台本概要
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タイトル | 【タイムリープ】卒業死期 |
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作者名 | ゆる男 (@yuruyurumanno11) |
ジャンル | ホラー |
演者人数 | 4人用台本(女2、不問2) |
時間 | 40 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
卒業死期(そつぎょうしき) 死ぬことを望んだ高校生が卒業死期に出席をする。 それは1番辛かった過去に戻り、もう一度辛い過去を経験することでより死にたくなる。故に自殺を計ることが目的だ。 1人の少女もまた、死ぬことを望んでいたのだった。 413 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
千種 | 女 | 160 | 浅木千種(あさぎちぐさ) 卒業死期に出席をする少女。元は明るい性格だったが、親友の死がきっかけで自分も死ぬことを望んでしまう |
翠 | 女 | 105 | 栗原翠(くりはらすい) 弟の死をきっかけに生きる事が辛くなる。いつもはサバサバしているが千種の前では弱さを見せる |
奥村 | 不問 | 76 | 奥村(おくむら) 先生だが何の先生だかはわからない。不潔で無表情。どっちつかずで生きるも死ぬも興味無い |
田崎 | 不問 | 66 | 田崎(たさき) 教頭先生。おちゃらけているが怒ると怖い。常に人間の死を喜んでいる |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
奥村:浅木千種(あさぎちぐさ)
千種:……はい
奥村:以上だな。他に自殺希望者はいないか?
0:【間】
奥村:今年は1人だけか。よーし。他の生徒は通常の卒業式に出席しろ。……ふぇ……ふぇ……へっくしゅん!……うぅ〜鼻水くさっ。とりあえず今名前を呼んだ者は物理室に来るように
奥村:じゃあ、速やかに体育館に移動しろ〜。頭かゆっ
0:【間】
0:場面転換。物理室では……
奥村:んじゃあ適当に座れ〜。お?屁出た
千種:………
田崎:ほう。今年は一人だけですか!奥村先生
奥村:みたいですねー
千種:あ、あの……
田崎:あんた…魂の色はまだ青いねぇ…
千種:……魂?
奥村:ま、緊張すんな。気を楽にしろ。今からお前だけで卒業死期(そつぎょうしき)を始めるからな。教頭にもお前の死期(しき)を見守ってもらうことになってる
田崎:よろしくね!浅木さん!
千種:……先生達は、なんで私が自殺したいかは聞かないんですか?
奥村:ん?ゲェー!ゲップ出たわ。聞かないってか興味無いからな
千種:興味…無い……?自殺希望者を聞いといてそんなこと……!
奥村:別に聞いたところでだろ?怖いなら辞めればいい
田崎:そうだそうだー!教頭もそう思うぞー!
千種:先生なら自殺することは…間違ってるって言うと思った
奥村:間違い?ああー。あのな〜。自殺する事は別に間違いじゃないぞ?
千種:……何それ
田崎:何それってわからないのー!?死にたいのにー!?やっばーいよそれ〜!あんたはなんで死にたいか考えた結果この卒業死期に出席したんだよね?
千種:……そうだけど、死ぬ事が間違いだと思ってたから
奥村:高校卒業して大学に出て社会に出たら後は奴隷のように働いて、無駄な時間を過ごすだけだ。人は生まれたその時から地獄の始まりだからな。その地獄から逃れるだけの事。合理的な考えだろ?
千種:……じゃあ何をどうすれば…自殺が出来るの?
奥村:ま、これから説明する。そう急ぐな。まず、お前にはこれを渡そう
千種:……これは?
田崎:卒業消書(そうぎょうしょうしょ)だよー!まだ中は見ちゃダメだからねー?この中にはあんたの過去が詰まっているんだー
千種:……過去?
田崎:そう、あんたが1番辛いと感じた過去だよ!一度は生きてみたものの、もう一度その経験をするくらいなら死んだ方がマシー!うえーい!!って、18のあんたでもそう思うことあるでしょー??その時が来たら死ねばいい
千種:……もう一度……あの事を…経験しないといけないの?
奥村:その方がより死にたくなるだろ?
千種:……わかった。早くその過去に行かせて
奥村:待てって言ってるだろー?おー。鼻毛8本抜けた。卒業死期に出席するにあたっていくつか注意点がある
千種:……なに?
奥村:お前は過去に戻るが、くれぐれも他の生徒には自分が未来から来たなんて事は話すなよー?あと、監視する訳では無いけど一応私も知ってる
千種:………
田崎:最後に、生きるも死ぬもあんたの勝手にしてもいいけどねー。誰かの死を助けたり、あるいはそれが職員にバレた時……
田崎:意図的に卒業死期のことを他の人に話したと判断した時、教頭がお前を殺すからね??
千種:…………
田崎:わかったら返事!
千種:は、はい
奥村:じゃあ、以上だ。ケツかゆっ。卒業消書(そつぎょうしょうしょ)を開いてみろ
千種:………っ!!
奥村:人生卒業おめでとう。浅木
千種:……う、うわああぁー!!
0:千種は卒業消書の光に包まれる
0:【間】
千種:(M)私の過去…。それは……
0:『過去』
千種:大丈夫だよ!翠(すい)!辛くても私が居るから!
千種:翠が悲しい分、私が楽しませるよ!だから、何でも話してよ!
千種:私はずっと翠の味方だから!大丈夫!生きていれば必ずいい事あるからさ!
0:【間】
千種:(M)前向きな言葉という名の、無責任な押し付けだった
0:【間】
0:『卒業死期』
千種:……っ!?……ここは?
千種:……いつもと…変わらない制服。……いつもと変わらない…教室。……今…何日?
翠:あれ?千種(ちぐさ)?なんでこんなとこに居るの?
千種:……翠(すい)?
翠:ん?何?そんな驚いた顔して
千種:本当に?本当に翠なの!?
翠:…え?…何?
千種:………本当に…翠だ
翠:はあ?大丈夫?急性記憶障害ですかー?
千種:………翠!!
翠:っ!?な、なんなの!?急に抱きついてこないでよ。何も言わないで3日間休んで悪かったけど、そんなに心配する?
千種:……よかった…よかった……
翠:触んな!気持ち悪いよ
千種:……ごめんね
翠:本当に急になんなの?
千種:ううん。何でもない
翠:んで?行くの?
千種:どこに?
翠:カラオケにだよ。今日約束したばっかでしょ?
千種:………ねえ。今日って何日?
翠:はあ??12月5日だよ。やばいよあんた
千種:………じゃあ…弟さんは……
翠:……え?なに?
千種:いや、何でもない。早くカラオケに行こ?
0:【間】
千種:(M)栗原翠。(くりはらすい)この子は私の同級生で一番仲がいい親友だった
千種:(M)私が高校を卒業するまでの約3ヶ月間。翠の過去を知って、翠の気持ちを知って、翠の辛さを知った。だから私はこの卒業死期で、先に死んでしまった翠と一緒に死にたいと思った
千種:(M)過去に戻って翠と一緒に死ぬ。これが私が卒業死期に出席した理由だった
0:【間】
田崎:浅木千種。(あさぎちぐさ)栗原翠。(くりはらすい)卒業死期に参加してるのは浅木だけど、栗原は参加しなかったのー?
奥村:それは今現在、未来から来ている浅木にしかわからないことですよ。それに、わかりますよね?やつの寿命
田崎:そうだねぇー!あともうちょっとって所かな?
奥村:何が原因なんですかねぇ
田崎:早く死んでもらわないとなー
奥村:ま、どっちにしろ、死にたいやつは勝手に死んでいきますよ。はあ。うわっ、口くさっ
田崎:そうだねぇー!どんな死に方をするのか、楽しみだなぁー
0:【間】
0:場面転換。カラオケ
翠:ふぅ〜。歌った歌った〜!千種、今日は付き合ってくれてありがとね
千種:ううん!全然いいんだよ
翠:なんか色々と吹っ切れたかも
千種:それならよかった
翠:もうそろそろ帰る?
