宗トンネルだっけ?
詩織:はい、ネットでも有名な心霊スポットなので
長木:なぜ二人なんだ?
詩織:二人で飲んでて、そのわノリで
長木:ふーん…ま、詳しく聞くつもりないけど
長木:徒歩でよく行ったね
詩織:そうですか?歩いて30分くらいですよ
長木:山からトンネルまでだろう?
長木:あー、近場に飲み屋はあったか
詩織:そうです、だから行こうって話になって
長木:なるほどね
長木:んじゃ、結論言うよ
長木:俺は幽霊が見える
詩織:はい?
長木:霊感がある、と言えばいいか
長木:何か憑いてればすぐに解る
長木:山本茜、アイツに霊は憑いていない
詩織:え、それじゃあ
詩織:やっぱり茜の気のせい?
長木:だろうね
長木:シミュラクラ現象やパレイドリアの類だろう
詩織:シミュ?なんですか、それ
長木:聞いたことないか?
長木:木目や岩が顔に見えたりする現象さ
長木:多くの心霊写真なんかはコレだ
詩織:え、じゃあ!茜の勘違いってことですよね!?
詩織:もう、やっぱりそうじゃん!
詩織:本当、心配性なんだから
長木:聞いた話、山本茜が霊障だと思っている
長木:視線を感じる、倦怠感、知らない顔が見えた
長木:全て勘違いで説明がつく
長木:ただ、別のパターンもあってね
詩織:別のパターン…ですか?
長木:町田詩織、君に取り憑いていて
長木:近くにいる山本茜に霊障が起こるパターンだ
長木:簡単に言えば煙草の副流煙みたいなもんさ
長木:吸ってる本人より近くにいる人の方が害がある
詩織:なるほど…それで私には?
長木:あぁ、憑いていない
詩織:てことは…本当に人騒がせなんだから、茜は!
詩織:じゃあ勘違いだったって茜に伝えますね
長木:待て
詩織:はい?なんですか?
長木:このことは俺が伝える
詩織:え、いいですよ!そこまでして貰わなくても
長木:こういった場合な、友達に言われようが
長木:本人は納得しない
長木:結局、俺のこともインチキだの理由をつけて
長木:また次に行くことになる
詩織:たしかに、そうかもしれませんけど
長木:だからな、形だけお祓いみたいな感じで
長木:俺がやるから…まぁアフターケアみたいな感じだ
長木:だから明日、山本茜にここにくる様に伝えてくれ
詩織:わかりました、なんかごめんなさい
詩織:色々と迷惑を
長木:いや、本当に迷惑だが
長木:その分、報酬を頂くさ
詩織:ありがとうございました
0:【間】
春香:じゃあ、今日、行くんだね
茜:うん、詩織から聞いてね
茜:原因がわかったって…なんなんだろう
春香:良くなるといいね
茜:ありがとう、春香
春香:私も一緒に行ってもいいかな?
茜:うん!大丈夫だよ
長木:……来たか
茜:あれ?外で待ってるなんて
茜:こんばんは、長木さん
長木:あぁ、…19時、いい時間だ
春香:どこか行くのかな?
茜:うーん…どこか行くんですか?
長木:あぁ、拝宗トンネルだ
長木:町田詩織に聞いただろ?お祓いは現場で行う
茜:…わ、わかりました
長木:なんだ、怖いのか
春香:大丈夫?
茜:大丈夫…、大丈夫です
長木:よし、行くぞ
0:【間】
長木:ここでいいのか?
茜:…はい
長木:……
春香:顔色悪いよ?本当に大丈夫?
茜:大丈夫、ごめんね
長木:ところで山本茜、人に霊が取り憑く時
長木:どうなるか知っているか?
茜:え?…なんですか急に
長木:お前は幽霊に取り憑かれているから
長木:不可解なことが起きてるんだろ?
茜:そうです!視線を感じたり、変なものを見たり
茜:このトンネルに行ってからなんです!
長木:霊が人に取り憑く時、映像が見える
茜:映像…?
長木:簡単に説明すると、白いモヤ、影
長木:あれは幽霊だ、と分かったとしても
長木:それが何か解らないのが幽霊だ
長木:だが、その霊が人に取り憑く時
長木:取り憑かれた人間には、その白い何かが
長木:例えば、老婆だとか、男の人だとか
長木:なんてことが見えることがある
長木:それが何かも解らないのに、だ
茜:そ、それが何だって言うんですか?
長木:お前はソレを見たのか?
茜:え…?…いや、見て…ないです
長木:全員が全員そうなるわけではないが
長木:結構、多いんだぜ?
茜:だから…それが何だって…
春香:大丈夫?
茜:大丈夫だよ…
長木:俺が言いたいのは、お前に幽霊なんか憑いてないってことだ
茜:…え?
長木:お前の友人にも言ったが、俺は幽霊が見える
長木:初めて会った時から、一度もお前に幽霊なんか憑いてない
長木:さらに言えばここは心霊スポットでもなんでもない
長木:ネットに書かれている場所なんて8割嘘だ
長木:だから、ここに来た程度で取り憑かれたりしない
茜:じゃあ!私のこれは何なんですか!
茜:なんでこんな所にまた連れてきたんですか!
長木:必要だからだ
茜:何が!
春香:大丈夫?
茜:だから!大丈夫だって!
長木:あぁ、そうそう
長木:山本茜…
長木:お前、さっきから誰と喋ってるんだ?
茜:誰って…それは…
茜:えっ…だ、誰…?
春香:ダイジョウブ?
茜:ヒッ…!?
