台本概要
293 views
タイトル | 魔女とカメラと高校生 |
---|---|
作者名 | てくす (@daihooon) |
ジャンル | ファンタジー |
演者人数 | 3人用台本(男1、女2) |
時間 | 20 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
魔女は殺せ。 疑わしきは、魔女の手先である。 殺せ。奴等は人を殺す。 殺される前に、殺せ。 魔女は死ぬ。首を刎ね、業火で焼き尽くせ。 293 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
優斗 | 男 | 67 | はまべ ゆうと。魔女の世界に足を踏み入れた。 |
ホイップ | 女 | 51 | ケーキの魔女。新しいSNSを始めるらしい。 |
ライカ | 女 | 47 | 射影の魔女。優斗の父と面識があるようだが…… |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
ホイップ:お!来たか、優斗
優斗:お待たせしました〜
ホイップ:よい、して例のブツは?
優斗:へへへっ、ちゃんとここに…
優斗:って密売か!
優斗:ほら、これでいいか?
ホイップ:ふむ、大丈夫じゃろ
優斗:それにしても、タイミング良かった
優斗:俺もカメラやってみようかなって考えてたし
ホイップ:料理はもういいのか?
優斗:目指せ!多趣味!
ホイップ:はぁ…、しかし、なぜ写真なんじゃ?
ホイップ:もっと色々あるだろうに
優斗:あー、そっか言ってなかったな
優斗:俺の両親…というか父親が写真家なんだよ
優斗:だからあんまり家いないし
優斗:料理も自炊兼ねて始めたって感じだな
ホイップ:親の才能が子に受け継がれるとは限らんぞ?
優斗:俺もそこまで思ってねーよ
優斗:ただ…
ホイップ:ただ?
優斗:友達と遊んだ時とかに綺麗な写真撮れたら…
優斗:モテるかもしんないじゃん…(ボソッ)
ホイップ:なんじゃそれ、煩悩の塊じゃな
優斗:う、う、うるせー!
ホイップ:ほほぅ、するとつまりは
ホイップ:優斗は結衣が好きなんじゃな?
優斗:はぁ!?べ、べ、別に好きじゃないし
優斗:なんで町田さんが出てくるんだよ!
ホイップ:数少ない友達じゃろー?
優斗:いるし!まだたくさん、い〜ま〜す〜!
優斗:…って、そんなことより何でカメラが必要なんだ?
ホイップ:結衣と話しておったの聞いとらんかったか?
ホイップ:近々別のSNSを始めるから、それ用じゃ
優斗:なるほど…
優斗:美味しく撮れるように頑張ります!
ホイップ:うむ!期待してやろう
ホイップ:……?なんじゃ?
優斗:え?
ホイップ:そのカメラ、もう一度構えろ
優斗:え?こうか?
ホイップ:魔力反応?…まさか…
ホイップ:優斗、このカメラは誰のだ?
優斗:親父のやつだけど…
優斗:そういえば聞いたことあるな
優斗:このカメラで撮ると凄い写真が撮れるって
ホイップ:十中八九、魔女の力が加わっとる
優斗:っ……確か……親父が子どもの頃
優斗:これを誰かに貰って、撮った写真が評価されて
優斗:写真家を目指したって…
優斗:子どもの頃は、それでいいと思ってたけど
優斗:大人になって自分の実力じゃない気がしたって
優斗:だからこのカメラは使ってないって
優斗:そう言ってた…
優斗:……っ!違う!親父は実力で今の仕事を!
ホイップ:わかっておる、大丈夫じゃ
ホイップ:となるとコレを渡した奴は
ライカ:あら、察しがいいじゃない?
ホイップ:!?…やはり貴様か!ライカ!
優斗:ライカ…?
ライカ:はじめまして、優斗くん?かな
ライカ:私は射影の魔女
ライカ:人間名は宇津志 來花(つうし らいか)
ライカ:魔法名も、そのままライカよ
ライカ:貴方のお父さんにそのカメラを渡したのは
ライカ:ちょうど40年くらい前かしら
ライカ:久しぶりに私の射影石に反応があったから
ライカ:……来ちゃった♡
ホイップ:来ちゃった、じゃと!?
ホイップ:そうやって昔から不用意に人間に近づきおって!
