台本概要

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タイトル 名探偵ぽーちゃん! ~エドガー・ポーは死の薫り~
作者名 ろくしょうるり  (@ruri6syo)
ジャンル ミステリー
演者人数 3人用台本(男1、女2)
時間 60 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 ドタバタ推理ミステリー!

あほのこぽーちゃんが名探偵になって事件をかいけつしちゃうよっ!
途中、ちょっとだけ英文があるので、横書き表示をおすすめします

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ぽろん:ぽーちゃん。 作者が子供の頃飼ってた白い紀州犬のおんなのこ。かしこいけど… けど、だった
しろ:しぃちゃん。 作者の友達んちの犬。ぽーちゃんとなかよしのおんなのこ。 穴掘りが大好きすぎて、友達んちの庭は人間ですら隠れられるほどの大穴でボコボコだった。 なまえはしろだけど、白黒のぶち犬。
?:当時近所をうろついてた、真っ黒いのらいぬ。 名前はない。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
ぽろん 184 元気かわいいアホ! 今日は名探偵になるんだもんね! 作者が子供の頃飼ってた真っ白い紀州犬!
しろ 138 ぽーちゃんだいすき! 穴掘り大好き! クールでかしこいおんなのこ。 友達んちで飼ってた白地に黒ぶちの大きな犬!
91 なぞのいぬ。 つまり、のら。 色は黒。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

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ぽろん:あー、ひまー しろ:ふぅん。 しろは今、本を読んでるからそれなりに楽しいけど? ぽろん:ねえしぃちゃん しろ:なに ぽろん:ひまだからさ しろ:何かまたヘンなこと言い出すんじゃないよね ぽろん:名探偵になろうかな しろ:ほらあー! きたあー なんでまたとんでもないこと言い出すの。ひまって言ったって、この屋敷には図書館もまっつぁおなくらいの書庫があるでしょ ぽろん:うんまあ。ぽーちゃんちは、代々本を集めるのが好きだったからねえ? しろ:ならその空っぽっぽなてんてんおつむに、少しは何かを詰めてみたらどうだい。 で、なんでまた急に探偵? ぽろん:たのしそうだし しろ:楽しそうって、いいかい、名探偵って、頭が賢くないとなれないんだよ? きょうのあすのあさってで、突然おりこうさんになれるのかい、君は ぽろん:ええ? ぽーちゃん、そこそこおりこうさんだよ。「まて」とかできるよ しろ:まてくらいできてよ ぽろん:じゃあ、しぃちゃんの思うおりこうさんってなんなのさ しろ:それはー ぽろん:あーまって。 推理する。 ぽーは名探偵だからね、名探偵ぽー しろ:なに、名探偵ぽーって。 わかった、推理小説の生みの親、エドガー・アラン・ポーとかけて、ぽーちゃんとといたな? ぽろん:わあ、名探偵しぃちゃんだ しろ:ええ、まさかのあたり?! ぽろん:うん! さすが、しぃ・おーぎゅすと・でゅぱん。 ぽーの見込んだ名探偵 しろ:ポーの最初に書いた推理小説、「モルグ街の殺人」に出てくる天才名探偵、C・オーギュスト・デュパンかあ。 しろ:のちにドイルがそのままの形でホームズのモデルにしたんだよね。 ふふん。 まんざらでもないかも ぽろん:で、そのめいたんていしぃちゃんが言いたいのは、きっとこうだよ ぽろん:おりこうさんとは、突然名探偵になるとか、いわないことだー! ってね。 どう、しぃちゃん、あたってる? しろ:なんだ、わかってるじゃないか ぽろん:ほら、やっぱりぽーちゃん、てんさい! 名探偵にふさわしい、ずのうの、もちぬし! よーし、今日から、名探偵だあ! しろ:まて! ぽろん:うっ! しろ:そう、まて。 ぽーは、まてができるお利口さんなんだよな? ぽろん:ううっ、しぃちゃん、痛いところを しろ:そうだ、ぽーちゃん、君は「まて」ができるおりこうさんなんだ。 全ての名探偵の始祖、しぃ・オーギュストが命ずる。 ぽーは、まて。まてだ。 えらいぞー、ぽー ぽろん:ぐぬぬぬぬっ その世紀の名探偵、デュパンを産んだのは、ぽーなんだからねっ、ぐぬぬぬぬぬっ しぃちゃん、おねがいだ。まてを解いて しろ:いやだね! まてを解いたら、天井板の一枚でもはぎとって、名探偵ぽーのたんていじむしょ、とかお習字で書いて玄関の外に貼るんだから ぽろん:ぐにゅにゅにゅにゅゥ~! しぃちゃん、めいたんていすぎにゅ~~~! だがしかーし! ?:ピンポーン! ぽろん:ほぉら、早速おいでなすったぜぇ~ぃ しろ:ま、まさか ?:ピンポーン! ドンドンドン! ごめんくださーい! ぽろん:もう、表札つけてあるんだもんね! じつは、昨日からかんがえてて、朝にはもうかかってたんだもんね! しろ:ええっ、と、ということは、まさか… ?:ドンドンドン! ピンポピンポ! ピンポ! ごめんくださーーーーい! ぽろん:ほらっ、こんなに慌てて。 きっと大事件で切羽詰まってるんだよ。早く開けてあげないと! はやく「まて」解除ォ~ しろ:だーめ、しろが出るよ! はいはい、今開けまーす。 ガチャ ?:はあ、やっと開いた。 あのう… ぽろん:(中から大声で)こちら名探偵ぽーたんていじむしょでえす! 事件ですかっ、だいじけんですかっ! しろ:こらうるさいよ! で、どんな事件でしょう、じゃなかった ?:事件、はあ、事件ねえ。 ええと、僕にとってはけっこうな大事件なんですけど しろ:ええっ ぽろん:はい! 名探偵ぽーちゃん! どんなことでも! ぱぱっとかいけつ! しちゃいますよーーッ! ?:あの、新聞代、今日こそ払ってください。6ヶ月分 ぽろん:えーーーーーー…、 うち、新聞なんてうけとってませーーーん! さいきんはぁー ずっとぉー、しんぶんやさんが、はいたつしてくれなくってぇ~ ?:おたくが未払いだからでしょう! 6ヶ月分! 配達は随分前に止まってますよ! お金払ってないんだから! ぽろん:あ、 、、、 あーーーーー…  ?:通い続けて6ヶ月、やっと玄関が開いたんだ。 今日という今日は、きっちり払って貰いますからね ぽろん:んんんーーー じつは、今、「まて」中なんでうごけないですねー、 ぽーちゃんはまてができるおりこうさんなので、うごけないんですねー、あはー残念 しろ:ぽー、 … まて解除 0:  0:  ?:(タイトル的ナレーション)『名探偵 二重抹消線 ぽー と 名探偵しぃのたんていじむしょ』 0:  しろ:(わざとらしく紳士ぶった感じになってる)ふむふむ、今日の一面は…駅前通りの百貨店突然の倒産… これは驚き。 ふむ、世の中厳しいねえ ぽろん:6ヶ月ぶんの新聞代、2万もとられちゃった。 ぬぅーん… まさか新聞お金を出して読む日が来ようとは… 名探偵のしったい しろ:踏み倒そうとしていたのかい君は。 いいかい、新聞は買わなければ読めないものだよ。 街のゴミくず箱には入ってるかもしれないが、その新聞はすでに死んでいる。 『しんぶんし』、だ ぽろん:自分ちで新聞とらないで、ぽーちゃんがお財布はたいた新聞読んでるしぃちゃんが説くかなそれ。 表札まで書き換えちゃってさ。 あーあ。 あ、しぃちゃんコーヒーと紅茶、どっちのむ? しろ:紅茶かな ぽろん:あいあいさー。 そうだ。昨日しぃちゃんが買ってきたガナッシュ出すね しろ:いいねえ。 だったら、コーヒーかな。 コロンビア産がいい。 モカに似たまろやかな口当たりに少しだけ酸味があるから、ガナッシュにぴったりだよ ぽろん:コロンビアさんの、豆…?  あのさ。しぃちゃん、 なんかキャラ、いつもとちがくない? しろ:べつに? ぽろん:ほんとにー? ちょっと、インテリぶってない? しろ:ううん? しぃは、最初から、 紳士だよ? ぽろん:しぃとかいって、めいたんてい、してない? しろ:ははあ、なにをいってるのだね、君は。 そうそう、今新聞にね、そのガナッシュを買った駅前百貨店が ?:そういうところじゃ、ないですかね しろ:わあ! ぽろん:わあ! ?:ああ、いい香りですねえ、コロンビア・コーヒーは しろ:ぽー、この人勝手にひとんちのコーヒーいれてくれてるよ? ぽろん:あっ、ありがとう。 それただのインスタントコーヒーだけど しろ:いや、なんだね君は。ここはわたしたちの家なのだが? ぽろん:いやしぃちゃんも。ここぽーちゃんちだけども…? で、し、しししししんぶんやさん、 ま、まだ、おだいが…? ?:いえ、お代はしっかりいただきましたよ。 ときに、お二人は名探偵だとか ぽろん:きらーん! はい! そうです! わたしは名探偵ぽー! こっちは助手のしぃちゃ… しろ:しぃ、おーぎゅすと、でゅぱん、と申します。 で、事件ですか、事故ですか。 ほら、ぽー、お客様にガナッシュを ぽろん:あいあいさー! って、アレ??? ?:ええ、事故じゃないと、思います しろ:では、事件ですね ?:ええ、まあ… はい。 しろ:なるほど? ぽろん:と、名探偵の助手しぃ・おーぎゅすと・でゅぱんはすこし考えるふうに、テーブルにひじをついた。 べべん! しろ:ええと、ではまず確認ですが ?:はい しろ:ひとんちに勝手に上がり込んで自分で自分のコーヒーを、しかも自分のだけ用意するっていう事件であってます? ぽろん:あっほんとだ! 一つしか淹れてなくてしかもそれを自分で飲んでる! ?:あっ、湯飲みが一つしかわからなかったので。 おいれします? 美味しいですよ? ズズー(すする) ぽろん:ねー、このひと飲んでるのコーヒー? それともお茶ぁ? しろ:いいから、ぽーは当初の予定通りわたしたちのコーヒー淹れてくれない? ぽろん:あいあいさー! ?:いいえ。 僕はちゃんと、探偵事務所のお客としてここにいます しろ:ほう ぽろん:はいー、コーヒーとガナッシュおまたせいたしましたあ ?:あっ、いただきます。 (もぐっ) ?:(頬張りつつ)まずは、これなのですが もぐもぐ ズズー ふぅ(咳払い) ぽろん:? 紙切れ? メモ? しろ:どれ… ふむ… わあ、英語だ… ええーと?  ホワィル、エバー・トゥ・ハー… ヤン・ユーラリィ  … アップターン、サー・ ヴァイォリット、…アイ ?  0:※(Whale ever to her young Eurally, Upturns her violet eye.) ぽろん:『 あどけなきユゥラリィ 永遠に そのすみれの瞳で 僕をみあげて 』 ? ?:ほう しろ:なんだろ。詩の一節? ぽろん:ぽーちゃんは、詩だったらシェイクスピアのソネットが好きだなあ。 ソネット113。 シンス・アイ・レフト・ユー 、 マイ・アイズ・イズ・マイ・マインド。 0:※(Since I left you. My eyes is my mind) ぽろん:『君がいなくなってから 僕の目は…』っていうの。 韻(いん)の置きかたがおもしろいよね しろ:ぽー、いちおう本は読んでたんだね。 まあ、しぃ・おーぎゅすと・でゅぱんも知ってたわけだしね ぽろん:うん? ポーの詩のちゅうにっぽいとこも好きだよ? ?:あの、ぽろんさんは、アホな見かけによらず詩がお好き… じゃなくて、あの。その紙 しろ:ああ。 ええと、これが、どうかしたんですか? ?:ここに来る途中、拾いました。 で、よく考えたら、その側に誰か、倒れていて… 死んでたと思います しろ:ええっ?! ぽろん:ええっ?! しろ:け、警察は? ?:けいさ… あ、 あーーー… 、 6ヶ月分の取り立てのことで頭がいっぱいで。 でももう誰か通報したんじゃないかと しろ:ええ… ぽろん:なんでこれだけひろったの? ?:それは… 急いでいたので、新聞代の請求書兼領収書の紙束を握ったままだったのを …落としてしまって。 拾い集めた中のこのメモに気がついたのは、ここで代金を受け取って、帰る途中です ぽろん:そうだよね? 新聞屋さん、一回帰ったよね? ?:はい。 で、こちらに名探偵の表札の出ていたことを思い出し、戻ってきたのです。 が、ピンポン鳴らしたらまた居留守を使われるかと思い、玄関を開けてみたら中に入れたので上がり込み、まずは色々と物色してました しろ:おまわりさーーーん! ?:何も盗ってませんよ! ただ見てただけです! 住んでいるアホに似つかわしくないお屋敷だなあと思って ぽろん:ぽーちゃんちは、ゆいしょただしき、ちすじなの! アホとか、関係ないの! でもしぃちゃん、ほんものの事件だよ! 名探偵初仕事は殺人事件だよ! 早く現場を見に行こう! おーーー! しろ:ええっ、いくの?! てか、アホでいいの?! ?:あの、今頃は、警察が来て立ち入りできなくなってるんじゃ… 行ってもどうせ、何も見られませんよ しろ:ああ、そうだ。 ぽー、今行った所でどうせただの野次馬だ ?:明日にはきっと規制も外れているんじゃないでしょうか。その時にしましょう ぽろん:ううん、 そっかぁー しろ:まずは、どんな場所だったのか、どんな現場だったのか、彼にもう少し詳しく訊こうじゃないかね? 名探偵ぽー ぽろん:そっか、そうだね! あいあいさー! 0:  0: 間 0:  ?:(ナレーション) 夜! しろ:倒れてたのは、男。 ふぅむ? 現場は、2本の大通りに挟まれた公園。 駅方面からこっちの住宅街に来るのには公園を通り抜けた方が近いから、通行人も少なくない。 でも、少し入れば死角はたくさんあるね ぽろん:うーーーん しろ:この詩の一節は、被害者のものかな。 なんの詩だろう ぽろん:『 ぼくは ひとり 泥の世界で うなってた 』 しろ:んん? ぽろん:『 きれいで優しいユゥラリィが ぼくのそばに きてくれるまでは 』 『 密色の髪したユゥラリィが 頬を染めて ぼくの世界に きてくれるまでは 』 しろ:ええ? ユーラリィ、って、さっきの? ぽろん:? ポーの、『ユゥラリィ』だよ? 根暗なぼっち男が、優しくてきれいな女の子と結婚できて、喜んでるってうた。 紙に書いてあったのは、それの最後の行 しろ:そ、そうなんだ。 ええと、じゃあ、この被害者は、そのポーの詩を持ってたって事か。 なんで最後の行だけ… 公園、結婚を喜ぶ詩(うた) ぽろん:ぷろぽーず? しろ:あっ、 そうか。 もしやこれは、 チジョーのもつれ? とかいうやつかな ぽろん:ちじょー? 地面が、もつれたの!? こわ! じゃあ、 ぽーちゃんのすいりは、はずれかなあ しろ:よくわかんないけど、外れだと思うな。 よくわかんないけど ぽろん:そっかぁ。 しょぼーん しろ:一応訊くけど、どんな推理だったの ぽろん:んーーーーーー? ねくらぼっちの『僕』とユゥラリィは、ほんとに結婚したのかなぁーって。 二次元の花嫁、ってやつじゃない? だって、ねくらのぼっちだよ? しろ:事件のほうじゃないんかい! はあ。 じゃあ明日になって、公園見に行ってみたら何かわかるかも。 散歩にもちょうどいいし ぽろん:うぅーん しろ:なに、どうしたの ぽー。 なんか気のない返事だね。 昼間はあんなに行く気満々だったのに ぽろん:だ、だって。 ち、ちじょうが、もつれちゃったんでしょ…? 歩くのこわくない? しろ:その地上じゃないから!  あれっ、もうこんな時間だよ。 ぽー、今日はもうねよっか ぽろん:しぃちゃん、もはやおうちにも帰らないんだ 0: しろ:(ナレーション)つぎのひ!  ?:ドンドンドンドン! ピンポーン! ピンポーン! ぽろん:ううーん、むにゃむにゃ… だあれ? こんなあさはやく… ふァ~~~… ガチャ ?:あっ、おはようございます! ぽろん:んんん… しんぶんやさん? …新聞はポストにいれてってよ、ふァ~~~…アム… ?:いえ、見てください、この記事! しろ:ふむ? なになに? 『昨夜、駅前通り裏で殺人。詩の一編が残される』?! これは! ?:ね、しぃさん、ぽーさん、これは、あれですよね?! しろ:例の、倒産した百貨店の裏手の細い路地か。 その側に落ちていた詩の一編が書かれたメモ… えーと、なになに? うわーまた英語ばっかり しろ:アゲートランプ… ウィズイン ・ ユアハンド…  オー ぷさ、ぷさなんとか、…なんとか ホーリィ… ランド…? ぽろん:ぷさ? しぃちゃんそれ、『サイキィ』だよ。 『 手には瑪瑙(めのう)のランプ ああ、そなたは聖なる国より降り立ちし精霊サイキィ 』 ?:僕が昨日拾ったメモと同じ、ポーの詩の最後の一節…。 これは『トゥ・ヘレン』、でしたっけ ぽろん:ということは、ポーの詩をもってると… ねらわれる? あわわわ… どうしようしぃちゃん。 うちの本棚、ポーの詩集もいっぱいあるよ しろ:いや逆でしょ ?:そうですよ。 これはむしろ犯人が… っていうか、ぽーさん? あなた名探偵なんですよね?! 本当に? しろ:(またしてももったいぶった口調に戻る)いいえ。 そやつはただのアホ。 名探偵はワタシです。 ワタシの名はしぃ・おーぎゅすと・でゅぱん ぽろん:むむー! ぽーちゃんもめいたんていだよ! ?:しぃさん、彼女のことはほっときましょう あ、朝ご飯はフレンチトーストで しろ:あ、しぃも! ぽろん:ええー! 0:  0:(間) 0:  ?:ふぅ~、名探偵といただく朝食は格別に素敵ですねえ。 おや、今朝のコーヒーはブラジリアですか。 マイルドな口当たりが朝にピッタリです ぽろん:コーヒーはインスタント! でも言うだけでそんな気がしてくるから、いっかあ ?:そしてこのフレンチトーストはキャラメリゼですか? 何とも香ばしい香りだ ぽろん:えへ~ ココナッツのシロップ焦がしちゃってごめぇん しろ:で、今朝の新聞、っと。 ふぅん… ポーの詩の最後の一節、かあ。『ユウラリィ』はプロポーズの詩だったけど、今度の『トゥ・ヘレン』はどんな詩かな ぽろん:うちの書庫にあるけど、しぃちゃん見る? ?:あ、書庫! こちら、 図書館も真っ青なコレクションなんでしょう? 僕、ちょっと見てきていいですか?  ぽろん:わー、もしかしてうちの書庫って、有名? いいけど、でも、貸出はできないよ? ?:勿論です! じゃあ僕が今から探して… ぽろん:(遮って)じゃあ、今はぽーちゃんが! 書庫からポーの詩集、超スピードで持ってきまあす! ただいま! しろ:はや! ぽろん:ふふーん。 ほめて! サイキィ読めないしぃちゃんのために、訳したやつのほうをもってきた ぽろん:(小声)なあんて、ほんとは原文のほうのやつが見つからなかっただけなんだけど、 そっちで聴いてくれてるみんな? それはしぃーっだよ? しぃちゃんだけにしぃーっ、ね ?:? しろ:わあ! ありがとう ぽろん:ふひひ。 やったー。 はい。 このページ! しろ:ん(受け取る)、どれどれ? … ふむふむ … なるほど。 ひたすらヘレンがきれいだ、って詩みたい …となると、やっぱり、ちじょうのもつれ…? ぽろん:えーっ! また、地面がもつれちゃうの? やだあ~~~ しろ:いやもつれないから! ぽろん:ほ、ほんとに…? しろ:ほんとに ぽろん:しんぶんやさんも? ?:え、ええ ぽろん:そっかあ、 うん、 (間)…ほんとだね?! しろ:ほんとだよ! ?:そうですよ ぽろん:よかった! じゃ、朝ごはんも美味しかったし、そろそろ出かけよっか しろ:よし! ?:あっ、ついにその新聞の現場に行くんですね! ぽろん:そのとおり!  めいたんていぽーちゃんアンドしぃちゃんは! 事件の現場を見に行くのです! おー! しろ:おー! ?:おおー パチパチパチパチ あっ、では昨日の公園のほうの現場にも? ぽろん:(かぶせて、または間髪入れずに)じゃー新聞屋さん、お皿洗っといてねー! 行こーしぃちゃん玄関バターン! ?:えっあっ、あの、僕が行かなきゃ場所が!  あーーー…  0:  しろ:ぽーちゃん?! あの人留守番させて大丈夫なの?! ぽろん:だいじょうぶ! こないだも、何も盗ってないって言ったもん。 さーさー、いこいこ! しろ:えっ、ちょっ、 ぽー、公園も百貨店も反対側だよ、こっちこっち! ぽろん:だいじょーぶっ! まずは向こうの商店街でお買い物するからー! しろ:えー! 