長木:俺は幽霊が見える、だが幽霊は憑いていない
長木:だったら俺が見えないものがお前に憑いている
長木:そう考えた時、一番しっくりくるもの…
長木:呪いだな
茜:嘘…何…これ…
長木:さ、役者を全員集めるとするか
長木:なぁ、いつまでそこでコソコソしてんだよ
長木:このストーカー女
詩織:…何よ、話が違うじゃない…
長木:何の話だ?俺はここに除霊しに来たんだ
詩織:ふざけないで!
詩織:アンタ、見えてるんでしょ!?
長木:いや〜、何も見えないね
長木:呪いってのは幽霊とはまた別の存在だからな
茜:詩織…?
詩織:…!!…説明しなさいよ
春香:ア…あぁぁあぁあ!
春香:な、な、何で何も答えてくくくれないののの
茜:嘘よ…詩織…はる…
長木:(遮るように)それ以上、名前を呼ぶな
長木:手がつけられなくなる
長木:全く、意味の無いモノに意味を与えるなよ
詩織:どうして…ここまで来て…全部アンタのせいよ!
長木:人のせいにするなよ
長木:んじゃ、答え合わせといくか
長木:と、その前にーーー"クダ"
茜:え!?キツネ!?
長木:そいつに触れてろ
長木:当分呪いは手出し出来ん
詩織:何なのよ!その狐は!
長木:俺は所謂、憑きもの筋ってやつでね
長木:こんな具合に自分に取り憑いた霊を使役できるんだよ
長木:狐って言えば人を化かしたり悪さをするやつもいるが
長木:お稲荷様然り、人に祀られ、護るやつもいる
長木:当然、俺の狐は後者だ
詩織:なんなのよ、それ…茜を呪い殺せないの!?そんなモノあるわけ
長木:おいおい、不可思議なモノで人を
長木:呪い殺そうとしてる奴が不可思議なモノを信じれないのかよ
詩織:黙れ!
茜:詩織!なんでこんなこと!
詩織:アンタが悪いのよ!アンタが!
詩織:アンタが真人君に手を出さなかったらこんなこと!
茜:…何を言ってるの…?
茜:そんな話、知らない!詩織!
詩織:うるさい、うるさい、うるさい!
詩織:アンタがいなければ!アンタが死ねばいいのよ!
長木:痴情のもつれだな
長木:そんなもんで人を殺そうとするのか
長木:しかも、自分の手を汚さず呪いなんてモンに手を出して
詩織:アンタに何がわかんのよ!
詩織:みんな馬鹿にして、お前も死んでしまえ!
長木:ほう、紙に人形ね
長木:ヒトガタ呪いか
長木:じゃあ呪いやすいように俺の本当の名前を教えてやるよ
長木:俺は"尾先 仁狐(おさき じんこ)"尻尾の先に、にんべんに漢字のニに狐だ
0:【紙に長木の名前を書く詩織】
詩織:っ!!
茜:尾先…?
長木:あぁ、すまないな
長木:呪いの種別がわかるまでは本当の名前は言えなかった
茜:え?
長木:よく聞け、山本茜、町田詩織
長木:俺の趣味は人助けだ
詩織:だから何だってのよ!
長木:簡単なことだ
長木:勇者が魔王を倒す物語で勇者が負けちまったら
長木:その世界は悪に支配されるだろ?
長木:俺だって同じだ、助ける前に俺がやられたら意味がない
長木:だから名前も言わないし、お前に興味なさそうに接した
長木:俺に矛先が向かないようにな
茜:あっ…
長木:一目見て分かった
長木:霊はいないが、別の何かがいることをな
長木:お前は俺と別れた後も誰かと話してる素振りがあった
長木:俺といる時も何かをずっと気にしていた
詩織:そんなの!アンタが言ってた勘違いで
詩織:説明がつくじゃない!
長木:俺のことを知った
長木:その時点で何かあるんだよ
長木:俺のことは普通じゃ見つけられない
長木:そういうモノを使っている
詩織:ふざけないで!
長木:まだ言うか?
長木:ふざけた力使ってる奴が
長木:ふざけたモノを信じなくてどうする?
茜:どうして呪いってわかったんですか…?
茜:あの後、別に話も…あっ
長木:車に轢かれそうになった時、少し焦ったな
長木:そこまで呪いが進行してるとは思わなかった
長木:だが、精神に干渉するモンだと思ったよ
長木:お前が日に日に弱っているって聞いてたからな
長木:強い呪いなら、その場で即、あの世行きだ
長木:そんで、ま、俺の友達の怪異屋にも頼んで
長木:呪いの種別とかまぁ、色々準備したってわけ
茜:怪異屋…?
長木:それはまぁ、追々な
詩織:だけどもう終わりよ!ホラ!
詩織:アンタの名前も書いた!これでアンタも呪われて終わりよ!
長木:終わらないから種明かししたんだろ?
長木:その程度の呪いじゃ、俺はどうにもならない
詩織:…え?
長木:さてと、うん!よく見える!
春香:お前!お前!オマエ!
春香:オマエの家、臭かった!
春香:変なものを使ってる!
春香:オマエも殺す
長木:魔除けのお香だよ、呪いちゃん
長木:呪われたお陰でやっと顔が見れたね
長木:ははっ、腐った死体か何かかな?
春香:殺す!殺す!!
長木:山本茜、名前を呼ばれたら顔を伏せろ
長木:いいか?もうあの呪いもデカくなりすぎている
長木:次、本気で呪われたら死ぬぞ
茜:名前…?
長木:一度も呼ばれなかっただろ?
長木:意味の無いモノは、意味の有るものを呼べないんだ
長木:だが、それが呼ぶってことは
長木:お前も意味が無いモノになるってことだ
長木:…どういうことか、わかるな?
茜:…はい…
詩織:何してるのよ…早く二人を殺しなさいよ!
