台本概要

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タイトル 吸血鬼が眠る日
作者名 カタギリ  (@Kata_giriV)
ジャンル ラブストーリー
演者人数 2人用台本(男1、女1)
時間 30 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 閲覧ありがとうございます。
商用、非商用問わず作者への連絡不要ですが、ご利用の際はXなどで呟いていただけるととても嬉しいです。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
エリザ 90 エリザ 異国の少女。色白の肌と真紅の瞳を持つ事から吸血鬼と呼ばれてしまう。責任感が強い。育ちは良さそう。
十四郎 92 十四郎 (とうしろう) 港町の治安維持部隊の一人。相当な剣の腕前の持ち主。飄々とした感じだが、決めるところは決める。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

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タイトル:吸血鬼が眠る日 登場人物:エリザ 異国の少女。色白の肌と真紅の瞳を持つ事から吸血鬼と呼ばれてしまう。責任感が強い。育ちは良さそう。 登場人物:十四郎 (とうしろう) 港町の治安維持部隊の一人。相当な剣の腕前の持ち主。飄々とした感じだが、決めるところは決める。 あらすじ:港町の治安維持部隊に所属する十四郎は任務で異国の少女エリザを救い出す。そこからはじまる二人の心の交流を綴る物語。 本編: エリザ:(たとえ貴方が暗闇で迷ってしまっても、私が隣で照らし続けるから。) エリザ:『吸血鬼が眠る日』 十四郎:(俺とエリザが出逢ったのは5年前の港町の廃屋。俺は町の治安維持部隊に所属しており、その廃屋で行われていた人身売買の取り締まりに参加していた。) エリザ:大丈夫。大丈夫だから。ほら、私の手を握って。 十四郎:(売人どもを全員蹴散らした後に見つけた彼女は、同じように捕らえられていた女の子らを気遣っていた。) エリザ:助けていただきありがとうございました。 十四郎:ああ、、、。 エリザ:、、、どうかされました? 十四郎:もうそんなに気を張る必要はないよ。 エリザ:え!? 十四郎:君も彼女らとそう歳(とし)は変わらないだろうに。怖かっただろう? エリザ:私は一番年長だから、、、。みんなを、安心させないと。わ、私がしっかりしないと。お父様と約束したもの。 十四郎:悪い奴らはいなくなった。もう大丈夫だよ。 エリザ:う、う、、、とっても怖かった、です。 十四郎:よく頑張ったな。 エリザ:(泣き出す) 十四郎:よしよし、思いっきり泣きな。 十四郎:(その後、身寄りのないエリザは町の孤児院に入ることになった。一方、俺は彼女が気がかりで、様子を見る為に孤児院へ通うのが日課になっていった。そして、現在。) 0:孤児院。 十四郎:お邪魔しまーす。 エリザ:トーシロー!おかえりなさい! 十四郎:おお、元気にしてたか、お嬢。いや聞くまでもなさそうだな。 エリザ:はい!トーシローが帰ってきたので元気いっぱいよ! 十四郎:ははは、俺如きで元気になれるなんてお前さんも物好きだね。 エリザ:そうね。私くらいのものよね。 十四郎:なんだとぉ? 十四郎:いやぁ、残念だ。遠征先で立派なリンゴ、貰ったんだけどなぁ。口の悪いお嬢様にはやれないなぁ。残念、残念。 エリザ:まぁ、美味しそうなリンゴ。、、、トーシロー様!今日も凛々しくて素敵ですわね。良かったらそのリンゴを分けてくださいな。 十四郎:何という掌返し。まあいいや。どうせ俺だけじゃ食い切れないからな。 