名探偵の仕事するんじゃないのー?! ぽろん:うん! ぽーちゃん、名探偵だからね! しぃちゃん早くこっちこっち! しろ:ええ~?! 0: (間) ぽろん:これと、これと、これ… はい。 おばちゃんありがとー しろ:日刊スタンド… あ、そうか。他の新聞にも事件の記事が出てるはず。 へー、ぽー、意外とちゃんと考えてた! よーし、他社の新聞を片っ端から… ぽろん:ばさっ、ふぅーん? ぽい。 ばさっ、ふぅーん? ぽいっ しろ:って! 全然読んでない! 一瞬開いてもう棄ててる~っ! ぽろん:ばさっ、 ふぅーん … ねーしぃちゃぁん、 今日のおやつになんか買ってこっかぁ~ 、ぽい しろ:ぽーちゃん?! 折角買ったんだからもっとしっかり見て … ん? … あれ? ぽろん:うん? 気付いたかね? しぃ・おーぎゅすと・でゅぱんくんも しろ:うん、この新聞、どれもこれも今朝の事件どころか、昨日の公園のことも… あっ、これも こっちも…  ぽろん:ふふっ、ぽーちゃんさっすがめいたんて~い! きらーん! しろ:うん。 すごいけど…  でも、それじゃ、なんであの新聞だけ… あっ!   ぽろん:あっ、もしかしてしぃちゃんも? しろ:えっ、まさか… ぽー、最初からこの事に気がついてて… ぽろん:うん! あそこのお店のタルト、すっごくおいしそうだよね! しろ:… っ じゃなーい! 確かに美味しそうだけどちっがーう! うん、だよね~~~! まさかそんなわけなかったよね! ぽろん:えー、なあに? でゅぱんくぅん しろ:もしかしたら、しぃ・おーぎゅすと・でゅぱんはすっごいことに気がついちゃったかも! ぽー、早くうちに帰ろう! ぽろん:わっ、しぃちゃん! いたたたた あああああおいしそうなタルトぉ~~~! しろ:それはあとで! ぽろん:ああああああ! 0:(間) ぽろん:とーほほー、タルト美味しそうだったなー… ただい しろ:(すかさず)待って ぽろん:わっ、今度はなに。 急いで帰ったと思ったら急に止めて。 あー、やっぱりしぃちゃんもタルト買いに戻る? しろ:しーっ、違うよ。 気をつけて。 新聞屋さん、きっとまだうちにいるでしょ? ぽろん:うーん、そうかなぁ~ ぽーちゃんの推理だと、もういないと思うな しろ:なんで ぽろん:お皿洗い、いくら何でももう終わってるよ。 ただい しろ:待って! ぎゅむーっ!(引っ張る) ぽろん:いたたた。 なあにしぃちゃんったら しろ:ぽー、危ないって。 あの新聞屋さん、きっと何か企んでるっ、てあっ! ぽろん:ただいまあー! 玄関バターン しろ:ほらあーっ! カギが開いてるし! … あれ、 いない? ぽー、これはきっと、なんか盗まれてるかも! ぽろん:もー、しぃちゃんったら。そんなことないよ。 新聞屋さん、ドロボウはしないよ。 しろ:またそんなこと言って! いい? あいつは私たちを欺してるんだよ?! ありもしない事件をでっちあげて! ぽろん:それはぁー しろ:ほらっ、これ見て、今日あいつが持ってきたこの新聞の例の記事のとこ! これ、昨日までの新聞だとここんとこ何が載ってたか、知ってる? ぽろん:ん… しろ:『駅前百貨店』の広告欄! 昨日の朝、倒産閉店の記事が出てた、あの百貨店の、広告が載ってたんだよ。 ほら、こっちは昨日の ぽろん:ほんとだ。「くらし豊かに。駅前百貨店」。 そっかあ、このモノクルおじさんの絵もこれで見納めかぁー。これ、書庫にとっとこ しろ:そして、見て、ほら、さっきぽーが買った新聞。 どれも広告募集になってる所が必ずある…ということは… って、いない?! もーっ、ぽー、どこに… 0:(しばらくの間) ぽろん:最後のモノクルおじさん、書庫に置いてきたあ しろ:もー、ぽーったら。話聞いてる?! ぽろん:しぃちゃん、これはフェイクニュースってことだよね? しろ:… うん、そう。 他の新聞では、何も報じられてないからね ぽろん:だから、これは、事件じゃなかったって、ことだよね? しろ:うん ぽろん:見て、新聞屋さん、キッチンこーんなにピカピカに片付けてくれたし。 あのねしぃちゃん、新聞屋さんはきっと、ぽーちゃんにちょっとした仕返しがしたかったんだよ しろ:仕返し? ぽろん:毎日毎日、雨の日も風の日も、半年もの間足を運んで、新聞代を取りに来てたんだよ? きっと、上の人から怒鳴られたりもしたよ しろ:うん、そうだね ぽろん:それで昨日、ようやくためてた新聞代をまんまとせしめた しろ:せしめた…? ぽろん:そして帰り際、ちょっと思いついちゃったんじゃない? たんていじむしょの表札見てさ。 今回のこの事件のこと しろ:ただのイタズラだったってこと? それにしては、ものすごく手が込んだことしてない? ホンモノの新聞に広告記事まで頼んでさ ぽろん:ところでさ、話は全然変わるんだけど しろ:うん ぽろん:このポーの詩集の中にはね、「レイク、トゥ」っていうのがあるんだけど、タイトルのレイクとトゥの後ろにそれぞれ何かが入るみたいな、棒線、ハイフンがついてる。 ぽろん:ここって、何が入ると思う? 『 新聞屋さん 』 ?:えっ?! ぽろん:公園のこんなところで、何してるのかなぁ? またじめんをもつれさせに来たの? ?:えっ、 えっ ぽ、 ぽーさん! あ、ああ、 昨日の事件の現場を見に? あれ? しぃさんは、ご一緒じゃないのですか? ぽろん:うん。しぃちゃんはね、ここにはいないよ ?:ど、どうして ぽろん:どうして、って、なにが? あー、新聞屋さん、ぽーちゃんたちが来るわけない、って思ってたでしょ。それこそ、どうして?  ?:そ、そそそそんなことは。 事件の現場を見に来るのに、 僕がいなきゃ場所がわからないじゃないですかだから ぽろん:『 家にいるはずなのにどうして 』 でしょ? だって新聞屋さん、ずっーとぽーちゃんたちの会話を聞いてたんだから ?:そんな、どうしてそんなこと! 僕なんにも… そりゃあ、半年も通わされて、腹も立ちましたよ。だからといって ぽろん:『 こちら、 図書館も真っ青なコレクションなんでしょう? 』 今朝、新聞屋さん、そう言ってたよね ?:ええ、 言いました。 それが、なにか ぽろん:『図書館も真っ青なコレクション』 それって昨日、しぃちゃんが言ったんだよね。 あれって思って。 すぐに探したら… これ。 わかる? ?:何ですか? それ。 たこ足電源タップ、ですよね ぽろん:そう。 書庫のコンセントについてた。 これは盗聴器。 ?:そんな。はははは。 アホのあなたは想像力が豊かだ。 そんなのただの電源タップでしょ。 ぽろん:もうひとつは、リビングにあったけど。 それはそのままにしてあるよ。 そして、これ ?:エドガー・ポーの原詩(げんし)の本? ぽろん:朝には書庫なかったこれが、今はある。 そのあいだ、ウチの書庫に入れたのは、新聞屋さんだけだよね? どうしてかなあ ?:何言ってるんですか。朝は無かった、って、あんなにたくさんの蔵書の中で、こんな小さな本の一冊がそんなすぐに ぽろん:わかるよ ?:?! ぽろん:ぽーちゃんには、ちゃんとわかるんだ。 それは、この本が今どこにあったのかを知ってる新聞屋さんなら、もう分かってると思うけど ぽろん:『あんなに奥に押し込んだのに』 ここにこうして持ってきてるんだから、ねー ?:(おもむろに拍手をはじめる)はは、 ははは、 さすがです! あなたはさすが名探偵だ! アホのふりをして、僕を欺いてたんですね! ?:いいでしょう。僕は、あなたの書庫から本を無断で持ち出して、そして戻しました。 家にも無断侵入しました。 それで僕を警察に突き出すなら-- でやっ!(ぽろんを突き飛ばそうとする) ぽろん:わっとっと! もー、急に押したら危ないでしょ、ここ、地面がもつれちゃってるんだからぁー! ?:くっ ぽろん:狙ってたのは、あの家と、しぃちゃんでしょ。 新聞屋さん… ううん? 違うよね。 百貨店オーナーの、ニートな放蕩息子くんだよね? しろ:えええーーーっ?! そうなの?! ?:! しぃさん?! ぽろん:もーしぃちゃんったら。 そんなに大っきな声出したら、さすがに聞こえちゃうよ。 でももういっかぁー。 折角だから、こっちもスピーカーにするね しろ:ごめんごめん ?:ス、スマホ? ぽろん:うん。 おうちにいるしぃちゃんとね。 このワイヤレスイヤホンとー しろ:スピーカー通話中でーす。 新聞屋さん、じゃなかった。 放蕩ニートさん、音声多重で聞こえてますかー? あなたもしてますよね、ワイヤレスイヤホン ?:う、うわ、妙なラグで聞き取りにくい! ぽろん:あ、やっと盗聴器のことも認めたよしぃちゃん! 警察の人にも、ちゃんと聞こえてるかな。 いるんだよね! しろ:うん、バッチリ! ?:な… ななな… ぽろん:でも実は、本番はここからなんだよね。 よぉーし、じゃあ、今から名探偵ぽーちゃんの名推理を披露するねぇ~? 拍手っ! パチパチパチパチー しろ:拍手はまだ早いよー ?:本番?! ぽろん:そ! ここからが本番。 まずはストレートに訊いちゃうよ! ハイかイイエで答えてくれてもいいけど、答えなくてもいいでーす ?:なっ! ぽろん:第一問! じゃじゃんっ!  あなたは、これまでに二人を殺していて、 そしてこの場所に埋められている。 はい、イエスかノーか! ?:なっ、そ、そんなわけ ぽろん:第2問! じゃじゃんっ!  駅前百貨店が倒産した原因は、あなたにある! はい、どうですかー?! ?:・・・・・ ぽろん:じゃんじゃん言っちゃうよ! 第三問! あなたは、しぃちゃんのストーカーである! 半年前からウチに通ってたのは、新聞料金の徴収じゃなくて、ただただしぃちゃんの後をつけてたから! ?:う、うう ぽろん:第4問! うちの半年分の新聞代を払ってくれてたのは、あなた! 普通、新聞代金は半年もたまりませーん! 配達すぐ止まりまーす! ?:そっ、 そうだ! イエス! それだけはイエスだっ! しろ:ちょっちょっ、ぽー、ぽー!? ちょっといいかな?! ぽろん:ん、なに? しぃちゃん しろ:あのさー その楽しいクイズ演出、警察の人にすごく不信感与えてるから! 今『お遊びで我々を呼び出すな』的な空気すごいのなんとかおさめてるから! やめて! ぽろん:ええ… しょんなぁ しょぼ~ん ?:はっ、そうだ! 