ライカ:あら?貴女も不用意でしょ?
優斗:ちょ、ちょっとホイップ!
優斗:どうしたんだよ!言い方キツいし
優斗:レピオスさんの時と全然…
ライカ:あら、レピオスとも会ったのね
ライカ:いいわ、教えてあげる
ライカ:私ね、ホイップと仲が悪いのよ
優斗:え?
ホイップ:此奴は昔からそうなんじゃ
ホイップ:覚えとるか?レピオスがお前に言ったこと
ホイップ:魔女にはルールがある
ホイップ:それを悪びれるもなく破る!
優斗:もしかして親父が言ってた写真って
ホイップ:全部魔法石の力じゃ
ライカ:けど残念ね、全然使ってくれないんだもの
優斗:射影石の効果って…?
ライカ:ホイップ達のような手助けなら
ライカ:手ブレ補正やピント調整なんかを
ライカ:機械じゃできないもっと精密な調整をかけるのよ
ライカ:まぁ、それはいつもしてるわ、新作のカメラが出る度にね
ホイップ:それだけじゃないだろ!
ホイップ:人間には過ぎたる力を与えておろう!
優斗:親父が言うように、このカメラで撮れば
優斗:人では撮れないような写真が撮れる…
優斗:技術だけじゃなくて、心を動かすような
ライカ:悪くないでしょ?
優斗:確かにそんな魔法のカメラ
優斗:誰でも欲しくなる…
ホイップ:優斗…!
優斗:でも
優斗:過ぎた力は人を、世界を狂わせる!
優斗:それはレピオスさんからも聞いた!
ライカ:人間のくせに欲がないのかしら?
ライカ:…アハハハ!私の方が欲深いかも
優斗:……なんの話ですか?
ライカ:教えてあげようかしら?
ライカ:魔女のこと、魔女の世界のこと
優斗:魔女の世界…?
ホイップ:やめろ!優斗は人間だ!
ホイップ:私たちの話はよせ!
ライカ:引き入れたのは貴女でしょ?
ライカ:こうなることは予想できた、そうでしょ?
ホイップ:ッ…!
優斗:ホイップ…俺は大丈夫だ
ライカ:私はね、好きに生きたいのよ
ライカ:聞いたことないかしら?魔女狩りや魔女裁判
ライカ:なんて言葉を
優斗:昔、外国で行われてたって…
ライカ:そう、けど何も外国の話ではなく
ライカ:そういう言葉を使わなかっただけで
ライカ:どこでもあったものなのよ
ホイップ:じゃから私たちはルールを決めた
ホイップ:過剰に力を貸せば、私たちが魔女だと知られ
ホイップ:殺されてしまうからな
ライカ:あの頃は酷かったわよね
ライカ:あれこそ本当の地獄だわ
ホイップ:魔女だけじゃなく普通の人間まで…な
優斗:ど、どうして…
ライカ:見分けがつかないからよ
ライカ:疑わしきは罰すって感じかしら
ライカ:だから最初にルールを作ったのは私たちのため
ライカ:私たちが魔女だとバレないように隠れるため
優斗:けどそうまでして何で人間に力を貸すんだ?
優斗:嫌になるだろ…普通…
ホイップ:好きじゃからだよ
ホイップ:それでも私たちは人間が好きだから
ライカ:それが魔女の因子なのか
ライカ:何があっても私たちは人間を愛している
ライカ:だけど…私はそれだけじゃ嫌なの
優斗:え?
ライカ:どうせ死ぬなら好きなことをして死にたい
ライカ:そう思わない?
ライカ:私たちの世界を狂わせたのは人間
ライカ:なら、人間の世界を狂わせていいのは魔女
ライカ:そうじゃない?
優斗:…そ、それは…
ホイップ:過剰な手出しをしなければ
ホイップ:人間は何もせんじゃろ!
ホイップ:それを何故、貴様は!
ライカ:私も貴女も一度、
殺されているのに
ライカ:よくもまぁそんなことが言えるよね
優斗:殺され…え?…ホイップ?
ホイップ:…そうじゃ…
ライカ:"魔女は不老にして死を超える"
ライカ:ここからは魔女の出生の話ね
優斗:不老にして死を超える…?
優斗:なんなんだよ!なんの話だよ!