千種:どうして?
翠:まだ時間あるしちょっと話してもいい?
千種:……うん
翠:………あのさ
千種:……なに?
翠:……ごめん、ちょっとこうしてていい?
千種:っ
0:【間】
千種:(M)翠は私を強く抱きしめる。でも…その後に出てくる言葉を私は知っているから、翠の体を包んだ
翠:……3日前にね…弟が…死んだんだ
千種:…………そう、なんだ
翠:……千種ならもっとびっくりすると思ったのに
千種:あ……ごめん。びっくりしすぎてどんな反応したらいいかわかんなかった
翠:まあ、それもそうだよね。今までずっと相談乗ってくれてありがとう
千種:………翠。死なないで
翠:………え?何言ってんの?
千種:だって…弟さん亡くなって…悲しくなって……その後………
翠:別に悲しいけど…。死にたいなんて思わないよ
千種:本当に?
翠:うん、本当に
千種:嘘だよ
翠:……千種は私の何を知ってんの?
千種:………知らないけど…。翠、辛いことがあるなら言って?
翠:辛いことはもう言ったでしょ
千種:もっと!もっと色々教えてよ!今何を思ってるとか、これからどうやって生きていくとか、親御さんとどうするとか、言ってくれなきゃわかんないよ!
翠:……千種?
千種:翠のこと心配なんだよ!翠が今辛いなら私だって寄り添いたいの!お願いだよ!翠!
翠:……なんで千種が先走ってるの?
千種:………
翠:私がいつ死ぬって言ったの?辛いけど…それでも私は強く生きるって決めたのに……なんで千種はそれを信じてくれないの?
千種:……だって…
翠:千種だったらいつもみたいに明るく声を掛けてくれると思った……。それだけで私はもっと前向きになれると思ったのに。いつもの千種に戻ってよ…
千種:でも……私は!
翠:もういいよ。そんなこと言ってほしくて話したわけじゃないから
千種:ダメだって!
翠:もう黙ってよ!!どうせ千種は私の事わかってくれないんだから!
千種:……翠
翠:帰る。お金は置いとくね
千種:翠!
0:翠はカラオケの部屋を出る
0:【間】
千種:(M)過去の自分だったら翠を元気付けてあげてた。大丈夫だよ。辛いけど一緒に頑張ろうって。でも、それは無責任な発言だと思った
千種:(M)私が辛いわけじゃないのにそれをわかってあげるなんて出来ない。それでいて無責任に頑張ろうなんて言ったから……。それが翠に伝わらなかったから……追い討ちを掛けるように酷いことも言ったから。
千種:(M)今なら大事な人を失った気持ちもわかるのに、辛い気持ちも、死にたい気持ちもわかるのに…。……私はどうしても…翠と死にたいと思ってしまう
0:【間】
0:場面転換
田崎:ねえねえ!奥村先生
奥村:なんです?
田崎:あんたは卒業生を送るのは何回目?
奥村:3回目ですが
田崎:ほうほう!もう慣れてきたんじゃない?ちなみにー。卒業死期で本当に死んだ人って何人居たー?
奥村:そうですね。浅木合わせて死期に参加したのは合計で4人ですが、誰も死んでません
田崎:なんで!?せっかく死ねるチャンスなのにー!
奥村:っ。耳毛ながっ。そうですねー。結局人間って生き物は死にたくて死ぬ人なんて居ないんじゃないですか?
田崎:いいやー?死にたくて死ぬ人はいくらでも居るよー?だって、栗原翠だってあと1ヶ月もすれば死ぬしね!
奥村:何が言いたいんです?
田崎:人間って賢いからね?卒業死期に出席した人は過去に戻るんだけど、あの時ああしとけば、こうしとけばー!!って気持ちを振り返ってー、どうにか改善しようとするんだよー!いい方向にもっていこうとするのー!!
田崎:え?死にたいんじゃなかったの?って思うけど結局生きようとするんだよね
奥村:そりゃあそうですよ。人間は弱い生き物だから、失敗と反省を繰り返して、より良い環境を作り出し、なんとか生きようとする。今まで卒業死期に出席したやつらもそうだった
田崎:そうなんだよねぇー!どうしてなのー!?1度死にたいって思ったのに、また生きようと思うなんてそれこそ弱虫だよ!!生きてる意味なんてなーんにもないのに!
奥村:だから、何が言いたいんです?
田崎:だからね。中途半端なやつはみんな死ねばいいんじゃないかなって思ってるんだ
奥村:なら、浅木をどうすると?
田崎:あの子さ、余計なことしたりしないよね?
奥村:さあ?浅木千種に関しては両親も健康的で友達にも恵まれている。特に何も問題は無いはずですね
田崎:じゃあ、大親友の栗原翠を助けるってことなのかな?
奥村:さて?どうでしょう
田崎:そうなった時は……。殺さないといけないからねぇ
0:【間】
千種:翠は……いつもの私がいいの?本当に?それで生きてくれるの?もっと私が翠の事を見ていればとか……浮ついた言葉で慰めなきゃとか……。もう後悔は沢山してきた。だからこそ……後悔なんてしたくないと思っちゃうんだよ
0:【間】
0:次の日のこと
千種:……あっ
翠:……
千種:翠!
翠:……なに?
千種:あ、あの…。昨日は…ごめんね?翠の気持ちを汲み取れなくて
翠:別に、汲み取らなくてもいいよ
千種:……え?だって昨日は…
翠:私の方こそごめん。千種にそんなこと求めて八つ当たりしても意味ないと思ったんだ。ごめんね?
千種:……でも
翠:ありがとね。確かに千種の言う通り辛いことだらけだった。……でもさ
千種:………
翠:どうして千種は私が死にたがることを知ってたの?
千種:……それは…
田崎:(意図的に卒業死期のことを他の人に話したと判断した時、教頭がお前を殺すからね??)
千種:……っ
翠:千種?大丈夫?
千種:あ、うん!大丈夫
翠:どうしたの?
千種:……私さ…まだ誰にも言ってないんだけど…翠には言うね
翠:……なに?
千種:私も…つい最近、大事な人が亡くなったの
翠:……え?
千種:家族ではなくて、大事な人が
翠:……それは…いつ?千種、全然そんな素振り見せなかったじゃん
千種:詳しいことは言えない。、けどね、私はその人にこう言ったの。大丈夫だよって生きていれば必ずいい事があるからって
翠:………
千種:でも……。そんなの綺麗事なんだよね。そんな言葉じゃ人は救えないってわかったの。だから…翠が今辛いんだったら、私は翠の気持ちに寄り添って一緒に辛くなりたいの
翠:………千種
千種:だから……お願い、翠
0:【間】
奥村:ちーっす。お二人さん
千種:っ!奥村先生……
奥村:こんな所で突っ立てると邪魔だぞー。へそくさっ。早く学校行けー。はぁぁ〜〜。ねみぃー
翠:……とりあえず。行こ?
千種:……うん
0:奥村は2人を見送り……
奥村:何考えてやがる?浅木
0:【間】
田崎:あーさーぎーさんっ。
千種:……教頭先生
田崎:卒業死期はどう?今度こそ自殺出来そう?
千種:そんな物騒なこと聞かないでください
田崎:物騒なことって!ぷっ!ぷはははははは!!自分で選んだ事なのに何言ってんのー!?ウケるんですけどー!
千種:……私に何の用ですか?