警察の皆さん聞こえてますか! 犯人はぼくじゃない! そいつです! こんなときに楽しくふざけているサイコパスこそ、殺人犯なんです! ぽろん:えーーっ! ちがうから! ぽーちゃんは、今からこの人に殺される所なんだから! しろ:ええーーーっ! ぽろん:もー… 警察の人? 帰らないで聴いててね。 ぽろん:事件のあらましはこう。 まず、この人は親の経営する百貨店の口座に手をつけて、大きな損害を出し、倒産に至らしめた。これは調べればすぐ分かると思う。 ?:っ… ぽろん:なぜそんな事をしたのかと言えば、今そこにいるしぃちゃんのため しろ:ええーーーっ?! ぽろん:しぃちゃぁん、あんまり叫ぶとぽーちゃんのおみみが死んじゃう しろ:ごめぇん ぽろん:この人、ずっとしぃちゃんのストーカーしてたんだ。 それも、ウチについてる防犯カメラを見れば分かるよ。 しぃちゃんと一緒に暮らしたかったんでしょ? ?:・・・・ ぽろん:そして、そんなしぃちゃんといる、ぽーちゃんが邪魔だった。 毎日読書してるおりこうで素敵なしぃちゃんと一緒にいる、アホなぽーちゃんが、うとましかった ?:ああ! そうだよ! あんたといたら、しぃさんまでアホだと思われるでしょう! しぃさんには、もっと知的で、地位も財産もある僕こそふさわしいんだっ! ぽろん:書庫も、でしょ? あのお屋敷と書庫の管理人は、ぽーちゃんにはふさわしくない。 しぃちゃんこそがふさわしいんだって。お金も、最初はここを買い取るつもりで用意しようとした ?:そうです! あんたなんかにあの屋敷も書庫も勿体ない! あの家に住むのは文学を愛する紳士淑女であるべきなんだ! だからあの屋敷を買い取るために僕は! ぽろん:でも、失敗した。 やむなくあなたは、自分の父親を手にかける羽目になった ?:う…っ ぽろん:そして、公園の、ここに父親を埋めた。 ここは、『 地上がもつれちゃってる 』からね しろ:ぽー? 昨日から一体何なの? その『地上がもつれちゃってる』、って … あ、そっか、 ぽー、それって、『あの場所』だね?! ぽろん:そう、今ぽーちゃんがどこにいるかって言うとね、公園の奥の、やぶの向こう側の、しぃちゃんの穴掘り秘密基地だよ しろ:やっぱりー… でも、どうしてそこを知ってるの?! 表からは完全に隠れてて、今まで誰も入ってきたことないところだよ? ぽろん:ストーカーだから。 だからずっと、知ってたんじゃないかな。 ここで大きな穴をいっぱい掘ってるしぃちゃんのこと しろ:そっか… えっ、しぃ、もしかして実はすごく危なかった? ぽろん:そー。だから、しぃちゃんにおうちにいてもらってるの。 危ないし、それに狙いは、一人でここに来たぽーをやっちゃうためだからね しろ:そ、そんな… えっ? 一人で来た、ぽーちゃんを? ぽろん:そー。 話は前後しちゃうけど、 昨日、すぐに現場を見に行こうとしたぽーちゃんたちを、警察が来てるからって止めたよね しろ:うん。そうだった ぽろん:あれは、まだ準備できてなかったからなんだよ。 ぽーちゃんを落とすための落とし穴。 しぃちゃんの掘った大きな穴のどれかを落とし穴に仕立てる準備が、できてなかった ぽろん:だから、ぽーちゃんは今朝、わざと新聞屋さんを残して出かけたんだ。 きっと、この隙にぽーちゃんへの罠を準備するだろうって思ってさ。 あと、このポーの原詩の本を書棚に戻すだろうとも思ったから ?:な、ななな… 僕は… あの時から… はめられてたっていうのか ぽろん:話をもどすね。 ぽろん:とにかく、穴掘り大好き名人のしぃちゃんが掘った穴だらけのここなら、殺してしまった父親を埋めてしまうのにうってつけだった。 きっとそれで、うまくいくって思ったところもあったと思う ぽろん:昨日、ついに新聞代の徴収を装って直接しぃちゃんと言葉を交わすことに成功したとき… ぽーちゃんへの憎しみが更に強くなった。 その帰り道に公園を通ったとき、ひらめいたんだ ?:・・・・・・ ぽろん:ここに、ぽーちゃんも葬ってしまえばいいんだって。 案の定、こうしてあなたは、ここに落とし穴の準備に来てた。 夕方にでも、ぽーちゃんだけ呼び出すつもりで ぽろん:今朝の朝刊の事件は、もう一人、邪魔な百貨店の役員か、それとも家族の誰かかを始末したんだと思う。 深夜、百貨店の裏の路地でね。 穴の準備の時間稼ぎも兼ねて ぽろん:はす向かいの新聞社に、広告記事は昼間のうちに頼んでおいたんでしょ? 新聞社に訊いてみたら、そこでは広告の締め切りは午後3時だって しろ:昨日、最後にわたしたちの家から出て行ったのは2時前だから、それから広告記事を作ってもまだなんとか間に合うね。 しろ:でもぽー、どうしてエドガー・ポーの詩を選んだの? ぽろん:それはもちろん、ぽーちゃんと同じ理由だよ! しろ:ええ? ぽーちゃんだけに、ポーってやつ? ぽろん:うん! だってきっと外で聴いてたもんね。 その会話も。 ポーになぞらえて、最後に名探偵ぽーを殺す。 そんなシナリオ描(えが)いたんでしょ ?:くうう…っ こ、こうなったら警察がここに来る前に逃げるしか…っ 覚えてろよぽー! いつか、僕はこの社会を裏から操るっ… ぽろん:えいどぉーんっ! ?:うあ、あ、(落ちそうになるのを踏みとどまろうとふらつく)ああ~あ っ! (しかし結局落下) うわああああっ ! くっ … いたた… こんなところに穴が… あったなんて ぽろん:残念でしたー。 しぃちゃんの掘った穴の位置は、ぽーちゃん完璧に把握してるもんね! ここはけっこう前にぽーちゃんが仕立てたハイレベル落とし穴でーす! ぜんぜん分からなかったでしょ ぽろん:ちなみに、ここでぽーちゃんを罠にかけたときに使うはずだった詩も当ててあげよっか。 『 レノア 』。 なくした恋人を丁寧に埋葬する作法を綴った詩(うた)。 ぽろん:婚姻の賛歌、『 ユウラリィ 』、憧憬への賛美歌『 トゥ・ヘレン 』、そして、大事な人を亡くした嘆き『 レノア 』 …ぜんぶ、しぃちゃんのために、選んだんでしょ ?:・・・・っ (諦めのため息)ふぅ… …  はは…っ ここまでとは思ってなかったよ。 …最初から何もかも、お見通しだったなんて… ぽろん:ふふーん! ぽーちゃんは、めいたんてい! なのでぇーっす! えっへん! 0: (間) しろ:ぽーちゃーーん! ぽろん:あっ、しろー! こっちこっち しろ:よかった、ぽーちゃんが無事で ぽろん:よかった、しぃちゃんが無事で しろ:警官さーん! こっちでーす! ぽろん:ありがと、しぃちゃん。 しろ:ありがと、ぽーちゃん 二人:ふふ、ふふふ ぽろん:あ ?:・・・最後に、一つだけ訊きたい ぽろん:なあに? ?:どうして、本がどこにあるかすぐに分かったんだ… それだけが、どうしてもわからない ぽろん:ふぅん…、ええとね、 あっ、そうだ。 世界で初めて書かれた推理小説に出てくる名探偵、シー・オーギュスト・デュパンの言葉を借りるなら ?:エドガー・ポーの、『 モルグ街の殺人 』…? ぽろん:ふふん。 ぽーちゃんはね、『嗅ぎ残さなかった』 んだよ ?:えっ…か、嗅ぎ…? ぽろん:ふふっ、ぽーちゃんたちの家系はね、みーんな、本の匂いが大好きなんだよ ?:…、に、匂い? ですか?! ぽろん:そう! 本はそれぞれ、書いてあるモノの匂いがするんだよ。 その匂いが、ぽーちゃんたちの中に、全部入ってるんだー。 だから、書庫の中で欲しい本の匂いがあるかどうか、すぐにわかる! ?:は、はは… 匂いを全部… か、 そりゃ、敵わないね… はは… ?:ちなみに…、ポーの原詩の本はどんな匂い、なんですか? ぽろん:夜の湖の向こう側の、死の匂い ?:『ザ・レイク--、 トゥ--』 ぽろん:湖のなにか。 だれかへ。 この詩は、ポーが自分の内面を自分に宛てているんだと、ぽーちゃんは思うよ。 はい、これ。 持ち出し禁止だけど、かしてあげる ?:えっ、この本… いいんですか? ぽろん:原題の隠されたところこそ、この詩の主題で、それはその空欄を埋める文字を、自分の中に見つけることじゃないかなあ。 だから、 ぽろん:出られたら、絶対に返しに来てね。 そしたら、その時に新聞屋さんが見つけた答えをきくからさ。 ぽーもしぃちゃんも、待ってるね ?:ぽーさん… しぃ、さん… しろ:もー、ぽーったら。でも、ぽーがそう言うなら、まあ、いっか ぽろん:書庫に無くても、匂いも中身も思い出せるしね ?:! もしかしてぽーさんは… あの蔵書の全てを? ぽろん:ふふーん、ぽーちゃんはアホだけど、バカじゃないのでーすっ! じゃあね、今度は、恋に飲まれないように、ね ?:っ… はい! 0: (間・場面転換) ぽろん:はーーーー、やっぱりこのお店のタルト、当たりだったーーー!  ふぅ、紅茶もおいしいね、しろ しろ:そうだね。フルーツたっぷりタルトはコーヒーよりも紅茶が合うねえ しろ:・・・・・・ しろ:だけど、ぽー? ぽろん:なーにー? しろ:ぽーが昨日、急に探偵になりたいって言い出したのって… ぽろん:ふふーん、おもしろかったけど、ちょっと怖かったし、今度はぽーちゃん、作家になろうかなぁ~ しろ:ちょっとぽーぉ? ぽろん:めいたんていの頭脳をいかして、推理小説なんてどうかな。タイトルは、『エドガー・ポーは死の薫り』! なーんちゃって! しぃちゃん、まーた止(と)めるんでしょー しろ:・・・・・・ ぽろん:しぃちゃん? しろ:ううん? 好きにしたらいいと、おもうよ? ぽろん:・・・・・ しろ:ぽーちゃん? ぽろん:と、とめないんだ? しろ:だって、まわりにそんな迷惑かからなそうだしー。 大人しくしててくれたらしぃも読書に専念できる ぽろん:むうううー、しぃちゃん?! しろ:ふふふっ、 ぽーちゃんが書いたら、どんなひどい事件もきっと楽しいお話になるよ。 あー、楽しみだなー! ぽろん:えっ、ほんと?! しぃちゃん読んでくれるの?! よーし、ぽーちゃん、頑張っちゃうぞ~~! 0:笑い合う二人 0:  ?:のちに警察により、僕の起こした全ての罪は暴かれ、希代の名探偵、ぽーさんの最初の事件は幕を閉じたのだった。  ぽろん:ふー、つかれちゃった! 早起きしたし、ぽーちゃんちょっとおひるねー しろ:おしまい!

