台本概要
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タイトル | インディゴ=ノート #06 |
---|---|
作者名 | 蒼山熾音 (@Shinon_Aoyama) |
ジャンル | その他 |
演者人数 | 5人用台本(男3、女2) |
時間 | 30 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
【内容説明】 時は現代、少しだけ違う世界。 信託と称し、古代文明『アライア・イシェド』の末裔ラ=ヴィオラが諸手で抱えていた、20冊を超える古文書、その全てが群青に染まった預言書、神からの啓示が詰められた福音書。 インディゴ=ノート。 その裏には近代イタリアが画策した怨嗟の鎖が蠢いていた。 2編の古文書が世界をひっくり返す。 その中に、抗おうとする5人の賊がいた。 【注意事項】 アレンジ・アドリブありあり(ただし他の演者さんと連携が取れなくなるような無茶ブリは禁止) 性別変更あり(オカマちゃん可) 本編は変更しませんが、適宜説明については変更していきます。 また、キャライメージをそれぞれに書いておりますが、こちらはガン無視していただいて結構です。 と言いますのも自分がイメージ持って書きやすいように記載しているものですので、言ってしまえば作者のメモです。 したがっておひとりおひとり自己主張多めでバチバチキャラクターを作り替えていただき、ご自身の感じたイメージをぶつけていただきたいです。よろしくお願い致します。 蓼原(たではら) 34歳。無精髭標準装備のおっさん。基本気だるげ。イメージはPSYCHO-PASSの狡噛慎也やFateの衛宮切嗣、紺 蓮池(はすいけ) 24歳。好青年イケメン。デキるビジネスマン風。イメージはPSYCHO-PASSのミハイルやエヴァンゲリオンの加持、青 桐谷(きりたに) 21歳。正統派ツンデレ。シナリオによってはツンツンツンくらい。イメージはエヴァンゲリオンのアスカ、赤 柳沼(やぎぬま) 29歳。クールビューティー。大人のオンナで色気たっぷり。イメージはPSYCHO-PASSの唐之森やSAOの(冷静な時の)シノン、紫 桜庭(さくらば) 33歳。闇深い狼。でも悪ではなく単に闇なだけでちゃんといい人。イメージはエヴァンゲリオンのカヲルや(セリフ回しだけは)呪術廻戦の五条悟、モノ 樺倉(かばくら) (回想登場キャラクター)3年前に20歳。陰キャ、非モテだけど顔は悪くないし数学が得意でパソコンをゼロから作れる。イメージはカノ借りの木ノ下和也、緑 31 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
蓼原 | 男 | 41 | 34歳。無精髭標準装備のおっさん。基本気だるげ。イメージはPSYCHO-PASSの狡噛慎也やFateの衛宮切嗣、紺 |
蓮池 | 男 | 25 | 24歳。好青年イケメン。デキるビジネスマン風。イメージはPSYCHO-PASSのミハイルやエヴァンゲリオンの加持、青 |
桐谷 | 女 | 38 | 21歳。正統派ツンデレ。シナリオによってはツンツンツンくらい。イメージはエヴァンゲリオンのアスカ、赤 |
柳沼 | 女 | 29 | 29歳。クールビューティー。大人のオンナで色気たっぷり。イメージはPSYCHO-PASSの唐之森やSAOの(冷静な時の)シノン、紫 |
桜庭 | 男 | 37 | 33歳。闇深い狼。でも悪ではなく単に闇なだけでちゃんといい人。イメージはエヴァンゲリオンのカヲルや(セリフ回しだけは)呪術廻戦の五条悟、モノ |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
:
0:(路上)
:
蓮池:(電話を取る)
:
蓮池:はい
蓮池:貴方も下世話な真似をなさる
蓮池:ああ、C4はよしましょう
蓮池:足がつきかねませんし、私もあまり目立ちたくありません
:
0:(間)
:
蓮池:し損じた時に、しっぺ返しを食らうのは私ですよ?
蓮池:彼らはまだ本来のチームワークを発揮できない
蓮池:ましてやメンバーを既に2名欠いている
蓮池:手負いで私たちを削りきることはできませんよ
蓮池:ええ、はい、はい、分かっているつもりです
蓮池:『ヒドゥン・セクレタリの名のもとに』
:
蓮池:(固まった体をほぐすように伸びをする)
:
蓮池:いやはや、俺も面倒なもんを背負っちまったな
:
0:(走行中の車内)
0:(運転席には桐谷、助手席に柳沼、後部座席に蓼原)
:
桐谷:痛っ
:
柳沼:ごめんねぇ、私すーぐぶつけちゃうから
:
桐谷:仕方ないわ、腕も足も片方残ってれば運転はできるもの
:
柳沼:その代わり、ナビゲートは取ってあげるから安全運転で頼むわね
柳沼:タデちゃんも大丈夫?
