台本概要
387 views
タイトル | 談笑怪談 |
---|---|
作者名 | てくす (@daihooon) |
ジャンル | ホラー |
演者人数 | 3人用台本(男1、女1、不問1) |
時間 | 20 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
今日は何やら3人で談笑しているようですが……。
387 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
尾先 | 男 | 44 | おさき じんこ。憑物筋の家系で狐を使役する。 |
茜 | 女 | 53 | やまもと あかね。ひょんなことから怪異に関わるようになる。 |
骸 | 不問 | 49 | むくろ。性別、年齢など情報が全く分からない白髪の人。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
0:ある日の事
0:オサキの元に電話があった。
尾先:あぁ、そうなったか
尾先:じゃあ、安静にしておけ
尾先:もう大丈夫だろう
尾先:……そうだな、その件に関しては
茜:あの電話って、もしかして
骸:どうやら回復したようだね
骸:……取られた髪を戻しただけなのにって顔だね
茜:女は髪が命って言葉の通りなんですよね?
骸:性別に関係なく、命の代わりなのは間違いないね
骸:髪はよく、そういう風に扱われる
骸:よくある怪談話に髪を使うのもそのせいかな
骸:儀式や封印にも使われたりするし
骸:血や爪、指や排泄物と違って
骸:髪だけは命の割合が多い
茜:排泄物って…えっ?
骸:穢れという言葉があるように
骸:汚いものにも相応の力があるよ
骸:この業界であれば、使う人も少なくないかな
骸:例えば、清酒を円を描くように自分の周りに撒く
骸:その後に、自分の尿で手を濡らす
茜:なんでそんな事…
骸:酒は、妖怪たちが好んでることもある
骸:近寄って来た妖怪の気をそらせる
骸:逆に手は穢された呪いのようなもので
骸:自分を清酒に寄って来た妖怪と誤認させる
骸:この二つの役割により怪異から身を隠せる
骸:一種の結界だよ
骸:と、これは真似しても出来ないけどね
尾先:それなりに知識と手順があるからな
尾先:お前がこの通り真似しても気づかれる
尾先:……まぁ、やろうとは思わないだろうが
茜:絶対にやらないです!
尾先:そこまで否定するな
尾先:これも手段なんだよ
骸:フフ、この手の儀式や結界
骸:封印とかそういうことを知りたいなら
骸:知り合いの鳳(おおとり)って人を紹介するよ
骸:色んなものを知ってるからね
茜:遠慮します……
尾先:最近、色々忙しかったから
尾先:久しぶりの談笑だな
尾先:骸も最近よく居座るな
骸:あぁ、此処は今、僕にとっては
骸:パワースポットみたいなものだからね
茜:どこがパワースポットなんですか!?
茜:心霊スポットですよ!
骸:言い得て妙だね
尾先:俺の家なんだが?
尾先:まぁいい、お前ら暇か?
骸:予定はないけど
茜:私も別に予定はないですけど
尾先:それじゃあ、暇つぶしだ
尾先:茜、話題あるか?
茜:そんな急に言われても……
茜:あ!そういえば骸さん
茜:骸さんが色々教えてくれたり
茜:説明したりするとき、アニメとか引き合いに出しますけど
茜:もしかして、骸さんってそういうの見るんですか?
尾先:なんだその話題は……
尾先:いや、確かに気にはなるが
骸:意外かい?
尾先:見てるのか?
骸:うーん、その役割としては見てないけど
骸:僕にとっては資料だからさ
茜:資料、ですか?
骸:都市伝説の怪異とかって
骸:自然発生と違って人が想像して生み出すモノだから
骸:アニメも漫画も、小説も映画も全部見るよ
骸:ジャンルは偏ってるけどね
茜:ホラーとかミステリーものだけってことですか?