ぽろん:あー、ひまー しろ:ふぅん。 しろは今、本を読んでるからそれなりに楽しいけど? ぽろん:ねえしぃちゃん しろ:なに ぽろん:ひまだからさ しろ:何かまたヘンなこと言い出すんじゃないよね ぽろん:名探偵になろうかな しろ:ほらあー! きたあー なんでまたとんでもないこと言い出すの。ひまって言ったって、この屋敷には図書館もまっつぁおなくらいの書庫があるでしょ ぽろん:うんまあ。ぽーちゃんちは、代々本を集めるのが好きだったからねえ? しろ:ならその空っぽっぽなてんてんおつむに、少しは何かを詰めてみたらどうだい。 で、なんでまた急に探偵? ぽろん:たのしそうだし しろ:楽しそうって、いいかい、名探偵って、頭が賢くないとなれないんだよ? きょうのあすのあさってで、突然おりこうさんになれるのかい、君は ぽろん:ええ? ぽーちゃん、そこそこおりこうさんだよ。「まて」とかできるよ しろ:まてくらいできてよ ぽろん:じゃあ、しぃちゃんの思うおりこうさんってなんなのさ しろ:それはー ぽろん:あーまって。 推理する。 ぽーは名探偵だからね、名探偵ぽー しろ:なに、名探偵ぽーって。 わかった、推理小説の生みの親、エドガー・アラン・ポーとかけて、ぽーちゃんとといたな? ぽろん:わあ、名探偵しぃちゃんだ しろ:ええ、まさかのあたり?! ぽろん:うん! さすが、しぃ・おーぎゅすと・でゅぱん。 ぽーの見込んだ名探偵 しろ:ポーの最初に書いた推理小説、「モルグ街の殺人」に出てくる天才名探偵、C・オーギュスト・デュパンかあ。 しろ:のちにドイルがそのままの形でホームズのモデルにしたんだよね。 ふふん。 まんざらでもないかも ぽろん:で、そのめいたんていしぃちゃんが言いたいのは、きっとこうだよ ぽろん:おりこうさんとは、突然名探偵になるとか、いわないことだー! ってね。 どう、しぃちゃん、あたってる? しろ:なんだ、わかってるじゃないか ぽろん:ほら、やっぱりぽーちゃん、てんさい! 名探偵にふさわしい、ずのうの、もちぬし! よーし、今日から、名探偵だあ! しろ:まて! ぽろん:うっ! しろ:そう、まて。 ぽーは、まてができるお利口さんなんだよな? ぽろん:ううっ、しぃちゃん、痛いところを しろ:そうだ、ぽーちゃん、君は「まて」ができるおりこうさんなんだ。 全ての名探偵の始祖、しぃ・オーギュストが命ずる。 ぽーは、まて。まてだ。 えらいぞー、ぽー ぽろん:ぐぬぬぬぬっ その世紀の名探偵、デュパンを産んだのは、ぽーなんだからねっ、ぐぬぬぬぬぬっ しぃちゃん、おねがいだ。まてを解いて しろ:いやだね! まてを解いたら、天井板の一枚でもはぎとって、名探偵ぽーのたんていじむしょ、とかお習字で書いて玄関の外に貼るんだから ぽろん:ぐにゅにゅにゅにゅゥ~! しぃちゃん、めいたんていすぎにゅ~~~! だがしかーし! ?:ピンポーン! ぽろん:ほぉら、早速おいでなすったぜぇ~ぃ しろ:ま、まさか ?:ピンポーン! ドンドンドン! ごめんくださーい! ぽろん:もう、表札つけてあるんだもんね! じつは、昨日からかんがえてて、朝にはもうかかってたんだもんね! しろ:ええっ、と、ということは、まさか… ?:ドンドンドン! ピンポピンポ! ピンポ! ごめんくださーーーーい! ぽろん:ほらっ、こんなに慌てて。 きっと大事件で切羽詰まってるんだよ。早く開けてあげないと! はやく「まて」解除ォ~ しろ:だーめ、しろが出るよ! はいはい、今開けまーす。 ガチャ ?:はあ、やっと開いた。 あのう… ぽろん:(中から大声で)こちら名探偵ぽーたんていじむしょでえす! 事件ですかっ、だいじけんですかっ! しろ:こらうるさいよ! で、どんな事件でしょう、じゃなかった ?:事件、はあ、事件ねえ。 ええと、僕にとってはけっこうな大事件なんですけど しろ:ええっ ぽろん:はい! 名探偵ぽーちゃん! どんなことでも! ぱぱっとかいけつ! しちゃいますよーーッ! ?:あの、新聞代、今日こそ払ってください。6ヶ月分 ぽろん:えーーーーーー…、 うち、新聞なんてうけとってませーーーん! さいきんはぁー ずっとぉー、しんぶんやさんが、はいたつしてくれなくってぇ~ ?:おたくが未払いだからでしょう! 6ヶ月分! 配達は随分前に止まってますよ! お金払ってないんだから! ぽろん:あ、 、、、 あーーーーー…  ?:通い続けて6ヶ月、やっと玄関が開いたんだ。 今日という今日は、きっちり払って貰いますからね ぽろん:んんんーーー じつは、今、「まて」中なんでうごけないですねー、 ぽーちゃんはまてができるおりこうさんなので、うごけないんですねー、あはー残念 しろ:ぽー、 … まて解除 0:  0:  ?:(タイトル的ナレーション)『名探偵 二重抹消線 ぽー と 名探偵しぃのたんていじむしょ』 0:  しろ:(わざとらしく紳士ぶった感じになってる)ふむふむ、今日の一面は…駅前通りの百貨店突然の倒産… これは驚き。 ふむ、世の中厳しいねえ ぽろん:6ヶ月ぶんの新聞代、2万もとられちゃった。 ぬぅーん… まさか新聞お金を出して読む日が来ようとは… 名探偵のしったい しろ:踏み倒そうとしていたのかい君は。 いいかい、新聞は買わなければ読めないものだよ。 街のゴミくず箱には入ってるかもしれないが、その新聞はすでに死んでいる。 『しんぶんし』、だ ぽろん:自分ちで新聞とらないで、ぽーちゃんがお財布はたいた新聞読んでるしぃちゃんが説くかなそれ。 表札まで書き換えちゃってさ。 あーあ。 あ、しぃちゃんコーヒーと紅茶、どっちのむ? しろ:紅茶かな ぽろん:あいあいさー。 そうだ。昨日しぃちゃんが買ってきたガナッシュ出すね しろ:いいねえ。 だったら、コーヒーかな。 コロンビア産がいい。 モカに似たまろやかな口当たりに少しだけ酸味があるから、ガナッシュにぴったりだよ ぽろん:コロンビアさんの、豆…?  あのさ。しぃちゃん、 なんかキャラ、いつもとちがくない? しろ:べつに? ぽろん:ほんとにー? ちょっと、インテリぶってない? しろ:ううん? しぃは、最初から、 紳士だよ? ぽろん:しぃとかいって、めいたんてい、してない? しろ:ははあ、なにをいってるのだね、君は。 そうそう、今新聞にね、そのガナッシュを買った駅前百貨店が ?:そういうところじゃ、ないですかね しろ:わあ! ぽろん:わあ! ?:ああ、いい香りですねえ、コロンビア・コーヒーは しろ:ぽー、この人勝手にひとんちのコーヒーいれてくれてるよ? ぽろん:あっ、ありがとう。 それただのインスタントコーヒーだけど しろ:いや、なんだね君は。ここはわたしたちの家なのだが? ぽろん:いやしぃちゃんも。ここぽーちゃんちだけども…? で、し、しししししんぶんやさん、 ま、まだ、おだいが…? ?:いえ、お代はしっかりいただきましたよ。 ときに、お二人は名探偵だとか ぽろん:きらーん! はい! そうです! わたしは名探偵ぽー! こっちは助手のしぃちゃ… しろ:しぃ、おーぎゅすと、でゅぱん、と申します。 で、事件ですか、事故ですか。 ほら、ぽー、お客様にガナッシュを ぽろん:あいあいさー! って、アレ??? ?:ええ、事故じゃないと、思います しろ:では、事件ですね ?:ええ、まあ… はい。 しろ:なるほど? ぽろん:と、名探偵の助手しぃ・おーぎゅすと・でゅぱんはすこし考えるふうに、テーブルにひじをついた。 べべん! しろ:ええと、ではまず確認ですが ?:はい しろ:ひとんちに勝手に上がり込んで自分で自分のコーヒーを、しかも自分のだけ用意するっていう事件であってます? ぽろん:あっほんとだ! 一つしか淹れてなくてしかもそれを自分で飲んでる! ?:あっ、湯飲みが一つしかわからなかったので。 おいれします? 美味しいですよ? ズズー(すする) ぽろん:ねー、このひと飲んでるのコーヒー? それともお茶ぁ? しろ:いいから、ぽーは当初の予定通りわたしたちのコーヒー淹れてくれない? ぽろん:あいあいさー! ?:いいえ。 僕はちゃんと、探偵事務所のお客としてここにいます しろ:ほう ぽろん:はいー、コーヒーとガナッシュおまたせいたしましたあ ?:あっ、いただきます。 (もぐっ) ?:(頬張りつつ)まずは、これなのですが もぐもぐ ズズー ふぅ(咳払い) ぽろん:? 紙切れ? メモ? しろ:どれ… ふむ… わあ、英語だ… ええーと?  ホワィル、エバー・トゥ・ハー… ヤン・ユーラリィ  … アップターン、サー・ ヴァイォリット、…アイ ?  0:※(Whale ever to her young Eurally, Upturns her violet eye.) ぽろん:『 あどけなきユゥラリィ 永遠に そのすみれの瞳で 僕をみあげて 』 ? ?:ほう しろ:なんだろ。詩の一節? ぽろん:ぽーちゃんは、詩だったらシェイクスピアのソネットが好きだなあ。 ソネット113。 シンス・アイ・レフト・ユー 、 マイ・アイズ・イズ・マイ・マインド。 0:※(Since I left you. My eyes is my mind) ぽろん:『君がいなくなってから 僕の目は…』っていうの。 韻(いん)の置きかたがおもしろいよね しろ:ぽー、いちおう本は読んでたんだね。 まあ、しぃ・おーぎゅすと・でゅぱんも知ってたわけだしね ぽろん:うん? ポーの詩のちゅうにっぽいとこも好きだよ? ?:あの、ぽろんさんは、アホな見かけによらず詩がお好き… じゃなくて、あの。その紙 しろ:ああ。 ええと、これが、どうかしたんですか? ?:ここに来る途中、拾いました。 