田崎:あー。そうだね。あんたも知ってると思うけど、栗原はあと1ヶ月もすれば死ぬんだけどさー。………余計なこと考えてないよね?
千種:……余計なことって?
田崎:卒業死期のルールは知ってるでしょ?………誰かの死を助ける行為はルール違反だからねぇ?
田崎:……わかってるよな?おい
千種:……わ、わかってます
田崎:お前たち人間の死なんてクソほどどうでもいいんだからさ。早く死ねば?
千種:でも!私は翠と一緒に死にたいから……。翠が死にたい時が来るまでは…私は翠と生きます
田崎:そんなに栗原に固執する必要ある?
千種:……あります。だって………
千種:翠を殺したのは……私だから。一緒に死ぬ責任があります
0:【間】
奥村:本当にいいんだな?栗原
翠:……うん
奥村:ま、後悔なんてもうないだろ?
翠:でも……教えて。卒業死期に出席するとどうなるのか
奥村:それを教えてどうなる?
翠:………それは
奥村:死にたいんだったら、お前には関係ない。私はお前たち人間の生き方も死に方も否定しないよ
翠:……先生は…どっちの味方なの?
奥村:味方?何を勘違いしてるかは知らんが、私は誰の味方になるつもりは無い
翠:じゃあ、どうしてこんな事を……。人の自殺を示唆するなんてことしてるの!?
奥村:だから、お前には関係ないと言ったはずだ。何のために卒業死期に出席するんだ?物事に興味を持つ暇があるなら、どう死ぬかを考えろ
翠:……そんなこと…言われたって
奥村:お前さー。いつまで甘えてんだ?もう死にたいんだろ?その覚悟があるならもうとっくに死んでるはずなのに、お前は何を迷っている?
翠:……だって…。千種が居るから
奥村:浅木がいるからどうした?
翠:千種は…私のたった一人の親友だから……
奥村:死ぬ時は一人だろ……?死んだ後も一人だ
翠:…………
奥村:ごちゃごちゃ考えるな。自分の胸の中に感情を残すな。自分の中の浅木を殺すんだよ。死ぬってことはこういう事だ
翠:……わかりました
奥村:ま、とりあえず。卒業死期には出席ということで進めとくからな。っ。鼻くそ取れた
翠:……はい。じゃあ失礼します
0:翠は教室を出る
奥村:………ま、あと1ヶ月でお前は死ぬんだけどね
0:【間】
田崎:あーあー。どいつもこいつもウジウジと腹立つなー!どうして早く死なないのかねー?
奥村:人間は弱いから生きるものだと。教頭が言ったんですよね?
田崎:そうだけど、あの二人見てるとイライラしてくるんだよねー
奥村:私たちが感情的になってたら卒業死期をしてる意味が無いです
田崎:あんたは無感情で気味が悪いんだよ!鼻ほじって屁するし!
奥村:ま、生きてるって感じがして良いじゃないですか
田崎:この期に及んで生きることを良いって感じてんの?
奥村:ああ。私の考えはこうですからね。死にたきゃ死ねばいい。生きたいなら生きたらいい
田崎:あんたのどっちつかずな性格は何とかならないの?
奥村:どっちつかずってか。生きることだって悪いことでは無いですからね
田崎:あんた。いい加減にしないとクビにするよ?
奥村:今の時代、それはパワハラですよ
田崎:……うらぁぁー!!
奥村:…っ!
田崎:全く……!この教頭に喧嘩売ってんのか!?ああ!?
奥村:あの…。私一応若いですからね。あんたの斧じゃ殺せないですよ?
田崎:お前が同僚じゃなかったら本当に殺してるところだったけどね!
奥村:同じ職種同士で殺し合いは無意味でしょー
田崎:黙りなさい!!はあ。あんた達のせいですぐイライラしちゃう!
奥村:更年期ですか?
田崎:殺されたいの?
奥村:ま、落ち着いてください。ゲェェ。ゲップ出た
田崎:あんたはどう考えてる?浅木千種のこと
奥村:あいつの魂は赤色ですよ?
田崎:……でも、これ以上浅木千種が何か仕出かしたら、教頭は動くからね?いいでしょ?
奥村:好きにしてください。それに、栗原翠の魂はまだ青色です。あいつは1ヶ月後に死ぬというのにまだ生きていたいという気持ちがあるようで
田崎:ああ、それはね。浅木千種が自白したよ?彼女を殺したのは私だってね。どうやって殺したかはわからないけど、確かに浅木千種の魂は赤色になってる。もう死にたいという気持ちはあるみたいだねぇ〜
奥村:ま、卒業死期に参加するならそういう気持ちにもなるでしょう。それでも今までの卒業生とは違う。間違いなくこの卒業死期で浅木千種は自殺するでしょうね
田崎:ふっふっふ!楽しみになってきたねぇ〜。奥村せんせっ!
0:【間】
0:いつもの教室にて
千種:ねえ、翠?
翠:…………
千種:翠!待ってよ!
翠:離して!
千種:どうして無視するの?
翠:もう私に関わらないで。千種と居るとおかしくなりそう
千種:……急にどうしたの?
翠:……千種は…私が死んだらどうするの?
千種:……なんで?
翠:答えて
千種:……私は…それでも翠と一緒に居る
翠:何言ってんの?私が死んだら一緒に居れないでしょ
千種:ううん。一緒に居るよ。だって……翠と一緒に死ぬって決めたんだもん
翠:………あんたが死んで…どうするのよ?
千種:私は最初からそのつもりだったから
翠:あんたが死ぬ必要はないでしょ!?
千種:じゃあ…翠は生きてよ
翠:……なんで?
千種:私に生きて欲しいなら…翠も一緒に生きてよ
翠:……じゃあ…生きるって言ったら……千種は私と生きてくれるの?
千種:もちろんだよ
翠:……千種…
千種:死ぬ時も…生きる時も……ずっと一緒に居たい
翠:……どうしてそこまでして…私の事…
千種:この世界で…1番大好きな、親友だから
翠:……っ!
0:翠は千種を抱きしめる
翠:……ありがとう。千種
千種:ううん。感謝するのは私の方だよ。私とずっと一緒に居て?
翠:……うん。じゃあ、私は…千種と一緒に生きるよ
千種:………うん
0:【間】
千種:(M)私が経験した過去とは…違うことが起きた
千種:(M)過去の私は翠に生きてって言ったから。頑張れって、味方だからって、生きていればいい事あるって
千種:(M)そんな無責任な言葉で翠を追い詰めて、それでもまだ死にたいって言った翠に私はこう言った
千種:(M)「そんなに死にたいなら死ねばいいじゃん」って
千種:(M)私の慰めの言葉は翠には届かなくて、めんどくさいって一瞬でも思ったから心にもない事を言ってしまった。死にたい人に何言っても無駄なんだって諦めていた
千種:(M)次の日、翠は自宅のマンションから飛び降りて自殺をした。私が死ねばいいって言った次の日にたった一人の親友が自殺をした
千種:(M)あの時…無責任に慰めなければ…。あの時…もっと翠に寄り添っていれば…。あの時…死ねばいいって言わなければ…。色んな後悔が頭の中を掻き回す。そして……最後にはこう思ってしまうんだ
千種:(M)私が翠を殺してしまった…って
0:【間】
千種:(M)でも今は、翠は一緒に生きるって言ってくれる。私の言葉を聞いて、一緒に生きるって。なら、その希望を持って…私は…翠と………
田崎:なーに魂青くさせちゃってんのー?あ・さ・ぎ・さんっ!
千種:……っ!教頭先生!?
翠:な、なんで教頭先生が……
田崎:死ぬんじゃなかったの?浅木千種
千種:………
翠:……え?どういうこと?