ライカ:魔女の世界に足を踏み入れた
ライカ:俺は勉強も運動も得意じゃないし
ライカ:特技ってものも全然なくて
ライカ:それでも何か力になれるなら手伝います!
ライカ:かな?
優斗:…は?なんで?
優斗:なんなんだ!お前!
ホイップ:魔法じゃ…記憶を覗く魔法
ライカ:カメラってその風景を閉じ込めるでしょ?
ライカ:だから記憶とか思い出とか
ライカ:それを見たりするの…得意なの
優斗:なんでそんなこと…
ホイップ:無駄じゃ
ホイップ:一度かけられたら解けん
ホイップ:けどな…
ホイップ:変な魔力反応を見せたらすぐに分かる
ホイップ:優斗に手を出すなら私が守る!
優斗:ホイップ…
ライカ:あらあら
ライカ:本当に仲が良くて羨ましい
ライカ:けどこの話を聞いて…まだ
ライカ:仲良しごっこが続けられるかしら?
優斗:俺はホイップを信じる!
優斗:過去に何があっても、絶対!
ライカ:フフフ
ライカ:魔女はね、死んでも蘇るのよ
ライカ:魔女の木からまた産み落とされる
ライカ:それが死を超える意味
優斗:産み落とされる…?
ライカ:不老の意味は産み落とされたらそのまま
ライカ:姿が変わることなく、歳を取ることもないの
ライカ:ホイップが小さい子どもに見えるのも
ライカ:それはそうやって産まれたから
優斗:そうだったのか…
ホイップ:成人しとるのは本当じゃ
ホイップ:生まれ落ち、20年以上経っとるからな
ホイップ:お前の言うロリは心外じゃからな
優斗:それは…ごめんなさい
ホイップ:フン!
ライカ:冗談を言うくらいには、まだ大丈夫なのね
ライカ:続けていいかしら?
ライカ:ただ、不都合もあって
ライカ:生前の記憶が引き継がれるか身体はどんな物か
ライカ:それは運次第ってことね
ライカ:さらに言えば、不老ってだけで不死じゃない
ライカ:だから首を斬られれば、全身を焼かれれば
ライカ:痛みだってある
優斗:もしかして魔女狩りって…それを?
ホイップ:正解じゃ
優斗:そんな酷いことを…
ライカ:人智を超えた力を昔は惜しみなく使う
ライカ:魔女も少なくなかったからね
ライカ:人間は臆病なのよ
ホイップ:だからこそ二度とあんなことが起きぬよう
ホイップ:私たちはルールを作った
ライカ:だけど人間は何をするかわからないわ
ライカ:どうせ殺されるなら好きに生きたい
ライカ:それは間違ってるかしら?
優斗:それは…わかりません
優斗:だけど、ホイップ達が間違ってるとも思わない
ライカ:ええ、そうね
ライカ:だから私はホイップと仲が悪いのよ
ライカ:意見の相違ってやつね
ホイップ:じゃからと無闇に魔法をばら撒くのは間違っとる!
ライカ:私なんて可愛いものじゃない
ライカ:その気になれば魔女は皆
ライカ:人間を支配するなんて簡単なのに
優斗:人間を支配!?どういうこと?
ライカ:ケーキの魔女なんて可愛いこと謳っても
ライカ:使える魔法は結構、酷いものよ?
ライカ:ね?ホイップ
ホイップ:それ…は…
優斗:だからって使わなければいい話だろ?
優斗:現にホイップは店を繁盛させてるだけで
ライカ:それもそうだけど
ライカ:本来のホイップは糖質コントロール
ライカ:知ってる?砂糖って甘くて美味しいけど
ライカ:依存性も毒も全て兼ね備えてるわ
優斗:確かに…病気になったりはわかるけど
優斗:それが…あ…まさか…
ライカ:察しがいいじゃない
ライカ:世の店の全ての糖質をコントロールしたら
ライカ:人間なんてどうなるかしら?
ライカ:私の魔法だってそう
ライカ:ただ奇跡的な写真を撮れるようにしてるだけ
ライカ:本来であれば…そうね、聞いたことないかしら?
ライカ:見ると死ぬ絵とかそういうの
優斗:都市伝説とかであるやつか
優斗:ネットで見たことはあるけど
ライカ:それを現実にすることができる
ライカ:簡単よ、そういう魔法を使えばいい
優斗:な…!?