:
蓼原:ああ、痛みはあるが動ける
蓼原:少なくともけん制くらいには役に立つさ
:
柳沼:それにしてもセーフハウスで襲われるとは面白い経験ね
:
桐谷:あのハイエナのせいよ
桐谷:余計なことばっかなのは3年前からよく知ってるわ
:
蓼原:済まない、気づいてはいたが確証がなかったんだ
蓼原:奴が動き出すタイミングは手負いの俺たちだけになったタイミングだとにらんだものの
蓼原:まさか本格的にここまで手を伸ばしているとは思わなくてな
蓼原:動きが早すぎる
:
桐谷:考えてみれば確かに妙よ
桐谷:タデさんを連れていく理由もハッキリしてないじゃない
:
柳沼:彼らの復讐って話じゃないの
:
桐谷:それなら『動きが早すぎる』のよ、本当に
:
蓼原:俺が現着したのが襲撃を受ける1時間前だ
蓼原:情報の伝わり方が早すぎるのは確かに不自然だった
:
柳沼:でも、FA-50でその件は片付いたんじゃないの
:
桐谷:じゃあ、それを動かしてきたのは?
:
柳沼:あ…
:
桐谷:そう、あたしたちは様々なタイミングで
桐谷:それぞれ全く関係性が構築されていないはずの組織から
桐谷:異常な速度で伝わった情報をもとに
桐谷:かなり密着して監視されてるのよ
:
柳沼:そして、その窓口としていいように使われてるのが私ってことね
:
蓼原:間違いないだろう
蓼原:併せてだが、ヤツも慣れない手を使わされたな
:
桐谷:あいつはあーゆーの好きでしょ、チマチマ姑息にやるの
:
蓼原:出会い頭に命の終わりを教えてやるのがヤツのやり方だ
蓼原:その点で言っても今回はあまりに異質過ぎたんだ
:
桐谷:(迫る車に気づく)
桐谷:お出ましよ
桐谷:今度はどこかしら
:
柳沼:あー、癇に障る(かんにさわる)ことしてくれるわね
柳沼:ちょっと私、暴れていいかしら
:
桐谷:当たるものならやってみなさいよ
:
柳沼:仕留めたらV.S.O.P.3本よ
:
桐谷:世間じゃぼったくりって言うのよ、それ
:
柳沼:結構よ
柳沼:あなた相手なら心も体も痛まないわ
:
桐谷:ビッチに飲ませる酒は、
桐谷:(アクセルを踏み込む)
桐谷:ない!
:
蓼原:(運転席側後部座席からけん制の銃撃)
蓼原:柳沼、前菜にはちょうどいいから適当にあしらってしまえ
:
柳沼:任せなさいな
柳沼:怒ったお姉さんは、
柳沼:(ダッシュボードからハンドガンを取り出して助手席から身を乗り出し銃撃)
柳沼:怖いのよ!!
:
0:(柳沼、タイヤを撃ち抜き終わらせる)
:
柳沼:ちょっと、アッサリしすぎたかしら
:
蓼原:前菜だと言っただろう
:
0:(桜庭、バイクで接近する)
:
桐谷:ほら、お待ちかねの登場よ
桐谷:(停車させる)
:
桜庭:やあ、派手だね
:
桐谷:相変わらずクソほど頭にくる面(ツラ)ね
:
桜庭:お互い様だろう
:
蓼原:それで
:
桜庭:ああ、今回は申し訳ないね
桜庭:僕が調べに行った隙をついて上手く立ち回られたらしい
:
柳沼:ともかく、無事でよかったわ
:
桜庭:それが、無事とも言えないんだ
桜庭:(袖を捲り右腕の血が滲む包帯を見せる)
:
桐谷:(目を逸らす)
:
柳沼:だいぶ苦労したみたいね
:
桜庭:彼らもかなり金をかけてるね
桜庭:ネイビーのタスクフォースレベルだ
桜庭:一個小隊がまるまるやってきたよ
:
蓼原:それなりに骨が折れそうだ
:
柳沼:(電話が鳴る)
柳沼:お疲れ様、うん、向かうわよ
柳沼:ただごめん、ちょっとバタついちゃって
:
桜庭:(首を振る)
:
柳沼:ええ、ごめんなさい
柳沼:桜庭が裏切ったわ
:
蓼原:(桜庭を見やる)
蓼原:いいのか
:
桜庭:ああ、彼女の端末だからね
桜庭:傍受対象になっている可能性が高い
:
蓼原:にしても、俺が手を下すのは想定の(かぶる/範囲外だろう)
:
桜庭:(かぶせて)言及しなくていいさ
桜庭:ロートルどもはこの程度ではしゃいでくれる
:
桐谷:実際、どうなのよ
:
桜庭:顛末(てんまつ)はこうだ
桜庭:ヒドゥン・セクレタリが僕たちの動きに敏感になったのは、多分蓮池がタデに接触したころだ
桜庭:彼らはそのころから動向を見張ってたとしか考えられない
:
桐谷:例の4階層構造ってやつ?