骸:あとは恋愛もね
骸:人の気持ちを知るのも必要だから
骸:負の感情が出やすいからさ、恋愛ものって
尾先:意外だな
茜:骸さんが恋愛もの……
骸:恋愛ってハッキリしてるでしょ?
骸:誰かが結ばれれば、誰かは結ばれない
骸:恋人が死ぬ展開もあるね
骸:意外と負の感情が転がってる
骸:そういうのを鵜呑みにした人は
骸:また怪異を生みやすいからさ
茜:怪異を生みやすい?
茜:恋愛映画で、ですか?
骸:恋愛映画だけじゃなくて
骸:茜ちゃんも最初は恋愛のことだったでしょ?
茜:……そういえば…
骸:良くも悪くも人の感情が動きやすいから
骸:どの瞬間に人は感情が動くのか
骸:そういった機微を見つける為、だね
茜:なんでそこまでするんですか?
尾先:怪異は人の範疇を超えるからな
尾先:骸ほど全てを網羅しようとは思わないが
尾先:やってることは正しいだろうな
骸:あとは怪異ってそんなに頻繁に現れないでしょ?
骸:暇な時間もあるってことだよ
骸:けど、オサキが言ってるように人の範疇を超える
骸:どれだけ考えても、その上をいく
骸:だとしても、材料は多い方がいい
尾先:知識として利用できるものは利用する
尾先:俺が色々調べろとお前に言うのもそれだな
茜:確かに、知っていれば対処もできますね
茜:けど、ネットで調べられるものは
茜:そんなに期待もできないんですよね?
尾先:だとしても、それも知識だ
尾先:そこから一歩踏み出して
尾先:書いてあったことがAだとすれば
尾先:自分でBやCのシナリオを用意する
尾先:そこまでやれて、初めて俺の助手だな
茜:……精進します
骸:今僕たちが話していることも忘れないでね
骸:いつか、役に立つかもしれない
骸:さて、じゃあ次は僕の番
尾先:いいネタでもあるのか?
骸:茜ちゃんが空間系の怪異に強いことが解ったことだし
骸:そっちの話をしようかな
茜:禁足地とかですか?
骸:今回は禁足地じゃなくて
骸:異世界について
骸:っていうのはどうかな?
0:
尾先:異世界か
尾先:タイムリーではあるな
茜:そっち系も見るんですか?骸さん
骸:あはは、確かに流行ってはいるね
骸:けど僕の話はファンタジーじゃないよ
骸:怪異の異世界だ
尾先:禁足地、そして境界を越えただろ?
尾先:言うなれば、アレも異世界だ
茜:そうなんですか?
尾先:空間が歪んだような感覚があったんだろ?
尾先:あれが異世界への入り口だと思えば解りやすい
茜:異世界というか、別の空間に行ったような……
茜:あ、それが異世界ですね!
骸:そう、本当に違う世界に行くわけじゃなくて
骸:別の時間軸、空間…あとは怪異が作った結界だったり
骸:一応、今いる場所と別の場所に行くことを異世界としてる
骸:昔、流行ったものがあってね
尾先:聞いたことあるんじゃないか?
尾先:異世界に行く方法
茜:……そういえば
茜:昔、男の子たちが話してたような…
尾先:エレベーターだったり、呪文だったり
尾先:鍵となるものは色々あるが
尾先:そういう話が出回った時期がある
骸:僕が話す異世界はそれ
骸:先ずは、時間について話そう
茜:時間ですか
茜:ある時間に異世界に行ける話ですか?
骸:そういう話もあるね
骸:ただ、この異世界関係の話は共通点も多くて
骸:時間に関しては名前が付いている
骸:解るかい?
茜:名前ですか
茜:……逢魔時?
尾先:お、今日は察しがいいな
尾先:他は知ってるか?
茜:他ですか?
茜:えー…うーん…
骸:時間に名前が付いてるものは
骸:逢魔時、または黄昏時とも言う
骸:他は、丑三つ時、夕暮れ時とか
茜:あ!言われたら分かりますね!