長木:この場の雰囲気で霊感が上がってるハズだ
長木:まぁ、呪いをかけた張本人だもんな
長木:そろそろお前も呪いが見え出した頃か?
詩織:その狐も、ふざけた男も!
詩織:なんでもいいから早くやりなさいよ!
長木:チッ、あっちのヘイトが溜まりすぎてんな
春香:あかね…あかね
春香:こっちに来て、あかね
茜:えっ!?いやぁぁあ!
春香:何で?こっちを向いて、あかね
春香:あかね、あかね、あかね、あかねあかねあかね
長木:来たか
長木:クダ!もうちょい辛抱してくれ!
長木:いいか、そのままよく聞け
長木:お前が辛いのはここからだ
茜:…え?辛い?
茜:これ以上に何があるんですか…
茜:友達から死ねって言われて
茜:変なモノに殺されそうになって
茜:もう、私にこれ以上、何をするの!?
長木:選択だよ、山本茜
茜:…え?
長木:俺はお前を助けることはできる
長木:だが、ここからの選択はお前が決めるしか無い
茜:…なにを
長木:一つ、このままお前が呪い殺され
長木:呪いを成就させ一件落着
長木:二つ、俺がお前の呪いを解いて
長木:お前を助ける
茜:そんなの、二つ目に決まってじゃない!
茜:早く呪いを解いて!
長木:解かれた呪いは成就せず
長木:そのまま消えることはない
茜:え?
長木:人を呪わば穴二つ
長木:呪いが成功せずに行き場を失った呪いは
長木:術者に戻る、同じ呪いとして
茜:それって、もしかして
長木:二つ、俺がお前の呪いを解いて
長木:お前を助ける、そして
長木:町田詩織を呪い殺す
茜:そんなの!できるわけ!
長木:お前を呪い殺そうとするやつだぞ?
茜:だけど!友達をこ、殺す…なんて
茜:私には…できない…
長木:お前が殺すわけじゃない
長木:全部、町田詩織の自業自得だ
茜:助けることはできないんですか…?
長木:……三つ、…
0:【少し間】
詩織:何をコソコソしてんの!?
詩織:何だっていいから早くあの二人を殺…
長木:もう大丈夫だ、ゆっくり休め
茜:……っ
詩織:…やった…?やったの?
詩織:アハハハハ!死んだ!これで真人君は私の!
長木:救えねーな、町田詩織
長木:こいつの爪の垢でも飲ませたいくらいだ
長木:残念だが、呪いは解かせてもらった
詩織:は…?何言ってるの?
詩織:茜は死んだ!見なさいよ!そこに倒れて…
長木:死んでねーよ
長木:呪いってのは一種の力の源だ
長木:それが憑いてたんだ
長木:それを祓えば力が抜けて倒れるさ
春香:ドコ…?何処に行ったの…?
春香:あかねーーー!あかねーーー!
春香:いない、みんないない、見えない、殺せない
春香:私、ドウスレバイイノ?
詩織:嘘よ…そんな…ここまできて
長木:お前は日に日に弱っていく、こいつを見て
長木:心配するフリして腹の中で笑ってたんだろ?
詩織:だって、だって!茜が!色目なんて使わなければ!
長木:二十歳越えたいい大人が!
長木:一時の感情で呪いにまで手を出しやがって
長木:…そんなお前を救いたいと思うコイツも馬鹿だが
長木:お前は救えないほどに馬鹿だな
詩織:なによ…みんなして私を馬鹿にして…
詩織:ふざけるな!!ふざけるなあぁぁ!
長木:なるほどな
長木:極度の被害妄想癖か
長木:馬鹿通り越して、哀れだよ
春香:みつけた、みつけた、みつけた
詩織:えっ…何、何でこっちに来るのよ!
長木:人を呪わば穴二つって知ってるか?
長木:そう言うことだよ、町田詩織
長木:呪いと仲良く過ごすんだな
詩織:い、嫌よ…!なんとか…しなさいよ!
春香:みつけた、みつけた、し・お・り
詩織:ひっ…
長木:あとはお前次第だ、町田詩織
長木:改心する気持ちが、お前にあればいいな
春香:あ・そ・ぼ
詩織:いやぁぁぁぁぃあ…
0:【間】
茜:うぅ…ううん…
長木:起きたか
茜:あれ…ここは
長木:俺の家だよ
茜:はっ!詩織は!詩織はどうなったんですか!
長木:あぁ、今頃…
0:【間、回想】
長木:三つ、お前の呪いを解いた後、呪いに呪いをかける
長木:町田詩織が今回の件に罪の意識を感じて
長木:心の懺悔できれば呪いから解放される
茜:…それで、できなかったら
長木:わかるだろ?
茜:……
茜:わかりました、三つ目でお願いします
長木:それでいいんだな
茜:少しでも、詩織が助かる可能性があるなら
長木:…わかった
茜:でも呪いって、どうやって
長木:準備してきたって言ったろ?
長木:より強力な呪い…というより
長木:幻惑みたいなもんだけどな
長木:アイツが反省するまで懲らしめろ…ってな
0:【間、戻って現在】
茜:じゃあ、茜は…
長木:もうお前が心配する次元の話じゃない
長木:ここからはあいつ次第だ
長木:だがな、人生の先輩として教えてやる
長木:あぁいった奴は縁を切るに限る
茜:それでも、私にとっては大事な友達なので
長木:…はぁ、そうかい、そうかい
長木:それで?気分はどうだ?
茜:はい!なんだかスッキリしました
茜:あ!あなたもありがとう、えっと…クダ?
長木:様を付けろ、様を
長木:これでも神様と同列の霊体だぞ
茜:え!?あ、ありがとうございました!