:
桜庭:いや、実際には5階層以上あることは見えてる
:
蓼原:おそらくはフロント・ブランチ・バックヤード・ブレーンは確かに存在するが、ブレーンたちを従えるフィクサー、そして全体に方針を示し牛耳る(ぎゅうじる)オフィサーの6階層だ
:
桐谷:どこまでいっても尻尾が待ってるわけね
:
桜庭:そういうことだ
桜庭:僕らはそこまで掴んでいるが、それ以上に不可解なのは(かぶる/関連しない)
:
柳沼:(かぶせて)7つ目の階層がサブリナである可能性よ
:
0:(重苦しい間)
:
桜庭:君が、それを口にするのか
:
柳沼:しなきゃ始まらないわ
柳沼:ごめんサク、ちょっと今日付き合ってくれない
柳沼:本当に、ごめんなさい
:
桜庭:ああ、いいよ
桜庭:タデ、(かぶる/済まないが)
:
蓼原:(かぶせて)気にするな、野暮は言わん
:
桜庭:助かるよ
:
桐谷:お子様にはまだ早いわね
:
蓼原:桐谷、悪いが蓮池は俺たちで預かる
:
桐谷:そうよね
桐谷:ベーグルに挟んで食べちゃっても許してね、タデさん
:
蓼原:腹を壊すからやめておけ
:
柳沼:一応、だけど
柳沼:蓮池君には桜庭を追うつもりと伝えてるから
柳沼:何かあってもしばらく連絡は取れないわ
:
蓼原:知ってる
蓼原:その時はテオドロスに祈れ
:
柳沼:(察する)
柳沼:わかったわ
柳沼:桜庭、いいかしら
:
桜庭:うん、僕はその辺り得意だから
:
蓼原:話を戻そう
蓼原:おそらくだが、フロント・ブランチ・バックヤードはそれぞれ暗躍しており、流れの中でブエノスアイレスとハンブルクに接触した最下層組織があったんだろう
蓼原:それぞれは指示を受けて俺たちの監視にあたり、それぞれが集めた情報がブレーンに集まりフィクサー以上でまとめられている
:
桐谷:ってことは、なんだけど
桐谷:あたしたち、全世界が敵ってこと?
:
蓼原:大袈裟だな
蓼原:敵が無尽蔵に増える、ってことだ
:
桜庭:君が望んだ展開じゃないか
桜庭:『当たる方が気持ちいい』んだろう?
:
桐谷:それでも桁が違うわ
桐谷:体保つわけないじゃない、そんなの
:
柳沼:桐谷、うるさい
:
桐谷:少しくらいぼやかせてよ
桐谷:そんな大規模に包囲されるなんて考えてなかったんだから
:
柳沼:私もそうよ
:
0:(間)
:
桜庭:ともかくだ
桜庭:面々はこういう恨みや復讐心を利用するのがお好みだからね
桜庭:まんまと焚きつけられた駒たちは使い捨てられて終わり
桜庭:むしろ僕たちの体力を少しずつでも削れればそれでも利益が出ると大喜びさ
:
柳沼:その結果、主戦力3名の負傷と足止めを得ている
柳沼:これは絶好のチャンスってやつね
:
桜庭:もういい、少し休め
:
柳沼:だって(かぶる/私のせいで)
:
桜庭:(かぶせて)人一倍責任感が強い君ならまずそう言うだろうね
桜庭:それでも、今は休むんだ
桜庭:君が斃れたら(たおれたら)、僕たちは自分たちを取り巻く状況を把握する術(すべ)を失うんだ
桜庭:だからこそ、主戦力に守る余裕がない現状で君が狙われたんだ
桜庭:(細く息をつく)
桜庭:自分の価値を、見誤らないでくれ
:
柳沼:ええ、ありがとう
:
蓼原:貴様が言うか
:
桜庭:痛いね、視線
:
蓼原:知るか
:
桐谷:連れて行って
桐谷:辛気臭いのを横に置いてたら、こっちまで移るわ
:
桜庭:(笑う)
桜庭:おいで、柳沼
:
柳沼:ええ
柳沼:(降車し桜庭のバイクの後ろに乗る)
:
桐谷:ね、これ
桐谷:(愛用のサブマシンガンを柳沼に投げる)
桐谷:護身用
:
柳沼:いいの、大事なものなのに
:
桐谷:ええ、すごく大事よ
桐谷:初めて手にした、あたしだけの相棒
桐谷:(銃においていた視線を柳沼に移す)
桐谷:だから、ちゃんと返しに来なさい
桐谷:戻ってこなかったら、死ぬまで恨むわよ
:
蓼原:(大笑いする)
桜庭:(大笑いする)
:
桐谷:(かぶせて)な、何よ
:
蓼原:(笑い終わる)
桜庭:(笑い終わる)
:
柳沼:ありがとう、大切に使うわ
柳沼:戻ってきたら、お礼するわね
:
桐谷:チンケな礼だったらぶっ飛ばす
:
柳沼:その調子よ、姫
:
桐谷:(そっぽを向く)
:
桜庭:じゃあ、後は頼むよ
:
蓼原:ああ、任せておけ
:
桜庭:(柳沼を乗せ、バイクで去る)
:
蓼原:(見送る)
:
桐谷:と、というか、まだ途中じゃない?