田崎:人の命救って卒業死期に出てんじゃねーよ!!おらぁぁ!!
0:田崎は斧を振り下ろす
翠:きゃあ!
千種:翠!こっち!
田崎:待てよ!!ガキ共!!
千種:っ!!
0:千種は田崎に椅子を投げつける
田崎:いってぇ!!……このガキ…。相当な問題児だったみたいだねぇ!!
千種:翠!走るよ!
翠:う、うん!
0:千種と翠は廊下を掛ける
翠:はぁ!はぁ!なんで教頭先生が斧なんて持ってるの!?
千種:わかんないけど…!でも、ただの人じゃないのはわかる!ずっと不気味だったんだから
翠:ただの人間じゃないって…なんで!?
千種:それは後で話すよ!一緒に生きてここから出られたらね
翠:うん!
千種:ここに隠れよう!
田崎:待てぇー!逃がさないぞ?栗原も一緒に殺してあげるから早く出てこい!!
千種:………
翠:………
田崎:おーい!!隠れてないで出てきなよぉー。浅木千種ー。あと1ヶ月で死ぬはずの栗原翠を生かすなんて前代未聞だよー?この学校にいる限り逃げ場はないんだからさぁー。諦めなってー!
千種:翠
翠:……何?
千種:私が囮になるから。翠はこのロッカーを押し倒して
翠:…そんな……。そんな事したら千種が危ないじゃん!
千種:私は大丈夫。元々死ぬためにここに来たんだから
翠:……千種…。さっき教頭先生が言ってた卒業死期って……
千種:うん。卒業死期はね、辛かった過去をもう一度経験してから死ぬか生きるかを選ぶの。でも…卒業死期の事がバレたり、死ぬはずの誰かの命を助けたりしたら殺されるみたいなの
翠:……じゃあ…千種は私の事を…
千種:うん。命懸けで、翠のこと守るから。でも、翠と一緒に生きるからね
翠:……うん!
0:【間】
田崎:あぁー!みーつけたー!!
千種:っ!!
田崎:うっ!
0:千種は田崎に体当たりをする
田崎:おいおい!暴れんなよ!これからたーっぷり痛めつけてあげるんだから…さ!!
千種:っ!
田崎:あっははははははは!!!ほら!馬乗りにされちゃったねぇー!!動けるー?ねぇー?動いてみてよ。ねぇ!動けないでしょ!?無様だなー!ばーか!!
千種:………っ!!やめて!!
田崎:やめなーい!!ほら、これなーんだ?ほら、これなに?言ってみ?あっははははははは!!!そう!!斧だよ!!これでお前の頭をかち割ってあげるんだーー!!
千種:離して!!
田崎:離さないよー?お前にはムカついてるんだから!お前、栗原翠とどんな約束をしたの?まさか一緒に生きるって言ったの?そんなのこの教頭が許さないからねぇー!今すぐに…死ねぇぇーー!!
翠:うわああーー!!!
田崎:あああぁぁーー!!!
0:田崎は翠が倒した掃除ロッカーの下敷きになる
千種:……っ!
田崎:ま、待て!!逃がさない……!
翠:後頭部に直撃した!多分しばらく動けないよ!
千種:ありがとう!翠!
翠:行こう!
千種:うん!
田崎:待てー!!クソガキどもー!!……っ!
0:2人はまた走る
千種:学校を出よう!
翠:うん!……あれ?昇降口が開かない…
千種:な、なんで!?
翠:っ!!ダメだ…。ガラスも割れない
千種:……じゃあもう、逃げられないのかな
翠:……ははっ。じゃあ……一緒に死ぬ?
千種:ふふっ。どうしよっか。それはまた後で考えよう
翠:うん。そうだね。
千種:………ごめんね、翠までこんな危険な目にあわせちゃって
翠:ううん。いいの。私もね、卒業死期に出ようと思ってたから
千種:……そうなの?
翠:うん。弟の事もあったし、千種に八つ当たりして、それでも千種は私を受け止めてくれてさ。こんなに恵まれてるのに、嫌なことばっか考えてる私も嫌になったの
千種:……うん。わかるよ。私が居た未来の私も翠に対して無責任なことばっか言って、自分のことしか考えられなかった。翠に酷いこと言って、それでね…。未来の翠は死んじゃったんだ
翠:だから…カラオケに行った日、あんなに驚いた顔してたのか
千種:そう。翠に会えてよかった。これから生きられるかわからないけど…私は翠となら、一緒に生きたいし、死ぬ時も一緒に居たい
翠:……ありがとう。千種
翠:あははっ。ちょっと恥ずかしいや。ごめん、後ろ向いて話してもいい?
0【間】
翠:私、高校から千種と仲良くなったわけだけどさ、こんなに一緒にいて楽しいって思える人は千種だけだったよ。修学旅行もさ、他にクラスメイトは沢山居たけど、2人で行動してたもんね
翠:懐かしいよね。家では辛いことばっかだったけど、早く明日になれって思ってた。早く千種に会いたいって。これが私にとっての生きてる意味になってたよ
翠:だからさ!千種!
翠:………あれ?千種?……どこ行ったの!?千種!?
0:【間】
0:場面転換。暗い教室の中
奥村:よっこいしょっと。耳くそくさっ
千種:………離してください
奥村:おう。離すからとりあえず逃げずに私の話を聞けー。うわあ。髪の毛ベトベト
千種:……私に何をするつもりですか?
奥村:ま、何するかは置いといて、とりあえずルール違反だ。度が過ぎているぞ
千種:……それは…私が翠と生きるためにやったことです
奥村:うん。ま、生きるってことは素晴らしい事だ。私もそれはよくわかる。お前のやってる事も間違いではないな
千種:………
奥村:だから、このまま、栗原が生きることを望んでいるんだろう?
千種:そうですよ。だから…早く翠の所に行かせて
奥村:なら、そのまま生きればいいんじゃないか?
千種:……え?
奥村:栗原はあと1ヶ月で死ぬ運命だった。それを変えたのは間違いなくお前だ。卒業死期のルールを破って得たものだろ?ならそのまま生きればいい
千種:……じゃあ、私は……翠と…一緒に……
奥村:ん?一緒に生きられるって?
千種:私は!翠と一緒に生きたい!!
奥村:ああー。なるほどねぇー。……悪い、浅木。そうは言ってない
千種:……え?……うっ!!
0:奥村は千種のみぞおちを殴る
奥村:おー。うまーく気絶したなー。……よっこいしょっと。まーた運ばないといけないのかー。めんどくさー
千種:………
奥村:このルールが無きゃお前は栗原と生きられたかも知れないんだけどなぁー。とりあえず、栗原だけは生かしておくぞ。あいつに罪はないからな
奥村:ま、聞こえてないんだろうけどな
0:奥村は千種を屋上まで運ぶ
奥村:へっ……へっ……へっくしょん!ふぅー。さみー。屋上なんて行くもんじゃねーな。早く浅木を投げとかないと。んーー。一応教え子だったし、なんか一言言った方がいいか?
奥村:ま、何もねーわ
0:奥村は千種を屋上から投げ飛ばす
翠:……な、何の音?……千種!どこに居るの!?ねえ!千種ー!!
翠:……え?……あれ、千種じゃないよね?……千種……やだ……千種……っ。千種ーー!!
0:【間】
千種:(M)みんなが思うよりも生きるって難しいな。翠も、私も…。何のために生きているか、誰のために生きているか、考えないといけないんだもん
千種:(M)ねえ、翠。私がもし死んだら…翠はどうするの?このまま大人になって、死にたいって気持ちも無くなって、幸せに生きるの?
千種:(M)それでもいいんだけどね。それじゃあ私はちょっと寂しいな。……この気持ちはずっと変わらないね。私と一緒に生きて…私と一緒に死んでくれる?
