台本概要

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タイトル 私のかわいい子
作者名 栞星-Kanra-
ジャンル ラブストーリー
演者人数 2人用台本(男1、女1)
時間 30 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 女子校育ちで、男性のちょっとした口調を怖く感じてしまう女性社員
オネエ口調で、仕事ができる男性課長
そんな二人の、ほのぼのラブストーリー(+コメディ)
テンポ良く演じれば、20分程度になると思います
性別変更:不可


誤字、脱字等ありましたら、アメブロ『星空想ノ森』までご連絡をお願いいたします。
読んでみて、演じてみての感想もいただけると嬉しいです。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
佐伯 81 オネエ口調の佐伯(さえき)、強い口調の青木(あおき)
来瑠 83 女子校育ちの大橋 来瑠(おおはし くる)
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
0:キャラクター名の変更、および、一人称、語尾等の変更は、演者様間でお話の上、ご自由に楽しんでいただければと思います。 0:なお、世界観、内容が変わるほどの変更やアドリブは、ご遠慮ください。 0:  0:(役紹介) 0:【佐伯】オネエ口調の佐伯(さえき)、強い口調の青木(あおき) 0:【来瑠】女子校育ちの大橋 来瑠(おおはし くる) 0:  :  :――(上演開始)―― :  :  佐伯:(青木)「おい、木島(きじま)! 何だよ、この資料! 昨日、後からメールした内容、抜けてないか。 ほら、これ! これも入れておかなきゃ、ダメだろ」 :(掛け合いのため、少し間を置く) 佐伯:(青木)「しっかりしろよ。 せっかく他が良くできてるんだから、これがなくて何か言われたらもったいないだろ。 後、大橋!」 来瑠:「あっ、はい!」 佐伯:(青木)「昨日頼んだヤツ、今日中にできるか?」 来瑠:「あっ、えっと……もうすぐ終わるので、その後、確認して、それから――」 佐伯:(青木)「だから、今日中に終わるのかって聞いてんの」 来瑠:「あっ、えっと、はい。 終わります……」 佐伯:(青木)「じゃあ、そう言えよ」 来瑠:「すみません」 佐伯:(青木)「別に怒ってるわけじゃないからな。 終わらないなら、他のヤツにも手伝わそうと思っただけで」 来瑠:「あっ、はい」 :  :  :(休憩スペースにて) :  :  来瑠:「はぁ……」 佐伯:「あら? 来瑠(くる)ちゃんじゃない? どうしたの? 溜息なんかついて」 来瑠:「あっ! 佐伯(さえき)課長、お疲れ様です!」 佐伯:「ふふっ。 おつかれさま。 で、どうしたの? 青木(あおき)君に何か言われちゃった?」 来瑠:「いえ。 その……、また聞かれたことにちゃんと答えられなくて。 何度もおんなじことを言わせちゃってて」 佐伯:「おんなじこと?」 来瑠:「イエスか、ノーかで答えられることなのに、パニックになっちゃって、グダグダ話しちゃって」 佐伯:「パニック? うーん。 あっ、他の仕事で頭がいっぱいのときに話しかけられちゃったとか?」 来瑠:「いえ……。 その、男の人の言い方というか、勢いが、慣れないというか、怖いというか」 佐伯:「あぁ。 青木君、テキパキしているけど、それが、口調にも反映されてるのもね。 でも、いい子よ?」 来瑠:「わかってます……困ったときにはフォローもしてくださいますし、ちょっとしたことも、ちゃんと気付いて褒めてくれるし」 佐伯:「なーんだ。 ちゃんと良いところも見れてるじゃない」 来瑠:「けど、いざ、仕事モードで話しかけられたら、ビクッてなっちゃって、ちゃんと返せなくて」 佐伯:「なるほどねー。 わかってても、身体が条件反射で動いちゃってるのねー。 でも、徐々にでいいから、慣れていって欲しいわ。 同じく部下を持つ身としては、信頼されてないのかしら、って不安になっちゃうもの」 来瑠:「ですよね……。 すみません」 佐伯:「もう……ほら、そんなに謝らないで! そうだ、ほら、これ、一つあげる」 来瑠:「……あっ、チョコ!」 佐伯:「そう! 