エリザ:やったぁ!ありがとう! エリザ:あ、そうだ。トーシロー、今日はこの後、お時間ある? 十四郎:ああ。今日はもう家に帰るだけだから。 エリザ:じゃあ町まで買物に付き合ってくれないかしら? 十四郎:いいぜ。付き合うよ。 エリザ:わーい!ありがとう!すぐに支度するわね! 十四郎:ったく、そんなに急ぐと転んじまうぞ。 0:町への道中。 十四郎:それで、何を買いに行くんだ? エリザ:レターセットよ。最近は異国のハイカラな物が売ってるらしいの。手紙を書きたくって。 十四郎:ほー手紙ね。もしや、お嬢にも春が来たのかい? エリザ:もう、からかわないで。 十四郎:ああ、悪い悪い。 エリザ:ふん。 十四郎:機嫌直してくれよ。お詫びに、いいレターセット見つかったらプレゼントするからさ。 エリザ:いいの!?男に二言はないわね? 十四郎:当たり前よ。 エリザ:ふふふ、選ぶのが楽しみだわ。 0:町に近づくと人々の視線がエリザに集まる。 エリザ:、、、。 十四郎:お嬢、相変わらず人気者だな。 エリザ:もう、わかってるくせに、意地悪ね。 十四郎:まあなかなか慣れないわな。 エリザ:はぁー。 0:回想 十四郎:よう、お嬢。 エリザ:あ、トーシロー、ご機嫌よう。 十四郎:ん、どうした?元気ないんじゃないの? エリザ:そ、そんなことないわ。 十四郎:ふーん。 エリザ:ト、トーシローの気のせいじゃないの? 十四郎:いつもは「トーシロー!!」ってもの凄い勢いで来るのになぁ。気のせいかぁ、そうかぁ。それなら心配いらねぇな。じゃ、またな。 エリザ:あっ、待って。 十四郎:ん? エリザ:あの、やっぱり少しお話し聴いてもらってもいいかしら? 十四郎:もちろん、喜んで。 エリザ:実はご学友に、その、吸血鬼って言われて、それが、悲しくて。 十四郎:吸血鬼?なんで? エリザ:肌が白くて目が赤いからって。近づいたら血を吸われるぞって、、、。 十四郎:ぷっ、あははは、そんなもん、真に受けなくていいんだよ。 エリザ:ひどいわ!笑うなんて!真剣に悩んでるのに、、、。 十四郎:ああ、悪い悪い。でもな、そんなに深く考えなくていいんだよ。ガキの言うことなんて大概適当なんだからさ。 エリザ:私もトーシローみたいな性格に生まれてきたかったわ。 十四郎:なんか棘がある言い方だな。俺だってこう見えて繊細なんだぞ。 エリザ:ふふ、どの口が言うのかしら。 十四郎:おっ、やっと笑ったな。 エリザ:違う。呆れたの。何だか悩んでるのもバカらしくなってきちゃったわ。 十四郎:それでいいんだよ。でも手ぇ出されたら言えよ。その時は俺の出番だ。 エリザ:もう、大人気(おとなげ)ないわよ! 十四郎:冗談だよ。冗談。 エリザ:あなたが言うと冗談に聞こえないわ。 十四郎:それにな、ご学友はきっとお前さんが可愛いから僻んでるんだよ。 エリザ:えっ?かわいい!?本当に?本当に? 十四郎:うっ、圧をかけるな、圧を。二度は言わねぇ。野暮用を思い出した!じゃあな! エリザ:あっ、トーシロー!待ちなさい!もう一度言ってもらうまで逃さないんだから! 0:回想終わり。 十四郎:(なんてこともあったっけか。) エリザ:まあ昔ほど気にしてないわ。キリがないものね。 十四郎:そうそう、それくらいでいいのよ。お嬢はいろいろ考え過ぎだ。 エリザ:ほんと、いい性格してるわ、あなたは。 エリザ:あっ、あのお店よ。早く行きましょう。 十四郎:はいはい、わかったよ。 エリザ:まあ、かわいいものばっかり。どれがいいかしら。この花柄のもかわいいし、格子柄もオシャレね。う~ん、迷っちゃうなぁ。 十四郎:ゆっくり選びな。 エリザ:これにするわ! 十四郎:早いな。 エリザ:このバラの柄の。とってもおしゃれだわ。可愛らしいし。 十四郎:いいんじゃない。 エリザ:なんか適当ね。そんなんじゃ女の子にモテないわよ。 