台本概要
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タイトル | インディゴ=ノート #12 |
---|---|
作者名 | 蒼山熾音 (@Shinon_Aoyama) |
ジャンル | その他 |
演者人数 | 5人用台本(男3、女2) |
時間 | 50 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
【内容説明】 時は現代、少しだけ違う世界。 信託と称し、古代文明『アライア・イシェド』の末裔ラ=ヴィオラが諸手で抱えていた、20冊を超える古文書、その全てが群青に染まった預言書、神からの啓示が詰められた福音書。 インディゴ=ノート。 その裏には近代イタリアが画策した怨嗟の鎖が蠢いていた。 2編の古文書が世界をひっくり返す。 その中に、抗おうとする5人の賊がいた。 【注意事項】 アレンジ・アドリブありあり(ただし他の演者さんと連携が取れなくなるような無茶ブリは禁止) 性別変更あり(オカマちゃん可) 本編は変更しませんが、適宜説明については変更していきます。 また、キャライメージをそれぞれに書いておりますが、こちらはガン無視していただいて結構です。 と言いますのも自分がイメージ持って書きやすいように記載しているものですので、言ってしまえば作者のメモです。 したがっておひとりおひとり自己主張多めでバチバチキャラクターを作り替えていただき、ご自身の感じたイメージをぶつけていただきたいです。よろしくお願い致します。 蓼原(たではら) 34歳。無精髭標準装備のおっさん。基本気だるげ。イメージはPSYCHO-PASSの狡噛慎也やFateの衛宮切嗣、紺 蓮池(はすいけ) 24歳。好青年イケメン。デキるビジネスマン風。イメージはPSYCHO-PASSのミハイルやエヴァンゲリオンの加持、青 桐谷(きりたに) 21歳。正統派ツンデレ。シナリオによってはツンツンツンくらい。イメージはエヴァンゲリオンのアスカ、赤 柳沼(やぎぬま) 29歳。クールビューティー。大人のオンナで色気たっぷり。イメージはPSYCHO-PASSの唐之森やSAOの(冷静な時の)シノン、紫 桜庭(さくらば) 33歳。闇深い狼。でも悪ではなく単に闇なだけでちゃんといい人。イメージはエヴァンゲリオンのカヲルや(セリフ回しだけは)呪術廻戦の五条悟、モノ 樺倉(かばくら) (回想登場キャラクター)3年前に20歳。陰キャ、非モテだけど顔は悪くないし数学が得意でパソコンをゼロから作れる。イメージはカノ借りの木ノ下和也、緑 35 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
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蓼原 | 男 | 61 | 34歳。無精髭標準装備のおっさん。基本気だるげ。イメージはPSYCHO-PASSの狡噛慎也やFateの衛宮切嗣、紺 |
樺倉 | 男 | 105 | (回想登場キャラクター)3年前に20歳。陰キャ、非モテだけど顔は悪くないし数学が得意でパソコンをゼロから作れる。イメージはカノ借りの木ノ下和也、緑 |
桐谷 | 女 | 83 | 21歳。正統派ツンデレ。シナリオによってはツンツンツンくらい。イメージはエヴァンゲリオンのアスカ、赤 |
柳沼 | 女 | 56 | 29歳。クールビューティー。大人のオンナで色気たっぷり。イメージはPSYCHO-PASSの唐之森やSAOの(冷静な時の)シノン、紫 |
桜庭 | 男 | 66 | 33歳。闇深い狼。でも悪ではなく単に闇なだけでちゃんといい人。イメージはエヴァンゲリオンのカヲルや(セリフ回しだけは)呪術廻戦の五条悟、モノ |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
:
演者さんへ。:今回は桐谷のモノローグが話を展開させます。
:
0:(11話直後)
0:(桐谷の胸中)
:
桐谷:(モノローグ)
桐谷:(あたしは、やっぱり恵まれない)
桐谷:(正直言って、不運だと思う)
桐谷:
桐谷:(いつの間にか故郷を奪われて)
桐谷:(どういうわけか戦争の道具になって)
桐谷:(鬣犬(ハイエナ)に睨まれて)
桐谷:(優男にいいように使われて)
桐谷:(ビッチにからかわれて)
桐谷:
桐谷:(土竜(もぐら)は土に潜ったままで)
桐谷:
桐谷:((ため息))
桐谷:(ホント、あたしの人生ついてなさすぎ)
桐谷:(今だって、海の上で命のやり取りだし)
桐谷:(まともに女ってものを楽しめた気が)
桐谷:(これっぽっちもしないままで、)
桐谷:(体だけがどんどん育っちゃった)
桐谷:
桐谷:(いいことなんて、何もなかった)
桐谷:(8650は、人気があった)
桐谷:(…具合が良いし、よく「啼く」から)
桐谷:
桐谷:(毎日、痛みと戦ってた)
桐谷:(そして今も、別の痛みと闘ってる)
桐谷:(物理的な痛みが精神的な痛みを呼んで)
桐谷:(毎日冷たい床の上でうずくまり、泣いて)
桐谷:(それでも命にしがみついていたあの頃)
桐谷:(救い出されてなお忘れられない)
桐谷:(卑しい(いやしい)言葉や)
桐谷:(醜い欲望を吐き出されたこの体が)
桐谷:(与えられる温もりに悲鳴を上げて)
桐谷:(自分の汚さに唇を噛んでる今)
桐谷:
桐谷:(あたしは、バラバラ)
桐谷:(顔は笑って、心は怯えて、体は叫んで)
桐谷:(それでも歩みを進めてる、止められない)
桐谷:(こんなあたしでも、分かってんのよ)
桐谷:(…もう、長く保たないってさ)
桐谷:(こんなバラバラなピノキオが、だよ?)
桐谷:(腐りかけのダッチドールが、さ)
桐谷:(いつまでももらっていいはずないじゃん)
桐谷:(…目がくらむわ、そんな優しさ)
桐谷:
桐谷:((少しの間))
桐谷:
桐谷:(そういえば、最近思い出さなかったな)
桐谷:
桐谷:(…本当なのか分からない、かすかな記憶)
桐谷:(故郷にいた気がする、「お兄ちゃん」と)
桐谷:(新しい場所でできた、「お兄ちゃん」を)
:
0:(4年前)
0:(フランス、ルーアン)
0:(ジャンヌダルク教会地下)
0:(激しい戦闘が行われている)
0:(桜庭、樺倉、駆け抜けている)
:
桜庭:8時方向から2人、3時方向にステップだ
:
樺倉:え?!
:
桜庭:今だ
:
樺倉:は、はい!!
:
桜庭:(ハンドガンで応戦する)
桜庭:うん、上手上手
:
樺倉:もう、何でこんな銃弾の雨の中を
樺倉:パソコン背負って駆けずり回る羽目に!!
:
桜庭:仕方ないさ
桜庭:外部からのアクセスが遮断されるここでは
桜庭:侵入後じゃないと施設を掌握できないだろう?
:
樺倉:そりゃ分かってるんですよ…!
樺倉:でも僕はもともとインドアのサポーターですよ?
樺倉:こんなとこ放り込まれて、無事なわけない!!
:
桜庭:安心してくれ、樺倉
桜庭:僕のメンツにかけて、君の命は保証する
:
樺倉:言い方がケガ前提のそれすぎて
樺倉:今すぐにでも引き返したいんですけど
:
桜庭:構わないよ、助けになんて行かないけど
:
樺倉:サクさん、相変わらず薄情っすね
:
桜庭:(少しの間)
桜庭:(そして笑う)
桜庭:よく知ってるだろうに、僕が人間嫌いなの
:
樺倉:ええ、池袋からずっと悩まされてます
:
桜庭:別に困らせたことはないはずだけどな
:
0:(桜庭、樺倉、通信を受ける)
:
柳沼:(通信にて)
柳沼:やっほー、サク、樺倉くん
:
樺倉:お、やっとつながりましたか
:
柳沼:(通信にて)
柳沼:うん、時間かかってごめんね
:
桜庭:その様子だと、仕入れは完璧みたいだね
:
0:(蓼原、通信に参加する)
:
蓼原:(通信にて)
蓼原:こちら蓼原、良好だ
:
樺倉:お疲れ様です蓼原さん
:
蓼原:(通信にて)
蓼原:柳沼、今回のミッションの概要をくれ
蓼原:規模、構成、練度、揃えてあるな?
:
柳沼:(通信にて)
柳沼:もちろんよ
柳沼:本来ならディスプレイ広げて
柳沼:これでもかと披露したいところなんだけど
:
樺倉:すみません、ラップトップじゃなかなか
:
柳沼:(通信にて)
柳沼:ま、気にしない気にしない
柳沼:回線開いてくれただけでも助かるわ
:
樺倉:ホント、無駄に固いんですよココ
樺倉:軍事施設も真っ青なセキュリティで
:
桜庭:こういう時、銃で解決できると
桜庭:手っ取り早くて助かるんだけど
:
柳沼:(通信にて)
柳沼:ちょっと、タデちゃんみたいなことを
:
蓼原:(通信にて)
蓼原:余計なことを吐かすな(ぬかすな)
:
桜庭:ごめんごめん
桜庭:(笑う)
桜庭:最近タデと別行動が多くってさ
:
柳沼:(通信にて)
柳沼:相変わらず大好きよね、タデちゃんのこと
:
桜庭:ああ、もちろんさ
桜庭:もう10年一緒にやってきたんだ
:
柳沼:(通信にて)
柳沼:ハイハイ、お熱いお熱い…
:
蓼原:(通信にて)
蓼原:お前も乗るんじゃない
:
柳沼:(通信にて)
柳沼:さ、お上(おかみ)もお怒りだし
柳沼:役に立ちそうな情報から順に
柳沼:口頭で説明するから…漏らさないでね?
:
桜庭:うん、今日も君は調子がよさそうだ
:
蓼原:(通信にて)
蓼原:骨のある奴らならいいんだが
:
樺倉:お願いします
:
柳沼:(通信にて)
柳沼:はいはぁーい
柳沼:じゃ、まず勢力図からよ
柳沼:サブリナから引っ張ってきたんだけど…
:
桐谷:(モノローグ)
桐谷:(普段の音じゃなかったことは覚えてる)
桐谷:(慄く(おののく)ような声と)
桐谷:(普段聞かない激しい足音)
桐谷:(時折混ざる銃声と怒号)
桐谷:(重いものが倒れるような衝突音)
桐谷:
桐谷:(丸2日続いた『女としてのあたし』に)
桐谷:(体が耐えられなくなって、)
桐谷:(まるで意識を手放すみたいに)
桐谷:(浅くても目覚めない眠りを)
桐谷:(強引に引き剝がすには丁度良かったのか)
桐谷:(ぬるく温まった床に張り付いた耳が)
桐谷:(あたしの左目を半分ほど開かせた)
:
柳沼:(通信にて)
柳沼:こんなところかしら、多分
柳沼:今回の救援依頼、やけに大がかりな割に
柳沼:必要な情報が小出しでねぇ
:
桜庭:いいさ、大抵は探索中に予想した通りだ
:
柳沼:さすがサク、安定の信頼ね
:
樺倉:僕が回線構築時に確認した情報とも
樺倉:おおむね一致してます
:
蓼原:(通信にて)
蓼原:桜庭、そろそろ合流しそうだ
蓼原:ここから先は引き継ごう
:
桜庭:了解、撃っちゃったらうまく避けてね?