甘いものでも食べて、元気出しなさい! あと、頭にちゃーんと糖分届けてあげないと、良いイメージが浮かばないわよ」 来瑠:「っ! はい! じゃあ、これいただきます!」 佐伯:「どうぞ」 来瑠:「わぁ、見た目もかわいい! んー! それに、おいしい……!」 佐伯:「でしょ? かわいすぎて、見つけて、ついつい買っちゃったの」 来瑠:「そして、さらに、おいしいです! しあわせー!」 佐伯:「ふふっ。 気に入ってもらえて良かったわ。 そういえば、私とは普通にお話できているわよね? 曲がりなりにも、私、男だし、上司なんだけど?」 来瑠:「えっ? あぁ……うーん、何ででしょう? 佐伯課長のことは、怖いって思ったことはなくて……なんか、頼れるお姉ちゃんって感じで。 って、すみません! 上司に対して失礼ですよね」 佐伯:「つまり、男として見られてない、ってことね?」 来瑠:「えっと……その、あの……」 佐伯:「ふふっ。 まぁいいわ。 ほら、そろそろ休憩はおしまい! デスクに帰りましょう」 来瑠:「はい! あっ、チョコ、ご馳走様です!」 佐伯:「はーい。 またね」 :  :  :(後日) :  :  来瑠:「えっ、佐伯課長と、ですか?」 佐伯:「そっ。 この資料作ったの、来瑠ちゃんなんでしょ? さすがに一つ一つの案件を全部は把握しきれないから、担当の子と一緒にお客様先を訪問することもあるの」 来瑠:「でも、それだったら、営業担当の人の方が。 私は資料作っただけですし」 佐伯:「この資料の内容に一番詳しいのは、営業担当なの?」 来瑠:「それは……私ですけど」 佐伯:「じゃあ、私と二人っきりでの出張がイヤ?」 来瑠:「それは! そんなことはないです。 他の人より、佐伯課長との方が安心できます!」 佐伯:「まっ、嬉しいこと言ってくれるじゃない! って、冗談はさて置き……お客様が資料を見てどう思うか、どういうところから見ていくのか、見た瞬間に出てくる率直な意見。 それは、営業の口から聞かされるのと、実際にお客様から聞くのとでは全然違う」 佐伯:「凄く勉強にもなるし、嬉しいものだから、来瑠ちゃんにも経験して欲しくてね。 男性のお客様も多いけど、私が一緒なら、落ち着けるだけの時間を作ってあげられるし、お客様ともお話してみない?」 来瑠:「佐伯課長……ありがとうございます! はい! ぜひ、同行させてください!」 :  :  :(出張 帰路) :  :  佐伯:「で、どうだった?」 来瑠:「凄く勉強になりました! 営業さんが、インパクトを重要視する理由も改めて実感できましたし、自分が作った資料が中心にいてお話が進んでいっているが……凄く嬉しかったです。 ちゃんと、その輪の中にいるんだ、一緒に作り上げてるんだって感じがして!」 佐伯:「そう。 それは良かったわ。 社内にいる子たちにたくさん助けてもらって、お仕事ができてる。 私たちの口から、出てきたお話を伝えることはできるけど、それだけじゃ伝えきれないものもある。 でも、それを知ってもらった方が、もっと素敵な資料や作品が作れると思ってね」 来瑠:「はい。 お客様にも褒めてもらえたの、嬉しかったです! それに、課長がラストの二ページをどうしてあんな風にしたいって言われたのか、わかりました。 一番右に座られていた女性のため、ですよね?」 佐伯:「あら、気付いちゃった?」 来瑠:「はい。 あの方だけ、最初の方のページには目もくれず、最後の方のページばかり熱心に読んでおられましたから」 佐伯:「正解。 あの人だけが、唯一、現場に近い人なの。 他は決定権を持つ、経営者層。 経営者層に気に入ってもらえれば、選ばれたも同然」 佐伯:「でも、実際に一番近く、一番長く接するのは現場の人たちだから。 そんな彼らにこそ安心できる、良いものだってイメージを持ってもらえるものにしたかった。 だから、来瑠ちゃんには、あんなお願いをしたってわけ」 来瑠:「はい! それに……私たちのことも考えてもらえてるんだな……って、わかって。 資料の説明するとき、頑張ったところとか気付いてもらって、さりげなくお客様にも伝えてもらえていたり」 佐伯:「ふふっ。 だって、一緒にしているお仕事なんだもの。 わかって欲しいじゃない?」 来瑠:「ありがとうございます」 佐伯:「じゃ、今日の経験を活かしつつ、これからも素敵な資料を期待しているわね」 来瑠:「はい! 