千種:(M) うん。私は…翠が一緒に居てくれるなら…それでいいの
千種:(M)生きている世界でも、死んだ後の世界でも、翠が一緒に居てくれるなら…それでいい
0:【長い間】
奥村:栗原翠
翠:……はい
奥村:以上だな。他に自殺希望者はいないか?んー。居ないみたいだな。よし、じゃあ他の生徒は通常の卒業式に参加しろー。あーケツかゆっ
奥村:……栗原翠は、卒業死期の方に参加だ
0:【間】
翠:………待っててね。千種
0:〜END〜
奥村:浅木千種(あさぎちぐさ)
千種:……はい
奥村:以上だな。他に自殺希望者はいないか?
0:【間】
奥村:今年は1人だけか。よーし。他の生徒は通常の卒業式に出席しろ。……ふぇ……ふぇ……へっくしゅん!……うぅ〜鼻水くさっ。とりあえず今名前を呼んだ者は物理室に来るように
奥村:じゃあ、速やかに体育館に移動しろ〜。頭かゆっ
0:【間】
0:場面転換。物理室では……
奥村:んじゃあ適当に座れ〜。お?屁出た
千種:………
田崎:ほう。今年は一人だけですか!奥村先生
奥村:みたいですねー
千種:あ、あの……
田崎:あんた…魂の色はまだ青いねぇ…
千種:……魂?
奥村:ま、緊張すんな。気を楽にしろ。今からお前だけで卒業死期(そつぎょうしき)を始めるからな。教頭にもお前の死期(しき)を見守ってもらうことになってる
田崎:よろしくね!浅木さん!
千種:……先生達は、なんで私が自殺したいかは聞かないんですか?
奥村:ん?ゲェー!ゲップ出たわ。聞かないってか興味無いからな
千種:興味…無い……?自殺希望者を聞いといてそんなこと……!
奥村:別に聞いたところでだろ?怖いなら辞めればいい
田崎:そうだそうだー!教頭もそう思うぞー!
千種:先生なら自殺することは…間違ってるって言うと思った
奥村:間違い?ああー。あのな〜。自殺する事は別に間違いじゃないぞ?
千種:……何それ
田崎:何それってわからないのー!?死にたいのにー!?やっばーいよそれ〜!あんたはなんで死にたいか考えた結果この卒業死期に出席したんだよね?
千種:……そうだけど、死ぬ事が間違いだと思ってたから
奥村:高校卒業して大学に出て社会に出たら後は奴隷のように働いて、無駄な時間を過ごすだけだ。人は生まれたその時から地獄の始まりだからな。その地獄から逃れるだけの事。合理的な考えだろ?
千種:……じゃあ何をどうすれば…自殺が出来るの?
奥村:ま、これから説明する。そう急ぐな。まず、お前にはこれを渡そう
千種:……これは?
田崎:卒業消書(そうぎょうしょうしょ)だよー!まだ中は見ちゃダメだからねー?この中にはあんたの過去が詰まっているんだー
千種:……過去?
田崎:そう、あんたが1番辛いと感じた過去だよ!一度は生きてみたものの、もう一度その経験をするくらいなら死んだ方がマシー!うえーい!!って、18のあんたでもそう思うことあるでしょー??その時が来たら死ねばいい
千種:……もう一度……あの事を…経験しないといけないの?
奥村:その方がより死にたくなるだろ?
千種:……わかった。早くその過去に行かせて
奥村:待てって言ってるだろー?おー。鼻毛8本抜けた。卒業死期に出席するにあたっていくつか注意点がある
千種:……なに?
奥村:お前は過去に戻るが、くれぐれも他の生徒には自分が未来から来たなんて事は話すなよー?あと、監視する訳では無いけど一応私も知ってる
千種:………
田崎:最後に、生きるも死ぬもあんたの勝手にしてもいいけどねー。誰かの死を助けたり、あるいはそれが職員にバレた時……
田崎:意図的に卒業死期のことを他の人に話したと判断した時、教頭がお前を殺すからね??
千種:…………
田崎:わかったら返事!
千種:は、はい
奥村:じゃあ、以上だ。ケツかゆっ。卒業消書(そつぎょうしょうしょ)を開いてみろ
千種:………っ!!
奥村:人生卒業おめでとう。浅木
千種:……う、うわああぁー!!
0:千種は卒業消書の光に包まれる
0:【間】
千種:(M)私の過去…。それは……
0:『過去』
千種:大丈夫だよ!翠(すい)!辛くても私が居るから!
千種:翠が悲しい分、私が楽しませるよ!だから、何でも話してよ!
千種:私はずっと翠の味方だから!大丈夫!生きていれば必ずいい事あるからさ!
0:【間】
千種:(M)前向きな言葉という名の、無責任な押し付けだった
0:【間】
0:『卒業死期』
千種:……っ!?……ここは?
千種:……いつもと…変わらない制服。……いつもと変わらない…教室。……今…何日?
翠:あれ?千種(ちぐさ)?なんでこんなとこに居るの?
千種:……翠(すい)?
翠:ん?何?そんな驚いた顔して
千種:本当に?本当に翠なの!?
翠:…え?…何?
千種:………本当に…翠だ
翠:はあ?大丈夫?急性記憶障害ですかー?
千種:………翠!!
翠:っ!?な、なんなの!?急に抱きついてこないでよ。何も言わないで3日間休んで悪かったけど、そんなに心配する?
千種:……よかった…よかった……
翠:触んな!気持ち悪いよ
千種:……ごめんね
翠:本当に急になんなの?
千種:ううん。何でもない
翠:んで?行くの?
千種:どこに?
翠:カラオケにだよ。今日約束したばっかでしょ?
千種:………ねえ。今日って何日?
翠:はあ??12月5日だよ。やばいよあんた
千種:………じゃあ…弟さんは……
翠:……え?なに?
千種:いや、何でもない。早くカラオケに行こ?
0:【間】
千種:(M)栗原翠。(くりはらすい)この子は私の同級生で一番仲がいい親友だった
千種:(M)私が高校を卒業するまでの約3ヶ月間。翠の過去を知って、翠の気持ちを知って、翠の辛さを知った。だから私はこの卒業死期で、先に死んでしまった翠と一緒に死にたいと思った
千種:(M)過去に戻って翠と一緒に死ぬ。これが私が卒業死期に出席した理由だった
0:【間】
田崎:浅木千種。(あさぎちぐさ)栗原翠。(くりはらすい)卒業死期に参加してるのは浅木だけど、栗原は参加しなかったのー?
奥村:それは今現在、未来から来ている浅木にしかわからないことですよ。それに、わかりますよね?やつの寿命
田崎:そうだねぇー!あともうちょっとって所かな?
奥村:何が原因なんですかねぇ
田崎:早く死んでもらわないとなー
奥村:ま、どっちにしろ、死にたいやつは勝手に死んでいきますよ。はあ。うわっ、口くさっ
田崎:そうだねぇー!どんな死に方をするのか、楽しみだなぁー
0:【間】
0:場面転換。カラオケ
翠:ふぅ〜。歌った歌った〜!千種、今日は付き合ってくれてありがとね
千種:ううん!全然いいんだよ
翠:なんか色々と吹っ切れたかも
千種:それならよかった
翠:もうそろそろ帰る?
千種:どうして?
翠:まだ時間あるしちょっと話してもいい?
千種:……うん
翠:………あのさ
千種:……なに?
翠:……ごめん、ちょっとこうしてていい?