桐谷:早く説明してよ
:
蓼原:悪い悪い
蓼原:お前がかなりかわいらしかったから思わずな
:
桐谷:(照れて慌てる)
桐谷:か、かわいいとか言うなし
:
蓼原:相変わらずだな
:
桐谷:うっさいなあ、もう
:
蓼原:まあいい
蓼原:続きだが、まずは蓮池を拾ってからにしよう
:
:~転換~
:
0:(海沿いを走行中の車内)
0:(蓮池、運転中)
0:(助手席に蓼原、後部座席に桐谷)
:
蓮池:そうでしたか
蓮池:意外に、あっけなく終わらせたんですね
:
蓼原:ああ、酒の趣味が合うやつは少なかったんだがな
:
蓮池:仕方ありませんから僕が付き合いましょう
:
蓼原:よろしく頼むよ
:
蓮池:ところでなんですが、ずっと私に対して向けられている殺気をどうして咎めないんですか
:
蓼原:それが答えだからだよ
:
蓮池:ああ、なるほど
蓮池:これはかなり厄介なことになってしまったようですね
:
蓼原:思えば、俺は貴様をよく知らん
蓼原:勝手に声をかけてきて、桜庭の下にいるようだったから俺もある程度信用して合わせてきたものの、出自も素性も知れないことには変わりない
:
蓮池:そうですね
蓮池:確かに信頼してもらうのは難しいでしょう
:
蓼原:そして、今朝の一件が起こった
蓼原:桜庭は既に俺らをまとめて消しにかかるつもりで挑んでいた
蓼原:俺がアイツの癖を熟知していなければ、多分俺と桐谷は今ごろゴンドラで物言えぬ小旅行だっただろうよ
:
蓮池:これはこれは
蓮池:殺気の意味がようやくつかめてきましたよ
:
蓼原:察しが良くて助かるよ
:
蓮池:では、これはどうでしょう
蓮池:察せてましたか
:
蓮池:(手許のスイッチで助手席と後部座席の扉を破壊し吹き飛ばす)
蓮池:(ハンドルを切り、反動で蓼原と桐谷を海へ放り出す)
:
蓼原:蓮池!!!
蓼原:(懐のハンドガンを取り出し銃撃するもシートに着弾させてしまう)
:
蓼原:(海へ落ちる)
桐谷:(海へ落ちる)
蓮池:(止まることなく走り去る)
:
蓼原:クソが!!
:
桐谷:(溺れかける)
:
蓼原:(救い上げる)
:
蓼原:(陸に上がる)
桐谷:(陸に上がる)
:
蓼原:決まり、だな
:
桐谷:あいつ、何が、目的、なの、かしら
:
蓼原:まだ、摑めん
:
桐谷:どっちみち、あたしら、詰んでない?