頑張ります」 :  :  :(後日) :  :  来瑠:「佐伯課長との客先訪問も七回目ですね」 佐伯:「課長権限使って、来瑠ちゃんのこと引っ張り出してばっかりで、ダメな上司よねー」 来瑠:「えっ、私は嬉しいですよ。 佐伯課長と一緒にお仕事させてもらえるの! ランチもおいしいお店に連れて行って貰っちゃって、お得感満載です!」 佐伯:「ちょっと! ランチが目的なら、もうこれからは連れて行かないわよ!」 来瑠:「違いますよ! ランチも楽しいですけど、お客様の話が聞けるのも楽しいんです! ダメ出しみたいなこともされちゃったりもしますけど、どうしてそう思ったのかも聞けるので、次に繋げやすいんです」 佐伯:「そうね。 だんだんと資料の構成、レイアウトがよいものに……洗練されていっている。 次は、お客様毎に、どんな風にしたらより伝わるかを考えられるようになるといいわね」 来瑠:「はい! あと、それと……」 佐伯:「ん? それと?」 来瑠:「……プレゼンのときの佐伯課長がかっこよくて……凄いなぁって」 佐伯:「やだー、もう! 照れるじゃない。 ちょっと、来瑠ちゃんってそんなこと言っちゃえる子だったの? だめよー、私以外に言ったら! 本気にされちゃうわよ?」 来瑠:「本気に……? いえ、あの、お世辞とかじゃなくてですね!」 佐伯:「ほら、お客様先に着いたわよ。 気合入れ直しましょ!」 来瑠:「あっ、はい!」 :  :  :(プレゼン後 客先にて) :  :  来瑠:「えっ、久世(くぜ)君? びっくりした! まさか会えるとは思ってなくて、連絡もせずでごめんね」 :(掛け合いのため、少し間を置く) 来瑠:「私? 今日はプレゼンの付き添い。 あっ、こちら、上司で課長の佐伯さん」 佐伯:「初めまして。 佐伯と申します」 :(掛け合いのため、少し間を置く) 来瑠:「あっ、これから打ち合わせなんだ! ううん! ちょっとでも話せて良かった。 声かけてくれて、ありがとう! うん、またねー」 :  :  :(客先からの帰路) :  :  佐伯:「さっきの男と、仲良いの?」 来瑠:「あっ、久世君ですか? 仲良いですよ。 小学生のときに通ってた塾が一緒で、そこからの付き合いなんです」 佐伯:「てっきり、男はみんな苦手なのかと思ってたわ」 来瑠:「あー、久世君は特別なんです。 だって、久世君は――」 佐伯:「(来瑠に被せて)もういいわ。 さっさと帰りましょ」 来瑠:「えっ、あっ、はい……」 :  :  :(数日経過) :  :  佐伯:「来瑠ちゃん、ごめんなさい。 今日、時間取れる? この前行ったお客様のところのことで、話があるんだけど」 来瑠:「あっ、はい! 大丈夫です」 佐伯:「じゃあ、十八時半にビルの玄関で」 来瑠:「えっ、玄関ですか?」 :  :  佐伯:「ごめんなさいね、突然呼び出しちゃって」 来瑠:「いえ。 それであの……この前のお客様って、どこの――」 佐伯:「それは嘘。 謝りたいのもあって、二人っきりでお話したかったから、嘘をついちゃった」 来瑠:「えっ? 謝る? 佐伯課長が、ですか?」 佐伯:「そう。 この前行ったお客様のところでのこと。 来瑠ちゃんが私以外の男ともあんなに仲良く喋れるんだって思ったら、つい、イラっとしちゃって。 来瑠ちゃんは、あんな風な言い方する男を好きじゃないってわかってたのに、大人げなかったわ。 本当にごめんなさいね」 来瑠:「いえ! 課長のあれは……怖いとは思わなかったので、全然大丈夫です! むしろ、そのあと、休憩室に行っても課長に全然逢えなくて……その方がイヤだったので、今日、こうやってお話できて、嬉しいです」 佐伯:「……えっ、私と逢えなくて、寂しかったの?」 来瑠:「……寂しかったです。 何か怒らせちゃったのかな、プレゼンが終わったとはいえ、お客様先で、はしゃぎすぎて怒らせちゃったのかな、って、不安になってました」 佐伯:「そんなことで怒ったりしないわよ」 来瑠:「でも、出張とかでもないのに、急に逢えなくなったから……」 佐伯:「不安にさせちゃってたのね……ごめんなさい」 来瑠:「私こそ、すみません! ただの後輩なのに、こんなに面倒くさくて」 佐伯:「……じゃあ、ただの後輩、やめてみる?」 来瑠:「えっ?」 佐伯:「これ。 覚えてる?」 来瑠:「あっ、これ! 休憩室で、課長から初めてもらったチョコですよね」 佐伯:「そう。 