ライカ:昔からの迷信、知ってるかしら?
ライカ:写真を撮ると魂を抜かれる
ライカ:あながち間違いじゃないわ
優斗:その気になれば…
優斗:魔女は人を…
ライカ:ええ
ホイップ:じゃが、そんなことはしない
ホイップ:私たちは絶対に
ライカ:そう、言うなれば穏健派ってとこかしらね
ライカ:私だってそんな魔法は使わないわ
優斗:だったら人間に害を与えず、ホイップ達と同じように
優斗:手助けするだけじゃだめなのか?
ライカ:綺麗な写真が撮れるカメラくらい
ライカ:私は許してほしいってだけよ
ライカ:害を成す魔法を使ってるわけじゃない
ライカ:ホイップ達が心配しているのは魔法の存在が
ライカ:知られること、よね?
ホイップ:…あぁ
ライカ:私は、人間が嫌いなわけじゃない
ライカ:だけどね?
ライカ:私は記憶を引き継いで、また産まれた側の魔女
ライカ:だからかな、少しくらい好きに生きたい
ライカ:魔女なんだし魔法を使いたいって思うの
ライカ:ダメかしら?
優斗:俺は…ライカさんが間違ってるとは
優斗:…思えません
ホイップ:優斗!?
優斗:だけど、ホイップ達みたいな魔女もいる
優斗:だから、お互いに
優斗:ライカさんとホイップも
優斗:人間も魔女も仲良くできるのが一番いいって
優斗:俺はそんな綺麗事しか言えません
ホイップ:その綺麗事が魔女を救う、本来ならの
ホイップ:みんなそう思ってくれたなら
ライカ:人間も魔女も…ね
ライカ:魔女の世界に足を踏み入れるということ
ライカ:少しはわかってくれたかしら?
優斗:今までは何も思わなかった
優斗:けど魔女には魔女の想いもある
優斗:俺はホイップには悪いけど
優斗:ライカさんの気持ちもわかる気がするから
優斗:やっぱり綺麗事しか言えません
優斗:だけど俺が好きなのはホイップ達なんで
優斗:無闇に魔法をばら撒くのは賛成しません
ホイップ:優斗…
優斗:それがもしかしたらホイップ達の
優斗:魔女の不利益になるかもしれないから
ライカ:そう、それでいいわ
ライカ:それと、もうカメラの魔法石の効力はないから
ライカ:使っても大丈夫よ
優斗:え?
ライカ:ホイップと喧嘩になっても面倒だからね
ホイップ:珍しいな、そんなすぐに引くとは
ライカ:喧嘩がしたいわけじゃないもの
ライカ:ていうか、喧嘩腰なのはいつも貴女の方よ
ホイップ:フン!
ライカ:ただ、一つだけ
ライカ:これだけは忠告するわ
優斗:なんですか?
ライカ:魔女はどこにでもいる
ライカ:さっき言った穏健派も、そうじゃない過激派も
優斗:過激派…
ライカ:人が人を傷つける道具っていっぱいあるでしょ?
ライカ:それにも魔女の力が加わってるかもね?
ライカ:その意味、わかるからしら?
優斗:…人が人を傷つける道具…
ホイップ:大丈夫じゃ、何があっても私が守る
ホイップ:それが引き入れた私の責任だ
優斗:ホイップ…そこまで考えてくれてたんだな
ライカ:ま、私が言いたいのは
ライカ:自分の身や大切な人のことは自分でも守らなきゃね
ライカ:けどホイップを守ろうとする貴方はカッコよかったわ
優斗:な!いや!別に俺は!
ライカ:じゃあね
優斗:!?消えた…
ホイップ:魔女じゃからな
優斗:…ホイップ
ホイップ:わかっとる
優斗:俺、多分甘く考えてた
優斗:魔女のこともその世界のことも
ホイップ:仕方ない、そういうもんじゃ
優斗:けど!さっきの言葉に嘘はないから
優斗:俺もホイップを守りたい
優斗:ホイップは優しい魔女だって知ってるから
ホイップ:優斗…
ホイップ:なんじゃ!急に!調子狂う!