尾先:まだまだだな
茜:今覚えたからいいんです!
茜:それで、その時間に異世界に行けるんですか?
骸:さっきも言ったけど、そういう話もある
骸:ただ、この話は違ってね
骸:異世界に迷い込んだ時、夕暮れ時が多いんだ
骸:僕たちが行った禁足地や境界を越えたのは
骸:自分から行ったし、手順を踏んだりしたことで
骸:時間に縛られたりは無かったけど
尾先:夕暮れ時が多い理由もあるらしいな
尾先:共通することは結構多いと俺も聞いたことがある
尾先:あとは、人が消えるとかな
茜:人が消える?
尾先:境界には色々な鍵があるのは話したな?
尾先:同じように電車を例に出すか
尾先:異世界に行く鍵が駅だとする
尾先:いつもと変わらず駅に行き、ふと携帯に目を落とす
尾先:次に顔を上げた時、そこは異世界だった
茜:なんですか、それ
茜:そういうことがあるんですか?
骸:これも一種の神隠しだけど
骸:駅という鍵、世界から一度目を離すのも鍵かもね
茜:世界から目を離す…って
茜:携帯を見たその一瞬?
茜:その一瞬で移動した‥?
尾先:結局、人は目で見たもので認識する
尾先:景色から目を離した時に移動する
尾先:その時、別の知らない場所に移動していたり
尾先:さっきまで人が居たのに誰一人いなくなることもある
茜:それが人が消える話ってことですか
茜:急に人が居なくなったら焦りますね
骸:この手の話はこういう共通点が多いんだ
骸:だから、知っていれば移動したと解りやすいね
骸:と、これが異世界の話
茜:昔だったら信じられませんけど
茜:今は信じられるからなぁ…
茜:気をつけます
骸:茜ちゃんの場合、空間の歪みが見えてたから
骸:それが先に見えるかもね
骸:何もないのに空間が歪んでいたら注意した方がいい
茜:わ、わかりました…
尾先:じゃあ、次は俺の番か
骸:へぇ、オサキは何を話すのかな?
茜:尾先さん、すぐに追々って言うから
茜:何か一つ教えてくださいよ
尾先:……あー、そうだな
骸:ハハ、逃げてたツケが回って来たかな?
尾先:追々って俺が言ってるのは
尾先:その内、嫌でも知ることになる可能性が高いからだ
尾先:別に逃げてるわけじゃない
尾先:骸もいることだからな
尾先:少し、都市伝説の話でもするか
骸:都市伝説?僕が知らない話かな?
尾先:あぁ、多分な
尾先:知らないでも考察して解るかもしれんが
骸:それでも情報としてはありがたいね
茜:そんな都市伝説を知っているんですか?
尾先:骸は動画配信サイトは見てるのか?
骸:見てるよ
骸:茜ちゃんの質問と被るけど
骸:最近はそこでしか配信されないものもあったり
骸:素人が動画投稿してたりするからね
骸:心霊系の配信者もたまに
茜:聞けば聞くほど意外というか…
茜:推しとかいます?
骸:流石にそこまでじゃないよ
骸:そうだね、あえて言えば
骸:僕の推しはオサキかな?
尾先:冗談でもやめてくれ
骸:都市伝説を語る人は多いけど
骸:僕の知らないものを語る人は少ないかな
骸:考察がたまに核心に近い人もいるから
骸:そういう面で見ると面白いんだけどね
茜:あくまで情報収集ってことですね
茜:けど、やっぱりそんな骸さんを想像できない!
尾先:じゃあ、知ってるかもしれないな
尾先:動画を撮影中に取り憑かれて
尾先:消えた配信者の話だ
茜:えっ、そんなのあるんですか?
尾先:登録者が少なくて、そんなに話題になってない
尾先:壮大なドッキリとも言われているがな
尾先:まぁ、動画を見たんだがアタリだ
骸:ひとりかくれんぼ、かな?
