台本概要

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タイトル インディゴ=ノート #11
作者名 蒼山熾音  (@Shinon_Aoyama)
ジャンル その他
演者人数 5人用台本(男3、女2)
時間 40 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 【内容説明】
時は現代、少しだけ違う世界。

信託と称し、古代文明『アライア・イシェド』の末裔ラ=ヴィオラが諸手で抱えていた、20冊を超える古文書、その全てが群青に染まった預言書、神からの啓示が詰められた福音書。

インディゴ=ノート。

その裏には近代イタリアが画策した怨嗟の鎖が蠢いていた。

2編の古文書が世界をひっくり返す。
その中に、抗おうとする5人の賊がいた。

【注意事項】
アレンジ・アドリブありあり(ただし他の演者さんと連携が取れなくなるような無茶ブリは禁止)
性別変更あり(オカマちゃん可)

本編は変更しませんが、適宜説明については変更していきます。
また、キャライメージをそれぞれに書いておりますが、こちらはガン無視していただいて結構です。
と言いますのも自分がイメージ持って書きやすいように記載しているものですので、言ってしまえば作者のメモです。
したがっておひとりおひとり自己主張多めでバチバチキャラクターを作り替えていただき、ご自身の感じたイメージをぶつけていただきたいです。よろしくお願い致します。

蓼原(たではら)
34歳。無精髭標準装備のおっさん。基本気だるげ。イメージはPSYCHO-PASSの狡噛慎也やFateの衛宮切嗣、紺

蓮池(はすいけ)
24歳。好青年イケメン。デキるビジネスマン風。イメージはPSYCHO-PASSのミハイルやエヴァンゲリオンの加持、青

桐谷(きりたに)
21歳。正統派ツンデレ。シナリオによってはツンツンツンくらい。イメージはエヴァンゲリオンのアスカ、赤

柳沼(やぎぬま)
29歳。クールビューティー。大人のオンナで色気たっぷり。イメージはPSYCHO-PASSの唐之森やSAOの(冷静な時の)シノン、紫

桜庭(さくらば)
33歳。闇深い狼。でも悪ではなく単に闇なだけでちゃんといい人。イメージはエヴァンゲリオンのカヲルや(セリフ回しだけは)呪術廻戦の五条悟、モノ

樺倉(かばくら)
(回想登場キャラクター)3年前に20歳。陰キャ、非モテだけど顔は悪くないし数学が得意でパソコンをゼロから作れる。イメージはカノ借りの木ノ下和也、緑