千種:っ
0:【間】
千種:(M)翠は私を強く抱きしめる。でも…その後に出てくる言葉を私は知っているから、翠の体を包んだ
翠:……3日前にね…弟が…死んだんだ
千種:…………そう、なんだ
翠:……千種ならもっとびっくりすると思ったのに
千種:あ……ごめん。びっくりしすぎてどんな反応したらいいかわかんなかった
翠:まあ、それもそうだよね。今までずっと相談乗ってくれてありがとう
千種:………翠。死なないで
翠:………え?何言ってんの?
千種:だって…弟さん亡くなって…悲しくなって……その後………
翠:別に悲しいけど…。死にたいなんて思わないよ
千種:本当に?
翠:うん、本当に
千種:嘘だよ
翠:……千種は私の何を知ってんの?
千種:………知らないけど…。翠、辛いことがあるなら言って?
翠:辛いことはもう言ったでしょ
千種:もっと!もっと色々教えてよ!今何を思ってるとか、これからどうやって生きていくとか、親御さんとどうするとか、言ってくれなきゃわかんないよ!
翠:……千種?
千種:翠のこと心配なんだよ!翠が今辛いなら私だって寄り添いたいの!お願いだよ!翠!
翠:……なんで千種が先走ってるの?
千種:………
翠:私がいつ死ぬって言ったの?辛いけど…それでも私は強く生きるって決めたのに……なんで千種はそれを信じてくれないの?
千種:……だって…
翠:千種だったらいつもみたいに明るく声を掛けてくれると思った……。それだけで私はもっと前向きになれると思ったのに。いつもの千種に戻ってよ…
千種:でも……私は!
翠:もういいよ。そんなこと言ってほしくて話したわけじゃないから
千種:ダメだって!
翠:もう黙ってよ!!どうせ千種は私の事わかってくれないんだから!
千種:……翠
翠:帰る。お金は置いとくね
千種:翠!
0:翠はカラオケの部屋を出る
0:【間】
千種:(M)過去の自分だったら翠を元気付けてあげてた。大丈夫だよ。辛いけど一緒に頑張ろうって。でも、それは無責任な発言だと思った
千種:(M)私が辛いわけじゃないのにそれをわかってあげるなんて出来ない。それでいて無責任に頑張ろうなんて言ったから……。それが翠に伝わらなかったから……追い討ちを掛けるように酷いことも言ったから。
千種:(M)今なら大事な人を失った気持ちもわかるのに、辛い気持ちも、死にたい気持ちもわかるのに…。……私はどうしても…翠と死にたいと思ってしまう
0:【間】
0:場面転換
田崎:ねえねえ!奥村先生
奥村:なんです?
田崎:あんたは卒業生を送るのは何回目?
奥村:3回目ですが
田崎:ほうほう!もう慣れてきたんじゃない?ちなみにー。卒業死期で本当に死んだ人って何人居たー?
奥村:そうですね。浅木合わせて死期に参加したのは合計で4人ですが、誰も死んでません
田崎:なんで!?せっかく死ねるチャンスなのにー!
奥村:っ。耳毛ながっ。そうですねー。結局人間って生き物は死にたくて死ぬ人なんて居ないんじゃないですか?
田崎:いいやー?死にたくて死ぬ人はいくらでも居るよー?だって、栗原翠だってあと1ヶ月もすれば死ぬしね!
奥村:何が言いたいんです?
田崎:人間って賢いからね?卒業死期に出席した人は過去に戻るんだけど、あの時ああしとけば、こうしとけばー!!って気持ちを振り返ってー、どうにか改善しようとするんだよー!いい方向にもっていこうとするのー!!
田崎:え?死にたいんじゃなかったの?って思うけど結局生きようとするんだよね
奥村:そりゃあそうですよ。人間は弱い生き物だから、失敗と反省を繰り返して、より良い環境を作り出し、なんとか生きようとする。今まで卒業死期に出席したやつらもそうだった
田崎:そうなんだよねぇー!どうしてなのー!?1度死にたいって思ったのに、また生きようと思うなんてそれこそ弱虫だよ!!生きてる意味なんてなーんにもないのに!
奥村:だから、何が言いたいんです?
田崎:だからね。中途半端なやつはみんな死ねばいいんじゃないかなって思ってるんだ
奥村:なら、浅木をどうすると?
田崎:あの子さ、余計なことしたりしないよね?
奥村:さあ?浅木千種に関しては両親も健康的で友達にも恵まれている。特に何も問題は無いはずですね
田崎:じゃあ、大親友の栗原翠を助けるってことなのかな?
奥村:さて?どうでしょう
田崎:そうなった時は……。殺さないといけないからねぇ
0:【間】
千種:翠は……いつもの私がいいの?本当に?それで生きてくれるの?もっと私が翠の事を見ていればとか……浮ついた言葉で慰めなきゃとか……。もう後悔は沢山してきた。だからこそ……後悔なんてしたくないと思っちゃうんだよ
0:【間】
0:次の日のこと
千種:……あっ
翠:……
千種:翠!
翠:……なに?
千種:あ、あの…。昨日は…ごめんね?翠の気持ちを汲み取れなくて
翠:別に、汲み取らなくてもいいよ
千種:……え?だって昨日は…
翠:私の方こそごめん。千種にそんなこと求めて八つ当たりしても意味ないと思ったんだ。ごめんね?
千種:……でも
翠:ありがとね。確かに千種の言う通り辛いことだらけだった。……でもさ
千種:………
翠:どうして千種は私が死にたがることを知ってたの?
千種:……それは…
田崎:(意図的に卒業死期のことを他の人に話したと判断した時、教頭がお前を殺すからね??)
千種:……っ
翠:千種?大丈夫?
千種:あ、うん!大丈夫
翠:どうしたの?
千種:……私さ…まだ誰にも言ってないんだけど…翠には言うね
翠:……なに?
千種:私も…つい最近、大事な人が亡くなったの
翠:……え?
千種:家族ではなくて、大事な人が
翠:……それは…いつ?千種、全然そんな素振り見せなかったじゃん
千種:詳しいことは言えない。、けどね、私はその人にこう言ったの。大丈夫だよって生きていれば必ずいい事があるからって
翠:………
千種:でも……。そんなの綺麗事なんだよね。そんな言葉じゃ人は救えないってわかったの。だから…翠が今辛いんだったら、私は翠の気持ちに寄り添って一緒に辛くなりたいの
翠:………千種
千種:だから……お願い、翠
0:【間】
奥村:ちーっす。お二人さん
千種:っ!奥村先生……
奥村:こんな所で突っ立てると邪魔だぞー。へそくさっ。早く学校行けー。はぁぁ〜〜。ねみぃー
翠:……とりあえず。行こ?
千種:……うん
0:奥村は2人を見送り……
奥村:何考えてやがる?浅木
0:【間】
田崎:あーさーぎーさんっ。
千種:……教頭先生
田崎:卒業死期はどう?今度こそ自殺出来そう?
千種:そんな物騒なこと聞かないでください
田崎:物騒なことって!ぷっ!ぷはははははは!!自分で選んだ事なのに何言ってんのー!?ウケるんですけどー!
千種:……私に何の用ですか?
田崎:あー。そうだね。あんたも知ってると思うけど、栗原はあと1ヶ月もすれば死ぬんだけどさー。………余計なこと考えてないよね?
千種:……余計なことって?
田崎:卒業死期のルールは知ってるでしょ?………誰かの死を助ける行為はルール違反だからねぇ?
田崎:……わかってるよな?おい
千種:……わ、わかってます
田崎:お前たち人間の死なんてクソほどどうでもいいんだからさ。早く死ねば?
千種:でも!私は翠と一緒に死にたいから……。翠が死にたい時が来るまでは…私は翠と生きます
田崎:そんなに栗原に固執する必要ある?