:
蓼原:(通信にて)
蓼原:撃つ気なのはハナから知っていた、
:
0:(蓼原、襲ってきた構成員に発砲する)
:
蓼原:(通信にて)
蓼原:…がな!
:
桐谷:(モノローグ)
桐谷:((少しの間))
桐谷:
桐谷:(距離は遠いようだったけど、人影が)
桐谷:(明らかに慌ただしく駆け抜けていった)
桐谷:
桐谷:(数秒としないうちに、炸裂音がして)
桐谷:(何かが柔らかいものを強引に押しのけて)
桐谷:(…引き裂いて、うずまっていく音)
桐谷:(すぐに続いて、たくさんの音)
桐谷:
桐谷:(木製の扉なのか、棚なのか)
桐谷:(きしんで、破られて、割れる)
桐谷:(重たいものが床に叩きつけられる)
桐谷:(体に受けた痛みと衝撃が招いた)
桐谷:(肺を捩る(よじる)ように漏れた)
桐谷:(今わの際には控えめすぎる、断末魔)
:
0:(蓼原、桜庭、樺倉、合流する)
:
樺倉:柳沼さん
:
柳沼:(通信にて)
柳沼:おっけー、イケメン3人揃ったようね
:
桜庭:…あらかた、片付いたとは思うけど
:
蓼原:まだ騒がしいな
蓼原:明らかに慣れてる集団がいる
:
桜庭:そうだね、しばらくは様子を見ようか
:
樺倉:じゃあ、僕はここで深層の区画の
樺倉:ロック解除を行います
:
桜庭:頼んだよ、樺倉
桜庭:…さあタデ、どちらを取る?
:
蓼原:どうせ暴れ足りんだろう
蓼原:…行ってこい、コイツは任せろ
:
桜庭:(笑う)
桜庭:ありがと、助かるよ
:
柳沼:(通信にて)
柳沼:一応、こっちでも衛星画像とかは
柳沼:更新しながら確認してるけど、
柳沼:バイタルについてはラグがあるの
:
桜庭:わかってるよ
:
樺倉:僕の方でも回線の維持と並行して
樺倉:クオンティティ向上、試しますね
:
柳沼:(通信にて)
柳沼:カッコいいじゃないの
柳沼:無事に戻ってきたら、一緒に楽しみましょ?
:
樺倉:遠慮しておきます
:
柳沼:(通信にて)
柳沼:んもぉー、つれないわねぇ
:
蓼原:よし、気合い入れろ…大詰めだ
:
桜庭:ya.(ヤ)
:
樺倉:了解です
:
柳沼:(通信にて)
柳沼:いってらっしゃい
:
0:(桜庭、さらに地下に潜る)
0:(樺倉、ラップトップを取り出す)
0:(蓼原、ハンドガンを構え臨戦態勢を取る)
:
桐谷:(モノローグ)
桐谷:(いつの間にか聞き慣れてしまい、)
桐谷:(音の響き方や方向でおおよその情報が)
桐谷:(聞き分けられるほどになったあたしを)
桐谷:(これほど恨めしく思ったことはなかった)
桐谷:
桐谷:(この日のヴューマルシェは)
桐谷:(あのジャンヌ・ダルクも引きつるくらい)
桐谷:(血と硝煙が鮮やかに舞い、)
桐谷:(肉と腐臭できらびやかに彩られた)
:
柳沼:(通信にて)
柳沼:どう?カメラつなげそう?
:
樺倉:できますけど、時間ください
樺倉:それぞれの区画が独立したホストを持ってて
樺倉:仮想サーバから構築しないと…
:
柳沼:(通信にて)
柳沼:こっちで受け持つ?
:
樺倉:いや、こうなったら手元でやっても
樺倉:そんなに時間は変わんないっす
樺倉:一応…仮想サーバを構築してる間に、と
:
0:(樺倉、教会内のカメラ映像を転送する)
:
柳沼:(通信にて)
柳沼:あら、仕事が早いのね
柳沼:ベッドの上ではもっとスローでお願いするわ
:
樺倉:同じ寝床を共有することはありませんから
樺倉:願われてもなんですけどね
:
蓼原:こら、集中させてやれ
:
柳沼:(通信にて)
柳沼:ごめんなさいね?
柳沼:いかにもチェリー、って感じだから
柳沼:ちょっとくすぐられちゃうのよ、血が
:
蓼原:何でもかんでも飲み込むのは
蓼原:酒とパソコンだけにしてくれよ、柳沼
:
樺倉:回線負荷が上がるので、注意してください
樺倉:解像度は最低ですがサクさんのサポートには
:
柳沼:(通信にて)
柳沼:うん、何とかなるわ
柳沼:彼には「何かいる」で十分だもの
:
樺倉:(笑う)
樺倉:そっすね、あとはどうにかなるでしょ
:
蓼原:(ため息)
蓼原:気を張れと言っただろうが、全く
:
桐谷:(モノローグ)
桐谷:(いくつもの声が響き、通り過ぎた後)
桐谷:(兵士が、あたしを『迎えに来た』)
桐谷:(「仕事だ」という合図を見せる)
桐谷:
桐谷:(脳までは動いていても、)
桐谷:(体はまだ動ける状態じゃない)
桐谷:(唸り声をあげながら軋む全身を起こす)
桐谷:(体の下に潜っていた右腕を出し、)
桐谷:(迎えの男に差し出して待つ)
桐谷:
桐谷:(慣れた手つきで取り出したのは励起剤)
桐谷:(一時的に赤筋の働きと心臓機能を)
桐谷:(飛躍的に向上させる効果がある)
桐谷:(…つまりは、ただの昂奮剤ってこと)
桐谷:
桐谷:(手の甲に針を突き立てられる)
桐谷:(あざと傷でぼろぼろの手に)
桐谷:(またひとつ、孔(アナ)が増えた)
桐谷:
桐谷:(「あー、またトぶのね、あたし…」)
桐谷:(感慨も、感傷も、とうにないけど、)
桐谷:(そんなことを毎度考えていた)
桐谷:
桐谷:(多分、あたしは)
桐谷:
桐谷:(『終わり』を、探していた)
:
0:(樺倉、ラップトップを見つめている)
0:(蓼原、樺倉に背を向けて警戒している)
:
樺倉:んー、これで8つめか…
:
柳沼:(通信にて)
柳沼:やっぱ、気になっちゃう?
:
樺倉:はい、正直
:
蓼原:『軍用施設も真っ青』ってやつか
:
樺倉:そっすね
樺倉:確かにジャンヌダルク教会は
樺倉:キリスト教カトリック派の戦士の拠点として
樺倉:整備・提供されてるのは知ってますけど
:
柳沼:(通信にて)
柳沼:あまりに堅牢すぎて、ね?
柳沼:何だか『ネズミ一匹逃さない』って感じなの
:
蓼原:妙ってほどじゃないだろう
蓼原:その戦士たちはカトリックからすれば
蓼原:貴重な財産であり資源でもあるんだろう
:
樺倉:そう、なんすけどね…
:
0:(樺倉、教会のカメラをまとめ終わる)
:
樺倉:さて、終わりました
樺倉:リアルタイム接続切りますよ
:
柳沼:(通信にて)
柳沼:りょーかい、待ってるわ
:
0:(樺倉、柳沼との回線を終了する)
:
樺倉:あとは再接続なんで、多少待たないとっすね
:
蓼原:そうか、分かった
:
樺倉:そういえば、ちょっと気になってたんすけど
:
蓼原:何だ、改まって
:
樺倉:(少し息をつく)
樺倉:蓼原さん、あれから行ってないでしょ
:
蓼原:(沈黙)
:
樺倉:サクさんが珍しく、気にしてましたよ
:
蓼原:…奴め、しおらしくしやがって
蓼原:(目を逸らし、煙草を取り出す)
:
樺倉:別に僕らが急かす話じゃないってのは
樺倉:僕もサクさんもちゃんとわかってます
樺倉:…でも、何となく思っちゃうんすよ
:
蓼原:(煙草に火をつける)
:
樺倉:蓼原さんが僕らに厳しくしてくれるのって、
樺倉:『思い出したくないから』じゃないかって
:
蓼原:…別に、そんなつもりはない
:
0:(間)
:
樺倉:…そっすか、了解です
:
蓼原:そうだ、樺倉
:
樺倉:何すか、蓼原さん
:
蓼原:…百合、買っててくれ
:
樺倉:(目を細める)
樺倉:サクさんに頼んどきますね
:
蓼原:吐かせ(ぬかせ)、バカ倉
:
樺倉:ひっでぇ、
樺倉:(笑う)
樺倉:横暴だぁー
:
蓼原:(近づいている物音に気付く)
蓼原:何だ、これは…
:
樺倉:ん、どうしたんですか(かぶる/蓼原さん)
:
蓼原:(かぶせて)1時だ!
:
樺倉:今?!
:
蓼原:(待たずに)10時、跳べ!!!
:
樺倉:うわぁあ!!
:
0:(桐谷、樺倉へナイフを投げる)
0:(樺倉、右後方へ跳び、間一髪避ける)
0:(蓼原、樺倉の真反対方向へステップする)
:
蓼原:速いな、此奴(コイツ)
:
桐谷:(2名を瞬時に見る)
桐谷:(蓼原を標的にする)
:
蓼原:(笑う)
蓼原:いい判断だ、お嬢ちゃん
:
桐谷:(モノローグ)
桐谷:(5分もおけば、あたしは意識を失う)
桐谷:(もっと言うなら、人間を中止する)
桐谷:(駆け巡る血流、鳴りやまぬ心臓、)
桐谷:(はやり出す感情、震えだす手足、)
桐谷:(その全てが、あたしを狂わせる)
桐谷:
桐谷:(せりあがってくる鼓動が何なのか…)
桐谷:(いや、何を欲していたのかは)
桐谷:(あの頃ではわからなかった)
桐谷:(でも、わからなかったのはよかったかも)
桐谷:
桐谷:(わかってしまった後は、ただひたすらに)
桐谷:(『人間』の恐ろしさを恨むことしか)
桐谷:(『女』の醜さを悔やむことしか)
桐谷:(できなくなってしまったんだもの)
:
0:(通信再構築直後)
0:(桜庭、地下で交戦を継続中)
:
柳沼:(通信にて)
柳沼:サク、サク聞こえてる?!