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
蓼原 42 34歳。無精髭標準装備のおっさん。基本気だるげ。イメージはPSYCHO-PASSの狡噛慎也やFateの衛宮切嗣、紺
樺倉 49 (回想登場キャラクター)3年前に20歳。陰キャ、非モテだけど顔は悪くないし数学が得意でパソコンをゼロから作れる。イメージはカノ借りの木ノ下和也、緑
桐谷 11 21歳。正統派ツンデレ。シナリオによってはツンツンツンくらい。イメージはエヴァンゲリオンのアスカ、赤
柳沼 53 29歳。クールビューティー。大人のオンナで色気たっぷり。イメージはPSYCHO-PASSの唐之森やSAOの(冷静な時の)シノン、紫
桜庭 54 33歳。闇深い狼。でも悪ではなく単に闇なだけでちゃんといい人。イメージはエヴァンゲリオンのカヲルや(セリフ回しだけは)呪術廻戦の五条悟、モノ
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
  : 演者さんへ。:今回は柳沼のモノローグが話を展開させる狂言回しを担います。 演者さんへ。:桐谷もモノローグが主体になります。 演者さんへ。:また、女性陣2名は途中幾度か本編での役同士の会話にも参加するのでご注意願います。  : 0:(10話直後) 0:(柳沼の胸中)  : 柳沼:(モノローグ) 柳沼:((ため息)) 柳沼:(よかったのかしらね、これで) 柳沼: 柳沼:(と、言ってももう取り返しがつくような) 柳沼:(タイミングは通り越してるわけで) 柳沼: 柳沼:(みんな、うまくやってくれるかしら) 柳沼:(どうにも心配よね、やっぱり) 柳沼:(タデちゃんは姫のことやっぱり子供扱いだし) 柳沼:(姫も銃握ってないと落ち着かないし) 柳沼:(サクも、あの頃から変われてなくて、) 柳沼:(口をつぐむ) 柳沼: 柳沼:(冷たいなぁ、体) 柳沼:(暖めて、ほしいなぁ)  : 0:(回想に入る)  :  :*  : 0:(6年前、池袋) 0:(閉店したクラブの跡地に作られたゲリラ集団のアジト) 0:(十数台のパソコン用ディスプレイが所狭しと並べられている) 0:(樺倉、十台弱のディスプレイを一度に操作し、監視映像や襲撃先資料を見比べている) 0:(桜庭、隅に置いてあるビリヤード台で遊びながら暇を持て余している)  : 演者さんへ。:これから、柳沼のモノローグにより話が展開していきます。  : 桜庭:(ブレイクショットを打つ)  : 樺倉:ちょっとサクさん?! 樺倉:集中してるんですから大きい音やめてくださいよ! 樺倉:さっきも言ったじゃないですかもう!  : 桜庭:え?言ってたっけ?  : 樺倉:確かに言いましたよ、全く 樺倉:僕は見た目通り結構ナーバスなので 樺倉:ちょっとでも集中乱されるとやりにくいんです  : 桜庭:はいはい、ごめんごめん 桜庭:でも、ここで「サクさん」はやめてほしいな?  : 樺倉:(気づき、バツの悪い顔をする) 樺倉:それにしても、なかなか尻尾出しませんね  : 桜庭:(話題を変えられたことに憤慨する) 桜庭:奴さん(やっこさん)たちは現場で暴れないし 桜庭:戻ってくるタイミングがまだ掴めてないからね  : 樺倉:困りましたよ、もう2日はゆっくり寝てません 樺倉:目が痛いですいい加減  : 桜庭:(笑う) 桜庭:ということはやっぱり進展なしか  : 柳沼:(モノローグ) 柳沼:(これは、私がサクに会う前の) 柳沼:(男ばかりでただただむさ苦しい話) 柳沼:(と始めたけど、正直詳しくない) 柳沼:(だってこの時、多分私回されてたし?)  : 樺倉:進展なしですね、おっしゃる通り 樺倉:今回の神託、絡みそうなのはここなんですが  : 桜庭:ああ、そうだろうね 桜庭:ありがたいお言葉が東洋、から始まったしね  : 樺倉:ですよねー、やっぱチンピラ程度じゃ 樺倉:神様の目にはなかなか留まらないんすかね  : 柳沼:(モノローグ) 柳沼:(神託、それはカトリック総本山である) 柳沼:(バチカンのサン=ピエトロ大聖堂から) 柳沼:(ローマ法王の口により数年に一度、) 柳沼:(インディゴ=ノートからの託宣が) 柳沼:(敬虔なキリスト教信徒たちへ) 柳沼:(世界に迫った危険、として告げられる) 柳沼:(言わば、ノストラダムスの大予言)  : 桜庭:まあ、全知全能って言っても 桜庭:本当に危険すぎる場合には多分教えてくれないさ  : 樺倉:ん?  : 桜庭:(キューを弄んでいる)  : 樺倉:(ため息) 樺倉:どういうことですー、それはー?  : 桜庭:この世界にはもう70億という 桜庭:途方もない数の人間が生息している 桜庭:そろそろ神様も『口減らし』を考えるだろうね  : 樺倉:やっぱり 樺倉:どうせ碌(ロク)でもないことだとは 樺倉:何となく予想できちゃってましたけど 樺倉:ここまで真正面から来られると 樺倉:睡眠不足もあってか、妙に腹立ちますね  : 桜庭:お、それは済まない  : 樺倉:にしても、僕たちは潜入が仕事ですから 樺倉:結果こんな感じで呑気なもんですけど 樺倉:蓼原さんって単独行動してて 樺倉:大丈夫なんですかね  : 桜庭:タデはいいのいいの 桜庭:君の初任務も兼ねてるからね、今回は  : 樺倉:ん? 樺倉:何かイマイチ繋がらないんすけど  : 桜庭:タデと本当の意味で合わせられるのは 桜庭:ノートの中でも僕だけだよ? 桜庭:君を連れ回してたらそれだけで生存率が下がる  : 樺倉:えっと、(かぶる/つまり?)  : 桜庭:(かぶせて)ロデオに2時間乗れない君は 桜庭:連れて行っても邪魔なだけ  : 樺倉:あ、そうですね 樺倉:つまらないことをさせてしまって、すみません  : 桜庭:まあ、後進の育成も僕らの仕事だし 桜庭:そういう点では僕の方が適任だよ  : 樺倉:そう、なんでしょうか  : 桜庭:ああ、そうだよ 桜庭:タデは一言、『見て覚えろ』だからさ?  : 樺倉:あー、それは僕じゃ無理っすね 樺倉:(笑う)  : 柳沼:(モノローグ) 柳沼:(もちろん、私たち「ノート」は) 柳沼:(キリスト教の庇護下にあるわけでも) 柳沼:(特定の国家に所属する機関でもない) 柳沼:(私たちは秘密裏に超国家的な協力のもとに) 柳沼:(世界各国から集められた『正義の執行人』) 柳沼:(あくまでも正式に国際組織としての形式を) 柳沼:(敢えて取らないようにしてあるから) 柳沼:(私たちの存在は明るみにはなっていない) 柳沼:(世界の危機を教える『インディゴ=ノート』) 柳沼:(存在が噂される『マジェンダ=ノート』) 柳沼:(その2つの文書と並び立つべく) 柳沼:(私たちは成立時期とその場所に由来し) 柳沼:(『ビリジャン=ノート』と名付けられている)  : 樺倉:あ、すみません 樺倉:そろそろ皆さん戻ってくるっぽいです  : 桜庭:え、早いね今日は  : 樺倉:そうですね  : 桜庭:またヘコヘコしなきゃならないのかぁ 桜庭:僕もう27だよ、疲れるなあもう  : 樺倉:はいはい、それでもお仕事ですから  : 桜庭:あ、新人に諭された 桜庭:これはマズイかも  : 樺倉:大丈夫です、シラフじゃ吐きませんから  : 桜庭:じゃあこれから先タデの前じゃ 桜庭:一切酒は飲んじゃダメだよ?  : 樺倉:それはまあ、そうでしょう 樺倉:一応僕は国籍変更してませんから 樺倉:適用される法律じゃあと3年は 樺倉:飲酒と喫煙はできませんからね  : 桜庭:それとは別に、今後の話 桜庭:20歳になってもお酒はダメだよ?  : 樺倉:え、それ酷いんじゃないです?  : 桜庭:上司命令だ  : 樺倉:横暴です、それに上司じゃなくて 樺倉:教育係なだけじゃないですか  : 桜庭:じゃあ教育係命令でいいよ  : 樺倉:本質変わってないから意味ないじゃないすか!  : 桜庭:ほらほら、急いだ急いだ 桜庭:僕たち本来は見張りの下っ端なんだから 桜庭:(別人への変装を既に済ませ、外に出る)  : 樺倉:え、もう済んでる 樺倉:(バタバタと変装をしながら) 樺倉:サク…タケダさんちょっと待って!!  :  :*  : 0:(回想終わり)  : 柳沼:(モノローグ) 柳沼:(ことの発端はこうだった) 柳沼:(6年前のある日、神託が発表された) 柳沼:(東洋のある国で罪もない人々が襲われる) 柳沼:(ならず者たちが無辜の(むこの)民を) 柳沼:(ひたすらに蹂躙(じゅうりん)する惨状に) 柳沼:(神は酷く心を痛めている、という内容だ) 柳沼:(もっと大袈裟な言葉で語られていた骨子を) 柳沼:(丁寧に炙り出した結果、私が囚われていた) 柳沼:(あの半グレたちにたどり着いた、という流れ) 柳沼:(この時樺倉くんとサクはその半グレ連中の) 柳沼:(アジトに潜入するため、見張り役だった) 柳沼:(男二人を保護、入れ替わったらしい) 柳沼:(まあ、サクの言い分じゃ保護、とはいえ) 柳沼:(その時の樺倉くんの顔はとてもじゃないけど) 柳沼:(そんな心温かい展開ではなかったと) 柳沼:(容易に想像がついてしまう悲惨な顔だった)  : 0:(回想に入る)  :  :*  : 0:(同じく6年前の池袋) 0:(アジトの外) 0:(樺倉、電話で話をしている) 0:(桜庭、隣で静かに聞いている) 演者さんへ。:電話の芝居なので適度に間を空けつつ進めてください。樺倉の台詞にある(・・・・・・・・・・)は電話相手の返答が入っているものと考えていただければ幸いです。  : 樺倉:ああ、わかってる 樺倉:(・・・・・・・・・・) 樺倉:大丈夫だってば 樺倉:教育係としては申し分ない方らしいし、 樺倉:(隣にいる桜庭を見る) 樺倉:ちゃんと羽伸ばせる状態になったら 樺倉:顔見せに行くからさ、ちゃんと待ってろよ 樺倉:(・・・・・・・・・・) 樺倉:当たり前だ、お前妹にも子犬扱いされてたろ 樺倉:そのくらいちゃんと覚えてるっつーの 樺倉:(・・・・・・・・・・) 樺倉:もうすぐ10年経つもんな 樺倉:こっちでも手が空いてる時に調べてるけど 樺倉:まだ確証のある情報が出回ってないみたいでさ 樺倉:(・・・・・・・・・・) 樺倉:そんなこと言ったって、国内でできることとか 樺倉:もうやり尽くしたろ、親父も助けてくれてる 樺倉:不安だろうけど、今は任せてよ 樺倉:親父もあんなナリだけど、派遣には賛成だし 樺倉:俺の派遣が異例なんだからさ 樺倉:(・・・・・・・・・・) 樺倉:ああ、ごめんな 樺倉:(ため息) 樺倉:そりゃ親父のおかげだよ、それは間違いない 樺倉:でも俺にだって目的があるんだ 樺倉:(・・・・・・・・・・) 樺倉:それは、その 樺倉:(言い淀む) 樺倉:ちゃんと達成してから話すよ 樺倉:(一瞬沈黙する) 樺倉:(・・・・・・・・・・) 樺倉:そのほうが、多分お前も嬉しいだろうしな 樺倉:(・・・・・・・・・・) 樺倉:残念、国内だけど場所は言えません 樺倉:国内じゃ犯罪者扱いだからな? 樺倉:お前については家同士で近い距離だし、 樺倉:親父がウチに関する日本の全権持ってるから 樺倉:任務中の個人的連絡も不問にしてもらってるの 樺倉:(・・・・・・・・・・) 樺倉:(大笑いする) 樺倉:そんなことになったら俺が死ぬほどしごいてやるよ 樺倉:ウチに来て1週間でホームシックにさせてやる 樺倉:(・・・・・・・・・・) 樺倉:(笑う) 樺倉:(・・・・・・・・・・) 樺倉:ああ、またな 樺倉:(電話を切る)  : 桜庭:友達っていいねえ  : 樺倉:その顔、決して羨んでないでしょう  : 桜庭:あ、バレた?  : 樺倉:ええ、すぐわかります  : 桜庭:で、任務中にどうして個人連絡を?  : 樺倉:それについてはすみません 樺倉:でも、こいつはちょっと別件で 樺倉:(少し黙る)  : 桜庭:ああ、2日目にやってたやつか  : 樺倉:はい、僕もよく覚えてないんですけどね 樺倉:まだ小学生でしたからけっこうあやふやで  : 桜庭:それにしても、誘拐ねえ 桜庭:現代日本で未解決の誘拐事件があったとは  : 樺倉:お二人が日本を離れてすぐみたいですね 樺倉:時系列的には数ヶ月後、ってところです  : 桜庭:そうそう、君のお父上に強引にね 桜庭:そうじゃなければ今頃は迷彩着てたのに  : 樺倉:お父上なんて気色悪い言い方しないでくださいよ 樺倉:(息をつく) 樺倉:まあ、親父のその采配だけは心底ほっとしますが  : 桜庭:おいおい  : 樺倉:こんな人に国防任せてたら守るべき国が滅びます  : 桜庭:酷いなぁ  : 0:(樺倉、桜庭、背を向けていた壁を背後から強く叩かれ驚く)  : 樺倉:うわっ!!  : 桜庭:っと、急だね  : 0:(音は止まず、一定間隔に続いている)  : 桜庭:これ、人間だね多分 桜庭:ここ、何の部屋?  : 樺倉:そうですね、ちょっと待ってください 樺倉:(スマートフォンで写真に撮った地図を見る) 樺倉:ん、んん…  : 桜庭:どうした?  : 樺倉:いや、大丈夫なんすけど  : 桜庭:それにしては悩むじゃないか  : 樺倉:んー、いや  : 桜庭:まあ言ってみなよ  : 樺倉:あー、んーとですね 樺倉:バカにしないでくださいよ?  : 桜庭:ん?ああ  : 樺倉:その、それらしい部屋がないんですよ  : 桜庭:え?  : 樺倉:はい、僕らが今いる入り口、それです 樺倉:その入り口がここなんすけど  : 桜庭:(地図をじっと見つめる) 桜庭:ん、確かに部屋がないね  : 樺倉:はい、というかめっちゃ広いんですよ 樺倉:僕たち組織の動きばっか見すぎて 樺倉:アジトの調査してなかったから 樺倉:これまで気づかなかったんすかね  : 桜庭:そうかもね 桜庭:まあ、ともかく慎重に行動しよう 桜庭:こういう場合、罠も考えられるし  : 柳沼:(モノローグ) 柳沼:(「罠じゃない!!」) 