十四郎:間に合ってるよ。余計なお世話だ。 エリザ:え!?好きな人でもいるの? 十四郎:そこそこモテるんだぞ。俺は。 エリザ:そう、なんだ、、、。 十四郎:まあ彼女なんていないけどな。 エリザ:そう!なのね! 十四郎:な、なんだ!?急にデカい声出すなよ。  エリザ:ふふ、なんでもないわ。 十四郎:? 0:二人、店を後にする。 エリザ:ありがとう、トーシロー。 十四郎:どういたしまして。 エリザ:手紙を書くのがとっても楽しみ。 十四郎:そりゃよかったよ。 エリザ:ト、トーシローにも、手紙、書いてあげましょうか? 十四郎:ん?俺に?手紙じゃなくとも直接言ってくれればいいじゃないか。 エリザ:もう、トーシローは浪漫の欠片もないんだから。 十四郎:そんなことねぇって。俺だって手紙の一通や二通、、、ないな。 エリザ:じゃあ気が向いたら書いてあげるわ。大いに喜んでいいわよ、トーシロー。 十四郎:はいはい、光栄でありますよ、お嬢様。 0:数日後 エリザ:困ったわ。 十四郎:よう、お嬢。手紙の調子はどうよ? エリザ:手紙は順調よ。それとは全然関係ないのだけれど、実は変な方々に絡まれてて。 十四郎:変なヤツら? エリザ:何かの団体らしいのですけど、たしかミラーカ教会って名前の。私を見ると何故か有り難がって拝んでくるのよ。最近は孤児院にも押しかけてくることがあって。 十四郎:変な宗教団体か何かかもな。 エリザ:何だか気味が悪くて、、、。 十四郎:わかった。俺が調べておいてやる。なるべく一人にならないように。特に夜とかな。 エリザ:ありがとう。気をつけるわ。 0:数日後、十四郎の書斎。 十四郎:ミラーカ教会。恵まれない子供達の保護、支援を謳ってる慈善団体。ってことになってるが、裏の顔は少女の血を飲むことで不老不死になれるという迷信を本気で信じてるカルト集団。 十四郎:やってることが本物の吸血鬼みたいだな。エリザに執着するのは彼女の容姿が妄信する神と酷似してるのが理由か?全く傍迷惑な話だ。こいつは早めに対処した方がいいかもな。 0:外に出ると、十四郎に郵便が届けられる。 十四郎:ん?この封筒は。 0:その場で中身をあらためる。 十四郎:あいつ、、、。ふっ、色んな意味で急がねぇとな。 0:回想 エリザ:あら、トーシロー、お出かけ? 十四郎:まあな。 エリザ:一緒に行ってもいいかしら?ちょうど暇してて。 十四郎:うーん、別にいいけど、多分つまらないぞ。 エリザ:どこへ行くの? 十四郎:墓だよ。 0:墓地 エリザ:どなたのお墓なの? 十四郎:同僚だ。2年前の任務中に殉職した。 エリザ:そうだったのね、、、。 十四郎:俺達にとって斬り合いなんて日常茶飯事な訳で、俺もいつ、こいつと同じように棺桶に入るかわからない。 エリザ:、、、。 十四郎:死んだら天国か地獄に行くなんて言うが、俺はな、死の先にはただただ何もない、暗闇だけの世界が続いてるじゃないかって思うんだ。 十四郎:それは地獄なんかよりよっぽど怖い。縋って信じられるものは何一つなくて、いつ終わりが来るかも知れない孤独と向き合い続けるんじゃないかって。 エリザ:私も両親を亡くして天涯孤独になった時は自分の運命を恨んだわ。神様も信じられなくなってしまったけれど、一つだけ信じられるものができた。 十四郎:なんだよ、そりゃ? エリザ:あなた。 十四郎:は? エリザ:私を暗闇の底から救い出だしてくれたトーシローだけは、何があっても信じてますし、忘れはしません。 十四郎:ふはははは。神様よりも俺なんかを信じるなんて、ぶっ飛んだお嬢さんだ。 エリザ:たとえ死後の世界が漆黒の闇の中だとしても私が貴方を覚えてる。少しは心強いでしょ? 十四郎:そうだな。こんな神様に喧嘩売るような強い女が、隣にいると思えば百人力だ。 エリザ:少しは元気出た? 十四郎:少しはな。 エリザ:ならよかった。 