尾先:いや、降霊術系じゃない
骸:その手の動画は、僕でも見つけられそうだけど
骸:ふぅん、知らないかも
茜:骸さんのその言い方って
茜:何個かそういう動画があるってことですか?
骸:まぁ、霊が映ったり、心霊写真系の動画で
骸:本物はあることにはあるよ
骸:オサキの話を遮って悪いけど
骸:一つ、これも話しておこうかな
茜:何ですか?
骸:心霊写真や動画の注意点
骸:昔のモノには注意すること
茜:昔のもの?
尾先:簡単な話だな
尾先:現代の技術ではCGだったり
尾先:そう見せることができるようになった
尾先:写真も加工技術が発達した
尾先:俺たちみたいに霊感があって残穢を見れば
尾先:本物か偽物か判断はできる
茜:黒いモヤだったりですよね
茜:私も尾先さんの手伝いで見たから
茜:その時、教えてもらいましたね
尾先:あぁ、だがあの時は
尾先:心霊写真の見分け方ってだけだ
骸:つまり、昔のモノを注意するべきなのは
骸:現代の技術が介入できないって点だね
骸:昔はそんな技術が無かった分
骸:おかしな事が起こるのは
骸:本当におかしな事が起こったからなんだ
骸:だから、昔のモノは少ないんだ
骸:単に残ってないってわけじゃなくて
骸:ある方が珍しいモノだからね
茜:なるほど
茜:覚えておきます
尾先:さて、俺の話だな
尾先:まぁ、つまりは本物で
尾先:動画撮影中に取り憑かれ、消えた配信者
尾先:それが半年前の出来事で、今も見つかっていない
尾先:配信者は男二人組
尾先:俺が見た感じ霊道は無さそうだった
尾先:企画は、まぁよくある心霊映画の話をしていたな
尾先:あとは呼ばれた
茜:呼ばれた?……霊に?
尾先:あぁ
茜:その怪異って何なんですか?
骸:……うん、普通の霊だろうね
骸:悪霊が正しいかな
骸:多分、偶々呼ばれて取り憑かれた類だね
骸:怪異譚として語るほどの話ではないね
尾先:だと思うだろ?
骸:…へぇ?
茜:なんか、競ってます?二人
尾先:骸の上を取るのは難しいからな
尾先:取れる時にマウントは取るべきだな
骸:少し調子に乗りすぎじゃないかな?オサキ
茜:そ、それで!続きは!?
尾先:二人組の内、一人が呼ばれて最初に消えた
尾先:数日後に、残った一人も呼ばれたわけだが
尾先:その呼んだ相手が最初の一人だった
尾先:霊が呼んだのは確かだろうが
尾先:呼んでる相手が更新されているんだよ
茜:新しい犠牲者に成り変わってる…?
茜:それとも死んでしまった恨みとか
骸:面白い
骸:……色々考えられるけど
骸:茜ちゃんの説も十分ありそうだね
尾先:お前はどう見る?
骸:もし、怪異譚としてより強力にするなら
骸:大元がいてもいいよね?
茜:大元、ですか……
茜:あ、解りました!
茜:大元の悪霊がいて、取り憑いた人たちを使って
茜:もっと人に取り憑かせてるってことですか?
尾先:数珠繋ぎの霊体
尾先:俺もその考えだ
骸:なるほど
骸:それが本当なら被害も増えそうだね
骸:大元から一体、幾つの数珠が出てることかな?
茜:大丈夫なんですか、それ
骸:この話を僕にしたということは
骸:そういうこと?オサキ
尾先:お前は俺を自分勝手に使うだろ?
尾先:偶には俺に使われろ、骸
茜:あれ?えっと…もしかして…
茜:この話って、まさか
骸:アッハハ、茜ちゃん
骸:楽しい時間の始まりだね
茜:ちょ、尾先さん!