優斗:まぁ、見た目は幼女だから
優斗:大人な俺が身守んないとダメだろ?
ホイップ:最後の最後にぶっ込みやがって!
優斗:(どんな過去があっても、どんな想いがあっても
優斗:多分俺たちは俺たちの関わり方があるはずだから)
ホイップ:ヘタレ!
優斗:合法ロリ!
優斗:(今はこれでいいと、そう思う)
0:【終わり】
ホイップ:お!来たか、優斗
優斗:お待たせしました〜
ホイップ:よい、して例のブツは?
優斗:へへへっ、ちゃんとここに…
優斗:って密売か!
優斗:ほら、これでいいか?
ホイップ:ふむ、大丈夫じゃろ
優斗:それにしても、タイミング良かった
優斗:俺もカメラやってみようかなって考えてたし
ホイップ:料理はもういいのか?
優斗:目指せ!多趣味!
ホイップ:はぁ…、しかし、なぜ写真なんじゃ?
ホイップ:もっと色々あるだろうに
優斗:あー、そっか言ってなかったな
優斗:俺の両親…というか父親が写真家なんだよ
優斗:だからあんまり家いないし
優斗:料理も自炊兼ねて始めたって感じだな
ホイップ:親の才能が子に受け継がれるとは限らんぞ?
優斗:俺もそこまで思ってねーよ
優斗:ただ…
ホイップ:ただ?
優斗:友達と遊んだ時とかに綺麗な写真撮れたら…
優斗:モテるかもしんないじゃん…(ボソッ)
ホイップ:なんじゃそれ、煩悩の塊じゃな
優斗:う、う、うるせー!
ホイップ:ほほぅ、するとつまりは
ホイップ:優斗は結衣が好きなんじゃな?
優斗:はぁ!?べ、べ、別に好きじゃないし
優斗:なんで町田さんが出てくるんだよ!
ホイップ:数少ない友達じゃろー?
優斗:いるし!まだたくさん、い〜ま〜す〜!
優斗:…って、そんなことより何でカメラが必要なんだ?
ホイップ:結衣と話しておったの聞いとらんかったか?
ホイップ:近々別のSNSを始めるから、それ用じゃ
優斗:なるほど…
優斗:美味しく撮れるように頑張ります!
ホイップ:うむ!期待してやろう
ホイップ:……?なんじゃ?
優斗:え?
ホイップ:そのカメラ、もう一度構えろ
優斗:え?こうか?
ホイップ:魔力反応?…まさか…
ホイップ:優斗、このカメラは誰のだ?
優斗:親父のやつだけど…
優斗:そういえば聞いたことあるな
優斗:このカメラで撮ると凄い写真が撮れるって
ホイップ:十中八九、魔女の力が加わっとる
優斗:っ……確か……親父が子どもの頃
優斗:これを誰かに貰って、撮った写真が評価されて
優斗:写真家を目指したって…
優斗:子どもの頃は、それでいいと思ってたけど
優斗:大人になって自分の実力じゃない気がしたって
優斗:だからこのカメラは使ってないって
優斗:そう言ってた…
優斗:……っ!違う!親父は実力で今の仕事を!
ホイップ:わかっておる、大丈夫じゃ
ホイップ:となるとコレを渡した奴は
ライカ:あら、察しがいいじゃない?
ホイップ:!?…やはり貴様か!ライカ!
優斗:ライカ…?
ライカ:はじめまして、優斗くん?かな
ライカ:私は射影の魔女
ライカ:人間名は宇津志 來花(つうし らいか)
ライカ:魔法名も、そのままライカよ
ライカ:貴方のお父さんにそのカメラを渡したのは
ライカ:ちょうど40年くらい前かしら
ライカ:久しぶりに私の射影石に反応があったから
ライカ:……来ちゃった♡
ホイップ:来ちゃった、じゃと!?
ホイップ:そうやって昔から不用意に人間に近づきおって!
ライカ:あら?貴女も不用意でしょ?
優斗:ちょ、ちょっとホイップ!
優斗:どうしたんだよ!言い方キツいし
優斗:レピオスさんの時と全然…
ライカ:あら、レピオスとも会ったのね
ライカ:いいわ、教えてあげる
ライカ:私ね、ホイップと仲が悪いのよ
優斗:え?