千種:……あります。だって………
千種:翠を殺したのは……私だから。一緒に死ぬ責任があります
0:【間】
奥村:本当にいいんだな?栗原
翠:……うん
奥村:ま、後悔なんてもうないだろ?
翠:でも……教えて。卒業死期に出席するとどうなるのか
奥村:それを教えてどうなる?
翠:………それは
奥村:死にたいんだったら、お前には関係ない。私はお前たち人間の生き方も死に方も否定しないよ
翠:……先生は…どっちの味方なの?
奥村:味方?何を勘違いしてるかは知らんが、私は誰の味方になるつもりは無い
翠:じゃあ、どうしてこんな事を……。人の自殺を示唆するなんてことしてるの!?
奥村:だから、お前には関係ないと言ったはずだ。何のために卒業死期に出席するんだ?物事に興味を持つ暇があるなら、どう死ぬかを考えろ
翠:……そんなこと…言われたって
奥村:お前さー。いつまで甘えてんだ?もう死にたいんだろ?その覚悟があるならもうとっくに死んでるはずなのに、お前は何を迷っている?
翠:……だって…。千種が居るから
奥村:浅木がいるからどうした?
翠:千種は…私のたった一人の親友だから……
奥村:死ぬ時は一人だろ……?死んだ後も一人だ
翠:…………
奥村:ごちゃごちゃ考えるな。自分の胸の中に感情を残すな。自分の中の浅木を殺すんだよ。死ぬってことはこういう事だ
翠:……わかりました
奥村:ま、とりあえず。卒業死期には出席ということで進めとくからな。っ。鼻くそ取れた
翠:……はい。じゃあ失礼します
0:翠は教室を出る
奥村:………ま、あと1ヶ月でお前は死ぬんだけどね
0:【間】
田崎:あーあー。どいつもこいつもウジウジと腹立つなー!どうして早く死なないのかねー?
奥村:人間は弱いから生きるものだと。教頭が言ったんですよね?
田崎:そうだけど、あの二人見てるとイライラしてくるんだよねー
奥村:私たちが感情的になってたら卒業死期をしてる意味が無いです
田崎:あんたは無感情で気味が悪いんだよ!鼻ほじって屁するし!
奥村:ま、生きてるって感じがして良いじゃないですか
田崎:この期に及んで生きることを良いって感じてんの?
奥村:ああ。私の考えはこうですからね。死にたきゃ死ねばいい。生きたいなら生きたらいい
田崎:あんたのどっちつかずな性格は何とかならないの?
奥村:どっちつかずってか。生きることだって悪いことでは無いですからね
田崎:あんた。いい加減にしないとクビにするよ?
奥村:今の時代、それはパワハラですよ
田崎:……うらぁぁー!!
奥村:…っ!
田崎:全く……!この教頭に喧嘩売ってんのか!?ああ!?
奥村:あの…。私一応若いですからね。あんたの斧じゃ殺せないですよ?
田崎:お前が同僚じゃなかったら本当に殺してるところだったけどね!
奥村:同じ職種同士で殺し合いは無意味でしょー
田崎:黙りなさい!!はあ。あんた達のせいですぐイライラしちゃう!
奥村:更年期ですか?
田崎:殺されたいの?
奥村:ま、落ち着いてください。ゲェェ。ゲップ出た
田崎:あんたはどう考えてる?浅木千種のこと
奥村:あいつの魂は赤色ですよ?
田崎:……でも、これ以上浅木千種が何か仕出かしたら、教頭は動くからね?いいでしょ?
奥村:好きにしてください。それに、栗原翠の魂はまだ青色です。あいつは1ヶ月後に死ぬというのにまだ生きていたいという気持ちがあるようで
田崎:ああ、それはね。浅木千種が自白したよ?彼女を殺したのは私だってね。どうやって殺したかはわからないけど、確かに浅木千種の魂は赤色になってる。もう死にたいという気持ちはあるみたいだねぇ〜
奥村:ま、卒業死期に参加するならそういう気持ちにもなるでしょう。それでも今までの卒業生とは違う。間違いなくこの卒業死期で浅木千種は自殺するでしょうね
田崎:ふっふっふ!楽しみになってきたねぇ〜。奥村せんせっ!
0:【間】
0:いつもの教室にて
千種:ねえ、翠?
翠:…………
千種:翠!待ってよ!
翠:離して!
千種:どうして無視するの?
翠:もう私に関わらないで。千種と居るとおかしくなりそう
千種:……急にどうしたの?
翠:……千種は…私が死んだらどうするの?
千種:……なんで?
翠:答えて
千種:……私は…それでも翠と一緒に居る
翠:何言ってんの?私が死んだら一緒に居れないでしょ
千種:ううん。一緒に居るよ。だって……翠と一緒に死ぬって決めたんだもん
翠:………あんたが死んで…どうするのよ?
千種:私は最初からそのつもりだったから
翠:あんたが死ぬ必要はないでしょ!?
千種:じゃあ…翠は生きてよ
翠:……なんで?
千種:私に生きて欲しいなら…翠も一緒に生きてよ
翠:……じゃあ…生きるって言ったら……千種は私と生きてくれるの?
千種:もちろんだよ
翠:……千種…
千種:死ぬ時も…生きる時も……ずっと一緒に居たい
翠:……どうしてそこまでして…私の事…
千種:この世界で…1番大好きな、親友だから
翠:……っ!
0:翠は千種を抱きしめる
翠:……ありがとう。千種
千種:ううん。感謝するのは私の方だよ。私とずっと一緒に居て?
翠:……うん。じゃあ、私は…千種と一緒に生きるよ
千種:………うん
0:【間】
千種:(M)私が経験した過去とは…違うことが起きた
千種:(M)過去の私は翠に生きてって言ったから。頑張れって、味方だからって、生きていればいい事あるって
千種:(M)そんな無責任な言葉で翠を追い詰めて、それでもまだ死にたいって言った翠に私はこう言った
千種:(M)「そんなに死にたいなら死ねばいいじゃん」って
千種:(M)私の慰めの言葉は翠には届かなくて、めんどくさいって一瞬でも思ったから心にもない事を言ってしまった。死にたい人に何言っても無駄なんだって諦めていた
千種:(M)次の日、翠は自宅のマンションから飛び降りて自殺をした。私が死ねばいいって言った次の日にたった一人の親友が自殺をした
千種:(M)あの時…無責任に慰めなければ…。あの時…もっと翠に寄り添っていれば…。あの時…死ねばいいって言わなければ…。色んな後悔が頭の中を掻き回す。そして……最後にはこう思ってしまうんだ
千種:(M)私が翠を殺してしまった…って
0:【間】
千種:(M)でも今は、翠は一緒に生きるって言ってくれる。私の言葉を聞いて、一緒に生きるって。なら、その希望を持って…私は…翠と………
田崎:なーに魂青くさせちゃってんのー?あ・さ・ぎ・さんっ!
千種:……っ!教頭先生!?
翠:な、なんで教頭先生が……
田崎:死ぬんじゃなかったの?浅木千種
千種:………
翠:……え?どういうこと?
田崎:人の命救って卒業死期に出てんじゃねーよ!!おらぁぁ!!
0:田崎は斧を振り下ろす
翠:きゃあ!
千種:翠!こっち!
田崎:待てよ!!ガキ共!!
千種:っ!!
0:千種は田崎に椅子を投げつける
田崎:いってぇ!!……このガキ…。相当な問題児だったみたいだねぇ!!
千種:翠!走るよ!
翠:う、うん!
0:千種と翠は廊下を掛ける
翠:はぁ!はぁ!なんで教頭先生が斧なんて持ってるの!?
千種:わかんないけど…!でも、ただの人じゃないのはわかる!ずっと不気味だったんだから
翠:ただの人間じゃないって…なんで!?