尾先:まぁ、談笑もここまでだ
尾先:二人とも予定は無いらしいからな
茜:もしかして、最初から…
茜:凪!尾先さんが!
骸:さて、僕を使う以上
骸:楽しませてね、オサキ
尾先:あぁ、暇つぶし程度にはな
0:終
0:ある日の事
0:オサキの元に電話があった。
尾先:あぁ、そうなったか
尾先:じゃあ、安静にしておけ
尾先:もう大丈夫だろう
尾先:……そうだな、その件に関しては
茜:あの電話って、もしかして
骸:どうやら回復したようだね
骸:……取られた髪を戻しただけなのにって顔だね
茜:女は髪が命って言葉の通りなんですよね?
骸:性別に関係なく、命の代わりなのは間違いないね
骸:髪はよく、そういう風に扱われる
骸:よくある怪談話に髪を使うのもそのせいかな
骸:儀式や封印にも使われたりするし
骸:血や爪、指や排泄物と違って
骸:髪だけは命の割合が多い
茜:排泄物って…えっ?
骸:穢れという言葉があるように
骸:汚いものにも相応の力があるよ
骸:この業界であれば、使う人も少なくないかな
骸:例えば、清酒を円を描くように自分の周りに撒く
骸:その後に、自分の尿で手を濡らす
茜:なんでそんな事…
骸:酒は、妖怪たちが好んでることもある
骸:近寄って来た妖怪の気をそらせる
骸:逆に手は穢された呪いのようなもので
骸:自分を清酒に寄って来た妖怪と誤認させる
骸:この二つの役割により怪異から身を隠せる
骸:一種の結界だよ
骸:と、これは真似しても出来ないけどね
尾先:それなりに知識と手順があるからな
尾先:お前がこの通り真似しても気づかれる
尾先:……まぁ、やろうとは思わないだろうが
茜:絶対にやらないです!
尾先:そこまで否定するな
尾先:これも手段なんだよ
骸:フフ、この手の儀式や結界
骸:封印とかそういうことを知りたいなら
骸:知り合いの鳳(おおとり)って人を紹介するよ
骸:色んなものを知ってるからね
茜:遠慮します……
尾先:最近、色々忙しかったから
尾先:久しぶりの談笑だな
尾先:骸も最近よく居座るな
骸:あぁ、此処は今、僕にとっては
骸:パワースポットみたいなものだからね
茜:どこがパワースポットなんですか!?
茜:心霊スポットですよ!
骸:言い得て妙だね
尾先:俺の家なんだが?
尾先:まぁいい、お前ら暇か?
骸:予定はないけど
茜:私も別に予定はないですけど
尾先:それじゃあ、暇つぶしだ
尾先:茜、話題あるか?
茜:そんな急に言われても……
茜:あ!そういえば骸さん
茜:骸さんが色々教えてくれたり
茜:説明したりするとき、アニメとか引き合いに出しますけど
茜:もしかして、骸さんってそういうの見るんですか?
尾先:なんだその話題は……
尾先:いや、確かに気にはなるが
骸:意外かい?
尾先:見てるのか?
骸:うーん、その役割としては見てないけど
骸:僕にとっては資料だからさ
茜:資料、ですか?
骸:都市伝説の怪異とかって
骸:自然発生と違って人が想像して生み出すモノだから
骸:アニメも漫画も、小説も映画も全部見るよ
骸:ジャンルは偏ってるけどね
茜:ホラーとかミステリーものだけってことですか?
骸:あとは恋愛もね
骸:人の気持ちを知るのも必要だから
骸:負の感情が出やすいからさ、恋愛ものって
尾先:意外だな
茜:骸さんが恋愛もの……
骸:恋愛ってハッキリしてるでしょ?
骸:誰かが結ばれれば、誰かは結ばれない
骸:恋人が死ぬ展開もあるね
骸:意外と負の感情が転がってる
骸:そういうのを鵜呑みにした人は
骸:また怪異を生みやすいからさ
茜:怪異を生みやすい?