:
桜庭:(高笑いしながら交戦中)
:
柳沼:サクってば!!
:
桜庭:(聞き取る)
桜庭:こちら桜庭
桜庭:どうした(かぶる/んだ焦って)
:
柳沼:(かぶせて/通信にて)戻って!!
柳沼:タデちゃんが!!
:
桜庭:(息をのむ)
桜庭:了解、ルートを
:
柳沼:(通信にて)
柳沼:西直進2部屋!!
:
桜庭:分かった!
:
柳沼:(通信にて)
柳沼:最短ナビゲートするから
柳沼:絶対聞き漏らさないで!!
:
桜庭:ああ、
桜庭:(突入した部屋の2名を4発で仕留める)
桜庭:任せて
:
桐谷:(モノローグ)
桐谷:(後の調べで聞いたことなんだけど、)
桐谷:(あたしの戦果はそうそうたるもので)
桐谷:(あの時活動していた少女兵のうち)
桐谷:(唯一10戦を生き残ったんだって)
桐谷:
桐谷:(…励起剤を打たれた後は、)
桐谷:(兵士はそそくさと出て行ってしまう)
桐谷:(加虐性が高まり、手に負えないからだ)
桐谷:(明確に敵性を感じない相手以外を)
桐谷:(ほぼ無差別に殺傷してしまうため)
桐谷:(右手の枷が自動的に外れるまでの)
桐谷:(注入後の3分間は、ひたすら叫ぶ)
桐谷:
桐谷:(声にならない、破壊衝動)
桐谷:(傷をいとわない、本能的渇望)
桐谷:(その二つを強引に引き出す励起剤は)
桐谷:(否応なく女性に強力に作用する)
桐谷:
桐谷:(なぜなら、励起剤が刺激する脳領域は)
桐谷:(体の各所の筋肉にかけられたリミッターを)
桐谷:(強制的に排除する場所、つまりは)
桐谷:(女性が自らの子供に危機が迫ったときに)
桐谷:(『命がけで』子供を守るために)
桐谷:(自らの生命をかえりみずに身を挺する)
桐谷:(…『母性本能』を司る場所だからだ)
:
演者さんへ。:ここからは戦闘シーンとなります。
演者さんへ。:ハイテンポで応酬を繰り広げてください。
:
桐谷:(間合いを詰める)
:
蓼原:(樺倉を巻き込まないよう右に跳ぶ)
:
桐谷:(蓼原の移動を上回る速度で追いつく)
:
蓼原:(急所を守るために身を捩る)
:
桐谷:(体重の乗った肘打ちを繰り出す)
:
蓼原:(左胸に直撃しないよう二の腕を下げる)
:
桐谷:(とっさに右腕を畳み右上段蹴りに移る)
:
蓼原:(もろに受け、蹴り飛ばされ呻く)
蓼原:(受け身を取りつつ距離を取る)
:
桐谷:(振り抜いた勢いを殺さず詰めてくる)
:
蓼原:(桐谷の右前腕を狙い、撃ちぬく)
:
桐谷:(貫通するが、臆せず突っ込む)
:
蓼原:(軸足の左脚を改めて狙う)
:
桐谷:(狙いを察知し、跳躍で間を詰める)
:
蓼原:(銃撃し、外してしまう)
蓼原:(苦笑い)
蓼原:何だ、このセンスは!
:
桐谷:(右腕の突きで喉元を狙う)
:
蓼原:(ハンドガンの銃身と左前腕で受ける)
:
桐谷:(ヒットした反動を使い宙返りする)
桐谷:(蓼原の背後に左脚で着地する)
桐谷:(浮いた右足を首に絡め、引き倒す)
:
蓼原:(頭を床に叩きつけられ呻く)
:
桐谷:(準備していたナイフを左脇腹へ刺す)
:
蓼原:(負傷する)
:
桐谷:(左脇腹のナイフを抉りつつもう一本抜く)
桐谷:(そのもう一本を蓼原の右目に振り下ろす)
:
蓼原:(右手で桐谷のナイフを押しとどめる)
:
桐谷:(上半身の自重を乗せる)
:
蓼原:(こらえる)
:
桐谷:(左脇腹のナイフを引き、切り裂く)
:
蓼原:(痛みに叫ぶ)
:
樺倉:うわああぁあぁあ!!!
樺倉:(振り下ろされるナイフに飛び込む)
:
桐谷:(一瞬面食らい、右方向に回転する)
:
蓼原:(拘束を脱し、起き上がる)
:
桐谷:(右手のナイフを手放し、樺倉の首に回す)
桐谷:(飛び込まれた反動を左脚で加速する)
桐谷:(右脚で樺倉の体を支えつつ投げる)
:
樺倉:(回転させられ、床に背中を打ち付け呻く)
:
0:(桜庭、戻ってくる)
:
桜庭:タデ!!
:
桐谷:(気づき、標的を桜庭に変更する)
:
桜庭:(状況を把握し、銃口を桐谷に向ける)
:
蓼原:手練れ(てだれ)だ、気をつけろ!!
:
桜庭:(眉間に狙いを定める)
:
桐谷:(察知し体勢を下げ突っ込む)
:
樺倉:サクさん!!
:
桜庭:(桐谷への視線を外さず耳を傾ける)
:
樺倉:
樺倉:その子は、『女の子』だ!!!
樺倉:
:
桜庭:(苦い顔をする)
:
桐谷:(桜庭の注意が削がれたことを悟る)
桐谷:(前傾姿勢を解き、スライディングする)
:
樺倉:頼みます!!!
:
桜庭:(小さな舌打ち)
桜庭:クソ、恨むよ
桜庭:(桐谷の左足首、右手首を撃ちぬく)
:
桐谷:(畳んでいた右脚で強引に離脱する)
桐谷:(腱を切られ、立ち上がれずに倒れる)
桐谷:(左手で3本目のナイフを取り出す)
:
桜庭:(投擲を予測し左手首を撃ちぬく)
:
演者さんへ。:戦闘シーンは終了です。お疲れさまでした。
:
桐谷:(ナイフを取り落とし、桜庭を睨みつける)
:
桜庭:(ゆっくりと歩み寄る)
:
樺倉:サクさん!!!
:
桜庭:(桐谷のかたわらに立ち、見下ろす)
:
桐谷:(桜庭を見上げる)
:
桜庭:(なおも見下ろしている)
桜庭:…タデ
:
蓼原:…任せる
:
桜庭:(なおも見下ろしている)
桜庭:(嗤う)
桜庭:…こういうときだけは、嫌いだよ…タデ
:
蓼原:…悪、かったな
蓼原:…俺も、本来、底意地が、悪いんだ
:
桜庭:(なおも見下ろしている)
桜庭:…そうだね
桜庭:(ハンドガンを持つ右手を振り上げる)
:
樺倉:(間髪入れず)サクさん!!!
:
桐谷:(桜庭を見上げている)
:
桜庭:(グリップの底部で桐谷の鳩尾を殴る)
:
桐谷:(気を失う)
:
桜庭:(ゆっくりと樺倉に視線を移す)
桜庭:…何か、言うことはあるかな
:
樺倉:(射竦められる)
樺倉:申し訳、ないです
:
桜庭:(目をすがめる)
桜庭:…そう
桜庭:(重い間)
桜庭:失望するよ、樺倉
桜庭:ここで『謝罪が先』、だなんて
:
樺倉:(怯える)
樺倉:すみません、でした
:
蓼原:(膝をつく)
:
0:(樺倉、駆け寄る)
:
樺倉:蓼原さん!
:
蓼原:…済まん、少し、血が、足りん
:
樺倉:そんな、(かぶる/どうしよう)
:
桜庭:(かぶせて)タデ
:
蓼原:…ああ
:
桜庭:『引き継ぐ』、そう言ったよね
:
蓼原:…ああ
:
桜庭:…じゃあ、そのバカは任せる
:
蓼原:(笑う)
蓼原:…ああ、そう、だな
:
桜庭:(息をつく)
桜庭:柳沼、手配を
:
柳沼:(通信にて)
柳沼:ええ、もちろん進めてるわ
:
桜庭:O.K.
桜庭:…じゃあ、先に帰るよ
:
0:(桜庭、出ていく)
:
柳沼:(通信にて)
柳沼:ともあれ、お疲れ様
:
樺倉:…はい
:
柳沼:(通信にて)
柳沼:…樺倉くん
:
樺倉:…何すか
:
柳沼:(通信にて)
柳沼:(長いため息)
柳沼:…大丈夫よ、安心して
:
樺倉:…何がっすか
:
柳沼:(通信にて)
柳沼:…アレが、サクだから
:
樺倉:(黙ったのち、笑う)
樺倉:…そっすね、でも
:
柳沼:(通信にて)
柳沼:(笑う)
柳沼:…いい子ね、樺倉くんは
:
樺倉:…あざっす
:
0:(数時間後)
0:(別働で派遣されたチームが搬出作業中)
0:(樺倉、ストレッチャーに付き添っている)
0:(桐谷、応急処置されて運ばれている)
:
桐谷:(気がつく)
:
樺倉:あ、起きた
:
桐谷:(かすれた声)
:
樺倉:ああ、無理は、だ、ダメだから
:
桐谷:ううん
:
樺倉:そ、そう、なら、い、いいんだけど
:
桐谷:(周囲の物音に目を向ける)
桐谷:へいき
:
樺倉:あ、見ちゃダメ!
樺倉:(桐谷の視界に立ちふさがる)
:
桐谷:なんで
:
樺倉:だ、だって
樺倉:(桐谷から視線を外す)
:
桐谷:へいき
桐谷:あたし
桐谷:…どうぐ
:
樺倉:(唇を噛む)
樺倉:…違うよ
:
桐谷:なにが
:
樺倉:…道具じゃ、ない
樺倉:君の、仲間が、た、たくさん…
:
桐谷:…なかま
:
樺倉:…ごめん
:
桐谷:なんで
:
樺倉:ぼ、僕たちの、せいで…
:
桐谷:ちがう
:
樺倉:…違わ、ないよ
:
桐谷:ちがう
:
樺倉:ごめん…ごめんね…
:
桐谷:あたし
桐谷:どうぐ
桐谷:…
桐谷:
桐谷:みんな
桐谷:おんな
桐谷:
:
樺倉:(聞き届け、そして、唸る)
:
桐谷:…つらい?