で、よく考えたら、その側に誰か、倒れていて… 死んでたと思います しろ:ええっ?! ぽろん:ええっ?! しろ:け、警察は? ?:けいさ… あ、 あーーー… 、 6ヶ月分の取り立てのことで頭がいっぱいで。 でももう誰か通報したんじゃないかと しろ:ええ… ぽろん:なんでこれだけひろったの? ?:それは… 急いでいたので、新聞代の請求書兼領収書の紙束を握ったままだったのを …落としてしまって。 拾い集めた中のこのメモに気がついたのは、ここで代金を受け取って、帰る途中です ぽろん:そうだよね? 新聞屋さん、一回帰ったよね? ?:はい。 で、こちらに名探偵の表札の出ていたことを思い出し、戻ってきたのです。 が、ピンポン鳴らしたらまた居留守を使われるかと思い、玄関を開けてみたら中に入れたので上がり込み、まずは色々と物色してました しろ:おまわりさーーーん! ?:何も盗ってませんよ! ただ見てただけです! 住んでいるアホに似つかわしくないお屋敷だなあと思って ぽろん:ぽーちゃんちは、ゆいしょただしき、ちすじなの! アホとか、関係ないの! でもしぃちゃん、ほんものの事件だよ! 名探偵初仕事は殺人事件だよ! 早く現場を見に行こう! おーーー! しろ:ええっ、いくの?! てか、アホでいいの?! ?:あの、今頃は、警察が来て立ち入りできなくなってるんじゃ… 行ってもどうせ、何も見られませんよ しろ:ああ、そうだ。 ぽー、今行った所でどうせただの野次馬だ ?:明日にはきっと規制も外れているんじゃないでしょうか。その時にしましょう ぽろん:ううん、 そっかぁー しろ:まずは、どんな場所だったのか、どんな現場だったのか、彼にもう少し詳しく訊こうじゃないかね? 名探偵ぽー ぽろん:そっか、そうだね! あいあいさー! 0:  0: 間 0:  ?:(ナレーション) 夜! しろ:倒れてたのは、男。 ふぅむ? 現場は、2本の大通りに挟まれた公園。 駅方面からこっちの住宅街に来るのには公園を通り抜けた方が近いから、通行人も少なくない。 でも、少し入れば死角はたくさんあるね ぽろん:うーーーん しろ:この詩の一節は、被害者のものかな。 なんの詩だろう ぽろん:『 ぼくは ひとり 泥の世界で うなってた 』 しろ:んん? ぽろん:『 きれいで優しいユゥラリィが ぼくのそばに きてくれるまでは 』 『 密色の髪したユゥラリィが 頬を染めて ぼくの世界に きてくれるまでは 』 しろ:ええ? ユーラリィ、って、さっきの? ぽろん:? ポーの、『ユゥラリィ』だよ? 根暗なぼっち男が、優しくてきれいな女の子と結婚できて、喜んでるってうた。 紙に書いてあったのは、それの最後の行 しろ:そ、そうなんだ。 ええと、じゃあ、この被害者は、そのポーの詩を持ってたって事か。 なんで最後の行だけ… 公園、結婚を喜ぶ詩(うた) ぽろん:ぷろぽーず? しろ:あっ、 そうか。 もしやこれは、 チジョーのもつれ? とかいうやつかな ぽろん:ちじょー? 地面が、もつれたの!? こわ! じゃあ、 ぽーちゃんのすいりは、はずれかなあ しろ:よくわかんないけど、外れだと思うな。 よくわかんないけど ぽろん:そっかぁ。 しょぼーん しろ:一応訊くけど、どんな推理だったの ぽろん:んーーーーーー? ねくらぼっちの『僕』とユゥラリィは、ほんとに結婚したのかなぁーって。 二次元の花嫁、ってやつじゃない? だって、ねくらのぼっちだよ? しろ:事件のほうじゃないんかい! はあ。 じゃあ明日になって、公園見に行ってみたら何かわかるかも。 散歩にもちょうどいいし ぽろん:うぅーん しろ:なに、どうしたの ぽー。 なんか気のない返事だね。 昼間はあんなに行く気満々だったのに ぽろん:だ、だって。 ち、ちじょうが、もつれちゃったんでしょ…? 歩くのこわくない? しろ:その地上じゃないから!  あれっ、もうこんな時間だよ。 ぽー、今日はもうねよっか ぽろん:しぃちゃん、もはやおうちにも帰らないんだ 0: しろ:(ナレーション)つぎのひ!  ?:ドンドンドンドン! ピンポーン! ピンポーン! ぽろん:ううーん、むにゃむにゃ… だあれ? こんなあさはやく… ふァ~~~… ガチャ ?:あっ、おはようございます! ぽろん:んんん… しんぶんやさん? …新聞はポストにいれてってよ、ふァ~~~…アム… ?:いえ、見てください、この記事! しろ:ふむ? なになに? 『昨夜、駅前通り裏で殺人。詩の一編が残される』?! これは! ?:ね、しぃさん、ぽーさん、これは、あれですよね?! しろ:例の、倒産した百貨店の裏手の細い路地か。 その側に落ちていた詩の一編が書かれたメモ… えーと、なになに? うわーまた英語ばっかり しろ:アゲートランプ… ウィズイン ・ ユアハンド…  オー ぷさ、ぷさなんとか、…なんとか ホーリィ… ランド…? ぽろん:ぷさ? しぃちゃんそれ、『サイキィ』だよ。 『 手には瑪瑙(めのう)のランプ ああ、そなたは聖なる国より降り立ちし精霊サイキィ 』 ?:僕が昨日拾ったメモと同じ、ポーの詩の最後の一節…。 これは『トゥ・ヘレン』、でしたっけ ぽろん:ということは、ポーの詩をもってると… ねらわれる? あわわわ… どうしようしぃちゃん。 うちの本棚、ポーの詩集もいっぱいあるよ しろ:いや逆でしょ ?:そうですよ。 これはむしろ犯人が… っていうか、ぽーさん? あなた名探偵なんですよね?! 本当に? しろ:(またしてももったいぶった口調に戻る)いいえ。 そやつはただのアホ。 名探偵はワタシです。 ワタシの名はしぃ・おーぎゅすと・でゅぱん ぽろん:むむー! ぽーちゃんもめいたんていだよ! ?:しぃさん、彼女のことはほっときましょう あ、朝ご飯はフレンチトーストで しろ:あ、しぃも! ぽろん:ええー! 0:  0:(間) 0:  ?:ふぅ~、名探偵といただく朝食は格別に素敵ですねえ。 おや、今朝のコーヒーはブラジリアですか。 マイルドな口当たりが朝にピッタリです ぽろん:コーヒーはインスタント! でも言うだけでそんな気がしてくるから、いっかあ ?:そしてこのフレンチトーストはキャラメリゼですか? 何とも香ばしい香りだ ぽろん:えへ~ ココナッツのシロップ焦がしちゃってごめぇん しろ:で、今朝の新聞、っと。 ふぅん… ポーの詩の最後の一節、かあ。『ユウラリィ』はプロポーズの詩だったけど、今度の『トゥ・ヘレン』はどんな詩かな ぽろん:うちの書庫にあるけど、しぃちゃん見る? ?:あ、書庫! こちら、 図書館も真っ青なコレクションなんでしょう? 僕、ちょっと見てきていいですか?  ぽろん:わー、もしかしてうちの書庫って、有名? いいけど、でも、貸出はできないよ? ?:勿論です! じゃあ僕が今から探して… ぽろん:(遮って)じゃあ、今はぽーちゃんが! 書庫からポーの詩集、超スピードで持ってきまあす! ただいま! しろ:はや! ぽろん:ふふーん。 ほめて! サイキィ読めないしぃちゃんのために、訳したやつのほうをもってきた ぽろん:(小声)なあんて、ほんとは原文のほうのやつが見つからなかっただけなんだけど、 そっちで聴いてくれてるみんな? それはしぃーっだよ? しぃちゃんだけにしぃーっ、ね ?:? しろ:わあ! ありがとう ぽろん:ふひひ。 やったー。 はい。 このページ! しろ:ん(受け取る)、どれどれ? … ふむふむ … なるほど。 ひたすらヘレンがきれいだ、って詩みたい …となると、やっぱり、ちじょうのもつれ…? ぽろん:えーっ! また、地面がもつれちゃうの? やだあ~~~ しろ:いやもつれないから! ぽろん:ほ、ほんとに…? しろ:ほんとに ぽろん:しんぶんやさんも? ?:え、ええ ぽろん:そっかあ、 うん、 (間)…ほんとだね?! しろ:ほんとだよ! ?:そうですよ ぽろん:よかった! じゃ、朝ごはんも美味しかったし、そろそろ出かけよっか しろ:よし! ?:あっ、ついにその新聞の現場に行くんですね! ぽろん:そのとおり!  めいたんていぽーちゃんアンドしぃちゃんは! 事件の現場を見に行くのです! おー! しろ:おー! ?:おおー パチパチパチパチ あっ、では昨日の公園のほうの現場にも? ぽろん:(かぶせて、または間髪入れずに)じゃー新聞屋さん、お皿洗っといてねー! 行こーしぃちゃん玄関バターン! ?:えっあっ、あの、僕が行かなきゃ場所が!  あーーー…  0:  しろ:ぽーちゃん?! あの人留守番させて大丈夫なの?! ぽろん:だいじょうぶ! こないだも、何も盗ってないって言ったもん。 さーさー、いこいこ! しろ:えっ、ちょっ、 ぽー、公園も百貨店も反対側だよ、こっちこっち! ぽろん:だいじょーぶっ! まずは向こうの商店街でお買い物するからー! しろ:えー! 名探偵の仕事するんじゃないのー?! ぽろん:うん! ぽーちゃん、名探偵だからね! しぃちゃん早くこっちこっち! しろ:ええ~?! 0: (間) ぽろん:これと、これと、これ… はい。 おばちゃんありがとー しろ:日刊スタンド… あ、そうか。他の新聞にも事件の記事が出てるはず。 へー、ぽー、意外とちゃんと考えてた! よーし、他社の新聞を片っ端から… ぽろん:ばさっ、ふぅーん? ぽい。 ばさっ、ふぅーん? ぽいっ しろ:って! 全然読んでない! 一瞬開いてもう棄ててる~っ! ぽろん:ばさっ、 ふぅーん … ねーしぃちゃぁん、 今日のおやつになんか買ってこっかぁ~ 、ぽい しろ:ぽーちゃん?! 折角買ったんだからもっとしっかり見て … ん? … あれ? ぽろん:うん? 気付いたかね? しぃ・おーぎゅすと・でゅぱんくんも しろ:うん、この新聞、どれもこれも今朝の事件どころか、昨日の公園のことも… あっ、これも こっちも…  ぽろん:ふふっ、ぽーちゃんさっすがめいたんて~い! きらーん! しろ:うん。 