茜:恋愛映画で、ですか?
骸:恋愛映画だけじゃなくて
骸:茜ちゃんも最初は恋愛のことだったでしょ?
茜:……そういえば…
骸:良くも悪くも人の感情が動きやすいから
骸:どの瞬間に人は感情が動くのか
骸:そういった機微を見つける為、だね
茜:なんでそこまでするんですか?
尾先:怪異は人の範疇を超えるからな
尾先:骸ほど全てを網羅しようとは思わないが
尾先:やってることは正しいだろうな
骸:あとは怪異ってそんなに頻繁に現れないでしょ?
骸:暇な時間もあるってことだよ
骸:けど、オサキが言ってるように人の範疇を超える
骸:どれだけ考えても、その上をいく
骸:だとしても、材料は多い方がいい
尾先:知識として利用できるものは利用する
尾先:俺が色々調べろとお前に言うのもそれだな
茜:確かに、知っていれば対処もできますね
茜:けど、ネットで調べられるものは
茜:そんなに期待もできないんですよね?
尾先:だとしても、それも知識だ
尾先:そこから一歩踏み出して
尾先:書いてあったことがAだとすれば
尾先:自分でBやCのシナリオを用意する
尾先:そこまでやれて、初めて俺の助手だな
茜:……精進します
骸:今僕たちが話していることも忘れないでね
骸:いつか、役に立つかもしれない
骸:さて、じゃあ次は僕の番
尾先:いいネタでもあるのか?
骸:茜ちゃんが空間系の怪異に強いことが解ったことだし
骸:そっちの話をしようかな
茜:禁足地とかですか?
骸:今回は禁足地じゃなくて
骸:異世界について
骸:っていうのはどうかな?
0:
尾先:異世界か
尾先:タイムリーではあるな
茜:そっち系も見るんですか?骸さん
骸:あはは、確かに流行ってはいるね
骸:けど僕の話はファンタジーじゃないよ
骸:怪異の異世界だ
尾先:禁足地、そして境界を越えただろ?
尾先:言うなれば、アレも異世界だ
茜:そうなんですか?
尾先:空間が歪んだような感覚があったんだろ?
尾先:あれが異世界への入り口だと思えば解りやすい
茜:異世界というか、別の空間に行ったような……
茜:あ、それが異世界ですね!
骸:そう、本当に違う世界に行くわけじゃなくて
骸:別の時間軸、空間…あとは怪異が作った結界だったり
骸:一応、今いる場所と別の場所に行くことを異世界としてる
骸:昔、流行ったものがあってね
尾先:聞いたことあるんじゃないか?
尾先:異世界に行く方法
茜:……そういえば
茜:昔、男の子たちが話してたような…
尾先:エレベーターだったり、呪文だったり
尾先:鍵となるものは色々あるが
尾先:そういう話が出回った時期がある
骸:僕が話す異世界はそれ
骸:先ずは、時間について話そう
茜:時間ですか
茜:ある時間に異世界に行ける話ですか?
骸:そういう話もあるね
骸:ただ、この異世界関係の話は共通点も多くて
骸:時間に関しては名前が付いている
骸:解るかい?
茜:名前ですか
茜:……逢魔時?
尾先:お、今日は察しがいいな
尾先:他は知ってるか?
茜:他ですか?
茜:えー…うーん…
骸:時間に名前が付いてるものは
骸:逢魔時、または黄昏時とも言う
骸:他は、丑三つ時、夕暮れ時とか
茜:あ!言われたら分かりますね!
尾先:まだまだだな
茜:今覚えたからいいんです!
茜:それで、その時間に異世界に行けるんですか?