長木:…はぁ…
茜:え?どうしました?
長木:コイツが見えてるってことは
長木:霊感があるってことだ
長木:呪われて覚醒したか…全く
茜:え!?じゃあ私、これから
長木:おう、正真正銘、霊が見えるぞ
長木:せっかく呪いを祓ったのに
長木:これじゃ元に戻ったのかわからんな
茜:…ふふ、大丈夫です
茜:昨日までとは違う感じがします
茜:それに、悪い幽霊に会ったら尾先さんが
茜:助けてくれますよね?
長木:なんでそうなる
茜:だって言ってたじゃないですか
茜:趣味は人助けだって
長木:……ははっ
長木:そうだったな
茜:頼みますね、尾先さん
長木:じゃあ、ウチで働くか?
茜:え?
長木:俺の仕事の手伝いだ
長木:あぁ、別に幽霊関係だけじゃないぞ
長木:他にもやってることはあるし
長木:本物の霊感がある奴ってのは重宝する
茜:……
長木:あ、いや!
長木:無理には言わん!忘れてくれ
茜:いいですよ
長木:何?
茜:よろしくお願いします
長木:…そうか
茜:はい!
長木:俺は尾先 仁狐
長木:幽霊が見える
茜:私は山本 茜です
茜:幽霊が見えるようになりました
長木:ははは!これからよろしく頼む
茜:こちらこそ!
茜:あ!色々聞かせてくださいよ!尾先さん!
長木:あぁ、追々な
0:【終わり】
茜:『叩け、叩け』
茜:『人ならざる者に出会ったなら』
茜:『この戸を叩け』
0:【間】
春香:ね、ねぇ…本当に行くの?
茜:うん…だってこのままだと私
春香:だけど、ここ凄く不気味だよ?
茜:それは…確かにそうだけど
春香:ていうか、人住んでるの?
春香:とても人が住めるような雰囲気じゃないよ
茜:うーん…ここのはずなんだけど…
茜:ネット掲示板に書かれてたのは
春香:絶対、信用できないよ!
春香:しかも、ネットでしょ!?
茜:けど!私にはもうこれに頼るしかないの!
春香:っ…
茜:嘘でもなんでもいい!
茜:もし、何か少しでも今の状況が変えれるなら
茜:…私は行くよ
春香:…わかった
春香:だけど、危なそうならすぐに連絡するよ
春香:携帯は構えとくから
茜:ありがとう、春香
茜:…ふぅ
茜:じゃあ、行くよ
0:【怪しい店に入る2人】
茜:…すみませーん…
春香:暗い…電気も付いてないみたい
茜:あのー、誰かいませんかー?
春香:人の気配も全くないみたいな
茜:あの!すみませーん!
茜:誰かいませんかー!
長木:(遮るように)いるし、聞こえているよ
茜:ひっ!?
長木:おいおい、人を見て驚くなんて
長木:随分、失礼な人だな
茜:え、あっ!ごめんなさい!
茜:けど…どこから
長木:ずっと此処にいたんだけど
長木:ちゃんと見てなかったんじゃないかな?
茜:そ、そんなはずは
長木:思い込みは思考を止める
長木:ちゃんと周りを見ることをお勧めするね
長木:ま、そんなことはいい
長木:それで?何か用かな?
茜:あ!あの!
茜:幽霊のことを聞くにはここだと聞いて
長木:ネットかい?全く困ったモンだよ
長木:ここは店でも相談所でもないってのにさ
茜:え、あ、ごめんなさい
長木:名前
茜:え?
長木:な・ま・え
茜:山本 茜です…
長木:ふーん、普通だね
茜:…はぁ?
長木:まぁいいや
長木:俺はオサキ、長い木でオサキ
長木:今日は暇だし聞いてあげるよ、話
茜:え?いいんですか?
長木:怪談話だろ?暇潰し程度に聞いてあげるよ
茜:……
長木:ここに来れば何とかなると思ってたのかい?
長木:取り憑かれでもしたのか
長木:普通そういうのは神社とかでお祓いしてもらうものだろ
茜:意味がなかったんです!
茜:調べられることは全部しました!
茜:でも、全然意味がなくて!
長木:最後に此処ってわけ?
茜:…はい
春香:私、無理、外に出てる
茜:あっ
長木:ふーん、まぁいい
長木:話す分はタダだろう
長木:減るモンじゃないし、どうぞ?
茜:……
茜:(何、この人…話していいのかな
茜:でも、もうやれることもないし…)
茜:わかりました、話します
0:【間】
長木:…長い
長木:要約すると、心霊スポットに友達と2人で行った
長木:その後から霊障がある
長木:お祓い等、よくあるものは全部試したが効果なし
長木:これでいいね?
茜:はい…
長木:山本茜、一緒に行った友達は?
茜:その子は全く何もないみたいです
茜:私のことは全部、話したんですけど
茜:気のせいじゃないかって言われて
長木:名前は?
茜:町田 詩織です
長木:ふーん、普通
茜:あの!さっきから何なんですか!
茜:人の名前に普通普通って!
長木:名前は意味を持っているんだよ
長木:名前1つで霊に好かれやすい人だっているんだ
長木:色々調べたんじゃないのかい?
長木:だとしたら勉強不足だ
長木:ま、それは分かっていたことだからいいとして
長木:山本茜、次はその町田詩織を此処に呼べ
長木:一人で来るように言うんだ
茜:え、私は?
長木:来なくていい、とりあえず普通に生活してくれ
長木:どうせ死にはしない
茜:信じていいんですか?
長木:さぁ?それは自分が決めることだ
長木:なんとかしたくて俺を頼ったんだろう?