:
樺倉:(涙を浮かべる)
樺倉:ううん、違うよ
:
桐谷:なんで?
:
樺倉:僕の、やるべきことが…
樺倉:ひとつ増えたみたいだ
樺倉:(桐谷の頭を撫でる)
:
桐谷:(モノローグ)
桐谷:(あたしがはっきり覚えている記憶は)
桐谷:(これが最初だったりする)
桐谷:
桐谷:(…笑えるでしょ?)
桐谷:(自分でも思うわよ、何が悲しくて)
桐谷:(あの床の感触を覚えてるんだか)
桐谷:
桐谷:(ただ、さ)
桐谷:(あの時の手のあたたかさだけは)
桐谷:(何でだか絶対忘れない気がすんのよ)
桐谷:
桐谷:(…それはそれで、もしかするとさ?)
桐谷:(案外悪くないのかな、って…思えんの)
:
0:(同時刻)
0:(ノート、臨時拠点のホテル)
0:(桜庭、テラスで煙草を吸っている)
0:(柳沼、グラスを持って現れる)
:
柳沼:はい、サク
:
桜庭:(煙を吐く)
桜庭:ああ、ありがとう
:
柳沼:…やっぱり、落ち着かないみたいね
:
桜庭:何を言うんだい
桜庭:僕はこれ以上ないほど落ち着いてる
:
柳沼:そうね、いつもよりもフラットよ
柳沼:…それこそ気色悪いほどにね
:
桜庭:おや、柳沼
桜庭:(鋭い視線を向ける)
桜庭:君まで、僕をおとしめるつもりかな
:
柳沼:そんな目、ずるいわよもう
柳沼:そそられちゃうわ
:
桜庭:そんな悪ふざけを(かぶる/許すと?)
:
柳沼:(かぶせて)特別扱い、したものね
:
桜庭:(グラスを強く握ってしまう)
:
柳沼:…見たわよ、一部始終を改めて
柳沼:それこそ、サクが蹴散らした全員を
:
桜庭:…そう
:
柳沼:その中には、女の子もいた
:
桜庭:もういいよ
:
柳沼:年のころは同じくらいね
:
桜庭:柳沼、もう
:
柳沼:(聞かずに)
柳沼:私もあのくらいみずみずしいころが
柳沼:思わず羨ましくなっちゃった
:
桜庭:やめて(かぶる/くれよ)
:
柳沼:(かぶせて)いいえ、やめないわ
柳沼:…貴方の、その目が、
柳沼:…やめてほしいとは、言ってないもの
:
桜庭:…悪い冗談を、覚えたものだね
:
柳沼:…貴方は、正しいことをしたわ
:
桜庭:へえ、博愛主義者が血迷ったかな
:
柳沼:彼女たちは明確に貴方に殺意を向けた
柳沼:…どこかで誰かから聞いたことがある
柳沼:(酒を飲み干す)
柳沼:『降りかかる火の粉は払うべき』
:
桜庭:…払わなかったんだよ、あの『馬鹿』は
:
柳沼:それでいて、悔しがってる
柳沼:終わったけど、悩んでる
:
桜庭:…それは
:
柳沼:あの子一人だけを、生かした
柳沼:たまたまのタイミングと樺倉くんの思いが
柳沼:彼女の『生』をつないだ
:
桜庭:…仕方ないとは、諦めるさ
:
柳沼:(沈黙し、そして笑う)
:
桜庭:…笑われるか、そりゃ
:
柳沼:もう、違うわよサク
:
桜庭:どういうことなのかな、それなら
:
柳沼:(グラスを床に投げ、割る)
柳沼:こういうことよ
:
桜庭:…珍しく、皮肉が利いてるじゃないか
:
柳沼:私だって、たまにはずるくなるわよ
:
桜庭:おお、怖いねまったく
:
柳沼:…それにね?
柳沼:(桜庭の顔を自分に向ける)
柳沼:(頬を両手で挟み、キスをする)
:
桜庭:(応じる)
:
柳沼:貴方が割ってきた数々のグラスの破片、
柳沼:…その一つが私だってことも、忘れないで?
:
桜庭:(息をのみ、そして、笑いだす)
桜庭:そう、そうか…そうだったね!
:
柳沼:ええ、そうよ…もう
柳沼:サクってばホント、困った人ね
:
0:(4年弱前、ルーアンの2か月後)
0:(アメリカ、ロサンゼルス)
0:(大規模なショップストリート)
0:(桐谷、紙袋を振り回しつつ歩いている)
0:(樺倉、後ろを大荷物を抱えつつついていく)
:
桐谷:(モノローグ)
桐谷:(樺倉は、思えばずっとああだった)
桐谷:(本当に言わなきゃいけないことだけは)
桐谷:(どれだけ臆しても伝えてくれる)
桐谷:(そんなあいつにあたしは何度も救われた)
:
樺倉:ちょっと、早いってば…っ
:
桐谷:うっさいわね、男のくせに!
桐谷:早くしないと最後まで回れないじゃない!
:
樺倉:え、最後って?!
:
桐谷:そ、あっちの最後!
桐谷:(立ち並ぶショップの遥か遠くを指さす)
:
樺倉:それは無理だって!
樺倉:君の荷物、もう僕じゃ持てないよ!
:
桐谷:じゃあ、誰か捕まえてきて!
:
樺倉:そんな、無茶な…っ
:
桐谷:いいから、次行くわよ次!
:
樺倉:ま、待ってってばぁ!
:
桐谷:(モノローグ)
桐谷:(暑かった、そして楽しかった)
桐谷:(そんなことばかり思い出す)
桐谷:(多分樺倉は、あいつなりにあたしを)
桐谷:(気遣ってくれてたんだと思う)
桐谷:
桐谷:(泣く暇を与えないように)
桐谷:(振り返ることがないように)
桐谷:(生き残った後悔をしないように)
:
0:(同じショップストリート)
0:(蓼原、テラス席でブルックリンを飲んでいる)
0:(桐谷、瓶コークを飲んでいる)
0:(樺倉、テーブルに伏しぐったりしている)
:
蓼原:それにしても、どれだけ買う気だ
:
桐谷:しょうがないわ、欲しいものが多すぎて
桐谷:これでも8割以上は諦めたのよ?
:
蓼原:(苦笑)
蓼原:だ、そうだ
:
樺倉:…よしてくださいよ、もう
:
桐谷:だってせっかくだもの、女に生まれたなら
桐谷:おしゃれくらい楽しんでみたいなって
:
蓼原:まあ、気持ちはわからんでもないが
蓼原:元からいたほうの紅一点と違って
蓼原:お前はおめかしも役に立たんだろう
:
桐谷:失礼な、あたしだってお化粧とか
桐谷:色気とか魅力とか、勉強中なんだからね
:
蓼原:変わるまいて、今更
:
桐谷:ちょっと、ひっど
:
樺倉:そうですよ、蓼原さん
樺倉:年頃の女の子にそんなこと言ってると
樺倉:重たいカバンでぶん殴られますよ
:
蓼原:おお、怖い怖い
:
桐谷:あ、ちょうどいいところに
桐谷:今朝買ったボストンバッグがあったわ
:
蓼原:おいおい、お前の膂力(りょりょく)じゃ
蓼原:おふざけがバカにならん
:
樺倉:たまにはコテンパンにやられたらいいんです
:
蓼原:お前は桜庭への恨みをこっちに寄越すな
:
樺倉:切っても切れない切りたくない腐れ縁を
樺倉:存分に生かしていただく所存です、はい
:
蓼原:(ため息)
蓼原:全く、面倒な
:
桐谷:(笑う)
:
蓼原:じゃあ、車は預けるぞ
蓼原:俺は少しこの辺りを見てくる
:
樺倉:(察する)
樺倉:そうっすね、お願いします
:
0:(蓼原、去る)
:
桐谷:(蓼原が置いて行った瓶を弄ぶ)
桐谷:そんで、何かわかった?
:
樺倉:…いや、ごめん
樺倉:君の情報が少なすぎて、まだ
:
桐谷:…そっかぁ
桐谷:あたし、何者なんだろうね
:
樺倉:(押し黙る)
:
桐谷:ああ、別に困らせたいわけじゃないの
:
樺倉:うん
:
桐谷:ただ、さ?
桐谷:あたしはどことも知らないところから
桐谷:あそこに連れて行かれて、
桐谷:好き勝手されて、暴れさせられて…
桐谷:(樺倉に向き直り表情を明るくする)
桐谷:そんでまた大暴れ集団に拾われてさ?
:
樺倉:ぼ、僕を一緒にしないでよ
:
桐谷:(笑う)
:
樺倉:よかった、本当に
:
桐谷:何よ、妹でも見るみたいに
:
樺倉:そりゃ、こんなに振り回されて
樺倉:放っておけない危なっかしい女の子、
樺倉:妹みたいに思ってもおかしくないよ
:
桐谷:(そっぽを向く)
桐谷:あ、そ
:
樺倉:へそ曲げないでよ
:
桐谷:別に
:
樺倉:(息をつく)
樺倉:でも、それ以上にさ
:
桐谷:うん
:
樺倉:こうやって、元気になってよかったって
:
桐谷:そうね…ありがと
:
樺倉:ううん、僕は何も
:
桐谷:そんなことないよ
:
樺倉:(笑う)
樺倉:蓼原さんが戦ってくれて、
樺倉:柳沼さんが状況把握してくれて、
樺倉:サクさんが踏みとどまってくれて、
樺倉:君が今ここにいる
:
桐谷:アイツ…嫌い
:
樺倉:(笑う)
:
桐谷:でもさ、あたしはいずれここを出て
桐谷:一人になるんだよ?
:
樺倉:…そう、なのかな
:
桐谷:…何、歯切れ悪い
:
樺倉:いや、君が望まない限り、
樺倉:君は多分ずっとここにいるよ
:
桐谷:え?
:
樺倉:というわけで、ロスに来た目的を
樺倉:背景含め説明するからよく聞いてね
:
桐谷:う、うん
:
樺倉:簡単に言えば、ゲリラの鎮圧
樺倉:君からしたら難易度の低い任務だよ
:
桐谷:え、あたしに仕事?
:
樺倉:そう、僕たち『ノート』の正規任務
:
桐谷:ちょ、ちょっと待って
桐谷:そりゃアンタたちとなら嬉しいけど
桐谷:アンタたちってお堅い組織でしょ?