:
蓼原:燃えて、くるだろ
:
桐谷:ええ、悪く、ないわね
:
:~転換~
:
0:(蓮池、埠頭で煙草を吸っている)
0:(桜庭、歩いてくる)
:
桜庭:やあ
:
蓮池:毎度のことですが、早いですね
:
桜庭:ああ、そりゃそうなるよ
桜庭:時間に遅れると親の仇(かたき)のようにぷりぷり怒り出すやつがいるからね
:
蓮池:(笑う)
蓮池:それで、皆さんはいかがなんですか
:
桜庭:ああ、3人には理解してもらえてるよ
桜庭:この状況はうまく利用しないとね
:
蓮池:それにしても、サブリナの件まで明かしてしまってよかったんですか
:
桜庭:いいさ
桜庭:どちらにしろ彼らも使い捨てられる対象なんだ
:
蓮池:全く、あなたはどこまで摑んでいらっしゃるのか
蓮池:底が知れませんから僕も戦戦恐恐ですよ、いつ喰われるか分かったものじゃない
:
桜庭:人聞きの悪いことを言ってくれるなよ
桜庭:鬼じゃないんだよ?
:
蓮池:鬣犬(ハイエナ)は時として、獅子をも狩る生き物ですよ
:
桜庭:何だい、聞いているとはやるじゃないか
:
蓮池:師匠がよくやる手口でしたからね
:
桜庭:(笑う)
桜庭:隅に置けないね
:
蓮池:では、もう一つの懸案(けんあん)ですが
:
桜庭:ん、天啓(てんけい)はまだなのかい
:
蓮池:ええ、しばらくはこちらの動きへの対応で必死らしく
蓮池:目立った組織側からの指示は降りてきてませんね
:
桜庭:そうか、ますます面白い
桜庭:それなりにかき乱すことができているようでしたり顔が止まらないよ
:
蓮池:これが蓼原さんならすぐに気づくんでしょうか
:
桜庭:そうだね
桜庭:タデなら見破ってくるよ
:
蓮池:羨ましい、限りですよ
:
桜庭:もちろん、通信環境は個別に準備してるんだろうね
:
蓮池:はい、穴は一つに絞ってます
:
桜庭:よろしい
桜庭:鍵になるのは君だ
桜庭:くれぐれも下手を打つなよ、『フィクサー』
:
0:(続)
:
0:(路上)
:
蓮池:(電話を取る)
:
蓮池:はい
蓮池:貴方も下世話な真似をなさる
蓮池:ああ、C4はよしましょう
蓮池:足がつきかねませんし、私もあまり目立ちたくありません
:
0:(間)
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蓮池:し損じた時に、しっぺ返しを食らうのは私ですよ?
蓮池:彼らはまだ本来のチームワークを発揮できない
蓮池:ましてやメンバーを既に2名欠いている
蓮池:手負いで私たちを削りきることはできませんよ
蓮池:ええ、はい、はい、分かっているつもりです
蓮池:『ヒドゥン・セクレタリの名のもとに』
:
蓮池:(固まった体をほぐすように伸びをする)
:
蓮池:いやはや、俺も面倒なもんを背負っちまったな
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0:(走行中の車内)
0:(運転席には桐谷、助手席に柳沼、後部座席に蓼原)
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桐谷:痛っ
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柳沼:ごめんねぇ、私すーぐぶつけちゃうから
:
桐谷:仕方ないわ、腕も足も片方残ってれば運転はできるもの
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柳沼:その代わり、ナビゲートは取ってあげるから安全運転で頼むわね
柳沼:タデちゃんも大丈夫?
:
蓼原:ああ、痛みはあるが動ける
蓼原:少なくともけん制くらいには役に立つさ
:
柳沼:それにしてもセーフハウスで襲われるとは面白い経験ね
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桐谷:あのハイエナのせいよ
桐谷:余計なことばっかなのは3年前からよく知ってるわ
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蓼原:済まない、気づいてはいたが確証がなかったんだ
蓼原:奴が動き出すタイミングは手負いの俺たちだけになったタイミングだとにらんだものの
蓼原:まさか本格的にここまで手を伸ばしているとは思わなくてな
蓼原:動きが早すぎる
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桐谷:考えてみれば確かに妙よ
桐谷:タデさんを連れていく理由もハッキリしてないじゃない
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柳沼:彼らの復讐って話じゃないの
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桐谷:それなら『動きが早すぎる』のよ、本当に
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蓼原:俺が現着したのが襲撃を受ける1時間前だ
蓼原:情報の伝わり方が早すぎるのは確かに不自然だった
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柳沼:でも、FA-50でその件は片付いたんじゃないの
:
桐谷:じゃあ、それを動かしてきたのは?