柳沼:(そう思い切り叫んだことを覚えている) 柳沼:(聴こえていたのか、それは知らない) 柳沼:(ふと、犯され続けて死んだように落ちた) 柳沼:(浅すぎる眠りから覚めた時だった) 柳沼:(壁に張られたコンクリートの隙間から) 柳沼:(明らかにこれまで私を慰み者にしてきた) 柳沼:(有象無象の男たちとは違う雰囲気を持つ) 柳沼:(透き通った声が聴こえてきた) 柳沼:(話している内容は細切れにしか聴こえず) 柳沼:(彼らが本当の意味で私を救ってくれる) 柳沼:(ヒーローである確証なんてなかったけど) 柳沼:(少なくとも、この檻を抜け出すチャンスだ) 柳沼:(そう思ったら、思わず壁を叩いていた) 柳沼:(手が痛い、膝が震える、肺が苦しい) 柳沼:(助けてもらって気づいたけど、あの時は) 柳沼:(無我夢中に壁を叩いてたせいで) 柳沼:(両手がかなり血まみれになってた) 柳沼:(久しぶりに浴びた太陽の光に赤く映る) 柳沼:(自分の両手を見て、すごくすんなりと) 柳沼:(私って生きてたんだ、って腑に落ちた) 柳沼:(そこから先は、多分気を失ったんでしょう) 柳沼:(覚えていないのか、忘れたのか) 柳沼:(何も記憶がなくて、気づいたらベッドにいた)  : 桜庭:気がついたようでよかったよ  : 柳沼:(声にならない掠れた声をあげる)  : 桜庭:状況を整理しよう 桜庭:おーい、新人ー  : 樺倉:はいー 樺倉:(駆け寄ってくる)  : 桜庭:こちら、新人くん  : 樺倉:名前でお願いできますか、紹介なら  : 桜庭:え、ごめん聞いてない  : 樺倉:(冷めた目をする) 樺倉:親父のこと覚えてるのにそりゃないっすよ  : 桜庭:(笑う) 桜庭:ごめんごめん 桜庭:僕は桜庭、彼は樺倉だ 桜庭:以降、しばらくは僕らと行動してもらう  : 樺倉:ちょっとサクさん、怖がらせたいんですか? 樺倉:それだと絶対女の子怯えちゃいますって  : 桜庭:でも事実だ、仕方ない 桜庭:幸い意識も戻ったし身分証も見つけられた 桜庭:そう長くは連れ回さないで済みそうだ  : 樺倉:もう、一般人を厄介者みたいに  : 桜庭:そりゃ厄介に決まってるだろう 桜庭:戦えない荷物は持ちたくない  : 樺倉:ああもう、ちょっと代わってください! 樺倉:(桜庭を押しのける) 樺倉:えと、その、か、樺倉です、よろしく  : 柳沼:(以下、掠れた声で) 柳沼:ねえ 柳沼:何者か知らないけど 柳沼:私、生きてる?  : 樺倉:は、はい 樺倉:ちゃ、ちゃんと、いいいい生きてます  : 柳沼:じゃあ、ごめん 柳沼:自由になるには 柳沼:どう、すべきなの?  : 樺倉:えっと、その、ぼ、僕、その  : 桜庭:そのフラフラの体で僕らから逃げなきゃだね  : 柳沼:そう 柳沼:(立ち上がろうとする)  : 桜庭:へえ、無茶をするね  : 柳沼:出られれば 柳沼:あとは何でも 柳沼:自分でやる  : 桜庭:そうか、でもそうもいかない 桜庭:僕らがなぜ君を連れ出したか 桜庭:それは(かぶる/君があの部屋で)  : 柳沼:(かぶせて)10日(とおか)、 柳沼:雑司ヶ谷の教会に 柳沼:行くんだって  : 桜庭:(眉を動かす) 桜庭:そうか、案外簡単だね  : 柳沼:もう、 柳沼:自由でしょ  : 桜庭:いいだろう、ただし今じゃない 桜庭:安全が確保できてから、自宅まで送ろう  : 柳沼:要らない  : 桜庭:それだけじゃない 桜庭:(柳沼を睨みつける) 桜庭:そんな邪魔臭いこと、してられないから 桜庭:大人しくしててくれないかな  : 樺倉:ちょっとサクさん、一般人ですよ  : 桜庭:だからだよ、邪魔になるから教えてるんだ 桜庭:君は邪魔なんだから何もしないでって 桜庭:その代わり後から身の安全は保障するんだ 桜庭:何の問題もないだろう、違うかな新人  : 柳沼:(モノローグ)(声も戻してください) 柳沼:(射殺された(いころされた)気がした) 柳沼:(本当なら、あんなこと言われたとして) 柳沼:(怯えたり、怖がったりするのが) 柳沼:(多分普通なんだと思うけど、私は) 柳沼: 柳沼:(私は何故だか、興味を惹かれたのだった) 柳沼:(あの檻の中では死にたくない、そうして) 柳沼:(必死に助けを求めて彼に出会った) 柳沼:(そんな彼を一目見て、ふと感じた違和感) 柳沼:(『寂しそう』、そう見えたのだった) 柳沼: 柳沼:(後から聞いた話によれば、だけど) 柳沼:(私を救い出すときにサクが大暴れして) 柳沼:(潜入の継続が難しくなったらしい) 柳沼:(そのため急遽とはいえ組織を壊滅させて) 柳沼:(ターゲットになっていたオフィスにも) 柳沼:(タデちゃんが応援に行ったんだそう) 柳沼:(私がもたらした襲撃の情報をもとに) 柳沼:(探し当てた教会近くのオフィスビルで) 柳沼:(大規模な戦闘になったと説明された) 柳沼:(ただ、今となっては不可解に感じる) 柳沼: 柳沼:(この半グレたちを率いていたリーダーが) 柳沼:(サクに捕まった時に口にした動機は) 柳沼:(「この国を日本人に取り戻すため」) 柳沼:(あまりにもかけ離れている、そう思った) 柳沼:(壮大な目的と裏腹に、やってることが小さい) 柳沼:(この違和感は、ついに解消できないまま) 柳沼:(こんなことになっちゃったわけだけど) 柳沼:(せめて、あの時は口にすべきじゃなかったわ)  :  :*  : 0:(回想終わり)  : 演者さんへ。:ここからは時間が少し進んだ回想になります。また、柳沼も本編に参加していきます。  : 0:(回想に入る)  :  :*  : 0:(1年半前、ヘルシンキ) 0:(夜、ホテルの一室) 0:(蓼原、ハンドガンを構え扉の前に立って開け放つ体勢を取っている) 0:(桐谷、逆サイドでサブマシンガンを構えつつ蓼原の動きを待っている) 0:(柳沼、一段引いて立ち、畳んだラップトップを小脇に抱え、反対の手で小口径のハンドガンを構えている)  : 柳沼:もう、私は本来戦闘しない立場なのに!  : 蓼原:そうも言ってられん、奴から習っただろう  : 柳沼:それはそうだけど、(かぶる/実戦は)  : 桐谷:(かぶせて)ごちゃごちゃうっさいわね 桐谷:男は度胸、女も底力よ  : 蓼原:珍しくいいことを言うじゃないか  : 桐谷:いいからタデさん、どうすんのよこの包囲  : 蓼原:勝算があるとは言えないが、やるしかない 蓼原:二手に分かれよう、いいな  : 桐谷:了解  : 柳沼:私は?!どっち?!  : 桐谷:タデさん(同時に) 蓼原: 俺だな(同時に)  : 柳沼:おっけー、タデちゃんよろしくね  : 蓼原:ああ、任された  : 桐谷:じゃ、あたしは基本引き付けてれば?  : 蓼原:ああ、頼んだ 蓼原:コイツを安全なところまで送ってから戻る 蓼原:悪いがそれまで持ち堪えてくれ 蓼原:代わりにバッチリ戦果報酬は協力してやる  : 桐谷:やった!  : 柳沼:あぁー、緊張してきたわぁ…  : 桐谷:今度こそバカンスゲットしてきてよ?  : 蓼原:それはウエの匙加減だ、俺じゃ約束できんな  : 桐谷:(顔を背ける) 桐谷:じゃあ今度こそはゆっくり観光できる任務で  : 蓼原:善処しよう、なるべくな  : 0:(間)  : 蓼原:3、2、1、ゴー  : 0:(蓼原、桐谷、柳沼、一斉に飛び出す) 0:(桐谷、弾幕が張られる中応戦する)  :  :〜転換〜  : 0:(ヘルシンキ郊外の蓼原のセーフハウス) 0:(柳沼、ラップトップと備え付けのディスプレイに様々なウインドウを開き凝視している) 0:(蓼原、コーヒーを持ってくる)  : 蓼原:根を詰めるなよ  : 柳沼:ありがと  : 蓼原:(立ち去ろうとする)  : 柳沼:ねえ、タデちゃん 柳沼:ちょっと休憩がてら、付き合ってくれない? 