チョコを頬張っているとき、初めて来瑠ちゃんが笑ってる顔を見たの。 その顔がかわいくてね……ついつい、その後も餌付けしちゃった」 来瑠:「餌付けって、なんですかー?」 佐伯:「餌付け、されてるでしょ?」 来瑠:「うっ」 佐伯:「その笑顔を、私だけしか知らない……少なくとも、男の中では私だけ、って、思っていたの。 けれども、あの日……久世君だっけ? 彼とも仲良さそうなのを見て、なーんだ、私だけじゃなかったのね、って思っちゃったの」 佐伯:「青木君たちとはもう少し打ち解けて欲しいって思っているのに、ちっちゃい男よねー」 来瑠:「そんな! 課長はかっこいいですよ……。 優しいし、安心できるし。 むしろ、頼ってばかりで……」 佐伯:「ふふっ。 ありがとう。 ……話が少し逸れちゃったわね。 来瑠ちゃん。 あなたの特別に、私をしてくれない?」 来瑠:「えっ? 特別に、する? どういうことですか?」 佐伯:「もう! 察しなさいよ! ……私と、お付き合いしてくれませんか?って、こと」 来瑠:「えっ! 佐伯課長って、男性が好きなんじゃ!」 佐伯:「誰も、男が好きだなんて言ってないでしょ! 私は、恋愛対象は女の子よ。 そもそも、かわいいものが好きなんだから。 あなたみたいな……ね?」 来瑠:「えっ、えっと……えー!」 佐伯:「はぁ……。 本当、厄介ね……もういいわ」 来瑠:「えっ! あっ、すみません……」 佐伯:「このチョコ、来瑠ちゃんにあげようと思ってたけど、他の女の子にあげることにするわ」 来瑠:「えっ……」 佐伯:「ん? どうしたの? 泣きそうな顔してるわよ?」 来瑠:「な、泣きそうになんて、なってないです」 佐伯:「私に逢えなくて、寂しかったんでしょ?」 来瑠:「それは……寂しかったです」 佐伯:「私とお話ししたかった?」 来瑠:「……したかったです」 佐伯:「じゃあ、これは?」 来瑠:「えっ? わっ!」 佐伯:「こうされるの、イヤ?」 来瑠:「イヤ、じゃない……です。でも、ドキドキしてます……」 佐伯:「ふふっ。 じゃあ、もうちょっとこうしててもいい?」 来瑠:「はい……」 :  :  :(少し間を置く) :  :  佐伯:「どう?」 来瑠:「えっ?」 佐伯:「ずっと抱きしめたままだから、聞いてみちゃった」 来瑠:「えっと……変なこと言っちゃうかもですけど」 佐伯:「どうぞ?」 来瑠:「ずっとこうしてて欲しいって思っちゃうくらい、安心できるというか、ここにいたいって言うか」 佐伯:「っ! ふふっ! そこは本当に素直なのね! ……もう、私のこと、好き!で、いいじゃない」 来瑠:「えっ?」 佐伯:「単純な話でしょ? ただの後輩はイヤ。 私に逢えなかったら寂しい。 他の女の子に優しくしているのもイヤ、なんでしょ?」 来瑠:「うっ」 佐伯:「まぁ、役職的にも、他の女の子に優しくしたり、物をあげるなーって言われたら困っちゃうんだけど」 来瑠:「それは……わかってます」 佐伯:「まぁ、ちょーっとだったら、かわいく拗ねてくれるのなら大歓迎なんだけど?」 来瑠:「う……」 佐伯:「ここにいたいんでしょ?」 来瑠:「……。」 佐伯:「ふふっ。 もう一度聞くわね。 私と、お付き合いしてくれませんか?」 来瑠:「……はい」 :  :  :(少し間を置く) :  :  佐伯:「それじゃあ、お付き合いの記念に二軒目行きましょうか!」 来瑠:「えっ、二軒目ですか? 私、お酒はあんまり好きじゃなくて……」 佐伯:「誰もお酒を飲もうなんて言ってないでしょ。 せっかくだから、甘いものなんて、どう? 最近できたホテルのビュッフェ、デザートコーナーが……ほら、見て! こーんなにかわいいの!」 佐伯:「まぁ、あなたさえ良かったら、そのままお泊りしてもいいんだけどね。 ……なーんて、冗談よ。 お付き合い初日からお泊ーー」 来瑠:「(佐伯の言葉に被せて)えっ? いいんですか? 実は気になってたんです! ここの女子会プラン! すっごくお部屋がかわいくて、アメニティもすっごく、すっごくかわいくてっ! 一緒に泊まってくれる人、探してたんです!」 佐伯:「女子会プラン?! ちょっ、さすがにホテルのフロントで私は女です! で、通るわけないでしょ」 来瑠:「大丈夫です! ここのホテルの総支配人、友達のお父さんなので、友達に頼んだら、全然いけます!」 佐伯:「なら、その友達とお泊りしなさい!」 来瑠:「オープン前に、イヤというほど、泊まらされたみたいで、死んでも二度と泊まりたくない! って、言ってて。 ちなみに、その子の彼氏、このホテルでプロポーズしようとしていたみたいで、友達にやり直しをさせられちゃったらしいんです」 佐伯:「まぁ、親の職場で……なんて、ちょっと恥ずかしいものね」 来瑠:「そうですよね。 まぁ、そのやり直しさせられたのが、久世君なんですけどね」 佐伯:「えっ? そこで久世君が出てくるの?」 来瑠:「ってことで、ちょっと電話して頼んでみますね」 佐伯:「ちょっと! 待ちなさーいっ!」 :  :  :――(上演終了)――