:
柳沼:あ…
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桐谷:そう、あたしたちは様々なタイミングで
桐谷:それぞれ全く関係性が構築されていないはずの組織から
桐谷:異常な速度で伝わった情報をもとに
桐谷:かなり密着して監視されてるのよ
:
柳沼:そして、その窓口としていいように使われてるのが私ってことね
:
蓼原:間違いないだろう
蓼原:併せてだが、ヤツも慣れない手を使わされたな
:
桐谷:あいつはあーゆーの好きでしょ、チマチマ姑息にやるの
:
蓼原:出会い頭に命の終わりを教えてやるのがヤツのやり方だ
蓼原:その点で言っても今回はあまりに異質過ぎたんだ
:
桐谷:(迫る車に気づく)
桐谷:お出ましよ
桐谷:今度はどこかしら
:
柳沼:あー、癇に障る(かんにさわる)ことしてくれるわね
柳沼:ちょっと私、暴れていいかしら
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桐谷:当たるものならやってみなさいよ
:
柳沼:仕留めたらV.S.O.P.3本よ
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桐谷:世間じゃぼったくりって言うのよ、それ
:
柳沼:結構よ
柳沼:あなた相手なら心も体も痛まないわ
:
桐谷:ビッチに飲ませる酒は、
桐谷:(アクセルを踏み込む)
桐谷:ない!
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蓼原:(運転席側後部座席からけん制の銃撃)
蓼原:柳沼、前菜にはちょうどいいから適当にあしらってしまえ
:
柳沼:任せなさいな
柳沼:怒ったお姉さんは、
柳沼:(ダッシュボードからハンドガンを取り出して助手席から身を乗り出し銃撃)
柳沼:怖いのよ!!
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0:(柳沼、タイヤを撃ち抜き終わらせる)
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柳沼:ちょっと、アッサリしすぎたかしら
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蓼原:前菜だと言っただろう
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0:(桜庭、バイクで接近する)
:
桐谷:ほら、お待ちかねの登場よ
桐谷:(停車させる)
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桜庭:やあ、派手だね
:
桐谷:相変わらずクソほど頭にくる面(ツラ)ね
:
桜庭:お互い様だろう
:
蓼原:それで
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桜庭:ああ、今回は申し訳ないね
桜庭:僕が調べに行った隙をついて上手く立ち回られたらしい
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柳沼:ともかく、無事でよかったわ
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桜庭:それが、無事とも言えないんだ
桜庭:(袖を捲り右腕の血が滲む包帯を見せる)
:
桐谷:(目を逸らす)
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柳沼:だいぶ苦労したみたいね
:
桜庭:彼らもかなり金をかけてるね
桜庭:ネイビーのタスクフォースレベルだ
桜庭:一個小隊がまるまるやってきたよ
:
蓼原:それなりに骨が折れそうだ
:
柳沼:(電話が鳴る)
柳沼:お疲れ様、うん、向かうわよ
柳沼:ただごめん、ちょっとバタついちゃって
:
桜庭:(首を振る)
:
柳沼:ええ、ごめんなさい
柳沼:桜庭が裏切ったわ
:
蓼原:(桜庭を見やる)
蓼原:いいのか
:
桜庭:ああ、彼女の端末だからね
桜庭:傍受対象になっている可能性が高い
:
蓼原:にしても、俺が手を下すのは想定の(かぶる/範囲外だろう)
:
桜庭:(かぶせて)言及しなくていいさ
桜庭:ロートルどもはこの程度ではしゃいでくれる
:
桐谷:実際、どうなのよ
:
桜庭:顛末(てんまつ)はこうだ
桜庭:ヒドゥン・セクレタリが僕たちの動きに敏感になったのは、多分蓮池がタデに接触したころだ
桜庭:彼らはそのころから動向を見張ってたとしか考えられない
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桐谷:例の4階層構造ってやつ?
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桜庭:いや、実際には5階層以上あることは見えてる
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蓼原:おそらくはフロント・ブランチ・バックヤード・ブレーンは確かに存在するが、ブレーンたちを従えるフィクサー、そして全体に方針を示し牛耳る(ぎゅうじる)オフィサーの6階層だ
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桐谷:どこまでいっても尻尾が待ってるわけね
:
桜庭:そういうことだ
桜庭:僕らはそこまで掴んでいるが、それ以上に不可解なのは(かぶる/関連しない)
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柳沼:(かぶせて)7つ目の階層がサブリナである可能性よ
:
0:(重苦しい間)
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桜庭:君が、それを口にするのか
:
柳沼:しなきゃ始まらないわ
柳沼:ごめんサク、ちょっと今日付き合ってくれない
柳沼:本当に、ごめんなさい
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桜庭:ああ、いいよ
桜庭:タデ、(かぶる/済まないが)
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蓼原:(かぶせて)気にするな、野暮は言わん
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桜庭:助かるよ
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桐谷:お子様にはまだ早いわね
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蓼原:桐谷、悪いが蓮池は俺たちで預かる
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桐谷:そうよね
桐谷:ベーグルに挟んで食べちゃっても許してね、タデさん
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蓼原:腹を壊すからやめておけ
:
柳沼:一応、だけど
柳沼:蓮池君には桜庭を追うつもりと伝えてるから
柳沼:何かあってもしばらく連絡は取れないわ
:
蓼原:知ってる
蓼原:その時はテオドロスに祈れ
:
柳沼:(察する)
柳沼:わかったわ
柳沼:桜庭、いいかしら
:
桜庭:うん、僕はその辺り得意だから
:
蓼原:話を戻そう
蓼原:おそらくだが、フロント・ブランチ・バックヤードはそれぞれ暗躍しており、流れの中でブエノスアイレスとハンブルクに接触した最下層組織があったんだろう
蓼原:それぞれは指示を受けて俺たちの監視にあたり、それぞれが集めた情報がブレーンに集まりフィクサー以上でまとめられている
:
桐谷:ってことは、なんだけど
桐谷:あたしたち、全世界が敵ってこと?