ホイップ:此奴は昔からそうなんじゃ
ホイップ:覚えとるか?レピオスがお前に言ったこと
ホイップ:魔女にはルールがある
ホイップ:それを悪びれるもなく破る!
優斗:もしかして親父が言ってた写真って
ホイップ:全部魔法石の力じゃ
ライカ:けど残念ね、全然使ってくれないんだもの
優斗:射影石の効果って…?
ライカ:ホイップ達のような手助けなら
ライカ:手ブレ補正やピント調整なんかを
ライカ:機械じゃできないもっと精密な調整をかけるのよ
ライカ:まぁ、それはいつもしてるわ、新作のカメラが出る度にね
ホイップ:それだけじゃないだろ!
ホイップ:人間には過ぎたる力を与えておろう!
優斗:親父が言うように、このカメラで撮れば
優斗:人では撮れないような写真が撮れる…
優斗:技術だけじゃなくて、心を動かすような
ライカ:悪くないでしょ?
優斗:確かにそんな魔法のカメラ
優斗:誰でも欲しくなる…
ホイップ:優斗…!
優斗:でも
優斗:過ぎた力は人を、世界を狂わせる!
優斗:それはレピオスさんからも聞いた!
ライカ:人間のくせに欲がないのかしら?
ライカ:…アハハハ!私の方が欲深いかも
優斗:……なんの話ですか?
ライカ:教えてあげようかしら?
ライカ:魔女のこと、魔女の世界のこと
優斗:魔女の世界…?
ホイップ:やめろ!優斗は人間だ!
ホイップ:私たちの話はよせ!
ライカ:引き入れたのは貴女でしょ?
ライカ:こうなることは予想できた、そうでしょ?
ホイップ:ッ…!
優斗:ホイップ…俺は大丈夫だ
ライカ:私はね、好きに生きたいのよ
ライカ:聞いたことないかしら?魔女狩りや魔女裁判
ライカ:なんて言葉を
優斗:昔、外国で行われてたって…
ライカ:そう、けど何も外国の話ではなく
ライカ:そういう言葉を使わなかっただけで
ライカ:どこでもあったものなのよ
ホイップ:じゃから私たちはルールを決めた
ホイップ:過剰に力を貸せば、私たちが魔女だと知られ
ホイップ:殺されてしまうからな
ライカ:あの頃は酷かったわよね
ライカ:あれこそ本当の地獄だわ
ホイップ:魔女だけじゃなく普通の人間まで…な
優斗:ど、どうして…
ライカ:見分けがつかないからよ
ライカ:疑わしきは罰すって感じかしら
ライカ:だから最初にルールを作ったのは私たちのため
ライカ:私たちが魔女だとバレないように隠れるため
優斗:けどそうまでして何で人間に力を貸すんだ?
優斗:嫌になるだろ…普通…
ホイップ:好きじゃからだよ
ホイップ:それでも私たちは人間が好きだから
ライカ:それが魔女の因子なのか
ライカ:何があっても私たちは人間を愛している
ライカ:だけど…私はそれだけじゃ嫌なの
優斗:え?
ライカ:どうせ死ぬなら好きなことをして死にたい
ライカ:そう思わない?
ライカ:私たちの世界を狂わせたのは人間
ライカ:なら、人間の世界を狂わせていいのは魔女
ライカ:そうじゃない?
優斗:…そ、それは…
ホイップ:過剰な手出しをしなければ
ホイップ:人間は何もせんじゃろ!
ホイップ:それを何故、貴様は!
ライカ:私も貴女も一度、
殺されているのに
ライカ:よくもまぁそんなことが言えるよね
優斗:殺され…え?…ホイップ?
ホイップ:…そうじゃ…
ライカ:"魔女は不老にして死を超える"
ライカ:ここからは魔女の出生の話ね
優斗:不老にして死を超える…?
優斗:なんなんだよ!なんの話だよ!
ライカ:魔女の世界に足を踏み入れた
ライカ:俺は勉強も運動も得意じゃないし
ライカ:特技ってものも全然なくて
ライカ:それでも何か力になれるなら手伝います!
ライカ:かな?
優斗:…は?なんで?
優斗:なんなんだ!お前!
ホイップ:魔法じゃ…記憶を覗く魔法
ライカ:カメラってその風景を閉じ込めるでしょ?