十四郎:、、、ありがとな、エリザ。 エリザ:どういたしまして。 0:回想終わり。十四郎、孤児院に到着する。 十四郎:おーい、お嬢。 十四郎:なぁ、ボウズ。エリザはどこにいる? 十四郎:(そこで俺は嫌な知らせを受ける。孤児院のボウズは最近よく来ていたおじさんたちが、エリザの体調が良くないと言って病院に連れて行ったと。) 十四郎:なんだと!?一足遅かったか。 十四郎:(俺はすぐさまミラーカ教会へ向かった。) 0:ミラーカ教会、エリザが目覚める。 エリザ:ん、ここは? エリザ:あ!?貴方達、これは誘拐、犯罪よ! エリザ:私は貴方達の信じる神様とは何の関係もないんだから! 十四郎:(信者達はエリザの言葉を無視してひたすら崇めている。) エリザ:お家に帰してください!(トーシロー、助けて。) 0:十四郎、ミラーカ教会。 十四郎:エリザ!どこだ!エリザ! 十四郎:(俺の声に応じるかのように、武器を手にした信者達がわらわらと建物から出てきた。) 十四郎:おい、随分なおもてなしじゃないか。アンタらが攫ってったウチのお姫様はどこだ? 十四郎:(信者達はただ薄ら笑いを浮かべるだけだったが、その中に見つけてしまった。) 十四郎:お前、それは、エリザのペンダント、、、。 十四郎:てめぇら、覚悟はできてんだろうな? 十四郎:(その後は押し寄せてくる信者どもを脇目も振らずに斬りまくった。現場はまさに屍山血河の有様だった。) 十四郎:ちっ、これじゃあ俺の方がよっぽど吸血鬼らしいな。 エリザ:トーシロー? 十四郎:エリザ!?よかっゴフッ!(吐血する) エリザ:そんな!トーシロー! 十四郎:へへ、まあまあデカいのもらっちまってたみたいだ。お前は大丈夫か? エリザ:私は大丈夫。それよりあなたの方が大変よ!早くお医者様に行かないと! 十四郎:いや、いいんだ。この怪我じゃもう助かるまい。今まで散々殺してきたんだ。死神なんてのが本当にいるんなら随分待っててくれたもんさ。 エリザ:嫌よ、そんなの!死んじゃだめ! 十四郎:お前に今すぐにでも伝えたい事があるんだ。頼む、話を聞いてくれないか?エリザ? エリザ:、、、(黙って頷く)。 十四郎:ありがとう。あの手紙の返事だ。 エリザ:ちゃんと、届いたのね。 十四郎:ああ。ちゃんと届いたよ。 エリザ:こんな形で聞きたくなかったわ。 十四郎:すまないな。 エリザ:貴方が謝る事じゃない。 十四郎:ありがとう。 十四郎:俺はお前のことを太陽みたいな人だなって思ったんだ。港で初めて出逢った時から。 エリザ:太陽だなんて。そんな大した人ではないわ。 十四郎:ただ、理不尽な状況でも明るく振る舞う姿は痛々しいくらいに眩しかった。そういう風に生きていかなければならなかったのかって。 エリザ:だから、声をかけてくれたのね。 十四郎:ああ。お前は強い。これからどんな困難にみまわれても立ち向かっていくんだろう。だけど、お前も人間だ。いつかは耐えられなくなる時が来る。本当の自分をさらけ出せる場所が必要だと思った。 エリザ:私の両親はとても責任感が強かったの。誰かの助けになれと口癖のように言ってたわ。 エリザ:私もそれが間違いだとは思ってないけれど、その言葉が呪いの杭のように私の心に突き刺さってた。その杭をトーシローが抜いてくれた。私も人を頼っていいんだって。 エリザ:あの時、私はトーシローに肉体的にも精神的にも救われたわ。いくら感謝しても足りないくらい。 十四郎:お節介にならなくてよかったよ。 エリザ:そんなこと思ったことない。嬉しかった。 十四郎:初めから焦がれていたのかもしれない。お前と言う太陽に。明るくてどんな闇も照らしてくれそうな天真爛漫なお前に。そんなお前を支えたいと思った。 十四郎:でも俺みたいな人斬りの鬼が、吸血鬼みたいな男が、隣に並ぶのは相応しくないと思ってた。 エリザ:そんなことないわ。