長木:だったら俺に文句を言う筋合いは無い筈だ
長木:俺のやり方に文句を言いたいなら
長木:俺と同じ場所に立って経験することだな
長木:少しネットで調べた程度で出てくる怪談話では
長木:助かることも助けることもできないぞ
茜:……はい
長木:今日は帰っていい
長木:暇潰し程度には関わってやるよ
0:【間、店を出る茜】
茜:…なんなのあの人、全然信用できない
春香:あ!出てきた!
茜:春香…大丈夫?
春香:なんか、雰囲気と匂い?かな
春香:気持ち悪くなっちゃって
茜:なんか、ジメジメしてたしね
春香:けど、もう大丈夫だよ
春香:そっちは?
茜:うん、少し話しただけ
茜:信用していいのかも全然わかんない
春香:やめとけば?なんか胡散臭い
茜:うん…だけど他に頼れる場所もないから
春香:…そっか
茜:よし、今日は帰ろう
春香:そうだね、じゃあまた明日、学校でね
茜:うん
0:【窓から茜を見る長木】
長木:霊障…ね
長木:本当にそんなものがあるのか
長木:知ってるのかね、あの子は
0:次の日
春香:おはよう
茜:あ!おはよう、春香
詩織:茜!おはよ〜
茜:おはよう、あ、そういえば昨日行ってきたよ
詩織:例の怪奇現象?
茜:うん…ただ話をしただけだったんだけど
詩織:解決しそうなの?
茜:うーん…全く
詩織:なにそれ、大丈夫なの?
茜:あ、そういえば詩織に来て欲しいって
詩織:私?
茜:一人でって言われたんだけど
詩織:えぇ…それこそ大丈夫なの?
茜:…なんとも言えない
詩織:ま!親友のためだからね
詩織:明日にでも行ってくるよ
茜:ごめんね
詩織:それで体調は大丈夫?
茜:少し寝不足かな
茜:やっぱり気になっちゃって
詩織:幽霊の視線、だっけ?
茜:…うん
詩織:…あ、そうだ
詩織:今日の放課後だけどさ
詩織:美紅たちとこの前できた、あの店行くんだけど
詩織:茜も来ない?
茜:え!今日?
春香:あ、ねぇ
茜:あっ…そうだ
茜:ごめん!詩織!今日予定あるんだった
詩織:そう?それは残念
詩織:少しは息抜きになるかと思ったのに
茜:ごめん、また誘って
詩織:うん、じゃあまた誘うね
詩織:ちゃんと寝なよ
0:【間、放課後】
春香:ごめんね、遊び行けなくて
茜:ううん、先に予定してたのは春香だから
茜:えーっと…道は確か…あれ?
茜:えっと…こっちで…良かった…?
春香:うん、そうだよ
春香:そのまま真っ直ぐ
茜:…だよね…
茜:疲れてるのかな…
春香:大丈夫?
茜:う、うん…
春香:行こ?真っ直ぐ進めば着くから
茜:うん、行こう
長木:山本茜
茜:へ…?
0:【目の前を車が通る】
茜:わっ!!
長木:そんなに車道に寄ってたら轢かれるぞ
長木:ぼーっとして、疲れてるのか?
茜:え、私、今轢かれそうだった…?
長木:おいおい、死にはしないとは言ったが
長木:不注意で死ぬことはあるぞ
長木:そこは俺も助けられん
茜:す、すみません…
茜:あ、明日詩織が行くと言ってました
長木:そうか、お前は気をつけて帰れよ
茜:あ、ありがとうございます
春香:ねぇ、今のって
茜:うん、昨日の…
春香:ていうか、大丈夫!?
茜:ごめん、ぼーっとしてた
春香:今日はやめとく?帰った方がいいんじゃない?
茜:う、うん…そうする
茜:ごめんね、春香
春香:ううん、大丈夫だよ
春香:機会はいつでもあるから
茜:…疲れてるのかな…
0:【間】
詩織:茜に言われてきましたー
詩織:お邪魔しまーす
長木:あぁ、君が町田詩織か
長木:…少し話しを聞かせてくれ
詩織:本当に幽霊の仕業なんですか?
詩織:私には何もなくって
長木:まずは俺の問いに答えてくれ
長木:心霊スポットに行ったのは二週間前
長木:場所は南曜山の拝宗トンネルだっけ?
詩織:はい、ネットでも有名な心霊スポットなので
長木:なぜ二人なんだ?
詩織:二人で飲んでて、そのわノリで
長木:ふーん…ま、詳しく聞くつもりないけど
長木:徒歩でよく行ったね
詩織:そうですか?歩いて30分くらいですよ
長木:山からトンネルまでだろう?
長木:あー、近場に飲み屋はあったか
詩織:そうです、だから行こうって話になって
長木:なるほどね
長木:んじゃ、結論言うよ
長木:俺は幽霊が見える
詩織:はい?
長木:霊感がある、と言えばいいか
長木:何か憑いてればすぐに解る
長木:山本茜、アイツに霊は憑いていない
詩織:え、それじゃあ
詩織:やっぱり茜の気のせい?
長木:だろうね
長木:シミュラクラ現象やパレイドリアの類だろう
詩織:シミュ?なんですか、それ
長木:聞いたことないか?
長木:木目や岩が顔に見えたりする現象さ
長木:多くの心霊写真なんかはコレだ
詩織:え、じゃあ!茜の勘違いってことですよね!?
詩織:もう、やっぱりそうじゃん!
詩織:本当、心配性なんだから
長木:聞いた話、山本茜が霊障だと思っている
長木:視線を感じる、倦怠感、知らない顔が見えた
長木:全て勘違いで説明がつく
長木:ただ、別のパターンもあってね
詩織:別のパターン…ですか?