すごいけど…  でも、それじゃ、なんであの新聞だけ… あっ!   ぽろん:あっ、もしかしてしぃちゃんも? しろ:えっ、まさか… ぽー、最初からこの事に気がついてて… ぽろん:うん! あそこのお店のタルト、すっごくおいしそうだよね! しろ:… っ じゃなーい! 確かに美味しそうだけどちっがーう! うん、だよね~~~! まさかそんなわけなかったよね! ぽろん:えー、なあに? でゅぱんくぅん しろ:もしかしたら、しぃ・おーぎゅすと・でゅぱんはすっごいことに気がついちゃったかも! ぽー、早くうちに帰ろう! ぽろん:わっ、しぃちゃん! いたたたた あああああおいしそうなタルトぉ~~~! しろ:それはあとで! ぽろん:ああああああ! 0:(間) ぽろん:とーほほー、タルト美味しそうだったなー… ただい しろ:(すかさず)待って ぽろん:わっ、今度はなに。 急いで帰ったと思ったら急に止めて。 あー、やっぱりしぃちゃんもタルト買いに戻る? しろ:しーっ、違うよ。 気をつけて。 新聞屋さん、きっとまだうちにいるでしょ? ぽろん:うーん、そうかなぁ~ ぽーちゃんの推理だと、もういないと思うな しろ:なんで ぽろん:お皿洗い、いくら何でももう終わってるよ。 ただい しろ:待って! ぎゅむーっ!(引っ張る) ぽろん:いたたた。 なあにしぃちゃんったら しろ:ぽー、危ないって。 あの新聞屋さん、きっと何か企んでるっ、てあっ! ぽろん:ただいまあー! 玄関バターン しろ:ほらあーっ! カギが開いてるし! … あれ、 いない? ぽー、これはきっと、なんか盗まれてるかも! ぽろん:もー、しぃちゃんったら。そんなことないよ。 新聞屋さん、ドロボウはしないよ。 しろ:またそんなこと言って! いい? あいつは私たちを欺してるんだよ?! ありもしない事件をでっちあげて! ぽろん:それはぁー しろ:ほらっ、これ見て、今日あいつが持ってきたこの新聞の例の記事のとこ! これ、昨日までの新聞だとここんとこ何が載ってたか、知ってる? ぽろん:ん… しろ:『駅前百貨店』の広告欄! 昨日の朝、倒産閉店の記事が出てた、あの百貨店の、広告が載ってたんだよ。 ほら、こっちは昨日の ぽろん:ほんとだ。「くらし豊かに。駅前百貨店」。 そっかあ、このモノクルおじさんの絵もこれで見納めかぁー。これ、書庫にとっとこ しろ:そして、見て、ほら、さっきぽーが買った新聞。 どれも広告募集になってる所が必ずある…ということは… って、いない?! もーっ、ぽー、どこに… 0:(しばらくの間) ぽろん:最後のモノクルおじさん、書庫に置いてきたあ しろ:もー、ぽーったら。話聞いてる?! ぽろん:しぃちゃん、これはフェイクニュースってことだよね? しろ:… うん、そう。 他の新聞では、何も報じられてないからね ぽろん:だから、これは、事件じゃなかったって、ことだよね? しろ:うん ぽろん:見て、新聞屋さん、キッチンこーんなにピカピカに片付けてくれたし。 あのねしぃちゃん、新聞屋さんはきっと、ぽーちゃんにちょっとした仕返しがしたかったんだよ しろ:仕返し? ぽろん:毎日毎日、雨の日も風の日も、半年もの間足を運んで、新聞代を取りに来てたんだよ? きっと、上の人から怒鳴られたりもしたよ しろ:うん、そうだね ぽろん:それで昨日、ようやくためてた新聞代をまんまとせしめた しろ:せしめた…? ぽろん:そして帰り際、ちょっと思いついちゃったんじゃない? たんていじむしょの表札見てさ。 今回のこの事件のこと しろ:ただのイタズラだったってこと? それにしては、ものすごく手が込んだことしてない? ホンモノの新聞に広告記事まで頼んでさ ぽろん:ところでさ、話は全然変わるんだけど しろ:うん ぽろん:このポーの詩集の中にはね、「レイク、トゥ」っていうのがあるんだけど、タイトルのレイクとトゥの後ろにそれぞれ何かが入るみたいな、棒線、ハイフンがついてる。 ぽろん:ここって、何が入ると思う? 『 新聞屋さん 』 ?:えっ?! ぽろん:公園のこんなところで、何してるのかなぁ? またじめんをもつれさせに来たの? ?:えっ、 えっ ぽ、 ぽーさん! あ、ああ、 昨日の事件の現場を見に? あれ? しぃさんは、ご一緒じゃないのですか? ぽろん:うん。しぃちゃんはね、ここにはいないよ ?:ど、どうして ぽろん:どうして、って、なにが? あー、新聞屋さん、ぽーちゃんたちが来るわけない、って思ってたでしょ。それこそ、どうして?  ?:そ、そそそそんなことは。 事件の現場を見に来るのに、 僕がいなきゃ場所がわからないじゃないですかだから ぽろん:『 家にいるはずなのにどうして 』 でしょ? だって新聞屋さん、ずっーとぽーちゃんたちの会話を聞いてたんだから ?:そんな、どうしてそんなこと! 僕なんにも… そりゃあ、半年も通わされて、腹も立ちましたよ。だからといって ぽろん:『 こちら、 図書館も真っ青なコレクションなんでしょう? 』 今朝、新聞屋さん、そう言ってたよね ?:ええ、 言いました。 それが、なにか ぽろん:『図書館も真っ青なコレクション』 それって昨日、しぃちゃんが言ったんだよね。 あれって思って。 すぐに探したら… これ。 わかる? ?:何ですか? それ。 たこ足電源タップ、ですよね ぽろん:そう。 書庫のコンセントについてた。 これは盗聴器。 ?:そんな。はははは。 アホのあなたは想像力が豊かだ。 そんなのただの電源タップでしょ。 ぽろん:もうひとつは、リビングにあったけど。 それはそのままにしてあるよ。 そして、これ ?:エドガー・ポーの原詩(げんし)の本? ぽろん:朝には書庫なかったこれが、今はある。 そのあいだ、ウチの書庫に入れたのは、新聞屋さんだけだよね? どうしてかなあ ?:何言ってるんですか。朝は無かった、って、あんなにたくさんの蔵書の中で、こんな小さな本の一冊がそんなすぐに ぽろん:わかるよ ?:?! ぽろん:ぽーちゃんには、ちゃんとわかるんだ。 それは、この本が今どこにあったのかを知ってる新聞屋さんなら、もう分かってると思うけど ぽろん:『あんなに奥に押し込んだのに』 ここにこうして持ってきてるんだから、ねー ?:(おもむろに拍手をはじめる)はは、 ははは、 さすがです! あなたはさすが名探偵だ! アホのふりをして、僕を欺いてたんですね! ?:いいでしょう。僕は、あなたの書庫から本を無断で持ち出して、そして戻しました。 家にも無断侵入しました。 それで僕を警察に突き出すなら-- でやっ!(ぽろんを突き飛ばそうとする) ぽろん:わっとっと! もー、急に押したら危ないでしょ、ここ、地面がもつれちゃってるんだからぁー! ?:くっ ぽろん:狙ってたのは、あの家と、しぃちゃんでしょ。 新聞屋さん… ううん? 違うよね。 百貨店オーナーの、ニートな放蕩息子くんだよね? しろ:えええーーーっ?! そうなの?! ?:! しぃさん?! ぽろん:もーしぃちゃんったら。 そんなに大っきな声出したら、さすがに聞こえちゃうよ。 でももういっかぁー。 折角だから、こっちもスピーカーにするね しろ:ごめんごめん ?:ス、スマホ? ぽろん:うん。 おうちにいるしぃちゃんとね。 このワイヤレスイヤホンとー しろ:スピーカー通話中でーす。 新聞屋さん、じゃなかった。 放蕩ニートさん、音声多重で聞こえてますかー? あなたもしてますよね、ワイヤレスイヤホン ?:う、うわ、妙なラグで聞き取りにくい! ぽろん:あ、やっと盗聴器のことも認めたよしぃちゃん! 警察の人にも、ちゃんと聞こえてるかな。 いるんだよね! しろ:うん、バッチリ! ?:な… ななな… ぽろん:でも実は、本番はここからなんだよね。 よぉーし、じゃあ、今から名探偵ぽーちゃんの名推理を披露するねぇ~? 拍手っ! パチパチパチパチー しろ:拍手はまだ早いよー ?:本番?! ぽろん:そ! ここからが本番。 まずはストレートに訊いちゃうよ! ハイかイイエで答えてくれてもいいけど、答えなくてもいいでーす ?:なっ! ぽろん:第一問! じゃじゃんっ!  あなたは、これまでに二人を殺していて、 そしてこの場所に埋められている。 はい、イエスかノーか! ?:なっ、そ、そんなわけ ぽろん:第2問! じゃじゃんっ!  駅前百貨店が倒産した原因は、あなたにある! はい、どうですかー?! ?:・・・・・ ぽろん:じゃんじゃん言っちゃうよ! 第三問! あなたは、しぃちゃんのストーカーである! 半年前からウチに通ってたのは、新聞料金の徴収じゃなくて、ただただしぃちゃんの後をつけてたから! ?:う、うう ぽろん:第4問! うちの半年分の新聞代を払ってくれてたのは、あなた! 普通、新聞代金は半年もたまりませーん! 配達すぐ止まりまーす! ?:そっ、 そうだ! イエス! それだけはイエスだっ! しろ:ちょっちょっ、ぽー、ぽー!? ちょっといいかな?! ぽろん:ん、なに? しぃちゃん しろ:あのさー その楽しいクイズ演出、警察の人にすごく不信感与えてるから! 今『お遊びで我々を呼び出すな』的な空気すごいのなんとかおさめてるから! やめて! ぽろん:ええ… しょんなぁ しょぼ~ん ?:はっ、そうだ! 警察の皆さん聞こえてますか! 犯人はぼくじゃない! そいつです! こんなときに楽しくふざけているサイコパスこそ、殺人犯なんです! ぽろん:えーーっ! ちがうから! ぽーちゃんは、今からこの人に殺される所なんだから! しろ:ええーーーっ! ぽろん:もー… 警察の人? 帰らないで聴いててね。 ぽろん:事件のあらましはこう。 まず、この人は親の経営する百貨店の口座に手をつけて、大きな損害を出し、倒産に至らしめた。