0:キャラクター名の変更、および、一人称、語尾等の変更は、演者様間でお話の上、ご自由に楽しんでいただければと思います。 0:なお、世界観、内容が変わるほどの変更やアドリブは、ご遠慮ください。 0:  0:(役紹介) 0:【佐伯】オネエ口調の佐伯(さえき)、強い口調の青木(あおき) 0:【来瑠】女子校育ちの大橋 来瑠(おおはし くる) 0:  :  :――(上演開始)―― :  :  佐伯:(青木)「おい、木島(きじま)! 何だよ、この資料! 昨日、後からメールした内容、抜けてないか。 ほら、これ! これも入れておかなきゃ、ダメだろ」 :(掛け合いのため、少し間を置く) 佐伯:(青木)「しっかりしろよ。 せっかく他が良くできてるんだから、これがなくて何か言われたらもったいないだろ。 後、大橋!」 来瑠:「あっ、はい!」 佐伯:(青木)「昨日頼んだヤツ、今日中にできるか?」 来瑠:「あっ、えっと……もうすぐ終わるので、その後、確認して、それから――」 佐伯:(青木)「だから、今日中に終わるのかって聞いてんの」 来瑠:「あっ、えっと、はい。 終わります……」 佐伯:(青木)「じゃあ、そう言えよ」 来瑠:「すみません」 佐伯:(青木)「別に怒ってるわけじゃないからな。 終わらないなら、他のヤツにも手伝わそうと思っただけで」 来瑠:「あっ、はい」 :  :  :(休憩スペースにて) :  :  来瑠:「はぁ……」 佐伯:「あら? 来瑠(くる)ちゃんじゃない? どうしたの? 溜息なんかついて」 来瑠:「あっ! 佐伯(さえき)課長、お疲れ様です!」 佐伯:「ふふっ。 おつかれさま。 で、どうしたの? 青木(あおき)君に何か言われちゃった?」 来瑠:「いえ。 その……、また聞かれたことにちゃんと答えられなくて。 何度もおんなじことを言わせちゃってて」 佐伯:「おんなじこと?」 来瑠:「イエスか、ノーかで答えられることなのに、パニックになっちゃって、グダグダ話しちゃって」 佐伯:「パニック? うーん。 あっ、他の仕事で頭がいっぱいのときに話しかけられちゃったとか?」 来瑠:「いえ……。 その、男の人の言い方というか、勢いが、慣れないというか、怖いというか」 佐伯:「あぁ。 青木君、テキパキしているけど、それが、口調にも反映されてるのもね。 でも、いい子よ?」 来瑠:「わかってます……困ったときにはフォローもしてくださいますし、ちょっとしたことも、ちゃんと気付いて褒めてくれるし」 佐伯:「なーんだ。 ちゃんと良いところも見れてるじゃない」 来瑠:「けど、いざ、仕事モードで話しかけられたら、ビクッてなっちゃって、ちゃんと返せなくて」 佐伯:「なるほどねー。 わかってても、身体が条件反射で動いちゃってるのねー。 でも、徐々にでいいから、慣れていって欲しいわ。 同じく部下を持つ身としては、信頼されてないのかしら、って不安になっちゃうもの」 来瑠:「ですよね……。 すみません」 佐伯:「もう……ほら、そんなに謝らないで! そうだ、ほら、これ、一つあげる」 来瑠:「……あっ、チョコ!」 佐伯:「そう! 甘いものでも食べて、元気出しなさい! あと、頭にちゃーんと糖分届けてあげないと、良いイメージが浮かばないわよ」 来瑠:「っ! はい! じゃあ、これいただきます!」 佐伯:「どうぞ」 来瑠:「わぁ、見た目もかわいい! んー! それに、おいしい……!」 佐伯:「でしょ? かわいすぎて、見つけて、ついつい買っちゃったの」 来瑠:「そして、さらに、おいしいです! しあわせー!」 佐伯:「ふふっ。 気に入ってもらえて良かったわ。 そういえば、私とは普通にお話できているわよね? 曲がりなりにも、私、男だし、上司なんだけど?」 来瑠:「えっ? あぁ……うーん、何ででしょう? 