私は吸血鬼と呼ばれた女よ。お似合いじゃないかしら? 十四郎:ははは、吸血鬼って言われてあんなに悩んでたクセにな。 エリザ:どこかの吸血鬼さんのおかげかしら。それでお返事はもらえないの?あなたへのラブレターだったのだけれど? 十四郎:俺の気持ちは、十分伝えたと思ったんだけどな。 エリザ:私はストレートに言われる方が嬉しいの。 十四郎:仕方ないな。、、、エリザ、お前を、愛してる。 エリザ:トーシロー!私も愛してる。 十四郎:(お前という太陽のそばで眠れるなら焼かれて溶けてしまうのも、悪くないかもしれないな、、、。) 0:終わり

タイトル:吸血鬼が眠る日 登場人物:エリザ 異国の少女。色白の肌と真紅の瞳を持つ事から吸血鬼と呼ばれてしまう。責任感が強い。育ちは良さそう。 登場人物:十四郎 (とうしろう) 港町の治安維持部隊の一人。相当な剣の腕前の持ち主。飄々とした感じだが、決めるところは決める。 あらすじ:港町の治安維持部隊に所属する十四郎は任務で異国の少女エリザを救い出す。そこからはじまる二人の心の交流を綴る物語。 本編: エリザ:(たとえ貴方が暗闇で迷ってしまっても、私が隣で照らし続けるから。) エリザ:『吸血鬼が眠る日』 十四郎:(俺とエリザが出逢ったのは5年前の港町の廃屋。俺は町の治安維持部隊に所属しており、その廃屋で行われていた人身売買の取り締まりに参加していた。) エリザ:大丈夫。大丈夫だから。ほら、私の手を握って。 十四郎:(売人どもを全員蹴散らした後に見つけた彼女は、同じように捕らえられていた女の子らを気遣っていた。) エリザ:助けていただきありがとうございました。 十四郎:ああ、、、。 エリザ:、、、どうかされました? 十四郎:もうそんなに気を張る必要はないよ。 エリザ:え!? 十四郎:君も彼女らとそう歳(とし)は変わらないだろうに。怖かっただろう? エリザ:私は一番年長だから、、、。みんなを、安心させないと。わ、私がしっかりしないと。お父様と約束したもの。 十四郎:悪い奴らはいなくなった。もう大丈夫だよ。 エリザ:う、う、、、とっても怖かった、です。 十四郎:よく頑張ったな。 エリザ:(泣き出す) 十四郎:よしよし、思いっきり泣きな。 十四郎:(その後、身寄りのないエリザは町の孤児院に入ることになった。一方、俺は彼女が気がかりで、様子を見る為に孤児院へ通うのが日課になっていった。そして、現在。) 0:孤児院。 十四郎:お邪魔しまーす。 エリザ:トーシロー!おかえりなさい! 十四郎:おお、元気にしてたか、お嬢。いや聞くまでもなさそうだな。 エリザ:はい!トーシローが帰ってきたので元気いっぱいよ! 十四郎:ははは、俺如きで元気になれるなんてお前さんも物好きだね。 エリザ:そうね。私くらいのものよね。 十四郎:なんだとぉ? 十四郎:いやぁ、残念だ。遠征先で立派なリンゴ、貰ったんだけどなぁ。口の悪いお嬢様にはやれないなぁ。残念、残念。 エリザ:まぁ、美味しそうなリンゴ。、、、トーシロー様!今日も凛々しくて素敵ですわね。良かったらそのリンゴを分けてくださいな。 十四郎:何という掌返し。まあいいや。どうせ俺だけじゃ食い切れないからな。 エリザ:やったぁ!ありがとう! エリザ:あ、そうだ。トーシロー、今日はこの後、お時間ある? 十四郎:ああ。今日はもう家に帰るだけだから。 エリザ:じゃあ町まで買物に付き合ってくれないかしら? 十四郎:いいぜ。付き合うよ。 エリザ:わーい!ありがとう!すぐに支度するわね! 十四郎:ったく、そんなに急ぐと転んじまうぞ。 0:町への道中。 十四郎:それで、何を買いに行くんだ? エリザ:レターセットよ。最近は異国のハイカラな物が売ってるらしいの。手紙を書きたくって。 十四郎:ほー手紙ね。もしや、お嬢にも春が来たのかい? エリザ:もう、からかわないで。 