これは調べればすぐ分かると思う。 ?:っ… ぽろん:なぜそんな事をしたのかと言えば、今そこにいるしぃちゃんのため しろ:ええーーーっ?! ぽろん:しぃちゃぁん、あんまり叫ぶとぽーちゃんのおみみが死んじゃう しろ:ごめぇん ぽろん:この人、ずっとしぃちゃんのストーカーしてたんだ。 それも、ウチについてる防犯カメラを見れば分かるよ。 しぃちゃんと一緒に暮らしたかったんでしょ? ?:・・・・ ぽろん:そして、そんなしぃちゃんといる、ぽーちゃんが邪魔だった。 毎日読書してるおりこうで素敵なしぃちゃんと一緒にいる、アホなぽーちゃんが、うとましかった ?:ああ! そうだよ! あんたといたら、しぃさんまでアホだと思われるでしょう! しぃさんには、もっと知的で、地位も財産もある僕こそふさわしいんだっ! ぽろん:書庫も、でしょ? あのお屋敷と書庫の管理人は、ぽーちゃんにはふさわしくない。 しぃちゃんこそがふさわしいんだって。お金も、最初はここを買い取るつもりで用意しようとした ?:そうです! あんたなんかにあの屋敷も書庫も勿体ない! あの家に住むのは文学を愛する紳士淑女であるべきなんだ! だからあの屋敷を買い取るために僕は! ぽろん:でも、失敗した。 やむなくあなたは、自分の父親を手にかける羽目になった ?:う…っ ぽろん:そして、公園の、ここに父親を埋めた。 ここは、『 地上がもつれちゃってる 』からね しろ:ぽー? 昨日から一体何なの? その『地上がもつれちゃってる』、って … あ、そっか、 ぽー、それって、『あの場所』だね?! ぽろん:そう、今ぽーちゃんがどこにいるかって言うとね、公園の奥の、やぶの向こう側の、しぃちゃんの穴掘り秘密基地だよ しろ:やっぱりー… でも、どうしてそこを知ってるの?! 表からは完全に隠れてて、今まで誰も入ってきたことないところだよ? ぽろん:ストーカーだから。 だからずっと、知ってたんじゃないかな。 ここで大きな穴をいっぱい掘ってるしぃちゃんのこと しろ:そっか… えっ、しぃ、もしかして実はすごく危なかった? ぽろん:そー。だから、しぃちゃんにおうちにいてもらってるの。 危ないし、それに狙いは、一人でここに来たぽーをやっちゃうためだからね しろ:そ、そんな… えっ? 一人で来た、ぽーちゃんを? ぽろん:そー。 話は前後しちゃうけど、 昨日、すぐに現場を見に行こうとしたぽーちゃんたちを、警察が来てるからって止めたよね しろ:うん。そうだった ぽろん:あれは、まだ準備できてなかったからなんだよ。 ぽーちゃんを落とすための落とし穴。 しぃちゃんの掘った大きな穴のどれかを落とし穴に仕立てる準備が、できてなかった ぽろん:だから、ぽーちゃんは今朝、わざと新聞屋さんを残して出かけたんだ。 きっと、この隙にぽーちゃんへの罠を準備するだろうって思ってさ。 あと、このポーの原詩の本を書棚に戻すだろうとも思ったから ?:な、ななな… 僕は… あの時から… はめられてたっていうのか ぽろん:話をもどすね。 ぽろん:とにかく、穴掘り大好き名人のしぃちゃんが掘った穴だらけのここなら、殺してしまった父親を埋めてしまうのにうってつけだった。 きっとそれで、うまくいくって思ったところもあったと思う ぽろん:昨日、ついに新聞代の徴収を装って直接しぃちゃんと言葉を交わすことに成功したとき… ぽーちゃんへの憎しみが更に強くなった。 その帰り道に公園を通ったとき、ひらめいたんだ ?:・・・・・・ ぽろん:ここに、ぽーちゃんも葬ってしまえばいいんだって。 案の定、こうしてあなたは、ここに落とし穴の準備に来てた。 夕方にでも、ぽーちゃんだけ呼び出すつもりで ぽろん:今朝の朝刊の事件は、もう一人、邪魔な百貨店の役員か、それとも家族の誰かかを始末したんだと思う。 深夜、百貨店の裏の路地でね。 穴の準備の時間稼ぎも兼ねて ぽろん:はす向かいの新聞社に、広告記事は昼間のうちに頼んでおいたんでしょ? 新聞社に訊いてみたら、そこでは広告の締め切りは午後3時だって しろ:昨日、最後にわたしたちの家から出て行ったのは2時前だから、それから広告記事を作ってもまだなんとか間に合うね。 しろ:でもぽー、どうしてエドガー・ポーの詩を選んだの? ぽろん:それはもちろん、ぽーちゃんと同じ理由だよ! しろ:ええ? ぽーちゃんだけに、ポーってやつ? ぽろん:うん! だってきっと外で聴いてたもんね。 その会話も。 ポーになぞらえて、最後に名探偵ぽーを殺す。 そんなシナリオ描(えが)いたんでしょ ?:くうう…っ こ、こうなったら警察がここに来る前に逃げるしか…っ 覚えてろよぽー! いつか、僕はこの社会を裏から操るっ… ぽろん:えいどぉーんっ! ?:うあ、あ、(落ちそうになるのを踏みとどまろうとふらつく)ああ~あ っ! (しかし結局落下) うわああああっ ! くっ … いたた… こんなところに穴が… あったなんて ぽろん:残念でしたー。 しぃちゃんの掘った穴の位置は、ぽーちゃん完璧に把握してるもんね! ここはけっこう前にぽーちゃんが仕立てたハイレベル落とし穴でーす! ぜんぜん分からなかったでしょ ぽろん:ちなみに、ここでぽーちゃんを罠にかけたときに使うはずだった詩も当ててあげよっか。 『 レノア 』。 なくした恋人を丁寧に埋葬する作法を綴った詩(うた)。 ぽろん:婚姻の賛歌、『 ユウラリィ 』、憧憬への賛美歌『 トゥ・ヘレン 』、そして、大事な人を亡くした嘆き『 レノア 』 …ぜんぶ、しぃちゃんのために、選んだんでしょ ?:・・・・っ (諦めのため息)ふぅ… …  はは…っ ここまでとは思ってなかったよ。 …最初から何もかも、お見通しだったなんて… ぽろん:ふふーん! ぽーちゃんは、めいたんてい! なのでぇーっす! えっへん! 0: (間) しろ:ぽーちゃーーん! ぽろん:あっ、しろー! こっちこっち しろ:よかった、ぽーちゃんが無事で ぽろん:よかった、しぃちゃんが無事で しろ:警官さーん! こっちでーす! ぽろん:ありがと、しぃちゃん。 しろ:ありがと、ぽーちゃん 二人:ふふ、ふふふ ぽろん:あ ?:・・・最後に、一つだけ訊きたい ぽろん:なあに? ?:どうして、本がどこにあるかすぐに分かったんだ… それだけが、どうしてもわからない ぽろん:ふぅん…、ええとね、 あっ、そうだ。 世界で初めて書かれた推理小説に出てくる名探偵、シー・オーギュスト・デュパンの言葉を借りるなら ?:エドガー・ポーの、『 モルグ街の殺人 』…? ぽろん:ふふん。 ぽーちゃんはね、『嗅ぎ残さなかった』 んだよ ?:えっ…か、嗅ぎ…? ぽろん:ふふっ、ぽーちゃんたちの家系はね、みーんな、本の匂いが大好きなんだよ ?:…、に、匂い? ですか?! ぽろん:そう! 本はそれぞれ、書いてあるモノの匂いがするんだよ。 その匂いが、ぽーちゃんたちの中に、全部入ってるんだー。 だから、書庫の中で欲しい本の匂いがあるかどうか、すぐにわかる! ?:は、はは… 匂いを全部… か、 そりゃ、敵わないね… はは… ?:ちなみに…、ポーの原詩の本はどんな匂い、なんですか? ぽろん:夜の湖の向こう側の、死の匂い ?:『ザ・レイク--、 トゥ--』 ぽろん:湖のなにか。 だれかへ。 この詩は、ポーが自分の内面を自分に宛てているんだと、ぽーちゃんは思うよ。 はい、これ。 持ち出し禁止だけど、かしてあげる ?:えっ、この本… いいんですか? ぽろん:原題の隠されたところこそ、この詩の主題で、それはその空欄を埋める文字を、自分の中に見つけることじゃないかなあ。 だから、 ぽろん:出られたら、絶対に返しに来てね。 そしたら、その時に新聞屋さんが見つけた答えをきくからさ。 ぽーもしぃちゃんも、待ってるね ?:ぽーさん… しぃ、さん… しろ:もー、ぽーったら。でも、ぽーがそう言うなら、まあ、いっか ぽろん:書庫に無くても、匂いも中身も思い出せるしね ?:! もしかしてぽーさんは… あの蔵書の全てを? ぽろん:ふふーん、ぽーちゃんはアホだけど、バカじゃないのでーすっ! じゃあね、今度は、恋に飲まれないように、ね ?:っ… はい! 0: (間・場面転換) ぽろん:はーーーー、やっぱりこのお店のタルト、当たりだったーーー!  ふぅ、紅茶もおいしいね、しろ しろ:そうだね。フルーツたっぷりタルトはコーヒーよりも紅茶が合うねえ しろ:・・・・・・ しろ:だけど、ぽー? ぽろん:なーにー? しろ:ぽーが昨日、急に探偵になりたいって言い出したのって… ぽろん:ふふーん、おもしろかったけど、ちょっと怖かったし、今度はぽーちゃん、作家になろうかなぁ~ しろ:ちょっとぽーぉ? ぽろん:めいたんていの頭脳をいかして、推理小説なんてどうかな。タイトルは、『エドガー・ポーは死の薫り』! なーんちゃって! しぃちゃん、まーた止(と)めるんでしょー しろ:・・・・・・ ぽろん:しぃちゃん? しろ:ううん? 好きにしたらいいと、おもうよ? ぽろん:・・・・・ しろ:ぽーちゃん? ぽろん:と、とめないんだ? しろ:だって、まわりにそんな迷惑かからなそうだしー。 大人しくしててくれたらしぃも読書に専念できる ぽろん:むうううー、しぃちゃん?! しろ:ふふふっ、 ぽーちゃんが書いたら、どんなひどい事件もきっと楽しいお話になるよ。 あー、楽しみだなー! ぽろん:えっ、ほんと?! しぃちゃん読んでくれるの?! よーし、ぽーちゃん、頑張っちゃうぞ~~! 0:笑い合う二人 0:  ?:のちに警察により、僕の起こした全ての罪は暴かれ、希代の名探偵、ぽーさんの最初の事件は幕を閉じたのだった。  ぽろん:ふー、つかれちゃった! 早起きしたし、ぽーちゃんちょっとおひるねー しろ:おしまい!