:
樺倉:そうだよ、超国家的な成り立ちもある
:
桐谷:そんな大事な話に(かぶる/部外者が)
:
樺倉:(かぶせて)だからこそ、だよ
樺倉:メンバー全員に、正しく伝達しなきゃ
樺倉:それが、情報担当の僕の役目
:
桐谷:全、員…?
:
樺倉:そう、全員。
:
0:(樺倉、カバンをあさる)
0:(樺倉、スマートフォンを手渡す)
:
桐谷:(受け取る)
桐谷:これ、もしかして
:
樺倉:(微笑む)
樺倉:君の手が、どれだけ血まみれでも
樺倉:君の体が、どれだけすさんでても
樺倉:僕たちだけは知ってる
:
桐谷:(画面を操作する)
桐谷:(ロゴが映し出される)
:
樺倉:通わせたい、触れ合いたい、抱きしめたい、
樺倉:…今まで満足に叶えられなかった分、
樺倉:僕たちが一つ一つまかなうよ
:
桐谷:(涙を浮かべる)
:
樺倉:ここが、君の居場所だ
:
桐谷:うん
:
樺倉:
樺倉:ようこそ、『ビリジャン=ノート』へ
樺倉:
:
桐谷:(モノローグ)
桐谷:(そう、だからこそ『お兄ちゃん』)
桐谷:(普段はビクビクしてるクセに)
桐谷:(こういうときだけ勘がいい)
桐谷:(役に立たない、って思う時もあるけど)
桐谷:(なんだかんだ言って助けてくれる)
桐谷:
桐谷:(だから、あたしは勝手に、)
桐谷:(直接言ったらつけあがるから)
桐谷:(心の中だけで、そっと、)
桐谷:
桐谷:(『お兄ちゃん』って呼んでいた)
桐谷:
:
0:(続)
:
演者さんへ。:今回は桐谷のモノローグが話を展開させます。
:
0:(11話直後)
0:(桐谷の胸中)
:
桐谷:(モノローグ)
桐谷:(あたしは、やっぱり恵まれない)
桐谷:(正直言って、不運だと思う)
桐谷:
桐谷:(いつの間にか故郷を奪われて)
桐谷:(どういうわけか戦争の道具になって)
桐谷:(鬣犬(ハイエナ)に睨まれて)
桐谷:(優男にいいように使われて)
桐谷:(ビッチにからかわれて)
桐谷:
桐谷:(土竜(もぐら)は土に潜ったままで)
桐谷:
桐谷:((ため息))
桐谷:(ホント、あたしの人生ついてなさすぎ)
桐谷:(今だって、海の上で命のやり取りだし)
桐谷:(まともに女ってものを楽しめた気が)
桐谷:(これっぽっちもしないままで、)
桐谷:(体だけがどんどん育っちゃった)
桐谷:
桐谷:(いいことなんて、何もなかった)
桐谷:(8650は、人気があった)
桐谷:(…具合が良いし、よく「啼く」から)
桐谷:
桐谷:(毎日、痛みと戦ってた)
桐谷:(そして今も、別の痛みと闘ってる)
桐谷:(物理的な痛みが精神的な痛みを呼んで)
桐谷:(毎日冷たい床の上でうずくまり、泣いて)
桐谷:(それでも命にしがみついていたあの頃)
桐谷:(救い出されてなお忘れられない)
桐谷:(卑しい(いやしい)言葉や)
桐谷:(醜い欲望を吐き出されたこの体が)
桐谷:(与えられる温もりに悲鳴を上げて)
桐谷:(自分の汚さに唇を噛んでる今)
桐谷:
桐谷:(あたしは、バラバラ)
桐谷:(顔は笑って、心は怯えて、体は叫んで)
桐谷:(それでも歩みを進めてる、止められない)
桐谷:(こんなあたしでも、分かってんのよ)
桐谷:(…もう、長く保たないってさ)
桐谷:(こんなバラバラなピノキオが、だよ?)
桐谷:(腐りかけのダッチドールが、さ)
桐谷:(いつまでももらっていいはずないじゃん)
桐谷:(…目がくらむわ、そんな優しさ)
桐谷:
桐谷:((少しの間))
桐谷:
桐谷:(そういえば、最近思い出さなかったな)
桐谷:
桐谷:(…本当なのか分からない、かすかな記憶)
桐谷:(故郷にいた気がする、「お兄ちゃん」と)
桐谷:(新しい場所でできた、「お兄ちゃん」を)
:
0:(4年前)
0:(フランス、ルーアン)
0:(ジャンヌダルク教会地下)
0:(激しい戦闘が行われている)
0:(桜庭、樺倉、駆け抜けている)
:
桜庭:8時方向から2人、3時方向にステップだ
:
樺倉:え?!
:
桜庭:今だ
:
樺倉:は、はい!!
:
桜庭:(ハンドガンで応戦する)
桜庭:うん、上手上手
:
樺倉:もう、何でこんな銃弾の雨の中を
樺倉:パソコン背負って駆けずり回る羽目に!!
:
桜庭:仕方ないさ
桜庭:外部からのアクセスが遮断されるここでは
桜庭:侵入後じゃないと施設を掌握できないだろう?
:
樺倉:そりゃ分かってるんですよ…!
樺倉:でも僕はもともとインドアのサポーターですよ?
樺倉:こんなとこ放り込まれて、無事なわけない!!
:
桜庭:安心してくれ、樺倉
桜庭:僕のメンツにかけて、君の命は保証する
:
樺倉:言い方がケガ前提のそれすぎて
樺倉:今すぐにでも引き返したいんですけど
:
桜庭:構わないよ、助けになんて行かないけど
:
樺倉:サクさん、相変わらず薄情っすね
:
桜庭:(少しの間)
桜庭:(そして笑う)
桜庭:よく知ってるだろうに、僕が人間嫌いなの
:
樺倉:ええ、池袋からずっと悩まされてます
:
桜庭:別に困らせたことはないはずだけどな
:
0:(桜庭、樺倉、通信を受ける)
:
柳沼:(通信にて)
柳沼:やっほー、サク、樺倉くん
:
樺倉:お、やっとつながりましたか
:
柳沼:(通信にて)
柳沼:うん、時間かかってごめんね
:
桜庭:その様子だと、仕入れは完璧みたいだね
:
0:(蓼原、通信に参加する)
:
蓼原:(通信にて)
蓼原:こちら蓼原、良好だ
:
樺倉:お疲れ様です蓼原さん
:
蓼原:(通信にて)
蓼原:柳沼、今回のミッションの概要をくれ
蓼原:規模、構成、練度、揃えてあるな?
:
柳沼:(通信にて)
柳沼:もちろんよ
柳沼:本来ならディスプレイ広げて
柳沼:これでもかと披露したいところなんだけど
:
樺倉:すみません、ラップトップじゃなかなか
:
柳沼:(通信にて)
柳沼:ま、気にしない気にしない
柳沼:回線開いてくれただけでも助かるわ
:
樺倉:ホント、無駄に固いんですよココ
樺倉:軍事施設も真っ青なセキュリティで
:
桜庭:こういう時、銃で解決できると
桜庭:手っ取り早くて助かるんだけど
:
柳沼:(通信にて)
柳沼:ちょっと、タデちゃんみたいなことを
:
蓼原:(通信にて)
蓼原:余計なことを吐かすな(ぬかすな)
:
桜庭:ごめんごめん
桜庭:(笑う)
桜庭:最近タデと別行動が多くってさ
:
柳沼:(通信にて)
柳沼:相変わらず大好きよね、タデちゃんのこと
:
桜庭:ああ、もちろんさ
桜庭:もう10年一緒にやってきたんだ
:
柳沼:(通信にて)
柳沼:ハイハイ、お熱いお熱い…
:
蓼原:(通信にて)
蓼原:お前も乗るんじゃない
:
柳沼:(通信にて)
柳沼:さ、お上(おかみ)もお怒りだし
柳沼:役に立ちそうな情報から順に
柳沼:口頭で説明するから…漏らさないでね?
:
桜庭:うん、今日も君は調子がよさそうだ
:
蓼原:(通信にて)
蓼原:骨のある奴らならいいんだが
:
樺倉:お願いします
:
柳沼:(通信にて)
柳沼:はいはぁーい
柳沼:じゃ、まず勢力図からよ
柳沼:サブリナから引っ張ってきたんだけど…
:
桐谷:(モノローグ)
桐谷:(普段の音じゃなかったことは覚えてる)
桐谷:(慄く(おののく)ような声と)
桐谷:(普段聞かない激しい足音)
桐谷:(時折混ざる銃声と怒号)
桐谷:(重いものが倒れるような衝突音)
桐谷:
桐谷:(丸2日続いた『女としてのあたし』に)
桐谷:(体が耐えられなくなって、)
桐谷:(まるで意識を手放すみたいに)
桐谷:(浅くても目覚めない眠りを)
桐谷:(強引に引き剝がすには丁度良かったのか)
桐谷:(ぬるく温まった床に張り付いた耳が)
桐谷:(あたしの左目を半分ほど開かせた)
:
柳沼:(通信にて)
柳沼:こんなところかしら、多分
柳沼:今回の救援依頼、やけに大がかりな割に
柳沼:必要な情報が小出しでねぇ
:
桜庭:いいさ、大抵は探索中に予想した通りだ
:
柳沼:さすがサク、安定の信頼ね
:
樺倉:僕が回線構築時に確認した情報とも
樺倉:おおむね一致してます
:
蓼原:(通信にて)
蓼原:桜庭、そろそろ合流しそうだ
蓼原:ここから先は引き継ごう
:
桜庭:了解、撃っちゃったらうまく避けてね?
:
蓼原:(通信にて)
蓼原:撃つ気なのはハナから知っていた、
:
0:(蓼原、襲ってきた構成員に発砲する)
:
蓼原:(通信にて)
蓼原:…がな!
:
桐谷:(モノローグ)
桐谷:((少しの間))
桐谷:
桐谷:(距離は遠いようだったけど、人影が)
桐谷:(明らかに慌ただしく駆け抜けていった)
桐谷:
桐谷:(数秒としないうちに、炸裂音がして)
桐谷:(何かが柔らかいものを強引に押しのけて)
桐谷:(…引き裂いて、うずまっていく音)
桐谷:(すぐに続いて、たくさんの音)
桐谷:
桐谷:(木製の扉なのか、棚なのか)
桐谷:(きしんで、破られて、割れる)
桐谷:(重たいものが床に叩きつけられる)
桐谷:(体に受けた痛みと衝撃が招いた)
桐谷:(肺を捩る(よじる)ように漏れた)
桐谷:(今わの際には控えめすぎる、断末魔)
:
0:(蓼原、桜庭、樺倉、合流する)
:
樺倉:柳沼さん
:
柳沼:(通信にて)
柳沼:おっけー、イケメン3人揃ったようね
:
桜庭:…あらかた、片付いたとは思うけど
:
蓼原:まだ騒がしいな
蓼原:明らかに慣れてる集団がいる
:
桜庭:そうだね、しばらくは様子を見ようか
:
樺倉:じゃあ、僕はここで深層の区画の
樺倉:ロック解除を行います
:
桜庭:頼んだよ、樺倉
桜庭:…さあタデ、どちらを取る?