十四郎:ああ、悪い悪い。 エリザ:ふん。 十四郎:機嫌直してくれよ。お詫びに、いいレターセット見つかったらプレゼントするからさ。 エリザ:いいの!?男に二言はないわね? 十四郎:当たり前よ。 エリザ:ふふふ、選ぶのが楽しみだわ。 0:町に近づくと人々の視線がエリザに集まる。 エリザ:、、、。 十四郎:お嬢、相変わらず人気者だな。 エリザ:もう、わかってるくせに、意地悪ね。 十四郎:まあなかなか慣れないわな。 エリザ:はぁー。 0:回想 十四郎:よう、お嬢。 エリザ:あ、トーシロー、ご機嫌よう。 十四郎:ん、どうした?元気ないんじゃないの? エリザ:そ、そんなことないわ。 十四郎:ふーん。 エリザ:ト、トーシローの気のせいじゃないの? 十四郎:いつもは「トーシロー!!」ってもの凄い勢いで来るのになぁ。気のせいかぁ、そうかぁ。それなら心配いらねぇな。じゃ、またな。 エリザ:あっ、待って。 十四郎:ん? エリザ:あの、やっぱり少しお話し聴いてもらってもいいかしら? 十四郎:もちろん、喜んで。 エリザ:実はご学友に、その、吸血鬼って言われて、それが、悲しくて。 十四郎:吸血鬼?なんで? エリザ:肌が白くて目が赤いからって。近づいたら血を吸われるぞって、、、。 十四郎:ぷっ、あははは、そんなもん、真に受けなくていいんだよ。 エリザ:ひどいわ!笑うなんて!真剣に悩んでるのに、、、。 十四郎:ああ、悪い悪い。でもな、そんなに深く考えなくていいんだよ。ガキの言うことなんて大概適当なんだからさ。 エリザ:私もトーシローみたいな性格に生まれてきたかったわ。 十四郎:なんか棘がある言い方だな。俺だってこう見えて繊細なんだぞ。 エリザ:ふふ、どの口が言うのかしら。 十四郎:おっ、やっと笑ったな。 エリザ:違う。呆れたの。何だか悩んでるのもバカらしくなってきちゃったわ。 十四郎:それでいいんだよ。でも手ぇ出されたら言えよ。その時は俺の出番だ。 エリザ:もう、大人気(おとなげ)ないわよ! 十四郎:冗談だよ。冗談。 エリザ:あなたが言うと冗談に聞こえないわ。 十四郎:それにな、ご学友はきっとお前さんが可愛いから僻んでるんだよ。 エリザ:えっ?かわいい!?本当に?本当に? 十四郎:うっ、圧をかけるな、圧を。二度は言わねぇ。野暮用を思い出した!じゃあな! エリザ:あっ、トーシロー!待ちなさい!もう一度言ってもらうまで逃さないんだから! 0:回想終わり。 十四郎:(なんてこともあったっけか。) エリザ:まあ昔ほど気にしてないわ。キリがないものね。 十四郎:そうそう、それくらいでいいのよ。お嬢はいろいろ考え過ぎだ。 エリザ:ほんと、いい性格してるわ、あなたは。 エリザ:あっ、あのお店よ。早く行きましょう。 十四郎:はいはい、わかったよ。 エリザ:まあ、かわいいものばっかり。どれがいいかしら。この花柄のもかわいいし、格子柄もオシャレね。う~ん、迷っちゃうなぁ。 十四郎:ゆっくり選びな。 エリザ:これにするわ! 十四郎:早いな。 エリザ:このバラの柄の。とってもおしゃれだわ。可愛らしいし。 十四郎:いいんじゃない。 エリザ:なんか適当ね。そんなんじゃ女の子にモテないわよ。 十四郎:間に合ってるよ。余計なお世話だ。 エリザ:え!?好きな人でもいるの? 十四郎:そこそこモテるんだぞ。俺は。 エリザ:そう、なんだ、、、。 十四郎:まあ彼女なんていないけどな。 エリザ:そう!なのね! 十四郎:な、なんだ!?急にデカい声出すなよ。  エリザ:ふふ、なんでもないわ。 十四郎:? 0:二人、店を後にする。 エリザ:ありがとう、トーシロー。 十四郎:どういたしまして。 エリザ:手紙を書くのがとっても楽しみ。 十四郎:そりゃよかったよ。 エリザ:ト、トーシローにも、手紙、書いてあげましょうか? 十四郎:ん?俺に?