:
蓼原:大袈裟だな
蓼原:敵が無尽蔵に増える、ってことだ
:
桜庭:君が望んだ展開じゃないか
桜庭:『当たる方が気持ちいい』んだろう?
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桐谷:それでも桁が違うわ
桐谷:体保つわけないじゃない、そんなの
:
柳沼:桐谷、うるさい
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桐谷:少しくらいぼやかせてよ
桐谷:そんな大規模に包囲されるなんて考えてなかったんだから
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柳沼:私もそうよ
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0:(間)
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桜庭:ともかくだ
桜庭:面々はこういう恨みや復讐心を利用するのがお好みだからね
桜庭:まんまと焚きつけられた駒たちは使い捨てられて終わり
桜庭:むしろ僕たちの体力を少しずつでも削れればそれでも利益が出ると大喜びさ
:
柳沼:その結果、主戦力3名の負傷と足止めを得ている
柳沼:これは絶好のチャンスってやつね
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桜庭:もういい、少し休め
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柳沼:だって(かぶる/私のせいで)
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桜庭:(かぶせて)人一倍責任感が強い君ならまずそう言うだろうね
桜庭:それでも、今は休むんだ
桜庭:君が斃れたら(たおれたら)、僕たちは自分たちを取り巻く状況を把握する術(すべ)を失うんだ
桜庭:だからこそ、主戦力に守る余裕がない現状で君が狙われたんだ
桜庭:(細く息をつく)
桜庭:自分の価値を、見誤らないでくれ
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柳沼:ええ、ありがとう
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蓼原:貴様が言うか
:
桜庭:痛いね、視線
:
蓼原:知るか
:
桐谷:連れて行って
桐谷:辛気臭いのを横に置いてたら、こっちまで移るわ
:
桜庭:(笑う)
桜庭:おいで、柳沼
:
柳沼:ええ
柳沼:(降車し桜庭のバイクの後ろに乗る)
:
桐谷:ね、これ
桐谷:(愛用のサブマシンガンを柳沼に投げる)
桐谷:護身用
:
柳沼:いいの、大事なものなのに
:
桐谷:ええ、すごく大事よ
桐谷:初めて手にした、あたしだけの相棒
桐谷:(銃においていた視線を柳沼に移す)
桐谷:だから、ちゃんと返しに来なさい
桐谷:戻ってこなかったら、死ぬまで恨むわよ
:
蓼原:(大笑いする)
桜庭:(大笑いする)
:
桐谷:(かぶせて)な、何よ
:
蓼原:(笑い終わる)
桜庭:(笑い終わる)
:
柳沼:ありがとう、大切に使うわ
柳沼:戻ってきたら、お礼するわね
:
桐谷:チンケな礼だったらぶっ飛ばす
:
柳沼:その調子よ、姫
:
桐谷:(そっぽを向く)
:
桜庭:じゃあ、後は頼むよ
:
蓼原:ああ、任せておけ
:
桜庭:(柳沼を乗せ、バイクで去る)
:
蓼原:(見送る)
:
桐谷:と、というか、まだ途中じゃない?