柳沼:(受け取ったコーヒーカップを持ち上げ誘う)  : 蓼原:どうした  : 柳沼:さすがに10時間も画面見てたら 柳沼:人の顔が恋しくなるのよ  : 蓼原:何だ、いつもの与太話か  : 柳沼:まあ、そんなところね 柳沼:(息をつく) 柳沼:あのさ  : 蓼原:(続きを待っている)  : 柳沼:サクって、姫の何が嫌いなの?  : 蓼原:(黙る)  : 柳沼:あの二人、いっつもいがみ合ってるじゃない? 柳沼:そりゃ姫が毛嫌いするのは何となくわかるけど  : 蓼原:そうなのか?  : 柳沼:(絶句し、頭を抱える) 柳沼:こりゃ悲惨ね、お姉さん涙が出ちゃう  : 蓼原:おい、それはどういう意味だ  : 柳沼:タデちゃん、いや蓼原さん  : 蓼原:(気圧される) 蓼原:お、おう  : 柳沼:あなたは、0点です  : 蓼原:(驚く) 蓼原:人を突然捕まえて0点、とは 蓼原:ずいぶん失礼なもんだな、全く 蓼原:(笑う)  : 柳沼:こっちとしてはそこで笑えるのが論外よ、もう  : 蓼原:それで、奴がどうした  : 柳沼:ああ、いやね? 柳沼:サクと姫って、結構スタイル似てるじゃない?  : 蓼原:まあな 蓼原:単に戦闘センスだけならかなり近いか  : 柳沼:そうでしょ? 柳沼:しかも実際の戦闘でも、息はもちろんピッタリ 柳沼:特に連携に不備があるようにも見えないし 柳沼:仕事中にはお互いがお互いを助け合ってる  : 蓼原:まあそれも、俺らが色々してやるからこそだがな 蓼原:あの二人を放っておけばそれだけ俺らの負担も 蓼原:ねずみ算どころじゃないからな  : 柳沼:まあ考えただけでも気が滅入るから 柳沼:そこは深く掘り下げたくないんだけど  : 蓼原:で、本題としてはあのイノシシとハイエナが 蓼原:どうしていがみ合わなきゃならんのか、と  : 柳沼:ええ、仲が悪い理由が浮かばないのよ  : 蓼原:そうか 蓼原:(遠くを見つめる)  : 柳沼:なぁに、その知ったふうな目  : 蓼原:いや、そういえば話したことはなかったなと  : 柳沼:あら、答えは案外すんなりしてそうね  : 蓼原:ああそうだ、いたってシンプルだな 蓼原:(笑う)  : 柳沼:(続きを待っている)  : 蓼原:自分を重ねてるのさ、多分な  : 柳沼:サクが?  : 蓼原:ああ  : 柳沼:また、予想外ね  : 蓼原:だろうな 蓼原:奴はこれでもかと言わんばかりの 蓼原:人間嫌いだからな  : 柳沼:もうちょっと、詳しく教えてくれる?  : 蓼原:(少し考える) 蓼原:まあ、いいか  : 柳沼:(首を傾げる)  : 蓼原:いや、こっちの話だ 蓼原:(一瞬の間) 蓼原:奴と出会ったのは15年ほど前になる 蓼原:高校を出たばかりの俺と奴は、 蓼原:お互いに威嚇し合うような仲だった  : 柳沼:まあ、初対面ならあなたたちはそうでしょ  : 蓼原:何だ、驚かんのか  : 柳沼:当然でしょ? 柳沼:今でこそ丸くなったあなたたちだけど、 柳沼:元を辿ればモグラとハイエナ、 柳沼:どちらも日陰じゃ名を知らないと 柳沼:生きていけないほどのビッグネームよ? 柳沼:そんなの同士の初対面なんて 柳沼:穏やかに済むはずないじゃないの  : 蓼原:そんな劇物みたいな言い方はよせ、全く  : 柳沼:はいはい、そしてその劇物と劇物の 柳沼:化学反応はどうなったのよ  : 蓼原:(ため息) 蓼原:まあ正直にいえば、お互いが 蓼原:「コイツは危ない」と察知したそうだ  : 柳沼:そりゃあそうよね  : 蓼原:もう特に傷つきもしなくなったな  : 柳沼:ええ、当然だもの  : 蓼原:まあ、それはそれとしてだ 蓼原:組むようになって段々と癖が見えてきた 蓼原:そんな頃に奴がかなりしくじってな 蓼原:任務中に大怪我をしちまったんだ  : 柳沼:(聞いている/相槌も可)  : 蓼原:復帰も危ういかもしれないと言われてな 蓼原:奴も珍しく落ち込んでたんだが、 蓼原:そんな時にふと奴が口にしてな 蓼原:「僕って、もし戻れなかったら 蓼原:どうやって生きていけばいいのかな」ってな  : 柳沼:そう  : 蓼原:思わず面食らったよ、あの時は 蓼原:二人とも、そういう根っこの部分は同じだろ 蓼原:こういうホコリ臭い世界の生き方は知ってても 蓼原:銃を持たないで済む生き方をもう取り戻せない 蓼原:あの二人は、芯が通じてるからこそ 蓼原:お互いを認めつつ認められない、そういう 蓼原:(笑う) 蓼原:そういう不器用な奴らなんだと俺は思ってる  : 柳沼:(気を取り直す) 柳沼:何だ、結構真面目に見てるんじゃない  : 蓼原:お前こそ俺を不真面目に評価しすぎている  : 柳沼:そうね、それはごめんなさい 柳沼:併せて訂正しておくわ、さっきの点数  : 蓼原:ほう?  : 柳沼:40点、くらいはつけてあげる  : 蓼原:赤点じゃなくなっただけ、マシだと思おうか  : 柳沼:平均点は70点よ、ちなみに  : 蓼原:手厳しいもんだな、センセイ  : 柳沼:(微笑んでコーヒーを啜る)  :  :*  : 0:(回想終わり)  : 0:(10話直後) 0:(桐谷の胸中)  : 桐谷:(モノローグ) 桐谷:(少女兵) 桐谷:(耳ざわりはいいが、実態は兵士ではない) 桐谷:(いや、兵士にとどまらないと言うべきね) 桐谷:(少女兵は機械であり、道具であり、) 桐谷:(ものを言わぬ人形であった) 桐谷: 桐谷:(買われ、使われ、奪い、壊し、) 桐谷:(時に減り、いずれ増える) 桐谷:(少女兵は名を奪われ、無機質な数を得る) 桐谷:(およそヒトとは扱われず、) 桐谷:(名を忘れた骸(むくろ)は) 桐谷:(与えられた数により頸木(くびき)を背負う) 桐谷:(籠の中の小鳥として、人を喰らう獣として) 桐谷:(生への執着を贄(にえ)と捧げ) 桐谷:(儚くも美しい、あからさまな色彩で) 桐谷:(その身を焦がし散っていく) 桐谷: 桐谷:(あたしは弔い(とむらい)も仕事だった) 桐谷:(人知れず散った仲間もいた) 桐谷:(そんな中であたしは生き残った) 桐谷:(何度も何度も生き残った) 桐谷:(生き残るために磨かれてしまった神経は) 桐谷:(売られた先で嬌声と消えてすり減った) 桐谷:(とうの昔に遂げてしまった破瓜の痛みは) 桐谷:(何故か素直に思い出すのに) 桐谷:(心を引き剥がされた傷みは) 桐谷:(どうして忘れてしまったのだろう) 桐谷:(どうして、忘れてしまえたのだろう) 桐谷:(どうして、忘れて、仕舞えたのだろう) 桐谷: 桐谷:(決まっている、わかりきっている) 桐谷:(少女兵は、もはやヒトではないのだから)  :  :〜転換〜  : 0:(10話直後) 0:(小型船の船室) 0:(桐谷、蓮池に対峙している) 演者さんへ。:蓮池の台詞が設けられていますが、台詞は記入しておりません。 演者さんへ。:あくまで桐谷の一人語りで進めてほしいので、蓮池は名前だけの出演です。 演者さんへ。:桐谷役の方は、蓮池の言葉を待つような間を空けてから続けてください。  : 桐谷:御託(ごたく)はいいわ 桐谷:作戦を頂戴  : 蓮池:(・・・・・・・・・・)  : 桐谷:アンタが言ったのよ? 桐谷:あたしは少女兵、作戦が最優先 桐谷: 桐谷:『それだけよ』 桐谷:  : 0:(続)