長木:町田詩織、君に取り憑いていて
長木:近くにいる山本茜に霊障が起こるパターンだ
長木:簡単に言えば煙草の副流煙みたいなもんさ
長木:吸ってる本人より近くにいる人の方が害がある
詩織:なるほど…それで私には?
長木:あぁ、憑いていない
詩織:てことは…本当に人騒がせなんだから、茜は!
詩織:じゃあ勘違いだったって茜に伝えますね
長木:待て
詩織:はい?なんですか?
長木:このことは俺が伝える
詩織:え、いいですよ!そこまでして貰わなくても
長木:こういった場合な、友達に言われようが
長木:本人は納得しない
長木:結局、俺のこともインチキだの理由をつけて
長木:また次に行くことになる
詩織:たしかに、そうかもしれませんけど
長木:だからな、形だけお祓いみたいな感じで
長木:俺がやるから…まぁアフターケアみたいな感じだ
長木:だから明日、山本茜にここにくる様に伝えてくれ
詩織:わかりました、なんかごめんなさい
詩織:色々と迷惑を
長木:いや、本当に迷惑だが
長木:その分、報酬を頂くさ
詩織:ありがとうございました
0:【間】
春香:じゃあ、今日、行くんだね
茜:うん、詩織から聞いてね
茜:原因がわかったって…なんなんだろう
春香:良くなるといいね
茜:ありがとう、春香
春香:私も一緒に行ってもいいかな?
茜:うん!大丈夫だよ
長木:……来たか
茜:あれ?外で待ってるなんて
茜:こんばんは、長木さん
長木:あぁ、…19時、いい時間だ
春香:どこか行くのかな?
茜:うーん…どこか行くんですか?
長木:あぁ、拝宗トンネルだ
長木:町田詩織に聞いただろ?お祓いは現場で行う
茜:…わ、わかりました
長木:なんだ、怖いのか
春香:大丈夫?
茜:大丈夫…、大丈夫です
長木:よし、行くぞ
0:【間】
長木:ここでいいのか?
茜:…はい
長木:……
春香:顔色悪いよ?本当に大丈夫?
茜:大丈夫、ごめんね
長木:ところで山本茜、人に霊が取り憑く時
長木:どうなるか知っているか?
茜:え?…なんですか急に
長木:お前は幽霊に取り憑かれているから
長木:不可解なことが起きてるんだろ?
茜:そうです!視線を感じたり、変なものを見たり
茜:このトンネルに行ってからなんです!
長木:霊が人に取り憑く時、映像が見える
茜:映像…?
長木:簡単に説明すると、白いモヤ、影
長木:あれは幽霊だ、と分かったとしても
長木:それが何か解らないのが幽霊だ
長木:だが、その霊が人に取り憑く時
長木:取り憑かれた人間には、その白い何かが
長木:例えば、老婆だとか、男の人だとか
長木:なんてことが見えることがある
長木:それが何かも解らないのに、だ
茜:そ、それが何だって言うんですか?
長木:お前はソレを見たのか?
茜:え…?…いや、見て…ないです
長木:全員が全員そうなるわけではないが
長木:結構、多いんだぜ?
茜:だから…それが何だって…
春香:大丈夫?
茜:大丈夫だよ…
長木:俺が言いたいのは、お前に幽霊なんか憑いてないってことだ
茜:…え?
長木:お前の友人にも言ったが、俺は幽霊が見える
長木:初めて会った時から、一度もお前に幽霊なんか憑いてない
長木:さらに言えばここは心霊スポットでもなんでもない
長木:ネットに書かれている場所なんて8割嘘だ
長木:だから、ここに来た程度で取り憑かれたりしない
茜:じゃあ!私のこれは何なんですか!
茜:なんでこんな所にまた連れてきたんですか!
長木:必要だからだ
茜:何が!
春香:大丈夫?
茜:だから!大丈夫だって!
長木:あぁ、そうそう
長木:山本茜…
長木:お前、さっきから誰と喋ってるんだ?
茜:誰って…それは…
茜:えっ…だ、誰…?
春香:ダイジョウブ?
茜:ヒッ…!?
長木:俺は幽霊が見える、だが幽霊は憑いていない
長木:だったら俺が見えないものがお前に憑いている
長木:そう考えた時、一番しっくりくるもの…
長木:呪いだな
茜:嘘…何…これ…
長木:さ、役者を全員集めるとするか
長木:なぁ、いつまでそこでコソコソしてんだよ
長木:このストーカー女
詩織:…何よ、話が違うじゃない…
長木:何の話だ?俺はここに除霊しに来たんだ
詩織:ふざけないで!
詩織:アンタ、見えてるんでしょ!?
長木:いや〜、何も見えないね
長木:呪いってのは幽霊とはまた別の存在だからな
茜:詩織…?
詩織:…!!…説明しなさいよ
春香:ア…あぁぁあぁあ!
春香:な、な、何で何も答えてくくくれないののの
茜:嘘よ…詩織…はる…
長木:(遮るように)それ以上、名前を呼ぶな
長木:手がつけられなくなる
長木:全く、意味の無いモノに意味を与えるなよ
詩織:どうして…ここまで来て…全部アンタのせいよ!
長木:人のせいにするなよ
長木:んじゃ、答え合わせといくか
長木:と、その前にーーー"クダ"
茜:え!?キツネ!?
長木:そいつに触れてろ
長木:当分呪いは手出し出来ん
詩織:何なのよ!その狐は!