:
蓼原:どうせ暴れ足りんだろう
蓼原:…行ってこい、コイツは任せろ
:
桜庭:(笑う)
桜庭:ありがと、助かるよ
:
柳沼:(通信にて)
柳沼:一応、こっちでも衛星画像とかは
柳沼:更新しながら確認してるけど、
柳沼:バイタルについてはラグがあるの
:
桜庭:わかってるよ
:
樺倉:僕の方でも回線の維持と並行して
樺倉:クオンティティ向上、試しますね
:
柳沼:(通信にて)
柳沼:カッコいいじゃないの
柳沼:無事に戻ってきたら、一緒に楽しみましょ?
:
樺倉:遠慮しておきます
:
柳沼:(通信にて)
柳沼:んもぉー、つれないわねぇ
:
蓼原:よし、気合い入れろ…大詰めだ
:
桜庭:ya.(ヤ)
:
樺倉:了解です
:
柳沼:(通信にて)
柳沼:いってらっしゃい
:
0:(桜庭、さらに地下に潜る)
0:(樺倉、ラップトップを取り出す)
0:(蓼原、ハンドガンを構え臨戦態勢を取る)
:
桐谷:(モノローグ)
桐谷:(いつの間にか聞き慣れてしまい、)
桐谷:(音の響き方や方向でおおよその情報が)
桐谷:(聞き分けられるほどになったあたしを)
桐谷:(これほど恨めしく思ったことはなかった)
桐谷:
桐谷:(この日のヴューマルシェは)
桐谷:(あのジャンヌ・ダルクも引きつるくらい)
桐谷:(血と硝煙が鮮やかに舞い、)
桐谷:(肉と腐臭できらびやかに彩られた)
:
柳沼:(通信にて)
柳沼:どう?カメラつなげそう?
:
樺倉:できますけど、時間ください
樺倉:それぞれの区画が独立したホストを持ってて
樺倉:仮想サーバから構築しないと…
:
柳沼:(通信にて)
柳沼:こっちで受け持つ?
:
樺倉:いや、こうなったら手元でやっても
樺倉:そんなに時間は変わんないっす
樺倉:一応…仮想サーバを構築してる間に、と
:
0:(樺倉、教会内のカメラ映像を転送する)
:
柳沼:(通信にて)
柳沼:あら、仕事が早いのね
柳沼:ベッドの上ではもっとスローでお願いするわ
:
樺倉:同じ寝床を共有することはありませんから
樺倉:願われてもなんですけどね
:
蓼原:こら、集中させてやれ
:
柳沼:(通信にて)
柳沼:ごめんなさいね?
柳沼:いかにもチェリー、って感じだから
柳沼:ちょっとくすぐられちゃうのよ、血が
:
蓼原:何でもかんでも飲み込むのは
蓼原:酒とパソコンだけにしてくれよ、柳沼
:
樺倉:回線負荷が上がるので、注意してください
樺倉:解像度は最低ですがサクさんのサポートには
:
柳沼:(通信にて)
柳沼:うん、何とかなるわ
柳沼:彼には「何かいる」で十分だもの
:
樺倉:(笑う)
樺倉:そっすね、あとはどうにかなるでしょ
:
蓼原:(ため息)
蓼原:気を張れと言っただろうが、全く
:
桐谷:(モノローグ)
桐谷:(いくつもの声が響き、通り過ぎた後)
桐谷:(兵士が、あたしを『迎えに来た』)
桐谷:(「仕事だ」という合図を見せる)
桐谷:
桐谷:(脳までは動いていても、)
桐谷:(体はまだ動ける状態じゃない)
桐谷:(唸り声をあげながら軋む全身を起こす)
桐谷:(体の下に潜っていた右腕を出し、)
桐谷:(迎えの男に差し出して待つ)
桐谷:
桐谷:(慣れた手つきで取り出したのは励起剤)
桐谷:(一時的に赤筋の働きと心臓機能を)
桐谷:(飛躍的に向上させる効果がある)
桐谷:(…つまりは、ただの昂奮剤ってこと)
桐谷:
桐谷:(手の甲に針を突き立てられる)
桐谷:(あざと傷でぼろぼろの手に)
桐谷:(またひとつ、孔(アナ)が増えた)
桐谷:
桐谷:(「あー、またトぶのね、あたし…」)
桐谷:(感慨も、感傷も、とうにないけど、)
桐谷:(そんなことを毎度考えていた)
桐谷:
桐谷:(多分、あたしは)
桐谷:
桐谷:(『終わり』を、探していた)
:
0:(樺倉、ラップトップを見つめている)
0:(蓼原、樺倉に背を向けて警戒している)
:
樺倉:んー、これで8つめか…
:
柳沼:(通信にて)
柳沼:やっぱ、気になっちゃう?
:
樺倉:はい、正直
:
蓼原:『軍用施設も真っ青』ってやつか
:
樺倉:そっすね
樺倉:確かにジャンヌダルク教会は
樺倉:キリスト教カトリック派の戦士の拠点として
樺倉:整備・提供されてるのは知ってますけど
:
柳沼:(通信にて)
柳沼:あまりに堅牢すぎて、ね?
柳沼:何だか『ネズミ一匹逃さない』って感じなの
:
蓼原:妙ってほどじゃないだろう
蓼原:その戦士たちはカトリックからすれば
蓼原:貴重な財産であり資源でもあるんだろう
:
樺倉:そう、なんすけどね…
:
0:(樺倉、教会のカメラをまとめ終わる)
:
樺倉:さて、終わりました
樺倉:リアルタイム接続切りますよ
:
柳沼:(通信にて)
柳沼:りょーかい、待ってるわ
:
0:(樺倉、柳沼との回線を終了する)
:
樺倉:あとは再接続なんで、多少待たないとっすね
:
蓼原:そうか、分かった
:
樺倉:そういえば、ちょっと気になってたんすけど
:
蓼原:何だ、改まって
:
樺倉:(少し息をつく)
樺倉:蓼原さん、あれから行ってないでしょ
:
蓼原:(沈黙)
:
樺倉:サクさんが珍しく、気にしてましたよ
:
蓼原:…奴め、しおらしくしやがって
蓼原:(目を逸らし、煙草を取り出す)
:
樺倉:別に僕らが急かす話じゃないってのは
樺倉:僕もサクさんもちゃんとわかってます
樺倉:…でも、何となく思っちゃうんすよ
:
蓼原:(煙草に火をつける)
:
樺倉:蓼原さんが僕らに厳しくしてくれるのって、
樺倉:『思い出したくないから』じゃないかって
:
蓼原:…別に、そんなつもりはない
:
0:(間)
:
樺倉:…そっすか、了解です
:
蓼原:そうだ、樺倉
:
樺倉:何すか、蓼原さん
:
蓼原:…百合、買っててくれ
:
樺倉:(目を細める)
樺倉:サクさんに頼んどきますね
:
蓼原:吐かせ(ぬかせ)、バカ倉
:
樺倉:ひっでぇ、
樺倉:(笑う)
樺倉:横暴だぁー
:
蓼原:(近づいている物音に気付く)
蓼原:何だ、これは…
:
樺倉:ん、どうしたんですか(かぶる/蓼原さん)
:
蓼原:(かぶせて)1時だ!
:
樺倉:今?!
:
蓼原:(待たずに)10時、跳べ!!!
:
樺倉:うわぁあ!!
:
0:(桐谷、樺倉へナイフを投げる)
0:(樺倉、右後方へ跳び、間一髪避ける)
0:(蓼原、樺倉の真反対方向へステップする)
:
蓼原:速いな、此奴(コイツ)
:
桐谷:(2名を瞬時に見る)
桐谷:(蓼原を標的にする)
:
蓼原:(笑う)
蓼原:いい判断だ、お嬢ちゃん
:
桐谷:(モノローグ)
桐谷:(5分もおけば、あたしは意識を失う)
桐谷:(もっと言うなら、人間を中止する)
桐谷:(駆け巡る血流、鳴りやまぬ心臓、)
桐谷:(はやり出す感情、震えだす手足、)
桐谷:(その全てが、あたしを狂わせる)
桐谷:
桐谷:(せりあがってくる鼓動が何なのか…)
桐谷:(いや、何を欲していたのかは)
桐谷:(あの頃ではわからなかった)
桐谷:(でも、わからなかったのはよかったかも)
桐谷:
桐谷:(わかってしまった後は、ただひたすらに)
桐谷:(『人間』の恐ろしさを恨むことしか)
桐谷:(『女』の醜さを悔やむことしか)
桐谷:(できなくなってしまったんだもの)
:
0:(通信再構築直後)
0:(桜庭、地下で交戦を継続中)
:
柳沼:(通信にて)
柳沼:サク、サク聞こえてる?!
:
桜庭:(高笑いしながら交戦中)
:
柳沼:サクってば!!
:
桜庭:(聞き取る)
桜庭:こちら桜庭
桜庭:どうした(かぶる/んだ焦って)
:
柳沼:(かぶせて/通信にて)戻って!!
柳沼:タデちゃんが!!
:
桜庭:(息をのむ)
桜庭:了解、ルートを
:
柳沼:(通信にて)
柳沼:西直進2部屋!!
:
桜庭:分かった!
:
柳沼:(通信にて)
柳沼:最短ナビゲートするから
柳沼:絶対聞き漏らさないで!!