ライカ:だから記憶とか思い出とか
ライカ:それを見たりするの…得意なの
優斗:なんでそんなこと…
ホイップ:無駄じゃ
ホイップ:一度かけられたら解けん
ホイップ:けどな…
ホイップ:変な魔力反応を見せたらすぐに分かる
ホイップ:優斗に手を出すなら私が守る!
優斗:ホイップ…
ライカ:あらあら
ライカ:本当に仲が良くて羨ましい
ライカ:けどこの話を聞いて…まだ
ライカ:仲良しごっこが続けられるかしら?
優斗:俺はホイップを信じる!
優斗:過去に何があっても、絶対!
ライカ:フフフ
ライカ:魔女はね、死んでも蘇るのよ
ライカ:魔女の木からまた産み落とされる
ライカ:それが死を超える意味
優斗:産み落とされる…?
ライカ:不老の意味は産み落とされたらそのまま
ライカ:姿が変わることなく、歳を取ることもないの
ライカ:ホイップが小さい子どもに見えるのも
ライカ:それはそうやって産まれたから
優斗:そうだったのか…
ホイップ:成人しとるのは本当じゃ
ホイップ:生まれ落ち、20年以上経っとるからな
ホイップ:お前の言うロリは心外じゃからな
優斗:それは…ごめんなさい
ホイップ:フン!
ライカ:冗談を言うくらいには、まだ大丈夫なのね
ライカ:続けていいかしら?
ライカ:ただ、不都合もあって
ライカ:生前の記憶が引き継がれるか身体はどんな物か
ライカ:それは運次第ってことね
ライカ:さらに言えば、不老ってだけで不死じゃない
ライカ:だから首を斬られれば、全身を焼かれれば
ライカ:痛みだってある
優斗:もしかして魔女狩りって…それを?
ホイップ:正解じゃ
優斗:そんな酷いことを…
ライカ:人智を超えた力を昔は惜しみなく使う
ライカ:魔女も少なくなかったからね
ライカ:人間は臆病なのよ
ホイップ:だからこそ二度とあんなことが起きぬよう
ホイップ:私たちはルールを作った
ライカ:だけど人間は何をするかわからないわ
ライカ:どうせ殺されるなら好きに生きたい
ライカ:それは間違ってるかしら?
優斗:それは…わかりません
優斗:だけど、ホイップ達が間違ってるとも思わない
ライカ:ええ、そうね
ライカ:だから私はホイップと仲が悪いのよ
ライカ:意見の相違ってやつね
ホイップ:じゃからと無闇に魔法をばら撒くのは間違っとる!
ライカ:私なんて可愛いものじゃない
ライカ:その気になれば魔女は皆
ライカ:人間を支配するなんて簡単なのに
優斗:人間を支配!?どういうこと?
ライカ:ケーキの魔女なんて可愛いこと謳っても
ライカ:使える魔法は結構、酷いものよ?
ライカ:ね?ホイップ
ホイップ:それ…は…
優斗:だからって使わなければいい話だろ?
優斗:現にホイップは店を繁盛させてるだけで
ライカ:それもそうだけど
ライカ:本来のホイップは糖質コントロール
ライカ:知ってる?砂糖って甘くて美味しいけど
ライカ:依存性も毒も全て兼ね備えてるわ
優斗:確かに…病気になったりはわかるけど
優斗:それが…あ…まさか…
ライカ:察しがいいじゃない
ライカ:世の店の全ての糖質をコントロールしたら
ライカ:人間なんてどうなるかしら?
ライカ:私の魔法だってそう
ライカ:ただ奇跡的な写真を撮れるようにしてるだけ
ライカ:本来であれば…そうね、聞いたことないかしら?
ライカ:見ると死ぬ絵とかそういうの
優斗:都市伝説とかであるやつか
優斗:ネットで見たことはあるけど
ライカ:それを現実にすることができる
ライカ:簡単よ、そういう魔法を使えばいい
優斗:な…!?
ライカ:昔からの迷信、知ってるかしら?