  : 演者さんへ。:今回は柳沼のモノローグが話を展開させる狂言回しを担います。 演者さんへ。:桐谷もモノローグが主体になります。 演者さんへ。:また、女性陣2名は途中幾度か本編での役同士の会話にも参加するのでご注意願います。  : 0:(10話直後) 0:(柳沼の胸中)  : 柳沼:(モノローグ) 柳沼:((ため息)) 柳沼:(よかったのかしらね、これで) 柳沼: 柳沼:(と、言ってももう取り返しがつくような) 柳沼:(タイミングは通り越してるわけで) 柳沼: 柳沼:(みんな、うまくやってくれるかしら) 柳沼:(どうにも心配よね、やっぱり) 柳沼:(タデちゃんは姫のことやっぱり子供扱いだし) 柳沼:(姫も銃握ってないと落ち着かないし) 柳沼:(サクも、あの頃から変われてなくて、) 柳沼:(口をつぐむ) 柳沼: 柳沼:(冷たいなぁ、体) 柳沼:(暖めて、ほしいなぁ)  : 0:(回想に入る)  :  :*  : 0:(6年前、池袋) 0:(閉店したクラブの跡地に作られたゲリラ集団のアジト) 0:(十数台のパソコン用ディスプレイが所狭しと並べられている) 0:(樺倉、十台弱のディスプレイを一度に操作し、監視映像や襲撃先資料を見比べている) 0:(桜庭、隅に置いてあるビリヤード台で遊びながら暇を持て余している)  : 演者さんへ。:これから、柳沼のモノローグにより話が展開していきます。  : 桜庭:(ブレイクショットを打つ)  : 樺倉:ちょっとサクさん?! 樺倉:集中してるんですから大きい音やめてくださいよ! 樺倉:さっきも言ったじゃないですかもう!  : 桜庭:え?言ってたっけ?  : 樺倉:確かに言いましたよ、全く 樺倉:僕は見た目通り結構ナーバスなので 樺倉:ちょっとでも集中乱されるとやりにくいんです  : 桜庭:はいはい、ごめんごめん 桜庭:でも、ここで「サクさん」はやめてほしいな?  : 樺倉:(気づき、バツの悪い顔をする) 樺倉:それにしても、なかなか尻尾出しませんね  : 桜庭:(話題を変えられたことに憤慨する) 桜庭:奴さん(やっこさん)たちは現場で暴れないし 桜庭:戻ってくるタイミングがまだ掴めてないからね  : 樺倉:困りましたよ、もう2日はゆっくり寝てません 樺倉:目が痛いですいい加減  : 桜庭:(笑う) 桜庭:ということはやっぱり進展なしか  : 柳沼:(モノローグ) 柳沼:(これは、私がサクに会う前の) 柳沼:(男ばかりでただただむさ苦しい話) 柳沼:(と始めたけど、正直詳しくない) 柳沼:(だってこの時、多分私回されてたし?)  : 樺倉:進展なしですね、おっしゃる通り 樺倉:今回の神託、絡みそうなのはここなんですが  : 桜庭:ああ、そうだろうね 桜庭:ありがたいお言葉が東洋、から始まったしね  : 樺倉:ですよねー、やっぱチンピラ程度じゃ 樺倉:神様の目にはなかなか留まらないんすかね  : 柳沼:(モノローグ) 柳沼:(神託、それはカトリック総本山である) 柳沼:(バチカンのサン=ピエトロ大聖堂から) 柳沼:(ローマ法王の口により数年に一度、) 柳沼:(インディゴ=ノートからの託宣が) 柳沼:(敬虔なキリスト教信徒たちへ) 柳沼:(世界に迫った危険、として告げられる) 柳沼:(言わば、ノストラダムスの大予言)  : 桜庭:まあ、全知全能って言っても 桜庭:本当に危険すぎる場合には多分教えてくれないさ  : 樺倉:ん?  : 桜庭:(キューを弄んでいる)  : 樺倉:(ため息) 樺倉:どういうことですー、それはー?  : 桜庭:この世界にはもう70億という 桜庭:途方もない数の人間が生息している 桜庭:そろそろ神様も『口減らし』を考えるだろうね  : 樺倉:やっぱり 樺倉:どうせ碌(ロク)でもないことだとは 樺倉:何となく予想できちゃってましたけど 樺倉:ここまで真正面から来られると 樺倉:睡眠不足もあってか、妙に腹立ちますね  : 桜庭:お、それは済まない  : 樺倉:にしても、僕たちは潜入が仕事ですから 樺倉:結果こんな感じで呑気なもんですけど 樺倉:蓼原さんって単独行動してて 樺倉:大丈夫なんですかね  : 桜庭:タデはいいのいいの 桜庭:君の初任務も兼ねてるからね、今回は  : 樺倉:ん? 樺倉:何かイマイチ繋がらないんすけど  : 桜庭:タデと本当の意味で合わせられるのは 桜庭:ノートの中でも僕だけだよ? 桜庭:君を連れ回してたらそれだけで生存率が下がる  : 樺倉:えっと、(かぶる/つまり?)  : 桜庭:(かぶせて)ロデオに2時間乗れない君は 桜庭:連れて行っても邪魔なだけ  : 樺倉:あ、そうですね 樺倉:つまらないことをさせてしまって、すみません  : 桜庭:まあ、後進の育成も僕らの仕事だし 桜庭:そういう点では僕の方が適任だよ  : 樺倉:そう、なんでしょうか  : 桜庭:ああ、そうだよ 桜庭:タデは一言、『見て覚えろ』だからさ?  : 樺倉:あー、それは僕じゃ無理っすね 樺倉:(笑う)  : 柳沼:(モノローグ) 柳沼:(もちろん、私たち「ノート」は) 柳沼:(キリスト教の庇護下にあるわけでも) 柳沼:(特定の国家に所属する機関でもない) 柳沼:(私たちは秘密裏に超国家的な協力のもとに) 柳沼:(世界各国から集められた『正義の執行人』) 柳沼:(あくまでも正式に国際組織としての形式を) 柳沼:(敢えて取らないようにしてあるから) 柳沼:(私たちの存在は明るみにはなっていない) 柳沼:(世界の危機を教える『インディゴ=ノート』) 柳沼:(存在が噂される『マジェンダ=ノート』) 柳沼:(その2つの文書と並び立つべく) 柳沼:(私たちは成立時期とその場所に由来し) 柳沼:(『ビリジャン=ノート』と名付けられている)  : 樺倉:あ、すみません 樺倉:そろそろ皆さん戻ってくるっぽいです  : 桜庭:え、早いね今日は  : 樺倉:そうですね  : 桜庭:またヘコヘコしなきゃならないのかぁ 桜庭:僕もう27だよ、疲れるなあもう  : 樺倉:はいはい、それでもお仕事ですから  : 桜庭:あ、新人に諭された 桜庭:これはマズイかも  : 樺倉:大丈夫です、シラフじゃ吐きませんから  : 桜庭:じゃあこれから先タデの前じゃ 桜庭:一切酒は飲んじゃダメだよ?  : 樺倉:それはまあ、そうでしょう 樺倉:一応僕は国籍変更してませんから 樺倉:適用される法律じゃあと3年は 樺倉:飲酒と喫煙はできませんからね  : 桜庭:それとは別に、今後の話 桜庭:20歳になってもお酒はダメだよ?  : 樺倉:え、それ酷いんじゃないです?  : 桜庭:上司命令だ  : 樺倉:横暴です、それに上司じゃなくて 樺倉:教育係なだけじゃないですか  : 桜庭:じゃあ教育係命令でいいよ  : 樺倉:本質変わってないから意味ないじゃないすか!  : 桜庭:ほらほら、急いだ急いだ 桜庭:僕たち本来は見張りの下っ端なんだから 桜庭:(別人への変装を既に済ませ、外に出る)  : 樺倉:え、もう済んでる 樺倉:(バタバタと変装をしながら) 樺倉:サク…タケダさんちょっと待って!!  :  :*  : 0:(回想終わり)  : 柳沼:(モノローグ) 柳沼:(ことの発端はこうだった) 柳沼:(6年前のある日、神託が発表された) 柳沼:(東洋のある国で罪もない人々が襲われる) 柳沼:(ならず者たちが無辜の(むこの)民を) 柳沼:(ひたすらに蹂躙(じゅうりん)する惨状に) 柳沼:(神は酷く心を痛めている、という内容だ) 柳沼:(もっと大袈裟な言葉で語られていた骨子を) 柳沼:(丁寧に炙り出した結果、私が囚われていた) 柳沼:(あの半グレたちにたどり着いた、という流れ) 柳沼:(この時樺倉くんとサクはその半グレ連中の) 柳沼:(アジトに潜入するため、見張り役だった) 柳沼:(男二人を保護、入れ替わったらしい) 柳沼:(まあ、サクの言い分じゃ保護、とはいえ) 柳沼:(その時の樺倉くんの顔はとてもじゃないけど) 柳沼:(そんな心温かい展開ではなかったと) 柳沼:(容易に想像がついてしまう悲惨な顔だった)  : 0:(回想に入る)  :  :*  : 0:(同じく6年前の池袋) 0:(アジトの外) 0:(樺倉、電話で話をしている) 0:(桜庭、隣で静かに聞いている) 演者さんへ。:電話の芝居なので適度に間を空けつつ進めてください。樺倉の台詞にある(・・・・・・・・・・)は電話相手の返答が入っているものと考えていただければ幸いです。  : 樺倉:ああ、わかってる 樺倉:(・・・・・・・・・・) 樺倉:大丈夫だってば 樺倉:教育係としては申し分ない方らしいし、 樺倉:(隣にいる桜庭を見る) 樺倉:ちゃんと羽伸ばせる状態になったら 樺倉:顔見せに行くからさ、ちゃんと待ってろよ 樺倉:(・・・・・・・・・・) 樺倉:当たり前だ、お前妹にも子犬扱いされてたろ 樺倉:そのくらいちゃんと覚えてるっつーの 樺倉:(・・・・・・・・・・) 樺倉:もうすぐ10年経つもんな 樺倉:こっちでも手が空いてる時に調べてるけど 樺倉:まだ確証のある情報が出回ってないみたいでさ 樺倉:(・・・・・・・・・・) 樺倉:そんなこと言ったって、国内でできることとか 樺倉:もうやり尽くしたろ、親父も助けてくれてる 樺倉:不安だろうけど、今は任せてよ 樺倉:親父もあんなナリだけど、派遣には賛成だし 樺倉:俺の派遣が異例なんだからさ 樺倉:(・・・・・・・・・・) 樺倉:ああ、ごめんな 樺倉:(ため息) 樺倉:そりゃ親父のおかげだよ、それは間違いない 樺倉:でも俺にだって目的があるんだ 樺倉:(・・・・・・・・・・) 樺倉:それは、その 樺倉:(言い淀む) 樺倉:ちゃんと達成してから話すよ 樺倉:(一瞬沈黙する) 樺倉:(・・・・・・・・・・) 樺倉:そのほうが、多分お前も嬉しいだろうしな 樺倉:(・・・・・・・・・・) 樺倉:残念、国内だけど場所は言えません 樺倉:国内じゃ犯罪者扱いだからな? 