:
桜庭:ああ、
桜庭:(突入した部屋の2名を4発で仕留める)
桜庭:任せて
:
桐谷:(モノローグ)
桐谷:(後の調べで聞いたことなんだけど、)
桐谷:(あたしの戦果はそうそうたるもので)
桐谷:(あの時活動していた少女兵のうち)
桐谷:(唯一10戦を生き残ったんだって)
桐谷:
桐谷:(…励起剤を打たれた後は、)
桐谷:(兵士はそそくさと出て行ってしまう)
桐谷:(加虐性が高まり、手に負えないからだ)
桐谷:(明確に敵性を感じない相手以外を)
桐谷:(ほぼ無差別に殺傷してしまうため)
桐谷:(右手の枷が自動的に外れるまでの)
桐谷:(注入後の3分間は、ひたすら叫ぶ)
桐谷:
桐谷:(声にならない、破壊衝動)
桐谷:(傷をいとわない、本能的渇望)
桐谷:(その二つを強引に引き出す励起剤は)
桐谷:(否応なく女性に強力に作用する)
桐谷:
桐谷:(なぜなら、励起剤が刺激する脳領域は)
桐谷:(体の各所の筋肉にかけられたリミッターを)
桐谷:(強制的に排除する場所、つまりは)
桐谷:(女性が自らの子供に危機が迫ったときに)
桐谷:(『命がけで』子供を守るために)
桐谷:(自らの生命をかえりみずに身を挺する)
桐谷:(…『母性本能』を司る場所だからだ)
:
演者さんへ。:ここからは戦闘シーンとなります。
演者さんへ。:ハイテンポで応酬を繰り広げてください。
:
桐谷:(間合いを詰める)
:
蓼原:(樺倉を巻き込まないよう右に跳ぶ)
:
桐谷:(蓼原の移動を上回る速度で追いつく)
:
蓼原:(急所を守るために身を捩る)
:
桐谷:(体重の乗った肘打ちを繰り出す)
:
蓼原:(左胸に直撃しないよう二の腕を下げる)
:
桐谷:(とっさに右腕を畳み右上段蹴りに移る)
:
蓼原:(もろに受け、蹴り飛ばされ呻く)
蓼原:(受け身を取りつつ距離を取る)
:
桐谷:(振り抜いた勢いを殺さず詰めてくる)
:
蓼原:(桐谷の右前腕を狙い、撃ちぬく)
:
桐谷:(貫通するが、臆せず突っ込む)
:
蓼原:(軸足の左脚を改めて狙う)
:
桐谷:(狙いを察知し、跳躍で間を詰める)
:
蓼原:(銃撃し、外してしまう)
蓼原:(苦笑い)
蓼原:何だ、このセンスは!
:
桐谷:(右腕の突きで喉元を狙う)
:
蓼原:(ハンドガンの銃身と左前腕で受ける)
:
桐谷:(ヒットした反動を使い宙返りする)
桐谷:(蓼原の背後に左脚で着地する)
桐谷:(浮いた右足を首に絡め、引き倒す)
:
蓼原:(頭を床に叩きつけられ呻く)
:
桐谷:(準備していたナイフを左脇腹へ刺す)
:
蓼原:(負傷する)
:
桐谷:(左脇腹のナイフを抉りつつもう一本抜く)
桐谷:(そのもう一本を蓼原の右目に振り下ろす)
:
蓼原:(右手で桐谷のナイフを押しとどめる)
:
桐谷:(上半身の自重を乗せる)
:
蓼原:(こらえる)
:
桐谷:(左脇腹のナイフを引き、切り裂く)
:
蓼原:(痛みに叫ぶ)
:
樺倉:うわああぁあぁあ!!!
樺倉:(振り下ろされるナイフに飛び込む)
:
桐谷:(一瞬面食らい、右方向に回転する)
:
蓼原:(拘束を脱し、起き上がる)
:
桐谷:(右手のナイフを手放し、樺倉の首に回す)
桐谷:(飛び込まれた反動を左脚で加速する)
桐谷:(右脚で樺倉の体を支えつつ投げる)
:
樺倉:(回転させられ、床に背中を打ち付け呻く)
:
0:(桜庭、戻ってくる)
:
桜庭:タデ!!
:
桐谷:(気づき、標的を桜庭に変更する)
:
桜庭:(状況を把握し、銃口を桐谷に向ける)
:
蓼原:手練れ(てだれ)だ、気をつけろ!!
:
桜庭:(眉間に狙いを定める)
:
桐谷:(察知し体勢を下げ突っ込む)
:
樺倉:サクさん!!
:
桜庭:(桐谷への視線を外さず耳を傾ける)
:
樺倉:
樺倉:その子は、『女の子』だ!!!
樺倉:
:
桜庭:(苦い顔をする)
:
桐谷:(桜庭の注意が削がれたことを悟る)
桐谷:(前傾姿勢を解き、スライディングする)
:
樺倉:頼みます!!!
:
桜庭:(小さな舌打ち)
桜庭:クソ、恨むよ
桜庭:(桐谷の左足首、右手首を撃ちぬく)
:
桐谷:(畳んでいた右脚で強引に離脱する)
桐谷:(腱を切られ、立ち上がれずに倒れる)
桐谷:(左手で3本目のナイフを取り出す)
:
桜庭:(投擲を予測し左手首を撃ちぬく)
:
演者さんへ。:戦闘シーンは終了です。お疲れさまでした。
:
桐谷:(ナイフを取り落とし、桜庭を睨みつける)
:
桜庭:(ゆっくりと歩み寄る)
:
樺倉:サクさん!!!
:
桜庭:(桐谷のかたわらに立ち、見下ろす)
:
桐谷:(桜庭を見上げる)
:
桜庭:(なおも見下ろしている)
桜庭:…タデ
:
蓼原:…任せる
:
桜庭:(なおも見下ろしている)
桜庭:(嗤う)
桜庭:…こういうときだけは、嫌いだよ…タデ
:
蓼原:…悪、かったな
蓼原:…俺も、本来、底意地が、悪いんだ
:
桜庭:(なおも見下ろしている)
桜庭:…そうだね
桜庭:(ハンドガンを持つ右手を振り上げる)
:
樺倉:(間髪入れず)サクさん!!!
:
桐谷:(桜庭を見上げている)
:
桜庭:(グリップの底部で桐谷の鳩尾を殴る)
:
桐谷:(気を失う)
:
桜庭:(ゆっくりと樺倉に視線を移す)
桜庭:…何か、言うことはあるかな
:
樺倉:(射竦められる)
樺倉:申し訳、ないです
:
桜庭:(目をすがめる)
桜庭:…そう
桜庭:(重い間)
桜庭:失望するよ、樺倉
桜庭:ここで『謝罪が先』、だなんて
:
樺倉:(怯える)
樺倉:すみません、でした
:
蓼原:(膝をつく)
:
0:(樺倉、駆け寄る)
:
樺倉:蓼原さん!
:
蓼原:…済まん、少し、血が、足りん
:
樺倉:そんな、(かぶる/どうしよう)
:
桜庭:(かぶせて)タデ
:
蓼原:…ああ
:
桜庭:『引き継ぐ』、そう言ったよね
:
蓼原:…ああ
:
桜庭:…じゃあ、そのバカは任せる
:
蓼原:(笑う)
蓼原:…ああ、そう、だな
:
桜庭:(息をつく)
桜庭:柳沼、手配を
:
柳沼:(通信にて)
柳沼:ええ、もちろん進めてるわ
:
桜庭:O.K.
桜庭:…じゃあ、先に帰るよ
:
0:(桜庭、出ていく)
:
柳沼:(通信にて)
柳沼:ともあれ、お疲れ様
:
樺倉:…はい
:
柳沼:(通信にて)
柳沼:…樺倉くん
:
樺倉:…何すか
:
柳沼:(通信にて)
柳沼:(長いため息)
柳沼:…大丈夫よ、安心して
:
樺倉:…何がっすか
:
柳沼:(通信にて)
柳沼:…アレが、サクだから
:
樺倉:(黙ったのち、笑う)
樺倉:…そっすね、でも
:
柳沼:(通信にて)
柳沼:(笑う)
柳沼:…いい子ね、樺倉くんは
:
樺倉:…あざっす
:
0:(数時間後)
0:(別働で派遣されたチームが搬出作業中)
0:(樺倉、ストレッチャーに付き添っている)
0:(桐谷、応急処置されて運ばれている)
:
桐谷:(気がつく)
:
樺倉:あ、起きた
:
桐谷:(かすれた声)
:
樺倉:ああ、無理は、だ、ダメだから
:
桐谷:ううん
:
樺倉:そ、そう、なら、い、いいんだけど
:
桐谷:(周囲の物音に目を向ける)
桐谷:へいき
:
樺倉:あ、見ちゃダメ!
樺倉:(桐谷の視界に立ちふさがる)
:
桐谷:なんで
:
樺倉:だ、だって
樺倉:(桐谷から視線を外す)
:
桐谷:へいき
桐谷:あたし
桐谷:…どうぐ
:
樺倉:(唇を噛む)
樺倉:…違うよ
:
桐谷:なにが
:
樺倉:…道具じゃ、ない
樺倉:君の、仲間が、た、たくさん…
:
桐谷:…なかま
:
樺倉:…ごめん
:
桐谷:なんで
:
樺倉:ぼ、僕たちの、せいで…
:
桐谷:ちがう
:
樺倉:…違わ、ないよ
:
桐谷:ちがう
:
樺倉:ごめん…ごめんね…
:
桐谷:あたし
桐谷:どうぐ
桐谷:…
桐谷:
桐谷:みんな
桐谷:おんな
桐谷:
:
樺倉:(聞き届け、そして、唸る)
:
桐谷:…つらい?
:
樺倉:(涙を浮かべる)
樺倉:ううん、違うよ
:
桐谷:なんで?
:
樺倉:僕の、やるべきことが…
樺倉:ひとつ増えたみたいだ
樺倉:(桐谷の頭を撫でる)
:
桐谷:(モノローグ)
桐谷:(あたしがはっきり覚えている記憶は)
桐谷:(これが最初だったりする)
桐谷:
桐谷:(…笑えるでしょ?)
桐谷:(自分でも思うわよ、何が悲しくて)
桐谷:(あの床の感触を覚えてるんだか)
桐谷:
桐谷:(ただ、さ)
桐谷:(あの時の手のあたたかさだけは)
桐谷:(何でだか絶対忘れない気がすんのよ)
桐谷:
桐谷:(…それはそれで、もしかするとさ?)
桐谷:(案外悪くないのかな、って…思えんの)
:
0:(同時刻)
0:(ノート、臨時拠点のホテル)
0:(桜庭、テラスで煙草を吸っている)
0:(柳沼、グラスを持って現れる)
:
柳沼:はい、サク
:
桜庭:(煙を吐く)
桜庭:ああ、ありがとう
:
柳沼:…やっぱり、落ち着かないみたいね
:
桜庭:何を言うんだい
桜庭:僕はこれ以上ないほど落ち着いてる
:
柳沼:そうね、いつもよりもフラットよ
柳沼:…それこそ気色悪いほどにね
:
桜庭:おや、柳沼
桜庭:(鋭い視線を向ける)
桜庭:君まで、僕をおとしめるつもりかな
:
柳沼:そんな目、ずるいわよもう
柳沼:そそられちゃうわ
:
桜庭:そんな悪ふざけを(かぶる/許すと?)