ライカ:写真を撮ると魂を抜かれる
ライカ:あながち間違いじゃないわ
優斗:その気になれば…
優斗:魔女は人を…
ライカ:ええ
ホイップ:じゃが、そんなことはしない
ホイップ:私たちは絶対に
ライカ:そう、言うなれば穏健派ってとこかしらね
ライカ:私だってそんな魔法は使わないわ
優斗:だったら人間に害を与えず、ホイップ達と同じように
優斗:手助けするだけじゃだめなのか?
ライカ:綺麗な写真が撮れるカメラくらい
ライカ:私は許してほしいってだけよ
ライカ:害を成す魔法を使ってるわけじゃない
ライカ:ホイップ達が心配しているのは魔法の存在が
ライカ:知られること、よね?
ホイップ:…あぁ
ライカ:私は、人間が嫌いなわけじゃない
ライカ:だけどね?
ライカ:私は記憶を引き継いで、また産まれた側の魔女
ライカ:だからかな、少しくらい好きに生きたい
ライカ:魔女なんだし魔法を使いたいって思うの
ライカ:ダメかしら?
優斗:俺は…ライカさんが間違ってるとは
優斗:…思えません
ホイップ:優斗!?
優斗:だけど、ホイップ達みたいな魔女もいる
優斗:だから、お互いに
優斗:ライカさんとホイップも
優斗:人間も魔女も仲良くできるのが一番いいって
優斗:俺はそんな綺麗事しか言えません
ホイップ:その綺麗事が魔女を救う、本来ならの
ホイップ:みんなそう思ってくれたなら
ライカ:人間も魔女も…ね
ライカ:魔女の世界に足を踏み入れるということ
ライカ:少しはわかってくれたかしら?
優斗:今までは何も思わなかった
優斗:けど魔女には魔女の想いもある
優斗:俺はホイップには悪いけど
優斗:ライカさんの気持ちもわかる気がするから
優斗:やっぱり綺麗事しか言えません
優斗:だけど俺が好きなのはホイップ達なんで
優斗:無闇に魔法をばら撒くのは賛成しません
ホイップ:優斗…
優斗:それがもしかしたらホイップ達の
優斗:魔女の不利益になるかもしれないから
ライカ:そう、それでいいわ
ライカ:それと、もうカメラの魔法石の効力はないから
ライカ:使っても大丈夫よ
優斗:え?
ライカ:ホイップと喧嘩になっても面倒だからね
ホイップ:珍しいな、そんなすぐに引くとは
ライカ:喧嘩がしたいわけじゃないもの
ライカ:ていうか、喧嘩腰なのはいつも貴女の方よ
ホイップ:フン!
ライカ:ただ、一つだけ
ライカ:これだけは忠告するわ
優斗:なんですか?
ライカ:魔女はどこにでもいる
ライカ:さっき言った穏健派も、そうじゃない過激派も
優斗:過激派…
ライカ:人が人を傷つける道具っていっぱいあるでしょ?
ライカ:それにも魔女の力が加わってるかもね?
ライカ:その意味、わかるからしら?
優斗:…人が人を傷つける道具…
ホイップ:大丈夫じゃ、何があっても私が守る
ホイップ:それが引き入れた私の責任だ
優斗:ホイップ…そこまで考えてくれてたんだな
ライカ:ま、私が言いたいのは
ライカ:自分の身や大切な人のことは自分でも守らなきゃね
ライカ:けどホイップを守ろうとする貴方はカッコよかったわ
優斗:な!いや!別に俺は!
ライカ:じゃあね
優斗:!?消えた…
ホイップ:魔女じゃからな
優斗:…ホイップ
ホイップ:わかっとる
優斗:俺、多分甘く考えてた
優斗:魔女のこともその世界のことも
ホイップ:仕方ない、そういうもんじゃ
優斗:けど!さっきの言葉に嘘はないから
優斗:俺もホイップを守りたい
優斗:ホイップは優しい魔女だって知ってるから
ホイップ:優斗…
ホイップ:なんじゃ!急に!調子狂う!
優斗:まぁ、見た目は幼女だから
優斗:大人な俺が身守んないとダメだろ?
ホイップ:最後の最後にぶっ込みやがって!
優斗:(どんな過去があっても、どんな想いがあっても
優斗:多分俺たちは俺たちの関わり方があるはずだから)
ホイップ:ヘタレ!
優斗:合法ロリ!
優斗:(今はこれでいいと、そう思う)
0:【終わり】