手紙じゃなくとも直接言ってくれればいいじゃないか。 エリザ:もう、トーシローは浪漫の欠片もないんだから。 十四郎:そんなことねぇって。俺だって手紙の一通や二通、、、ないな。 エリザ:じゃあ気が向いたら書いてあげるわ。大いに喜んでいいわよ、トーシロー。 十四郎:はいはい、光栄でありますよ、お嬢様。 0:数日後 エリザ:困ったわ。 十四郎:よう、お嬢。手紙の調子はどうよ? エリザ:手紙は順調よ。それとは全然関係ないのだけれど、実は変な方々に絡まれてて。 十四郎:変なヤツら? エリザ:何かの団体らしいのですけど、たしかミラーカ教会って名前の。私を見ると何故か有り難がって拝んでくるのよ。最近は孤児院にも押しかけてくることがあって。 十四郎:変な宗教団体か何かかもな。 エリザ:何だか気味が悪くて、、、。 十四郎:わかった。俺が調べておいてやる。なるべく一人にならないように。特に夜とかな。 エリザ:ありがとう。気をつけるわ。 0:数日後、十四郎の書斎。 十四郎:ミラーカ教会。恵まれない子供達の保護、支援を謳ってる慈善団体。ってことになってるが、裏の顔は少女の血を飲むことで不老不死になれるという迷信を本気で信じてるカルト集団。 十四郎:やってることが本物の吸血鬼みたいだな。エリザに執着するのは彼女の容姿が妄信する神と酷似してるのが理由か?全く傍迷惑な話だ。こいつは早めに対処した方がいいかもな。 0:外に出ると、十四郎に郵便が届けられる。 十四郎:ん?この封筒は。 0:その場で中身をあらためる。 十四郎:あいつ、、、。ふっ、色んな意味で急がねぇとな。 0:回想 エリザ:あら、トーシロー、お出かけ? 十四郎:まあな。 エリザ:一緒に行ってもいいかしら?ちょうど暇してて。 十四郎:うーん、別にいいけど、多分つまらないぞ。 エリザ:どこへ行くの? 十四郎:墓だよ。 0:墓地 エリザ:どなたのお墓なの? 十四郎:同僚だ。2年前の任務中に殉職した。 エリザ:そうだったのね、、、。 十四郎:俺達にとって斬り合いなんて日常茶飯事な訳で、俺もいつ、こいつと同じように棺桶に入るかわからない。 エリザ:、、、。 十四郎:死んだら天国か地獄に行くなんて言うが、俺はな、死の先にはただただ何もない、暗闇だけの世界が続いてるじゃないかって思うんだ。 十四郎:それは地獄なんかよりよっぽど怖い。縋って信じられるものは何一つなくて、いつ終わりが来るかも知れない孤独と向き合い続けるんじゃないかって。 エリザ:私も両親を亡くして天涯孤独になった時は自分の運命を恨んだわ。神様も信じられなくなってしまったけれど、一つだけ信じられるものができた。 十四郎:なんだよ、そりゃ? エリザ:あなた。 十四郎:は? エリザ:私を暗闇の底から救い出だしてくれたトーシローだけは、何があっても信じてますし、忘れはしません。 十四郎:ふはははは。神様よりも俺なんかを信じるなんて、ぶっ飛んだお嬢さんだ。 エリザ:たとえ死後の世界が漆黒の闇の中だとしても私が貴方を覚えてる。少しは心強いでしょ? 十四郎:そうだな。こんな神様に喧嘩売るような強い女が、隣にいると思えば百人力だ。 エリザ:少しは元気出た? 十四郎:少しはな。 エリザ:ならよかった。 十四郎:、、、ありがとな、エリザ。 エリザ:どういたしまして。 0:回想終わり。十四郎、孤児院に到着する。 十四郎:おーい、お嬢。 十四郎:なぁ、ボウズ。エリザはどこにいる? 十四郎:(そこで俺は嫌な知らせを受ける。孤児院のボウズは最近よく来ていたおじさんたちが、エリザの体調が良くないと言って病院に連れて行ったと。) 十四郎:なんだと!?一足遅かったか。 十四郎:(俺はすぐさまミラーカ教会へ向かった。) 0:ミラーカ教会、エリザが目覚める。 エリザ:ん、ここは? エリザ:あ!?貴方達、これは誘拐、犯罪よ! エリザ:私は貴方達の信じる神様とは何の関係もないんだから! 