長木:俺は所謂、憑きもの筋ってやつでね
長木:こんな具合に自分に取り憑いた霊を使役できるんだよ
長木:狐って言えば人を化かしたり悪さをするやつもいるが
長木:お稲荷様然り、人に祀られ、護るやつもいる
長木:当然、俺の狐は後者だ
詩織:なんなのよ、それ…茜を呪い殺せないの!?そんなモノあるわけ
長木:おいおい、不可思議なモノで人を
長木:呪い殺そうとしてる奴が不可思議なモノを信じれないのかよ
詩織:黙れ!
茜:詩織!なんでこんなこと!
詩織:アンタが悪いのよ!アンタが!
詩織:アンタが真人君に手を出さなかったらこんなこと!
茜:…何を言ってるの…?
茜:そんな話、知らない!詩織!
詩織:うるさい、うるさい、うるさい!
詩織:アンタがいなければ!アンタが死ねばいいのよ!
長木:痴情のもつれだな
長木:そんなもんで人を殺そうとするのか
長木:しかも、自分の手を汚さず呪いなんてモンに手を出して
詩織:アンタに何がわかんのよ!
詩織:みんな馬鹿にして、お前も死んでしまえ!
長木:ほう、紙に人形ね
長木:ヒトガタ呪いか
長木:じゃあ呪いやすいように俺の本当の名前を教えてやるよ
長木:俺は"尾先 仁狐(おさき じんこ)"尻尾の先に、にんべんに漢字のニに狐だ
0:【紙に長木の名前を書く詩織】
詩織:っ!!
茜:尾先…?
長木:あぁ、すまないな
長木:呪いの種別がわかるまでは本当の名前は言えなかった
茜:え?
長木:よく聞け、山本茜、町田詩織
長木:俺の趣味は人助けだ
詩織:だから何だってのよ!
長木:簡単なことだ
長木:勇者が魔王を倒す物語で勇者が負けちまったら
長木:その世界は悪に支配されるだろ?
長木:俺だって同じだ、助ける前に俺がやられたら意味がない
長木:だから名前も言わないし、お前に興味なさそうに接した
長木:俺に矛先が向かないようにな
茜:あっ…
長木:一目見て分かった
長木:霊はいないが、別の何かがいることをな
長木:お前は俺と別れた後も誰かと話してる素振りがあった
長木:俺といる時も何かをずっと気にしていた
詩織:そんなの!アンタが言ってた勘違いで
詩織:説明がつくじゃない!
長木:俺のことを知った
長木:その時点で何かあるんだよ
長木:俺のことは普通じゃ見つけられない
長木:そういうモノを使っている
詩織:ふざけないで!
長木:まだ言うか?
長木:ふざけた力使ってる奴が
長木:ふざけたモノを信じなくてどうする?
茜:どうして呪いってわかったんですか…?
茜:あの後、別に話も…あっ
長木:車に轢かれそうになった時、少し焦ったな
長木:そこまで呪いが進行してるとは思わなかった
長木:だが、精神に干渉するモンだと思ったよ
長木:お前が日に日に弱っているって聞いてたからな
長木:強い呪いなら、その場で即、あの世行きだ
長木:そんで、ま、俺の友達の怪異屋にも頼んで
長木:呪いの種別とかまぁ、色々準備したってわけ
茜:怪異屋…?
長木:それはまぁ、追々な
詩織:だけどもう終わりよ!ホラ!
詩織:アンタの名前も書いた!これでアンタも呪われて終わりよ!
長木:終わらないから種明かししたんだろ?
長木:その程度の呪いじゃ、俺はどうにもならない
詩織:…え?
長木:さてと、うん!よく見える!
春香:お前!お前!オマエ!
春香:オマエの家、臭かった!
春香:変なものを使ってる!
春香:オマエも殺す
長木:魔除けのお香だよ、呪いちゃん
長木:呪われたお陰でやっと顔が見れたね
長木:ははっ、腐った死体か何かかな?
春香:殺す!殺す!!
長木:山本茜、名前を呼ばれたら顔を伏せろ
長木:いいか?もうあの呪いもデカくなりすぎている
長木:次、本気で呪われたら死ぬぞ
茜:名前…?
長木:一度も呼ばれなかっただろ?
長木:意味の無いモノは、意味の有るものを呼べないんだ
長木:だが、それが呼ぶってことは
長木:お前も意味が無いモノになるってことだ
長木:…どういうことか、わかるな?
茜:…はい…
詩織:何してるのよ…早く二人を殺しなさいよ!
長木:この場の雰囲気で霊感が上がってるハズだ
長木:まぁ、呪いをかけた張本人だもんな
長木:そろそろお前も呪いが見え出した頃か?
詩織:その狐も、ふざけた男も!
詩織:なんでもいいから早くやりなさいよ!
長木:チッ、あっちのヘイトが溜まりすぎてんな
春香:あかね…あかね
春香:こっちに来て、あかね
茜:えっ!?いやぁぁあ!
春香:何で?こっちを向いて、あかね
春香:あかね、あかね、あかね、あかねあかねあかね
長木:来たか
長木:クダ!もうちょい辛抱してくれ!
長木:いいか、そのままよく聞け
長木:お前が辛いのはここからだ
茜:…え?辛い?
茜:これ以上に何があるんですか…
茜:友達から死ねって言われて
茜:変なモノに殺されそうになって
茜:もう、私にこれ以上、何をするの!?
長木:選択だよ、山本茜
茜:…え?
長木:俺はお前を助けることはできる
長木:だが、ここからの選択はお前が決めるしか無い
茜:…なにを
長木:一つ、このままお前が呪い殺され
長木:呪いを成就させ一件落着
長木:二つ、俺がお前の呪いを解いて
長木:お前を助ける
茜:そんなの、二つ目に決まってじゃない!
茜:早く呪いを解いて!
長木:解かれた呪いは成就せず
長木:そのまま消えることはない
茜:え?