佐伯課長のことは、怖いって思ったことはなくて……なんか、頼れるお姉ちゃんって感じで。 って、すみません! 上司に対して失礼ですよね」 佐伯:「つまり、男として見られてない、ってことね?」 来瑠:「えっと……その、あの……」 佐伯:「ふふっ。 まぁいいわ。 ほら、そろそろ休憩はおしまい! デスクに帰りましょう」 来瑠:「はい! あっ、チョコ、ご馳走様です!」 佐伯:「はーい。 またね」 :  :  :(後日) :  :  来瑠:「えっ、佐伯課長と、ですか?」 佐伯:「そっ。 この資料作ったの、来瑠ちゃんなんでしょ? さすがに一つ一つの案件を全部は把握しきれないから、担当の子と一緒にお客様先を訪問することもあるの」 来瑠:「でも、それだったら、営業担当の人の方が。 私は資料作っただけですし」 佐伯:「この資料の内容に一番詳しいのは、営業担当なの?」 来瑠:「それは……私ですけど」 佐伯:「じゃあ、私と二人っきりでの出張がイヤ?」 来瑠:「それは! そんなことはないです。 他の人より、佐伯課長との方が安心できます!」 佐伯:「まっ、嬉しいこと言ってくれるじゃない! って、冗談はさて置き……お客様が資料を見てどう思うか、どういうところから見ていくのか、見た瞬間に出てくる率直な意見。 それは、営業の口から聞かされるのと、実際にお客様から聞くのとでは全然違う」 佐伯:「凄く勉強にもなるし、嬉しいものだから、来瑠ちゃんにも経験して欲しくてね。 男性のお客様も多いけど、私が一緒なら、落ち着けるだけの時間を作ってあげられるし、お客様ともお話してみない?」 来瑠:「佐伯課長……ありがとうございます! はい! ぜひ、同行させてください!」 :  :  :(出張 帰路) :  :  佐伯:「で、どうだった?」 来瑠:「凄く勉強になりました! 営業さんが、インパクトを重要視する理由も改めて実感できましたし、自分が作った資料が中心にいてお話が進んでいっているが……凄く嬉しかったです。 ちゃんと、その輪の中にいるんだ、一緒に作り上げてるんだって感じがして!」 佐伯:「そう。 それは良かったわ。 社内にいる子たちにたくさん助けてもらって、お仕事ができてる。 私たちの口から、出てきたお話を伝えることはできるけど、それだけじゃ伝えきれないものもある。 でも、それを知ってもらった方が、もっと素敵な資料や作品が作れると思ってね」 来瑠:「はい。 お客様にも褒めてもらえたの、嬉しかったです! それに、課長がラストの二ページをどうしてあんな風にしたいって言われたのか、わかりました。 一番右に座られていた女性のため、ですよね?」 佐伯:「あら、気付いちゃった?」 来瑠:「はい。 あの方だけ、最初の方のページには目もくれず、最後の方のページばかり熱心に読んでおられましたから」 佐伯:「正解。 あの人だけが、唯一、現場に近い人なの。 他は決定権を持つ、経営者層。 経営者層に気に入ってもらえれば、選ばれたも同然」 佐伯:「でも、実際に一番近く、一番長く接するのは現場の人たちだから。 そんな彼らにこそ安心できる、良いものだってイメージを持ってもらえるものにしたかった。 だから、来瑠ちゃんには、あんなお願いをしたってわけ」 来瑠:「はい! それに……私たちのことも考えてもらえてるんだな……って、わかって。 資料の説明するとき、頑張ったところとか気付いてもらって、さりげなくお客様にも伝えてもらえていたり」 佐伯:「ふふっ。 だって、一緒にしているお仕事なんだもの。 わかって欲しいじゃない?」 来瑠:「ありがとうございます」 佐伯:「じゃ、今日の経験を活かしつつ、これからも素敵な資料を期待しているわね」 来瑠:「はい! 頑張ります」 :  :  :(後日) :  :  来瑠:「佐伯課長との客先訪問も七回目ですね」 佐伯:「課長権限使って、来瑠ちゃんのこと引っ張り出してばっかりで、ダメな上司よねー」 来瑠:「えっ、私は嬉しいですよ。 佐伯課長と一緒にお仕事させてもらえるの! ランチもおいしいお店に連れて行って貰っちゃって、お得感満載です!」 佐伯:「ちょっと! ランチが目的なら、もうこれからは連れて行かないわよ!」 来瑠:「違いますよ! ランチも楽しいですけど、お客様の話が聞けるのも楽しいんです! ダメ出しみたいなこともされちゃったりもしますけど、どうしてそう思ったのかも聞けるので、次に繋げやすいんです」 佐伯:「そうね。 