:
柳沼:(かぶせて)特別扱い、したものね
:
桜庭:(グラスを強く握ってしまう)
:
柳沼:…見たわよ、一部始終を改めて
柳沼:それこそ、サクが蹴散らした全員を
:
桜庭:…そう
:
柳沼:その中には、女の子もいた
:
桜庭:もういいよ
:
柳沼:年のころは同じくらいね
:
桜庭:柳沼、もう
:
柳沼:(聞かずに)
柳沼:私もあのくらいみずみずしいころが
柳沼:思わず羨ましくなっちゃった
:
桜庭:やめて(かぶる/くれよ)
:
柳沼:(かぶせて)いいえ、やめないわ
柳沼:…貴方の、その目が、
柳沼:…やめてほしいとは、言ってないもの
:
桜庭:…悪い冗談を、覚えたものだね
:
柳沼:…貴方は、正しいことをしたわ
:
桜庭:へえ、博愛主義者が血迷ったかな
:
柳沼:彼女たちは明確に貴方に殺意を向けた
柳沼:…どこかで誰かから聞いたことがある
柳沼:(酒を飲み干す)
柳沼:『降りかかる火の粉は払うべき』
:
桜庭:…払わなかったんだよ、あの『馬鹿』は
:
柳沼:それでいて、悔しがってる
柳沼:終わったけど、悩んでる
:
桜庭:…それは
:
柳沼:あの子一人だけを、生かした
柳沼:たまたまのタイミングと樺倉くんの思いが
柳沼:彼女の『生』をつないだ
:
桜庭:…仕方ないとは、諦めるさ
:
柳沼:(沈黙し、そして笑う)
:
桜庭:…笑われるか、そりゃ
:
柳沼:もう、違うわよサク
:
桜庭:どういうことなのかな、それなら
:
柳沼:(グラスを床に投げ、割る)
柳沼:こういうことよ
:
桜庭:…珍しく、皮肉が利いてるじゃないか
:
柳沼:私だって、たまにはずるくなるわよ
:
桜庭:おお、怖いねまったく
:
柳沼:…それにね?
柳沼:(桜庭の顔を自分に向ける)
柳沼:(頬を両手で挟み、キスをする)
:
桜庭:(応じる)
:
柳沼:貴方が割ってきた数々のグラスの破片、
柳沼:…その一つが私だってことも、忘れないで?
:
桜庭:(息をのみ、そして、笑いだす)
桜庭:そう、そうか…そうだったね!
:
柳沼:ええ、そうよ…もう
柳沼:サクってばホント、困った人ね
:
0:(4年弱前、ルーアンの2か月後)
0:(アメリカ、ロサンゼルス)
0:(大規模なショップストリート)
0:(桐谷、紙袋を振り回しつつ歩いている)
0:(樺倉、後ろを大荷物を抱えつつついていく)
:
桐谷:(モノローグ)
桐谷:(樺倉は、思えばずっとああだった)
桐谷:(本当に言わなきゃいけないことだけは)
桐谷:(どれだけ臆しても伝えてくれる)
桐谷:(そんなあいつにあたしは何度も救われた)
:
樺倉:ちょっと、早いってば…っ
:
桐谷:うっさいわね、男のくせに!
桐谷:早くしないと最後まで回れないじゃない!
:
樺倉:え、最後って?!
:
桐谷:そ、あっちの最後!
桐谷:(立ち並ぶショップの遥か遠くを指さす)
:
樺倉:それは無理だって!
樺倉:君の荷物、もう僕じゃ持てないよ!
:
桐谷:じゃあ、誰か捕まえてきて!
:
樺倉:そんな、無茶な…っ
:
桐谷:いいから、次行くわよ次!
:
樺倉:ま、待ってってばぁ!
:
桐谷:(モノローグ)
桐谷:(暑かった、そして楽しかった)
桐谷:(そんなことばかり思い出す)
桐谷:(多分樺倉は、あいつなりにあたしを)
桐谷:(気遣ってくれてたんだと思う)
桐谷:
桐谷:(泣く暇を与えないように)
桐谷:(振り返ることがないように)
桐谷:(生き残った後悔をしないように)
:
0:(同じショップストリート)
0:(蓼原、テラス席でブルックリンを飲んでいる)
0:(桐谷、瓶コークを飲んでいる)
0:(樺倉、テーブルに伏しぐったりしている)
:
蓼原:それにしても、どれだけ買う気だ
:
桐谷:しょうがないわ、欲しいものが多すぎて
桐谷:これでも8割以上は諦めたのよ?
:
蓼原:(苦笑)
蓼原:だ、そうだ
:
樺倉:…よしてくださいよ、もう
:
桐谷:だってせっかくだもの、女に生まれたなら
桐谷:おしゃれくらい楽しんでみたいなって
:
蓼原:まあ、気持ちはわからんでもないが
蓼原:元からいたほうの紅一点と違って
蓼原:お前はおめかしも役に立たんだろう
:
桐谷:失礼な、あたしだってお化粧とか
桐谷:色気とか魅力とか、勉強中なんだからね
:
蓼原:変わるまいて、今更
:
桐谷:ちょっと、ひっど
:
樺倉:そうですよ、蓼原さん
樺倉:年頃の女の子にそんなこと言ってると
樺倉:重たいカバンでぶん殴られますよ
:
蓼原:おお、怖い怖い
:
桐谷:あ、ちょうどいいところに
桐谷:今朝買ったボストンバッグがあったわ
:
蓼原:おいおい、お前の膂力(りょりょく)じゃ
蓼原:おふざけがバカにならん
:
樺倉:たまにはコテンパンにやられたらいいんです
:
蓼原:お前は桜庭への恨みをこっちに寄越すな
:
樺倉:切っても切れない切りたくない腐れ縁を
樺倉:存分に生かしていただく所存です、はい
:
蓼原:(ため息)
蓼原:全く、面倒な
:
桐谷:(笑う)
:
蓼原:じゃあ、車は預けるぞ
蓼原:俺は少しこの辺りを見てくる
:
樺倉:(察する)
樺倉:そうっすね、お願いします
:
0:(蓼原、去る)
:
桐谷:(蓼原が置いて行った瓶を弄ぶ)
桐谷:そんで、何かわかった?
:
樺倉:…いや、ごめん
樺倉:君の情報が少なすぎて、まだ
:
桐谷:…そっかぁ
桐谷:あたし、何者なんだろうね
:
樺倉:(押し黙る)
:
桐谷:ああ、別に困らせたいわけじゃないの
:
樺倉:うん
:
桐谷:ただ、さ?
桐谷:あたしはどことも知らないところから
桐谷:あそこに連れて行かれて、
桐谷:好き勝手されて、暴れさせられて…
桐谷:(樺倉に向き直り表情を明るくする)
桐谷:そんでまた大暴れ集団に拾われてさ?
:
樺倉:ぼ、僕を一緒にしないでよ
:
桐谷:(笑う)
:
樺倉:よかった、本当に
:
桐谷:何よ、妹でも見るみたいに
:
樺倉:そりゃ、こんなに振り回されて
樺倉:放っておけない危なっかしい女の子、
樺倉:妹みたいに思ってもおかしくないよ
:
桐谷:(そっぽを向く)
桐谷:あ、そ
:
樺倉:へそ曲げないでよ
:
桐谷:別に
:
樺倉:(息をつく)
樺倉:でも、それ以上にさ
:
桐谷:うん
:
樺倉:こうやって、元気になってよかったって
:
桐谷:そうね…ありがと
:
樺倉:ううん、僕は何も
:
桐谷:そんなことないよ
:
樺倉:(笑う)
樺倉:蓼原さんが戦ってくれて、
樺倉:柳沼さんが状況把握してくれて、
樺倉:サクさんが踏みとどまってくれて、
樺倉:君が今ここにいる
:
桐谷:アイツ…嫌い
:
樺倉:(笑う)
:
桐谷:でもさ、あたしはいずれここを出て
桐谷:一人になるんだよ?
:
樺倉:…そう、なのかな
:
桐谷:…何、歯切れ悪い
:
樺倉:いや、君が望まない限り、
樺倉:君は多分ずっとここにいるよ
:
桐谷:え?
:
樺倉:というわけで、ロスに来た目的を
樺倉:背景含め説明するからよく聞いてね
:
桐谷:う、うん
:
樺倉:簡単に言えば、ゲリラの鎮圧
樺倉:君からしたら難易度の低い任務だよ
:
桐谷:え、あたしに仕事?
:
樺倉:そう、僕たち『ノート』の正規任務
:
桐谷:ちょ、ちょっと待って
桐谷:そりゃアンタたちとなら嬉しいけど
桐谷:アンタたちってお堅い組織でしょ?
:
樺倉:そうだよ、超国家的な成り立ちもある
:
桐谷:そんな大事な話に(かぶる/部外者が)
:
樺倉:(かぶせて)だからこそ、だよ
樺倉:メンバー全員に、正しく伝達しなきゃ
樺倉:それが、情報担当の僕の役目
:
桐谷:全、員…?
:
樺倉:そう、全員。
:
0:(樺倉、カバンをあさる)
0:(樺倉、スマートフォンを手渡す)
:
桐谷:(受け取る)
桐谷:これ、もしかして
:
樺倉:(微笑む)
樺倉:君の手が、どれだけ血まみれでも
樺倉:君の体が、どれだけすさんでても
樺倉:僕たちだけは知ってる
:
桐谷:(画面を操作する)
桐谷:(ロゴが映し出される)
:
樺倉:通わせたい、触れ合いたい、抱きしめたい、
樺倉:…今まで満足に叶えられなかった分、
樺倉:僕たちが一つ一つまかなうよ
:
桐谷:(涙を浮かべる)
:
樺倉:ここが、君の居場所だ
:
桐谷:うん
:
樺倉:
樺倉:ようこそ、『ビリジャン=ノート』へ
樺倉:
:
桐谷:(モノローグ)
桐谷:(そう、だからこそ『お兄ちゃん』)
桐谷:(普段はビクビクしてるクセに)
桐谷:(こういうときだけ勘がいい)
桐谷:(役に立たない、って思う時もあるけど)
桐谷:(なんだかんだ言って助けてくれる)
桐谷:
桐谷:(だから、あたしは勝手に、)
桐谷:(直接言ったらつけあがるから)
桐谷:(心の中だけで、そっと、)
桐谷:
桐谷:(『お兄ちゃん』って呼んでいた)
桐谷:
:
0:(続)