骸:さっきも言ったけど、そういう話もある
骸:ただ、この話は違ってね
骸:異世界に迷い込んだ時、夕暮れ時が多いんだ
骸:僕たちが行った禁足地や境界を越えたのは
骸:自分から行ったし、手順を踏んだりしたことで
骸:時間に縛られたりは無かったけど
尾先:夕暮れ時が多い理由もあるらしいな
尾先:共通することは結構多いと俺も聞いたことがある
尾先:あとは、人が消えるとかな
茜:人が消える?
尾先:境界には色々な鍵があるのは話したな?
尾先:同じように電車を例に出すか
尾先:異世界に行く鍵が駅だとする
尾先:いつもと変わらず駅に行き、ふと携帯に目を落とす
尾先:次に顔を上げた時、そこは異世界だった
茜:なんですか、それ
茜:そういうことがあるんですか?
骸:これも一種の神隠しだけど
骸:駅という鍵、世界から一度目を離すのも鍵かもね
茜:世界から目を離す…って
茜:携帯を見たその一瞬?
茜:その一瞬で移動した‥?
尾先:結局、人は目で見たもので認識する
尾先:景色から目を離した時に移動する
尾先:その時、別の知らない場所に移動していたり
尾先:さっきまで人が居たのに誰一人いなくなることもある
茜:それが人が消える話ってことですか
茜:急に人が居なくなったら焦りますね
骸:この手の話はこういう共通点が多いんだ
骸:だから、知っていれば移動したと解りやすいね
骸:と、これが異世界の話
茜:昔だったら信じられませんけど
茜:今は信じられるからなぁ…
茜:気をつけます
骸:茜ちゃんの場合、空間の歪みが見えてたから
骸:それが先に見えるかもね
骸:何もないのに空間が歪んでいたら注意した方がいい
茜:わ、わかりました…
尾先:じゃあ、次は俺の番か
骸:へぇ、オサキは何を話すのかな?
茜:尾先さん、すぐに追々って言うから
茜:何か一つ教えてくださいよ
尾先:……あー、そうだな
骸:ハハ、逃げてたツケが回って来たかな?
尾先:追々って俺が言ってるのは
尾先:その内、嫌でも知ることになる可能性が高いからだ
尾先:別に逃げてるわけじゃない
尾先:骸もいることだからな
尾先:少し、都市伝説の話でもするか
骸:都市伝説?僕が知らない話かな?
尾先:あぁ、多分な
尾先:知らないでも考察して解るかもしれんが
骸:それでも情報としてはありがたいね
茜:そんな都市伝説を知っているんですか?
尾先:骸は動画配信サイトは見てるのか?
骸:見てるよ
骸:茜ちゃんの質問と被るけど
骸:最近はそこでしか配信されないものもあったり
骸:素人が動画投稿してたりするからね
骸:心霊系の配信者もたまに
茜:聞けば聞くほど意外というか…
茜:推しとかいます?
骸:流石にそこまでじゃないよ
骸:そうだね、あえて言えば
骸:僕の推しはオサキかな?
尾先:冗談でもやめてくれ
骸:都市伝説を語る人は多いけど
骸:僕の知らないものを語る人は少ないかな
骸:考察がたまに核心に近い人もいるから
骸:そういう面で見ると面白いんだけどね
茜:あくまで情報収集ってことですね
茜:けど、やっぱりそんな骸さんを想像できない!
尾先:じゃあ、知ってるかもしれないな
尾先:動画を撮影中に取り憑かれて
尾先:消えた配信者の話だ
茜:えっ、そんなのあるんですか?
尾先:登録者が少なくて、そんなに話題になってない
尾先:壮大なドッキリとも言われているがな
尾先:まぁ、動画を見たんだがアタリだ
骸:ひとりかくれんぼ、かな?
尾先:いや、降霊術系じゃない
骸:その手の動画は、僕でも見つけられそうだけど
骸:ふぅん、知らないかも
茜:骸さんのその言い方って
茜:何個かそういう動画があるってことですか?