だんだんと資料の構成、レイアウトがよいものに……洗練されていっている。 次は、お客様毎に、どんな風にしたらより伝わるかを考えられるようになるといいわね」 来瑠:「はい! あと、それと……」 佐伯:「ん? それと?」 来瑠:「……プレゼンのときの佐伯課長がかっこよくて……凄いなぁって」 佐伯:「やだー、もう! 照れるじゃない。 ちょっと、来瑠ちゃんってそんなこと言っちゃえる子だったの? だめよー、私以外に言ったら! 本気にされちゃうわよ?」 来瑠:「本気に……? いえ、あの、お世辞とかじゃなくてですね!」 佐伯:「ほら、お客様先に着いたわよ。 気合入れ直しましょ!」 来瑠:「あっ、はい!」 :  :  :(プレゼン後 客先にて) :  :  来瑠:「えっ、久世(くぜ)君? びっくりした! まさか会えるとは思ってなくて、連絡もせずでごめんね」 :(掛け合いのため、少し間を置く) 来瑠:「私? 今日はプレゼンの付き添い。 あっ、こちら、上司で課長の佐伯さん」 佐伯:「初めまして。 佐伯と申します」 :(掛け合いのため、少し間を置く) 来瑠:「あっ、これから打ち合わせなんだ! ううん! ちょっとでも話せて良かった。 声かけてくれて、ありがとう! うん、またねー」 :  :  :(客先からの帰路) :  :  佐伯:「さっきの男と、仲良いの?」 来瑠:「あっ、久世君ですか? 仲良いですよ。 小学生のときに通ってた塾が一緒で、そこからの付き合いなんです」 佐伯:「てっきり、男はみんな苦手なのかと思ってたわ」 来瑠:「あー、久世君は特別なんです。 だって、久世君は――」 佐伯:「(来瑠に被せて)もういいわ。 さっさと帰りましょ」 来瑠:「えっ、あっ、はい……」 :  :  :(数日経過) :  :  佐伯:「来瑠ちゃん、ごめんなさい。 今日、時間取れる? この前行ったお客様のところのことで、話があるんだけど」 来瑠:「あっ、はい! 大丈夫です」 佐伯:「じゃあ、十八時半にビルの玄関で」 来瑠:「えっ、玄関ですか?」 :  :  佐伯:「ごめんなさいね、突然呼び出しちゃって」 来瑠:「いえ。 それであの……この前のお客様って、どこの――」 佐伯:「それは嘘。 謝りたいのもあって、二人っきりでお話したかったから、嘘をついちゃった」 来瑠:「えっ? 謝る? 佐伯課長が、ですか?」 佐伯:「そう。 この前行ったお客様のところでのこと。 来瑠ちゃんが私以外の男ともあんなに仲良く喋れるんだって思ったら、つい、イラっとしちゃって。 来瑠ちゃんは、あんな風な言い方する男を好きじゃないってわかってたのに、大人げなかったわ。 本当にごめんなさいね」 来瑠:「いえ! 課長のあれは……怖いとは思わなかったので、全然大丈夫です! むしろ、そのあと、休憩室に行っても課長に全然逢えなくて……その方がイヤだったので、今日、こうやってお話できて、嬉しいです」 佐伯:「……えっ、私と逢えなくて、寂しかったの?」 来瑠:「……寂しかったです。 何か怒らせちゃったのかな、プレゼンが終わったとはいえ、お客様先で、はしゃぎすぎて怒らせちゃったのかな、って、不安になってました」 佐伯:「そんなことで怒ったりしないわよ」 来瑠:「でも、出張とかでもないのに、急に逢えなくなったから……」 佐伯:「不安にさせちゃってたのね……ごめんなさい」 来瑠:「私こそ、すみません! ただの後輩なのに、こんなに面倒くさくて」 佐伯:「……じゃあ、ただの後輩、やめてみる?」 来瑠:「えっ?」 佐伯:「これ。 覚えてる?」 来瑠:「あっ、これ! 休憩室で、課長から初めてもらったチョコですよね」 佐伯:「そう。 チョコを頬張っているとき、初めて来瑠ちゃんが笑ってる顔を見たの。 その顔がかわいくてね……ついつい、その後も餌付けしちゃった」 来瑠:「餌付けって、なんですかー?」 佐伯:「餌付け、されてるでしょ?」 来瑠:「うっ」 佐伯:「その笑顔を、私だけしか知らない……少なくとも、男の中では私だけ、って、思っていたの。 けれども、あの日……久世君だっけ? 彼とも仲良さそうなのを見て、なーんだ、私だけじゃなかったのね、って思っちゃったの」 佐伯:「青木君たちとはもう少し打ち解けて欲しいって思っているのに、ちっちゃい男よねー」 来瑠:「そんな! 