十四郎:(信者達はエリザの言葉を無視してひたすら崇めている。) エリザ:お家に帰してください!(トーシロー、助けて。) 0:十四郎、ミラーカ教会。 十四郎:エリザ!どこだ!エリザ! 十四郎:(俺の声に応じるかのように、武器を手にした信者達がわらわらと建物から出てきた。) 十四郎:おい、随分なおもてなしじゃないか。アンタらが攫ってったウチのお姫様はどこだ? 十四郎:(信者達はただ薄ら笑いを浮かべるだけだったが、その中に見つけてしまった。) 十四郎:お前、それは、エリザのペンダント、、、。 十四郎:てめぇら、覚悟はできてんだろうな? 十四郎:(その後は押し寄せてくる信者どもを脇目も振らずに斬りまくった。現場はまさに屍山血河の有様だった。) 十四郎:ちっ、これじゃあ俺の方がよっぽど吸血鬼らしいな。 エリザ:トーシロー? 十四郎:エリザ!?よかっゴフッ!(吐血する) エリザ:そんな!トーシロー! 十四郎:へへ、まあまあデカいのもらっちまってたみたいだ。お前は大丈夫か? エリザ:私は大丈夫。それよりあなたの方が大変よ!早くお医者様に行かないと! 十四郎:いや、いいんだ。この怪我じゃもう助かるまい。今まで散々殺してきたんだ。死神なんてのが本当にいるんなら随分待っててくれたもんさ。 エリザ:嫌よ、そんなの!死んじゃだめ! 十四郎:お前に今すぐにでも伝えたい事があるんだ。頼む、話を聞いてくれないか?エリザ? エリザ:、、、(黙って頷く)。 十四郎:ありがとう。あの手紙の返事だ。 エリザ:ちゃんと、届いたのね。 十四郎:ああ。ちゃんと届いたよ。 エリザ:こんな形で聞きたくなかったわ。 十四郎:すまないな。 エリザ:貴方が謝る事じゃない。 十四郎:ありがとう。 十四郎:俺はお前のことを太陽みたいな人だなって思ったんだ。港で初めて出逢った時から。 エリザ:太陽だなんて。そんな大した人ではないわ。 十四郎:ただ、理不尽な状況でも明るく振る舞う姿は痛々しいくらいに眩しかった。そういう風に生きていかなければならなかったのかって。 エリザ:だから、声をかけてくれたのね。 十四郎:ああ。お前は強い。これからどんな困難にみまわれても立ち向かっていくんだろう。だけど、お前も人間だ。いつかは耐えられなくなる時が来る。本当の自分をさらけ出せる場所が必要だと思った。 エリザ:私の両親はとても責任感が強かったの。誰かの助けになれと口癖のように言ってたわ。 エリザ:私もそれが間違いだとは思ってないけれど、その言葉が呪いの杭のように私の心に突き刺さってた。その杭をトーシローが抜いてくれた。私も人を頼っていいんだって。 エリザ:あの時、私はトーシローに肉体的にも精神的にも救われたわ。いくら感謝しても足りないくらい。 十四郎:お節介にならなくてよかったよ。 エリザ:そんなこと思ったことない。嬉しかった。 十四郎:初めから焦がれていたのかもしれない。お前と言う太陽に。明るくてどんな闇も照らしてくれそうな天真爛漫なお前に。そんなお前を支えたいと思った。 十四郎:でも俺みたいな人斬りの鬼が、吸血鬼みたいな男が、隣に並ぶのは相応しくないと思ってた。 エリザ:そんなことないわ。私は吸血鬼と呼ばれた女よ。お似合いじゃないかしら? 十四郎:ははは、吸血鬼って言われてあんなに悩んでたクセにな。 エリザ:どこかの吸血鬼さんのおかげかしら。それでお返事はもらえないの?あなたへのラブレターだったのだけれど? 十四郎:俺の気持ちは、十分伝えたと思ったんだけどな。 エリザ:私はストレートに言われる方が嬉しいの。 十四郎:仕方ないな。、、、エリザ、お前を、愛してる。 エリザ:トーシロー!私も愛してる。 十四郎:(お前という太陽のそばで眠れるなら焼かれて溶けてしまうのも、悪くないかもしれないな、、、。) 0:終わり