桐谷:早く説明してよ
:
蓼原:悪い悪い
蓼原:お前がかなりかわいらしかったから思わずな
:
桐谷:(照れて慌てる)
桐谷:か、かわいいとか言うなし
:
蓼原:相変わらずだな
:
桐谷:うっさいなあ、もう
:
蓼原:まあいい
蓼原:続きだが、まずは蓮池を拾ってからにしよう
:
:~転換~
:
0:(海沿いを走行中の車内)
0:(蓮池、運転中)
0:(助手席に蓼原、後部座席に桐谷)
:
蓮池:そうでしたか
蓮池:意外に、あっけなく終わらせたんですね
:
蓼原:ああ、酒の趣味が合うやつは少なかったんだがな
:
蓮池:仕方ありませんから僕が付き合いましょう
:
蓼原:よろしく頼むよ
:
蓮池:ところでなんですが、ずっと私に対して向けられている殺気をどうして咎めないんですか
:
蓼原:それが答えだからだよ
:
蓮池:ああ、なるほど
蓮池:これはかなり厄介なことになってしまったようですね
:
蓼原:思えば、俺は貴様をよく知らん
蓼原:勝手に声をかけてきて、桜庭の下にいるようだったから俺もある程度信用して合わせてきたものの、出自も素性も知れないことには変わりない
:
蓮池:そうですね
蓮池:確かに信頼してもらうのは難しいでしょう
:
蓼原:そして、今朝の一件が起こった
蓼原:桜庭は既に俺らをまとめて消しにかかるつもりで挑んでいた
蓼原:俺がアイツの癖を熟知していなければ、多分俺と桐谷は今ごろゴンドラで物言えぬ小旅行だっただろうよ
:
蓮池:これはこれは
蓮池:殺気の意味がようやくつかめてきましたよ
:
蓼原:察しが良くて助かるよ
:
蓮池:では、これはどうでしょう
蓮池:察せてましたか
:
蓮池:(手許のスイッチで助手席と後部座席の扉を破壊し吹き飛ばす)
蓮池:(ハンドルを切り、反動で蓼原と桐谷を海へ放り出す)
:
蓼原:蓮池!!!
蓼原:(懐のハンドガンを取り出し銃撃するもシートに着弾させてしまう)
:
蓼原:(海へ落ちる)
桐谷:(海へ落ちる)
蓮池:(止まることなく走り去る)
:
蓼原:クソが!!
:
桐谷:(溺れかける)
:
蓼原:(救い上げる)
:
蓼原:(陸に上がる)
桐谷:(陸に上がる)
:
蓼原:決まり、だな
:
桐谷:あいつ、何が、目的、なの、かしら
:
蓼原:まだ、摑めん
:
桐谷:どっちみち、あたしら、詰んでない?
:
蓼原:燃えて、くるだろ
:
桐谷:ええ、悪く、ないわね
:
:~転換~
:
0:(蓮池、埠頭で煙草を吸っている)
0:(桜庭、歩いてくる)
:
桜庭:やあ
:
蓮池:毎度のことですが、早いですね
:
桜庭:ああ、そりゃそうなるよ
桜庭:時間に遅れると親の仇(かたき)のようにぷりぷり怒り出すやつがいるからね
:
蓮池:(笑う)
蓮池:それで、皆さんはいかがなんですか
:
桜庭:ああ、3人には理解してもらえてるよ
桜庭:この状況はうまく利用しないとね
:
蓮池:それにしても、サブリナの件まで明かしてしまってよかったんですか
:
桜庭:いいさ
桜庭:どちらにしろ彼らも使い捨てられる対象なんだ
:
蓮池:全く、あなたはどこまで摑んでいらっしゃるのか
蓮池:底が知れませんから僕も戦戦恐恐ですよ、いつ喰われるか分かったものじゃない
:
桜庭:人聞きの悪いことを言ってくれるなよ
桜庭:鬼じゃないんだよ?
:
蓮池:鬣犬(ハイエナ)は時として、獅子をも狩る生き物ですよ
:
桜庭:何だい、聞いているとはやるじゃないか
:
蓮池:師匠がよくやる手口でしたからね
:
桜庭:(笑う)
桜庭:隅に置けないね
:
蓮池:では、もう一つの懸案(けんあん)ですが
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桜庭:ん、天啓(てんけい)はまだなのかい
:
蓮池:ええ、しばらくはこちらの動きへの対応で必死らしく
蓮池:目立った組織側からの指示は降りてきてませんね
:
桜庭:そうか、ますます面白い
桜庭:それなりにかき乱すことができているようでしたり顔が止まらないよ
:
蓮池:これが蓼原さんならすぐに気づくんでしょうか
:
桜庭:そうだね
桜庭:タデなら見破ってくるよ
:
蓮池:羨ましい、限りですよ
:
桜庭:もちろん、通信環境は個別に準備してるんだろうね
:
蓮池:はい、穴は一つに絞ってます
:
桜庭:よろしい
桜庭:鍵になるのは君だ
桜庭:くれぐれも下手を打つなよ、『フィクサー』
:
0:(続)