骸:まぁ、霊が映ったり、心霊写真系の動画で
骸:本物はあることにはあるよ
骸:オサキの話を遮って悪いけど
骸:一つ、これも話しておこうかな
茜:何ですか?
骸:心霊写真や動画の注意点
骸:昔のモノには注意すること
茜:昔のもの?
尾先:簡単な話だな
尾先:現代の技術ではCGだったり
尾先:そう見せることができるようになった
尾先:写真も加工技術が発達した
尾先:俺たちみたいに霊感があって残穢を見れば
尾先:本物か偽物か判断はできる
茜:黒いモヤだったりですよね
茜:私も尾先さんの手伝いで見たから
茜:その時、教えてもらいましたね
尾先:あぁ、だがあの時は
尾先:心霊写真の見分け方ってだけだ
骸:つまり、昔のモノを注意するべきなのは
骸:現代の技術が介入できないって点だね
骸:昔はそんな技術が無かった分
骸:おかしな事が起こるのは
骸:本当におかしな事が起こったからなんだ
骸:だから、昔のモノは少ないんだ
骸:単に残ってないってわけじゃなくて
骸:ある方が珍しいモノだからね
茜:なるほど
茜:覚えておきます
尾先:さて、俺の話だな
尾先:まぁ、つまりは本物で
尾先:動画撮影中に取り憑かれ、消えた配信者
尾先:それが半年前の出来事で、今も見つかっていない
尾先:配信者は男二人組
尾先:俺が見た感じ霊道は無さそうだった
尾先:企画は、まぁよくある心霊映画の話をしていたな
尾先:あとは呼ばれた
茜:呼ばれた?……霊に?
尾先:あぁ
茜:その怪異って何なんですか?
骸:……うん、普通の霊だろうね
骸:悪霊が正しいかな
骸:多分、偶々呼ばれて取り憑かれた類だね
骸:怪異譚として語るほどの話ではないね
尾先:だと思うだろ?
骸:…へぇ?
茜:なんか、競ってます?二人
尾先:骸の上を取るのは難しいからな
尾先:取れる時にマウントは取るべきだな
骸:少し調子に乗りすぎじゃないかな?オサキ
茜:そ、それで!続きは!?
尾先:二人組の内、一人が呼ばれて最初に消えた
尾先:数日後に、残った一人も呼ばれたわけだが
尾先:その呼んだ相手が最初の一人だった
尾先:霊が呼んだのは確かだろうが
尾先:呼んでる相手が更新されているんだよ
茜:新しい犠牲者に成り変わってる…?
茜:それとも死んでしまった恨みとか
骸:面白い
骸:……色々考えられるけど
骸:茜ちゃんの説も十分ありそうだね
尾先:お前はどう見る?
骸:もし、怪異譚としてより強力にするなら
骸:大元がいてもいいよね?
茜:大元、ですか……
茜:あ、解りました!
茜:大元の悪霊がいて、取り憑いた人たちを使って
茜:もっと人に取り憑かせてるってことですか?
尾先:数珠繋ぎの霊体
尾先:俺もその考えだ
骸:なるほど
骸:それが本当なら被害も増えそうだね
骸:大元から一体、幾つの数珠が出てることかな?
茜:大丈夫なんですか、それ
骸:この話を僕にしたということは
骸:そういうこと?オサキ
尾先:お前は俺を自分勝手に使うだろ?
尾先:偶には俺に使われろ、骸
茜:あれ?えっと…もしかして…
茜:この話って、まさか
骸:アッハハ、茜ちゃん
骸:楽しい時間の始まりだね
茜:ちょ、尾先さん!
尾先:まぁ、談笑もここまでだ
尾先:二人とも予定は無いらしいからな
茜:もしかして、最初から…
茜:凪!尾先さんが!
骸:さて、僕を使う以上
骸:楽しませてね、オサキ
尾先:あぁ、暇つぶし程度にはな
0:終