樺倉:お前については家同士で近い距離だし、 樺倉:親父がウチに関する日本の全権持ってるから 樺倉:任務中の個人的連絡も不問にしてもらってるの 樺倉:(・・・・・・・・・・) 樺倉:(大笑いする) 樺倉:そんなことになったら俺が死ぬほどしごいてやるよ 樺倉:ウチに来て1週間でホームシックにさせてやる 樺倉:(・・・・・・・・・・) 樺倉:(笑う) 樺倉:(・・・・・・・・・・) 樺倉:ああ、またな 樺倉:(電話を切る)  : 桜庭:友達っていいねえ  : 樺倉:その顔、決して羨んでないでしょう  : 桜庭:あ、バレた?  : 樺倉:ええ、すぐわかります  : 桜庭:で、任務中にどうして個人連絡を?  : 樺倉:それについてはすみません 樺倉:でも、こいつはちょっと別件で 樺倉:(少し黙る)  : 桜庭:ああ、2日目にやってたやつか  : 樺倉:はい、僕もよく覚えてないんですけどね 樺倉:まだ小学生でしたからけっこうあやふやで  : 桜庭:それにしても、誘拐ねえ 桜庭:現代日本で未解決の誘拐事件があったとは  : 樺倉:お二人が日本を離れてすぐみたいですね 樺倉:時系列的には数ヶ月後、ってところです  : 桜庭:そうそう、君のお父上に強引にね 桜庭:そうじゃなければ今頃は迷彩着てたのに  : 樺倉:お父上なんて気色悪い言い方しないでくださいよ 樺倉:(息をつく) 樺倉:まあ、親父のその采配だけは心底ほっとしますが  : 桜庭:おいおい  : 樺倉:こんな人に国防任せてたら守るべき国が滅びます  : 桜庭:酷いなぁ  : 0:(樺倉、桜庭、背を向けていた壁を背後から強く叩かれ驚く)  : 樺倉:うわっ!!  : 桜庭:っと、急だね  : 0:(音は止まず、一定間隔に続いている)  : 桜庭:これ、人間だね多分 桜庭:ここ、何の部屋?  : 樺倉:そうですね、ちょっと待ってください 樺倉:(スマートフォンで写真に撮った地図を見る) 樺倉:ん、んん…  : 桜庭:どうした?  : 樺倉:いや、大丈夫なんすけど  : 桜庭:それにしては悩むじゃないか  : 樺倉:んー、いや  : 桜庭:まあ言ってみなよ  : 樺倉:あー、んーとですね 樺倉:バカにしないでくださいよ?  : 桜庭:ん?ああ  : 樺倉:その、それらしい部屋がないんですよ  : 桜庭:え?  : 樺倉:はい、僕らが今いる入り口、それです 樺倉:その入り口がここなんすけど  : 桜庭:(地図をじっと見つめる) 桜庭:ん、確かに部屋がないね  : 樺倉:はい、というかめっちゃ広いんですよ 樺倉:僕たち組織の動きばっか見すぎて 樺倉:アジトの調査してなかったから 樺倉:これまで気づかなかったんすかね  : 桜庭:そうかもね 桜庭:まあ、ともかく慎重に行動しよう 桜庭:こういう場合、罠も考えられるし  : 柳沼:(モノローグ) 柳沼:(「罠じゃない!!」) 柳沼:(そう思い切り叫んだことを覚えている) 柳沼:(聴こえていたのか、それは知らない) 柳沼:(ふと、犯され続けて死んだように落ちた) 柳沼:(浅すぎる眠りから覚めた時だった) 柳沼:(壁に張られたコンクリートの隙間から) 柳沼:(明らかにこれまで私を慰み者にしてきた) 柳沼:(有象無象の男たちとは違う雰囲気を持つ) 柳沼:(透き通った声が聴こえてきた) 柳沼:(話している内容は細切れにしか聴こえず) 柳沼:(彼らが本当の意味で私を救ってくれる) 柳沼:(ヒーローである確証なんてなかったけど) 柳沼:(少なくとも、この檻を抜け出すチャンスだ) 柳沼:(そう思ったら、思わず壁を叩いていた) 柳沼:(手が痛い、膝が震える、肺が苦しい) 柳沼:(助けてもらって気づいたけど、あの時は) 柳沼:(無我夢中に壁を叩いてたせいで) 柳沼:(両手がかなり血まみれになってた) 柳沼:(久しぶりに浴びた太陽の光に赤く映る) 柳沼:(自分の両手を見て、すごくすんなりと) 柳沼:(私って生きてたんだ、って腑に落ちた) 柳沼:(そこから先は、多分気を失ったんでしょう) 柳沼:(覚えていないのか、忘れたのか) 柳沼:(何も記憶がなくて、気づいたらベッドにいた)  : 桜庭:気がついたようでよかったよ  : 柳沼:(声にならない掠れた声をあげる)  : 桜庭:状況を整理しよう 桜庭:おーい、新人ー  : 樺倉:はいー 樺倉:(駆け寄ってくる)  : 桜庭:こちら、新人くん  : 樺倉:名前でお願いできますか、紹介なら  : 桜庭:え、ごめん聞いてない  : 樺倉:(冷めた目をする) 樺倉:親父のこと覚えてるのにそりゃないっすよ  : 桜庭:(笑う) 桜庭:ごめんごめん 桜庭:僕は桜庭、彼は樺倉だ 桜庭:以降、しばらくは僕らと行動してもらう  : 樺倉:ちょっとサクさん、怖がらせたいんですか? 樺倉:それだと絶対女の子怯えちゃいますって  : 桜庭:でも事実だ、仕方ない 桜庭:幸い意識も戻ったし身分証も見つけられた 桜庭:そう長くは連れ回さないで済みそうだ  : 樺倉:もう、一般人を厄介者みたいに  : 桜庭:そりゃ厄介に決まってるだろう 桜庭:戦えない荷物は持ちたくない  : 樺倉:ああもう、ちょっと代わってください! 樺倉:(桜庭を押しのける) 樺倉:えと、その、か、樺倉です、よろしく  : 柳沼:(以下、掠れた声で) 柳沼:ねえ 柳沼:何者か知らないけど 柳沼:私、生きてる?  : 樺倉:は、はい 樺倉:ちゃ、ちゃんと、いいいい生きてます  : 柳沼:じゃあ、ごめん 柳沼:自由になるには 柳沼:どう、すべきなの?  : 樺倉:えっと、その、ぼ、僕、その  : 桜庭:そのフラフラの体で僕らから逃げなきゃだね  : 柳沼:そう 柳沼:(立ち上がろうとする)  : 桜庭:へえ、無茶をするね  : 柳沼:出られれば 柳沼:あとは何でも 柳沼:自分でやる  : 桜庭:そうか、でもそうもいかない 桜庭:僕らがなぜ君を連れ出したか 桜庭:それは(かぶる/君があの部屋で)  : 柳沼:(かぶせて)10日(とおか)、 柳沼:雑司ヶ谷の教会に 柳沼:行くんだって  : 桜庭:(眉を動かす) 桜庭:そうか、案外簡単だね  : 柳沼:もう、 柳沼:自由でしょ  : 桜庭:いいだろう、ただし今じゃない 桜庭:安全が確保できてから、自宅まで送ろう  : 柳沼:要らない  : 桜庭:それだけじゃない 桜庭:(柳沼を睨みつける) 桜庭:そんな邪魔臭いこと、してられないから 桜庭:大人しくしててくれないかな  : 樺倉:ちょっとサクさん、一般人ですよ  : 桜庭:だからだよ、邪魔になるから教えてるんだ 桜庭:君は邪魔なんだから何もしないでって 桜庭:その代わり後から身の安全は保障するんだ 桜庭:何の問題もないだろう、違うかな新人  : 柳沼:(モノローグ)(声も戻してください) 柳沼:(射殺された(いころされた)気がした) 柳沼:(本当なら、あんなこと言われたとして) 柳沼:(怯えたり、怖がったりするのが) 柳沼:(多分普通なんだと思うけど、私は) 柳沼: 柳沼:(私は何故だか、興味を惹かれたのだった) 柳沼:(あの檻の中では死にたくない、そうして) 柳沼:(必死に助けを求めて彼に出会った) 柳沼:(そんな彼を一目見て、ふと感じた違和感) 柳沼:(『寂しそう』、そう見えたのだった) 柳沼: 柳沼:(後から聞いた話によれば、だけど) 柳沼:(私を救い出すときにサクが大暴れして) 柳沼:(潜入の継続が難しくなったらしい) 柳沼:(そのため急遽とはいえ組織を壊滅させて) 柳沼:(ターゲットになっていたオフィスにも) 柳沼:(タデちゃんが応援に行ったんだそう) 柳沼:(私がもたらした襲撃の情報をもとに) 柳沼:(探し当てた教会近くのオフィスビルで) 柳沼:(大規模な戦闘になったと説明された) 柳沼:(ただ、今となっては不可解に感じる) 柳沼: 柳沼:(この半グレたちを率いていたリーダーが) 柳沼:(サクに捕まった時に口にした動機は) 柳沼:(「この国を日本人に取り戻すため」) 柳沼:(あまりにもかけ離れている、そう思った) 柳沼:(壮大な目的と裏腹に、やってることが小さい) 柳沼:(この違和感は、ついに解消できないまま) 柳沼:(こんなことになっちゃったわけだけど) 柳沼:(せめて、あの時は口にすべきじゃなかったわ)  :  :*  : 0:(回想終わり)  : 演者さんへ。:ここからは時間が少し進んだ回想になります。また、柳沼も本編に参加していきます。  : 0:(回想に入る)  :  :*  : 0:(1年半前、ヘルシンキ) 0:(夜、ホテルの一室) 0:(蓼原、ハンドガンを構え扉の前に立って開け放つ体勢を取っている) 0:(桐谷、逆サイドでサブマシンガンを構えつつ蓼原の動きを待っている) 0:(柳沼、一段引いて立ち、畳んだラップトップを小脇に抱え、反対の手で小口径のハンドガンを構えている)  : 柳沼:もう、私は本来戦闘しない立場なのに!  : 蓼原:そうも言ってられん、奴から習っただろう  : 柳沼:それはそうだけど、(かぶる/実戦は)  : 桐谷:(かぶせて)ごちゃごちゃうっさいわね 桐谷:男は度胸、女も底力よ  : 蓼原:珍しくいいことを言うじゃないか  : 桐谷:いいからタデさん、どうすんのよこの包囲  : 蓼原:勝算があるとは言えないが、やるしかない 蓼原:二手に分かれよう、いいな  : 桐谷:了解  : 柳沼:私は?!どっち?!  : 桐谷:タデさん(同時に) 蓼原: 俺だな(同時に)  : 柳沼:おっけー、タデちゃんよろしくね  : 蓼原:ああ、任された  : 桐谷:じゃ、あたしは基本引き付けてれば?  : 蓼原:ああ、頼んだ 蓼原:コイツを安全なところまで送ってから戻る 蓼原:悪いがそれまで持ち堪えてくれ 蓼原:代わりにバッチリ戦果報酬は協力してやる  : 桐谷:やった!  : 柳沼:あぁー、緊張してきたわぁ…  : 桐谷:今度こそバカンスゲットしてきてよ?  : 蓼原:それはウエの匙加減だ、俺じゃ約束できんな  : 桐谷:(顔を背ける) 桐谷:じゃあ今度こそはゆっくり観光できる任務で  : 蓼原:善処しよう、なるべくな  : 0:(間)  : 蓼原:3、2、1、ゴー  : 0:(蓼原、桐谷、柳沼、一斉に飛び出す) 0:(桐谷、弾幕が張られる中応戦する)  :  :〜転換〜  : 0:(ヘルシンキ郊外の蓼原のセーフハウス) 0:(柳沼、ラップトップと備え付けのディスプレイに様々なウインドウを開き凝視している) 0:(蓼原、コーヒーを持ってくる)  : 蓼原:根を詰めるなよ  : 柳沼:ありがと  : 蓼原:(立ち去ろうとする)  : 柳沼:ねえ、タデちゃん 柳沼:ちょっと休憩がてら、付き合ってくれない? 柳沼:(受け取ったコーヒーカップを持ち上げ誘う)  : 蓼原:どうした  : 柳沼:さすがに10時間も画面見てたら 柳沼:人の顔が恋しくなるのよ  : 蓼原:何だ、いつもの与太話か  : 柳沼:まあ、そんなところね 柳沼:(息をつく) 柳沼:あのさ  : 蓼原:(続きを待っている)  : 柳沼:サクって、姫の何が嫌いなの?  : 蓼原:(黙る)  : 柳沼:あの二人、いっつもいがみ合ってるじゃない? 柳沼:そりゃ姫が毛嫌いするのは何となくわかるけど  : 蓼原:そうなのか?  : 柳沼:(絶句し、頭を抱える) 柳沼:こりゃ悲惨ね、お姉さん涙が出ちゃう  : 蓼原:おい、それはどういう意味だ  : 柳沼:タデちゃん、いや蓼原さん  : 蓼原:(気圧される) 蓼原:お、おう  : 柳沼:あなたは、0点です  : 蓼原:(驚く) 蓼原:人を突然捕まえて0点、とは 蓼原:ずいぶん失礼なもんだな、全く 蓼原:(笑う)  : 柳沼:こっちとしてはそこで笑えるのが論外よ、もう  : 蓼原:それで、奴がどうした  : 柳沼:ああ、いやね? 柳沼:サクと姫って、結構スタイル似てるじゃない?  : 蓼原:まあな 蓼原:単に戦闘センスだけならかなり近いか  : 柳沼:そうでしょ? 柳沼:しかも実際の戦闘でも、息はもちろんピッタリ 柳沼:特に連携に不備があるようにも見えないし 柳沼:仕事中にはお互いがお互いを助け合ってる  : 蓼原:まあそれも、俺らが色々してやるからこそだがな 蓼原:あの二人を放っておけばそれだけ俺らの負担も 蓼原:ねずみ算どころじゃないからな  : 柳沼:まあ考えただけでも気が滅入るから 柳沼:そこは深く掘り下げたくないんだけど  : 蓼原:で、本題としてはあのイノシシとハイエナが 蓼原:どうしていがみ合わなきゃならんのか、と  : 柳沼:ええ、仲が悪い理由が浮かばないのよ  : 蓼原:そうか 蓼原:(遠くを見つめる)  : 柳沼:なぁに、その知ったふうな目  : 蓼原:いや、そういえば話したことはなかったなと  : 柳沼:あら、答えは案外すんなりしてそうね  : 蓼原:ああそうだ、いたってシンプルだな 蓼原:(笑う)  : 柳沼:(続きを待っている)  : 蓼原:自分を重ねてるのさ、多分な  : 柳沼:サクが?  : 蓼原:ああ  : 柳沼:また、予想外ね  : 蓼原:だろうな 蓼原:奴はこれでもかと言わんばかりの 蓼原:人間嫌いだからな  : 柳沼:もうちょっと、詳しく教えてくれる?  : 蓼原:(少し考える) 蓼原:まあ、いいか  : 柳沼:(首を傾げる)  : 蓼原:いや、こっちの話だ 蓼原:(一瞬の間) 蓼原:奴と出会ったのは15年ほど前になる 蓼原:高校を出たばかりの俺と奴は、 蓼原:お互いに威嚇し合うような仲だった  : 柳沼:まあ、初対面ならあなたたちはそうでしょ  : 蓼原:何だ、驚かんのか  : 柳沼:当然でしょ? 柳沼:今でこそ丸くなったあなたたちだけど、 柳沼:元を辿ればモグラとハイエナ、 柳沼:どちらも日陰じゃ名を知らないと 柳沼:生きていけないほどのビッグネームよ? 柳沼:そんなの同士の初対面なんて 柳沼:穏やかに済むはずないじゃないの  : 蓼原:そんな劇物みたいな言い方はよせ、全く  : 柳沼:はいはい、そしてその劇物と劇物の 柳沼:化学反応はどうなったのよ  : 蓼原:(ため息) 蓼原:まあ正直にいえば、お互いが 蓼原:「コイツは危ない」と察知したそうだ  : 柳沼:そりゃあそうよね  : 蓼原:もう特に傷つきもしなくなったな  : 柳沼:ええ、当然だもの  : 蓼原:まあ、それはそれとしてだ 蓼原:組むようになって段々と癖が見えてきた 蓼原:そんな頃に奴がかなりしくじってな 蓼原:任務中に大怪我をしちまったんだ  : 柳沼:(聞いている/相槌も可)  : 蓼原:復帰も危ういかもしれないと言われてな 蓼原:奴も珍しく落ち込んでたんだが、 蓼原:そんな時にふと奴が口にしてな 蓼原:「僕って、もし戻れなかったら 蓼原:どうやって生きていけばいいのかな」ってな  : 柳沼:そう  : 蓼原:思わず面食らったよ、あの時は 蓼原:二人とも、そういう根っこの部分は同じだろ 蓼原:こういうホコリ臭い世界の生き方は知ってても 蓼原:銃を持たないで済む生き方をもう取り戻せない 蓼原:あの二人は、芯が通じてるからこそ 蓼原:お互いを認めつつ認められない、そういう 蓼原:(笑う) 蓼原:そういう不器用な奴らなんだと俺は思ってる  : 柳沼:(気を取り直す) 柳沼:何だ、結構真面目に見てるんじゃない  : 蓼原:お前こそ俺を不真面目に評価しすぎている  : 柳沼:そうね、それはごめんなさい 柳沼:併せて訂正しておくわ、さっきの点数  : 蓼原:ほう?  : 柳沼:40点、くらいはつけてあげる  : 蓼原:赤点じゃなくなっただけ、マシだと思おうか  : 柳沼:平均点は70点よ、ちなみに  : 蓼原:手厳しいもんだな、センセイ  : 柳沼:(微笑んでコーヒーを啜る)  :  :*  : 0:(回想終わり)  : 0:(10話直後) 0:(桐谷の胸中)  : 桐谷:(モノローグ) 桐谷:(少女兵) 桐谷:(耳ざわりはいいが、実態は兵士ではない) 桐谷:(いや、兵士にとどまらないと言うべきね) 桐谷:(少女兵は機械であり、道具であり、) 桐谷:(ものを言わぬ人形であった) 桐谷: 桐谷:(買われ、使われ、奪い、壊し、) 桐谷:(時に減り、いずれ増える) 桐谷:(少女兵は名を奪われ、無機質な数を得る) 桐谷:(およそヒトとは扱われず、) 桐谷:(名を忘れた骸(むくろ)は) 桐谷:(与えられた数により頸木(くびき)を背負う) 桐谷:(籠の中の小鳥として、人を喰らう獣として) 桐谷:(生への執着を贄(にえ)と捧げ) 桐谷:(儚くも美しい、あからさまな色彩で) 桐谷:(その身を焦がし散っていく) 桐谷: 桐谷:(あたしは弔い(とむらい)も仕事だった) 桐谷:(人知れず散った仲間もいた) 桐谷:(そんな中であたしは生き残った) 桐谷:(何度も何度も生き残った) 桐谷:(生き残るために磨かれてしまった神経は) 桐谷:(売られた先で嬌声と消えてすり減った) 桐谷:(とうの昔に遂げてしまった破瓜の痛みは) 桐谷:(何故か素直に思い出すのに) 桐谷:(心を引き剥がされた傷みは) 桐谷:(どうして忘れてしまったのだろう) 桐谷:(どうして、忘れてしまえたのだろう) 桐谷:(どうして、忘れて、仕舞えたのだろう) 桐谷: 桐谷:(決まっている、わかりきっている) 桐谷:(少女兵は、もはやヒトではないのだから)  :  :〜転換〜  : 0:(10話直後) 0:(小型船の船室) 0:(桐谷、蓮池に対峙している) 演者さんへ。:蓮池の台詞が設けられていますが、台詞は記入しておりません。 演者さんへ。:あくまで桐谷の一人語りで進めてほしいので、蓮池は名前だけの出演です。 演者さんへ。:桐谷役の方は、蓮池の言葉を待つような間を空けてから続けてください。  : 桐谷:御託(ごたく)はいいわ 桐谷:作戦を頂戴  : 蓮池:(・・・・・・・・・・)  : 桐谷:アンタが言ったのよ? 桐谷:あたしは少女兵、作戦が最優先 桐谷: 桐谷:『それだけよ』 桐谷:  : 0:(続)