千種:それは後で話すよ!一緒に生きてここから出られたらね
翠:うん!
千種:ここに隠れよう!
田崎:待てぇー!逃がさないぞ?栗原も一緒に殺してあげるから早く出てこい!!
千種:………
翠:………
田崎:おーい!!隠れてないで出てきなよぉー。浅木千種ー。あと1ヶ月で死ぬはずの栗原翠を生かすなんて前代未聞だよー?この学校にいる限り逃げ場はないんだからさぁー。諦めなってー!
千種:翠
翠:……何?
千種:私が囮になるから。翠はこのロッカーを押し倒して
翠:…そんな……。そんな事したら千種が危ないじゃん!
千種:私は大丈夫。元々死ぬためにここに来たんだから
翠:……千種…。さっき教頭先生が言ってた卒業死期って……
千種:うん。卒業死期はね、辛かった過去をもう一度経験してから死ぬか生きるかを選ぶの。でも…卒業死期の事がバレたり、死ぬはずの誰かの命を助けたりしたら殺されるみたいなの
翠:……じゃあ…千種は私の事を…
千種:うん。命懸けで、翠のこと守るから。でも、翠と一緒に生きるからね
翠:……うん!
0:【間】
田崎:あぁー!みーつけたー!!
千種:っ!!
田崎:うっ!
0:千種は田崎に体当たりをする
田崎:おいおい!暴れんなよ!これからたーっぷり痛めつけてあげるんだから…さ!!
千種:っ!
田崎:あっははははははは!!!ほら!馬乗りにされちゃったねぇー!!動けるー?ねぇー?動いてみてよ。ねぇ!動けないでしょ!?無様だなー!ばーか!!
千種:………っ!!やめて!!
田崎:やめなーい!!ほら、これなーんだ?ほら、これなに?言ってみ?あっははははははは!!!そう!!斧だよ!!これでお前の頭をかち割ってあげるんだーー!!
千種:離して!!
田崎:離さないよー?お前にはムカついてるんだから!お前、栗原翠とどんな約束をしたの?まさか一緒に生きるって言ったの?そんなのこの教頭が許さないからねぇー!今すぐに…死ねぇぇーー!!
翠:うわああーー!!!
田崎:あああぁぁーー!!!
0:田崎は翠が倒した掃除ロッカーの下敷きになる
千種:……っ!
田崎:ま、待て!!逃がさない……!
翠:後頭部に直撃した!多分しばらく動けないよ!
千種:ありがとう!翠!
翠:行こう!
千種:うん!
田崎:待てー!!クソガキどもー!!……っ!
0:2人はまた走る
千種:学校を出よう!
翠:うん!……あれ?昇降口が開かない…
千種:な、なんで!?
翠:っ!!ダメだ…。ガラスも割れない
千種:……じゃあもう、逃げられないのかな
翠:……ははっ。じゃあ……一緒に死ぬ?
千種:ふふっ。どうしよっか。それはまた後で考えよう
翠:うん。そうだね。
千種:………ごめんね、翠までこんな危険な目にあわせちゃって
翠:ううん。いいの。私もね、卒業死期に出ようと思ってたから
千種:……そうなの?
翠:うん。弟の事もあったし、千種に八つ当たりして、それでも千種は私を受け止めてくれてさ。こんなに恵まれてるのに、嫌なことばっか考えてる私も嫌になったの
千種:……うん。わかるよ。私が居た未来の私も翠に対して無責任なことばっか言って、自分のことしか考えられなかった。翠に酷いこと言って、それでね…。未来の翠は死んじゃったんだ
翠:だから…カラオケに行った日、あんなに驚いた顔してたのか
千種:そう。翠に会えてよかった。これから生きられるかわからないけど…私は翠となら、一緒に生きたいし、死ぬ時も一緒に居たい
翠:……ありがとう。千種
翠:あははっ。ちょっと恥ずかしいや。ごめん、後ろ向いて話してもいい?
0【間】
翠:私、高校から千種と仲良くなったわけだけどさ、こんなに一緒にいて楽しいって思える人は千種だけだったよ。修学旅行もさ、他にクラスメイトは沢山居たけど、2人で行動してたもんね
翠:懐かしいよね。家では辛いことばっかだったけど、早く明日になれって思ってた。早く千種に会いたいって。これが私にとっての生きてる意味になってたよ
翠:だからさ!千種!
翠:………あれ?千種?……どこ行ったの!?千種!?
0:【間】
0:場面転換。暗い教室の中
奥村:よっこいしょっと。耳くそくさっ
千種:………離してください
奥村:おう。離すからとりあえず逃げずに私の話を聞けー。うわあ。髪の毛ベトベト
千種:……私に何をするつもりですか?
奥村:ま、何するかは置いといて、とりあえずルール違反だ。度が過ぎているぞ
千種:……それは…私が翠と生きるためにやったことです
奥村:うん。ま、生きるってことは素晴らしい事だ。私もそれはよくわかる。お前のやってる事も間違いではないな
千種:………
奥村:だから、このまま、栗原が生きることを望んでいるんだろう?
千種:そうですよ。だから…早く翠の所に行かせて
奥村:なら、そのまま生きればいいんじゃないか?
千種:……え?
奥村:栗原はあと1ヶ月で死ぬ運命だった。それを変えたのは間違いなくお前だ。卒業死期のルールを破って得たものだろ?ならそのまま生きればいい
千種:……じゃあ、私は……翠と…一緒に……
奥村:ん?一緒に生きられるって?
千種:私は!翠と一緒に生きたい!!
奥村:ああー。なるほどねぇー。……悪い、浅木。そうは言ってない
千種:……え?……うっ!!
0:奥村は千種のみぞおちを殴る
奥村:おー。うまーく気絶したなー。……よっこいしょっと。まーた運ばないといけないのかー。めんどくさー
千種:………
奥村:このルールが無きゃお前は栗原と生きられたかも知れないんだけどなぁー。とりあえず、栗原だけは生かしておくぞ。あいつに罪はないからな
奥村:ま、聞こえてないんだろうけどな
0:奥村は千種を屋上まで運ぶ
奥村:へっ……へっ……へっくしょん!ふぅー。さみー。屋上なんて行くもんじゃねーな。早く浅木を投げとかないと。んーー。一応教え子だったし、なんか一言言った方がいいか?
奥村:ま、何もねーわ
0:奥村は千種を屋上から投げ飛ばす
翠:……な、何の音?……千種!どこに居るの!?ねえ!千種ー!!
翠:……え?……あれ、千種じゃないよね?……千種……やだ……千種……っ。千種ーー!!
0:【間】
千種:(M)みんなが思うよりも生きるって難しいな。翠も、私も…。何のために生きているか、誰のために生きているか、考えないといけないんだもん
千種:(M)ねえ、翠。私がもし死んだら…翠はどうするの?このまま大人になって、死にたいって気持ちも無くなって、幸せに生きるの?
千種:(M)それでもいいんだけどね。それじゃあ私はちょっと寂しいな。……この気持ちはずっと変わらないね。私と一緒に生きて…私と一緒に死んでくれる?
千種:(M) うん。私は…翠が一緒に居てくれるなら…それでいいの
千種:(M)生きている世界でも、死んだ後の世界でも、翠が一緒に居てくれるなら…それでいい
0:【長い間】
奥村:栗原翠
翠:……はい
奥村:以上だな。他に自殺希望者はいないか?んー。居ないみたいだな。よし、じゃあ他の生徒は通常の卒業式に参加しろー。あーケツかゆっ
奥村:……栗原翠は、卒業死期の方に参加だ
0:【間】
翠:………待っててね。千種
0:〜END〜