長木:人を呪わば穴二つ
長木:呪いが成功せずに行き場を失った呪いは
長木:術者に戻る、同じ呪いとして
茜:それって、もしかして
長木:二つ、俺がお前の呪いを解いて
長木:お前を助ける、そして
長木:町田詩織を呪い殺す
茜:そんなの!できるわけ!
長木:お前を呪い殺そうとするやつだぞ?
茜:だけど!友達をこ、殺す…なんて
茜:私には…できない…
長木:お前が殺すわけじゃない
長木:全部、町田詩織の自業自得だ
茜:助けることはできないんですか…?
長木:……三つ、…
0:【少し間】
詩織:何をコソコソしてんの!?
詩織:何だっていいから早くあの二人を殺…
長木:もう大丈夫だ、ゆっくり休め
茜:……っ
詩織:…やった…?やったの?
詩織:アハハハハ!死んだ!これで真人君は私の!
長木:救えねーな、町田詩織
長木:こいつの爪の垢でも飲ませたいくらいだ
長木:残念だが、呪いは解かせてもらった
詩織:は…?何言ってるの?
詩織:茜は死んだ!見なさいよ!そこに倒れて…
長木:死んでねーよ
長木:呪いってのは一種の力の源だ
長木:それが憑いてたんだ
長木:それを祓えば力が抜けて倒れるさ
春香:ドコ…?何処に行ったの…?
春香:あかねーーー!あかねーーー!
春香:いない、みんないない、見えない、殺せない
春香:私、ドウスレバイイノ?
詩織:嘘よ…そんな…ここまできて
長木:お前は日に日に弱っていく、こいつを見て
長木:心配するフリして腹の中で笑ってたんだろ?
詩織:だって、だって!茜が!色目なんて使わなければ!
長木:二十歳越えたいい大人が!
長木:一時の感情で呪いにまで手を出しやがって
長木:…そんなお前を救いたいと思うコイツも馬鹿だが
長木:お前は救えないほどに馬鹿だな
詩織:なによ…みんなして私を馬鹿にして…
詩織:ふざけるな!!ふざけるなあぁぁ!
長木:なるほどな
長木:極度の被害妄想癖か
長木:馬鹿通り越して、哀れだよ
春香:みつけた、みつけた、みつけた
詩織:えっ…何、何でこっちに来るのよ!
長木:人を呪わば穴二つって知ってるか?
長木:そう言うことだよ、町田詩織
長木:呪いと仲良く過ごすんだな
詩織:い、嫌よ…!なんとか…しなさいよ!
春香:みつけた、みつけた、し・お・り
詩織:ひっ…
長木:あとはお前次第だ、町田詩織
長木:改心する気持ちが、お前にあればいいな
春香:あ・そ・ぼ
詩織:いやぁぁぁぁぃあ…
0:【間】
茜:うぅ…ううん…
長木:起きたか
茜:あれ…ここは
長木:俺の家だよ
茜:はっ!詩織は!詩織はどうなったんですか!
長木:あぁ、今頃…
0:【間、回想】
長木:三つ、お前の呪いを解いた後、呪いに呪いをかける
長木:町田詩織が今回の件に罪の意識を感じて
長木:心の懺悔できれば呪いから解放される
茜:…それで、できなかったら
長木:わかるだろ?
茜:……
茜:わかりました、三つ目でお願いします
長木:それでいいんだな
茜:少しでも、詩織が助かる可能性があるなら
長木:…わかった
茜:でも呪いって、どうやって
長木:準備してきたって言ったろ?
長木:より強力な呪い…というより
長木:幻惑みたいなもんだけどな
長木:アイツが反省するまで懲らしめろ…ってな
0:【間、戻って現在】
茜:じゃあ、茜は…
長木:もうお前が心配する次元の話じゃない
長木:ここからはあいつ次第だ
長木:だがな、人生の先輩として教えてやる
長木:あぁいった奴は縁を切るに限る
茜:それでも、私にとっては大事な友達なので
長木:…はぁ、そうかい、そうかい
長木:それで?気分はどうだ?
茜:はい!なんだかスッキリしました
茜:あ!あなたもありがとう、えっと…クダ?
長木:様を付けろ、様を
長木:これでも神様と同列の霊体だぞ
茜:え!?あ、ありがとうございました!
長木:…はぁ…
茜:え?どうしました?
長木:コイツが見えてるってことは
長木:霊感があるってことだ
長木:呪われて覚醒したか…全く
茜:え!?じゃあ私、これから
長木:おう、正真正銘、霊が見えるぞ
長木:せっかく呪いを祓ったのに
長木:これじゃ元に戻ったのかわからんな
茜:…ふふ、大丈夫です
茜:昨日までとは違う感じがします
茜:それに、悪い幽霊に会ったら尾先さんが
茜:助けてくれますよね?
長木:なんでそうなる
茜:だって言ってたじゃないですか
茜:趣味は人助けだって
長木:……ははっ
長木:そうだったな
茜:頼みますね、尾先さん
長木:じゃあ、ウチで働くか?
茜:え?
長木:俺の仕事の手伝いだ
長木:あぁ、別に幽霊関係だけじゃないぞ
長木:他にもやってることはあるし
長木:本物の霊感がある奴ってのは重宝する
茜:……
長木:あ、いや!
長木:無理には言わん!忘れてくれ
茜:いいですよ
長木:何?
茜:よろしくお願いします
長木:…そうか
茜:はい!
長木:俺は尾先 仁狐
長木:幽霊が見える
茜:私は山本 茜です
茜:幽霊が見えるようになりました
長木:ははは!これからよろしく頼む
茜:こちらこそ!
茜:あ!色々聞かせてくださいよ!尾先さん!
長木:あぁ、追々な
0:【終わり】