課長はかっこいいですよ……。 優しいし、安心できるし。 むしろ、頼ってばかりで……」 佐伯:「ふふっ。 ありがとう。 ……話が少し逸れちゃったわね。 来瑠ちゃん。 あなたの特別に、私をしてくれない?」 来瑠:「えっ? 特別に、する? どういうことですか?」 佐伯:「もう! 察しなさいよ! ……私と、お付き合いしてくれませんか?って、こと」 来瑠:「えっ! 佐伯課長って、男性が好きなんじゃ!」 佐伯:「誰も、男が好きだなんて言ってないでしょ! 私は、恋愛対象は女の子よ。 そもそも、かわいいものが好きなんだから。 あなたみたいな……ね?」 来瑠:「えっ、えっと……えー!」 佐伯:「はぁ……。 本当、厄介ね……もういいわ」 来瑠:「えっ! あっ、すみません……」 佐伯:「このチョコ、来瑠ちゃんにあげようと思ってたけど、他の女の子にあげることにするわ」 来瑠:「えっ……」 佐伯:「ん? どうしたの? 泣きそうな顔してるわよ?」 来瑠:「な、泣きそうになんて、なってないです」 佐伯:「私に逢えなくて、寂しかったんでしょ?」 来瑠:「それは……寂しかったです」 佐伯:「私とお話ししたかった?」 来瑠:「……したかったです」 佐伯:「じゃあ、これは?」 来瑠:「えっ? わっ!」 佐伯:「こうされるの、イヤ?」 来瑠:「イヤ、じゃない……です。でも、ドキドキしてます……」 佐伯:「ふふっ。 じゃあ、もうちょっとこうしててもいい?」 来瑠:「はい……」 :  :  :(少し間を置く) :  :  佐伯:「どう?」 来瑠:「えっ?」 佐伯:「ずっと抱きしめたままだから、聞いてみちゃった」 来瑠:「えっと……変なこと言っちゃうかもですけど」 佐伯:「どうぞ?」 来瑠:「ずっとこうしてて欲しいって思っちゃうくらい、安心できるというか、ここにいたいって言うか」 佐伯:「っ! ふふっ! そこは本当に素直なのね! ……もう、私のこと、好き!で、いいじゃない」 来瑠:「えっ?」 佐伯:「単純な話でしょ? ただの後輩はイヤ。 私に逢えなかったら寂しい。 他の女の子に優しくしているのもイヤ、なんでしょ?」 来瑠:「うっ」 佐伯:「まぁ、役職的にも、他の女の子に優しくしたり、物をあげるなーって言われたら困っちゃうんだけど」 来瑠:「それは……わかってます」 佐伯:「まぁ、ちょーっとだったら、かわいく拗ねてくれるのなら大歓迎なんだけど?」 来瑠:「う……」 佐伯:「ここにいたいんでしょ?」 来瑠:「……。」 佐伯:「ふふっ。 もう一度聞くわね。 私と、お付き合いしてくれませんか?」 来瑠:「……はい」 :  :  :(少し間を置く) :  :  佐伯:「それじゃあ、お付き合いの記念に二軒目行きましょうか!」 来瑠:「えっ、二軒目ですか? 私、お酒はあんまり好きじゃなくて……」 佐伯:「誰もお酒を飲もうなんて言ってないでしょ。 せっかくだから、甘いものなんて、どう? 最近できたホテルのビュッフェ、デザートコーナーが……ほら、見て! こーんなにかわいいの!」 佐伯:「まぁ、あなたさえ良かったら、そのままお泊りしてもいいんだけどね。 ……なーんて、冗談よ。 お付き合い初日からお泊ーー」 来瑠:「(佐伯の言葉に被せて)えっ? いいんですか? 実は気になってたんです! ここの女子会プラン! すっごくお部屋がかわいくて、アメニティもすっごく、すっごくかわいくてっ! 一緒に泊まってくれる人、探してたんです!」 佐伯:「女子会プラン?! ちょっ、さすがにホテルのフロントで私は女です! で、通るわけないでしょ」 来瑠:「大丈夫です! ここのホテルの総支配人、友達のお父さんなので、友達に頼んだら、全然いけます!」 佐伯:「なら、その友達とお泊りしなさい!」 来瑠:「オープン前に、イヤというほど、泊まらされたみたいで、死んでも二度と泊まりたくない! って、言ってて。 ちなみに、その子の彼氏、このホテルでプロポーズしようとしていたみたいで、友達にやり直しをさせられちゃったらしいんです」 佐伯:「まぁ、親の職場で……なんて、ちょっと恥ずかしいものね」 来瑠:「そうですよね。 まぁ、そのやり直しさせられたのが、久世君なんですけどね」 佐伯:「えっ? そこで久世君が出てくるの?」 来瑠:「ってことで、ちょっと電話して頼んでみますね」 佐伯:「ちょっと! 待ちなさーいっ!」 :  :  :――(上演終了)――